IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-スイッチ装置、電子機器、及び車両 図1
  • 特開-スイッチ装置、電子機器、及び車両 図2
  • 特開-スイッチ装置、電子機器、及び車両 図3
  • 特開-スイッチ装置、電子機器、及び車両 図4
  • 特開-スイッチ装置、電子機器、及び車両 図5
  • 特開-スイッチ装置、電子機器、及び車両 図6
  • 特開-スイッチ装置、電子機器、及び車両 図7
  • 特開-スイッチ装置、電子機器、及び車両 図8
  • 特開-スイッチ装置、電子機器、及び車両 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117577
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】スイッチ装置、電子機器、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/08 20060101AFI20230817BHJP
   H03K 17/695 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H03K17/08 C
H03K17/695
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020220
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 竜也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 達也
(72)【発明者】
【氏名】宅間 徹
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX34
5J055AX35
5J055AX56
5J055AX64
5J055BX16
5J055CX13
5J055CX28
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055EZ10
5J055EZ25
5J055EZ54
5J055FX05
5J055FX13
5J055GX07
(57)【要約】
【課題】出力電圧が電源電圧より大きくなったときに、その後出力電圧が低下したままラッチアップすることを抑制することができるスイッチ装置を提供する。
【解決手段】スイッチ装置(1)は、電源電圧が印加される電源端子(T1)と、負荷(3)が接続される出力端子(T2)と、発振器(31)と、前記発振器の出力に基づき動作するチャージポンプ回路(32)と、前記チャージポンプ回路の出力を駆動電圧として動作するドライバ(33)と、前記電源端子と前記出力端子との間に設けられ、前記ドライバによって駆動されるスイッチ素子(10)と、前記出力端子に印加される出力電圧が前記電源電圧より大きいことを検出する検出部(90)と、を備える。前記発振器は、前記出力電圧が前記電源電圧より大きいことが前記検出部によって検出されると、動作を停止する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が印加されるように構成される電源端子と、
負荷が接続されるように構成される出力端子と、
発振器と、
前記発振器の出力に基づき動作するように構成されるチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路の出力を駆動電圧として動作するように構成されるドライバと、
前記電源端子と前記出力端子との間に設けられ、前記ドライバによって駆動されるように構成されるスイッチ素子と、
前記出力端子に印加される出力電圧が前記電源電圧より大きいことを検出するように構成される検出部と、
を備え、
前記発振器は、前記出力電圧が前記電源電圧より大きいことが前記検出部によって検出されると、動作を停止するように構成される、スイッチ装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記出力電圧又は前記出力電圧に応じた第1電圧と、前記電源電圧又は前記電源電圧に応じた第2電圧と、を比較するように構成されるコンパレータを含む、請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記コンパレータは、
第1PMOSFET及び第2PMOSFETによって構成される差動対トランジスタと、
前記第1PMOSFETに直列接続される第1NMOSFETと、
前記第2PMOSFETに直列接続される第2NMOSFETと、
前記第1NMOSFETのゲート-ソース間電圧をクランプする第1クランパと、
前記第2NMOSFETのゲート-ソース間電圧をクランプする第2クランパと、
を備える、請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記スイッチ素子は、前記出力端子から前記電源端子に向かう方向が順方向である寄生ダイオードを含み、
