(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117556
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】パケットロス検出システムおよびパケットロス検出方法
(51)【国際特許分類】
H04L 43/0829 20220101AFI20230817BHJP
H04L 65/80 20220101ALI20230817BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H04L43/0829
H04L65/80
H04M11/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020180
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 吉祐
【テーマコード(参考)】
5K201
【Fターム(参考)】
5K201AA01
5K201CA02
5K201CD10
5K201EA05
5K201FA02
(57)【要約】
【課題】ネットワークを介して通話を行う際、開始時または終話時のパケット損失を検出することができるパケットロス検出システムおよびパケットロス検出方法を得る。
【解決手段】音声データを含むパケットを、ネットワークを介して送受信するネットワーク通信部と、音声信号をパケットに変換し、音声データを音声信号に変換して出力する音声通信部と、ネットワークから受信したパケットである受信パケットから音声データを抽出して音声通信部に送信し、音声通信部から受信するパケットを送信パケットとしてネットワークに送信する送受信部と、受信パケットの損失の有無を判定する判定部とを有し、送受信部は送信パケット数と受信パケット数とを抽出し、判定部は、送信パケット数と受信パケット数とを比較し、受信パケット数が送信パケット数よりも小さい場合、受信パケットの損失があると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声データを含むパケットを、ネットワークを介して通信先と送受信するネットワーク通信部と、
入力される音声信号を前記パケットに変換し、受信した音声データを音声信号に変換して出力する音声通信部と、
前記ネットワークから前記ネットワーク通信部によって受信された前記パケットである受信パケットから前記音声データを抽出して前記音声通信部に送信し、前記音声通信部から受信する前記パケットを送信パケットとして前記ネットワーク通信部を介して前記ネットワークに送信する送受信部と、
前記受信パケットの損失の有無を判定する判定部と、を有し、
前記送受信部は、前記送信パケットの数である送信パケット数と前記受信パケットの数である受信パケット数とを抽出し、
前記判定部は、前記送受信部が抽出した前記送信パケット数と前記受信パケット数とを比較し、前記受信パケット数が前記送信パケット数よりも小さい場合、前記受信パケットの損失があると判定する、
パケットロス検出システム。
【請求項2】
前記ネットワーク通信部によって受信される前記パケットには、送信された順番を示す、連続したシーケンス番号が付されており、
前記送受信部は、前記受信パケットの前記シーケンス番号を基に、欠落したシーケンス番号に対応する前記受信パケットの数である受信パケット損失数を抽出し、
前記判定部は、前記受信パケット数と前記受信パケット損失数との合計が前記送信パケット数よりも小さい場合、前記受信パケットの前後で前記パケットの損失があると判定する、
請求項1に記載のパケットロス検出システム。
【請求項3】
ネットワークを介して送受信される、音声データを含むパケットの損失を検出するパケットロス検出方法であって、
前記ネットワークを介して受信した前記パケットである受信パケットから前記音声データを抽出し、入力される前記音声データを含む前記パケットを送信パケットとして前記ネットワークに送信するステップと、
前記送信パケットの数である送信パケット数と前記受信パケットの数である受信パケット数とを抽出するステップと、
抽出された前記送信パケット数と前記受信パケット数とを比較し、前記受信パケット数が前記送信パケット数よりも小さい場合、前記受信パケットの損失があると判定するステップと、
を有するパケットロス検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して送受信されるパケットの損失を検出するパケットロス検出システムおよびパケットロス検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及に伴い、インターネット上でVoIP(Voice over Internet Protocol)技術を利用してIP電話による通話を可能にしたIP電話サービスが提供されるようになった。IP電話は、主にSIP(Session Initiation Protocol)を用いて呼制御が実現される。IP電話では、音声データにRTP(Real-time Transport Protocol)ヘッダが付与されたパケットであるRTPパケットが、インターネットを介して送受信される。
