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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117619
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】端末装置、プログラム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/043 20060101AFI20230817BHJP
   A61G 7/005 20060101ALI20230817BHJP
   A61G 7/018 20060101ALI20230817BHJP
   A61F 5/56 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A61G7/043
A61G7/005
A61G7/018
A61F5/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020277
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椎野 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】木暮 貴政
【テーマコード(参考)】
4C040
4C098
【Fターム(参考)】
4C040AA03
4C040AA10
4C040DD05
4C098BB15
(57)【要約】
【課題】ユーザーの睡眠を適切にサポートする端末装置、プログラム及び制御方法等の提供。
【解決手段】 端末装置は、ユーザーのいびきに関するいびき情報を取得する取得部と、いびき情報に基づいて、ユーザーが就寝に使用するベッドに対して、当該ベッドのボトムの制御を行わせる制御部と、を含み、制御部は、ボトムの角度を変化させても、いびき情報に基づいていびきが継続的に検出されている場合、ボトムの角度を再度変化させる制御を行い、ボトムの制御において、ボトムの前記角度に基づいて、角度の変化方向を切り替える制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーのいびきに関するいびき情報を取得する取得部と、
前記いびき情報に基づいて、前記ユーザーが就寝に使用するベッドに対して、前記ベッドのボトムの制御を行わせる制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記ボトムの角度を変化させても、前記いびき情報に基づいて前記いびきが継続的に検出されている場合、前記ボトムの前記角度を再度変化させる制御を行い、
前記ボトムの制御において、前記ボトムの前記角度に基づいて、前記角度の変化方向を切り替える制御を行う端末装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、
前記いびき情報に基づいて前記いびきが検出された場合、前記ボトムの前記角度と前記いびき情報とに基づいて、前記いびきを抑制すると判定される前記角度であるいびき抑制角度を探索する制御を行う端末装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ユーザーと前記いびき抑制角度が対応付けられた情報である対応情報を記憶する記憶部を含み、
前記制御部は、
前記対応情報の記憶後に前記いびきが検出された場合、前記ユーザーに対応付けられた前記いびき抑制角度を探索の初期値として、前記ボトムの前記角度を制御する端末装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記取得部は、
前記ベッドの前記ボトムに載置される検出装置から、前記ユーザーの就寝時の姿勢を表す姿勢情報を含む生体情報を取得し、
前記制御部は、
前記姿勢情報と前記いびき情報とに基づいて、前記ユーザーの前記姿勢と前記いびきとの関係を求める端末装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御部は、
前記いびき抑制角度に関する情報、及び、前記いびきを抑制すると判定された就寝時の前記姿勢に関する情報の少なくとも一方を提示する制御を行う端末装置。
【請求項6】
請求項2または3において、
前記取得部は、
前記ベッドの前記ボトムに載置される検出装置から、前記ユーザーの就寝時の姿勢を表す姿勢情報を含む生体情報を取得し、
前記制御部は、
前記いびき情報に基づいて前記いびき抑制角度を探索する第1制御、前記いびき情報に基づいて前記ボトムを駆動させることによって前記ユーザーの体を揺らす第2制御、及び、前記いびき情報と前記姿勢情報に基づいて前記ユーザーに適した前記姿勢を判定する第3制御を行う端末装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記制御部は、
前記第1制御、前記第2制御、及び前記第3制御のうち、前記ユーザーの前記いびきの抑制に有効と判定された1または複数の制御を提示する端末装置。
【請求項8】
請求項2乃至5のいずれか一項において、
前記制御部は、
前記いびき情報に基づいて前記いびき抑制角度を探索する第1制御、前記ボトムを調整することによって前記ユーザーの入眠をサポートする第4制御、及び、前記ボトムを調整することによって前記ユーザーの起床をサポートする第5制御、を含む複数の制御を実行する端末装置。
【請求項9】
請求項8において、
複数のモードのそれぞれに対して、前記複数の制御のうちの1以上が対応付けられた情報である第2対応情報を記憶する記憶部を含み、
前記制御部は、
前記複数のモードのうちのいずれかを選択するユーザー入力と前記第2対応情報に基づいて、前記複数の制御のそれぞれを実行するか否かを決定する端末装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項において、
前記制御部は、
前記いびき情報に基づいて判定される前記いびきの発生度合いに基づいて、前記いびきが検出された場合に前記ボトムの制御を実行するか否かを決定する端末装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項において、
前記取得部は、
前記ベッドの前記ボトムに載置される検出装置から、前記ユーザーの生体情報を取得し、
前記制御部は、
前記生体情報に基づいて、前記いびきが検出された場合に前記ボトムの制御を実行するか否かを決定する端末装置。
【請求項12】
ユーザーのいびきに関するいびき情報を取得する取得部と、
前記いびき情報に基づいて、前記ユーザーが就寝に使用するベッドに対して、前記ベッドのボトムの制御を行わせる制御部として、
コンピュータを機能させ、
前記制御部は、
前記ボトムの角度を変化させても、前記いびき情報に基づいて前記いびきが継続的に検出されている場合、前記ボトムの前記角度を再度変化させる制御を行い、
前記ボトムの制御において、前記ボトムの前記角度に基づいて、前記角度の変化方向を切り替える制御を行うプログラム。
【請求項13】
ユーザーのいびきに関するいびき情報を取得するステップと、
前記ユーザーが就寝に使用するベッドに対して、前記ベッドのボトムの制御を行わせるステップと、
を含み、
前記ボトムの角度を変化させても、前記いびき情報に基づいて前記いびきが継続的に検出されている場合、前記ボトムの前記角度を再度変化させる制御を行い、
前記ボトムの制御において、前記ボトムの前記角度に基づいて、前記角度の変化方向を切り替える制御を行う制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置、プログラム及び制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の睡眠をサポートする手法が種々知られている。例えば特許文献1には、利用者のいびきを検出した場合に、電動ベッドのボトム角度を調整する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0184811号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いびき防止には背を上げることで気道を確保することが有効である。しかし、利用者の体型などに応じて気道を確保できる背上げ角度が異なるため、最適な背上げ角度を決定することが容易でない。
