(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117596
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】電磁安全弁の強制開弁装置
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
F23K5/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020241
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聖也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀幸
【テーマコード(参考)】
3K068
【Fターム(参考)】
3K068AA01
3K068BB01
3K068BB14
3K068BB20
3K068DA14
(57)【要約】
【課題】弁体22を閉弁位置から吸着片24が電磁石25に当接する開弁位置まで押動させる電磁安全弁の強制開弁装置であって、モータの回転運動を弁体に当接する押圧ロッド5の直線運動に変換するカム機構8を、モータにより回転駆動される回転カム81と、押圧ロッドに当接する直動カム82とで構成し、直動カムに、回転カムに設けられた偏心した作動部812の旋回軌跡Sに対し回転カム中心側に山形に盛上ったカム部824を設けるものにおいて、作動部がカム部頂点部分8241を超えて旋回したときに直動カム及び押圧ロッドが戻しバネ6の付勢力で勢いよく戻り方向に移動することを抑制できるようにする。
【解決手段】作動部812がカム部頂点部分8241を超えて旋回したときに当接するカム部斜面部分8243に段部8243a~cを設けて、直動カム82の戻り方向への急な移動が、作動部812への段部8243a~cの当接で抑制されるようにする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に着座可能な弁体と、弁体に、弁座と反対方向にのびる弁軸を介して連結される吸着片と、吸着片に対向する電磁石と、弁体を弁座に着座する閉弁位置に付勢する弁バネとを備える電磁安全弁の強制開弁装置であって、
弁体に弁座側たる軸方向一方から当接可能な押圧ロッドと、押圧ロッドを軸方向一方のストローク端位置に付勢する戻しバネと、モータと、モータの回転運動を押圧ロッドの軸方向の直線運動に変換するカム機構とを備え、押圧ロッドを戻しバネの付勢力に抗して軸方向他方に移動させることにより、押圧ロッドの軸方向他方の端部を弁体に当接させて、弁体を閉弁位置から吸着片が電磁石に当接する開弁位置まで押動させるようにし、
カム機構は、モータにより回転駆動される回転カムと、押圧ロッドの軸方向に移動自在で、押圧ロッドの軸方向一方の端部に当接するロッド当接部を有する直動カムとで構成され、回転カムに、回転カムの回転中心に対し偏心した作動部が設けられ、直動カムは、作動部の旋回軌跡に対し回転カムの中心側に山形に盛上ったカム部を有し、回転カムの一方向への回転に伴う作動部の当該一方向への旋回で、カム部の回転カム中心側に最も盛上った頂点部分に向けて回転カム中心に次第に近づくように傾斜したカム部の片側の斜面部分に作動部が当接して、直動カムが軸方向他方に押し動かされるものにおいて、
カム部の頂点部分から前記一方向に向けて回転カム中心から次第に遠ざかるように傾斜したカム部の反対側の斜面部分の途中に、作動部の旋回軌跡の接線に平行又は当該接線に対する傾斜角が他の部分よりも小さな少なくとも1つの段部が設けられ、作動部がカム部の頂点部分を超えて更に前記一方向に旋回したときの戻しバネの付勢力による押圧ロッドを介しての直動カムの軸方向一方への急な移動が、作動部への段部の当接で抑制されるようにしたことを特徴とする電磁安全弁の強制開弁装置。
【請求項2】
前記段部は、前記接線に対し前記一方向に向けて前記回転カム中心に近付くように傾斜した部分を有することを特徴とする請求項1記載の電磁安全弁の強制開弁装置。
【請求項3】
