(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117545
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】レーザースキャン装置、レーザースキャン方法およびレーザースキャン用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020160
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽
(57)【要約】
【課題】レーザースキャンと同時に撮影行う技術を効率化する。
【解決手段】縦方向にレーザースキャンを行う鉛直回転部214およびカメラ216,217を備え、水平回転が可能な水平回転部213と、水平回転部213の回転を制御する回転制御部と、縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理を行う処理部とを備え、水平回転部213を水平回転させながらレーザースキャンを行うと共に、カメラ216,217による撮影が行われ、前記撮影を行うために水平回転部213の回転の減速が行われ、前記減速において、前記処理部は、前記縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わないレーザースキャン装置200。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向にレーザースキャンを行うレーザースキャン部およびカメラを備え、水平回転が可能な水平回転部と、
前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理を行う処理部と
を備え、
前記水平回転部を水平回転させながら前記レーザースキャンを行うと共に、前記カメラによる撮影が行われ、
前記撮影を行うために前記水平回転部の回転の減速が行われ、
前記減速において、前記処理部は、前記縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わないレーザースキャン装置。
【請求項2】
前記減速は、回転速度を低下させる負の加速またはより低い速度での回転である請求項1に記載のレーザースキャン装置。
【請求項3】
前記水平回転部が等速回転している状態から前記減速が行われ、
前記縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わないことで、前記等速回転時における前記縦方向におけるレーザースキャンの水平方向におけるスキャン間隔と前記減速時における前記縦方向におけるレーザースキャンの水平方向におけるスキャン間隔との差が是正される請求項1または2に記載のレーザースキャン装置。
【請求項4】
前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理により、水平方向におけるスキャンデータの間隔が均等化される請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザースキャン装置。
【請求項5】
前記水平回転部が等速回転している状態から前記減速が行われ、
前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理は、
前記等速回転であった期間における前記縦方向にレーザースキャンを行うことで得られる縦スキャンデータの水平方向における角度間隔Δθに基づき、前記縦スキャンデータの取得が行われる請求項1~4のいずれか一項に記載のレーザースキャン装置。
【請求項6】
前記角度間隔Δθに最も近い角度間隔の前記縦スキャンデータの取得が行われる請求項5に記載のレーザースキャン装置。
【請求項7】
前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理として、
前記縦方向におけるレーザースキャンに係る発光または受光を行わない請求項1~6のいずれか一項に記載のレーザースキャン装置。
【請求項8】
前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理として、
前記縦方向におけるレーザースキャンに係る検出信号の検出を行わない請求項1~7のいずれか一項に記載のレーザースキャン装置。
【請求項9】
縦方向にレーザースキャンを行うレーザースキャン部およびカメラを備え、水平回転が可能な水平回転部を備えたレーザースキャン装置を用いたレーザースキャン方法であって、
前記水平回転部を水平回転させながら前記レーザースキャンを行うと共に、前記カメラによる撮影が行われ、
前記撮影を行うために前記水平回転部の回転の減速が行われ、
前記減速において、前記縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わないレーザースキャン方法。
【請求項10】
