(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117559
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】交換システム、同期方法、主交換機及び同期プログラム
(51)【国際特許分類】
H04M 3/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
H04M3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020186
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲男
【テーマコード(参考)】
5K201
【Fターム(参考)】
5K201AA02
5K201BB04
5K201EA05
5K201EC03
5K201ED02
5K201FB09
(57)【要約】
【課題】主交換機に障害が発生した際の代替運用を円滑に行うことが可能な電話交換システムを提供する。
【解決手段】
1のIPネットワークに接続された1の通信端末群及び1のIPネットワークと特定の接続経路で接続された他のIPネットワークに接続された他の通信端末群の各々の呼接続を行う主交換機と、1のIPネットワークに接続された1の副交換機と、他のIPネットワークに接続された他の副交換機と、を含む。主交換機は、1及び他の副交換機が呼接続を実行する際に、1の通信端末群は1の副交換機に収容され、他の通信端末群は他の副交換機に収容されることを内容とする設定情報を含む同期用ファイルを生成する同期ファイル生成部と、同期用ファイルを送信する送信部と、を有する。1及び他の副交換機は、主交換機から受信した同期用ファイルに基づいて、各々が収容する通信端末についての設定を更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1のIPネットワークに接続されている1の通信端末群及び前記1のIPネットワークと特定の接続経路を介して接続された他のIPネットワークに接続されている他の通信端末群の各々の呼接続を行う主交換機と、
前記1のIPネットワークに接続されて呼接続を行う1の副交換機と、
前記他のIPネットワークに接続されて呼接続を行う他の副交換機と、
を含み、
前記主交換機は、
前記呼接続を実行させるためのプログラムに従って交換動作を行うPBX機能部と、
前記1の副交換機及び前記他の副交換機が前記主交換機に代替して呼接続を実行する際に、前記1の通信端末群は前記1の副交換機に収容され、前記他の通信端末群は前記他の副交換機に収容されることを内容とする設定情報を記憶する記憶部と、
前記設定情報を含む同期用ファイルを生成する同期ファイル生成部と、
前記同期用ファイルを前記1の副交換機及び前記他の副交換機の各々に送信する送信部と、
を有し、
前記1の副交換機及び前記他の副交換機は、前記主交換機から受信した前記同期用ファイルに基づいて、各々が収容する通信端末についての設定を更新することを特徴とする交換システム。
【請求項2】
前記同期用ファイル生成部は、前記設定情報の変更に応じて前記同期ファイルを新たに生成し、
前記送信部は、当該新たに生成された前記同期ファイルを送信することを特徴とする請求項1に記載の交換システム。
【請求項3】
前記同期用ファイルは、前記プログラムを含み、
前記同期用ファイル生成部は、前記プログラムの更新に応じて前記同期ファイルを新たに生成し、
前記送信部は、当該新たに生成された前記同期ファイルを送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の交換システム。
【請求項4】
1のIPネットワークに接続されている1の通信端末群及び前記1のIPネットワークと特定の接続経路を介して接続された他のIPネットワークに接続されている他の通信端末群の各々の呼接続を行う主交換機と、前記1のIPネットワークに接続されて呼接続を行う1の副交換機と、前記他のIPネットワークに接続されて呼接続を行う他の副交換機と、を含む交換システムにおいて実行されるプログラム及び設定データの同期方法であって、
前記主交換機において、
前記1の副交換機及び前記他の副交換機が前記主交換機に代替して呼接続を実行する際に、前記1の通信端末群は前記1の副交換機に収容され、前記他の通信端末群は前記他の副交換機に収容されることを内容とする設定情報を含む同期用ファイルを生成するステップと、
前記同期用ファイルを前記1の副交換機及び前記他の副交換機の各々に送信するステップと、
前記1の副交換機及び前記第他の副交換機において、
前記同期用ファイルを受信するステップと、
受信した前記同期用ファイルに基づいて、各々が収容する通信端末についての設定を更新するステップと、
を含むことを特徴とする同期方法。
【請求項5】
1のIPネットワークに接続されている1の通信端末群及び前記1のIPネットワークと特定の接続経路を介して接続された他のIPネットワークに接続されている他の通信端末群の各々の呼接続を行う主交換機であって、
