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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117567
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230817BHJP
   G06F 40/56 20200101ALI20230817BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06F40/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020199
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 英樹
【テーマコード(参考)】
5B091
5L049
【Fターム(参考)】
5B091AA15
5B091CA02
5B091CA12
5B091CA14
5B091CA21
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】コンタクトセンターのオペレーターの応対業務の評価を容易にする。
【解決手段】AIサーバー100は、顧客U20からのチャットの文字数と、顧客U20からのチャットを受信してからオペレーターU10が応答のチャットを返信するまでの時間間隔を用いてオペレーターU10の応答速度を計算する応答評価部10と、顧客U20からのチャットに対する最適な回答候補を作成し、最適な回答候補とオペレーターU10からの応答のチャットとの一致度を計算するとともに、最適な回答候補を作成することの難易度を算出する回答評価部20とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレーターが使用するオペレーター装置において、顧客が使用する顧客装置から受信した第1チャットを入力して、前記第1チャットにおける第1文字数情報を取得し、
前記オペレーター装置において、前記顧客装置から前記第1チャットを受信したときの第1時刻情報と、前記顧客装置に前記第1チャットに対する返信として第2チャットを送信したときの第2時刻情報とを入力して、前記第1時刻情報から前記第2時刻情報までの第1時間情報を取得し、
前記第1時間情報及び前記第1文字数情報に基づいて算出された第1応答速度を出力する第1処理部と、
前記第1チャットを入力すると、前記第1チャットのメッセージ内容に基づく第1回答内容を作成し、
前記第1回答内容と前記第2チャットのメッセージ内容とを比較して、比較結果に基づく一致度情報を出力し、
前記第1回答内容を作成するための難易度を算出して、算出結果に基づく難易度情報を出力する第2処理部と、を備える処理装置。
【請求項2】
前記第2処理部は、前記第1回答内容の形態素解析の結果、及び前記第2チャットのメッセージ内容の形態素解析の結果に基づいて前記一致度情報を出力する請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
処理装置が、
オペレーターが使用するオペレーター装置において、顧客が使用する顧客装置から受信した第1チャットを入力して、前記第1チャットにおける第1文字数情報を取得し、
前記オペレーター装置において、前記顧客装置から前記第1チャットを受信したときの第1時刻情報と、前記顧客装置に前記第1チャットに対する返信として第2チャットを送信したときの第2時刻情報とを入力して、前記第1時刻情報から前記第2時刻情報までの第1時間情報を取得し、
前記第1時間情報及び前記第1文字数情報に基づいて算出された第1応答速度を出力する第1ステップと、
前記第1チャットを入力すると、前記第1チャットのメッセージ内容に基づく第1回答内容を作成し、
前記第1回答内容と前記第2チャットのメッセージ内容とを比較して、比較結果に基づく一致度情報を出力し、
前記第1回答内容を作成するための難易度を算出して、算出結果に基づく難易度情報を出力する第2ステップと、を実行する処理方法。
【請求項4】
処理装置のコンピューターが、
オペレーターが使用するオペレーター装置において、顧客が使用する顧客装置から受信した第1チャットを入力して、前記第1チャットにおける第1文字数情報を取得し、
前記オペレーター装置において、前記顧客装置から前記第1チャットを受信したときの第1時刻情報と、前記顧客装置に前記第1チャットに対する返信として第2チャットを送信したときの第2時刻情報とを入力して、前記第1時刻情報から前記第2時刻情報までの第1時間情報を取得し、
前記第1時間情報及び前記第1文字数情報に基づいて算出された第1応答速度を出力する第1処理部、
前記第1チャットを入力すると、前記第1チャットのメッセージ内容に基づく第1回答内容を作成し、
前記第1回答内容と前記第2チャットのメッセージ内容とを比較して、比較結果に基づく一致度情報を出力し、