前記カム部の前記片側の斜面部分に前記作動部が当接する旋回角度範囲よりもカム部の前記反対側の斜面部分に作動部が当接する旋回角度範囲の方が大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の電磁安全弁の強制開弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁座に着座可能な弁体と、弁体に、弁座と反対方向にのびる弁軸を介して連結される吸着片と、吸着片に対向する電磁石と、弁体を弁座に着座する閉弁位置に付勢する弁バネとを備える電磁安全弁の強制開弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の強制開弁装置として、弁体に弁座側たる軸方向一方から当接可能な押圧ロッドと、押圧ロッドを軸方向一方のストローク端位置に付勢する戻しバネと、モータと、モータの回転運動を押圧ロッドの軸方向の直線運動に変換するカム機構とを備え、押圧ロッドを軸方向他方に移動させることにより、押圧ロッドの軸方向他方の端部を弁体に当接させて、弁体を閉弁位置から吸着片が電磁石に当接する開弁位置まで押動させるようにしたものが知られている。ここで、従来のカム機構は、モータにより回転駆動されるカム体で構成され、カム体の外周面に形成した径方向の凸部が押圧ロッドの軸方向一方の端部に当接することで、押圧ロッドが軸方向他方に押動されるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
然し、このものでは、押圧ロッドの軸方向一方の端部にその径方向(軸方向に直交する方向)一方から凸部が当接するために、当該端部に径方向他方に向かう押圧力が作用して、押圧ロッドが摺動クリアランス分だけ径方向に傾き、弁体を介して弁軸も僅かながら径方向に傾いてしまうことがある。そして、弁体を開弁位置に吸着保持した後、押圧ロッドによる弁体の押圧を解除すると、弁バネの付勢力で弁軸の径方向の傾きが矯正される際に、吸着片に径方向の抉り力が作用して、吸着片が電磁石から剥離したり、吸着片と電磁石との吸着面の摩耗が促進されたりしてしまうことがある。
【0004】
そこで、本願出願人は、先に、特願2020-185243で、カム機構を、モータにより回転駆動される回転カムと、押圧ロッドの軸方向に移動自在で、押圧ロッドの軸方向一方の端部に当接するロッド当接部を有する直動カムとで構成したものを提案している。このものでは、回転カムに、回転カムの回転中心に対し偏心した作動部が設けられ、直動カムは、作動部の旋回軌跡に対し回転カムの中心側に山形に盛上ったカム部を有している。そして、回転カムの一方向への回転に伴う作動部の当該一方向への旋回で、カム部の回転カム中心側に最も盛上った頂点部分に向けて回転カム中心に次第に近づくように傾斜したカム部の片側の斜面部分に作動部が当接して、直動カムが軸方向他方に押し動かされるようにしている。これによれば、ロッド当接部を介して押圧ロッドが軸方向他方に押動されるため、押圧ロッドにこれを径方向に傾けるような力が作用しない。従って、押圧ロッドの径方向の傾きで弁軸が径方向に傾くことがない。その結果、押圧ロッドによる弁体の押圧解除時に、吸着片に径方向の抉り力が作用することはなく、この抉り力に起因して吸着片が電磁石から剥離したり、吸着片と電磁石との吸着面の摩耗が促進されたりするといった上記不具合は生じない。
【0005】
然し、上記先願のものでは、以下の不具合を生ずることが判明した。即ち、作動部がカム部の頂点部分を超えて更に一方向に旋回して、カム部の頂点部分から当該一方向に向けて回転カム中心から次第に遠ざかるように傾斜したカム部の反対側の斜面部分に回転カムの作動部が当接すると、押圧ロッドを介して直動カムに作用する戻しバネによる軸方向一方への付勢力分の当接力の分力として、作動部に一方向への旋回をアシストする力が作用する。従って、作動部がカム部の頂点部分を超えて更に一方向に旋回したところで、作動部の一方向への旋回速度が上昇して、戻しバネの付勢力による直動カム及び押圧ロッドの軸方向一方への移動速度も上昇してしまう。