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  • 特開-部品分離器具及び部品取出装置 図1
  • 特開-部品分離器具及び部品取出装置 図2
  • 特開-部品分離器具及び部品取出装置 図3
  • 特開-部品分離器具及び部品取出装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117572
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】部品分離器具及び部品取出装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
B23P19/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020210
(22)【出願日】2022-02-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)開催日 令和3年11月10日~11日 (2)展示会名 からくり改善▲R▼くふう展2021 (3)開催場所 オンライン開催
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 招宏
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030AA03
(57)【要約】
【課題】部品に凹凸形状が有っても簡単な構成で部品を分離することができ、かつ、部品分離のための新たな動力を不要とすることが可能な部品分離器具、及び、それを用いた部品取出装置を提供する。
【解決手段】部品分離器具10は、積層して配置した部品Mを上から順に取り出す際に、最上位に位置する最上位部品M1とその下に隣接して位置する隣接部品M2とを分離するものである。部品分離器具10は、最上位部品M1の一部が当接される当接部11と、最上位部品M1と隣接部品M2との間に挿入される爪部12と、当接部11と爪部12とを一体的に回動させる回動部13とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層して配置した部品を上から順に取り出す際に、最上位に位置する最上位部品とその下に隣接して位置する隣接部品とを分離する部品分離器具であって、
前記最上位部品の一部が当接される当接部と、
前記最上位部品と前記隣接部品との間に挿入される爪部と、
前記当接部と前記爪部とを一体的に回動させる回動部とを備え、
前記最上位部品の上方に配設され、
前記最上位部品が上方に持ち上げられたときに、前記最上位部品の一部に前記当接部が当接し、前記爪部は前記最上位部品と前記隣接部品との間に挿入されていない基本姿勢と、前記最上位部品が前記基本姿勢における前記当接部に当接した状態から更に上方に持ち上げられたときに、前記最上位部品により前記当接部が上方に回動され、それに伴い、前記爪部が回動して前記最上位部品と前記隣接部品との間に挿入されて、前記最上位部品を通過可能とし、前記隣接部品を通過不能とする分離姿勢との間で、回動可能とされた
ことを特徴とする部品分離器具。
【請求項2】
前記当接部及び前記爪部の回動範囲を制御する制御手段を備え、
前記当接部及び前記爪部は、前記分離姿勢において前記最上位部品が通過した後、自重により前記基本姿勢に戻る
ことを特徴とする請求項1記載の部品分離器具。
【請求項3】
積層して配置した部品を上から順に取り出す部品取出装置であって、
前記請求項1又は請求項2記載の部品分離器具と、
前記最上位部品を上方に持ち上げて取り出す取出手段と
を備えたことを特徴とする部品取出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層して配置した部品を上から順に取り出す際に、最上位に位置する最上位部品とその下に隣接して位置する隣接部品とを分離する部品分離器具、及び、それを用いた部品取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の組立ラインでは、例えば、部品の取出しに際し、部品置き場に積層して置いてある部品を産業用ロボット等により上から1つずつ取り出している。その際、部品の形状によっては、積層した上下の部品が噛み合って密着し、最上部の部品を持ち上げた時にその下の部品も一緒に持ち上がってしまうことがある。そこで、従来より、最上部の部品とその下の部品とを分離する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、積層された多角形状の板状のワークを上から順に取り出す際に、積層された最上部のワークにおける一端縁側に、最上部のワークとその下側のワークとを分離するための分離部材を下面に備えた載置部材を載置し、ワーク保持部材によって最上部のワークを保持し持上げた後、横方向に移動させて最上部のワークの下側のワークに分離部材を当接させて、最上部のワークとその下側のワークとの間にずれを生じさせ、最上部のワークとその下側のワークとを分離する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-37347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、部品が凹凸形状を有する場合には、部品を横方向に移動させることは難しく、特許文献1に記載の方法を適用することは難しい。