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  • 特開-水素センサ 図1A
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  • 特開-水素センサ 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117602
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】水素センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/74 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
G01N27/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020252
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】結城 興仁
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA04
2G053AB09
2G053AB19
2G053BA06
2G053CA06
2G053CA07
2G053CB05
(57)【要約】
【課題】低消費電力、高感度で、広い測定範囲を持つ水素センサを提供する。
【解決手段】水素センサは、ダイアフラム101、水素吸蔵膜102、第1磁気歪素子131、第2磁気歪素子132、第3磁気歪素子133、第4磁気歪素子134を備える。水素吸蔵膜102は、ダイアフラム101に形成され、水素吸蔵材料から構成されている。第1磁気歪素子131、第2磁気歪素子132、第3磁気歪素子133、第4磁気歪素子134は、ダイアフラム101の歪みを測定する磁気歪測定部を構成する。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムと、
前記ダイアフラムに形成され、水素吸蔵材料から構成された水素吸蔵膜と、
前記水素吸蔵膜が形成されている領域の周囲の前記ダイアフラムに設けられ、歪みによって磁化が変化する材料から構成されて前記ダイアフラムの歪みを測定する磁気歪素子から構成された磁気歪測定部と
を備える水素センサ。
【請求項2】
請求項1記載の水素センサにおいて、
各々厚さが異なる2つの前記ダイアフラムを備え、
2つの前記ダイアフラムの各々は、前記水素吸蔵膜および前記磁気歪測定部を備える
ことを特徴とする水素センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の水素センサにおいて、
前記磁気歪測定部は、ブリッジ回路を構成する第1磁気歪素子、第2磁気歪素子、第3磁気歪素子、第4磁気歪素子から構成されている
ことを特徴とする水素センサ。
【請求項4】
請求項3記載の水素センサにおいて、
前記第1磁気歪素子と前記第2磁気歪素子とは、隣り合って配置され、
前記第3磁気歪素子と前記第4磁気歪素子とは、隣り合って配置され、
前記第1磁気歪素子、前記第3磁気歪素子は、前記ダイアフラムの変形に影響を受けない箇所に配置され、
前記第2磁気歪素子、前記第4磁気歪素子は、前記ダイアフラムの変形が検知できる箇所に配置され
ていることを特徴とする水素センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンで再生可能なエネルギー源としての利用に関する技術開発が活発になってきている。水素を安全に利用する技術も同時に求められており、水素濃度の監視や制御システム、漏洩を検知するガスセンサが必要となる。水素の爆発濃度範囲は4.0~75%であるため、水素ガスの検知範囲がppmオーダーから4%までの範囲を高精度に計測できる水素センサが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-071362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素センサには、接触燃焼式、半導体式、気体熱伝導式などがある(特許文献1)。これらの水素センサは、感度向上のため常に加熱を必要とするために消費電力が大きくなるという課題がある。また、水素濃度の測定範囲も熱線型や接触燃焼式は、ppmオーダーから数%までの低濃度と測定範囲が狭い。一方、気体熱伝導式は、動作時の温度が低く測定範囲が広いが、比較的低感度である。このように、従来、低消費電力、高感度で、広い測定範囲を持つ水素センサが無いという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、低消費電力、高感度で、広い測定範囲を持つ水素センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水素センサは、ダイアフラムと、ダイアフラムに形成され、水素吸蔵材料から構成された水素吸蔵膜と、水素吸蔵膜が形成されている領域の周囲のダイアフラムに設けられ、歪みによって磁化が変化する材料から構成されており、ダイアフラムの歪みを測定する磁気歪素子から構成された磁気歪測定部とを備える。
