(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117550
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】端子圧着装置
(51)【国際特許分類】
H01R 43/048 20060101AFI20230817BHJP
B21F 15/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
B21F15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020170
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115142
【氏名又は名称】ユニオンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】三井 英明
(72)【発明者】
【氏名】石黒 裕幸
【テーマコード(参考)】
4E070
5E063
【Fターム(参考)】
4E070AA04
4E070AB15
4E070AC01
4E070BA03
4E070BA21
5E063CB13
5E063CC04
5E063XA01
(57)【要約】
【課題】シャンクに係合しているラムボルトを取り外すときにシャンクの落下を容易かつ確実に防止することができる端子圧着装置を提供する。
【解決手段】本体部10に設けられたシャンク支持部材43と、レバー部材30にノックピン32で枢結されたシャンク保持部材31と、を有し、シャンク保持部材31はノックピン32を軸として水平方向に揺動可能であり、シャンク保持部材31がシャンク支持部材43の設置位置まで揺動したときにシャンク支持部材43によってシャンク保持部材33を支持することで、シャンク20の下方向への移動を阻止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
圧着機のラムボルトと係合し、前記ラムボルトの上下方向の移動に伴って上下方向へ移動するシャンクと、
前記シャンクの側面から水平方向に突出した水平突出部と、
前記シャンクの下端部に設けられた上刃と、
前記本体部の基台側において前記上刃に対向する位置に設置された下刃と、を備え、前記下刃の位置に配置された端子および電線を、前記シャンクの下方向への移動に伴って下降する前記上刃によって圧着する端子圧着装置であって、
前記本体部に設けられたシャンク支持部材と、
前記水平突出部にピンで枢結された長尺棒状のシャンク保持部材と、を有し、
前記シャンク保持部材は前記ピンを軸として水平方向に揺動可能であり、前記シャンク保持部材が前記シャンク支持部材の設置位置まで揺動したときに前記シャンク支持部材によって前記シャンク保持部材を支持することで、前記シャンクの下方向への移動を阻止することを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
前記ピンは、前記シャンク保持部材の一方端と他方端との間に設けられ、
前記水平突出部は、前記シャンク保持部材の一方端側が前記シャンク支持部材の設置位置の方向へ揺動するよう付勢するバネを備え、
前記ラムボルトが前記シャンクと係合しているときは、前記ラムボルトの係合凸部が前記シャンク保持部材の他方端側と当接して前記バネの付勢による前記シャンク保持部材の他方端側の揺動を阻止することで、前記シャンク保持部材の一方端側が前記シャンク支持部材の設置位置の方向へ揺動するのを阻止し、
前記ラムボルトが前記シャンクから離れているときは、前記バネの付勢によって前記シャンク保持部材の一方端側が前記シャンク支持部材の設置位置の方向へ揺動し、前記シャンク支持部材によって前記シャンク保持部材を支持することを特徴とする請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
前記シャンク保持部材の他方端において、前記ラムボルトの係合凸部との当接面が傾斜しており、
前記ラムボルトが前記シャンクと係合するときに、前記ラムボルトの係合凸部が前記当接面と当接することによって前記バネの付勢に抗して前記シャンク保持部材の他方端側を揺動させ、前記シャンク保持部材を前記シャンク支持部材の設置位置から離れる方向に揺動させることを特徴とする請求項2に記載の端子圧着装置。
【請求項4】