そして、押圧ロッドが軸方向一方のストローク端位置に勢いよく到達して衝撃が発生し、この衝撃による振動で吸着片が電磁石から剥離してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、上記先願の電磁安全弁の強制開弁装置の改良装置であって、押圧ロッドが軸方向一方のストローク端位置に到達したときの衝撃を緩和して、電磁石からの吸着片の剥離を防止することができるようにしたものを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、弁座に着座可能な弁体と、弁体に、弁座と反対方向にのびる弁軸を介して連結される吸着片と、吸着片に対向する電磁石と、弁体を弁座に着座する閉弁位置に付勢する弁バネとを備える電磁安全弁の強制開弁装置であって、弁体に弁座側たる軸方向一方から当接可能な押圧ロッドと、押圧ロッドを軸方向一方のストローク端位置に付勢する戻しバネと、モータと、モータの回転運動を押圧ロッドの軸方向の直線運動に変換するカム機構とを備え、押圧ロッドを戻しバネの付勢力に抗して軸方向他方に移動させることにより、押圧ロッドの軸方向他方の端部を弁体に当接させて、弁体を閉弁位置から吸着片が電磁石に当接する開弁位置まで押動させるようにし、カム機構は、モータにより回転駆動される回転カムと、押圧ロッドの軸方向に移動自在で、押圧ロッドの軸方向一方の端部に当接するロッド当接部を有する直動カムとで構成され、回転カムに、回転カムの回転中心に対し偏心した作動部が設けられ、直動カムは、作動部の旋回軌跡に対し回転カムの中心側に山形に盛上ったカム部を有し、回転カムの一方向への回転に伴う作動部の当該一方向への旋回で、カム部の回転カム中心側に最も盛上った頂点部分に向けて回転カム中心側に次第に近づくように傾斜したカム部の片側の斜面部分に作動部が当接して、直動カムが軸方向他方に押し動かされるものにおいて、カム部の頂点部分から前記一方向に向けて回転カム中心から次第に遠ざかるように傾斜したカム部の反対側の斜面部分の途中に、作動部の旋回軌跡の接線に平行又は当該接線との角度差が他の部分よりも小さな少なくとも1つの段部が設けられ、作動部がカム部の頂点部分を超えて更に前記一方向に旋回したときの戻しバネの付勢力による押圧ロッドを介しての直動カムの軸方向一方への急な移動が、作動部への段部の当接で抑制されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、作動部がカム部の頂点部分を超えて更に一方向に旋回したときに、作動部の一方向への旋回速度の上昇で直動カムの軸方向一方への移動速度が一旦上昇しても、カム部の反対側の斜面部分の途中に設けた段部が作動部に当接することで、直動カムの軸方向一方への急な移動が抑制されるため、押圧ロッドが軸方向一方のストローク端位置に到達したときの衝撃が緩和される。その結果、押圧ロッドが軸方向一方のストローク端に到達したときの衝撃で発生する振動も緩和され、この振動に起因する電磁石からの吸着片の剥離を防止することができる。
【0010】
また、本発明において、段部は、作動部の旋回軌跡の接線に対し前記一方向に向けて回転カム中心に近付くように傾斜した部分を有することが望ましい。これによれば、段部のこの傾斜部分が作動部に当接したときに、作動部に、これを前記一方向とは反対方向に旋回させようとする分力が作用して、作動部の前記一方向への旋回が制動され、直動カムの軸方向一方への急な移動をより効果的に防止することができる。
【0011】
更に、本発明においては、カム部の片側の斜面部分に作動部が当接する旋回角度範囲よりもカム部の反対側の斜面部分に作動部が当接する旋回角度範囲の方が大きいことが望ましい。これによれば、回転カムを一方向に一定速度で回転させても、直動カムを軸方向他方に押し動かす時の移動速度よりも直動カムを軸方向一方に移動させるときの平均的な移動速度が遅くなる。そのため、直動カムの軸方向一方への急な移動をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の強制開弁装置を組み込んだバルブユニットの斜視図。
【
図2】
図1のII-II線で切断したバルブユニットの切断側面図。
【
図3】(a)
図2のIII-III線で切断した本発明の実施形態の強制開弁装置を示す切断平面図、(b)強制開弁装置の作動状態を示す切断平面図。
【
図4】実施形態の強制開弁装置に設けられる回転カムの斜め下方から見た斜視図。