【0003】
しかし、IP電話は、インターネット上の通信経路の障害または通信機器の障害などによって、RTPパケットが通信途中で損失してしまうことがある。IP電話サービスにおいて、RTPパケットが通信途中で損失するパケット損失(パケットロス)が発生すると、音声の途切れが発生し、顧客へのサービス品質に影響が出る。
【0004】
そのため、RTPパケットを監視して音声途切れの発生を検出する機能を通信機器に備えたものがある。IP電話機において、パケット損失を検出すると、損失したパケットに含まれる音声データを補完する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたIP電話装置は、パケット損失の発生を、受信するパケットの順序を示すシーケンス番号に基づいて検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたIP電話装置は、通話の途中で発生するパケット損失を検出できるが、通話の開始時または終話時のパケット損失を検出できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るパケットロス検出システムは、音声データを含むパケットを、ネットワークを介して通信先と送受信するネットワーク通信部と、入力される音声信号を前記パケットに変換し、受信した音声データを音声信号に変換して出力する音声通信部と、前記ネットワークから前記ネットワーク通信部によって受信された前記パケットである受信パケットから前記音声データを抽出して前記音声通信部に送信し、前記音声通信部から受信する前記パケットを送信パケットとして前記ネットワーク通信部を介して前記ネットワークに送信する送受信部と、前記受信パケットの損失の有無を判定する判定部と、を有し、前記送受信部は、前記送信パケットの数である送信パケット数と前記受信パケットの数である受信パケット数とを抽出し、前記判定部は、前記送受信部が抽出した前記送信パケット数と前記受信パケット数とを比較し、前記受信パケット数が前記送信パケット数よりも小さい場合、前記受信パケットの損失があると判定するものである。
【0008】
本発明に係るパケットロス検出方法は、ネットワークを介して送受信される、音声データを含むパケットの損失を検出するパケットロス検出方法であって、前記ネットワークを介して受信した前記パケットである受信パケットから前記音声データを抽出し、入力される前記音声データを含む前記パケットを送信パケットとして前記ネットワークに送信するステップと、前記送信パケットの数である送信パケット数と前記受信パケットの数である受信パケット数とを抽出するステップと、抽出された前記送信パケット数と前記受信パケット数とを比較し、前記受信パケット数が前記送信パケット数よりも小さい場合、前記受信パケットの損失があると判定するステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受信パケット数と送信パケット数とを比較することで、パケット損失の有無が判定される。そのため、通話の途中で発生するパケット損失だけでなく、通話の開始時および通話終了時に発生するパケット損失を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1のパケットロス検出システムを含む通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示したIP通信網を介して送受信されるパケットの一構成例を示す図である。
【
図3】
図2に示すパケットに付与されたRTPヘッダの一構成例を示す図である。
【
図4】
図1に示したVoIP-GW11の一構成例を示すブロック図である。
【
図5】パケット損失がない場合の複数の受信パケットのシーケンス番号の一例を示す図である。
【
図6】途中でパケット損失が発生した場合の複数の受信パケットのシーケンス番号の一例を示す図である。
【
図7】通話開始時にパケット損失が発生した場合のシーケンス番号の一例を示す図である。
【