前記水平突出部は、前記シャンクが上下方向に一往復するごとに、帯状の端子キャリアに一定間隔で連続的に形成された端子を1つずつ前記下刃の位置まで搬送する端子搬送機構を作動させるレバー部材であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の端子圧着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に端子を圧着する端子圧着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線に端子を圧着する端子圧着装置の中には、例えば、特許文献1に開示されているように、圧着機が有するラムボルトと係合するシャンクと、本体部においてシャンクの下端部に設けられた上刃に対応する位置に配置された下刃とを備えたものがある。このような構成の端子圧着装置は、ラムボルトの上下方向の移動に伴ってシャンクが上下方向に移動し、下降するシャンクの上刃によって電線と端子を下刃に押し付けることによって端子を電線に圧着している。
【0003】
特許文献1に開示されている端子圧着装置では、シャンクの上部に水平方向に延びる係合溝を形成し、この係合溝にラムボルトの係合突部を挿入することでラムボルトとシャンクとを係合させている。また、上刃と下刃を交換するためにラムボルトをシャンクから取り外す場合、シャンクが落下して上刃または下刃を破損させないようにするため、シャンクの落下防止機構が設けられている。この落下防止機構は、シャンクの側方に固定された水平ガイドに水平方向に移動自在に設けられた棒状のアームと、このアームから下方へ突出する突出棒と、上述したシャンクの係合溝内へアームを突出させるように付勢するスプリングとによって構成されている。
【0004】
上述した落下防止機構は、ラムボルトの係合突部がシャンクの係合溝内に挿入されていない状態においては、スプリングによってアームが係合溝内に挿入される。これにより、アームから下方へ突出する突出棒がフレームの案内ガイドに当接してアーム(ひいては水平ガイドおよびシャンク)の下降が阻止される。一方、ラムボルトの係合突部がシャンクの係合溝内に挿入されたときは、この係合凸部によってアームがスプリングの付勢に抗して係合溝から外へ押し出される。これにより、アームから下方へ突出する突出棒の位置が案内ガイドの位置からずれて、突出棒が案内ガイドに当接しなくなり、アーム(ひいては水平ガイドおよびシャンク)の下降が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の端子圧着装置は、水平ガイドにアームをスライド移動させるための溝を設け、シャンクには係合溝へ連通する連通孔を設けており、これらの溝や連通孔を通してアームをスプリングの付勢によって水平ガイドからシャンクの係合溝内へ突出(水平移動)させている。このような構成において、例えばアームの可動方向に対してスプリングの付勢の向きがずれた場合、アームが水平ガイドの溝や連通孔の内側と擦れるなどして水平移動の抵抗が大きくなり、アームがスムーズに水平移動できなくなる虞がある。また、上述した溝や連通孔の中でアームが拗れた場合、シャンクの係合溝内へアームを十分に突出することができず、シャンクの落下を防止できなくなる虞が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、シャンクに係合しているラムボルトを取り外すときにシャンクの落下を容易かつ確実に防止することができる端子圧着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的達成のため、本発明に係る端子圧着装置は、本体部と、圧着機のラムボルトと係合し、前記ラムボルトの上下方向の移動に伴って上下方向へ移動するシャンクと、前記シャンクの側面から水平方向に突出した水平突出部(例えば、実施形態におけるレバー部材30)と、前記シャンクの下端部に設けられた上刃と、前記本体部の基台側において前記上刃に対向する位置に設置された下刃と、を備え、前記下刃の位置に配置された端子および電線を、前記シャンクの下方向への移動に伴って下降する前記上刃によって圧着する端子圧着装置であって、前記本体部に設けられたシャンク支持部材(例えば、取付部材44および支持ポスト45)と、前記水平突出部にピン(例えば、実施形態におけるノックピン32)で枢結された長尺棒状のシャンク保持部材と、を有し、前記シャンク保持部材は前記ピンを軸として水平方向に揺動可能であり、前記シャンク保持部材が前記シャンク支持部材の設置位置まで揺動したときに前記シャンク支持部材によって前記シャンク保持部材を支持することで、前記シャンクの下方向への移動を阻止する。
