(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117623
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】車両の後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B62D25/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020285
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】江藤 聖
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB03
3D203DA07
3D203DA22
3D203DB02
(57)【要約】
【課題】発熱体が検知部に近接して設けられる場合であっても、バンパフェイス下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性の確保と、コスト、質量を増大させることなく、発熱体にユーザのつま先が近接するのを抑制することとの両立を図る車両の後部構造の提供を目的とする。
【解決手段】車両後部のリヤフロアパネル11下方に設けられる発熱体26と、車両後面を構成するバンパフェイス40と、発熱体26の車両後方において、バンパフェイス40下方へのユーザUSの脚部LE移動を検知する検知部60と、を備え、バンパフェイス40の下部は、下方ほど車両前方に向かうように形成されており、バンパフェイス40の下部において、車両後面視で発熱体26と上下方向に重複する位置に、車両後方に延設する後方延設部55を備えることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部のリヤフロアパネル下方に設けられる発熱体と、
車両後面を構成するバンパフェイスと、
上記発熱体の車両後方において、上記バンパフェイス下方へのユーザの脚部移動を検知する検知部と、を備え、
上記バンパフェイスの下部は、下方ほど車両前方に向かうように形成されており、
上記バンパフェイスの下部において、車両後面視で上記発熱体と上下方向に重複する位置に、車両後方に延設する後方延設部を備えることを特徴とする
車両の後部構造。
【請求項2】
上記後方延設部は、上記バンパフェイスの下端に位置する
請求項1に記載の車両の後部構造。
【請求項3】
上記後方延設部は、下方ほど車両後方に向かう傾斜部と、該傾斜部の下端から稜線部を介して車両前方に向かう下面部と、を有する
請求項1または2に記載の車両の後部構造。
【請求項4】
上記後方延設部の上記下面部は、上記発熱体の底面部に沿って延びる
請求項3に記載の車両の後部構造。
【請求項5】
上記後方延設部の上記下面部は、上記発熱体の後面部近傍まで延びて、該後方延設部の上記下面部の前端部から上記発熱体の後面部に沿って下方に延びる下方延出部を有する
請求項3または4に記載の車両の後部構造。
【請求項6】
上記後方延設部の上記稜線部は、当該後方延設部の下面部よりも上方に位置し、かつ、リフトゲートより下方に位置するバンパフェイス後面部の最も後端に位置する部位に対して、車両前方に位置する
請求項3~5の何れか一項に記載の車両の後部構造。
【請求項7】
上記後方延設部の車幅方向両端部は、上記発熱体の車幅方向両端部と同じ位置、または、車幅方向の外側に位置する
請求項1~6の何れか一項に記載の車両の後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハンズフリー(hands free)パワーリフトゲートシステムが採用される車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例のハンズフリーパワーリフトゲートシステムが採用される車両において、サイレンサ等の発熱体の後方のリヤバンパフェイス下部にユーザの脚部移動を検知する検知部が位置する車両の後部構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この車両の後部構造においては、検知部がリヤバンパフェイス下方へのユーザの脚部移動を検知すると、リフトゲートのラッチを解除して、自動的にリフトゲートを開放することができる。