【
図5】実施形態の強制開弁装置に設けられる直動カム及び分解した状態の押圧ロッドの斜め上方から見た斜視図。
【
図6】実施形態の強制開弁装置に設けられる直動カムのカム部の拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1、
図2は、バーナへのガス供給路に介設されるバルブユニットを示している。このバルブユニットは、ガス流入口11と、バーナに連なるガス流出口12とを有するバルブケーシング1内に組み込んだ上流側の電磁安全弁2と、下流側の火力調節弁3とを備えている。
【0014】
電磁安全弁2は、ガス流入口11に連通するバルブケーシング1内の弁室13の下流端に位置する弁座21に着座可能な弁室13内の弁体22と、弁体22に、弁座21と反対方向にのびる弁軸23を介して連結される吸着片24と、吸着片24に対向する電磁石25と、弁体22を弁座21に着座する閉弁位置に付勢する弁バネ26とを備えている。尚、バルブケーシング1内には、弁座21を形成した弁座部材21aが装着されている。
【0015】
火力調節弁3は、バルブケーシング1内に電磁安全弁2の下流側に位置して形成されたガス室14の上面を覆うようにしてバルブケーシング1内に固定した固定板31と、固定板31の下面に接した状態で回転する円板状の弁板32とを備えている。固定板31は、ガス流出口12を形成したバルブケーシング1の上蓋部15の下面にパッキン33を介して接している。弁板32は、バルブケーシング1の下面に搭載したステッピングモータ等のモータ7の出力軸71に連結される回転軸72に連結され、更に、バネ34で上方に付勢されている。固定板31には、ガス流出口12に連通する通路孔31aが形成され、弁板32には、図外の弁孔が形成されている。そして、モータ4により弁板32を回転させると、通路孔31aに対する弁孔の重合開度が変化して、火力が調節される。
【0016】
電磁安全弁2は、点火操作を行ったときに、本発明の実施形態の強制開弁装置4によって強制的に開弁される。
図3も参照して、強制開弁装置4は、弁体22に弁座21側たる軸方向一方(
図2、
図3で左方)から当接可能な押圧ロッド5と、押圧ロッド5を軸方向一方に付勢する戻しバネ6と、上記モータ7と、モータ7の回転運動を押圧ロッド5の軸方向の直線運動に変換するカム機構8とを備えている。そして、押圧ロッド5の軸方向他方(
図2、
図3で右方)の端部を弁体22に当接させて、弁体22を閉弁位置から吸着片24が電磁石25に当接する開弁位置まで押動させ、この状態で電磁石25に通電して、弁体22を開弁位置に吸着保持するようにしている。
【0017】
カム機構8は、回転カム81と、押圧ロッド5の軸方向に移動自在で、押圧ロッド5の軸方向一方の端部に当接するロッド当接部821を有する直動カム82とで構成されている。
図4も参照して、回転カム81の回転中心には、上記回転軸72の非円形断面部が嵌合する非円形の嵌合孔811が形成されており、モータ7により回転カム81が回転駆動される。また、回転カム81には、その回転中心に対し偏心した作動部812が設けられている。
【0018】
直動カム82は、バルブケーシング1内の上記ガス室14に、押圧ロッド5の軸方向に移動自在に収納されている。即ち、軸方向と直交方向両側に位置するガス室14の側壁に軸方向に平行なガイド面141を形成すると共に、直動カム82の軸方向と直交方向両側の側面822を軸方向に平行な面に形成し、直動カム82がガイド面141に案内されて軸方向に移動するようにしている。
【0019】
また、
図5も参照して、直動カム82には、軸方向他方の端縁に位置させて、起立壁823が立設されている。そして、起立壁823の軸方向他方を向く面の中央部に、軸方向他方に凸の円弧状(正確には、押圧ロッド5を後述する軸方向他方のストローク端位置まで押動させる位置に直動カム82が移動した状態で回転カム81の回転中心とほぼ同心になる円弧状)に形成されたロッド当接部821を設けている。ロッド当接部821をこのような円弧状に形成すれば、直動カム82が摺動クリアランス分傾いても、押圧ロッド5の押しストロークを一定に保つことができる。
【0020】