【0009】
上述の端子圧着装置において、前記ピンは、前記シャンク保持部材の一方端と他方端との間に設けられ、前記水平突出部は、前記シャンク保持部材の一方端側が前記シャンク支持部材の設置位置の方向へ揺動するよう付勢するバネを備え、前記ラムボルトが前記シャンクと係合しているときは、前記ラムボルトの係合凸部が前記シャンク保持部材の他方端側と当接して前記バネの付勢による前記シャンク保持部材の他方端側の揺動を阻止することで、前記シャンク保持部材の一方端側が前記シャンク支持部材の設置位置の方向へ揺動するのを阻止し、前記ラムボルトが前記シャンクから離れているときは、前記バネの付勢によって前記シャンク保持部材の一方端側が前記シャンク支持部材の設置位置の方向へ揺動し、前記シャンク支持部材によって前記シャンク保持部材を支持することが好ましい。
【0010】
上述の端子圧着装置において、前記シャンク保持部材の他方端において、前記ラムボルトの係合凸部との当接面が傾斜しており、前記ラムボルトが前記シャンクと係合するときに、前記ラムボルトの係合凸部が前記当接面と当接することによって前記バネの付勢に抗して前記シャンク保持部材の他方端側を揺動させ、前記シャンク保持部材を前記シャンク支持部材の設置位置から離れる方向に揺動させることが好ましい。
【0011】
上述の端子圧着装置において、前記水平突出部は、前記シャンクが上下方向に一往復するごとに、帯状の端子キャリア(例えば、実施形態における端子キャリア140)に一定間隔で連続的に形成された端子(例えば、実施形態における端子130)を1つずつ前記下刃の位置まで搬送する端子搬送機構(例えば、実施形態におけるフィードアーム50、送り爪52、第1送り爪保持部材53、第2送り爪保持部材55)を作動させるレバー部材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本体部と、圧着機のラムボルトと係合し、ラムボルトの上下方向の移動に伴って上下方向へ移動するシャンクと、シャンクの側面から水平方向に突出した水平突出部と、シャンクの下端部に設けられた上刃と、本体部の基台側において上刃に対向する位置に設置された下刃と、を備え、下刃の位置に配置された端子および電線を、シャンクの下方向への移動に伴って下降する上刃によって圧着する端子圧着装置において、本体部に設けられたシャンク支持部材と、水平突出部にピンで枢結された長尺棒状のシャンク保持部材と、を有し、シャンク保持部材はピンを軸として水平方向に揺動可能であり、シャンク保持部材がシャンク支持部材の設置位置まで揺動したときにシャンク支持部材によってシャンク保持部材を支持することで、シャンクの下方向への移動を阻止する。これにより、シャンクからラムボルトを取り外す場合は、水平突出部に枢結されたシャンク保持部材をシャンク支持部材の設置位置まで揺動させることでシャンク保持部材がシャンク支
持部材によって支持されるので、シャンク保持部材の動きが拗れにくく、揺動に対する抵抗が生じにくいため、ラムボルトを外す際にシャンクの落下を容易かつ確実に防ぐことができる。
【0013】
また、上述の端子圧着装置において、ピンは、シャンク保持部材の一方端と他方端との間に設けられ、水平突出部は、シャンク保持部材の一方端側がシャンク支持部材の設置位置の方向へ揺動するよう付勢するバネを備え、ラムボルトがシャンクと係合しているときは、ラムボルトの係合凸部がシャンク保持部材の他方端側と当接してバネの付勢によるシャンク保持部材の他方端側の揺動を阻止することで、シャンク保持部材の一方端側がシャンク支持部材の設置位置の方向へ揺動するのを阻止し、ラムボルトがシャンクから離れているときは、バネの付勢によってシャンク保持部材の一方端側がシャンク支持部材の設置位置の方向へ揺動し、シャンク支持部材によってシャンク保持部材を支持することが好ましい。これにより、シャンクからラムボルトを外すと、バネの付勢によってシャンク保持部材がシャンク支持部材に支持される位置まで揺動するので、シャンクの落下を容易かつ確実に防ぐことができる。
【0014】
