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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117595
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 3/347 20060101AFI20230817BHJP
   F26B 11/08 20060101ALI20230817BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
F26B3/347
F26B11/08
F26B25/00 A
F26B25/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020240
(22)【出願日】2022-02-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 株式会社工業通信が令和3年10月1日に発行した化学装置,第63巻,第10号にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】390024394
【氏名又は名称】山本ビニター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隼人
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳身
(72)【発明者】
【氏名】大川原 一穂
(72)【発明者】
【氏名】児玉 順一
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰司
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA04
3L113AB07
3L113AC13
3L113AC58
3L113AC68
3L113BA39
3L113CA02
3L113CA04
3L113CA20
3L113CB08
3L113CB29
3L113DA11
3L113DA24
(57)【要約】
【課題】被乾燥物に接触し該被乾燥物を乾燥させる加熱部材を備えた乾燥装置に関し、凝集物やダマの影響を抑えつつ被乾燥物全体を均一に乾燥する。
【解決手段】被乾燥物Pに接触し被乾燥物Pを加熱する加熱部材130と、被乾燥物Pに向けて電磁波を照射する照射部40と、被乾燥物Pの温度又は水分に関する情報を取得する取得部128と、取得部128で取得された情報に基づいて、照射部40における電磁波の照射を制御する照射制御部50とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物に接触し該被乾燥物を加熱する加熱部材と、
前記被乾燥物に向けて電磁波を照射する照射部と、
前記被乾燥物の温度又は水分に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得された情報に基づいて、前記照射部における電磁波の照射を制御する照射制御部とを備えたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
駆動することで前記被乾燥物を攪拌する攪拌機構と、
前記攪拌機構の駆動状態を監視し、該駆動状態が駆動不能状態に陥る前の異常状態である場合には該攪拌機構の駆動を停止させる又は該攪拌機構の駆動速度を低下させる攪拌制御部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記乾燥装置における振動を検出する振動検出部を備え、
前記攪拌制御部は、前記振動検出部における振動の検出結果に応じても前記攪拌機構の駆動を停止させる又は該攪拌機構の駆動速度を低下させるものであることを特徴とする請求項2記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被乾燥物に接触し該被乾燥物を乾燥させる加熱部材を備えた乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被乾燥物に接触し該被乾燥物を乾燥させる、いわゆる伝導伝熱方式を採用した乾燥装置では、高水分の被乾燥物を乾燥する場合や熱処理を行う場合、凝集物や、ダマと称される粒状のかたまりが形成されてしまうことがある。
【0003】
凝集物やダマが形成された場合、伝導伝熱方式のみでは凝集物の表面のみが加熱され内部まで熱が伝わりにくく、表面のみが過乾燥になり内部水蒸気の移動抵抗が大きくなって乾燥速度が低下しやすい。また、凝集物やダマが崩壊して粉状になれば乾燥が進むが、凝集物やダマのままでは乾燥時間が長くなる傾向にある。さらに、攪拌を試みた場合に、被乾燥物を収容した収容部の中で回転する攪拌部材と凝集物やダマが供回りしたり、凝集物やダマが攪拌部材と収容部の内周壁との間に噛み込み、撹拌動力が増大し過負荷に陥ることで、攪拌を行うことができなくなってしまう場合もある。以下では、ダマを含めて凝集物と称することがある。
【0004】
ところで、生ゴミの乾燥では、マイクロ波を照射し内部加熱によって生ゴミを乾燥する技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