縦方向にレーザースキャンを行うレーザースキャン部およびカメラを備え、水平回転が可能な水平回転部を備えたレーザースキャン装置の動作を制御するコンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
前記水平回転部を水平回転させながら前記レーザースキャンを行うと共に、前記カメラによる撮影が行われ、
前記撮影を行うために前記水平回転部の回転の減速が行われ、
当該コンピュータに
前記減速において、前記縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わない処理を実行させるレーザースキャン用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースキャンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ付きレーザースキャン装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。例えば、カメラ付きレーザースキャン装置を用いて全周スキャンを行い、同時にカメラによりパノラマ画像を撮影し、スキャン点群とパノラマ画像を重畳する技術がある(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
このカメラ付きレーザースキャン装置は、水平回転部、該水平回転部に配置されたカメラと鉛直回転部、該鉛直回転部に配置されたレーザー測距光の出射部と受光部を備えた光学部を有している。そして、水平回転部を水平回転させながら、鉛直回転部を鉛直回転させてレーザースキャンを行い、更に水平回転部に配置されたカメラによりパノラマ画像の撮影が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-56069号公報
【特許文献2】特開2020-52046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のレーザースキャンと同時にパノラマ画像を取得する場合、パノラマ画像を構成する静止画像の撮影時に水平回転部の回転を減速あるいは停止する必要がある。これは、撮影画像が流れてしまう現象や画像がブレる現象を抑えるためである。
【0006】
上記の水平回転部の回転を減速あるいは停止させた状態におけるレーザースキャンは、水平方向におけるレーザースキャン点群の密度が相対的に高くなる。この場合、レーザースキャン装置(レーザースキャンの視点の位置)から周囲を見渡した場合、水平方向におけるレーザースキャン点群の密度が部分的に密になる。
【0007】
レーザースキャン点群は、極力グリッド化(格子状に並んだ状態)され、粗密が極力ない状態が好ましい。点群に密な部分がある場合、グリッド化のための処理が必要となる。この処理は負担が大きく、作業効率の点で好ましくない。
【0008】
このため、これまでは、レーザースキャンと撮影を別工程で行っていた。しかしながら、この方法も作業が増え、作業効率の点で好ましくない。
【0009】
なお、水平回転部を非常にゆっくりと回転させることで、上記の問題に対応する方法も考えられるが、レーザースキャン時の作業効率が低下し、やはり好ましくない。
【0010】
このような背景において、本発明は、レーザースキャンと同時に撮影行う技術を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、縦方向にレーザースキャンを行うレーザースキャン部およびカメラを備え、水平回転が可能な水平回転部と、前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理を行う処理部とを備え、前記水平回転部を水平回転させながら前記レーザースキャンを行うと共に、前記カメラによる撮影が行われ、前記撮影を行うために前記水平回転部の回転の減速が行われ、前記減速において、前記処理部は、前記縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わないレーザースキャン装置である。
【0012】
本発明において、前記減速は、回転速度を低下させる負の加速またはより低い速度での回転である態様が挙げられる。
【0013】
本発明において、前記水平回転部が等速回転している状態から前記減速が行われ、前記縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わないことで、前記等速回転時における前記縦方向におけるレーザースキャンの水平方向におけるスキャン間隔と前記減速時における前記縦方向におけるレーザースキャンの水平方向におけるスキャン間隔との差が是正される態様が挙げられる。
【0014】
本発明において、前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理により、水平方向におけるスキャンデータの間隔が均等化される態様が挙げられる。
【0015】