前記第1回答内容を作成するための難易度を算出して、算出結果に基づく難易度情報を出力する第2処理部、として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テキストチャットにより顧客への応対業務を専門に行う事業所部門であるコンタクトセンターにおいて、応対業務を行うオペレーターを管理者が評価し、オペレーター指導や業務改善に活かし、応対品質の向上を図っている。オペレーターの評価は、顧客から受信したチャットに対してオペレーターがチャットで応答するまでの時間や、オペレーターが応答した内容の的確さ、などを、コンタクトセンター側で予め用意した指標と照らし合わせることで実施されていた。なお、非特許文献1には、コンタクトセンターの業務において、上記「オペレーターが応答した内容の的確さ」をモニタリングすることについて開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“用語集 モニタリング”、[online]、株式会社KDDIエボルバ、[令和4年1月27日検索]、インターネット、<URL:https://www.k-evolva.com/glossary/monitoring/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなオペレーターの評価は、管理者が後からレビューするなどの煩雑な作業が必要となり、多大な時間を費やさなければならない問題があった。
【0005】
上記事情に鑑みて、本発明は、コンタクトセンターのオペレーターの応対業務の評価を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、オペレーターが使用するオペレーター装置において、顧客が使用する顧客装置から受信した第1チャットを入力して、前記第1チャットにおける第1文字数情報を取得し、前記オペレーター装置において、前記顧客装置から前記第1チャットを受信したときの第1時刻情報と、前記顧客装置に前記第1チャットに対する返信として第2チャットを送信したときの第2時刻情報とを入力して、前記第1時刻情報から前記第2時刻情報までの第1時間情報を取得し、前記第1時間情報及び前記第1文字数情報に基づいて算出された第1応答速度を出力する第1処理部と、前記第1チャットを入力すると、前記第1チャットのメッセージ内容に基づく第1回答内容を作成し、前記第1回答内容と前記第2チャットのメッセージ内容とを比較して、比較結果に基づく一致度情報を出力し、前記第1回答内容を作成するための難易度を算出して、算出結果に基づく難易度情報を出力する第2処理部と、を備える処理装置である。
【0007】
また、本発明は、処理装置が、オペレーターが使用するオペレーター装置において、顧客が使用する顧客装置から受信した第1チャットを入力して、前記第1チャットにおける第1文字数情報を取得し、前記オペレーター装置において、前記顧客装置から前記第1チャットを受信したときの第1時刻情報と、前記顧客装置に前記第1チャットに対する返信として第2チャットを送信したときの第2時刻情報とを入力して、前記第1時刻情報から前記第2時刻情報までの第1時間情報を取得し、前記第1時間情報及び前記第1文字数情報に基づいて算出された第1応答速度を出力する第1ステップと、前記第1チャットを入力すると、前記第1チャットのメッセージ内容に基づく第1回答内容を作成し、前記第1回答内容と前記第2チャットのメッセージ内容とを比較して、比較結果に基づく一致度情報を出力し、前記第1回答内容を作成するための難易度を算出して、算出結果に基づく難易度情報を出力する第2ステップと、を実行する処理方法である。
【0008】
また、本発明は、処理装置のコンピューターが、オペレーターが使用するオペレーター装置において、顧客が使用する顧客装置から受信した第1チャットを入力して、前記第1チャットにおける第1文字数情報を取得し、前記オペレーター装置において、前記顧客装置から前記第1チャットを受信したときの第1時刻情報と、前記顧客装置に前記第1チャットに対する返信として第2チャットを送信したときの第2時刻情報とを入力して、前記第1時刻情報から前記第2時刻情報までの第1時間情報を取得し、前記第1時間情報及び前記第1文字数情報に基づいて算出された第1応答速度を出力する第1処理部、前記第1チャットを入力すると、前記第1チャットのメッセージ内容に基づく第1回答内容を作成し、前記第1回答内容と前記第2チャットのメッセージ内容とを比較して、比較結果に基づく一致度情報を出力し、前記第1回答内容を作成するための難易度を算出して、算出結果に基づく難易度情報を出力する第2処理部、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンタクトセンターのオペレーターの応対業務の評価を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の処理システムの機能構成図である。
図2】AIサーバーが行う処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
[概要]