特許文献1に記載された乾燥装置では、マイクロ波を常時照射し、生ゴミを収容した容器内の湿度に基づいて回転刃を回転させたり停止させる制御を行っている。また、生ゴミの均一な加熱を目指して、容器を回転することも行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-103449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、凝集物が発生した場合にその凝集物を効率的に解消する手段としては充分なものとは言えず、被乾燥物全体を均一に乾燥するには限界があり、改良の余地がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、凝集物やダマの影響を抑えつつ被乾燥物全体を均一に乾燥することができる乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決する本発明の乾燥装置は、
被乾燥物に接触し該被乾燥物を加熱する加熱部材と、
前記被乾燥物に向けて電磁波を照射する照射部と、
前記被乾燥物の温度又は水分に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得された情報に基づいて、前記照射部における電磁波の照射を制御する照射制御部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の乾燥装置によれば、前記加熱部材による表面側からの加熱と、前記照射部による表面側及び内部側からの加熱が行われる。前記照射部による加熱は、前記加熱部材によって表面側から加熱されて乾燥速度の低下した前記被乾燥物の内部側に対しても効果的に作用する。この結果、被乾燥物全体を均一に乾燥することができる。また、前記取得部で取得した情報に基づいて、前記照射部における電磁波の照射を制御することで、凝集物やダマが生じても短時間で崩壊させることができ、それらの影響を抑えることができる。
【0011】
また、前記照射部が電磁波を照射することによって凝集の原因と考えられる主には水素結合が切断されることが期待できたり、被乾燥物に含まれていた水分などの液体分子は電磁波によって振動、あるいは蒸発により揮散して被乾燥物の凝集の抑制も期待され、凝集物の成長の抑制への寄与も期待できる。
【0012】
この乾燥装置は、前記被乾燥物を収容する収容部の内周壁の外側に加熱部材を設けたものであってもよいし、前記被乾燥物を収容する収容部の内部に加熱部材を設けたものであってもよい。
【0013】
前記照射部が照射する電磁波は、周波数が300MHz以上数十GHz以下のものであってもよく、例えば、極超短波であってもよい。すなわち、マイクロ波であってもよい。もちろん凝集物やダマを生ずる原因が主に水分に起因するのであれば、この水分を蒸発させるのに汎用的な2.45GHzのマイクロ波を利用することで構わない。
【0014】
前記照射部は、電磁波を間欠的に照射する場合があるものであってもよいし、電磁波の出力を絞って連続照射する場合があるものであってもよい。あるいは、通常出力用の照射部の他に低出力用の照射部を設けておいてもよい。
【0015】
前記取得部は、温度計であってもよいし水分計であってもよい。温度計は、乾燥中の被乾燥物の温度(品温)を測定するものであってもよい。この温度計には、電磁波を照射した場合の放電を考慮して光ファイバ温度計を用いることが好ましい。また、水分計は、乾燥中の被乾燥物の水分を測定するものであってもよいし、乾燥後の乾燥物の水分を測定するものであってもよい。前記取得部は、被乾燥物のうち、前記照射部から電磁波が照射される面の温度に関する情報を取得するものであってもよい。具体的には、収容部に収容された被乾燥物のうち、前記照射部から電磁波が照射される面における複数箇所の温度に関する情報を取得するものであってもよい。
【0016】
前記照射制御部は、前記取得部で取得した温度に関する情報から前記被乾燥物の温度が目標温度以下であれば、前記照射部が照射する電磁波の出力を上げたり照射時間を長くする。反対に前記被乾燥物の温度が目標温度を超えていれば、前記照射部が照射する電磁波の出力を下げたり照射時間を短くする。また、目標温度よりも高い閾値温度を設けておき、前記被乾燥物の温度が該閾値温度に達すると、該閾値温度を下回るまで該照射部からの電磁波の照射を休止する。このように、前記照射制御部は、前記照射部における電磁波の出力(強さ)や照射時間を制御する。
【0017】
また、上記乾燥装置において、
駆動することで前記被乾燥物を攪拌する攪拌機構と、
前記攪拌機構の駆動状態を監視し、該駆動状態が駆動不能状態に陥る前の異常状態である場合には該攪拌機構の駆動を停止させる又は該攪拌機構の駆動速度を低下させる攪拌制御部とを備えたことを特徴とする態様であってもよい。
【0018】
前記攪拌機構の駆動は、凝集物が大きくなるにつれて妨げられやすくなり、凝集物がある程度の大きさまで成長し、表面の乾燥が進んである程度の堅さを呈すると攪拌機構は駆動不能状態に陥りやすくなる。前記攪拌制御部は、駆動不能状態に陥る前の異常状態で該攪拌機構の駆動を停止させるか該攪拌機構の駆動速度を低下させる。大きな凝集物となれば乾燥速度を低下させる原因ともなるが、この態様では、ある程度の大きさまで成長する前の小さな段階の凝集物に電磁波が作用し、凝集物の崩壊が進み、やがて異常状態が解消され、該攪拌機構の所定速度の駆動が再開される。
【0019】