前記検出部は、前記出力電圧が前記電源電圧より大きく前記電源電圧に前記寄生ダイオードの順方向電圧を加算した値より小さい範囲内で、前記出力電圧が前記電源電圧より大きいことを検出するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記チャージポンプ回路は、寄生NPNトランジスタ及び寄生PNPトランジスタを含み、
前記寄生NPNトランジスタ及び前記寄生PNPトランジスタによって構成されるサイリスタがオンになると、前記チャージポンプ回路の出力は前記サイリスタがオフであるときに比べて低下する、請求項1~4のいずれか一項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のスイッチ装置と、前記スイッチ装置に接続される負荷と、を備える、電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、スイッチ装置、電子機器、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車載IPD[intelligent power device]などのスイッチ装置は、例えば誘導性負荷に接続される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図1は、誘導性負荷の一種であるソレノイドと、スイッチ装置の一種である車載用ハイサイドスイッチLSIと、直流電源との接続例を示す図である。車載用ハイサイドスイッチLSI101は、電源端子TVBBと、入力端子TINと、グランド端子TGNDと、出力端子TOUTと、を備える。
【0004】
電源端子TVBBには、電源電圧VBBが印加される。電源電圧VBBは、例えば車両に搭載されるバッテリから出力される電圧である。入力端子TINは、直流電源102の正極に接続される。出力端子TOUTは、ソレノイド103の第1端に接続される。グランド端子TGND、直流電源102の負極、及びソレノイド103の第2端は、グランド電位に接続される。
【0005】
車載用ハイサイドスイッチLSI101では、例えばソレノイド103の逆起電力によって出力端子TOUTに印加される出力電圧Vоが電源端子TVBBに印加される電源電圧VBBより大きくなったときに、その後出力端子OUTに印加される出力電圧Vоが低下したままラッチアップするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-96316号公報(段落0019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、図2図4を参照して、上述したラッチアップの発生メカニズムについて説明する。
【0008】
図2は、車載用ハイサイドスイッチLSI101に設けられるゲート制御部30の構成例を示す図である。図3は、ゲート制御部30に設けられるチャージポンプ回路32に含まれるPMOSFET324及び326の縦断面構造を示す図である。図4は、チャージポンプ回路32に含まれる寄生NPNトランジスタQ1及び寄生PNPトランジスタQ2を示す図である。
【0009】
ゲート制御部30は、スイッチ素子であるNMOSFET10をオン/オフ制御する。NMOSFET10のドレインには電源電圧VBBが印加され、NMOSFET10のソースには出力電圧Vоが印加される。
【0010】
ゲート制御部30は、発振器31と、チャージポンプ回路32と、ドライバ33と、抵抗34と、を備える。チャージポンプ回路32は、フライングキャパシタ321及び322と、NMOSFET323及び325と、PMOSFET324及び326と、ダイオード327と、出力キャパシタ328と、を備える。
【0011】
発振器31は、電圧VBBM5V(=電源電圧VBB-5[V])を基準とし、電圧VBBREF(≒電源電圧VBB)を駆動電圧として動作し、第1クロック信号CLK1及び第2クロック信号CLK2を生成する。第2クロック信号CLK2は、第1クロック信号CLK1の相補信号である。電圧VBBREFは、電源電圧VBBに応じた電圧である。
【0012】
チャージポンプ回路32は、発振器31から出力される第1クロック信号CLK1及び第2クロック信号CLK2に基づき動作し、電圧VBBREFよりも高い電圧VGを出力する。
【0013】
ドライバ33は、電圧OUT_Rを基準とし、電圧VGを駆動電圧として動作し、NMOSFET10を駆動する。電圧OUT_Rが印加されるラインは、出力電圧Vоが印加されるラインに抵抗34を介して接続される。したがって、電圧OUT_Rは、出力電圧Vоに応じた電圧となる。
【0014】
PMOSFET324及び326は、図3に示す縦断面構造である。図3に示す縦断面構造では、N型エピタキシャル成長層301内にP型ウェル302が形成される。P型ウェル302内にN型ウェル303が形成される。N型ウェル303内に、N型ウェル303と濃度が異なるN型ウェル304が形成される。N型ウェル304内に高濃度P型領域305、高濃度P型領域306、及び高濃度N型領域307が形成される。
【0015】