【0005】
本開示のいくつかの態様によれば、ユーザーの睡眠を適切にサポートする端末装置、プログラム及び制御方法等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ユーザーのいびきに関するいびき情報を取得する取得部と、前記いびき情報に基づいて、前記ユーザーが就寝に使用するベッドに対して、前記ベッドのボトムの制御を行わせる制御部と、を含み、前記制御部は、前記ボトムの角度を変化させても、前記いびき情報に基づいて前記いびきが継続的に検出されている場合、前記ボトムの前記角度を再度変化させる制御を行い、前記ボトムの制御において、前記ボトムの前記角度に基づいて、前記角度の変化方向を切り替える制御を行う端末装置に関係する。
【0007】
本開示の他の態様は、ユーザーのいびきに関するいびき情報を取得する取得部と、前記いびき情報に基づいて、前記ユーザーが就寝に使用するベッドに対して、前記ベッドのボトムの制御を行わせる制御部として、コンピュータを機能させ、前記制御部は、前記ボトムの角度を変化させても、前記いびき情報に基づいて前記いびきが継続的に検出されている場合、前記ボトムの前記角度を再度変化させる制御を行い、前記ボトムの制御において、前記ボトムの前記角度に基づいて、前記角度の変化方向を切り替える制御を行うプログラムに関係する。
【0008】
本開示のさらに他の態様は、ユーザーのいびきに関するいびき情報を取得するステップと、前記ユーザーが就寝に使用するベッドに対して、前記ベッドのボトムの制御を行わせるステップと、を含み、前記ボトムの角度を変化させても、前記いびき情報に基づいて前記いびきが継続的に検出されている場合、前記ボトムの前記角度を再度変化させる制御を行い、前記ボトムの制御において、前記ボトムの前記角度に基づいて、前記角度の変化方向を切り替える制御を行う制御方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】制御システムの構成例を示す図である。
図2A】端末装置の表示部に表示される操作画面の例である。
図2B】端末装置の表示部に表示される操作画面の例である。
図3】検出装置の配置例を説明する図である。
図4A】端末装置の構成例を示す図である。
図4B】端末装置の構成例を示す図である。
図5】いびき抑制角度の探索処理(第1制御)を説明するフローチャートである。
図6】ユーザーといびき抑制角度が対応付けられた対応情報の例である。
図7】第1制御のオン/オフ設定の判定処理を説明するフローチャートである。
図8A】第3制御によって取得される寝姿勢といびきの関係を示す図である。
図8B】第1制御によって取得される背角度といびきの関係を示す図である。
図9】睡眠中に取得された情報を提示する画面例である。
図10A】端末装置の表示部に表示される操作画面の例である。
図10B】端末装置の表示部に表示される操作画面の例である。
図11】コース(モード)と制御が対応付けられた第2対応情報の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.システム構成例
図1は、本実施形態に係る制御システム10の概要について説明するための図である。制御システム10は、端末装置100と、検出装置200と、ベッド300を含んでもよい。ただし、制御システム10は図1の例に限定されず、一部の構成を省略する、他の構成を追加する等の変形実施が可能である。例えば検出装置200は省略されてもよいし、他のデバイスが追加されてもよい。また、構成の省略や追加が可能である点は、図4A等の他の図面においても同様である。
【0012】
ベッド300は、制御部310と、当該制御部310によって制御される被制御部として、可動部70を含む電動ベッドである。可動部70は、ボトム71を含む。ボトム71の上にマットレス76(図3を用いて後述)が置かれる。マットレス76の上に、ユーザー81が横たわる。ここでのボトム71とは、上記の通り、マットレス76等が載置される床板であり、図1に示すように複数の板状の部材を含んでもよい。
【0013】
被制御部が制御されるベッドとしては、例えばPCT/JP2018/044703(発明の名称:電動家具、国際出願日:2018年12月5日)に記載の手法を援用できる。この特許出願は援用によりその全体が組み込まれる。
【0014】
可動部70は、例えば、背ボトム70a(back section)、膝ボトム70b(upper leg section)、脚ボトム70c(lower leg section)及び高さ変更部70hなどを含む。高さ変更部70hは、例えば、ベッド昇降機である。図1の例のように、可動部70は、頭ボトム70d(head section)をさらに含んでも良い。ボトム71に含まれる複数の部分(背ボトム70a、膝ボトム70b、脚ボトム70c及び頭ボトム70d)において、互いの角度が変更可能である。なお図1に示すように、ベッド300は、被制御部として、照明部73aや温度制御部73bを含んでもよい。
【0015】
例えば、背ボトム70aの動作により、使用者の背の角度が変更可能である。膝ボトム70b及び脚ボトム70cの動作により、膝の角度が変更可能である。頭ボトム70dの動作により、使用者の頭部の角度または頭部の高さが変更可能である。これらの角度は、連動して変化してもよい。これらの角度は、ベッドのフレーム75を基準にしたときの角度である。例えば、フレーム75は、床面に対して実質的に平行に設定される。上記のボトム71の角度は、床面を基準にした角度でもよい。この例では、フレーム75の下にキャスタ70gが設けられている。キャスタ70gが省略され、「脚」に変更されても良い。
【0016】
高さ変更部70hは、例えば、床面とベッド面との間の距離(高さ)を変更可能である。高さ変更部70hは、ベッド300の頭側の高さと、ベッド300の足側の高さと、を独立して変更できても良い。これにより、ベッド面の全体の傾斜が変更できる。
【0017】
これらの可動部70には、例えばアクチュエータなどが用いられる。可動部70の動作により、「背上げ」、「膝上げ」、「高さ調整」及び「傾斜」などの少なくともいずれかが可能である。「傾斜」は、ローリング及びチルトの少なくともいずれかを含む。
【0018】
本実施形態のベッド300は、端末装置100と接続され、当該端末装置100からの信号に基づいて可動部70を含む被制御部が制御される。例えば端末装置100は制御信号をベッド300の制御部310に送信し、制御部310が当該制御信号に基づいて可動部70を動作させる。端末装置100は、例えばスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末装置である。ただし端末装置100はPC(Personal Computer)等の他の装置であってもよい。
【0019】
例えば端末装置100は、制御用アプリケーションソフトウェアに従って動作することによって、表示部160に任意の操作画面を表示する。端末装置等と連動したベッドの制御手法としては、例えば特願2018-228590号(発明の名称:ベッド装置、出願日:2018年12月5日)に記載の手法を援用できる。この特許出願は援用によりその全体が組み込まれる。
【0020】
図2Aに、操作画面の例である画面42Aを示す。画面42Aは、例えばTOP画面であり、例えば制御システム10のメニューに関する画面に遷移させるためのアイコン(「メニュー」)と、制御システム10の自動運転の設定に関する画面に遷移させるためのアイコン(「自動運転」)と、ベッド300の操作に関する画面に切り換えるためのアイコン(「画面切換」)と、を表示する。
【0021】
画面42Aの「画面切換」のアイコンが、使用者により選択されたと判定すると、図2Bに示す画面42Bへの遷移が行われる。画面42Bは、ベッド300の操作に関する画面であり、ベッド300の各ボトムの位置やフレーム75の位置の情報を示す領域42B1と、ベッド300の動作モードを選択するための複数のアイコンを表示する領域42B2と、領域42B2によって選択されたモードを実行させるためのアイコン(「START」)と、を表示する。各動作モードに応じて、ベッド300の可動部70が駆動される。なお動作モードについては特願2018-228590号に開示されている内容であるため、詳細な説明は省略する。また端末装置100は、ボトム71に含まれる複数の部分のそれぞれの角度を手動調整するための画面等を表示してもよい。