本発明において、前記水平回転部が等速回転している状態から前記減速が行われ、前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理は、前記等速回転であった期間における前記縦方向にレーザースキャンを行うことで得られる縦スキャンデータの水平方向における角度間隔Δθに基づき、前記縦スキャンデータの取得が行われる態様が挙げられる。
【0016】
本発明において、前記角度間隔Δθに最も近い角度間隔の前記縦スキャンデータの取得が行われる態様が挙げられる。ここで、「最も近い」という語意には、一致する場合も含まれる。本発明において、前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理として、前記縦方向におけるレーザースキャンに係る発光または受光を行わない態様が挙げられる。
【0017】
本発明において、前記縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理として、前記縦方向におけるレーザースキャンに係る検出信号の検出を行わない態様が挙げられる。
【0018】
本発明は、縦方向にレーザースキャンを行うレーザースキャン部およびカメラを備え、水平回転が可能な水平回転部を備えたレーザースキャン装置を用いたレーザースキャン方法であって、前記水平回転部を水平回転させながら前記レーザースキャンを行うと共に、前記カメラによる撮影が行われ、前記撮影を行うために前記水平回転部の回転の減速が行われ、前記減速において、前記縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わないレーザースキャン方法である。
【0019】
本発明は、縦方向にレーザースキャンを行うレーザースキャン部およびカメラを備え、水平回転が可能な水平回転部を備えたレーザースキャン装置の動作を制御するコンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、前記水平回転部を水平回転させながら前記レーザースキャンを行うと共に、前記カメラによる撮影が行われ、前記撮影を行うために前記水平回転部の回転の減速が行われ、当該コンピュータに前記減速において、前記縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わない処理を実行させるレーザースキャン用プログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザースキャンと同時に撮影行う技術を効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】レーザースキャン装置の外観を示す図(A)および(B)である。
【
図4】縦スキャンラインのイメージを示す図(A)および(B)である。
【
図5】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.第1の実施形態
(ハードウェアの構成)
図1には、レーザースキャン装置(レーザースキャナ)200の外観が示されている。
図1(A)は前面の側から見た状態であり、
図1(B)は背面の側から見た状態である。レーザースキャン装置200は、三脚211、三脚211の上部に固定されたベース部212、ベース部212上で水平回転が可能な回転体である水平回転部213、水平回転部213に対して鉛直回転が可能な回転体である鉛直回転部214、水平回転部213に配置されたカメラ216,217を備えている。また、水平回転部213の背面には、操作パネル218が配置されている。
【0023】
鉛直回転部214は、レーザースキャン光の放射と受光を行う光学部215を備えている。光学部215からレーザースキャン光がパルス発光される。このパルス発光は、鉛直回転部214が回転しながら、その回転軸(水平方向に延長する軸)に直交する方向(鉛直面)に沿って行われる。この場合、光学部215から鉛直角の方向(仰角および俯角の角度方向)に沿ってレーザースキャン光がパルス発光される。
【0024】
水平回転部213を水平回転させ、且つ、鉛直回転部214を鉛直回転させながら、光学部215からレーザースキャン光をパルス発光させ、対象物からのその反射光を光学部215で受光することで、周囲に対するレーザースキャンが行われる。
【0025】
すなわち、鉛直回転部214を鉛直回転させながら、光学部215からレーザースキャン光をパルス発光させることで、鉛直角の方向に沿ったスキャン(縦方向のスキャン:縦スキャン)が行われる。この鉛直角の方向に沿ったスキャンのラインを縦スキャンラインという。
【0026】
上記の鉛直角の方向に沿ったスキャン(縦スキャン)と同時に水平回転部213が水平回転することで、この鉛直角方向に沿ったスキャンライン(縦スキャンライン)が水平角方向に沿ってずれるようにして移動する。なお、鉛直回転時に水平回転も同時に行った場合、鉛直角方向に沿ったスキャン(縦スキャンライン)は完全に鉛直方向に沿っておらず、僅かであるが少し斜めの線となる。なお、水平回転部213が回転しなければ、鉛直角方向に沿ったスキャン(縦スキャンライン)は鉛直方向に沿ったものとなる。