図8】通話終了の直前にパケット損失が発生した場合のシーケンス番号の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1におけるVoIP-GWの動作手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図10】実施の形態2におけるVoIP-GWの動作手順の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態1のパケットロス検出システムを含む通信システムの構成を説明する。
図1は、実施の形態1のパケットロス検出システムを含む通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【0012】
通信システム10は、VoIP-GW11と、VoIP-GW12と、電話機21と、電話機22と、SIPサーバ31とを有する。VoIP-GW11、VoIP-GW12およびSIPサーバ31は、IP通信網100と接続される。電話機21は、VoIP-GW11を介してIP通信網100と接続される。電話機22は、VoIP-GW12を介してIP通信網100と接続される。電話機22は、電話機21のユーザが電話機21を介して通話する相手が使用する電話機である。
【0013】
IP通信網100は、IP通信を行う複数の通信装置(図示せず)を含み、これら複数の通信装置が有線および無線によって接続されたネットワークである。本実施の形態1においては、VoIP-GW11、VoIP-GW12およびSIPサーバ31が接続されるネットワークがインターネットの場合で説明するが、ネットワークはインターネットに限らない。
【0014】
VoIP-GW11は、SIPによるVoIP機能を備え、電話機21とIP通信網100との間の通信を中継するゲートウェイ装置である。VoIP-GW12は、SIPによるVoIP機能を備え、電話機22とIP通信網100との間の通信を中継する。SIPサーバ31は、IP通信網100において、SIPを用いた呼制御によって、電話機21およびお電話機22間の通話機能を実現させるサーバである。
【0015】
電話機21は、マイク(図示せず)を介して入力される音声をアナログ信号からデジタル信号に変換してVoIP-GW11に送信し、VoIP-GW11から受信する音声信号をデジタル信号からアナログ信号に変換してスピーカ(図示せず)から音声を出力する。電話機22は、マイク(図示せず)を介して入力される音声をアナログ信号からデジタル信号に変換してVoIP-GW12に送信し、VoIP-GW12から受信する音声信号をデジタル信号からアナログ信号に変換してスピーカ(図示せず)から音声を出力する。
【0016】
なお、本実施の形態1においては、VoIP-GW11およびVoIP-GW12を同一の構成として、以下では、VoIP-GW11の構成を詳細に説明し、VoIP-GW12について詳細な説明を省略する。VoIP-GW12は、VoIP-GW11と同一の構成の場合に限らず、VoIP-GW11とは異なる構成であってもよい。
【0017】
次に、VoIP-GW11およびVoIP-GW12との間で、IP通信網100を介して送受信されるパケットの構成を説明する。
図2は、
図1に示したIP通信網を介して送受信されるパケットの一構成例を示す図である。
図3は、
図2に示すパケットに付与されたRTPヘッダの一構成例を示す図である。
【0018】
図2に示すように、パケット50は、音声データにRTPヘッダ、UDP(User Datagram Protocol)ヘッダおよびIPヘッダが付与された構成である。なお、
図2には示していないが、パケット50にエラーチェック用のコードが付与されていてもよい。
【0019】
IPヘッダは、送信先IPアドレスおよび送信元IPアドレスの情報を含む。UDPヘッダは、コネクションレス通信のパケットに付与されるものである。音声通信はリアルタイム性が重視されるため、音声データを含むパケット50には、通信の信頼性を重視するTCP(Transmission Control Protocol)よりもUDPが適用される。UDPヘッダは、送信元ポート番号、送信先ポート番号およびパケットの全長サイズなどのパラメータの情報を含む。
【0020】
RTPヘッダは、音声および映像などリアルタイム通信が必要なデータに付与される。RTPヘッダは、
図3に示すように、送信されるパケットの順番を示すシーケンス番号およびリアルタイム再生を可能にするためのタイムスタンプの情報を含む。RTPヘッダは、これらの情報の他に、バージョン番号(V)、ペイロードタイプ(PT)および同期送信元識別子などのパラメータの情報を含む。ペイロードタイプは、伝送される音声データのコード(符号化)の種類を示す情報である。
【0021】
一般的に、2つの通信装置間で
図2に示したパケット50を、IP通信網100を介して送受信する場合、2つの通信装置の内部において、パケット50の処理は階層化された複数の階層で順に処理される。例えば、複数の階層が最下層のネットワーク層からトランスポート層、セッション層および最上層のアプリケーション層に順に階層化されている場合を考える。