【0022】
図3は、検出装置200の配置例を説明する模式図である。図3においては、図を見やすくするために、構成要素が互いに離されて描かれている。図3に示すようにベッド300において、ベッド部70Bのベッド脚部74の上に、ボトム71が設けられる。ボトム71の上にマットレス76が設けられる。マットレス76の上にユーザー81が横たわる。検出装置200は、例えばボトム71とマットレス76との間に設けられる。例えば検出装置200は、シート状またはプレート状の装置である。
【0023】
検出装置200は、ユーザー81の状態を判定する。具体的には、検出装置200は、ユーザー81が就床すると、マットレス76を介してユーザー81の体振動(体動、振動)を検知する。検出装置200が検知した体振動に基づいて、ユーザー81の生体活動の状態を表す生体情報が算出される。例えば生体情報は、呼吸数、心拍数、活動量、姿勢、覚醒/睡眠、離床/在床に関する情報を含む。また睡眠の判定は、ノンレム睡眠とレム睡眠の判定や、睡眠の深さの判定を含んでもよい。
【0024】
以下、端末装置100と検出装置200が通信接続され、端末装置100において生体情報が求められる例を説明する。ただし生体情報の算出は、検出装置200において行われてもよいし、他の装置(例えばベッド300の制御部310や、端末装置100と接続されるサーバー等)において行われてもよい。
【0025】
例えば体動の周期性を分析し、ピーク周波数から呼吸数、心拍数が算出されてもよい。周期性の分析は、例えばフーリエ変換等である。呼吸数は、単位時間あたりの呼吸の回数である。心拍数は、単位時間あたりの心拍の回数である。単位時間は、例えば1分である。また、サンプリング単位時間当たりに体振動を検出し、検出された体振動の回数が活動量として算出されてもよい。
【0026】
またユーザー81の離床・在床・位置・姿勢等を検知する方法としては、例えば特願2002-327624号(発明の名称:寝床への出入検出装置、出願日:2002年11月11日)に記載の出入検出の方法、特願2002-327632号(発明の名称:ベッド上の位置ずれ検出装置、出願日:2002年11月11日)に記載の検出の方法、特願2002-327633号(発明の名称:ベッド上の位置検出装置、出願日:2002年11月11日)に記載の検知の方法を援用できる。これらの特許出願は援用によりその全体が組み込まれる。
【0027】
なお、本実施形態の手法ではユーザー81の生体情報を検出できればよく、その手法は体振動を用いるものに限定されない。例えば生体情報は、赤外線センサ、カメラ、歪みゲージ付きアクチュエータ、加速度センサ、荷重センサ、体表面や寝具の変位を求めるレーダー等を用いて算出されてもよい。
【0028】
図4A図4Bは、本実施形態に係る端末装置100の構成例を示す図である。図4Aに示すように、端末装置100は、取得部110と制御部120を含んでもよい。
【0029】
取得部110は、ユーザー81のいびきに関するいびき情報を取得する。ここでのいびき情報は、例えばユーザーの近傍に配置されたマイクの出力音声に基づいて求められるいびき音に関する情報であってもよい。
【0030】
制御部120は、いびき情報に基づいて、ユーザー81が就寝に使用するベッド300に対して、ボトム71の制御を行わせる。ここでのボトム71は上記の通り、背ボトム70a、膝ボトム70b、脚ボトム70c、頭ボトム70d等を含んでもよい。
【0031】
制御部120は、下記のハードウェアによって構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成できる。1又は複数の回路装置は例えばIC(Integrated Circuit)、FPGA(field-programmable gate array)等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。
【0032】
また制御部120は、下記のプロセッサによって実現されてもよい。本実施形態の端末装置100は、情報を記憶するメモリと、メモリに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プロセッサは、ハードウェアを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサを用いることが可能である。メモリは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリはコンピュータによって読み取り可能な命令を格納しており、当該命令をプロセッサが実行することによって、制御部120の機能が処理として実現される。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
【0033】
本実施形態の制御部120は、ボトム71の角度を変化させても、いびき情報に基づいていびきが継続的に検出されている場合、ボトム71の角度を再度変化させる制御を行う。そして当該ボトム71の制御において、現在のボトム71の角度に基づいて、角度の変化方向を切り替える制御を行ってもよい。例えば、制御部120は、ユーザー81のいびきが検出されている間は、所定間隔で背ボトム70aの角度を所定角度ずつ増加させる制御を繰り返す。このようにすれば、背ボトム70aの角度が変化していくため、対象のユーザー81のいびきを抑制できる角度を適切に求められる。その際、変化方向は増加に固定されず、背ボトム70aの角度を減少させる制御が行われてもよい。例えば、背ボトム70aの角度を増加させた結果、背ボトム70aの角度が可動範囲の上限値に到達した場合、制御部120は、背ボトム70aの角度を所定角度ずつ減少させる制御に切り替えてもよい。同様に、背ボトム70aの角度を減少させた結果、現在の角度が可動範囲の下限値に到達した場合、制御部120は、背ボトム70aの角度を所定角度ずつ増加させる制御に切り替えてもよい。ただし、変化方向の切り替えは可動範囲の端点に到達した場合に限定されず、可動範囲の端点以外において変化方向を切り替えることも妨げられない。端点以外において変化方向を切り替えることによって、可動範囲のうちの一部の優先度を高くし、可動範囲のうちの他の範囲の優先度を低くすることが可能になる。所与の角度の優先度が高いとは、当該角度に設定されやすいことを表す。例えば、変化方向を切り替える条件は、ユーザー81ごとに異なってもよい。
【0034】
また本実施形態の制御部120は、いびき情報に基づいていびきが検出された場合、ボトム71の角度といびき情報とに基づいて、いびきを抑制すると判定される角度であるいびき抑制角度を探索する制御を行う。具体的な処理内容については図5等を用いて後述する。
【0035】
本実施形態の手法によれば、実際のいびきの状況を確認しつつボトム71の角度を制御することが可能になる。そのため、気道を確保できる背角度はユーザーごとに異なる可能性があるところ、各ユーザーに適した背角度を求めることが可能になる。ここでの背角度は、ユーザー81の背中の角度であって、例えばフレーム75またはベッド300が配置される床面に対する、背ボトム70aの角度と同義である。即ち、本実施形態の手法によれば、いびきの抑制に有効な背ボトム70aの角度を適切に決定すること、及び背ボトム70aを当該角度となるように制御することが可能になる。なお制御部120は、ボトム71のうちの背ボトム70a以外を制御することも妨げられない。
【0036】
さらに、同じユーザー81であっても状況に応じていびきの抑制に適した背角度が変化する可能性もある。本実施形態の手法では、いびき抑制角度を所与の探索範囲から探索するため、ユーザー81の状況の変化にも対応できる。結果として、対象ユーザー81によるいびき音の発生が抑えられるため、ユーザー81自身とその周辺の人(家族など)の睡眠改善や睡眠を阻害することの回避が可能になる。
【0037】
図4Bは、本実施形態に係る端末装置100の詳細な構成例を示す図である。図4Aに示すように、端末装置100は、処理部130、マイク140、記憶部150、表示部160、通信部170を含んでもよい。
【0038】