【0027】
水平回転部213と鉛直回転部214の回転は、モータにより行われる。水平回転部213の水平回転角と、鉛直回転部214の鉛直回転角は、エンコーダにより精密に計測さる。
【0028】
各レーザースキャン光は、1条のパルス測距光であり、一つのレーザースキャン光により、当該レーザースキャン光が当たった反射点であるスキャン点の測距が行われる。この測距値とレーザースキャン光の照射方向から、レーザースキャン装置200に対するスキャン点(レーザースキャン光の反射点)の位置が算出される。
【0029】
ここで、絶対座標系におけるレーザースキャン装置200の外部標定要素(位置と姿勢)が既知であれば、絶対座標系におけるスキャン点の位置が判明する。絶対座標系は、地図やGNSSで利用される座標系である。絶対座標系では、例えば、緯度、経度、標高によって位置が記述される。レーザースキャン装置200の光学原点を原点とするローカル座標系におけるレーザースキャン点群を得ることもできる。
【0030】
レーザースキャン装置200から出力されるレーザースキャン点群の形態としては、各点(各スキャン点)に係る距離と方向のデータを出力する形態が挙げられる。レーザースキャン装置200の内部において、特定の座標系における各点の位置を計算し、各点の3次元座標位置を点群データとして出力する形態も可能である。また、レーザースキャン点群のデータには、各スキャン点の輝度(反射光の強度)の情報も含まれている。
【0031】
カメラ216,217は、デジタルカメラである。水平回転部213の角度位置を変えてカメラ216,217による撮影を行うことで、パノラマ画像が得られる。例えば、北を0°として、22.5°の角度間隔で隣接する撮影画像が一部で重複するように撮影を行い8枚の撮影画像からなるパノラマ画像を得る。
【0032】
カメラ216とカメラ217は、向きが180°異なる。この2台のカメラを用いて撮影を行うことで、水平回転部213を180°回転させることで全周スキャンと同時に360°の範囲の撮影が可能となる。勿論、カメラを1台用い、水平回転部213を360°回転させて撮影を行う形態も可能である。
【0033】
操作パネル218は、レーザースキャン装置200の操作を行うためのタッチパネルディスプレイである。
【0034】
図2は、レーザースキャン装置200のブロック図である。レーザースキャン装置200は、発光部201、受光部202、測距部203、方向取得部204、発光制御部205、駆動制御部206、カメラ制御部207、回転速度判定部208、点群データ作成部209、通信装置210を備える。
【0035】
方向取得部204、発光制御部205、駆動制御部206、カメラ制御部207、回転速度判定部208、点群データ作成部209は、レーザースキャン装置200に組み込まれたコンピュータにより構成されている。当該コンピュータは、CPU、記憶装置、通信インターフェース、ユーザインターフェースを備え、上記機能部を実現するための動作プログラムがインストールされている。上記機能部の一部または全部を専用のハードウェアで構成することも可能である。
【0036】
発光部201は、レーザースキャン光の発光を行う発光素子、発光に関係する光学系と周辺回路を有する。発光部201からのレーザースキャン光は、光学系を介して光学部215から外部に出射される。受光部202は、レーザースキャン光の受光を行う受光素子、受光に関係する光学系と周辺回路を有する。光学部215から取り込まれたレーザースキャン光の反射光は、光学系を介して受光部202に導かれる。
【0037】
測距部203は、レーザースキャン装置200からレーザースキャン光の反射点(スキャン点)までの距離を算出する。この例では、レーザースキャン装置200の内部に基準光路が設けられている。発光素子から出力されたレーザースキャン光は2分岐され、一方がレーザースキャン光として光学部215から対象に照射され、他方が参照光として上記基準光路に導かれる。
【0038】
対象から反射され、光学部215から取り込まれたレーザースキャン光と上記基準光路を伝搬した参照光とが合成され、受光部202に入力される。レーザースキャン光と参照光は、伝搬距離が異なり、最初に参照光が受光素子で検出され、次いでレーザースキャン光が受光素子で検出される。
【0039】
ここで、受光素子の出力波形を見ると、参照光の検出波形が最初に出力され、ついで時間差をおいてレーザースキャン光の検出波形が出力される。この2つの波形の位相差(時間差)からレーザースキャン光の反射点までの距離が算出される。なお、レーザースキャン光の飛翔時間から距離を算出する形態も可能である。
【0040】
方向取得部204は、レーザースキャン光の光軸の方向を取得する。光軸の方向は、水平方向の光軸の角度と鉛直方向の光軸の角度(仰角または俯角)を計測することで得る。方向取得部204は、水平角検出部204aと鉛直角検出部204bを有する。
【0041】