前記呼接続を実行させるためのプログラムに従って交換動作を行うPBX機能部と、
前記1のIPネットワークに接続されて呼接続を行う1の副交換機及び前記他のIPネットワークに接続されて呼接続を行う他の副交換機が前記主交換機に代替して呼接続を実行する際に、前記1の通信端末群は前記1の副交換機に収容され、前記他の通信端末群は前記他の副交換機に収容されることを内容とする設定情報を記憶する記憶部と、
前記設定情報を含む同期用ファイルを生成する同期ファイル生成部と、
前記同期用ファイルを前記1の副交換機及び前記他の副交換機の各々に送信する送信部と
を有することを特徴とする主交換機。
【請求項6】
1のIPネットワークに接続されている1の通信端末群及び前記1のIPネットワークと特定の接続経路を介して接続された他のIPネットワークに接続されている他の通信端末群の各々の呼接続を行う主交換機に搭載されるコンピュータを、
前記呼接続を実行させるためのプログラムに従って交換動作を行うPBX機能部と、
前記1のIPネットワークに接続されて呼接続を行う1の副交換機及び前記他のIPネットワークに接続されて呼接続を行う他の副交換機が前記主交換機に代替して呼接続を実行する際に、前記1の通信端末群は前記1の副交換機に収容され、前記他の通信端末群は前記他の副交換機に収容されることを内容とする設定情報を記憶する記憶部と、
前記設定情報を含む同期用ファイルを生成する同期ファイル生成部と、
前記同期用ファイルを前記1の副交換機及び前記他の副交換機の各々に送信する送信部と
して機能させることを特徴とする同期プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末間の呼接続を行う交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークを用いた電話交換システムにおいて、主交換機の他にバックアップ装置としての副交換機を配置し、主交換機に障害が発生した際に主交換機に代替して電話交換サービスを実行させることが行われている。
【0003】
このような電話交換システムでは、主交換機と副交換機との間でプログラム及び設定データの同期(以下、サバイバル同期と称する)を行う必要がある。このサバイバル同期を人的作業によって行う場合、複雑なオペレーションとなり、人為的なミスによって交換機の動作が停止する可能性がある。
【0004】
そこで、副交換機においてプログラムの更新の要否を判定し、必要と判定した場合にプログラムの更新及び設定データ値の展開を自動で行う自動更新方法及び交換機が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の電話交換システムでは、複数の副交換機がIPネットワークを構成する複数のサテライトに分散して配置されている場合、主交換機が属するサテライトとは別のサテライトに属する副交換機にも、設定データがそのまま引き継がれる。そのような状態で主交換機に障害が発生すると、副交換機は自身が属しているサテライトとは別のサテライトである主交換機が属するサテライトのIP端末を自身の収容するIP端末として運用しようとする。このため、装置障害が発生する場合があるという問題があった。例えば、サテライト間でのネットワークに障害が発生しているような場合、副交換機がネットワーク構成上組み込むことができないIP端末が障害として扱われることになる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、主交換機と副交換機とが異なるサテライトに配置されている場合にも、障害発生時の代替運用を円滑に行うことが可能な交換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る交換システムは、1のIPネットワークに接続されている1の通信端末群及び前記1のIPネットワークと特定の接続経路を介して接続された他のIPネットワークに接続されている他の通信端末群の各々の呼接続を行う主交換機と、前記1のIPネットワークに接続されて呼接続を行う1の副交換機と、前記他のIPネットワークに接続されて呼接続を行う他の副交換機と、を含み、前記主交換機は、前記呼接続を実行させるためのプログラムに従って交換動作を行うPBX機能部と、前記1の副交換機及び前記他の副交換機が前記主交換機に代替して呼接続を実行する際に、前記1の通信端末群は前記1の副交換機に収容され、前記他の通信端末群は前記他の副交換機に収容されることを内容とする設定情報を記憶する記憶部と、前記設定情報を含む同期用ファイルを生成する同期ファイル生成部と、前記同期用ファイルを前記1の副交換機及び前記他の副交換機の各々に送信する送信部と、を有し、前記1の副交換機及び前記他の副交換機は、前記主交換機から受信した前記同期用ファイルに基づいて、各々が収容する通信端末についての設定を更新することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る同期方法は、1のIPネットワークに接続されている1の通信端末群及び前記1のIPネットワークと特定の接続経路を介して接続された他のIPネットワークに接続されている他の通信端末群の各々の呼接続を行う主交換機と、前記1のIPネットワークに接続されて呼接続を行う1の副交換機と、前記他のIPネットワークに接続されて呼接続を行う他の副交換機と、を含む交換システムにおいて実行されるプログラム及び設定データの同期方法であって、前記主交換機において、前記1の副交換機及び前記他の副交換機が前記主交換機に代替して呼接続を実行する際に、前記1の通信端末群は前記1の副交換機に収容され、前記他の通信端末群は前記他の副交換機に収容されることを内容とする設定情報を含む同期用ファイルを生成するステップと、前記同期用ファイルを前記1の副交換機及び前記他の副交換機の各々に送信するステップと、前記1の副交換機及び前記第他の副交換機において、前記同期用ファイルを受信するステップと、受信した前記同期用ファイルに基づいて、各々が収容する通信端末についての設定を更新するステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る主交換機は、1のIPネットワークに接続されている1の通信端末群及び前記1のIPネットワークと特定の接続経路を介して接続された他のIPネットワークに接続されている他の通信端末群の各々の呼接続を行う主交換機であって、 前記呼接続を実行させるためのプログラムに従って交換動作を行うPBX機能部と、 前記1のIPネットワークに接続されて呼接続を行う1の副交換機及び前記他のIPネットワークに接続されて呼接続を行う他の副交換機が前記主交換機に代替して呼接続を実行する際に、前記1の通信端末群は前記1の副交換機に収容され、前記他の通信端末群は前記他の副交換機に収容されることを内容とする設定情報を記憶する記憶部と、前記設定情報を含む同期用ファイルを生成する同期ファイル生成部と、前記同期用ファイルを前記1の副交換機及び前記他の副交換機の各々に送信する送信部とを有することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る同期プログラムは、1のIPネットワークに接続されている1の通信端末群及び前記1のIPネットワークと特定の接続経路を介して接続された他のIPネットワークに接続されている他の通信端末群の各々の呼接続を行う主交換機に搭載されるコンピュータを、前記呼接続を実行させるためのプログラムに従って交換動作を行うPBX機能部と、前記1のIPネットワークに接続されて呼接続を行う1の副交換機及び前記他のIPネットワークに接続されて呼接続を行う他の副交換機が前記主交換機に代替して呼接続を実行する際に、前記1の通信端末群は前記1の副交換機に収容され、前記他の通信端末群は前記他の副交換機に収容されることを内容とする設定情報を記憶する記憶部と、前記設定情報を含む同期用ファイルを生成する同期ファイル生成部と、前記同期用ファイルを前記1の副交換機及び前記他の副交換機の各々に送信する送信部として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電話交換システムにおいて、主交換機に障害が発生した際の代替運用を円滑に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る交換システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】第2副交換機の構成を示すブロック図である。
【
図4】同期処理における主交換機及び副交換機の動作を示すシーケンス図である。
【
図5】変形例の交換システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】変形例における同期処理の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0015】
図1は、本発明の実施例にかかる電話交換システム100の構成を示すブロック図である。電話交換システム100は、主交換機10、第1副交換機11及び第2副交換機12から構成されている。
【0016】
主交換機10及び第1副交換機11は、同一の拠点(例えば、同一構内)に配置され、第2副交換機12は、これらとは異なる拠点に配置されている。以下の説明では、各拠点内におけるIPネットワークを「サテライト」と称する。本実施例では、主交換機10及び第1副交換機11は第1のサテライト(第1の拠点内のIPネットワーク)であるサテライトST1に属している。一方、第2副交換機12は第2のサテライト(第2の拠点内のIPネットワーク)であるサテライトST2に属している。サテライトST1及びサテライトST2は、接続経路CSを介してカスケード接続されている。
【0017】
主交換機10は、本実施例の電話交換システム100における主装置である。主交換機10は、サテライトST1及びサテライトST2に接続されている複数のIP電話端末について、呼接続及び通話路の形成を含む交換動作を行う。
【0018】