また、特許文献1の方法では、部品を持ち上げる上下方向の動力とは別に、横方向に移動させる動力が必要であり、機構が複雑化するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、部品に凹凸形状が有っても簡単な構成で部品を分離することができ、かつ、部品分離のための新たな動力を不要とすることが可能な部品分離器具、及び、それを用いた部品取出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品分離器具は、積層して配置した部品を上から順に取り出す際に、最上位に位置する最上位部品とその下に隣接して位置する隣接部品とを分離するものであって、最上位部品の一部が当接される当接部と、最上位部品と隣接部品との間に挿入される爪部と、当接部と爪部とを一体的に回動させる回動部とを備え、最上位部品の上方に配設され、最上位部品が上方に持ち上げられたときに、最上位部品の一部に当接部が当接し、爪部は最上位部品と隣接部品との間に挿入されていない基本姿勢と、最上位部品が基本姿勢における当接部に当接した状態から更に上方に持ち上げられたときに、最上位部品により当接部が上方に回動され、それに伴い、爪部が回動して最上位部品と隣接部品との間に挿入されて、最上位部品を通過可能とし、隣接部品を通過不能とする分離姿勢との間で、回動可能とされたものである。
【0007】
本発明の部品取出装置は、積層して配置した部品を上から順に取り出すものであって、本発明の部品分離器具と、最上位部品を上方に持ち上げて取り出す取出手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一体的に回動する当接部と爪部とを設け、最上位部品が上方に持ち上げられることにより当接部を上方に回動させ、それにより爪部を回動させて最上位部品と隣接部品との間に挿入するようにしたので、部品に凹凸形状が有っても簡単な構成で最上位部品と隣接部品とを分離することができる。また、最上位部品が上方に持ち上げられることを利用して当接部及び爪部を回動させるようにしたので、当接部及び爪部を回動させるための新たな動力を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る部品分離器具及び部品取出装置の構成を表す図である。
図2図1に示した部品分離器具の動きを表す図である。
図3図2に続く部品分離器具の動きを表す図である。
図4図1に示した部品分離器具の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る部品分離器具10及び部品取出装置1の構成を表すものである。図2及び図3は、部品分離器具10及び部品取出装置1の動きを表すものである。図4は、部品分離器具10の構成を説明する説明図である。
【0012】
部品分離器具10は、積層して配置した部品Mを上から順に取り出す際に、最上位に位置する最上位部品M1とその下に隣接して位置する隣接部品M2とを分離するものである。部品取出装置1は、積層して配置した部品を上から順に取り出すものであり、部品分離器具10と、最上位部品M1を上方に持ち上げて取り出す取出手段20とを備えている。取出手段20は、例えば、産業用ロボットにより構成され、最上位部品M1を吸着又は把持等により保持する保持部21と、保持部21を上に移動させて最上位部品M1を上に持ち上げるアーム部22とを有している。
【0013】
部品分離器具10は、最上位部品M1の例えば上面の一部が当接される当接部11と、最上位部品M1と隣接部品M2との間に挿入される爪部12と、当接部11と爪部12とを一体的に回動させる回動部13とを備えている。部品分離器具10は、例えば、支持部材14に対し回動部13により回動可能に配設されている。支持部材14は、例えば、積層された部品Mの脇に配置されており、部品分離器具10は最上位部品M1の上方に位置するように配設されている。
【0014】
当接部11及び爪部12は、例えば、平板状又は直線棒状であることが好ましく、回動部13に対して配設されている。当接部11及び爪部12の少なくとも一部は、回動部13の回転中心に対して垂直な同一平面内に位置することが好ましい。当接部11の基端部と爪部12の基端部との位置は近い方が好ましく、重なっていることが好ましい。当接部11の長さ方向と爪部12の長さ方向との間の角度は、85度から95度の範囲内が好ましく、90度が最も好ましい。部品分離器具10を部品Mにより近づけて配置することができ、小型化による軽量化を図ることができるからである。回動部13の回転中心は、最上位部品M1が持ち上げられる方向に対して垂直とされることが好ましい。
【0015】
また、部品分離器具10は、最上位部品M1が上方に持ち上げられたときに、最上位部品M1の例えば上面の一部に当接部11が当接し、爪部12は最上位部品M1と隣接部品M2との間に挿入されていない基本姿勢と、最上位部品M1が基本姿勢における当接部11に当接した状態から更に上方に持ち上げられたときに、最上位部品M1により当接部が上方に回動され、それに伴い、爪部12が回動して最上位部品M1と隣接部品M2との間に挿入されて、最上位部品M1を通過可能とし、隣接部品M2を通過不能とする分離姿勢との間で、回動可能とされている。すなわち、最上位部品M1が上方に持ち上げられることを利用して当接部11及び爪部12が基本姿勢から分離姿勢に回動するようになっている。
【0016】