また、上述の端子圧着装置において、シャンク保持部材の他方端において、ラムボルトの係合凸部との当接面が傾斜しており、ラムボルトがシャンクと係合するときに、ラムボルトの係合凸部が当接面と当接することによってバネの付勢に抗してシャンク保持部材の他方端側を揺動させ、シャンク保持部材をシャンク支持部材の設置位置から離れる方向に揺動させることが好ましい。これにより、シャンクにラムボルトを係合させることによってシャンク保持部材の位置がシャンク支持部材の設置位置からずらされてシャンクが上下方向へ移動自在となり、端子と電線の圧着が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る端子圧着装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】上記端子圧着装置のシャンクを本体部から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】上記端子圧着装置によって電線に圧着される端子の外観を示す図であり、(A)は単独の端子を示す平面図、(B)は複数の端子が端子キャリアに形成されている状態を示す平面図である。
【
図4】上記端子圧着装置における各部の動きを説明するための斜視図である。
【
図5】上記端子圧着装置のシャンクとラムボルトとの係合に応じたシャンク保持部材の位置を示す平面図であり、(A)はシャンクからラムボルトが離れているときのシャンク保持部材の位置を示す平面図、(B)はシャンクとラムボルトとが係合しているときのシャンク保持部材の位置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る端子圧着装置1の外観を示す斜視図であり、
図2は端子圧着装置1の本体部からシャンクを取り外した状態を示す斜視図である。なお、
図1および
図2において、同一の構成には同じ符号を付している。また、
図1および
図2を参照する説明において、前後左右方向および上下方向について言及するときは、
図1に示す矢印の向きに従う。また、左右方向を「横方向」、上下方向を「縦方向」ともいう。
【0017】
端子圧着装置1は、
図1に示すように各種部品が取り付けられる本体部10と、外部の圧着機(図示略)が有するラムボルト100と係合して圧着位置CPに配置された端子と電線とを圧着するシャンク20とを備えている。シャンク20の上部には、左右方向かつ水平に延びる係合溝20aが形成され、シャンク20の上面には係合溝20aに連通する開口部20bが形成されている。これにより、シャンク20の上部において、ラムボルト
100の係合凸部100aをシャンク20の右側面から係合溝20aへ挿入し、ラムボルト100の係合凹部100bが開口部20bの縁に突き当たるまでラムボルト100を左方向へ押し込むことでラムボルト100とシャンク20とを係合させることができる。係合溝20aはシャンク20の上部において左右方向に貫通しており、シャンク20の左側面には係合溝20aの開口20c(係合溝開口20cともいう)が形成されている。
【0018】
図2に示すように、シャンク20の左側面には、後述する端子搬送機構を作動させるためのレバー部材30がボルトBTによって固定されている。レバー部材30の前面には、シャンク保持部材31を収容するための収容溝30aが形成されている。シャンク保持部材31は長尺棒状であり、シャンク20が上限位置(後述する)まで持ち上げられた状態でラムボルト100を取り外したときにシャンク20を保持する部材である。シャンク保持部材31は、ノックピン32によって水平方向へ揺動自在にレバー部材30に枢結されており、収容溝30aの内部には、シャンク保持部材31の一方端側をレバー部材20の前面から離れる方向へ付勢する圧縮コイルバネ33が設けられている。これにより、シャンク20からラムボルト100を取り外すと、シャンク保持部材31が後述するシャンク支持部材40の設置位置に向かって揺動し、シャンク保持部材31がシャンク支持部材40によって支持されることになる。シャンク保持部材31の他方端側は、レバー部材30をシャンク20に固定する際に、シャンク20の係合溝開口20cから係合溝20a内へ挿入される。レバー部材30の下側には左方向に突出する突出部30bが形成されており、この突出部30bには後述する端子搬送機構と係合するためのカムフォロアー34がナットNTにより固定されている。
【0019】
シャンク20の前面には後述する端子キャリアから端子を切り離すためのカットパンチ21が取り付けられている。シャンク20の下部には、保持用バネ22によって下方へ付勢されている電線保持部23が設けられており、これにより電線に端子を圧着する際に電線が押さえ付けられる。電線保持部23の後方には、端子を電線に圧着するための上刃24が設けられている。ここで、