起立壁823の軸方向一方を向く面には、回転カム81の作動部812の旋回軌跡Sに対し回転カム81の中心側に山形に盛上ったカム部824が設けられている。
図3(a)に示す位置から回転カム81を
図3で時計回り方向に回転させると、この回転に伴う作動部812の時計回り方向への旋回で、カム部824の回転カム81中心側に最も盛上った頂点部分8241に向けて回転カム81中心側に次第に近づくように傾斜したカム部824の片側の斜面部分8242に作動部812が当接して、直動カム82が軸方向他方に押し動かされ、押圧ロッド5が戻しバネ6の付勢力に抗して軸方向他方に押動される。そして、作動部812が
図3(b)に示す如くカム部824の頂点部分8241に到達したときに、押圧ロッド5が軸方向他方のストローク端位置まで押動され、このストローク端位置よりも若干手前で電磁安全弁2の弁体22が開弁位置に到達するようにしている。
【0021】
この状態で電磁安全弁2の弁体22を電磁石25への通電で開弁位置に吸着保持し、更に、回転カム81を時計回り方向に回転させる。これによれば、カム部824の頂点部分8241から時計回り方向に向けて回転カム81中心側から次第に遠ざかるように傾斜したカム部824の反対側の斜面部分8243に作動部812が当接して、直動カム82及び押圧ロッド5が戻しバネ6の付勢力で軸方向一方に移動し、開弁位置に吸着保持される弁体22から押圧ロッド5が離間する。押圧ロッド5が軸方向一方のストローク端位置に到達したときは、電磁石25への通電を停止したときに弁体22が弁座21に着座する閉弁位置に復帰することを妨げないように、押圧ロッド5の軸方向他方の端部が弁座21よりも軸方向一方に位置する。
【0022】
ここで、作動部812がカム部824の頂点部分8241を超えて更に時計回り方向に旋回して、カム部824の反対側の斜面部分8243の時計回り方向に向けて回転カム81中心から遠ざかる方向に傾斜した部分に作動部812が当接すると、押圧ロッド5を介して直動カム82に作用する戻しバネ6による軸方向一方への付勢力分の当接力の分力として、作動部812に時計回り方向への旋回をアシストする力が作用する。従って、カム部824の反対側の斜面部分8243がその全体に亘って上記の如く傾斜していると、作動部812がカム部824の頂点部分8241を超えて更に時計回り方向に旋回したところで、作動部812の時計回り方向への旋回速度が上昇して、戻しバネ6の付勢力による直動カム82及び押圧ロッド5の軸方向一方への移動速度も上昇してしまう。そして、押圧ロッド5が軸方向一方のストローク端位置に勢いよく到達して衝撃(後述する段差部161への押圧ロッド5のストッパ部511の衝突による衝撃)が発生し、この衝撃による振動で吸着片24が電磁石25から剥離して、弁体22を開弁位置に吸着保持できなくなってしまうことがある。
【0023】
そこで、本実施形態では、カム部824の反対側の斜面部分8243に、
図6に明示する如く、作動部812の旋回軌跡の接線TLに平行又は当該接線TLに対する傾斜角が当該斜面部分8243の他の部分よりも小さな第1乃至第3の3つの段部8243a,8243b,8243cを設けている。尚、第1の段部8243aは、作動部812の旋回軌跡の接線TLにほぼ平行であり、第2と第3の段部8243b、8243cは、作動部812の旋回軌跡の接線TLに対し時計回り方向に向けて回転カム81中心に近づくように所定角度θだけ傾斜した部分を有している。
【0024】
このようにカム部824の反対側の斜面部分8243に段部8243a~cを設ければ、作動部812がカム部824の頂点部分8241を超えて更に時計回り方向に旋回したときの戻しバネ6の付勢力による押圧ロッド5を介しての直動カム82の軸方向一方への急な移動が、作動部812への段部8243a~cの当接で抑制される。これにより、押圧ロッド5が軸方向一方のストローク端位置に到達したときの衝撃が緩和される。その結果、押圧ロッド5が軸方向一方のストローク端位置に到達したときの衝撃で発生する振動も緩和され、この振動に起因する電磁石25からの吸着片24の剥離を防止することができる。更に、作動部812の旋回軌跡の接線TLに対し時計回り方向に向けて回転カム81中心に近づくように傾斜した部分を有する第2と第3の段部8243b、8243cが作動部812に当接したときは、作動部812に、これを時計回り方向とは反対方向に旋回させようとする分力が作用する。そして、この分力により作動部812の時計回り方向への旋回が制動され、直動カム82の軸方向一方への急な移動をより効果的に防止することができる。