ここでの処理部130は、CPU、GPU、DSP等、各種のプロセッサを用いることが可能である。処理部130は、いびき情報取得部111、生体情報取得部113、角度調整部121、オン/オフ判定部123を含んでもよい。いびき情報取得部111及び生体情報取得部113は、例えば図4Aにおける取得部110に対応する。角度調整部121及びオン/オフ判定部123は、例えば図4Aにおける制御部120に対応する。
【0039】
いびき情報取得部111は、マイク140から音声信号を取得し、当該音声信号に基づいてユーザーのいびきを表すいびき情報を求める処理を行う。例えばいびき情報取得部111は、音声信号からいびきに対応する成分を抽出し、いびきの継続時間を表す情報をいびき情報として求めてもよい。このようにすれば、いびき情報取得部111は、いびきが検出されたか否か、及び、いびきが検出された場合にはその継続時間の長さを求めることが可能である。なおいびきに対応する成分とは、例えば所定の周波数帯域における成分であってもよい。また、いびき情報の演算では公知の音声信号処理を広く適用可能である。
【0040】
生体情報取得部113は、検出装置200からの体振動を表す情報に基づいて、ユーザー81の生体情報を求める。具体的には上述したように、生体情報取得部113は、呼吸数、心拍数、活動量、姿勢、覚醒/睡眠、離床/在床に関する情報を生体情報として求める。なお、図4Bでは接続関係を省略しているが、検出装置200からの体振動の取得は、通信部170を介して実行される。
【0041】
角度調整部121は、いびき情報に基づいていびきが検出された場合に、ベッド300のボトム71(狭義には背ボトム70a)を制御するための信号をベッド300の制御部310に送信する。なお、図4Bでは接続関係を省略しているが、ベッド300への制御信号の送信は、通信部170を介して実行される。
【0042】
オン/オフ判定部123は、いびき情報及び生体情報の少なくとも一方に基づいて、いびき抑制のために背上げを行う第1制御のオン/オフを判定する。第1制御とは、いびき抑制角度を探索する制御であって、具体的には図5を用いて後述する各ステップを実行する制御である。例えば角度調整部121は、オン/オフ判定部において第1制御がオンに設定されていることを条件に、図5を用いて後述する処理を実行してもよい。
【0043】
マイク140は、端末装置100に内蔵されるマイクであって、音を電気信号に変換する素子である。なお、ここでは端末装置100がマイク140を含む例を示したが、いびき情報取得部111が端末装置100の外部に設けられるマイクから音声信号を取得してもよい。
【0044】
記憶部150は、処理部130のワーク領域であって、SRAM、DRAM、ROM(Read Only Memory)等の種々のメモリによって実現される。記憶部150は、いびき情報や生体情報を記憶してもよい。また記憶部150は、マイク140の出力信号を用いた録音結果(例えばいびきをかいている期間の録音データ)を記憶してもよい。当該録音データを出力することによって、いびきの状況をユーザー81に提示することが可能になる。また記憶部150は、角度調整部121によるボトム71の制御が行われた後の所定期間の録音データを記憶してもよい。当該録音データを出力することによって、角度調整部121によるいびき停止動作の効果を、ユーザー81に提示することが可能になる。また記憶部150は、図6図8A図8B図11等を用いて後述する各種の情報を記憶してもよい。
【0045】
表示部160は、種々の情報を表示するインターフェイスであり、液晶ディスプレイであってもよいし、有機ELディスプレイであってもよいし、他の方式のディスプレイであってもよい。表示部160は、図2A図2Bを用いて上述した操作画面や、図10A図10Bを用いて後述する操作画面を表示する。
【0046】
通信部170は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスであり、例えばアンテナ、RF(radio frequency)回路、及びベースバンド回路を含む。通信部170は、制御部120(処理部130)による制御に従って動作してもよいし、制御部120とは異なる通信制御用のプロセッサを含んでもよい。例えば通信部170は、Bluetooth(登録商標)を用いて、検出装置200及びベッド300との通信を行う。ただし通信部170は、無線LAN(Local Area Network)を用いた通信を行ってもよいし、他の方式の通信を行ってもよい。また検出装置200との通信に用いられる通信方式と、ベッド300との通信に用いられる通信方式は同じであってもよいし異なってもよい。
【0047】
なお本実施形態の端末装置100が行う処理の一部又は全部は、プログラムによって実現されてもよい。端末装置100が行う処理とは、例えば処理部130(取得部110及び制御部120)が行う処理である。またここでのプログラムとは、例えばスマートフォン等において動作するアプリケーションソフトウェアであってもよい。
【0048】
本実施形態に係るプログラムは、例えばコンピュータによって読み取り可能な媒体である非一時的な情報記憶装置(情報記憶媒体)に格納できる。情報記憶装置は、例えば光ディスク、メモリーカード、HDD、或いは半導体メモリなどによって実現できる。半導体メモリは例えばROMである。処理部130等は、情報記憶装置に格納されるプログラムに基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち情報記憶装置は、処理部130等としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記憶する。コンピュータは、入力装置、処理部、記憶部、出力部を備える装置である。具体的には本実施形態に係るプログラムは、図5等を用いて後述する各ステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0049】
また本実施形態の手法は、以下のステップを含む制御方法に適用できる。制御方法は、ユーザーのいびきに関するいびき情報を取得するステップと、ユーザーが就寝に使用するベッドに対して、ボトム71の制御を行わせるステップと、を含み、いびき情報に基づいていびきが検出された場合、ボトム71の角度といびき情報とに基づいて、いびきを抑制すると判定される角度であるいびき抑制角度を探索する制御を行う。
【0050】
2.いびき抑制処理
次にいびきを抑制する具体的な処理について説明する。
【0051】
2.1 処理の流れ
図5は、端末装置100の制御部120、具体的には角度調整部121における処理の流れを説明するフローチャートである。図5の処理は、例えば生体情報に基づいてユーザー81が睡眠状態と判定されている場合に、所定間隔で定期的に実行されてもよい。また後述するように、図5の処理は、第1制御がオンになっていることを条件に実行されてもよい。
【0052】
まずステップS101において、角度調整部121は、いびき情報取得部111からいびき情報を取得する。具体的には、いびき情報取得部111はマイク140の出力信号を取得し、当該出力信号からいびき情報を求める。角度調整部121は、当該いびき情報に基づいていびきが検出されたか否かを判定する。例えば角度調整部121は、いびきの継続時間が所定閾値よりも大きい場合に、いびきが検出されたと判定してもよい。ここでの閾値は0であってもよいし、0より大きい値であってもよい。
【0053】
いびきが検出されたと判定された場合(ステップS101でYes)、ステップS102において、角度調整部121は、通信部170を介して、ベッド300に背ボトム70aの角度変更を指示する制御信号を出力する。例えば角度調整部121は、背ボトム70aの角度を、所定角度だけ増加させる制御信号を送信してもよい。以下、所定角度が2度である例を説明するが、具体的な変化量は種々の変形実施が可能である。
【0054】
ステップS102の処理に基づいて、ベッド300の制御部310は、アクチュエータ等を駆動することによって、背ボトム70aの角度を2度増加させる制御を行う。例えば、変更前の背ボトム70aの角度が水平状態である0度であった場合、背ボトム70aの角度を2度に変更する制御を行う。なお、ここでの水平状態とは、完全に水平な状態に限定されず、水平面との角度差が所定以下である略水平を含む。ベッド300は、背ボトム70aの駆動が完了した場合、その旨と、変更後の角度を端末装置100に送信する。
【0055】