本発明は、チャット応対を行うコンタクトセンターにおいて、人工知能機能(AI、Artificial Intelligence)を利用することによりオペレーターが実施した応対を評価し、望ましい応対を示唆するための方法に関するものである。先述したように、従来、オペレーターの評価は、顧客から受信したチャットに対してオペレーターがチャットで応答するまでの時間や、オペレーターが応答した内容の的確さ、などを、コンタクトセンター側で予め用意した指標と照らし合わせることで実施されていた。
【0013】
しかし、上記の方法では、オペレーターがチャットで応答するまでの時間については、例えば、顧客からのメッセージの長さや、顧客からの質問に対する回答が予め用意されているか否か、顧客からの質問がよくある質問であるかごくまれな質問であるか、などに依存して求められる。また、オペレーターが応答した回答内容の的確さについては、顧客からのメッセージが論理的であるか否か、回答が予め用意されているか否か、などに依存して求められる。このようにオペレーターの応対業務の評価にはさまざまな判断材料があるため、評価に対する管理者のレビューの作業は煩雑となり、多大な時間を費やす必要があった。
【0014】
[構成]
図1は、本実施形態の処理システムの機能構成図である。処理システム1は、AIサーバー100と、業務情報DB200と、コンタクトセンターサーバー300とから構成されるサーバーシステム2を備えている。処理システム1は、1または複数のオペレーター通信装置400を備えている。AIサーバー100と、業務情報DB200と、コンタクトセンターサーバー300と、オペレーター通信装置400は、構内通信網600を介して通信可能に接続されている。処理システム1は、1または複数の顧客通信装置500を備えている。顧客通信装置500は、公衆網700を介してコンタクトセンターサーバー300と通信可能に接続されている。オペレーターU10は、オペレーター通信装置400を操作し、顧客U20の応対業務をする。顧客U20は、顧客通信装置500を所有し、操作している。
【0015】
(オペレーター通信装置400)
オペレーター通信装置400は、コンタクトセンターサーバー300によって接続された顧客通信装置500の顧客とのチャット通信をオペレーターU10に対して提供する装置である。オペレーター通信装置400は、少なくともコンタクトセンターサーバー300を介して顧客通信装置500の顧客からのテキストを表示する表示装置、オペレーターU10がテキストを入力するための入力装置、及びテキストチャット通信を行うための制御機能を有している(通信の制御機能については省略)。
【0016】
(コンタクトセンターサーバー300)
コンタクトセンターサーバー300は、コンタクトセンターの発着信を制御し、顧客(利用者)に提供するコンタクトセンターサービスの処理を実行するサーバー装置である。コンタクトセンターサーバー300は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、ハードディスクなどの記憶手段(記憶部)と、ネットワークインタフェースとを有するコンピューターとして構成される。このコンピューターは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラムを実行することにより、各種機能が実現される。
【0017】
(AIサーバー100)
AIサーバー100は、所謂人工知能(AI)機能を提供するサーバーで、自然言語処理に基づく文章理解、意味理解、感情分析、テキスト含意認識や、機械学習の機能などを有する。AIサーバー100は、CPUと、メモリと、ハードディスクなどの記憶手段(記憶部)と、ネットワークインタフェースとを有するコンピューターとして構成される。このコンピューターは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラムを実行することにより、各種機能が実現される。
【0018】
AIサーバー100は、顧客通信装置500とオペレーター通信装置400の間の通信内容を、顧客U20を識別する情報とオペレーターU10を識別する情報と併せて、リアルタイムで取得可能である。また、AIサーバー100は、処理結果を蓄積し、管理者やオペレーターU10が参照することができるインタフェースを具備している。
【0019】
AIサーバー100は、応答評価部10と、回答評価部20とを備えている。
応答評価部10は、顧客U20からのチャットに対するオペレーターU10の応答を評価する。
回答評価部20は、顧客U20からのチャットに対し、オペレーターU10からのチャットの回答内容を評価する。
【0020】
(業務情報DB200)
業務情報DB200は、コンタクトセンター業務に関する各種情報を記憶するデータベースである。例えば、業務情報DB200は、コンタクトセンターで情報提供している所謂「よくある質問」、FAQ(Frequently Asked Question)の質問回答集、コンタクトセンター業務に関するマニュアル、コンタクトセンターサービスを利用する企業の提供するサービスや製品に関するマニュアル、当該サービスや当該製品のカタログなどをテキスト情報として蓄積している。業務情報DB200は、構内通信網600に通信可能に接続されている計算機(図示せず)に実装されるように設計できる。