【0025】
また、本実施形態では、
図3に示す如く、カム部824の上記片側の斜面部分8242に作動部812が当接する旋回角度範囲θ1よりもカム部824の上記反対側の斜面部分8243に作動部812が当接する旋回角度範囲θ2の方が大きくなるようにカム部824を形成している。これによれば、回転カム81を時計回り方向に一定速度で回転させても、直動カム82を軸方向他方に押し動かす時の移動速度よりも直動カム82を軸方向一方に移動させるときの平均的な移動速度が遅くなる。そのため、直動カム82の軸方向一方への急な移動をより確実に防止することができる。
【0026】
尚、押圧ロッド5は、
図5に明示されているように、直動カム82のロッド当接部821が当接可能な第1ロッド部51と、弁体22に当接可能な第2ロッド部52と、第1と第2の両ロッド部51,52間に介設したクッションバネ53とで構成されている。第1ロッド部51は、電磁安全弁2とガス室14とを接続するバルブケーシング1内の通路16に形成した段差部161に軸方向他方から当接可能な周方向3箇所のストッパ部511と、ストッパ部511の近傍に位置する周方向3箇所の爪受け部512とを有している。そして、第1ロッド部51を弁座部材21aとの間に介設した戻しバネ6により、ストッパ部511が段差部161に当接する軸方向一方のストローク端位置に付勢している。また、第2ロッド部52には、軸方向一方にのびる周方向3箇所の爪片521が設けられている。第2ロッド部52は、爪片521の先端の爪部が第1ロッド部51の爪受け部512に係合する状態にクッションバネ53の付勢力で付勢保持される。
【0027】
ここで、クッションバネ53の付勢力は、戻しバネ6及び弁バネ26の付勢力の合力よりも大きい。そのため、直動カム82の軸方向他方への移動でロッド当接部821を介して第1ロッド部51が軸方向他方に押動されると、第2ロッド部52も第1ロッド部51と一緒に軸方向他方に移動する。そして、弁体22が開弁位置に到達して、第2ロッド部52がそれ以上軸方向他方に移動不能となった後の更なる直動カム82の軸方向他方への移動で、
図3(b)に示す如く、第1ロッド部51がクッションバネ53を圧縮しつつ軸方向他方のストローク端位置まで押動されるようにしている。
【0028】
また、作動部812をカム部824の反対側の斜面部分8243の終端まで旋回させて、押圧ロッド5を軸方向一方のストローク端位置に戻した後は、作動部812がカム部824に当接する回転角度範囲外でのモータ7の回転による弁板32の回転で火力調節を行う。そして、消火時には、作動部812を
図3(a)に示す位置まで時計回り方向に旋回させて、次の点火まで待機する。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、カム部824の反対側の斜面部分8243に3つの段部8243a~cを設けているが、段部の数は1又は2、或いは4以上であってもよい。また、上記実施形態では、押圧ロッド5をクッションバネ53を有するクッション機構付きのものとしているが、クッション機能は別構造で得て、押圧ロッド5を一体構造のものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0030】
2…電磁安全弁、21…弁座、22…弁体、23…弁軸、24…吸着片、25…電磁石、26…弁バネ、4…強制開弁装置、5…押圧ロッド、6…戻しバネ、7…モータ、8…カム機構、81…回転カム、812…作動部、82…直動カム、821…ロッド当接部、824…カム部、8241…頂点部分、8242…片側の斜面部分、8243…反対側の斜面部分、8243a~c…段部、S…作動部の旋回軌跡、TL…旋回軌跡の接線、θ1…カム部の片側の斜面部分に作動部が当接する旋回角度範囲、θ2…カム部の反対側の斜面部分に作動部が当接する旋回角度範囲。