前記攪拌機構は、攪拌部材と、該攪拌部材を駆動する駆動部とを有するものであってもよい。例えば、前記駆動部として電気モータを備え、該電気モータの回転によって前記攪拌部材が回転する機構であってもよい。
【0020】
前記攪拌制御部は、前記駆動部に流れる電流の値が異常値以上であるか否かによって、前記駆動状態が前記異常状態であるか否かを判定するものであってもよい。すなわち、前記攪拌制御部は、前記駆動部に流れる電流が駆動不能状態に陥る前の前記異常値以上である場合には該駆動部の駆動を停止させる又は該駆動部の駆動速度を低下させるものであってもよい。例えば、前記攪拌制御部は、前記駆動部に流れる電流が前記異常値以上である場合には該駆動部の駆動を所定時間停止し、該所定時間が経過すると該駆動部の駆動を再開し該駆動部に流れる電流が再び該異常値以上になると、該駆動部の駆動を所定時間停止させる制御を行う。あるいは、前記攪拌制御部は、前記駆動部に流れる電流が前記異常値以上である場合には該駆動部の駆動速度を所定速度から所定時間低下させた状態にし、該所定時間が経過すると該駆動部の駆動速度を該所定速度に戻し該駆動部に流れる電流が再び該異常値以上になると、該駆動部の駆動速度を所定時間低下させた状態にする制御を行う。
【0021】
前記照射部は、前記攪拌機構の駆動が停止又は該攪拌機構の駆動速度が低下しても前記被乾燥物に向けて電磁波を常時又は間欠的に照射するものであってもよい。
【0022】
また、上記乾燥装置において、
この乾燥装置における振動を検出する振動検出部を備え、
前記攪拌制御部は、前記振動検出部における振動の検出結果に応じても前記攪拌機構の駆動を停止させる又は該攪拌機構の駆動速度を低下させるものであることを特徴としてもよい。
【0023】
前記振動は、例えば振幅を検出する場合、凝集物が大きくなるにつれ、加えて表面が堅くなるにつれて振幅は大きなものとなるものと考えられる。あるいは、凝集物が大きくなるにつれて前記振動も大きくなりやすい。前記攪拌制御部は、振動の検出結果に応じても前記攪拌機構の駆動を停止させるか該攪拌機構の駆動速度を低下させる。所定時間継続して所定の振幅の振動を検出したという検出結果や所定の振幅値以上の振動を検出したという検出結果であった場合には、ある程度の大きさまで成長する前の小さな段階の凝集物に電磁波が効果的に作用することとなる。電磁波が作用することで、上述のごとく、特に内部加熱が行われやすく凝集物は崩壊しやすいため、凝集物の崩壊が進み、やがて前記振動もおさまり、前記攪拌機構の所定速度の駆動が再開される。
【0024】
前記攪拌機構は、回転軸を中心に攪拌部材を回転させることで前記被乾燥物を攪拌するものであってもよく、前記振動検出部は、前記回転軸の振動を検出するものであってもよい。
【0025】
あるいは、前記被乾燥物を収容する収容部を備え、前記振動検出部は、前記収容部の振動を検出するものであってもよい。なお、この場合、前記加熱部材は、前記収容部に収容された前記被乾燥物を乾燥させるものであり、前記照射部は、前記収容部に収容された前記被乾燥物に向けて電磁波を照射するものであり、前記攪拌機構は、前記収容部に収容された前記被乾燥物を攪拌するものであってもよい。
【0026】
前記攪拌制御部は、前記振動検出部において所定の振幅の振動が検出された場合には、前記攪拌機構の駆動を停止させる又は該攪拌機構の駆動速度を低下させるものであってもよく、前記照射部は、前記攪拌機構の駆動が停止又は該攪拌機構の駆動速度が低下しても前記被乾燥物に向けて電磁波を常時又は間欠的に照射するものであってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の乾燥装置によれば、凝集物やダマの影響を抑えつつ被乾燥物全体を均一に乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態の乾燥装置が組み込まれた乾燥システムの系統図である。
図2図1に示す乾燥装置の容器を、内部を透過した状態で示した斜視図である。
図3】光ファイバ温度計による被乾燥物の測定温度と電磁波発生装置における電磁波の出力との関係を模式的に示すグラフである。
図4図1に示す乾燥装置の変形例を示す図である。
図5】攪拌用モータの電流値と攪拌用モータの駆動/停止との関係を模式的に示すグラフである。
図6】比較実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態の乾燥装置について詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態の乾燥装置が組み込まれた乾燥システムの系統図である。
【0031】
図1に示す乾燥システムD1では、本発明の一実施形態に相当する乾燥装置1と、コンデンサ2を備えている。
【0032】
図1に示す乾燥装置1は、容器10と、加熱媒体供給装置20と、集塵装置(バグフィルタ)30と、電磁波発生装置40と、制御部50と、真空ポンプ60を有する。乾燥装置1は、容器10内で被乾燥物を乾燥する。図1では、その容器10の内部が見えるように容器10を縦方向に断面にした様子を模式的に示している。この容器10は、支柱10Sによって支持されており、本体部100と、本体部100の上端を覆う天板110を有する。また、乾燥装置1は、回転駆動する攪拌部材である螺旋リボン122と、本体部100の内部空間を覆うジャケット130も有する。本体部100は、円筒状の上部101と、その上部101から離れるにつれて漸次縮径する逆円錐状部102から構成されている。本体部100の下端、すなわち逆円錐状部102の下端には、排出口1001が設けられており、その排出口1001は、開閉可能な排出用蓋体140によって塞がれている。図1では、排出用蓋体140が開いた様子を2点鎖線で示している。