水平角検出部204aは、水平回転部213の水平回転角を検出する。水平回転は、鉛直方向を回転軸とする回転である。角度の検出は、エンコーダにより行われる。鉛直角検出部204bは、鉛直回転部214の鉛直回転角(仰角または俯角)を検出する。鉛直回転は、水平方向を回転軸とする回転である。角度の検出は、エンコーダにより行われる。
【0042】
水平回転部213の水平回転角と鉛直回転部215の鉛直回転角を計測することで、レーザースキャン装置200から見たレーザースキャン光の光軸の方向、すなわちスキャン点の方向が判る。
【0043】
発光制御部205は、スキャン制御部の一例であり、発光部201におけるレーザースキャン光の発光タイミングの制御を行う。
【0044】
駆動制御部206は、水平回転部213を水平回転させるための駆動制御を行う水平回転駆動制御部206aと、鉛直回転部214を鉛直回転させるための駆動制御を行う鉛直回転駆動制御部206bを備える。
【0045】
水平回転駆動制御部206は、水平回転部213を停止⇒加速⇒等速⇒減速⇒停止を繰り返すと回転制御を行う。回転制御としては、停止⇒加速⇒減速⇒停止を繰り返す回転制御、停止はせず加速⇒等速⇒減速を繰り返すと回転制御、停止はせず加速⇒減速を繰り返す回転制御、撮影の為の遅い等速の回転⇒加速⇒等速⇒減速⇒撮影の為の遅い等速の回転を繰り返す回転制御、撮影の為の遅い等速の回転⇒加速⇒減速⇒撮影の為の遅い等速の回転を繰り返す回転制御等も可能である。ここで、停止あるいは最も回転速度が遅くなったタイミングでカメラ216と217による撮影が行われる。
【0046】
図3には、等速⇒減速⇒停止⇒加速⇒等速を繰り返す場合の一例が示されている(勿論、定速回転の期間があってもよい)。なお、
図3では見易さを優先し、減速と加速の期間(角度範囲)が誇張して示されている。
【0047】
この場合、停止のタイミングで撮影が行われる。例えば、
図3の方法により角度差15°で360°の範囲において24枚の画像をパノラマ画像用として撮影する場合、停止する角度間隔が15°となるように、水平回転部213の停止(撮影タイミング)⇒加速⇒等速⇒減速⇒停止(撮影タイミング)・・・の繰り返しの水平回転の駆動制御が行われる。なお、等速の期間がない制御も可能である。また、撮影のタイミングで遅い等速とする制御も可能である。
【0048】
カメラ制御部207は、カメラ216と217の撮影タイミングを決める制御を行う。この例では、水平回転部213の回転が停止または最も遅くなったタイミングで撮影が行われる。この制御がカメラ制御部207において行われる。
【0049】
回転速度判定部208は、水平回転部213の回転の状態を判定する。この判定は、水平角検出部204aが検出した水平回転部213の水平回転角の変化に基づいて行われる。
【0050】
点群データ作成部209は、点群データを作成する。点群データ作成部209は、縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理を行う処理部の一例である。点群データは、各点に係り、レーザースキャン装置200の光学原点からその点までの方向と距離のデータ、更に反射光の強度を関連付けたものとして作成される。点の方向は、方向取得部204から得られる。点の距離は、測距部203から得られる。適当な座標系での3次元位置を算出し、点群データとする形態も可能である。
【0051】
点群データ作成部209は、後述する縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理を行う。以下、処理の詳細を説明する。
【0052】
図4(A)には、レーザースキャンのタイミングは、通常の等間隔時間(等速回転の間)で行い、他方において、水平回転部213の回転を、一定速度(等速回転)⇒減速⇒停止⇒加速⇒一定速度で水平回転させた場合におけるレーザースキャン装置200の側(レーザースキャンの原点(視点)の位置)から見た縦スキャンのスキャンライン(縦スキャンライン)の概略イメージが示されている。
【0053】
縦スキャンラインは、鉛直回転部215が1回転する間に得られる鉛直面に沿った線状のスキャンのラインである。1回の縦スキャンは、鉛直回転部214の1回転に対応する。縦スキャンの開始は、鉛直回転部214の光学部215が鉛直下方(真下)を向いている時を基点とし、1周回転して次に光学部215が鉛直下方を向いた時点を終点とする。
【0054】
図4(A)の場合、上下に延長するスキャンライン(縦スキャンライン)の間隔は、減速⇒停止⇒加速の部分で等速の期間におけるものより密になる。この密になった部分では、疎である部分に比較して、無駄にレーザースキャンを行っていることになる。
【0055】
この縦スキャンラインが密の部分における縦スキャンラインの一部が生成されないようにすることで、縦スキャンラインが等間隔で並ぶようにする(あるいは極力等間隔になるようにする)。同様の目的は、縦スキャンラインが密の部分における縦スキャンラインの一部が生成されても、それを無効化(利用できないようにする)することでも達成できる。