電圧VBBREFは、N型エピタキシャル成長層301に印加される。電圧OUT_Rは、P型ウェル302に印加される。電圧VGは、高濃度P型領域306及び高濃度N型領域307に印加される。フライングキャパシタ322から出力される電圧CP2は、高濃度P型領域305に印加される。
【0016】
図3に示す縦断面構造において、寄生NPNトランジスタQ1及び寄生PNPトランジスタQ2が形成される。
【0017】
寄生PNPトランジスタQ2のエミッタに電圧CP2が印加される。寄生PNPトランジスタQ2のベース及び寄生NPNトランジスタQ1のコレクタに電圧VGが印加される。寄生PNPトランジスタQ2のコレクタ及び寄生NPNトランジスタQ1のベースに電圧OUT_Rが印加される。寄生NPNトランジスタQ1のエミッタに電源電圧VBBが印加される。
【0018】
寄生NPNトランジスタQ1及び寄生PNPトランジスタQ2によってサイリスタが構成される。出力端子TOUTから電源端子TVBBに向かって電流が流れるとき、出力電圧Voは、電源電圧VBBにNMOSFET10のソース-ドレイン間に形成される寄生ダイオード(ボディダイオード)D1の順方向電圧Vfを加算した値になる。寄生ダイオード(ボディダイオード)D1は、NMOSFET10のソースからドレインに向かう向きが順方向である。
【0019】
このように出力電圧Voが増加するのに伴い、電圧OUT_Rも増加し、その結果、寄生NPNトランジスタQ1がオンになる。寄生NPNトランジスタQ1がオンになると、電圧VGが低下する。電圧VGが減少した状態で、電圧CP2がローレベルからハイレベルに切り替わると、寄生PNPトランジスタQ2もオンになる。つまり、寄生NPNトランジスタQ1及び寄生PNPトランジスタQ2がオンになると、サイリスタがオンになるため、電圧VGが低下したままとなる。つまり、ゲート制御部30がNMOSFET10をオンすることができなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本明細書中に開示されているスイッチ装置は、電源電圧が印加されるように構成される電源端子と、負荷が接続されるように構成される出力端子と、発振器と、前記発振器の出力に基づき動作するように構成されるチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ回路の出力を駆動電圧として動作するように構成されるドライバと、前記電源端子と前記出力端子との間に設けられ、前記ドライバによって駆動されるように構成されるスイッチ素子と、前記出力端子に印加される出力電圧が前記電源電圧より大きいことを検出するように構成される検出部と、を備える。前記発振器は、前記出力電圧が前記電源電圧より大きいことが前記検出部によって検出されると、動作を停止するように構成される。
【0021】
本明細書中に開示されている電子機器は、上記構成のスイッチ装置と、前記スイッチ装置に接続される負荷と、を備える。
【0022】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成の電子機器を備える。
【発明の効果】
【0023】
本明細書中に開示されている発明によれば、スイッチ装置の出力電圧が電源電圧より大きくなったときに、その後スイッチ装置の出力電圧が低下したままラッチアップすることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、ソレノイドとハイサイドスイッチICと直流電源との接続例を示す図である。
図2図2は、ゲート制御部の構成例を示す図である。
図3図3は、チャージポンプ回路に含まれるPMOSFETの縦断面構造を示す図である。
図4図4は、チャージポンプ回路に含まれる寄生NPNトランジスタ及び寄生PNPトランジスタを示す図である。
図5図5は、半導体集積回路装置の全体構成を示す図である。
図6図6は、検知部の一構成例を示す図である。
図7図7は、図6に示す検知部の一具体例を示す図である。
図8図8は、図6に示す検知部の他の具体例を示す図である。
図9図9は、車両の一構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、MOSFETとは、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなるゲート構造を有する電界効果トランジスタを意味する。つまり、MOSFETのゲート構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0026】
<半導体集積回路装置>
図5は、半導体集積回路装置の全体構成を示す図である。本構成例の半導体集積回路装置1は、ECU[electronic control unit]2からの指示に応じて電源電圧VBBの印加端と負荷3との間を導通/遮断する車載用ハイサイドスイッチLSI(=車載IPDの一種)である。
【0027】