【0033】
天板110には、投入部111が設けられており、投入部111の下端開口が投入口111aになる。図1では、この投入部111に被乾燥物を供給する供給管111Pが接続されている。本実施形態における被乾燥物は、湿粉粒体(例えば、ゼオライトや炭酸カルシウム)である。図1に示す本体部100には、被乾燥物Pが貯留されている。
【0034】
天板110には、排気口112も設けられている。この排気口112には集塵装置(バグフィルタ)30が取り付けられており、集塵装置30を介して排気路112Pが接続されている。この排気路112Pの下流側にはコンデンサ2が設けられている。本体部100内で被乾燥物から蒸発した蒸気は、集塵装置30により微粉の除去等が行われた後、排気路112Pを通ってコンデンサ2まで送られる。コンデンサ2には、冷却水が供給されており、排気路112Pを通って送られてきた蒸気は熱交換され、大半が凝縮液になり、残りは真空ポンプ60に引かれてコンデンサ2から流出し、排気される。
【0035】
天板110には、ガラス窓114も設けられている。このガラス窓114は、マイクロ波を吸収しない石英ガラスが嵌め込まれたものである。
【0036】
電磁波発生装置40は、いわゆるマイクロ波を発生するものであり、より具体的には、915MHzのマイクロ波あるいは2.45GHzのマイクロ波を発生する。電磁波発生装置40では、制御部50によって発生する電磁波の出力が調整される。また、電磁波発生装置40は、制御部50によって起動されたり停止される。電磁波発生装置40で発生した電磁波はガラス窓114から本体部100の内部に向けて照射される。電磁波発生装置40は、照射部の一例に相当する。
【0037】
螺旋リボン122は、駆動軸121から放射状に突出した複数本の棒状の支え部材に支持され、本体部100の内周壁近傍にそって周回する、下方に向けて先細りとなる螺旋状のものである。天板110の上には、攪拌用モータ123と減速機124が配置されている。減速機124の出力軸は、シールされて天板110を上方に向けて貫通した駆動軸121に連結されており、攪拌用モータ123が回転駆動すると駆動軸121が本体部100内で軸周りに回転する。螺旋リボン122は、駆動軸121が軸周りに回転することで回転駆動する。螺旋リボン122の回転により、本体部100内に貯留されている被乾燥物Pが攪拌される。螺旋リボン122、駆動軸121、攪拌用モータ123および減速機124は、攪拌機構の一例に相当する。
【0038】
螺旋リボン122の攪拌によって、被乾燥物Pは、逆円錐状部102の内周壁1021に沿って上昇する。円筒状の上部101内には、一対の渦流ブレーカ125が設けられている。一対の渦流ブレーカ125は、180度対向した位置に設けられた円弧状のプレート(図2も参照)である。すなわち、一対の渦流ブレーカ125は、湾曲面が設けられたものである。内周壁に沿って勢いよく上昇してきた被乾燥物Pは、一対の渦流ブレーカ125に衝突して弾かれつつその湾曲面によって、本体部100の中央付近に誘導されるとともに落下する。図1では、本体部100内における、螺旋リボン122の攪拌と渦流ブレーカ125の作用による被乾燥物Pの動きを点線の矢印で表している。
【0039】
本体部100の内部空間を覆うジャケット130には、熱媒体供給路131と熱媒体回収路132が接続されている。すなわち、加熱媒体供給装置20から延びた熱媒体供給路131の先端は、ジャケット130の下部に接続されている。一方、先端が加熱媒体供給装置20につながった熱媒体回収路132の後端は、ジャケット130の上部に接続されている。加熱媒体供給装置20では、熱媒体を設定温度に保持している。熱媒体は、熱媒体供給路131を通ってジャケット130に供給された後、ジャケット130から熱媒体回収路132を通して回収され加熱媒体供給装置20に戻されるといった循環を繰り返す。ジャケット130に熱媒体を循環供給することにより、本体部100を外側から加熱することで、被乾燥物が加熱される。また、真空ポンプ60を駆動させながらジャケット130に熱媒体を循環供給することで真空伝導伝熱乾燥を行うことができる。ジャケット130は、加熱部材の一例に相当する。
【0040】
図1に示す乾燥装置1では、電磁波加熱を行う関係で、以下に説明する様々な工夫がなされている。
【0041】
図1では、天板110における、駆動軸121のシール部1101を灰色で模式的に示している。このシール部1101には、電磁波を減衰さえるチョーク構造を設けている。
【0042】
開閉箇所やシール箇所の周辺には、電磁波の漏洩検知器126が設置されている。すなわち、天板110の周囲と、排出用蓋体140の周囲と、駆動軸121のシール部1101の周囲それぞれに、漏洩検知器126が設置されている。各漏洩検知器126は制御部50に接続されており、基準値を超える電磁波の漏洩量が漏洩検知器126で検知されると、制御部50は電磁波発生装置40を停止させる。
【0043】