【0021】
(構内通信網600、公衆網700)
構内通信網600は、例えば、LAN(Local Area Network)とすることができる。
公衆網700は、例えば、IP(Internet Protocol)ネットワークとすることができる。
【0022】
[オペレーターの応答の評価]
顧客通信装置500からコンタクトセンターサーバー300への着信があると、コンタクトセンターサーバー300は、ACD(Automatic Call Distribution)により適切なオペレーターを選択し、選択されたオペレーターU10のオペレーター通信装置400に顧客通信装置500を接続する。当該オペレーターU10は以降、オペレーター通信装置400で顧客U20からのメッセージ(チャット)を確認後、応答(チャット)をオペレーター通信装置400に入力し、コンタクトセンターサーバー300がその応答を顧客通信装置500に返すことで、顧客U20とオペレーターU10との間のやり取りが行われる。
【0023】
このやり取りについて、AIサーバー100は、顧客通信装置500のメッセージ(チャット)をコンタクトセンターサーバー300から取得できる。応答評価部10は、顧客通信装置500のメッセージを解析し、顧客U20からのメッセージの内容(MC001)及び当該メッセージの文字数(MC001N)を取得し、保持できる。また、応答評価部10は、オペレーター通信装置400が顧客U20からのメッセージを受信したタイミング(MC001T)を取得し、保持できる。前記タイミングは、例えば、顧客U20からのメッセージがオペレーターU10のオペレーター通信装置400にいつ表示されたかを示すものとすることができるが、これに限定されない。
【0024】
また、応答評価部10は、オペレーター通信装置400からの応答(チャット)をコンタクトセンターサーバー300から取得できる。応答評価部10は、オペレーター通信装置400からの応答を解析し、オペレーターU10が応答したメッセージの内容(MO001)及び当該メッセージの文字数(MO001N)を取得し、保持できる。また、応答評価部10は、オペレーターU10から顧客U20に返信されたタイミング(MO001T)を取得し、保持できる。前記タイミングは、例えば、オペレーター通信装置400からの応答が顧客通信装置500に送信されたタイミングとすることができるが、これに限定されない。
【0025】
応答評価部10は、顧客U20からのメッセージの文字数(MC001N)と、オペレーター通信装置400が顧客U20からのメッセージを受信してから、オペレーターU10から顧客U20に返信されるまでの時間間隔(MO001T-MC001T)から応答速度を算出できる。応答速度は、オペレーターU10の応対業務を定量的に推し量る指標であり、応対速度が大きいほど顧客U20側の回答待ち時間が短縮され、オペレーターU10の応対業務が優れているといえる。
【0026】
例えば、応答評価部10は、応答速度を文字数(MC001N)に比例し、時間間隔(MO001T-MC001T)に反比例した値として算出することができる。文字数(MC001N)が多いほど、顧客U20からの問い合わせ内容をオペレーターU10が把握することに多くの時間を要するといえるためである。また、時間間隔(MO001T-MC001T)が小さいほど、オペレーターU10からの返信が素早かったといえるためである。
【0027】
[オペレーターの回答の評価]
回答評価部20は、顧客U20からのメッセージの内容(MC001)に対して、自然言語処理に基づく文章理解、意味理解、感情分析、テキスト含意認識を行う。また、回答評価部20は、オペレーターU10が応答したメッセージの内容(MO001)に対して、自然言語処理に基づく文章理解、意味理解、感情分析、テキスト含意認識を行う。
【0028】
また、回答評価部20は、業務情報DB200を参照して、顧客U20から入力されたチャットのメッセージの内容(MC001)に対して、最適な回答候補(MO002)を作成する。最適な回答候補は、顧客U20からのメッセージの内容(MC001)に対する応答の内容の模範であり、AIの機能による。なお、回答評価部20は、作成した回答候補に対して、自然言語処理に基づく文章理解、意味理解、感情分析、テキスト含意認識を行ってもよい。
【0029】
(一致度)
回答評価部20は、オペレーターU10が応答したメッセージの内容(MO001)と、回答候補(MO002)とを比較して、一致度を計算する。例えば、一致度の計算は以下の手順で行われる。つまり、内容(MO001)及び回答候補(MO002)の各々を形態素に分割する形態素解析を行う。次に、内容(MO001)の形態素と回答候補(MO002)の形態素が一致し、かつ、内容(MO001)の形態素に続く、内容(MO001)の形態素と、回答候補(MO002)の形態素に続く、回答候補(MO002)の形態素が一致した頻度を示すヒット回数をカウントする。最後に、ヒット回数に基づく値を一致度として計算する。なお、ヒット回数そのものを一致度としてもよい。回答評価部20は、ヒット回数が多いほど一致度が高いと判定する。回答評価部20は、一致度が高いほど、オペレーターU10が顧客U20に対して適した応答をしたと評価できる。