第1副交換機11及び第2副交換機12は、それぞれ主交換機10に障害が発生した際のバックアップとして設けられ、主交換機10に代替して交換動作を行う。
【0019】
IP端末21-1~21-nは、主交換機10及び第1副交換機11と共通の拠点(第1の拠点)に設けられている。IP端末21-1~21-nは、サテライトST1に属する(すなわち、接続されている)IP電話端末群である。
【0020】
IP端末22-1~22-kは、第2副交換機12と共通の拠点(第2の拠点)に設けられている。IP端末22-1~22-kは、サテライトST2に属する(すなわち、接続されている)IP電話端末群である。
【0021】
IP端末21-1~21-n及びIP端末22-1~22-kは、主交換機10に障害が発生していない通常の状態(以下、通常時と称する)において、主交換機10の交換動作を受ける。
【0022】
図2は、主交換機10の構成を示すブロック図である。主交換機10は、PBX機能部31、記憶部32、同期ファイル生成部33及び送受信部34を有する。
【0023】
PBX機能部31は、IP電話端末間やIP電話端末と外部端末との間の呼接続を行う交換機能を有する機能ブロックである。PBX機能部31は、例えば主交換機10内に設けられたCPU(Central Processing Unit)(
図2では図示を省略)が所定のプログラム(具体的には、後述する運用プログラムD1)を実行することにより実現される。
【0024】
記憶部32は、例えばハードディスク等の不揮発性の記憶装置から構成されている。記憶部32には、運用プログラムD1及び設定データD2が格納されている。
【0025】
運用プログラムD1は、交換機としての動作を実行するためのプログラムである。すなわち、PBX機能部31の機能は、運用プログラムD1が実行されることにより実現される。運用プログラムD1は、機能の追加や不具合の修正のために適宜更新される。
【0026】
設定データD2は、本実施例の電話交換システム100において実行される交換動作の設定に関するデータ群である。具体的には、主交換機10、第1副交換機11及び第2副交換機12のIPアドレスや、電話交換システム100に収容されるIP電話端末(すなわち、IP端末21-1~21-n及びIP端末22-1~22-k)のIPアドレス及び電話番号等の情報を含む。また、設定データD2は、運用プログラムD1の現在のバージョンを表すバージョン情報及びプログラム更新のための設定情報を含む。
【0027】
また、設定データD2は、主交換機10の障害発生時に各副交換機がどのIP電話端末についての交換動作(呼接続)を担うかについての設定情報、換言するとサテライトST1及びST2に属するIP電話端末群の各々が第1副交換機11及び第2副交換機12のいずれに収容されるかについての設定情報(以下、端末管理情報と称する)を含む。
【0028】
具体的には、本実施例では、IP端末21-1~21-nが第1副交換機11に収容され、IP端末22-1~22-kが第2副交換機12に収容されることを内容とする端末管理情報が、設定データD2の一部として登録されている。
【0029】
同期ファイル生成部33は、主交換機10と第1副交換機11及び第2副交換機12の各々との間でプログラム及び設定データの同期(以下、サバイバル同期と称する)を行うための同期用ファイルを生成する。本実施例では、同期ファイル生成部33は、運用プログラムD1及び設定データD2を転送用(すなわち、各副交換機への送信用)に圧縮することにより、同期用ファイルを生成する。
【0030】
送受信部34は、データの送受信を行う通信部である。具体的には、送受信部34はIPネットワークを介してパケット通信を行うことによりデータの送受信を行う。本実施例では、送受信部34は、同期ファイル生成部33が生成した同期用ファイルを第1副交換機11及び第2副交換機12に向けて送信する。
【0031】
同期ファイル生成部33は、例えば運用プログラムD1が更新されたタイミング、又は設定データD2に含まれる端末管理情報が変更されたタイミングで、同期用ファイルの生成を行う。送受信部34は、同期ファイル生成部33による新たな同期用ファイルの生成に応じて、同期用ファイルを送信する。これにより、主交換機10において行われた運用プログラムD1の更新又は端末管理情報の変更に応じて、主交換機10と各副交換機との間のサバイバル同期が実行される。
【0032】
図3は、第2副交換機12の構成を示すブロック図である。第2副交換機12は、PBX機能部41、送受信部42及び設定更新部43を有する。
【0033】
PBX機能部41は、主交換機10のPBX機能部31と同様、IP電話端末間やIP電話端末と外部端末との間の交換動作(呼接続)を行う交換機能を有する機能ブロックである。PBX機能部41は、運用プログラムD1が実行されることにより実現される。
【0034】
送受信部42は、IPネットワークを介してパケット通信を行うことによりデータの送受信を行う。本実施例では、送受信部42は、主交換機10から送信された同期用ファイルを受信する。
【0035】