サイレンサ等の発熱体が検知部に近接してレイアウトされた場合、ユーザが脚部移動してリヤバンパフェイス下方につま先を入れる際、発熱体であるサイレンサに対してユーザのつま先が近接する。ここで、特許文献1に開示されているように、リヤバンパフェイス下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザインを採用した場合には、発熱体であるサイレンサに対してユーザのつま先がさらに近接しやすくなる。
【0004】
発熱体に対するユーザのつま先の近接を抑制するためには、発熱体をインシュレータ等の断熱材で覆うと、解決することができるが、この場合には、コストが増大するのみならず、質量が増加することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、発熱体が検知部に近接して設けられる場合であっても、バンパフェイス下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性の確保と、コスト、質量を増大させることなく、発熱体にユーザのつま先が近接するのを抑制することとの両立を図る車両の後部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両後部のリヤフロアパネル下方に設けられる発熱体と、車両後面を構成するバンパフェイスと、上記発熱体の車両後方において、上記バンパフェイス下方へのユーザの脚部移動を検知する検知部と、を備え、上記バンパフェイスの下部は、下方ほど車両前方に向かうように形成されており、上記バンパフェイスの下部において、車両後面視で上記発熱体と上下方向に重複する位置に、車両後方に延設する後方延設部を備えることを特徴とする車両の後部構造である。
【0008】
上述のバンパフェイスの下部とは、リフトゲートよりも下方に位置する領域である。
また、上述の発熱体としては、消音器としてのサイレンサであってもよく、またはレンジエクステンダ(range extender)の内燃機関であってもよい。
【0009】
この発明により、上記後方延設部がユーザの脚部に当接、または、近接することで、ユーザの脚部の車両前方への進入が抑制される。このため、バンパフェイス下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性を確保しつつ、ユーザのつま先が発熱体に近接するのを抑制することができる。
要するに、上述のデザイン性の確保と、コスト、質量を増大させることなく、発熱体にユーザのつま先が近接することの抑制と、の両立を図ることができる。
【0010】
この発明の態様として、上記後方延設部は、上記バンパフェイスの下端に位置してもよい。
この発明により、後方延設部がバンパフェイス下端に位置することで、バンパフェイス下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性を確実に確保しつつ、ユーザのつま先が発熱体に近接することを抑制できる。
【0011】
この発明の態様として、上記後方延設部は、下方ほど車両後方に向かう傾斜部と、該傾斜部の下端から稜線部を介して車両前方に向かう下面部と、を有してもよい。
この発明により、上記傾斜部と上記下面部との間には上記稜線部が位置するので、傾斜部と下面部との間において、車両上下方向に延びる面部が形成されるのを抑制して、デザイン性を確保しつつ、ユーザのつま先が発熱体に近接するのを抑制することができる。
【0012】
この発明の態様として、上記後方延設部の上記下面部は、上記発熱体の底面部に沿って延びてもよい。
この発明により、床下走行風は発熱体の底面部を通って車両後方に流れた後に、後方延設部の下面部に沿って流れる。これにより、床下走行風が整流されて、空力性能の向上を図ることができる。つまりバンパフェイス下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性の確保と、空力性能向上との両立を図ることができる。
【0013】
この発明の態様として、上記後方延設部の上記下面部は、上記発熱体の後面部近傍まで延びて、該後方延設部の上記下面部の前端部から上記発熱体の後面部に沿って下方に延びる下方延出部を有してもよい。
【0014】
この発明により、発熱体が検知部に近接して設けられる場合であっても、上記下方延出部にて、ユーザのつま先が発熱体に近接するのを抑制することができる。また、上記下方延出部により、発熱体の後面部と当該下方延出部との間の車両前後方向の空間が小さくなり、床下走行風をより一層良好に後方延設部の下面部に案内することができて、空力性能の向上を図ることができる。