なお、半導体集積回路装置1は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、外部端子T1~T5を備える。外部端子T1は、不図示のバッテリから電源電圧VBB(例えば12V)の供給を受け付けるための電源端子(VBBピン)である。外部端子T2は、負荷3(バルブランプ、リレーコイル、ソレノイド、発光ダイオード、または、モータなど)を外部接続するための負荷接続端子ないしは出力端子(OUTピン)である。外部端子T3は、ECU2から外部制御信号Siの外部入力を受け付けるための信号入力端子(INピン)である。外部端子T4は、ECU2に出力異常報知信号FAILを外部出力するための信号出力端子(FAILピン)である。外部端子T5は、ECU2に出力電流検出信号SENSEを外部出力するための信号出力端子(SENSEピン)である。なお、外部端子T5と接地端との間には、外部センス抵抗4が外付けされている。外部端子T6は、接地端に接続されるグランド端子(GNDピン)である。
【0028】
また、半導体集積回路装置1は、NMOSFET10と、出力電流監視部20と、ゲート制御部30と、制御ロジック部40と、信号入力部50と、内部電源部60と、異常保護部70と、出力電流検出部80と、検出部90と、を備える。
【0029】
NMOSFET10は、ドレインが外部端子T1に接続されてソースが外部端子T2に接続されたパワートランジスタである。このように接続されたNMOSFET10は、電源電圧VBBの印加端から負荷3を介して接地端に至る電流経路を導通/遮断するためのスイッチ素子(ハイサイドスイッチ)として機能する。なお、NMOSFET10は、ゲート駆動信号G1がハイレベルであるときにオンし、ゲート駆動信号G1がローレベルであるときにオフする。
【0030】
出力電流監視部20は、NMOSFET21及び22を含み、NMOSFET10に流れる出力電流に応じたセンス電圧を生成する。
【0031】
NMOSFET21及び22は、いずれもNMOSFET10に対して並列に接続されたミラートランジスタであり、出力電流Ioに応じたセンス電流を生成する。NMOSFET10とNMOSFET21及び22とのサイズ比は、m:1(ただしm>1)である。従って、センス電流は、出力電流を1/mに減じた大きさとなる。なお、NMOSFET21及び22は、NMOSFET10と同様、ゲート駆動信号G1がハイレベルであるときにオンし、ゲート電圧G1がローレベルであるときにオフする。
【0032】
ゲート制御部30は、ゲート制御信号S1の電流能力を高めたゲート駆動信号G1を生成してNMOSFET10、21、及び22の各ゲートに出力することにより、NMOSFET10、21、及び22のオン/オフ制御を行う。ゲート制御部30の構成例は、図2に示す構成例、すなわち、上述した車載用ハイサイドスイッチLSI101に設けられるゲート制御部30の構成例と同一である。ドライバ33(図2参照)は、ゲート駆動信号G1をNMOSFET10、21、及び22の各ゲートに出力する。
【0033】
制御ロジック部40は、内部電源電圧Vregの供給を受けてゲート制御信号S1を生成する。例えば、外部制御信号Siがハイレベル(=NMOSFET10をオンさせるときの論理レベル)であるときには、内部電源部60から内部電源電圧Vregが供給されるので、制御ロジック部40が動作状態となり、ゲート制御信号S1がハイレベル(=Vreg)となる。一方、外部制御信号Siがローレベル(=NMOSFET10をオフさせるときの論理レベル)であるときには、内部電源部60から内部電源電圧Vregが供給されないので、制御ロジック部40が非動作状態となり、ゲート制御信号S1がローレベル(=GND)となる。また、制御ロジック部40は、異常保護部70の各種出力信号を監視している。制御ロジック部40は、異常保護部70の各種出力信号に応じて、出力異常報知信号FAILを生成する機能も備える。なお、制御ロジック部40は、異常保護部70から出力される過電流保護信号に応じて出力電流をゲート制御部30に制限させる機能も備える。
【0034】
信号入力部50は、外部端子T3から外部制御信号Siの入力を受け付けて内部電源部60に伝達するシュミットトリガである。なお、外部制御信号Siは、例えば、NMOSFET10をオンさせるときにハイレベルとなり、NMOSFET10をオフさせるときにローレベルとなる。
【0035】
内部電源部60は、電源電圧VBBから所定の内部電源電圧Vregを生成して半導体集積回路装置1の各部に供給する。なお、内部電源部60の動作可否は、外部制御信号Siに応じて制御される。より具体的に述べると、内部電源部60は、例えば、外部制御信号Siがハイレベルであるときに動作状態となり、外部制御信号Siがローレベルであるときに非動作状態となる。
【0036】
異常保護部70は、半導体集積回路装置1の各種異常を検出する回路ブロックであり、過電流保護回路71と、負荷オープン検出回路72と、温度保護回路73と、減電圧保護回路74と、を含む。過電流保護回路71は、センス電圧の監視結果に応じた過電流保護信号を生成する。負荷オープン検出回路72は、出力電圧Voの監視結果に応じた負荷オープン検出信号を生成する。温度保護回路73は、半導体集積回路装置1(特にNMOSFET10周辺)の異常発熱を検出する温度検出素子(不図示)を含み、その検出結果(=異常発熱が生じているか否か)に応じた温度保護信号を生成する。減電圧保護回路74は、電源電圧VBBないしは内部電源電圧Vregの監視結果(=減電圧異常が生じているか否か)に応じた減電圧保護信号を生成する。