設定更新部43は、PBX機能部41が交換動作を実行するための運用プログラム及び設定データを更新する。具体的には、設定更新部43は、送受信部42が受信した同期用ファイルを展開し、図示されない記憶部に記憶される既存のプログラム及び設定データに上書きすることにより、運用プログラム及び設定データを更新する。これにより、主交換機10及び第2副交換機12のサバイバル同期が完了する。設定更新部43は、例えば第2副交換機の各部の制御を担うCPUから構成されている。
【0036】
なお、
図1に示す第1副交換機11も、第2副交換機12と同様の構成を有する。したがって、第1副交換機11の構成については、説明を省略する。
【0037】
次に、本実施例の電話交換システム100におけるサバイバル同期の動作について説明する。ここでは、主交換機10と第2副交換機12との間でサバイバル同期を行う場合を例として、その処理動作について
図4のシーケンス図を参照して説明する。
【0038】
まず、主交換機10は、サバイバル同期に先立って、設定データD2に含まれる管理端末情報の更新を行う(STEP101)。これにより、各副交換機が収容するIP電話端末についての情報、すなわち主交換機10の障害発生時に各副交換機がどのIP電話端末の呼接続を担うのかについての情報が更新される。
【0039】
次に、主交換機10は、設定データD2のバックアップを作成する(STEP102)。上記の通り、設定データD2は、管理端末情報の他、交換動作に関する各種の設定データを含む。
【0040】
同期ファイル生成部33は、運用プログラムD1及びSTEP102で作成した設定データD2のバックアップに基づいて、転送用に圧縮した同期用ファイルを生成する(STEP103)。
【0041】
第2副交換機12は、主交換機10から送信された同期用ファイルをIPネットワークを介して取得する(STEP104)。すなわち、STEP103で生成された同期用ファイルを主交換機10の送受信部34が送信し、送信された同期用ファイルを第2副交換機12の送受信部42が受信する。これにより、第2副交換機12によって同期用ファイルが取得される。
【0042】
設定更新部43は、STEP104で取得した同期用ファイルを展開し(STEP105)、運用プログラム及び設定データを取得する。
【0043】
設定更新部43は、取得した運用プログラム及び設定データを記憶部に記憶される既存のプログラム及び設定データに上書きすることにより、これらを更新する(STEP106)。
【0044】
PBX機能部41は、更新された設定データD2に基づいて、交換動作の対象とするIP電話端末(すなわち、第2副交換機12が収容するIP電話端末)の設定を更新する(STEP107)。
【0045】
第2副交換機12は、主交換機10に障害が発生した際の代替運用に備えて、ホットスタンバイ状態となる(STEP108)。
【0046】
以上のようなステップを経て、主交換機10及び第2副交換機12における運用プログラム及び設定データの同期(サバイバル同期)が行われる。なお、第1副交換機11についても、同様の処理ルーチンによりサバイバル同期が行われる。
【0047】
本実施例では、IP端末21-1~21-nが第1副交換機11に収容され、IP端末22-1~22-kが第2副交換機12に収容されることを内容とする端末管理情報が、設定データD2として主交換機10に登録されている。したがって、かかる内容の端末管理情報に基づいてサバイバル同期が行われ、主交換機10の障害発生時に第2副交換機12がIP端末22-1~22-kの呼接続を行うことを内容とする設定(登録)が、第2副交換機12において行われる。
【0048】
したがって、第2副交換機12のPBX機能部41は、第2副交換機12が属するサテライトであるサテライトST2に属するIP電話端末について、交換動作を行う。すなわち、PBX機能部41は、IP端末22-1~22-k間やIP端末22-1~22-kと外部端末との間の呼接続を行う。一方、PBX機能部41は、第2副交換機12が属するサテライトとは異なるサテライトに属するIP端末21-1~21-nを、所謂組み込み対象外のIP電話端末とする。
【0049】
以上のように、本実施例の電話交換システム100では、主交換機10において、各副交換機がどのIP電話端末を交換動作の対象とするかについての情報(端末管理情報)を設定データとして登録しておき、当該設定データを運用プログラムとともに同期用ファイルとして各副交換機に送信する。各副交換機は、主交換機10から取得した同期用ファイルに基づいて、自身が交換動作の対象とするIP電話端末についての設定を更新(登録)する。
【0050】
換言すると、本実施例の電話交換システム100では、いわば各副交換機が管理するIP電話端末を割り振った状態でサバイバル同期が実行されることになる。これにより、主交換機10に障害が発生した際、各副交換機を主交換機10と同様の条件で運用し、さらに各副交換機がどのIP電話端末を交換動作の対象(組み込み対象)とするかを指定することができる。したがって、本実施例の電話交換システム100によれば、各副交換機が異なるサテライトに属するIP電話端末を交換動作の対象とすることに起因する障害の発生を抑えることができる。