【0015】
この発明の態様として、上記後方延設部の上記稜線部は、当該後方延設部の下面部よりも上方に位置し、かつ、リフトゲートより下方に位置するバンパフェイス後面部の最も後端に位置する部位に対して、車両前方に位置してもよい。
【0016】
この発明により、上記稜線部の上述の位置により、バンパフェイス下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性を確実に実現しつつ、ユーザのつま先が発熱体に近接することを抑制できる。
【0017】
この発明の態様として、上記後方延設部の車幅方向両端部は、上記発熱体の車幅方向両端部と同じ位置、または、車幅方向の外側に位置してもよい。
この発明により、発熱体に対してユーザのつま先が近接することを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、発熱体が検知部に近接して設けられる場合であっても、バンパフェイス下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性の確保と、コスト、質量を増大させることなく、発熱体にユーザのつま先が近接するのを抑制することとの両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】車両の後部構造をユーザの脚部移動検知状態下にて示す斜視図。
【
図2】車両の後部構造を後方かつ下方から見た状態で示す背面斜視図。
【
図3】車両の後部構造を左前方かつ下方から見た状態で示す下面斜視図。
【
図4】車両の後部構造を車幅方向中央で断面して示す縦断面図。
【
図6】車両の後部構造の他の実施形態を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発熱体が検知部に近接して設けられる場合であっても、バンパフェイス下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性の確保と、コスト、質量を増大させることなく、発熱体にユーザのつま先が近接するのを抑制することとの両立を図るという目的を、車両後部のリヤフロアパネル下方に設けられる発熱体と、車両後面を構成するバンパフェイスと、上記発熱体の車両後方において、上記バンパフェイス下方へのユーザの脚部移動を検知する検知部と、を備え、上記バンパフェイスの下部は、下方ほど車両前方に向かうように形成されており、上記バンパフェイスの下部において、車両後面視で上記発熱体と上下方向に重複する位置に、車両後方に延設する後方延設部を備えるという構成にて実現した。
<実施例>
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の後部構造を示し、
図1は当該車両の後部構造をユーザUSの脚部LE移動検知状態下にて示す斜視図、
図2は車両の後部構造を後方かつ下方から見た状態で示す背面斜視図、
図3は車両の後部構造を左前方かつ下方から見た状態で示す下面斜視図である。
【0022】
また、
図4は車両の後部構造を車幅方向中央で上下方向に断面して示す縦断面図、
図5は
図4の要部拡大断面図である。
なお、図中、矢印Fは車両の前方を示し、矢印Rは車両の後方を示し、矢印UPは車両の上方を示す。
【0023】
図4に示すように、後部荷室10の床面を形成するリヤフロアパネル11を設けている。後述するサイレンサ26の前部と対応する位置において、上記リヤフロアパネル11の上部には車幅方向に延びるクロスメンバアッパ12を接合固定して、当該クロスメンバアッパ12とリヤフロアパネル11との間には、車幅方向に延びる閉断面部13を形成している。
【0024】
上述のクロスメンバアッパ12の前部と対応する位置において、上述のリヤフロアパネル11の下部には車幅方向に延びるクロスメンバロア14を接合固定して、当該クロスメンバロア14とリヤフロアパネル11との間には、車幅方向に延びる閉断面部15を形成している。
【0025】
上述の閉断面部13,15を形成する前後のクロスメンバアッパ12、クロスメンバロア14を設けることで、リヤフロアパネル11の剛性向上を図っている。