また、集塵装置30の一次側となる排気ダクトに電磁波を遮蔽する遮蔽部材31を設置している。図1では、一次側から引き出された図(a)に、遮蔽部材31を真上から見た様子を示している。遮蔽部材31は複数の貫通孔が設けられたステンレスの板部材である。なお、遮蔽部材31はハニカム状のものであってもよい。
【0044】
また、詳しくは後述するが、制御部50は、攪拌用モータ123に流れる電流値を監視している。さらに、駆動軸121の、天板110から上方に突出した上端部には、振動センサ129が設けられており、制御部50は駆動軸121に生じる振動も監視している。
【0045】
また、電磁波による放電対策も講じている。図1において点線の矢印で示す被乾燥物Pの動きによって、電磁波が照射されている間の螺旋リボン122には被乾燥物Pが被さっており螺旋リボン122が露出することはほぼない。このため、放電の恐れが少なく、螺旋リボン122は金属製のものを用いることができる。ただし、放電対策として樹脂製のものを用いてもよい。一方、一対の渦流ブレーカ125は、露出しており、電磁波を照射すると放電の起点となる恐れがあるため、全体が樹脂製のものである。ここで用いられる樹脂としては、例えば、エンジニアリングプラスチックや繊維強化プラスチック(FRP)等があげられる。
【0046】
さらに、天板110には、本体部100内で放電によって生じた閃光を検出するための光検出手段としてUVセンサ127が設けられている。このUVセンサ127は制御部50に接続されている。本体部100内はUVセンサ127によって常時監視されており、閃光が検出されると、制御部50は電磁波発生装置40を停止させる。
【0047】
加えて、電磁波加熱による異常加熱を防止するために、本体部100に貯留された被乾燥物の温度(品温)を監視している。通常の金属シースで保護される熱電対などの温度センサを用いると放電を生じる可能性や電磁波の影響を受け正確な測温ができない等の不具合を生じるため、光ファイバ温度計128が用いられており、逆円錐状部102の周壁を貫通するように光ファイバ温度計128が設置されている。この光ファイバ温度計128も制御部50に接続されている。本体部100に貯留された被乾燥物の温度は光ファイバ温度計128によって常時測定あるいは所定時間間隔で測定されており、測定結果に応じて制御部50は電磁波発生装置40を制御する。この制御については詳しくは後述することにし、まず、光ファイバ温度計128の設置構造について説明する。
【0048】
図2は、図1に示す乾燥装置の容器を、内部を透過した状態で示した斜視図である。
【0049】
図2に示す乾燥装置1では、天板110の上に設けられた攪拌用モータ123や集塵装置30等は省略されている。図2に示す天板110には、投入口111aと、排気口112と、電磁波が照射されるガラス窓114と、UVセンサ127の差込孔127aが示されている。これらは便宜的にほぼ直線上に配置されているが、必要に応じて適宜の配置であって構わない。また、本体部100の内部には、天板110に取り付けられた一対の渦流ブレーカ125が示されている。この図2から、渦流ブレーカ125は円弧状のプレートであることがわかる。さらに、本体部100の内部には、駆動軸121から放射状に突出した複数の支え部材1211に支持され、本体部100の内周壁近傍にそって周回する螺旋リボン122も示されている。なお、駆動軸121の上方には、螺旋リボン122のバランスをとるためのカウンターバランサ1212が設けられている。
【0050】
また、図2には、光ファイバ温度計128が示されている。光ファイバ温度計128の先端部分は、螺旋リボン122の回転軌道に交差する位置まで延びている。こうすることで、螺旋リボン122により掻き上げられる被乾燥物の温度をより正確に測定することができる。螺旋リボン122には、光ファイバ温度計128の先端部分と交差する位置に切り欠き1221が設けられており、実際には、螺旋リボン122が光ファイバ温度計128の先端部分と干渉することはない。
【0051】
図3は、光ファイバ温度計による被乾燥物の測定温度と電磁波発生装置における電磁波の出力との関係を模式的に示すグラフである。
【0052】
図3のグラフでは左から右に向けて時間の経過を表している。点線のグラフは、光ファイバ温度計128で測定した被乾燥物の温度(品温)を表す。図3を用いた説明では、光ファイバ温度計128の測定温度のことを被乾燥物の温度という。
【0053】
図1に示す乾燥装置1では、ジャケット130に熱媒体を供給し被乾燥物を表面から加熱する伝導伝熱による加熱と、ガラス窓114から電磁波を照射して被乾燥物を内部からも加熱する電磁波加熱が行われる。太い実線で表している図3のグラフは、電磁波発生装置40における電磁波の出力の大きさを表す。電磁波の出力は、本実施例では通常出力値と、通常出力値よりも小さな低減出力値で行う。
【0054】
図3の左側から右側にかけての時間経過に沿って説明すれば、伝導伝熱による加熱と通常出力値による電磁波加熱の両方によって加熱を開始すると、被乾燥物の温度は上昇し、やがて1点鎖線で表す目標温度に到達する。被乾燥物の温度が目標温度を超えると、図1に示す制御部50は電磁波の出力を通常出力値から低減出力値に切り替え、電磁波加熱を弱める。なお、伝導伝熱による加熱は継続している。その結果、被乾燥物の温度上昇は緩やかになるが、温度上昇は続き、今度は、被乾燥物の温度が2点鎖線で表す閾値温度に到達する。閾値温度に到達すると、制御部50は電磁波発生装置40を停止させ電磁波加熱を所定時間中止する。所定時間が経過した時点の被乾燥物の温度が、目標温度以下であった場合には、図1に示す制御部50は通常出力値による電磁波加熱を再開し、伝導伝熱による加熱とともに被乾燥物を加熱する。