【0007】
上記水素センサの一構成例において、各々厚さが異なる2つのダイアフラムを備え、2つのダイアフラムの各々は、水素吸蔵膜および磁気歪測定部を備える。
【0008】
上記水素センサの一構成例において、磁気歪測定部は、ブリッジ回路を構成する第1磁気歪素子、第2磁気歪素子、第3磁気歪素子、第4磁気歪素子から構成されている。
【0009】
上記水素センサの一構成例において、第1磁気歪素子と第2磁気歪素子とは、隣り合って配置され、第3磁気歪素子と第4磁気歪素子とは、隣り合って配置され、第1磁気歪素子、第3磁気歪素子は、ダイアフラムの変形に影響を受けない箇所に配置され、第2磁気歪素子、第4磁気歪素子は、ダイアフラムの変形が検知できる箇所に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、水素吸蔵膜が形成されているダイアフラムの歪みを磁気歪測定部で測定するので、低消費電力、高感度で、広い測定範囲を持つ水素センサが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、本発明の実施の形態1に係る水素センサの構成を示す平面図である。
図1B図1Bは、本発明の実施の形態1に係る水素センサの構成を示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係る他の水素センサの構成を示す平面図である。
図3A図3Aは、本発明の実施の形態2に係る水素センサの構成を示す平面図である。
図3B図3Bは、本発明の実施の形態1に係る水素センサの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る水素センサについて説明する。
【0013】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る水素センサについて、図1A図1Bを参照して説明する。この水素センサは、ダイアフラム101、水素吸蔵膜102、第1磁気歪素子131、第2磁気歪素子132、第3磁気歪素子133、第4磁気歪素子134を備える。
【0014】
ダイアフラム101は、例えば、シリコンなどから構成された基板111に、凹部112を形成することで薄層化された部分から構成されている。基板111は、例えば、主表面を(100)面とした単結晶シリコンから構成することができる。なお、この例では、基板111の一部にダイアフラム101を形成しているが、これらを別体として構成することもできる。例えば、基板の上にダイアフラム層を形成し、基板の裏面側よりダイアフラム層に到達する貫通口を形成することで、貫通口の部分のダイアフラム層をダイアフラムとすることができる。この例において、ダイアフラム101は、平面視で矩形(正方形)としている。また、図2に示すように、ダイアフラム101は、平面視で円形とすることができる。
【0015】
水素吸蔵膜102は、ダイアフラム101に形成され、水素吸蔵材料から構成されている。水素吸蔵材料は、水素吸蔵により体積変化を起こす材料であり、例えば、パラジウム、マグネシウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ランタン、鉄、ニッケル、タンタルとすることができる。また、水素吸蔵材料は、上述した金属の合金から構成することができる。水素吸蔵膜102は、例えば、厚さ5~30nmとすることができる。
【0016】
第1磁気歪素子131、第2磁気歪素子132、第3磁気歪素子133、第4磁気歪素子134は、ダイアフラム101の歪みを測定する磁気歪測定部を構成する。第1磁気歪素子131、第2磁気歪素子132、第3磁気歪素子133、第4磁気歪素子134は、水素吸蔵膜102が形成されている領域の周囲のダイアフラム101に設けられている。第1磁気歪素子131、第2磁気歪素子132、第3磁気歪素子133、第4磁気歪素子134は、歪みによって磁化が変化する材料から構成されている。
【0017】
磁気歪素子は、歪みによって磁化が変化する検知磁性層および検知磁性層の参照となる参照磁性層を備え、検知磁性層と参照磁性層とがバリア層を介してトンネル接合し、磁気歪素子の抵抗の変化によりダイアフラム101の歪みを測定する。検知磁性層は、FeBやCoFeBなどから構成することができる。参照磁性層は、例えば、磁化が固定されている層であり、歪みによる磁化の変化が小さい。
【0018】
各磁気歪素子の検知磁性層、バリア層、および参照磁性層は、例えば、ダイアフラム101の上に、ダイアフラム101の厚さ方向に積層された状態で配置される。また、磁気歪素子は、歪みによって磁化が変化する検知磁性層、非磁性材料から構成された非磁性層、および検知磁性層の参照となる参照磁性層がこれらの順に積層され、非磁性層の平面に平行な方向の抵抗の変化により受圧領域の歪みを測定するものとすることができる。