【0022】
2つの通信装置のうち、送信元の通信装置は、はじめにアプリケーション層において、音声信号を分割して音声データを含むパケットを生成する。次に、送信元の通信装置は、セッション層において、音声データのパケットにRTPヘッダを付与する。続いて、送信元の通信装置は、トランスポート層において、RTPヘッダが付与されたパケットにUDPヘッダを付与する。さらに、送信元の通信装置は、ネットワーク層において、UDPヘッダが付与されたパケットにIPヘッダを付与したパケット50を生成する。そして、送信元の通信装置は、生成したパケット50を、IP通信網100を介して送信先の通信装置に送信する。
【0023】
一方、送信先の通信装置は、送信元の通信装置からパケット50を受信すると、ネットワーク層において、IPヘッダの情報を読み出し、パケット50からIPヘッダを外して上位層のトランスポート層の処理を行う。送信先の通信装置は、トランスポート層において、UDPヘッダの情報を読み出し、パケットからUDPヘッダを外して上位層のセッション層の処理を行う。送信先の通信装置は、セッション層において、RTPヘッダの情報を読み出し、パケットからRTPヘッダを外して最上位のアプリケーション層の処理を行う。そして、送信先の通信装置は、アプリケーション層において、パケット50から抽出された音声データを音声信号に変換し、既に音声データから変換処理した音声信号につなげて出力する。
【0024】
このようにして、送信元の通信装置では、音声データが上位層から下位層に順に処理されることでパケット50が生成され、送信先の通信装置では、パケット50が下位層から上位層に順に処理されることで音声データに復元される。以下では、RTPヘッダが付与されたパケット50による通信を、RTP通信と称する。
【0025】
次に、
図1に示したVoIP-GW11の構成を、
図4を参照して説明する。
図4は、
図1に示したVoIP-GW11の一構成例を示すブロック図である。ここでは、主にVoIP-GW11がVoIP-GW12と通信する場合について説明する。
図4に示すようにVoIP-GW11は、IP通信インタフェース1と、IP通信部2と、SIP通信部3と、音声通信部4と、電話インタフェース5と、送受信部6と、音声品質監視部7とを有する。
【0026】
IP通信インタフェース1は、IP通信を行うための通信インタフェースとなるデバイスであり、IP通信網100と接続される。IP通信部2は、SIP通信部3または送受信部6から受け取るパケットを、IP通信インタフェース1を介してIP通信網100に送信する際、パケットにIPヘッダと、UDPヘッダまたはTCPヘッダとを付与して送信する。IP通信部2は、IP通信インタフェース1を介して、IP通信網100からパケット50を受信すると、パケット50のIPヘッダと、UDPヘッダまたはTCPヘッダとを読み出すとともにこれらのヘッダを外してSIP通信部3または送受信部6に渡す。
【0027】
また、IP通信部2は、電話機21および電話機22間の呼制御の際、IP通信インタフェース1を介して、VoIP-GW12またはSIPサーバ31とTCP/IPにしたがってパケットを送受信するIP通信を行う。IP通信部2は、VoIP-GW12とパケット50を送受信する際、IP通信インタフェース1を介して、VoIP-GW12とUDP/IPにしたがってパケット50を送受信するIP通信を行う。IP通信部2は、本発明におけるネットワーク通信部に相当する。
【0028】
SIP通信部3は、IP通信部2を介して、SIPにしたがって通信する。SIP通信部3は、SIPセッションを確立させる際、SIPサーバ31と通信し、音声通話に使用するRTPのパラメータを決定し、決定したパラメータの情報を送受信部6に通知する。また、SIP通信部3は、電話機21および電話機22を介して行われる通話開始時および終話時の呼制御を行う。なお、本実施の形態1においては、電話機21および電話機22間の通信対象が音声の場合で説明するが、ビデオ電話のように映像も通信対象になる場合、SIP通信部3は、映像に使用するRTPのパラメータを決定する。
【0029】
送受信部6は、IP通信網100を介して通信先のVoIP-GW12から受信するパケットである受信パケットからRTPヘッダの情報を読み出し、受信パケットから音声データを抽出して音声通信部4に渡す。また、送受信部6は、音声通信部4から受信する音声データを通信先のVoIP-GW12に送信するパケットである送信パケットに変換する。その際、送受信部6は、SIP通信部3によって決定されたパラメータの情報を書き込んだRTPヘッダを送信パケットに付与する。送受信部6は、電話機21と電話機22との呼制御の開始から終了まで、送信パケットの数である送信パケット数および受信パケットの数である受信パケット数をカウントする。以下では、送信パケット数をCTとし、受信パケット数をCRとする。