【0037】
出力電流検出部80は、不図示のバイアス手段を用いて、NMOSFET22のソース電圧と出力電圧Voとを一致させることにより、外部端子T2から出力される電流に応じたセンス電流を生成する。出力電流検出部80は、センス電流を外部端子T5に出力する。従って、ECU2には、センス電流を外部センス抵抗4で電流/電圧変換した出力電流検出信号SENSEが伝達される。
【0038】
検出部90は、外部端子T2に印加される出力電圧Voが外部端子T1に印加される電源電圧VBBより大きいことを検出する。発振器31(図2参照)は、出力電圧Voが電源電圧VBBより大きいことが検出部90によって検出されると、動作を停止する。したがって、出力電圧Voが電源電圧VBBより大きいことが検出部90によって検出されると、電圧CP2(図2参照)はハイレベルにならない。その結果、出力電圧Voが電源電圧VBBより大きいことが検出部90によって検出されると、寄生PNPトランジスタQ2(図4参照)、ひいては寄生NPNトランジスタQ1及び寄生PNPトランジスタQ2によって構成されるサイリスタがオンにならない。つまり、半導体集積回路装置1は、出力電圧Voが電源電圧VBBより大きくなったときに、その後スイッチ装置の出力電圧Voが低下したままラッチアップすることを抑制することができる。
【0039】
図6は、検知部90の一構成例を示す図である。図6に示す検知部90は、コンパレータ91と、NORゲート92と、を備える。図6に示す構成例によると、検出部90を簡単な構成にすることができる。
【0040】
コンパレータ91は、出力電圧Voに応じた電圧OUT_Rと、電源電圧VBBに応じた電圧VBBREFと、を比較する。コンパレータ91は、入力オフセットを有する。出力電圧Voが電源電圧VBBより大きく電源電圧VBBにNMOSFET10の寄生ダイオード(ボディダイオード)D1(図2参照)の順方向電圧Vfを加算した値より小さい範囲内で、出力電圧Voが電源電圧VBBより大きいことをコンパレータ91が検出するように、入力オフセットが設定される。これにより、NMOSFET10の寄生ダイオード(ボディダイオード)D1(図2参照)がオンになるよりも前に発振器31が動作しなくなるため、ラッチアップをより確実に抑制することができる。
【0041】
コンパレータ91は、出力電圧Voが電源電圧VBBより大きいことを検出すると、ハイレベルの信号を出力する。一方、コンパレータ91は、出力電圧Voが電源電圧VBBより大きいことを検出しないと、ローレベルの信号を出力する。
【0042】
なお、図6に示す構成例とは異なり、電圧OUT_Rの代わりに出力電圧Voがコンパレータ91の非反転入力端子に供給されてもよい。また、図6に示す構成例とは異なり、電圧VBBREFの代わりに電源電圧VBBがコンパレータ91の非反転入力端子に供給されてもよい。
【0043】
NORゲート92は、コンパレータ91の出力、イネーブル信号バーEN_DRV、及び出力電圧検出信号VODETを入力する。イネーブル信号バーEN_DRVは、例えば制御ロジック部40から出力される。制御ロジック部40は、ドライバ33をイネーブル状態にするときにイネーブル信号バーEN_DRVをローレベルにし、ドライバ33をディセーブル状態にするときにイネーブル信号バーEN_DRVをハイレベルにする。出力電圧検出信号VODETは、例えば制御ロジック部40から出力される。制御ロジック部40は、負荷オープン検出回路72によって負荷オープンが検出されていないときに出力電圧検出信号VODETをローレベルにし、負荷オープン検出回路72によって負荷オープンが検出されているときに出力電圧検出信号VODETをハイレベルにする。
【0044】
NORゲート92は、コンパレータ91の出力、イネーブル信号バーEN_DRV、及び出力電圧検出信号VODETの否定論理和であるイネーブル信号EN_OSCを出力する。イネーブル信号EN_OSCは、発振器31(図2参照)に供給される。発振器31(図2参照)は、イネーブル信号EN_OSCがハイレベルであるときにイネーブル状態になる。イネーブル信号EN_OSCがローレベルであるときにディセーブル状態になる。
【0045】
なお、本実施形態とは異なり、例えば検出部90がイネーブル信号バーEN_DRV及び出力電圧検出信号VODETを入力しない構成とし、NORゲート92をNOTゲートに置換した構成としてもよい。
【0046】
図7は、図6に示す検知部90の一具体例を示す図である。
【0047】
図7に示す検知部90は、カレントミラー回路を構成するPMOSFET901及び902を備える。PMOSFET901のドレインには基準電流IREFを供給するシンク電流源(不図示)が接続される。
【0048】