図3(A)を参照して電線に圧着される端子の形状について説明する。
図3(A)において、電線に圧着される端子130は、相手側の端子(図示略)と嵌合して電気的に接続される電気接続部131と、電線に圧着される圧着部132とを有している。圧着部132は、電線の芯線に圧着される芯線圧着部133と、電線の芯線を絶縁体によって被覆する被覆線に圧着される被覆体圧着部134とによって構成されている。
【0020】
上刃24は、被覆線圧着上刃25と芯線圧着上刃26とによって構成されている。被覆線圧着上刃25は、端子130の被覆線圧着部134を電線の被覆線に圧着するための上刃であり、芯線圧着上刃26の前方に配置されている。芯線圧着上刃26は、端子130の芯線圧着部133を電線の芯線に圧着するための上刃である。上刃24の後方には、電線に端子130を圧着する際に、端子130が動かないように電気接続部131を押さえ付ける端子保持部27が設けられている。
【0021】
シャンク20は、
図2に示すように本体部10に形成されているシャンク可動溝10aに挿入され、係合したラムボルト100の上下方向への往復移動に伴ってシャンク可動溝10a内で上下動する。シャンク可動溝10aは、左右および後方の3つの壁面を、前方が開放される「コ」字状に形成したものである。この左右の壁面の前方端面には、シャンク可動溝10a内のシャンク20が前方へ逸脱しないように押さえるための左カバー41Lおよび右カバー41Rがそれぞれ取り付けられている。
【0022】
シャンク可動溝10aを形成する左側壁には、シャンク20に固定されたレバー部材30が上下方向へ移動可能になるように、上端面から縦方向に延びるレバー可動溝10bが形成されている。また、シャンク可動溝10aを形成する左側壁の上端面において、レバ
ー可動溝10bの手前側には、シャンク保持部材31を支持するためのシャンク支持部材43が取り付けられている。シャンク支持部材43は、取付部材44と支持ポスト45とによって構成されている。取付部材44はシャンク可動溝10aを形成する左側壁の上方端面に固定され、金属製の支持ポスト45は取付部材44の上面に取り付けられる。これにより、
図1に示すようにシャンク保持部材31がシャンク支持部材43の設置位置まで揺動しているときは、シャンク保持部材31の下面がシャンク支持部材43の上端面に当接し、シャンク支持部材43によって支持されることで、レバー部材30およびシャンク20の下方への移動が阻止される。
【0023】
本体部10において、シャンク可動溝10aの左側にはフィードアーム50を取り付けるためのフィードアーム取付部10cが、シャンク可動溝10aと一体的に形成されている。フィードアーム50には屈曲した長穴のフィードカム揺動口50aが形成されており、フィードアーム50の上方端はフィードアームピン51によってフィードアーム取付部10cに揺動自在に枢結されている。なお、フィードカム揺動口50aには
図2に示したカムフォロアー34が挿入される。フィードアーム50の下方端には後述する送り爪52を保持する第1送り爪保持部材53が取り付けられている。第1送り爪保持部材53には送り爪52によって端子130を圧着位置CPへ送る搬送量を調整するための搬送量調整ダイアル54が設けられている。
【0024】
第1送り爪保持部材53の前面側下部には第2送り爪保持部材55が取り付けられており、第2送り爪保持部材55には送り爪52が取り付けられている。また、第2送り爪保持部材55には送り爪52の前後方向における位置を調整するための前後調整ねじ56が設けられている。ここで、フィードアーム50、第1送り爪保持部材53、第2送り爪保持部材55および送り爪52によって前述した端子搬送子機構が構成され、
図2に示したカムフォロアー34をフィードカム揺動口50aへ挿入することで、カムフォロアー34が端子搬送子機構と係合することになる。
【0025】
本体部10の基台部10dには、
図3(A)に示した端子130が配置される端子ガイド部60が設けられている。ここで、端子ガイド部60に配置される端子130の形態について
図3(B)を参照して説明する。端子圧着装置1によって圧着される端子130は、