【0056】
この一例を
図4(B)に示す。
図4(B)に示すのは、
図4(A)に示す縦スキャンラインのうち、一部(
図4(B)の破線部分)の縦スキャンラインの点群データを得ないようにする(出力されないようにする)ことで、水平回転部213の加減速および停止に係わらず、水平方向におけるスキャン密度が変化しないように(一定になるように)する場合が示されている。
【0057】
本実施形態では、
図4(B)の破線に対応する点群データを点群データ作成部209が生成しない。すなわち、水平回転部213の回転速度が変化しても、空間中における縦スキャンラインの間隔が回転速度の変化前に比較して変化しないように縦スキャンラインの一部を生成しない。なお生成しない場合と同様の効果は、生成してもそれが利用できない状態とする場合、生成してもそのデータが外部に出力されない(レーザースキャン装置200から出力されない)場合でも得られる。
【0058】
図4(B)の場合でいうと、破線の縦スキャンラインの点群データを生成しない。当然、破線の縦スキャンラインの点群データは、レーザースキャン装置200から出力されない。
【0059】
以下、具体的な例を示す。例えば、
図4(B)の減速回転が検出されたとする。この場合、等速回転であった期間における縦スキャンラインの角度間隔Δθを取得する。そして、減速期間、撮影時の期間および加速期間では、この角度間隔Δθに最も近い間隔にある縦スキャンデータが取得(採用)される。すなわち、Δθの間隔に合致あるいは極力合致する縦スキャンデータが取得されるようにスキャンデータのサンプリングが行われる。
【0060】
こうして、Δθの間隔から外れる縦スキャンラインの点群データの取得を行わない処理が実行される。すなわち、
図4(B)の破線部分の縦スキャンラインの点群データの取得を行わない処理が行われる。
【0061】
以上の処理を点群データ生成部209で行うことで、
図4(B)の破線に対応する点群データを生成せずに、等間隔に延長スキャンラインの点群データが配列した点群データを得ることができる。
【0062】
通信装置304は、レーザースキャン装置200や他の装置との間で通信を行う。通信は、無線LANや携帯電話回線が利用される。
【0063】
(処理の一例)
図5に処理の手順の一例を示す。
図5に示す処理を実行するプログラムは、レーザースキャン装置200に組み込まれたコンピュータにより読み取られて実行される。このプログラムは、上記コンピュータの記憶装置に記憶され、当該コンピュータのCPUにより読み出されて実行される。当該プログラムを適当な記憶媒体に記憶させ、そこから読み出して利用する形態も可能である。
【0064】
まずレーザースキャン装置200を設置する。ここで、レーザースキャン装置200の外部標定要素(位置と姿勢)は公知の方法で定められ既知であるとする。利用する座標系は、絶対座標系であってもローカル座標系であってもよい。絶対座標系は、地図やGNSSで利用される座標系である。
【0065】
前提として、撮影を行う水平回転角の角度位置は予め定められているとする(例えば、15°や22.5°等の角度間隔位置)。また、水平回転部213の回転は、停止⇒加速⇒等速回転⇒減速⇒停止を繰り返すとする。カメラ216,217による撮影は、停止時に行われる。停止⇒加速⇒等速回転⇒減速⇒停止を決める回転制御のタイミングは予め定められており、この予め定められた手順に従って駆動制御部206による水平回転部213の回転制御が行われる。なお、鉛直回転部214は等速での回転を継続して行う。
【0066】
レーザースキャン装置200の設置終了後に全周スキャンを開始する。この際、まず鉛直回転部214を回転させ、鉛直回転部214の回転が安定した段階で、水平回転部213の回転を開始する。この段階で
図5の処理が開始される。
【0067】
処理が開始されると、水平回転部213が予め定めた等速回転(回転速度一定の回転)となったか否か、の判定が行われる(ステップS101)。予め定めた等速回転とは、予定した等間隔の縦スキャンラインを得るためのレーザースキャン時における水平回転部213の回転である(
図4の等速回転部分)。
【0068】
水平回転部213が等速回転であれば、レーザースキャンデータの取得を開始する(ステップS102)。次いで、水平回転部213の回転速度が予め定めた回転速度以外であるか否かが判定される(ステップS103)。ここで、水平回転部213の回転速度が予め定めた回転速度以外である場合、
図4(B)に関連して説明した部分的に縦スキャンラインの点群を生成しない処理を実行する(S104)。
【0069】
次に、水平回転部213の回転が予め定めた等速回転となったか否か、の判定を行う(ステップS105)。ここで、等速回転であれば、ステップS106に進み、ステップS104の処理を終了する。この場合、ステップS102において開始された処理が再開され、ステップS103以下の処理を繰り返す。
【0070】