また、上述のリヤフロアパネル11の左右両サイド(但し、図面では車両右側のみを示す)には、車両の前後方向に延びる車体強度部材としてのリヤサイドフレームアッパ16とリヤサイドフレームロア17とを接合固定している。
【0026】
そして、リヤサイドフレームアッパ16とリヤフロアパネル11との間、並びに、リヤサイドフレームロア17とリヤフロアパネル11との間、または、リヤサイドフレームアッパ16とリヤサイドフレームロア17との間には、車両の前後方向に延びるリヤサイド閉断面部18を形成して、下部車体剛性の向上を図っている。
【0027】
上述の後部荷室10は、リヤフロアパネル11と、
図1に示すルーフパネル19と、左右の後部サイドパネル20とで囲繞して構成されており、後部荷室10は後方に開放した荷室開口21を備えている。
【0028】
上記荷室開口21は、開口上部に位置するリヤヘッダと、開口下部に位置するリヤエンドメンバと、開口側部に位置するリヤピラーと、で補強されている。
上述のルーフパネル19の車幅方向左右両サイドには車両前後方向に延びるルーフレインフォースメント(図示せず)が設けられると共に、ルーフパネル19の後端部には、車幅方向に延びるリヤヘッダ(図示せず)が設けられている。
【0029】
図1に示すように、上述の荷室開口21を開閉可能に覆うリフトゲート22を設けている。このリフトゲート22はリヤヘッダ直後部に段下げ形成したルーフパネル19のヒンジ取付け部に対して、リフトゲートヒンジを取付け、このリフトゲートヒンジにリフトゲート22の上端が開閉可能に枢支されている。
【0030】
上述のリフトゲート22は、リフトゲートアウタパネルとリフトゲートインナパネルとを有するリフトゲート本体23と、リヤウインドシールド(いわゆるリヤウインドガラス)24と、を備えている。この実施例では、ハンズフリーパワーリフトゲートシステムが採用されている。
【0031】
ところで、この実施例では車両前部のエンジンルームにエンジンが搭載されており、エンジンのシリンダヘッドにおける排気ポートに、排気マニホールドを介して排気管25(
図2~
図4参照)が連通接続されている。
【0032】
上述の排気管25はエンジンルームからフロントフロアパネルのトンネル部車外側を通って、リヤフロアパネル11の下方に延びており、この排気管25の前後方向中間部には触媒コンバータ(図示せず)が介設されている。
【0033】
図2~
図4に示すように、上述の排気管25の後端部は、発熱体としてのサイレンサ26におけるインレットパイプ27の前端部に連通接続されている。
上述の排気管25の後端外周部にはフランジ25Fを設け、上述のインレットパイプ27の前端外周部にもフランジ27Fを設けて、これら両フランジ25F,27Fを締結することで、排気管25の後端部と、インレットパイプ27の前端部と、を連結している。
【0034】
上述のサイレンサ26は、インレットパイプ27と、サイレンサアッパハウジング28およびサイレンサロアハウジング29から成り、車幅方向に延びるサイレンサハウジング30と、該サイレンサハウジング30の左右から車幅方向外方に延びた後に後方に延びる平面視略L字状の左右のテールパイプ31,32と、を備えている。
【0035】
上述のサイレンサハウジング30はサイレンサアッパハウジング28下部の接合フランジ部と、サイレンサロアハウジング29上部の接合フランジ部と、を接合固定して構成される。
上述のインレットパイプ27の後側過半部はサイレンサハウジング30内に導入されており、このインレットパイプ27の導入部27aは、ブラケット33を介してサイレンサアッパハウジング28に支持されている。
【0036】
図4に示すように、上述のサイレンサアッパハウジング28の車幅方向左右両端部の前後両位置には、支持片34,34が一体的に設けられており、これら複数の支持片34をハンガ35を介してリヤサイドフレームロア17に取付けることで、サイレンサ26がリヤフロアパネル11の下方に吊り下げ支持されている。
なお、図中、36は左右の後輪、
図3における37,38,39は排気管25とほぼ同等の高さ位置において車両下方部を覆うアンダカバーである。
【0037】
図1~
図4に示すように、車両後面を構成するリヤバンパフェイス40を設けている。
このリヤバンパフェイス40は、
図1、
図2に示すように、リフトゲート22の下辺部22aに対応して車幅方向に延びるバンパフェイス中央部41と、該バンパフェイス中央部41の車幅方向左右両端部から車両前方に回り込んで上下方向に延びる左右のバンパフェイス側部42,43と、を合成樹脂により一体形成したものである。