図3(B)に示すように、帯状の端子キャリア140に一定間隔で連続的に形成されている。端子キャリア140に形成された各端子130は、その被覆体圧着部134が端子取付片141と一体に繋がるように端子キャリア140に形成されている。また、端子キャリア140には、端子キャリア140を移動させる際に送り爪52と係合する複数の係合孔142,143が所定間隔を置いて形成されている。このように、端子ガイド部60には、端子キャリア140に一定間隔で連続的に形成された端子130が配置される。
【0026】
また、基台部10dには、圧着位置CPにおいて上刃24に対向する位置に下刃61が配置されている。下刃61は、上下方向に移動可能に設けられており、かつ、図示せぬバネによって上方向に付勢されている。また、下刃61は被覆線圧着下刃62と芯線圧着下刃63とによって構成され、被覆線圧着下刃62は、被覆線圧着上刃25と対向する位置に配置され、芯線圧着下刃63は、芯線圧着上刃26と対向する位置に配置されている。これにより、圧着位置CPに配置された端子および電線が上刃24と下刃61とによって挟まれつつ圧力が加えられることで端子が電線に圧着される。圧着位置CPの右側には、端子が圧着された電線を端子圧着装置1から排出するための切片シュート64が設けられている。
【0027】
次に
図4を参照して端子圧着装置1により電線と端子との圧着を行う際の各部の動きについて説明する。なお、
図4において、
図1および
図2に示した各部と同一の構成ついては同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
図4は
図1に示した端子圧着装置1の斜
視図において、ラムボルト100がシャンク20の上部に係合されている状態を示している。この状態では、シャンク保持部材31は圧縮コイルバネ33の付勢に抗してレバー部材30に形成された収容溝30a(
図1および
図2参照)内へ揺動される(詳しくは後述する)。これにより、シャンク20およびレバー部材30は上下方向へ移動可能となる。
【0028】
また、
図4に示すシャンク20の位置は上限位置になっている。ここで、上限位置とはカムフォロアー34がフィードカム揺動口50aの上方端に達する位置をいう。これに対して、下限位置とはカムフォロアー34がフィードカム揺動口50aの下方端に達する位置をいう。ラムボルト100は上限位置と下限位置との間を矢印Aの方向に往復移動する。シャンク20の位置が上限位置にあるときは、端子キャリア140(
図3(B)参照)と繋がった状態の端子130が圧着位置CPに配置されており、かつ、矢印Bの方向から電線が挿入されて、当該電線の芯線部分と被覆線部分とが、それぞれ端子130の芯線圧着部133と被覆体圧着部134(
図3(A)参照)とに配置されている。
【0029】
ラムボルト100が上限位置から下方向へ移動を開始すると、これに伴ってシャンク20およびレバー部材30は、それぞれシャンク可動溝10a(
図2参照)およびレバー可動溝10b内を下方向へ移動する。レバー部材30の下降によって突出部30aに取り付けられたカムフォロアー34(
図2参照)もフィードカム揺動口50a内を下降していくが、このときフィードカム揺動口50aの縦方向における形状が屈曲していることから、フィードアーム50(ひいては送り爪52)はフィードアームピン51を軸に矢印Cの方向へ揺動する。
【0030】
ラムボルト100の下方向への移動に伴ってシャンク20も下降していき、ラムボルト100が下限位置に達すると、
図2に示した電線保持部23と端子保持部27によって電線と電気接続部131(
図3(A)参照)が保持され、上刃24と下刃61(
図2参照)によって圧着位置CPに配置された端子130が電線に圧着される。また、圧着された端子130と電線はカットパンチ21によって下刃61とともに押し下げられ、基台部10d側に設けられているスライドカッター(図示略)によって端子130が端子取付片141(
図3(B)参照)から切り離される。下限位置に達したラムボルト100は上方向への移動に転じ、その後シャンク20とともに上限位置まで上昇していく。この上昇の過程で上刃24に挟まって持ち上がった圧着後の端子および電線は、ストリッパー42に当たって上刃24から落とされ、切片シュート64上を
図4中、矢印Dの方向へと転落していく。
【0031】
また、シャンク20の上昇に伴ってレバー部材30も上昇し、これによりフィードカム揺動口50a内のカムフォロアー34が上方向へ移動することで、フィードアーム50は矢印Eの方向へ揺動する。この揺動の過程で送り爪52が端子キャリア140に形成された係合孔142,143と係合して、端子ガイド部60に配置された端子キャリア140を矢印Fの方向へ移動させて、次に圧着する端子130を圧着位置CPまで搬送する。