ステップS103において、角度調整部121は、通信部170を介して、角度変更完了と、変更後の角度を取得する。上記の例であれば、角度調整部121は、背ボトム70aの角度が2度に変更された旨を表す情報をベッド300から取得する。
【0056】
ステップS103の処理後、ステップS101に戻り処理が継続される。即ち、マイク140は、角度変更後のユーザー周辺の音を表す出力信号を出力する。いびき情報取得部111はマイク140の出力信号を取得し、当該出力信号からいびき情報を求める。即ちここでのいびき情報は、背ボトム70aが2度の状態におけるいびきを表す情報である。角度調整部121は、当該いびき情報に基づいていびきが検出されたか否かを判定する。このようにすれば、ボトム71の角度を変更した上で、当該変更によっていびきが治まったか否かをいびき情報に基づいて適切に判定できる。例えば、いびき情報取得部111は、ステップS103におけるベッド300からの通知の受信後、所定期間(例えば30秒程度)が経過するまでの期間における音声信号に基づいて、いびき情報を求めてもよい。
【0057】
角度変更後もいびきの検出が継続された場合(ステップS101でYes)、再度、ステップS102及びS103の処理が実行される。例えば、背ボトム70aが2度の状態でもいびきが検出された場合、角度調整部121は、角度をさらに2度増加させる指示を行い、ベッド300の制御部310は背ボトム70aの角度を4度に変更する。ステップS103の処理後、ステップS101に戻り処理が継続される。即ち、角度調整部121は、4度の状態でのいびきを判定する。
【0058】
このように、ステップS101~S103の処理を繰り返すことによって、実際にいびきの状態をセンシングしながら、いびきを抑制可能な角度を適切に探索することが可能になる。そのため、対象のユーザー81に応じたいびき抑制角度を適切に決定できる。
【0059】
なお、背ボトム70aの角度が探索範囲の上限値に到達した場合、角度調整部121は、背ボトム70aの角度を探索範囲の下限値に変更する制御を行ってもよいし、背ボトム70aの角度を所定角度ずつ減少させる制御を行ってもよい。例えば、探索範囲が0度~10度であって、10度の状態でいびきが検出された場合(ステップS101でYes)、角度調整部121は、背ボトム70aの角度を0度に設定し、そこから2度、4度と探索を継続してもよい。あるいは10度の状態でいびきが検出された場合、角度調整部121は、8度、6度・・・の順に逆方向に探索を行い、0度まで到達したときに再度、2度ずつ増加させる制御を行ってもよい。その他、角度調整部121は、ステップS101~S103のループ処理において、探索範囲内でいびき抑制角度を探索できればよく、具体的な探索手順は種々の変形実施が可能である。
【0060】
いびきが検出されなかった場合(ステップS101でNo)、ステップS104において、角度調整部121は、ボトム71の角度調整を終了する。そしてステップS105において、角度調整部121は、その際の背ボトム70aの角度をいびき抑制角度として、ユーザー81と対応付けて記憶部150に記憶する。
【0061】
なお、ユーザー81がそもそもいびきをかいていない状況では、図5の処理が開始された後の最初のステップS101の処理においていびきが検出されなかったと判定される(ステップS101でNo)。この場合、いびき抑制角度を探索する必要が無いため、ステップS104において、角度調整部121は現状の角度を維持する。ステップS105において、角度調整部121は、現状の角度をいびき抑制角度として記憶部150に記憶してもよい。あるいは、本実施形態では発生していたいびきが止まったと判定される角度をいびき抑制角度としてもよく、ステップS101~S103のループ処理が実行されていない場合、ステップS105の処理が省略されてもよい。
【0062】
図6は、図5のステップS105の処理によって記憶部150に記憶される対応情報の例である。対応情報とは、ユーザーといびき抑制角度が対応付けられた情報であり、図6に示すようにテーブルデータであってもよい。図6の例では、ユーザーAのいびき抑制角度が2度であり、ユーザーBのいびき抑制角度が10度である。このようにすれば、ユーザーに応じたいびき抑制角度を適切に管理することが可能になる。
【0063】
また制御部120(角度調整部121)は、対応情報の記憶後にいびきが検出された場合、ユーザー81に対応付けられたいびき抑制角度を探索の初期値として、ボトム71の角度を制御してもよい。例えば図6のデータの取得後に、ユーザーAを対象として図5の処理が実行された場合を考える。この場合、ステップS102において、角度調整部121は、他の角度に比べて、いびき抑制角度である2度が優先的に選択されるようにベッド300に指示を行う。例えば角度調整部121は、現在の背ボトム70aの角度によらず、背ボトム70aの角度を2度にする指示を送信してもよい。このようにすれば、過去にいびきが抑制された実績のある角度が優先的に設定されるため、ユーザー81のいびきを効率的に抑制することが可能になる。
【0064】
ただし、ユーザー81がいびきをかくかどうかは、ユーザーの状態に応じて変化する。例えばユーザー81の体重の変化によって、気道の塞がり方が変化する。そのため、過去にいびきが抑制された角度であるからといって、必ずいびきが抑制されるとは限らない。その場合、角度調整部121は、図5のステップS101~S103の処理を繰り返すことによって、既存のいびき抑制角度以外の角度を対象として、新たないびき抑制角度を探索する処理を行ってもよい。このようにすれば、1人のユーザー81を対象として複数のいびき抑制角度を求めることが可能になる。
【0065】
例えば、ユーザーAのいびき抑制角度として2度という情報が求められている場合であっても、2度以外の角度を対象としていびき抑制角度の探索が実行されてもよい。図6の例では、ユーザーAの新たないびき抑制角度として8度が探索されたため、ユーザーAに対して2度と8度の2つのいびき抑制角度が対応付けられる。また図6の例では、ユーザーBのいびき抑制角度として10度と6度の2つが対応付けられている。この場合、角度調整部121は、例えばユーザーAを対象とした図5の処理において、2度と8度が他の角度に比べて優先的に設定されるように、ステップS102の角度変更を行う。
【0066】
なお以上ではいびきが検出されなくなった場合に(ステップS101でYes)、即座にステップS101~S103のループ処理が終了する例を説明したが、具体的な処理はこれに限定されない。例えば角度調整部121は、所与の角度でいびきが検出されなくなった場合にも、所定角度範囲の探索が完了するまで、ステップS101~S103の処理を繰り返してもよい。ここでの所定角度範囲は、探索範囲の全体であってもよいし、一部であってもよい。このようにすれば、いびき抑制角度として複数の角度が求められる蓋然性が高くなるため、より効率的ないびき抑制が可能になる。
【0067】
また本実施形態におけるいびき抑制角度は、1回の睡眠の中で決定されるものには限定されず、長期的な測定結果に基づいて統計的に決定されてもよい。例えば図8Bを用いて後述するように、角度調整部121は、各角度といびき継続時間の関係を求め、いびき継続時間が短い角度をいびき抑制角度として決定してもよい。例えば所定回数以上の睡眠が行われることが想定される期間(例えば1ヶ月等)において、角度といびき継続時間の関係を計測し、その統計結果に基づいていびき抑制角度が求められてもよい。例えば角度調整部121は、角度毎にいびき継続時間の統計量(平均値や中央値等)を求め、当該統計量が小さい角度をいびき抑制角度として決定する。例えば対象となるユーザー81のデータが蓄積されていないうちは、角度調整部121は、相対的に広い範囲で角度調整を行い、角度といびき継続時間の関係を示すデータを蓄積してもよい。一方、ユーザー81のデータの蓄積が進んだ場合、角度調整部121は、当該データによって求められるいびき抑制角度の周辺に限定した探索処理を実行してもよい。
【0068】
2.2 オン/オフの自動設定
上述したように、いびき抑制のために背上げを行う第1制御は、いびき情報に基づくいびきの検出処理(ステップS101)と、ベッド300のボトム71の角度変更処理(ステップS102)を含む。また図5には不図示ではあるが、いびきの具体的な状況を起床後のユーザー81や関係者(家族、介護担当者等)に知らせるため、マイク140の出力信号の録音処理が行われてもよい。