図7に示す検知部90は、差動対トランジスタを構成するPMOSFET903及び904と、抵抗905及び906と、をさらに備える。差動対トランジスタには上述したカレントミラー回路から電流が供給される。PMOSFET903のソースとPMOSFET904のソースとの間には、入力オフセット用の抵抗905が設けられる。PMOSFET903のゲートには電圧VBBREFが直接印加され、PMOSFET904のゲートには電圧VBBREFが抵抗906を介して印加される。
【0049】
図7に示す検知部90は、デプレッション型NMOSFET907及び908をさらに備える。ダイオード接続されたデプレッション型NMOSFET907がPMOSFET903に直列接続され、ダイオード接続されたデプレッション型NMOSFET908がPMOSFET904に直列接続される。
【0050】
図7に示す検知部90は、NMOSFET909及び910と、デプレッション型NMOSFET911をさらに備える。NMOSFET909及び910はカレントミラー回路を構成する。ダイオード接続されたデプレッション型NMOSFET911がNMOSFET910に接続される。NMOSFET910とデプレッション型NMOSFET911との接続ノードがコンパレータ91の出力端となる。
【0051】
図8は、図6に示す検知部90の他の具体例を示す図である。
【0052】
図8に示す検知部90は、図7に示す検知部90のコンパレータ91にNMOSFET912及び914並びにPMOSFET913及び914が追加された構成である。
【0053】
NMOSFET912は、PMOSFET903とデプレッション型NMOSFET907との間に設けられる。すなわち、NMOSFET912は、PMOSFET903に直列接続される。
【0054】
NMOSFET914は、PMOSFET904とデプレッション型NMOSFET908との間に設けられる。すなわち、NMOSFET914は、PMOSFET904に直列接続される。
【0055】
ダイオード接続されたPMOSFET913は、NMOSFET912のゲート-ソース間に設けられ、NMOSFET912のゲート-ソース間電圧をクランプする。
【0056】
ダイオード接続されたPMOSFET915は、NMOSFET914のゲート-ソース間に設けられ、NMOSFET914のゲート-ソース間電圧をクランプする。
【0057】
図8に示す検知部90のコンパレータ91は、図7に示す検知部90のコンパレータ91に比べて、耐圧が向上する。
【0058】
<車両への適用>
図9は、車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリ(本図では不図示)と、バッテリから電力供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18とを搭載している。なお、本図における電子機器X11~X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0059】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0060】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0061】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0062】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0063】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0064】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0065】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0066】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0067】
なお、先に説明した半導体集積回路装置1、ECU2、及び、負荷3は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。
【0068】
<その他>
上記の実施形態では、車載用ハイサイドスイッチLSIを例に挙げたが、本明細書中に開示されている発明の適用対象は、これに限定されるものではなく、車載用途以外のハイサイドスイッチLSIにも広く適用することができる。
【0069】
また、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理
解されるべきである。
【0070】
以上説明したスイッチ装置(1)は、電源電圧が印加されるように構成される電源端子(T1)と、負荷(3)が接続されるように構成される出力端子(T2)と、発振器(31)と、前記発振器の出力に基づき動作するように構成されるチャージポンプ回路(32)と、前記チャージポンプ回路の出力を駆動電圧として動作するように構成されるドライバ(33)と、前記電源端子と前記出力端子との間に設けられ、前記ドライバによって駆動されるように構成されるスイッチ素子(10)と、前記出力端子に印加される出力電圧が前記電源電圧より大きいことを検出するように構成される検出部(90)と、を備え、前記発振器は、前記出力電圧が前記電源電圧より大きいことが前記検出部によって検出されると、動作を停止するように構成される構成(第1の構成)である。