部品分離器具10は、例えば、当接部11及び爪部12の回動範囲を制御する制御手段を備えていることが好ましい。制御手段は、例えば、当接部11の少なくとも一部又は爪部12の少なくとも一部を係止することにより基本姿勢で停止させる基本停止部15と、分離姿勢で停止させる分離停止部16とを有していることが好ましい。基本停止部15及び分離停止部16は、例えば、支持部材14から突出して設けられている。分離停止部16は、分離姿勢において最上位部品M1が通過した後、自重により回動して基本姿勢に戻ることができる位置に設けることが好ましい。当接部11及び爪部12の自重を利用して基本姿勢に戻すことができるからである。
【0017】
部品分離器具10の各種寸法は、例えば、下記式(1)及び式(2)を満たすように構成することが好ましい(図4参照)。式(1)のように構成することにより、爪部12の先端部を容易に最上位部品M1と隣接部品M2との間に挿入することができるからである。また、式(2)のように構成することにより、当接部11及び爪部12の基端部と最上位部品M1とが干渉しないようにすることができるからである。
Y+2(X1-X2)<D (1)
L<X1 (2)
【0018】
なお、式(1)及び式(2)におけるX1、X2、Y、L、Dは下記の通りである。X1は、最上位部品M1が上方に持ち上げられる際の部品分離器具10側の端部の移動位置を直線で表した端部移動直線17と、回動部13の回動中心を通り端部移動直線と平行な回動中心直線18との間の距離である。X2は、回動中心直線18と、基本姿勢における爪部12の部品M側の先端部を通り回動中心直線18と平行な爪部基本位置直線19との間の距離である。Yは、爪部12の長さ(爪部12の先端部から基端部までの長さ)である。Lは、基本姿勢における当接部11及び爪部12の基端部から回動部13の回動中心までの距離である。Dは、当接部11が当接する最上位部品M1の上面と隣接部品M2の上面との間の距離である。
【0019】
この部品分離器具10は、例えば、次のように動作する。まず、例えば、図2(A)に示したように、保持部21により最上位部品M1を保持し、アーム部22により上方に持ち上げる。その際、隣接部品M2が最上位部品M1と噛み合って密着している場合には、隣接部品M2も最上位部品M1と共に上方に持ち上げられる。部品分離器具10は、当接部11に最上位部品M1が当接するまで、当接部11及び爪部12の自重によりこれらが下側に向かう方向に回動するように力が加わっているが、当接部11及び爪部12の回動は基本停止部15により停止されており、基本姿勢の状態となっている。
【0020】
次いで、例えば、図2(B)に示したように、最上位部品M1が基本姿勢における当接部11に当接した状態から更に上方に持ち上げられると、最上位部品M1により当接部11が上方に回動され、それに伴い、爪部12が回動して最上位部品M1と隣接部品M2との間に挿入される。
【0021】
続いて、例えば、図3(C)に示したように、最上位部品M1が更に持ち上げられると、当接部11は、最上位部品M1が当たらない位置まで回動され、最上位部品M1は部品分離器具10の横を通過して、部品分離器具10の上方に移動する。また、隣接部品M2は、最上位部品M1と共に持ち上げられ、最上位部品M1と隣接部品M2の間に挿入された爪部12に当接する。爪部12は、隣接部品M2により上方に回動されるが、当接部11が分離停止部16に当接すると回動が停止され、分離姿勢の状態で固定される。これにより、隣接部品M2は上方への移動が停止され、部品分離器具10の横を通過することができず、最上位部品M1から剥がれて分離される。
【0022】
次に、例えば、図3(D)に示したように、部品分離器具10を通過した最上位部品M1は、取出手段20により更に持ち上げられ取り出される。隣接部品M2は、最上位部品M1から剥がれて下に落下し、次の最上位部品M1となる。また、当接部11及び爪部12は自重により下側に回動し、基本停止部15に当接すると回動が停止され、基本姿勢の状態となる。
【0023】
このように本実施の形態によれば、一体的に回動する当接部11と爪部12とを設け、最上位部品M1が上方に持ち上げられることにより当接部11を上方に回動させ、それにより爪部12を回動させて最上位部品M1と隣接部品M2との間に挿入するようにしたので、部品Mに凹凸形状が有っても簡単な構成で最上位部品M1と隣接部品M2とを分離することができる。また、最上位部品M1が上方に持ち上げられることを利用して当接部11及び爪部12を回動させるようにしたので、当接部11及び爪部12を回動させるための新たな動力を不要とすることができる。
【0024】
また、当接部11及び爪部12の回動範囲を制御する制御手段を設け、分離姿勢において最上位部品M1が通過した後、当接部11及び爪部12が自重により基本姿勢に戻るようにすれば、自動的に分離姿勢から基本姿勢に戻すことができる。
【0025】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、各構成要素の具体的な構成は異なっていてもよい。加えて、上述した各構成要素の全てを備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…部品取出装置、10…部品分離器具、11…当接部、12…爪部、13…回動部、14…支持部材、15…基本停止部、16…分離停止部、20…取出手段、21…保持部、22…アーム部、M…部品、M1…最上位部品、M2…隣接部品
図1
図2
図3
図4