【0055】
被乾燥物の温度が再び目標温度を超えると、制御部50は電磁波の出力を低減出力値に下げ、被乾燥物の温度が再び閾値温度に到達すると、制御部50は電磁波加熱を所定時間中止する。所定時間が経過した時点の被乾燥物の温度が、目標温度を上回っていた場合には、制御部50は低減出力値による電磁波加熱を再開し、伝導伝熱による加熱とともに被乾燥物を加熱する。制御部50は、照射制御部の一例に相当する。
【0056】
伝導伝熱による加熱では、被乾燥物の表面が加熱され、主に表面から水分が蒸発する。表面のみが過乾燥になると、被乾燥物の内部では水分の移動抵抗が大きくなって乾燥速度が低下してしまう。一方、電磁波加熱では、被乾燥物の内部からも加熱するため、伝導伝熱による加熱の上述の不均一性を補うことができる。しかも、被乾燥物の温度を測定し、その測定結果に基づいて電磁波の出力値を制御しているため、被乾燥物が過剰に加熱されることや、被乾燥物を必要以上に乾燥してしまうことが抑えられる。
【0057】
本実施形態では、被乾燥物の温度が目標温度を超えると、制御部50は電磁波発生装置40の出力を低下させたが、閾値温度に到達したときと同じく電磁波加熱を一定時間中止するようにしてもよい。また、被乾燥物の温度が目標温度を超えると、ジャケット130に供給する熱媒体の温度を低下させるようにして伝導伝熱による加熱も電磁波加熱と同じく弱めてもよい。また、通常出力値の電磁波を発生する装置と、低減出力値の電磁波を発生する装置を2台用意し、目標温度と閾値温度を基準に制御部50がこれら2台の装置を切り替え、電磁波を照射するようにしてもよい。また、電磁波の出力値を3段階以上の複数に設定し、閾値温度も2点以上の複数を設定して組合せた制御をするようにしてもよい。
【0058】
図4は、図1に示す乾燥装置の変形例を示す図である。図4を用いた説明では、これまで説明した構成要素と同じ名称の構成要素には同じ符号を付して説明する。また、図4では、天板110の上に設けられた投入部111、攪拌用モータ123、減速機124、漏洩検知器126および集塵装置30は省略されている。
【0059】
図4(a)に示す乾燥装置1では、光ファイバ温度計128の代わりに、天板110に水分計150が設けられている。本体部100に貯留された被乾燥物Pの上面は点線で模式的に表されており、水分計150は、その上面に赤外光を照射し反射光から水分(%W.B.)を算出するものである。制御部50は、事前の試験で得た被乾燥物Pの品温と水分の相関関係データを用いて、算出した水分から品温を求め、上述の目標温度と閾値温度を基準に電磁波の出力を変化させる。なお、水分計150が取付けられる天板110の開口部には上記赤外光を透過するガラス窓が本体部100内と隔離するために備えられ、必要に応じてガラス窓に付着する被乾燥物の払落し機構やガラス窓の結露防止の機構が備えられる。また、水分計150が電磁波の影響を受ける場合は赤外線照射口(あるいは反射光受光口)には電磁波を遮蔽するシャッターが設けられ、水分測定時は電磁波加熱を中断してシャッターを開いて水分測定を行う。シャッターの代わりに、赤外光は透過し、マイクロ波を減衰させる構造のガラス窓を用いることでも構わない。
【0060】
なお、排出口1001から被乾燥物を定期的に少量排出させ、乾燥装置1の外部で水分を測定することも可能である。
【0061】
図4(b)に示す乾燥装置1では、光ファイバ温度計128の代わりに、天板110にサーモグラフィカメラ151が設けられている。図4(b)ではサーモグラフィカメラ151の撮影領域を2点鎖線で表しており、本体部100に貯留された被乾燥物Pの上面(点線参照)全体を検出可能として示している。1台のサーモグラフィカメラで上面全体の検出が困難であれば複数台を設置する。サーモグラフィカメラ151は、本体部100に貯留された被乾燥物Pの上面からの放射エネルギを測定し、温度換算することで被乾燥物の温度を得る。サーモグラフィカメラ151で得られた被乾燥物の温度によっても、上述の目標温度と閾値温度を基準に電磁波の出力を変化させることができる。
【0062】
また、被乾燥物Pの上面は、ガラス窓114に対向した面であって、そのガラス窓114から電磁波が照射される照射面になる。この被乾燥物Pの、電磁波の照射面における温度を複数箇所で得ることにより、電磁波が部分的に吸収されて高温になっている箇所を特定することができるようになり、電磁波の照射方向を調整したり、一対の渦流ブレーカ125の設置角度や高さを調整して被乾燥物Pの弾かれ具合や本体部100の中央付近へのばらけ具合を変え、電磁波がより効率的に作用するようにもできる。あるいは、照射位置(ガラス窓114)を複数箇所に設けておき、それら複数の照射位置から選択した一又は複数の照射位置から電磁波の照射を行うようにすることでも電磁波の照射方向を変えることができる。なお、上述の水分計150と同じく、サーモグラフィカメラ151が取付けられる天板110の開口部には赤外光を透過するガラス窓が本体部100内と隔離するために備えられ、必要に応じてガラス窓に付着する被乾燥物の払落し機構やガラス窓の結露防止の機構が備えられる。また、サーモグラフィカメラ151が電磁波の影響を受ける場合は電磁波を遮蔽するシャッターが設けられ、温度測定時は電磁波加熱を中断してシャッターを開いて温度測定を行う。シャッターの代わりに、赤外光は透過し、マイクロ波を減衰させる構造のガラス窓を用いることでも構わない。