【0051】
例えば、サテライト間のネットワーク(本実施例では、
図1に示す接続経路CS)において障害が発生しているような場合、第2副交換機12はサテライトST1に属するIP端末21-1~21-nを対象として交換動作を行うことができない。仮に本実施例の電話交換システム100とは異なり、IP端末21-1~21-nが第2副交換機12の組み込み対象から除外されていないとすると、第2副交換機12が実行する交換動作において、IP端末21-1~21-nは障害として扱われてしまう。
【0052】
しかし、本実施例の電話交換システム100によれば、IP端末21-1~21-nは予め第2副交換機12の組み込み対象から除外されており、IP端末21-1~21-nを対象とする交換動作が試行されないため、第2副交換機12が実行する交換動作において、IP端末21-1~21-nは障害として扱われない。
【0053】
したがって、本実施例の電話交換システム100によれば、複数のサテライトに副交換機が分散配置され、主交換機とは異なるサテライトに属する副交換機が存在する場合であっても、各副交換機において主交換機の代替としての交換動作を円滑に行うことが可能となる。
【0054】
また、本実施例の電話交換システム100では、主交換機10は副交換機毎に専用の同期用ファイルを生成することはせず、各副交換機は、同一の同期用ファイルを主交換機10から取得して運用プログラム及び設定データの更新を行う。したがって、主交換機が副交換機毎に専用の同期用ファイルを生成する場合と比べて、同期用ファイルの生成に要する時間及び容量を削減することが可能となる。
【0055】
また、本実施例の電話交換システム100は、新たにサテライトを設けて副交換機を設置した場合や、代替運用におけるリスク分散のために各副交換機が使用するIP電話端末を分散した場合の初期設定、バージョンアップ時の設定等に利用することができる。本実施例のようなサバイバル同期を行うことにより、データ設定等を行う際の人定作業を低減し、サテライト間の移動等の作業工数や人為的ミスのリスクを削減する効果を得ることが出来る。
【0056】
なお、本発明の実施形態は、上記実施例に記載したものに限られない。例えば、上記実施例では、複数の副交換機(第1副交換機11及び第2副交換機12)が異なるサテライトに分散して配置され、そのうちの第2副交換機12が主交換機10とは異なるサテライトに属している場合を例として、サバイバル同期の動作を説明した。しかし、主交換機10が属するサテライトと同じサテライトにのみ副交換機が配置されている場合であっても、上記実施例の処理ルーチンの一部を省略する形でサバイバル同期の処理を行うことが可能である。
【0057】
図5は、このような変形例における電話交換システム200の構成を示すブロック図である。主交換機10及び第1副交換機11は、共通のサテライトであるサテライトST1に属している。また、サテライトST1には、IP端末21-1~21-nが属しており、通常時において主交換機10、障害発生時において第1副交換機11に夫々収容される。
【0058】
図6は、電話交換システム200における同期処理の動作を示すシーケンス図である。上記の実施例1とは異なり、主交換機10と同じサテライトにのみ副交換機が配置されているため、
図4のシーケンス図における副交換機情報の登録(STEP101)及び収容IP端末の設定更新(STEP107)の処理ステップが不要となる。
【0059】
すなわち、変形例の電話交換システム200では、主交換機10が、設定データD2のバックアップを作成し(STEP102)、運用プログラムD1及び設定データD2のバックアップに基づいて同期用ファイルを生成する(STEP103)。第2副交換機12は、IPネットワークを介して、主交換機10から同期用ファイルを取得する(STEP104)。設定更新部43は、取得した同期用ファイルを展開し(STEP105)、運用プログラムD1及び設定データD2を更新(上書き)する(STEP106)。第2副交換機12は、主交換機10に障害が発生した際の代替運用に備えて、ホットスタンバイ状態となる(STEP108)。
【0060】
また、上記実施例では、同期用ファイルが運用プログラムD1及び設定データD2を含む場合を例として説明した。しかし、同期ファイルに含まれる内容はこれに限られない。例えば、運用プログラムD1を含まないものであってもよく、これらに加えてさらに他のデータを含むものであってもよい。また、設定データD2は、少なくとも端末管理情報を含むものであればよい。すなわち、同期用ファイルは、少なくとも端末管理情報(各副交換機がどのIP電話端末を交換動作の対象とするかについての情報)を含むものであればよい。
【符号の説明】
【0061】
100 電話交換システム
10 主交換機
11 第1副交換機
12 第2副交換機
21-1~21-n IP端末
22-1~22-k IP端末
31 PBX機能部
32 記憶部
33 同期ファイル生成部
34 送受信部
41 PBX機能部
42 送受信部
43 設定更新部