【0038】
図1、
図3に示すように、左側のバンパフェイス側部42の上端42aは、リヤコンビネーションランプ取付け部44の下端部まで上方に延びている。また、左側のバンパフェイス側部42の前上端42bは、後部サイドパネル20と一体形成されたリヤフェンダパネル45の後端部まで前上に延びている。さらに、左側のバンパフェイス側部42の前端42cは、車両左側の後輪36と近接する位置まで前方に延びている。
【0039】
図2に示すように、右側のバンパフェイス側部43における上端43a、前上端43b、前端43cは、左側のバンパフェイス側部42における上端42a、前上端42b、前端42cと左右対称に形成されている。
【0040】
図2、
図3に示すように、バンパフェイス中央部41の車幅方向左右両端部と左右のバンパフェイス側部42,43とが一体連結されたリヤバンパフェイス40の湾曲形状のコーナ部46,46の下部には、左右のテールパイプ31,32の後端開口31a,32aの位置と対応して、排気ガスを車外へ導出する開口部47,47が開口形成されている。
【0041】
上述のバンパフェイス中央部41は
図4に示すように形成されている。
すなわち、バンパフェイス中央部41の上下方向中間部に車両前方に向けて窪む凹部48を形成し、この凹部48よりも上方のバンパフェイス中央上部49と、上述の凹部48よりも下方のバンパフェイス中央下部50と、を形成している。
【0042】
図4に示すように、バンパフェイス中央上部49は、バンパフェイス中央部41の上端に位置して車両前後方向に略水平に延びる上面部51と、上面部51の後端に稜線部としての上部稜線X1を介して上記凹部48の位置まで下方に延びる背面部52と、を備えている。
【0043】
バンパフェイス中央下部50は、下方ほど車両前方に向かうように形成された前下がり部53を備えている。
図2、
図3に示すように、上述の凹部48は車両左側において車幅方向の内側に位置する開口部47と、車両右側において車幅方向の内側に位置する開口部47と、に隣接する対応位置まで車幅方向に延びている。
【0044】
そして、同図に示すように、上述の凹部48の車幅方向左右両端部に連続してバンパフェイス中央部41の下端まで下方に延びる連続凹部54,54が形成されている。
つまり、上述のバンパフェイス中央下部50および前下がり部53は、車幅方向に延びる凹部48と、上下方向に延びる左右の連続凹部54,54とで囲繞された範囲内に形成されている。
【0045】
図4に示すように、上述のバンパフェイス中央下部50の前下がり部53下部には、車両後面視で発熱体であるサイレンサ26と上下方向に重複する位置に、車両後方に延設する後方延設部55を備えている。
【0046】
ところで、
図2、
図3、
図5に示すように、サイレンサ26の車両後方には、リヤバンパフェイス40下方へのユーザUSの脚部LE(
図1参照)の移動、詳しくは、リヤバンパフェイス40下方へのユーザUSのつま先TO進入を検知する検知部60を備えている。
検知部60はリフトゲート22を有する車両において、ユーザUSがつま先TOを車両の後部下方に移動させたことを検知する検知部である。
【0047】
図2、
図3に示すように、上記検知部60は車幅方向に延びるアッパセンサ61とロアセンサ62とを備えている。これらの各センサ61,62は信号線と、信号線上に配置された複数のセンサ部とを備えている。各センサ61,62の端部、この実施例では車幅方向左側の端部にはセンサ信号処理部63を備えている。
【0048】
センサ信号処理部63は、アッパセンサ61とロアセンサ62のセンサ部の検出結果を受けて、信号処理を行ない、リフトゲート22開閉部に指令信号を出力する制御回路である。
【0049】
上記各センサ61,62は車幅方向に延びる信号線に対して、少なくとも車幅方向左側端部と、車幅方向の中央部と、車幅方向右側端部とに、設けることが好ましい。
上述のアッパセンサ61とロアセンサ62とが上下に離間して設けられることで、ユーザUSのつま先TOがリヤバンパフェイス40の下方へ移動されたことを、確実に検知して、誤検出を防止するように構成している。
【0050】
上述のセンサ部には、例えば、静電容量型近接センサが用いられる。