【0063】
図1に示す光ファイバ温度計128、図4(a)に示す水分計150、図4(b)に示すサーモグラフィカメラ151は、取得部の一例に相当する。
【0064】
図5は、攪拌用モータの電流値と攪拌用モータの駆動/停止との関係を模式的に示すグラフである。
【0065】
図5のグラフでも左側から右側に向けて時間が経過していく。点線のグラフは、図1に示す制御部50が取得した攪拌用モータ123に流れる電流値を表す。図1に示す乾燥装置1では、電磁波加熱を併用して上述の実施例で述べた作用により凝集物は崩壊するものであるが、凝集物やダマが少なからず発生して成長してしまうこともある。凝集物が、螺旋リボン122と本体部100の内周壁との間に噛み込んでしまうと、撹拌動力が増大し過負荷に陥ることで、攪拌用モータ123が回転できなくなってしまう。図5に示すグラフでは、2点鎖線で過負荷となる場合の電流値(過負荷値)を示し、その過負荷値よりは低いが、正常回転しているときの電流値よりは高い異常値を1点鎖線で示している。異常値は制御部50内に事前に設定された設定値である。また、太い実線で表すグラフは、攪拌用モータ123の駆動と停止を表す。
【0066】
攪拌用モータ123の回転が開始され、正常回転数に落ち着くと電流値も一定になる。この電流値を正常値と称する。なお、図5における例では、伝導伝熱による加熱と通常出力値による電磁波加熱の両方によって常時加熱が行われているものとする。
【0067】
ここで凝集物が形成され始めることがある。凝集物は最初は小さいが、撹拌運転が継続されている間は、電磁波加熱が行われていたとしても凝集物が徐々に大きくなっていくことが起きる場合がある。螺旋リボン122の回転は、凝集物が大きくなるにつれて妨げられやすくなる。螺旋リボン122の回転が凝集物によって阻害されるようになると、攪拌用モータ123に流れる電流値が上昇し始める。やがて、その電流値は1点鎖線で表す異常値以上になる。制御部50は、取得した電流値が異常値以上になると、攪拌用モータ123を所定時間(例えば、10分~20分)停止させる。このため、被乾燥物の攪拌が所定時間行われなくなるが、ある程度の大きさまで成長する前の小さな段階の凝集物に電磁波が照射されることになる。所定時間が経過すると、制御部50は、攪拌用モータ123の駆動を再開させると共に電流値を取得し、凝集物の崩壊が進み、螺旋リボン122が正常に回転できるようになっていれば、電流値が異常値以上に上がることはなく、制御部50は、攪拌用モータ123の駆動を継続させる。
【0068】
攪拌用モータ123に流れる電流値が再び異常値以上になれば、制御部50は、攪拌用モータ123を所定時間停止させ、その後攪拌の駆動を再開すると共に電流値の取得も再開して上述と同様な運転が行われることになる。
【0069】
次に、図5に示すt1からt2の間の状態を例として説明すると、凝集物の崩壊が何らかの理由で不十分な場合、撹拌の再開(t1)から短時間で電流値が異常値に達してしまうことも起きる。この場合も、制御部50は、即座に攪拌用モータ123の駆動を停止させ(t2)、再び所定時間が経過することを待ち、以降も上述と同様な運転が行われ、異常値に達することのない状態になるまで撹拌の停止と再開の運転が繰り返される。もちろん停止と再開の回数を制御部50内に設定し、この設定回数を超える場合は乾燥運転全体を中止させることもある。
【0070】
この例では、駆動が不能な状態に陥る前の異常状態として上述の異常値を利用して攪拌用モータ123に流れる電流値が過負荷値に到達する前に攪拌用モータ123を停止させるため、攪拌用モータ123の損傷を防止することができる。また、過負荷駆動を心配しなくてもよくなることから、トルクの小さなモータを採用することができ、コストダウンを行うこともできる。
【0071】
なお、電磁波加熱では、凝集の原因になる主には水素結合を切断することが期待できることから、電流値が異常値以上になると、制御部50は、電磁波の出力値を通常出力値よりも高い値に変更するようにしてもよい。また、ここでは、電流値が異常値以上になると攪拌用モータ123を完全停止させるが、凝集物の成長が生じ難く電流値も低く抑えられる低速で回転を継続させるようにしてもよい。
【0072】
また、螺旋リボン122の回転が凝集物によって阻害されるようになると、駆動軸121に異常な振動が発生する。制御部50は、駆動軸121の上端部に設けられた振動センサ129(振動検出部の一例に相当)によってこの異常な振動を監視している。制御部50は、所定の振幅以上の振動が検出された場合に、攪拌用モータ123を一定時間停止させる。振動が検出された場合であっても、電磁波加熱は継続しており、電磁波加熱によって凝集物の崩壊が進み、駆動軸121に発生していた異常な振動が解消される。また、制御部50は、所定の振幅の振動が所定時間継続して検出された場合に攪拌用モータ123を一定時間停止させるようにしてもよい。あるいは、制御部50は、所定の振幅以上の振動が所定時間継続して検出された場合に攪拌用モータ123を一定時間停止させるようにしてもよい。
【0073】