【0030】
音声通信部4は、電話インタフェース5から音声信号を受信すると、音声信号を音声データに変換し、音声データを含むパケットを送受信部6に送信する。音声通信部4は、送受信部6からパケットを受け取ると、パケットから音声データを抽出し、抽出した音声データを音声信号に変換して電話インタフェース5に送信する。電話インタフェース5は、電話機21と音声信号を送受信するためのインタフェースとなるデバイスであり、電話機21と接続される。
【0031】
音声品質監視部7は、判定部8を含む。音声品質監視部7は、音声通信部4から音声通話に関連するパケット50の通信に関する統計情報を取得し、音声途切れの発生など、品質に関する問題を検出する。音声品質監視部7は、品質問題を検出すると、検出した品質問題を、ログまたはアラームなどによってユーザに通知する。
【0032】
判定部8は、送受信部6が抽出した送信パケット数CTおよび受信パケット数CRを送受信部6から取得して、送信パケット数CTと受信パケット数CRとが等しいか否かを判定する。判定部8は、受信パケット数CRが送信パケット数CTよりも小さい場合、受信パケットの損失が発生したと判定し、受信パケット数CRが送信パケット数CTと等しい場合、受信パケットの損失が発生していないと判定する。一般的に通話は電話機21のユーザと電話機22のユーザとの双方向で行われるため、RTP通話のデータ通信は送信と受信が同時に行われ、送信パケット数および受信パケット数が同等になるからである。本実施の形態1の場合、電話機21および電話機22を用いてユーザ同士が通話する間、VoIP-GW12からVoIP-GW11に送信されるパケットの数が受信パケット数CRと等しい。
【0033】
ここで、
図4に示したVoIP-GW11のハードウェア構成の一例を説明する。VoIP-GW11は、図に示さないメモリおよびCPU(Central Processing Unit)を有する。メモリが記憶するプログラムをCPUが実行することで、IP通信部2、SIP通信部3、音声通信部4、音声品質監視部7および送受信部6が構成される。または、IP通信部2、SIP通信部3、音声通信部4、音声品質監視部7および送受信部6の一部もしくは全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用回路で構成されてもよい。
【0034】
本実施の形態1においては、本発明のパケットロス損失システムがVoIP-GW11に構成される場合で説明するが、上述したVoIP-GW11の機能の一部が他の装置、例えば、電話機21またはIP通信網100内のルータ等の通信装置(図示せず)に設けられていてもよい。次に、本実施の形態1のVoIP-GW11の動作を説明する前に、比較例のゲートウェイ装置の動作を説明する。
【0035】
ここでは、比較例のゲートウェイ装置(図示せず)が、特許文献1に開示されたIP電話装置のように、パケット損失の発生を、送信されるパケットの順序を示すシーケンス番号に基づいて検出する機能を備えているものとする。この場合、比較例のゲートウェイ装置は、通話の途中で発生するパケット損失を検出できるが、通話の開始時および終話時のパケット損失は検出できない。このことを、具体的に説明する。
【0036】
図2および
図3を参照して説明したように、RTP通信は、リアルタイム性が重視されるため、UDPで行われる。UDPはコネクションレス通信であるため、トランスポート層およびセッション層の処理ではパケット損失を検出できず、これらの階層よりも上位の階層でパケット損失を検出する必要がある。そのため、比較例のゲートウェイ装置は、セッション層において、RTPヘッダに書き込まれたシーケンス番号を監視して、パケット損失を検出する。
【0037】
シーケンス番号は、送信パケット付与される連続した番号であり、パケットの送信毎に順に1つずつ大きい番号が付与される。比較例のゲートウェイ装置は、受信するパケットのシーケンス番号を順に読み出すとき、シーケンス番号が不連続になっていると、パケット損失が発生したことを検出できる。また、比較例のゲートウェイ装置は、不連続のシーケンス番号のパケット数をカウントすることで、どの程度の音声途切れが発生したか確認できる。
【0038】
図5は、パケット損失がない場合の複数の受信パケットのシーケンス番号の一例を示す図である。
図5に示すように、一連の複数の受信パケットのシーケンス番号が連続している。この場合、10個のパケットを受信して、パケット損失がなく、音声の品質に問題がないことがわかる。比較例のゲートウェイ装置は、受信数=10、損失数=0と判定する。