【0069】
第1制御は、オン/オフが手動で設定されることは妨げられない。ただし本実施形態では、オン/オフの判定が自動的に実行されてもよい。
【0070】
図7は、第1制御のオン/オフを判定する処理を説明するフローチャートである。まずステップS201において、オン/オフ判定部123は、いびき情報、または、生体情報、またはこの両方に基づいて評価値を算出する。ここでの評価値は、いびき情報そのものであってもよいし、いびき情報から演算される情報であってもよい。例えば評価値は、所定期間内におけるいびきの継続時間である。
【0071】
即ち、制御部120(オン/オフ判定部123)は、いびき情報に基づいて判定されるいびきの発生度合いに基づいて、ボトム71の制御を実行するか否かを決定してもよい。このようにすれば、いびきを抑制する必要性が高いか否かに基づいて、第1制御のオン/オフを適切に切り替えることが可能になる。
【0072】
また評価値は、生体情報そのものであってもよいし、生体情報から演算される情報であってもよい。例えば評価値は、呼吸イベント指数であってもよい。呼吸イベント指数とは、呼吸状態に基づいて求められる情報であり、例えば呼吸が停止したと判定されたイベントの、単位時間あたりの発生回数を表す。
【0073】
即ち、取得部110(生体情報取得部113)は、ベッド300のボトム71に載置される検出装置200から、ユーザー81の生体情報を取得する。そして制御部120(オン/オフ判定部123)は、生体情報に基づいて、ボトム71の制御を実行するか否かを決定する。このようにすれば、生体情報に基づいて、第1制御のオン/オフを適切に切り替えることが可能になる。例えば上記の呼吸イベント指数は無呼吸の程度を表す情報であるため、呼吸イベント指数を用いることによって、睡眠が阻害されているか否かに基づいて第1制御のオン/オフを適切に切り替えることが可能になる。
【0074】
また評価値は、いびき情報と生体情報を組み合わせることによって求められてもよいし、複数の生体情報を組み合わせることによって求められてもよい。
【0075】
ステップS202において、オン/オフ判定部123は、評価値が所定の閾値より大きいかを判定する。なおここでの評価値は、値が大きいほど、睡眠が阻害されている蓋然性が高いことを表す情報である。オン/オフ判定部123は、いびき継続時間の値が第1閾値より大きいかを判定してもよいし、呼吸イベント指数が第2閾値より大きいかを判定してもよいし、他の評価値と閾値を用いた判定を行ってもよい。
【0076】
評価値が閾値よりも大きい場合(ステップS202でYes)、ステップS203において、オン/オフ判定部123は、第1制御をオンに設定する。即ち、睡眠が阻害され、いびきが発生する蓋然性が高い状況と判定された場合に、適切にいびき抑制を行うことが可能になる。例えば、マイク音声の録音や背ボトム70aの角度変更が実行されるため、いびきの見逃しを抑制できる。
【0077】
一方、評価値が閾値以下である場合(ステップS202でNo)、ステップS204において、オン/オフ判定部123は、第1制御をオフに設定する。即ち、良好な睡眠をとれている蓋然性が高い状況と判定された場合に、マイク音声の録音や背ボトム70aの角度変更を抑制できる。そのため、いびき以外の音声を録音することによって記憶部150の領域が消費されること、いびき以外の騒音に基づいて誤って背ボトム70aが駆動されること等を抑制できる。
【0078】
いびき音が発生するか否かは日に応じて異なるものであり、同じユーザーであってもいびき音が発生する日としない日がある。本実施形態の手法によれば、ユーザーの具体的な状況に基づいて、第1制御のオン/オフを適切に切り替えることが可能になる。そのため、ユーザー81が手動でオン/オフを制御する必要が無く、利便性向上も可能である。
【0079】
2.3 いびき抑制の変形例
以下、いびきの抑制に関する変形例について説明する。
【0080】
2.3.1 背角度以外によるいびき抑制
以上ではいびきを抑制するために背上げを行う第1制御について説明した。これは水平状態(0度)に比べて背角度が高い姿勢を取らせることによって、気道を確保し、いびきを抑制するものである。即ち、背ボトム70aの角度をユーザー81に応じた値に安定させることを想定した手法である。
【0081】
ただし、いびき抑制には第1制御以外の手法が用いられてもよい。例えば制御部120は、背ボトム70aの角度を変更することによってユーザー81の体を振動させ(体に刺激を与え)、瞬間的な覚醒を促すことによっていびきを抑制してもよい。覚醒状態ではユーザー81は筋肉の弛緩が解消するため、瞬間的な覚醒によっていびきを抑制することが可能である。以下、背ボトム70aを動作させることによって、瞬間的な覚醒を促す制御を第2制御と表記する。
【0082】
第2制御は、角度調整部121によって実現できる。この場合、刺激を与えることが目的であるため、背ボトム70aの具体的な角度は任意の設定が可能である。例えば角度調整部121は、背ボトム70aの角度を所定角度だけ増加させた後、当該所定角度だけ減少させる制御を行ってもよい。この場合、制御後の背ボトム70aの角度は元に戻るため、背角度を含めたユーザー81の姿勢は大きく変化しないが、ユーザー81には十分な刺激が加わるため、覚醒を促すことが可能である。ただし、ユーザー81に瞬間的な覚醒を促す具体的な制御はこれに限定されず、種々の変形実施が可能である。また、気道を確保しやすい姿勢を取らせるための背角度変更(第1制御)が、第2制御を兼ねることも妨げられない。
【0083】
またいびきの発生度合いは、ユーザー81の就寝時の姿勢(以下、寝姿勢とも表記)に関連する。よって取得部110(生体情報取得部113)は、ベッド300のボトム71に載置される検出装置200から、ユーザー81の就寝時の姿勢を表す姿勢情報を含む生体情報を取得してもよい。制御部120は、姿勢情報といびき情報とに基づいて、ユーザーの寝姿勢といびきとの関係を求める。ここでの姿勢情報は、例えば寝姿勢が仰臥位、左側臥位、右側臥位、腹臥位の何れであるかを特定する情報である。このようにすれば、ユーザー81ごとにいびき抑制に適した寝姿勢を求めることが可能になる。以下、ユーザー81に適した寝姿勢を求める制御を第3制御と表記する。
【0084】
例えば制御部120は、第3制御として、姿勢情報といびき情報に基づいて、寝姿勢といびきの関係を求める処理を行ってもよい。図8Aは、第3制御によって求められる情報の例である。具体的には、図8Aに示す情報では、複数の寝姿勢のそれぞれについて、当該寝姿勢を取っている際の単位時間あたりのいびき継続時間が対応付けられている。例えば図8Aにおけるいびき継続時間は、1時間あたりの値(単位:分)を表す値である。
【0085】
図8Aの例では、仰臥位での1時間あたりのいびき継続時間は3.8分である。右側臥位での1時間あたりのいびき継続時間は2.5分である。左側臥位での1時間あたりのいびき継続時間は1.2分である。また対象のユーザー81は、測定対象となる期間において腹臥位と判定された時間がない(あるいは所定以上に短い)ため、腹臥位についてはいびき継続時間が求められていない。よってこの場合、対象のユーザー81に推奨される寝姿勢は左側臥位であると判定できる。
【0086】
なお第3制御は、推奨される寝姿勢を実現するためにボトム71や枕等を駆動する制御を含んでもよい。例えば、ボトム71や枕の左右方向(ベッド300の側面方向)での高さを変化させることによって、側臥位への移行を促す手法が知られており、本実施形態では当該手法を適用可能である。
【0087】
以上のように、いびきを抑制する要素として、背上げ、背動作(瞬間的な覚醒)、寝姿勢が考えられる。よって制御部120は、いびき情報に基づいていびき抑制角度を探索する第1制御、いびき情報に基づいてボトム71を駆動させることによってユーザー81の体を揺らす第2制御、及び、いびき情報と姿勢情報に基づいてユーザー81に適した寝姿勢を判定する第3制御を行ってもよい。このようにすれば、種々の要素を考慮したいびき抑制が可能になる。
【0088】
2.3.2 提示処理
また本実施形態では第1制御~第3制御によって取得される種々の情報がユーザー81等に提示されてもよい。ここでの提示は、例えば端末装置100の表示部160を用いた表示であるが、他の手法が用いられてもよい。また以下で説明する各種の提示は、その全てが行われる必要はなく、一部が省略されてもよい。