【0071】
上記第1の構成であるスイッチ装置は、スイッチ装置の出力電圧が電源電圧より大きくなったときに、その後スイッチ装置の出力電圧が低下したままラッチアップすることを抑制することができる。
【0072】
上記第1の構成であるスイッチ装置において、前記検出部は、前記出力電圧又は前記出力電圧に応じた第1電圧と、前記電源電圧又は前記電源電圧に応じた第2電圧と、を比較するように構成されるコンパレータ(91)を含む構成(第2の構成)であってもよい。
【0073】
上記第2の構成であるスイッチ装置は、検出部を簡単な構成にすることができる。
【0074】
上記第2の構成であるスイッチ装置において、前記コンパレータは、第1PMOSFET(903)及び第2PMOSFET(904)によって構成される差動対トランジスタと、前記第1PMOSFETに直列接続される第1NMOSFET(912)と、前記第2PMOSFETに直列接続される第2NMOSFET(914)と、前記第1NMOSFETのゲート-ソース間電圧をクランプする第1クランパ(913)と、前記第2NMOSFETのゲート-ソース間電圧をクランプする第2クランパ(915)と、を備える構成(第3の構成)であってもよい。
【0075】
上記第2の構成であるスイッチ装置は、コンパレータの耐圧を向上させることができる。
【0076】
上記第1~第3いずれかの構成であるスイッチ装置において、前記スイッチ素子は、前記出力端子から前記電源端子に向かう方向が順方向である寄生ダイオードを含み、前記検出部は、前記出力電圧が前記電源電圧より大きく前記電源電圧に前記寄生ダイオードの順方向電圧を加算した値より小さい範囲内で、前記出力電圧が前記電源電圧より大きいことを検出するように構成される構成(第4の構成)であってもよい。
【0077】
上記第4の構成であるスイッチ装置は、ラッチアップをより確実に抑制することができる。
【0078】
上記第1~第4いずれかの構成であるスイッチ装置において、前記チャージポンプ回路は、寄生NPNトランジスタ及び寄生PNPトランジスタを含み、前記寄生NPNトランジスタ及び前記寄生PNPトランジスタによって構成されるサイリスタがオンになると、前記チャージポンプ回路の出力は前記サイリスタがオフであるときに比べて低下する構成(第5の構成)であってもよい。
【0079】
上記第5の構成であるスイッチ装置は、スイッチ装置の出力電圧が電源電圧より大きくなったときに、サイリスタがオンしてしまい、その後スイッチ装置の出力電圧が低下したままラッチアップすることを抑制することができる。
【0080】
以上説明した電子機器(X11~X18)は、上記第1~第5いずれかの構成のスイッチ装置と、前記スイッチ装置に接続される負荷(3)と、を備える構成(第6の構成)である。
【0081】
上記第6の構成である電子機器は、スイッチ装置の出力電圧が電源電圧より大きくなったときに、その後スイッチ装置の出力電圧が低下したままラッチアップすることを抑制することができる。
【0082】
以上説明した車両(X)は、上記第6の構成である電子機器を備える構成(第7の構成)である。
【0083】
上記第11の構成である車両は、スイッチ装置の出力電圧が電源電圧より大きくなったときに、その後スイッチ装置の出力電圧が低下したままラッチアップすることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 半導体集積回路装置(スイッチ装置)
2 ECU
3 負荷
4 外部センス抵抗
10 NMOSFET(スイッチ素子)
20 出力電流監視部
21、22 NMOSFET
30 ゲート制御部
31 発振器
32 チャージポンプ回路
33 ドライバ
34 抵抗
40 制御ロジック部
50 信号入力部
60 内部電源部
70 異常保護部
71 過電流保護回路
72 負荷オープン検出回路
73 温度保護回路
74 減電圧保護回路
80 出力電流検出部
90 検出部
91 コンパレータ
92 NORゲート
101 車載用ハイサイドスイッチLSI
102 直流電源
103 ソレノイド
301 N型エピタキシャル成長層
302 P型ウェル
303、304 N型ウェル
305、306 高濃度P型領域
307 高濃度N型領域
321、322 フライングキャパシタ
323、325 NMOSFET
324、326 PMOSFET
327 ダイオード
328 出力キャパシタ
901~904、913、915 PMOSFET
905、906 抵抗
907、908、911 デプレッション型NMOSFET
909、910、912、914 NMOSFET
D1 寄生ダイオード
Q1 寄生NPNトランジスタ
Q2 寄生PNPトランジスタ
T1~T6 外部端子
TIN 入力端子
TGND グランド端子
TOUT 出力端子
TVBB 電源端子
X 車両
X11~X18 電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9