【0030】
また、一致度については、回答を得るためにオペレーターU10が深堀をした場合にはメッセージの複数回の往復(顧客U20とのチャットのやりとり)で回答に至ることもある。このため、回答評価部20は、一回の往復だけでなく回答に至るまでの内容で一致度を計算することができる。つまり、回答評価部20は、顧客U20とオペレーターU10の一連のやり取りについて一致度の計算を実施する。また、回答評価部20は、一致度の計算を、すべてのオペレーターのやり取りについても実施する。
【0031】
(難易度)
また、回答評価部20は、業務情報DB200を参照して、最適な回答候補(MO002)を作成する際に、その作成の難易度を算出する。例えば、回答評価部20は、業務情報DB200が記憶する各種情報の流用度が小さいほど大きな値をとるように難易度を計算できる。
【0032】
例えば、顧客U20からのメッセージの内容(MC001)に対して、業務情報DB200に記憶されている特定の質問回答集を、そのまま(つまり、編集なしで)最適な回答候補(MO002)とすることができると、回答評価部20が判断したとする。この場合、最適な回答候補(MO002)の作成は、特定の質問回答集の抽出のみで済むため容易であり、回答評価部20は、難易度は小さな値として算出することができる。
【0033】
顧客U20から入力されたチャットのメッセージの内容(MC001)に対して、オペレーター通信装置400が業務情報DB200を参照して、上記の特定の質問回答集の抽出し、抽出した質問回答集を、メッセージの内容(MO001)としてオペレーターU10が応答した場合、応答速度が極めて大きくなり、回答評価部20は、オペレーターU10の応対業務が良好であったと評価することができる。一方、オペレーターU10が上記の特定の質問回答集を抽出せず(できず)、メッセージの内容(MO001)を自ら作成し、応答した場合、応答速度が極めて小さくなり、回答評価部20は、オペレーターU10の応対業務が良好でなかったと評価することができる。
【0034】
また例えば、顧客U20からのメッセージの内容(MC001)に対して、業務情報DB200に記憶されている特定の質問回答集を、多少編集すれば最適な回答候補(MO002)とすることができると、回答評価部20が判断したとする。この場合、最適な回答候補(MO002)の作成は、特定の質問回答集を抽出するのみならず、多少の編集が必要となるため、回答評価部20は、難易度を編集の度合いに応じた中程度の値として算出することができる。
【0035】
顧客U20から入力されたチャットのメッセージの内容(MC001)に対して、オペレーター通信装置400が業務情報DB200を参照して、上記の特定の質問回答集を抽出し、編集した後、編集した質問回答集を、メッセージの内容(MO001)としてオペレーターU10が応答した場合、メッセージの内容(MO001)を自ら作成した場合と比較して応答速度が大きくなり、回答評価部20は、オペレーターU10の応対業務が良好であったと評価することができる。一方、オペレーターU10が上記の特定の質問回答集を抽出せず(できず)、メッセージの内容(MO001)を自ら作成し、応答した場合、応答速度が極めて小さくなり、回答評価部20は、オペレーターU10の応対業務が良好でなかったと評価することができる。
【0036】
また例えば、顧客U20からのメッセージの内容(MC001)に対して、最適な回答候補(MO002)の作成に利用可能な質問回答集が業務情報DB200に記憶されていなかったと、回答評価部20が判断したとする。この場合、回答評価部20は、質問回答集の利用なしで最適な回答候補(MO002)を作成する必要があるため、回答評価部20は、難易度を大きな値として算出することができる。
【0037】
顧客U20から入力されたチャットのメッセージの内容(MC001)に対して、オペレーター通信装置400が業務情報DB200を参照したものの上記の質問回答集を抽出できなかったとする。そこで、オペレーターU10が自ら作成した質問回答集を、メッセージの内容(MO001)としてオペレーターU10が応答した場合、作成に多くの時間を要するため応答速度は必然と小さくなる。しかし、回答評価部20は、オペレーターU10の応対業務が良好であったと評価することができる。
【0038】
AIサーバー100は、一致度及び難易度の結果を蓄積していく。コンタクトセンターの管理者は、インタフェースを介して結果を参照して運用評価に用いることができる。また、オペレーターU10は的確な回答例を参照することができ、今後の応対業務に役立てることができる。
【0039】
[処理]
AIサーバー100が行う処理について説明する。図2は、AIサーバーが行う処理のフローチャートである。コンタクトセンターサーバー300が、顧客U20からの問い合わせのチャットを受信し、ACDにより選択したオペレーターU10に呼を分配した後、オペレーターU10の応答のチャットを受信し、顧客通信装置500に送信したとする。