【0039】
図6は、途中でパケット損失が発生した場合の複数の受信パケットのシーケンス番号の一例を示す図である。
図6に示すように、複数の受信パケットのシーケンス番号が連続していない。
図6に示す例においては、途中、シーケンス番号5~7が欠落し、3つのパケットが損失しており、音声に途切れが発生していることがわかる。比較例のゲートウェイ装置は、受信数=10、損失数=3と判定する。
【0040】
しかし、比較例のゲートウェイ装置は、
図6に示すような、シーケンス番号の途中が欠落している場合しか、パケット損失を検出できない。以下に、比較例のゲートウェイ装置が検出できないパケット損失の具体例を2つ説明する。
【0041】
1つ目は、通話開始直後にパケット損失が発生する場合である。
図7は、通話開始時にパケット損失が発生した場合のシーケンス番号の一例を示す図である。シーケンス番号が推測され、なりすまし等の攻撃を受けることを避けるというセキュリティ上の観点から、音声通話の通信開始時の最初のシーケンス番号はランダムになっている。RTPには通信開始時のシーケンス番号をネゴシエーションする仕組みもないので、送信先の通信装置は、シーケンス番号が何番から開始するか、事前に知ることはできない。
【0042】
そのため、通話開始直後にパケット損失が発生した場合、シーケンス番号を見ただけでは、最初に受信したパケットのシーケンス番号が正常な先頭の番号なのか、先頭の番号でないのか見分けがつかないので、パケット損失を検出できない。
図7に示す例は、通話開始後、シーケンス番号1~5の5つのパケットが受信されなかった状態を示す。
図7に示す例の場合、比較例のゲートウェイ装置は、受信数=5、損失数=0と判定してしまう。この場合、比較例のゲートウェイ装置は、損失したパケット数を求めることもできない。
【0043】
2つ目は、通話が終了する際にパケット損失が発生する場合である。
図8は、通話終了の直前にパケット損失が発生した場合のシーケンス番号の一例を示す図である。
図8は、終話直前に、シーケンス番号5~10の6つのパケットが受信されなかった状態を示す。
図8に示す例の場合、パケット損失が発生している状態で通話が終了し、次のシーケンス番号が付されたパケットを受信できないまま通信が切断してしまうため、正常に停止した場合と見分けがつけられない。そのため、比較例のゲートウェイ装置は、受信数=4、損失数=0と判定してしまう。この場合についても、比較例のゲートウェイ装置は、損失したパケット数を求めることもできない。
【0044】
ここまで、比較例のゲートウェイ装置の動作を説明した。次に、本実施の形態1の通信システム10の動作およびVoIP-GW11の動作を説明する。ここでは、電話機21のユーザがオフフックして電話機21から電話機22に対して発信要求を行う場合で説明するが、電話機22から電話機21に対して着信要求を行ってもよい。
図9は、実施の形態1におけるVoIP-GWの動作手順の一例を示すフローチャート図である。
【0045】
電話機21からVoIP-GW11に対して発信要求があると、VoIP-GW11のSIP通信部3は、SIPサーバ31およびVoIP-GW12と呼制御に必要な情報を送受信し、SIPにしたがって、VoIP-GW12とSIPセッションを確立する。その際、SIP通信部3は、SIPサーバ31との間で、通話の音声通信に使用されるRTPの各種パラメータ(送信元IPアドレス、送信元ポート番号、送信先IPアドレスおよび送信先ポート番号)のネゴシエーションも行う。SIP通信部3は、SIPサーバ31との間で決めたRTPのパラメータを送受信部6に通知する。
【0046】
VoIP-GW11とVoIP-GW12との間でRTP通信が可能になると、VoIP-GW11は、電話機21から受信する音声信号をパケット50に変換してVoIP-GW12に送信する。VoIP-GW12は、VoIP-GW11から受信するパケット50を音声信号に変換して電話機22に送信する。VoIP-GW12は、電話機22から受信する音声信号をパケット50に変換してVoIP-GW11に送信する。VoIP-GW11は、VoIP-GW12から受信するパケット50を音声信号に変換して電話機21に送信する。このようにして、電話機21と電話機22との間で音声通話が行われる。その後、電話機21または電話機22のユーザがオンフックすることで、VoIP-GW11とVoIP-GW12との間の呼制御が終了し、音声通話が終了する。
【0047】
電話機21と電話機22とによる音声通話の間、送受信部6は、送信パケット数CTおよび受信パケット数CRのそれぞれをカウントして保持する。音声通話が終了すると、