【0089】
例えば、制御部120は、第1制御に基づいて求められたいびき抑制角度に関する情報をユーザー81等に提示してもよい。例えば制御部120は、第1制御に基づいて、図8Bに示すように、背ボトム70aの角度に対して、当該角度での単位時間あたりのいびき継続時間が対応付けられた情報を求めてもよい。例えばいびき抑制角度の探索処理を繰り返すことによって図8Bに示す情報が取得されてもよい。
【0090】
図8Bに示す例では、背ボトム70aの角度が8度である場合に、単位時間あたりのいびき継続時間が最も短くなる。この場合、制御部120は、対象のユーザー81のいびき抑制に有効な背角度、即ちいびき抑制角度が8度である旨を提示してもよい。例えば制御部120は、図8Bに示す表を表示してもよいし、背ボトム70aを8度に設定することを推奨する旨のテキストや画像等を含む画面を表示してもよい。このように、推奨される背角度での就寝を促すことによって、いびきを抑制することが可能になる。
【0091】
また制御部120は、第3制御に基づいて、対象のユーザー81のいびきを抑制すると判定された寝姿勢を表す情報を提示してもよい。例えば制御部120は、図8Aに示した表を表示してもよいし、左側臥位を推奨する旨のテキストや画像等を含む画面を表示してもよい。このように、推奨される寝姿勢での就寝を促すことによって、いびきを抑制することが可能になる。
【0092】
また図9は、1晩の就寝によって取得されたデータを、グラフを用いて表示する画面の例である。例えば制御部120は、記憶部150に蓄積されたいびき情報、生体情報、背ボトム70aの制御履歴等に基づいて、図9に示す画面を表示部160等に表示する。
【0093】
図9の横軸が時間を表し、縦軸が各パラメーターの値を表す。図9のA1は各タイミングにおけるいびき継続時間の長さを表す。A2は、各タイミングにおける呼吸数を表す。A3は、各タイミングにおける背ボトム70aの角度を表す。A4は、各タイミングにおける心拍数を表す。A5は、瞬間的な覚醒を促す動作の実行タイミングを表し、1つの三角形が1回の動作を表す。図9に示す情報を表示することによって、睡眠の状態を分かりやすくユーザー81に提示できる。より具体的には、A1,A3,A5に示す情報を提示することによって、いびきの状態や、背角度の調整状況(第1制御の実行状況)、瞬間的な覚醒を促したタイミングや頻度(第2制御の実行状況)を提示できる。
【0094】
2.3.3 各要素の有効度合いの判定
また以上のように、いびき抑制に関連する要素として、背角度、瞬間的な覚醒、寝姿勢の3つがある。よって制御部120は、これらの全てを用いていびきを抑制する制御を行ってもよいし、このうちの一部を用いていびきを抑制する制御を行ってもよい。例えば、上述した第1~第3制御のそれぞれについて、ユーザー81がオン/オフを設定可能であってもよい。ただし、第1~第3制御がどれだけいびき抑制に有効であるかは個人差が大きく、ユーザー81がどの制御(アプリケーションソフトウェアが提供するどの機能)をオンにすればよいかわかりにくい可能性がある。
【0095】
よって制御部120は、背角度、瞬間的な覚醒、寝姿勢のそれぞれといびきとの関連度合いを提示してもよい。このようにすれば、上述した各要素が対象のユーザー81のいびきにどれだけ影響を与えるかをユーザーに認識させることが可能になる。結果として、ユーザー81は、自身のいびきの抑制に有効な要素を適切に認識できるため、第1~第3制御のオン/オフの設定を容易に実現することが可能になる。
【0096】
例えば制御部120は、第1制御での結果に基づいて、図8Bに示す情報を提示してもよい。また制御部120は、図8Bのテーブルに含まれるいびき継続時間と閾値を比較し、当該閾値よりも小さいいびき継続時間を識別可能に提示してもよい。例えば、いずれのいびき継続時間も閾値より大きい場合、背角度を調整してもいびきの発生を十分に抑制できていないと考えられる。逆に閾値よりもいびき継続時間の値が小さい角度が存在する場合、当該角度はいびきの抑制効果が高い。このように図8Bに示す情報、あるいはこれに類する情報を提示することによって、背角度といびきの関連度合い、即ち、第1制御の有効度合いを適切に提示できる。
【0097】
また制御部120は、第2制御の結果に基づいて、図9のA1及びA5に示す情報を提示してもよい。例えば図9の例では、第2制御(背ボトム70aの駆動)が行われた後もいびきが継続して検出されており、結果として1回の就寝の中で第2制御が繰り返し実行されている。この場合、第2制御は、対象のユーザー81のいびき抑制にあまり有効でないと考えられる。一方、第2制御を行った後、いびき継続時間が減少している場合、第2制御はいびき抑制に有効と考えられる。このように図9に示す情報、あるいはこれに類する情報を提示することによって、瞬間的な覚醒といびきの関連度合い、即ち、第2制御の有効度合いを適切に提示できる。
【0098】
また制御部120は、第3制御の結果に基づいて、図8Aに示す情報を提示してもよい。また制御部120は、図8Aのテーブルに含まれるいびき継続時間と閾値を比較し、当該閾値よりも小さいいびき継続時間を識別可能に提示してもよい。第1制御の例と同様に、いびき継続時間が閾値よりも小さい寝姿勢は、いびきの抑制に有効であると考えられる。よって図8Aに示す情報、あるいはこれに類する情報を提示することによって、寝姿勢といびきの関連度合い、即ち、第3制御の有効度合いを適切に提示できる。
【0099】
なお以上のように、制御部120は、上述した各情報に基づいて、第1~第3制御の有効度合いを判定できる。よって制御部120は、第1制御、第2制御、及び第3制御のうち、いびきの抑制に有効と判定された1または複数の制御をユーザーに提示する制御を行ってもよい。このようにすれば、いびき抑制に関する複数の制御のうち、設定をオンにすべき制御をわかりやすくユーザー81に提示することが可能になる。なお、上記の判定結果に基づいて、制御部120が自動で各制御のオン/オフを切り替えることも妨げられない。
【0100】
2.3.4 ユーザー入力
また制御部120は、ユーザー81の状態に関する入力を促す表示を行ってもよい。例えば制御部120は、「寝る前に飲酒をしましたか?」という質問と、当該質問に対する回答の選択肢(「はい/いいえ」)を表示することによって、ユーザー入力を促してもよい。また制御部120は、「現在の体調はどうですか?」という質問と、「良い/普通/悪い」という選択肢を表示してもよい。制御部120は、「昨晩はよく眠れましたか?」という質問と「はい/いいえ」という選択肢を表示してもよい。このようにすれば、マイク140や検出装置200からは検出が難しい情報や、ユーザー81の主観的な状態を表す情報を取得することが可能になる。
【0101】
飲酒をした場合、筋肉の弛緩等によっていびきが発生しやすくなることが知られている。そのため飲酒をした場合、過去の結果から求められたいびき抑制角度に設定してもいびきが抑制されないこと等が考えられる。この場合、いびきの発生は飲酒に起因するものであって、上記いびき抑制角度が有効でないと判断することは適切でない可能性がある。よって制御部120は、飲酒をした旨のユーザー入力が行われた場合、対応するデータをいびき抑制角度の算出対象から除外する処理を行ってもよい。例えば角度調整部121は、図5に示すステップS101~S104の処理を実行する場合であっても、ステップS105の処理を省略してもよい。あるいは制御部120は、図8A図8Bに示す情報の演算に用いるデータから、飲酒時のデータを除外してもよい。このようにすれば、イレギュラーなデータがいびき抑制角度等に与える影響を抑制できる。
【0102】
同様に、ユーザー81の体調が悪い場合も、当該ユーザー81にとってイレギュラーな状態であると考えられる。よって制御部120は、体調が悪い旨のユーザー入力が行われた場合、対応するデータをいびき抑制角度の算出対象から除外する処理等を行ってもよい。
【0103】
また制御部120は、いびき情報、呼吸数、心拍数等に基づいて睡眠の程度を判定できる。よって「昨晩はよく眠れましたか?」という質問に対するユーザー入力が行われた場合、制御部120は、取得部110が取得した情報に基づく睡眠の判定結果と、ユーザー81の主観的な判断とを比較する処理を行ってもよい。
【0104】