【0040】
図2に示すように、応答評価部10は、顧客U20のチャットの内容及び文字数を取得する(ステップS1)。次に、応答評価部10は、顧客U20のチャットの文字数と、その受信タイミングと、オペレーターU10のチャットの送信タイミングを用いて、オペレーターU10の応答速度を取得する(ステップS2)。
【0041】
次に、回答評価部20は、業務情報DB200を参照して、顧客U20のチャットの内容に対して、最適な回答候補を作成する(ステップS3)。次に、回答評価部20は、オペレーターU10のチャットと最適な回答候補とを比較して、両者の一致度を計算する(ステップS4)。最後に、回答評価部20は、業務情報DB200を参照して、最適な回答候補の作成の難易度を算出する(ステップS5)。以上で、AIサーバー100が行う処理が終了する。
【0042】
[効果]
本実施形態によれば、顧客U20からのメッセージ長に対するオペレーターU10の応答速度、回答の的確度、回答の難易度をAIがリアルタイムで算出するため、評価にかかる時間を削減できると共に、最適な回答例も作成される。このため、コンタクトセンターのオペレーターU10の応対業務の評価を容易にすることができる。また、コンタクトセンターの管理者が最適な回答例をフィードバックに使うことで、オペレーターの教育も可能となる。
また、オペレーターU10が応答したメッセージの内容(MO001)の形態素解析の結果と、回答候補(MO002)の形態素解析の結果を用いて一致度を計算するため、オペレーターU10が応答したメッセージの内容(MO001)を客観的に評価することができる。
【0043】
[特許請求の範囲との対応関係]
AIサーバー100は、特許請求の範囲の「処理装置」の例である。
応答評価部10は、特許請求の範囲の「第1処理部」の例である。
回答評価部20は、特許請求の範囲の「第2処理部」の例である。
オペレーター通信装置400は、特許請求の範囲の「オペレーター装置」の例である。
顧客通信装置500は、特許請求の範囲の「顧客装置」の例である。
顧客U20からのメッセージ(問い合わせのチャット)は、特許請求の範囲の「第1チャット」の例である。
顧客U20からのメッセージの文字数(MC001N)は、特許請求の範囲の「第1文字数情報」の例である。
オペレーター通信装置400が顧客U20からのメッセージを受信したタイミング(MC001T)は、特許請求の範囲の「第1時刻情報」の例である。
オペレーターU10からの応答のチャットは、特許請求の範囲の「第2チャット」の例である。
オペレーターU10から顧客U20に返信されたタイミング(MO001T)は、特許請求の範囲の「第2時刻情報」の例である。
オペレーター通信装置400が顧客U20からのメッセージを受信してから、オペレーターU10から顧客U20に返信されるまでの時間間隔(MO001T-MC001T)は、特許請求の範囲の「第1時間情報」の例である。
応答速度は、特許請求の範囲の「第1応答速度」の例である。
最適な回答候補(MO002)は、特許請求の範囲の「第1回答内容」の例である。
一致度は、特許請求の範囲の「一致度情報」の例である。
難易度は、特許請求の範囲の「難易度情報」の例である。
【0044】
[変形例]
(a):AIサーバー100は、効率的な並列計算を達成する目的でGPU(Graphics Processing Unit)を付加的に搭載する構成でもよい。
(b):業務情報DB200は、一部または全部をAIサーバー100に実装されるように設計してもよい。
【0045】
(c):応答評価部10がオペレーターU10の応答速度を評価する際、当該オペレーターU10が複数の顧客U20からのチャットに同時に応答する状況を考慮してもよい。かかる状況では、オペレーターU10からの複数の応答に時間を要することは必然であるため、各応答の応答速度が小さかったとしても、応答評価部10は、オペレーターU10の応対業務が優れていると評価してもよい。例えば、応答評価部10は、応答速度を、同時に応答することになる顧客の数に比例した値として算出することができる。
(d):応答終了後に顧客U20から、オペレーターU10の応対に関するアンケートの回答があった場合、応答評価部10は、当該アンケートの内容に基づいて、オペレーターU10の応対業務の評価をしてもよい。アンケートは、例えば、コンタクトセンターサーバー300が顧客通信装置500に送信し、顧客通信装置500からアンケートの回答を受信することができる。
【0046】
(e):上記した発明特定事項は、適宜組み合わせ可能である。
(f):ソフトウェアで実現可能な手段をハードウェアで実現することができ、ハードウェアで実現可能な手段をソフトウェアで実現することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 処理システム
2 サーバーシステム
10 応答評価部
20 回答評価部
100 AIサーバー
200 業務情報DB
300 コンタクトセンターサーバー
400 オペレーター通信装置
500 顧客通信装置
600 構内通信網
700 公衆網
U10 オペレーター
U20 顧客
図1
図2