図9のステップS201において、送受信部6は、送信パケット数CTおよび受信パケット数CRを抽出する。そして、判定部8は、送信パケット数CTおよび受信パケット数CRの情報を送受信部6から取得し、受信パケット数CRが送信パケット数CTより小さいか否かを判定する(ステップS202)。
【0048】
受信パケット数CRが送信パケット数CTと等しい場合、判定部8は、受信パケットの損失がないと判定する(ステップS203)。一方、ステップS202の判定処理の結果、受信パケット数CRが送信パケット数CTより小さい場合、判定部8は、受信パケットの損失があると判定する(ステップS204)。この場合、受信パケットの損失数をCLLとすると、受信パケット損失数CLLを、CLL=CT-CRの式を用いて算出してもよい。
【0049】
音声品質監視部7は、受信パケットの損失があると判定部8によって判定された場合、受信パケット損失数CLLを確認し、ログまたはアラームで電話機21のユーザに、音声途切れが発生したことを通知する。ユーザへの通知方法は、電話機21のスピーカ(図示せず)を介して音声で通知してもよく、電話機21にディスプレイ(図示せず)が設けられている場合、ディスプレイにメッセージを表示して通知してもよい。
【0050】
本実施の形態1のパケットロス検出システムは、IP通信部2と、音声通信部4と、送受信部6と、判定部8とを有する。IP通信部2は、音声データを含むパケット50を、IP通信網100を介して通信先と送受信する。音声通信部4は、電話機21から入力される音声信号を、音声データを含むパケットに変換し、送受信部6から受信した音声データを音声信号に変換して電話機21に出力する。送受信部6は、IP通信網100からIP通信部2によって受信された受信パケットから音声データを抽出して音声通信部4に送信し、音声通信部4から受信するパケットを送信パケットとしてIP通信部2を介してIP通信網100に送信する。判定部8は、受信パケットの損失の有無を判定する。送受信部6は、送信パケットの数である送信パケット数CTと受信パケットの数である受信パケット数CRとを抽出する。判定部8は、送受信部6が抽出した、送信パケット数CTと受信パケット数CRとを比較し、受信パケット数CRが送信パケット数CTよりも小さい場合、受信パケットの損失があると判定する。
【0051】
本実施の形態1によれば、音声品質を監視する際に、受信パケット数CRと送信パケット数CTとを比較することで、パケット損失の有無が判定される。そのため、RTPヘッダに書き込まれたシーケンス番号を用いないでパケット損失の有無を判定できるので、通話の途中で発生するパケット損失だけでなく、通話の開始時および通話終了時に発生するパケット損失を検出することができる。本実施の形態1によれば、既存のプロトコルの範囲で、パケット数の情報を用いて、通話開始時および終話時に発生するパケット損失の検出を実現することができ、特殊な音声データの解析機能を通信装置に実装する必要がない。
【0052】
実施の形態2.
本実施の形態2は、シーケンス番号も利用してパケット損失の発生を検出するものである。本実施の形態2において、実施の形態1と同一の構成に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、本実施の形態2においては、実施の形態1と異なる動作について詳しく説明し、実施の形態1と同様な動作についての詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施の形態2の通信システム10のおけるVoIP-GW11の構成を、
図4を参照して説明する。本実施の形態2においては、送受信部6は、実施の形態1で説明した動作以外に、受信パケットのRTPヘッダのシーケンス番号の情報を読み出し、通話途中で欠落するシーケンス番号を調べる。そして、送受信部6は、欠落したシーケンス番号から、通話途中で受信パケットが損失した数である受信パケット損失数をカウントして保持する。以下では、受信パケット損失数をCLとする。
【0054】
なお、本実施の形態2においても、本発明のパケットロス損失システムがVoIP-GW11に構成される場合で説明するが、VoIP-GW11の機能の一部が他の装置、例えば、電話機21またはIP通信網100内のルータ等の通信装置(図示せず)に設けられていてもよい。
【0055】
次に、本実施の形態2のVoIP-GW11の動作を、
図10を参照して説明する。
図10は、実施の形態2におけるVoIP-GWの動作手順の一例を示すフローチャート図である。本実施の形態2においては、VoIP-GW11、VoIP-GW12およびSIPサーバ31による呼制御は、実施の形態1で説明した制御と同様になるため、その詳細な説明を省略する。
【0056】