【0019】
第1磁気歪素子131、第2磁気歪素子132、第3磁気歪素子133、第4磁気歪素子134は、これらを抵抗としたブリッジ回路を構成している。第1磁気歪素子131と第2磁気歪素子132とは、隣り合って配置され、第3磁気歪素子133と第4磁気歪素子134とは、隣り合って配置されている。第1磁気歪素子131、第3磁気歪素子133は、ダイアフラム101の変形に影響を受けない箇所に配置されている。一方、第2磁気歪素子132、第4磁気歪素子134は、ダイアフラム101の変形が検知できる箇所に配置されている。
【0020】
上述したブリッジ回路は、一定の電流が流れている状態においてダイアフラム101に応力が発生したとき、発生した応力による各磁気歪素子の抵抗値の変化を電圧の変化として出力する。ブリッジ回路の各ノードは、ダイアフラム101およびこの周囲の基板111の上に形成された配線パターンを介して電極(端子)に接続されている。
【0021】
この水素センサを配置した雰囲気に水素ガスが存在していれば、水素吸蔵膜102に雰囲気の水素ガスが吸着する。水素吸蔵膜102に吸着する水素ガスの量は、雰囲気に存在する水素ガスの濃度に比例している。水素ガスが吸着することによる水素吸蔵膜102の物理的な変化が、ダイアフラム101の歪として現れる。この歪(歪の量)が、第1磁気歪素子131、第2磁気歪素子132、第3磁気歪素子133、第4磁気歪素子134による磁気歪測定部で測定される。したがって、磁気歪測定部による測定結果を元に、水素センサを配置した雰囲気の水素の測定が可能となる。
【0022】
磁気歪素子を歪ませると大きな磁気抵抗変化が得られる。磁気歪素子の歪みに対する抵抗値変化は、シリコンのピエゾ抵抗40~70に対して5000の値が報告されている。このような磁歪定数の大きな磁気歪素子を用いた磁気歪測定部によれば、水素吸蔵膜102が水素を吸蔵したことによるダイアフラム101の変形を、非加熱、低消費電力で高感度に検知することができる。この結果、実施の形態1に係る水素センサによれば、水素を非加熱、低消費電力で高感度に測定することができる。
【0023】
また、ダイアフラム101は、様々な大きさや厚さに製作することが容易であり、水素吸蔵膜102の厚さ、サイズと組み合わせることで、目的とする水素濃度の測定範囲の設計を容易に行うことができる。
【0024】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る水素センサについて、図3A図3Bを参照して説明する。この水素センサは、各々厚さが異なる2つの第1ダイアフラム101a、第2ダイアフラム101bを備える。第1ダイアフラム101a、第2ダイアフラム101bは、シリコンなどから構成された基板111’に形成されている。2つの第1ダイアフラム101a、第2ダイアフラム101bの各々は、前述同様に、水素吸蔵膜102および磁気歪測定部を備える。例えば、第2ダイアフラム101bは、第1ダイアフラム101aより薄く形成されている。
【0025】
第1ダイアフラム101aの磁気歪測定部は、第1磁気歪素子131a、第2磁気歪素子132a、第3磁気歪素子133a、第4磁気歪素子134aから構成されている。第2ダイアフラム101bの磁気歪測定部は、第1磁気歪素子131b、第2磁気歪素子132b、第3磁気歪素子133b、第4磁気歪素子134bから構成されている。第1ダイアフラム101a、第2ダイアフラム101bの各々に形成されている4つの磁気歪素子は、前述同様に、水素吸蔵膜102が形成されている領域の周囲に設けられている。
【0026】
第1ダイアフラム101aより薄く形成されている第2ダイアフラム101bによる水素濃度の測定は、より高感度となり、低い濃度範囲の測定を対象とし、より厚い第1ダイアフラム101aによる水素濃度の測定は、より高い濃度範囲の測定を対象とすることができる。このように、各々厚さの異なるダイアフラムを形成することで、1つの水素センサで低濃度から高濃度まで水素の測定を実施することが可能となる。
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、水素吸蔵膜が形成されているダイアフラムの歪みを磁気歪測定部で測定するので、低消費電力、高感度で、広い測定範囲を持つ水素センサが提供できるようになる。
【0028】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0029】
101…ダイアフラム、102…水素吸蔵膜、111…基板、112…凹部、131…第1磁気歪素子、132…第2磁気歪素子、133…第3磁気歪素子、134…第4磁気歪素子。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B