【0032】
次に
図5を参照して、シャンク20をラムボルト100から離したときのシャンク保持部材31の位置と、シャンク20をラムボルト100に係合させたときのシャンク保持部材31の位置とについて説明する。なお、
図5において、
図1および
図2に示した各部と同一の構成ついては同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
図5は、端子圧着装置1の平面図であり、
図5を参照した説明において、前後左右方向について言及するときは、
図5に示す矢印の向きに従う。また、
図5(A)は、ラムボルト100がシャンク20から離れた状態の端子圧着装置1の平面図であり、
図5(B)は、ラムボルト100とシャンク20とが係合している状態の端子圧着装置1の平面図である。
【0033】
図5(A)に示すように、ラムボルト100がシャンク20から離れた状態では、シャ
ンク保持部材31の一方端側(ノックピン32よりも左側)が圧縮コイルバネ33の付勢により、ノックピン32を軸にして前方かつ支持ポスト45の位置まで揺動される。これにより、ラムボルト100が上限位置にあるときにラムボルト100をシャンク20から外すと、
図5(A)に示すようにシャンク保持部材31の一方端側の下面が支持ポスト45の上端面に当接し、レバー部材30およびシャンク20の下方への移動がシャンク支持部材43(すなわち固定部材44および支持ポスト45)によって阻止される。したがって、容易かつ確実にシャンク20の落下を防ぐことができる。
【0034】
また、シャンク保持部材31の他方端側(ノックピン32よりも右側)において、ラムボルト100の係合凸部100aの側面と当接する当接面CSは、他方端からノックピン32の位置へ向かうにつれて滑らかな曲線を描く傾斜面になっている。これにより、ラムボルト100の係合凸部100aをシャンク20の係合溝20aへ挿入し、ラムボルト100の係合凹部100bを開口部20bの位置に合わせてラムボルト100を右方向から左方向へ移動させていくと、やがて係合凸部100aの側面がシャンク保持部材31の当接面CSに当たる。この状態でさらにラムボルト100を左方向へ移動させると、ノックピン32を軸として圧縮コイルバネ33の付勢に抗してシャンク保持部材31を収容溝30aの方向へ揺動させていく。
【0035】
これにより、ラムボルト100が上限位置にある状態で、ラムボルト100をシャンク20に係合させると、シャンク保持部材31の他方端側がラムボルト100の係合凸部100aによって揺動され、
図5(B)に示すようにシャンク保持部材31の一方端側が支持ポスト45の位置から外れることになる。したがって、レバー部材30およびシャンク20の下方への移動が可能となり、ラムボルト100の上下方向に往復移動に応じて端子および電線の圧着が可能となる。
【0036】
なお、シャンク保持部材31の他方端における当接面CSは曲線でなくてもよく、例えば直線的な傾斜であってもよい。また、シャンク保持部材31の他方端に当接面CSを設けず、かつ、圧縮コイルバネ33を設けなくてもよい。この場合、ラムボルト100をシャンク20から取り外すときは、作業者の手作業によってシャンク保持部材33を収容溝30aから支持ポスト45の設置位置まで揺動させることでシャンク20の落下を防ぐことなる。このとき、たとえば
図5(B)に示すように、シャンク保持部材33の一方の先端部TPをレバー部材30の側面SFから突出するように構成することで、作業者の指が掛けやすくなり収容溝30aからシャンク保持部材33を容易に引き出すことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 端子圧着装置
10 本体部
10a シャンク可動溝
10b レバー可動溝
10d 基台部
20 シャンク
20a 係合溝
20b 開口部
24 上刃
25 被覆線圧着上刃
26 芯線圧着上刃
30 レバー部材
31 シャンク保持部材
32 ノックピン
33 圧縮コイルバネ
43 シャンク支持部材
44 取付部材
45 支持ポスト
50 フィードアーム
50a フィードアーム揺動口
51 フィードアームピン
52 送り爪
53 第1送り爪保持部材
55 第2送り爪保持部材
100 ラムボルト
100a 係合凸部
100b 係合凹部