電話機21と電話機22とによる音声通話の間、送受信部6は、送信パケット数CTおよび受信パケット数CRのそれぞれをカウントして保持する。また、送受信部6は、受信パケットのシーケンス番号を基に、欠落したシーケンス番号に対応する受信パケット損失数CLをカウントして保持する。音声通話が終了すると、
図10のステップS301において、送受信部6は、送信パケット数CTおよび受信パケット数CRを抽出する。
【0057】
ステップS302において、送受信部6は、受信パケットのシーケンス番号を基に、欠落したシーケンス番号に対応する受信パケット損失数CLを抽出する。そして、判定部8は、送信パケット数CT、受信パケット数CRおよび受信パケット損失数CLの情報を送受信部6から取得する。さらに、判定部8は、受信パケット数CRと受信パケット損失数CLとの和が送信パケット数CTより小さいか否かを判定する(ステップS303)。
【0058】
受信パケット数CRと受信パケット損失数CLとの和が送信パケット数CTと等しい場合、判定部8は、通話開始時および終話時に受信パケットの損失がないと判定する(ステップS304)。一方、ステップS302の判定処理の結果、受信パケット数CRと受信パケット損失数CLとの和が送信パケット数CTより小さい場合、判定部8は、少なくとも通話開始時または終話時に受信パケットの損失があると判定する(ステップS305)。この場合、通話開始時および終話時の一方または両方における受信パケットの損失数をCLLとすると、判定部8は、受信パケット損失数CLLを、CLL=CT-(CR+CL)の式を用いて算出してもよい。
【0059】
音声品質監視部7は、受信パケットの損失があると判定部8によって判定された場合、受信パケット損失数CLおよびCLLを確認し、ログまたはアラームで電話機21のユーザに、音声途切れが発生したことを通知する。ユーザへの通知方法は、電話機21のスピーカ(図示せず)を介して音声で通知してもよく、電話機21にディスプレイ(図示せず)が設けられている場合、ディスプレイにメッセージを表示して通知してもよい。
【0060】
本実施の形態2の効果を説明する。「受信パケット数+通話途中の受信パケット損失数<送信パケット数」の関係であれば、通話の開始時および終話時の一方または両方において、パケットが損失していることになる。従来技術では、通話の途中でのパケット損失を検出できるため、本実施の形態2を適用すれば、パケット損失が通話の途中または通話の開始時もしくは終話時のどのタイミングで発生するかが分かるようになる。電話の経路上にはルータおよびゲートウェイ装置など複数の通信装置があるため、ユーザの申告(通話のどのタイミングで音切れが起きているかの申告)と、各通信装置での検出結果(本実施の形態2の方法を用いて検出した通話の途中または通話の開始時もしくは終話時のいずれにおいてパケット損失が発生したかの検出結果)を比較することで、ユーザ申告に合致するパケット損失がどの通信装置で発生したかを特定するための手掛かりになる。
【0061】
例えば、ユーザが通話の開始時に音声が途切れていると、IP電話サービスを提供するIP電話会社に申告してきたとき、IP電話会社の担当者は、その異常がどの通信装置で発生したのかを特定したいということが考えられる。この場合、複数の通信装置のうち、通話の途中でパケットの損失が検出された通信装置と、通話の開始時または終話時にパケットの損失が検出された通信装置がある場合、ユーザが申告してきた異常は、通話の開始時または終話時にパケットの損失が検出された通信装置に発生したと特定できる。
【0062】
本発明は、上述の実施の形態1および2に限らず、次のような他の利用形態にも適用することができる。
(応用例1)
実施の形態1および2においては、RTP通信を音声通信に用いる場合で説明したが、映像通信に適用して、映像途切れを検出することもできる。
(応用例2)
実施の形態1および2においては、パケット損失の検出を音声途切れの検出とする場合で説明したが、ネットワークの通信品質の検査に適用することもできる。
(応用例3)
実施の形態1および2においては、通信パケット数のカウントを送受信部6が実行する場合で説明したが、パケット高速転送モジュールなどその他の通信機能部が実行してもよい。
(応用例4)
実施の形態1および2においては、RTPによる通信に適用する場合で説明したが、送受信を同時に行う通信であればその他のプロトコルにも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 IP通信インタフェース
2 IP通信部
3 SIP通信部
4 音声通信部
5 電話インタフェース
6 送受信部
7 音声品質監視部
8 判定部
10 通信システム
11 VoIP-GW
12 VoIP-GW
21 電話機
22 電話機
31 SIPサーバ
50 パケット
100 IP通信網