また本実施形態におけるユーザー入力は上記の項目に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【0105】
3.いびき抑制以外の睡眠サポート
以上では、対象となるユーザー81のいびきを抑制する制御について説明した。ここでの制御は、上述した第1制御であってもよいし、第2制御や第3制御を含んでもよい。
【0106】
ただし本実施形態の制御部120が実行する制御はこれに限定されない。例えば制御部120は、いびき抑制角度を探索する第1制御、ボトム71を調整することによってユーザー81の入眠をサポートする第4制御、及び、ボトム71を調整することによってユーザーの起床をサポートする第5制御、を含む複数の制御を実行してもよい。また複数の制御は、第2制御や第3制御を含んでもよい。このようにすれば、ユーザー81の睡眠を種々の状況でサポートすることが可能になる。
【0107】
例えば背ボトム70aが緩やかに傾斜しているときにユーザー81は入眠しやすいこと、ボトム71の上面がフラットに近い場合に寝返りがしやすいことが知られている。よって角度調整部121は、上記第4制御として、入眠前には背上げを行うことで入眠を促し、入眠が検出された後に寝返りをしやすいように背下げを行う制御を行ってもよい。
【0108】
また角度調整部121は、上記第5制御として、背上げを行うことで覚醒を促す制御を行ってもよい。例えば角度調整部121は、生体情報に基づいてレム睡眠/ノンレム睡眠を判定し、起床予定時刻に最も近いレム睡眠のタイミングで背ボトム70aの角度を増加させることによって第5制御を行ってもよい。
【0109】
またPCT/JP2018/044703には、生体信号に対応する信号SSの変動ΔSに応じて、背ボトム70aの角度を変更する制御が開示されている。例えば角度調整部121は、ΔSが減少しているときはユーザー81の眠りが深くなっていると判定し、背ボトム70aの角度を増大させることによって深い眠りを促し、ΔSが増加しているときは背ボトム70aの角度を減少させることによって、寝返りをしやすくする制御を行ってもよい。以下、この制御を第6制御とも表記する。その他、本実施形態の制御部120は、PCT/JP2018/044703等に開示された種々の制御を実行してもよい。
【0110】
以上のように、本実施形態では、第1制御~第6制御等を行うことによって、睡眠中の種々の状況においてユーザー81をサポートすることが可能になる。ただし、これらの制御はその全てが実行されるものには限定されず、ユーザー81に応じて自動運転のオン/オフがカスタマイズされてもよい。
【0111】
図10A及び図10Bは、例えば端末装置100の表示部160に表示される操作画面の例である。例えば図4Aの「自動運転」の選択操作が行われた場合に、図10Aに示す画面42Cが表示される。画面42Cは、自動運転のオン/オフの切り替えるオブジェクトを含み、当該オブジェクトをオンにする操作が行われた場合に、図10Bの画面42Dの表示が行われる。
【0112】
画面42Dは、より具体的な設定を行うための画面である。本実施形態では、複数のモード(コース)が設定されており、当該モード毎に自動運転のオン/オフが設定されてもよい。ここでのコースは、例えば睡眠改善コース、入眠改善コース、起床改善コース、いびき防止コース、良い夢コース、夢の消去・記憶低減コース等を含む。
【0113】
睡眠改善コースとは、睡眠全般の状況改善を行うコースである。入眠改善コースは、入眠に関する状況改善を行うコースである。起床改善コースは、起床に関する状況改善を行うコースである。いびき防止コースとは、いびきの発生を抑制するコースである。良い夢コースとは、ユーザー81にとって好ましい夢を見させるためのコースである。夢の消去・記憶低減コースは、夢を見たことを忘れさせたり、記憶や印象を低下させたりするコースである。夢は悪夢が多く、また夢を見ることは眠りが浅いと感じる一つの要素であり主観的睡眠感を低下させる等の知見があることから、夢の消去・記憶低減コースを用いることはユーザー81の睡眠に関するサポートとして有効である。このように、コース単位でのユーザー入力を可能にすることによって、ユーザー81は自身の要望を容易に入力することが可能になる。
【0114】
例えば記憶部150は、複数のモード(コース)のそれぞれに対して、複数の制御(複数の機能)のうちの1以上が対応付けられた第2対応情報を記憶してもよい。そして制御部120は、複数のモードのうちのいずれかを選択するユーザー入力と第2対応情報に基づいて、複数の制御のそれぞれを実行するか否かを決定してもよい。
【0115】
図11は、コースと制御の対応関係を表す第2対応情報の例を示す図である。ここでの制御は上述した第1制御~第6制御に対応する。図11に示すように、睡眠改善コースは6個の制御の全てに対応付けられる。そのため、睡眠改善コースの自動運転がオンに設定された場合、対応する6個の制御が自動的に実行される。
【0116】
同様に、入眠改善コースは入眠時の背上げ及び背下げを行う第4制御に対応付けられる。起床改善コースは起床時の背上げを行う第5制御に対応付けられる。いびき防止コースはいびき抑制角度を用いた背上げを行う第1制御、瞬間的な覚醒を促す第2制御、最適な寝姿勢のレコメンド等を行う第3制御に対応付けられる。良い夢コースはΔSに応じた背上げ及び背下げを行う第6制御に対応付けられる。また夢の消去・記憶低減コースは、第6制御に対応付けられる。ただし、図11はコースと制御の対応付けの一例であり、具体的なコースや制御、及びこれらの間の対応付けについては種々の変形実施が可能である。
【0117】
図11のように、良い夢コース及び、夢の消去・記憶低減コースは、それぞれ同じ第6制御に対応付けられるが、コースに応じて背ボトム70aの角度を変化させるタイミングが異なってもよい。例えば、夢の内容を覚えているかどうかは、夢を見た後に覚醒するか否かによるため、夢を見た後に眠り続けると夢を見た記憶が消去されるので覚醒直前の夢しか覚えていないという知見がある。よって良い夢コースでは、例えば、悪夢などによる中途覚醒を回避するため、起床予定時刻ではないレム睡眠中(夢を覚えていることが多い期間)に、背ボトム70aの角度を変化させることで夢の記憶がマイルドになり、結果として、良い夢と解釈させやすいようにすることが可能になる。一方、夢の消去・記憶低減コースでは、例えば、レム睡眠からノンレム睡眠に切り替わったタイミングから所定時間以上継続した場合であって、起床予定時刻との時間差が閾値以下であるタイミングにおいて、背ボトム70aの角度を増加させる第5制御が行われてもよい。このようにすれば、夢の記憶が消去・低減された状態で起床を促すことが可能である。結果として、夢を見たことを忘れさせたり、記憶や印象を低下させたりすることが可能になる。
【0118】
このようにすれば、ユーザー81の要望に応じて、必要な制御の自動運転を適切にオンに設定することが可能になる。そのため、各機能を個別に設定させる場合に比べて、ユーザー81の操作負担を軽減することが可能になる。またここでは第1~第6制御の6つを例示したが、制御システム10に機能が追加された場合等、実行可能な制御数が増大する可能性がある。その場合にも、直感的に理解しやすいコースの選択を行わせることによって、ユーザー81の要望に添った設定を容易に実現することが可能である。
【0119】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また端末装置、検出装置、ベッド等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0120】
10…制御システム、42A,42B,42C,42D…画面、42B1,42B2…領域、70…可動部、70B…ベッド部、70a…背ボトム、70b…膝ボトム、70c…脚ボトム、70d…頭ボトム、70g…キャスタ、70h…高さ変更部、71…ボトム、73a…照明部、73b…温度制御部、74…ベッド脚部、75…フレーム、76…マットレス、81…ユーザー、100…端末装置、110…取得部、111…いびき情報取得部、113…生体情報取得部、120…制御部、121…角度調整部、123…オン/オフ判定部、130…処理部、140…マイク、150…記憶部、160…表示部、170…通信部、200…検出装置、300…ベッド、310…制御部
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11