この処理によれば、水平方向において等間隔な縦スキャンラインの点群データの配列を得ることができる。すなわち、縦方向におけるレーザースキャンによるレーザースキャンデータの一部の生成を行わないことで、等速回転時における縦スキャンラインの水平方向における間隔と減速時、撮影時、加速時における縦スキャンラインの水平方向における間隔との差が是正される。
【0071】
これにより、水平回転部213の回転速度の違いがあっても、縦スキャンラインの間隔を一定、あるいは一定に近い状態とできる。すなわち、グリッド化された点群データが得られる。
【0072】
(優位性)
レーザースキャンと撮影を同時に行うことができ、作業の効率化が図れる。また、グリッド化されたレーザースキャンデータが得られるので、後処理の負担が軽減され、作業が効率化できる。また、仮に後処理でグリッド化の処理が必要であっても、水平方向における点群の間隔がある程度そろっているので、後処理の負担を軽減でき、処理を効率化できる。
【0073】
2.第2の実施形態
第1の実施形態において、更に水平回転部213の速度制御を行い、縦スキャンラインが極力等間隔で並ぶように調整してもよい。
【0074】
3.第3の実施形態
図4に関連して説明した回転制御、発光制御、点群データの処理の少なくとも一つを外部のコンピュータや制御装置で行い、外部からレーザースキャン装置200の制御を行う形態も可能である。
【0075】
4.第4の実施形態
鉛直回転部214の部分を上下方向にレーザースキャンを行う機構に置き換えたレーザースキャン装置に本発明を適用することもできる。上下方向にレーザースキャンを行う機構としては、機械的に光学系を上下に動かす形態、可動部品はなく、電子式に上下方向にスキャンを行う形態が挙げられる。
【0076】
5.第5の実施形態
一部のレーザースキャンデータを得ない方法として、特定のタイミングでスキャン光(測定光)の発光を行わない方法がある。この場合、発光制御部205が行う発光部201におけるレーザースキャン光の発光タイミングの制御により、例えば
図4(B)に示す破線部分のスキャンラインを発光させない制御を行う。
【0077】
6.第6の実施形態
一部のレーザースキャンデータを得ない方法として、受光素子の前に光シャッターを配置し、発光は行うが、受光素子での受光を行わない方法も可能である。この場合、光シャッターONのタイミングにおける点群データは得られないので、レーザースキャンを行わなかった場合と同等の結果が得られる。この場合、受光した光を遮断する光シャッターの制御を行う受光制御装置を用意する。この場合、この受光制御装置が縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理を行う処理部の一例となる。
【0078】
例えば、縦スキャンを実施、未実施、実施、未実施・・・と繰り返す場合、未実施のタイミングで上記光シャッターをON(非透過)とし、発光素子からの発光は行われるが、測定光として受光素子が受光しないようにする。また、発光素子の前に光シャッターを配置し、特定のタイミングで測定光の外部への発光(出射)が行われないようにする構成も可能である。
【0079】
また、レーザースキャン光に係り、発光および受光素子での受光は行うが、受光素子から出力される受光信号をカウント(検出)しない手法も可能である。この場合も、点群データは得られないので、レーザースキャンを行わなかった場合と同等の結果が得られる。この場合、受光素子から出力される受光信号を遮断する電子スイッチ、およびこの電子スイッチを制御する受光信号制御回路を用意する。この場合、受光信号制御装置が縦方向におけるレーザースキャンにより得られるスキャンデータの一部の生成を行わない処理を行う処理部の一例となる。
【0080】
例えば、縦スキャンを実施、未実施、実施、未実施・・・と繰り返す場合、未実施のタイミングで上記電子スイッチをOFFにし、このタイミングでは、点のデータが得られないようにする。また、特定のタイミングで受光素子の電源やバイアス電圧をOFFとし、受光素子を機能させない方法もある。
【0081】
7.第7の実施形態
図4(B)には、撮影タイミング以外において、等速回転の期間が有る場合が示されているが、等速の期間がない形態も考えられる。例えば、水平回転部213が加速⇒減速⇒撮影のための停止または最低速度⇒加速・・・を繰り返す水平回転を行う場合も考えられる。この場合に等間隔な縦スキャンラインを得る手法について説明する。
【0082】
この場合、まず最終的に取得する等間隔の縦スキャンの間隔Δθを設定する。そして、この角度間隔Δθに最も近い間隔にある縦スキャンデータが取得(採用)される。すなわち、Δθの間隔に合致あるいは極力合致する縦スキャンデータが取得されるようにスキャンデータのサンプリングが行われる。
【0083】
こうして、Δθの間隔から外れる縦スキャンラインの点群データの取得を行わない処理が実行される。この処理は、点群データ作成部209において行われる。
【符号の説明】
【0084】
200…レーザースキャン装置、211…三脚、212…ベース部、213…水平回転部、214…鉛直回転部、215…光学部、216…カメラ。