なお、図1に示す乾燥装置1では、振動センサ129を駆動軸121に設けたが、天板110に設けてもよいし、逆円錐状部102に設けてもよい。また、振動が検出されると攪拌用モータ123を完全停止させるが、凝集物の成長が生じ難く振動も抑制される低速で回転を継続させるようにしてもよい。
【0074】
以上説明したように、制御部50は、攪拌制御部の一例にも相当する。
【0075】
続いて、図1に示す乾燥装置1と同じ構成の乾燥装置を用いて乾燥実験を行った。まず、電磁波発生装置40を起動せず、ジャケット130に熱媒体を供給し被乾燥物を表面から加熱する伝導伝熱による加熱のみを行った場合と、伝導伝熱による加熱およびガラス窓114から電磁波を照射して被乾燥物を内部からも加熱する電磁波加熱の両方を行った場合とを比較した実験結果について説明する。
【0076】
ここでの実験では、被乾燥物としてゼオライトを乾燥させた。乾燥前のセオライトの水分は24%W.B.であった。真空ポンプ60は容器10内の圧力が7kPaになるように設定し、ジャケット130に60℃の熱媒体を循環供給することで真空伝導伝熱乾燥を行った。また、電磁波加熱では、電磁波として2.45GHzのマイクロ波を用い、通常出力値を1.5kWに設定した。
【0077】
図6は、比較実験の結果を示すグラフである。
【0078】
図6に示すグラフでは、横軸が乾燥時間(分)になる。縦軸は、被乾燥物の水分(%W.B.)と、被乾燥物の温度(品温)(℃)になる。この水分の値は、図4(a)に示す水分計で測定した値であり、品温の値は、図1に示す光ファイバ温度計128で測定した値になる。
【0079】
丸形のプロットは真空伝導伝熱による加熱のみを行った場合の結果を表し、四角形のプロットは真空伝導伝熱による加熱とマイクロ波加熱の両方を行った場合の結果を表す。また、白抜きのプロットは品温を表し、黒塗りのプロットは水分を表す。
【0080】
真空伝導伝熱による加熱のみの乾燥では、水分が150分まで一定の傾きで低下しており、0分~150分の区間が恒率乾燥区間になる。その後、乾燥速度が低下し、240分までの乾燥運転で水分が5%W.B.まで低下した。
【0081】
一方、真空伝導伝熱による加熱とマイクロ波加熱の両方を行った場合には、恒率乾燥区間の乾燥速度は速く、水分が、80分で10%W.B.以下まで低下し、5%W.B.に到達したのは100分程度であった。マイクロ波照射時は、低水分時での品温上昇が早く、減率乾燥区間での乾燥速度の低下がほとんど見られず、短時間で低水分までの乾燥を行うことができた。なお、この実験でも、図3を用いて説明した目標温度と閾値温度を基準にマイクロ波の出力を変化させ、乾燥後のゼオライトの水分が5%W.B.になるように乾燥させた。
【0082】
次に、炭酸カルシウムを乾燥させた場合について説明する。真空伝導伝熱による加熱のみで乾燥させた場合には、運転開始60分の時点で数cmの凝集物が形成されていた。真空伝導伝熱による加熱のみでは、凝集物は表面のみが乾燥しており、凝集物が形成され始めると、乾燥速度が急激に低下する傾向が見られた。
【0083】
真空伝導伝熱による加熱とマイクロ波加熱の両方で乾燥させた場合にも、乾燥途中で凝集物が形成されてしまう点は同じであった。しかしながら、マイクロ波加熱を併用すると、凝集物の崩壊を確認することができた。マイクロ波により凝集物が内部からも加熱され、内部の水分が早い段階で低下したと考える。しかも、図5を用いて説明した攪拌用モータ123に流れる電流値の上昇や、振動センサ129による振動の検出に応じて、攪拌用モータ123を停止させたことにより、凝集物が大きく成長する前であることから、マイクロ波による内部加熱の効果が現れやすく、真空伝導伝熱による加熱と相俟って、凝集物は表面と内部の両方から蒸発が促進され、凝集物が崩壊したと考える。この結果、低水分まで安定した乾燥を実現することができたと考える。
【0084】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、本体部100を外側から加熱する乾燥装置に限られることはなく、本体部100の内側に加熱部材を備えた、例えば、回転軸及び回転軸に設けられたパドルの内部に加熱媒体を通過させて乾燥を行ういわゆるパドルドライヤーなどの乾燥装置であってもよい。また、伝導伝熱による加熱も間欠的に行ってもよい。また、被乾燥物が固形分を含む液状物であってもよい。さらには、図5を用いて説明した攪拌用モータ123に流れる電流値の上昇や、振動センサ129による振動の検出に応じて、攪拌用モータ123を停止させることは行わずに(攪拌用モータ123を常時駆動しながら)、図3を用いて説明した目標温度と閾値温度を基準にマイクロ波の出力を変化させることのみを行ってもよい。
【0085】
なお、以上説明した実施形態の記載や変形例の記載にのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
D1 乾燥システム
1 乾燥装置
10 容器
100 本体部
110 天板
1101 シール部
114 ガラス窓
121 駆動軸
122 螺旋リボン
123 攪拌用モータ
125 渦流ブレーカ
126 漏洩検知器
127 UVセンサ
128 光ファイバ温度計
129 振動センサ
130 ジャケット
150 水分計
151 サーモグラフィカメラ
20 加熱媒体供給装置
30 集塵装置
31 遮蔽部材
40 電磁波発生装置
50 制御部
60 真空ポンプ
2 コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6