静電容量型近接センサは、発振回路と、発振回路の発振周波数の変化を検出する検出回路とを備えている。検出回路がユーザUSのつま先TOを検出しない未検出時には、検出領域となる検出用電極の電界に対象物が存在しないため、発振回路の発振周波数に変化はない。
【0051】
検出領域に対象物(ユーザUSのつま先TO)が進入すると、検出用電極の電荷の増加により、静電容量が増加し、発振回路の発振周波数が変化する。この発振周波数の変化により、検出回路が対象物であるユーザUSのつま先TOを検出するものである。
【0052】
上述のハンズフリーパワーリフトゲートシステムは、検知部60がリヤバンパフェイス40下方へのユーザUSの脚部LEの移動、つまり、つま先TOの進入を検知した時、リフトゲート22のラッチを解除して、自動的にリフトゲート22を開放するものである。
【0053】
上述のアッパセンサ61およびロアセンサ62は、
図5に示すセンサ支持部材70により支持されている。
このセンサ支持部材70は、アッパセンサ61およびロアセンサ62の延設方向である車幅方向に延びるセンサホルダ71と、ホルダカバー72と、を備えている。
【0054】
図5に示すように、センサホルダ71は接着剤73を用いてリヤバンパフェイス40のバンパフェイス中央下部50における前下がり部53の前面に取付けられている。
また、上述のセンサホルダ71は、車両側面視で上方が開放された凹形状のアッパセンサ配置部74と、車両側面視で前上方向が開放された凹形状のロアセンサ配置部75と、カバー取付け部76と、を備えている。
【0055】
上述のホルダカバー72は、アッパセンサ61が配置されたアッパセンサ配置部74の上方を覆うリヤカバー部77と、ロアセンサ62が配置されたロアセンサ配置部75の開放側を覆うフロントカバー部78とを備えている。そして、ホルダカバー72におけるリヤカバー部77の前部と、センサホルダ71のカバー取付け部76と、をファスナ79により連結している。
【0056】
図4、
図5に示すように、リヤバンパフェイス40の下部において、車両後面視でサイレンサ26と上下方向に重複する位置に、前下がり部53の下端から車両後方に延設する後方延設部55を設けたものである。
【0057】
これにより、リフトゲート22のハンズフリーによる開放時に、ユーザUSがつま先TOをリヤバンパフェイス40下方に進入しようとすると、後方延設部55がユーザUSの脚部LEに当接、または、近接することで、ユーザUSの脚部LEの車両前方への進入が抑制される。この結果、リヤバンパフェイス40下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性を確保しつつ、ユーザUSのつま先TOがサイレンサ26に近接するのを抑制すべく構成したものである。
【0058】
因に、上述のサイレンサ26はエンジンの駆動により高温の排気ガスが流入、流出することで、その表面温度が約190℃になるため、ユーザUSのつま先TOがサイレンサ26に近接するのを抑制することは、ユーザUSにとって有効となる。
【0059】
図4、
図5に示すように、上述の後方延設部55は、リヤバンパフェイス40の下端に位置するものである。詳しくは、当該後方延設部55は、リヤバンパフェイス40における前下がり部53の下端に位置する。
【0060】
このように、上記後方延設部55がリヤバンパフェイス40の下端に位置することでリヤバンパフェイス40下部が下方ほど車両前方に傾斜するというデザイン性を確保しつつ、ユーザUSのつま先TOがサイレンサ26に近接することをより一層確実に抑制するように構成している。
【0061】
図4、
図5に示すように、上述の後方延設部55は、前下がり部53の下端から下方ほど車両後方に向かう傾斜部56と、この傾斜部56の下端(つまり後端)から稜線部としての下部稜線X2を介して車両前方に向かう下面部57と、を有している。
上述の傾斜部56は、
図4、
図5に示すように、前高後低状に傾斜しており、上述の下面部57は、同図に示すように、前低後高状に傾斜している。
【0062】
図2、
図3に示すように、傾斜部56、下部稜線X2、下面部57を有する後方延設部55は、左右の連続凹部54,54間において車幅方向に延びている。
このように、上述の傾斜部56と下面部57との間には、上記下部稜線X2が位置するので、傾斜部56と下面部57との間において、車両上下方向に延びる面部が形成されるのを抑制して、上述のデザイン性を確保しつつ、ユーザUSのつま先TOがサイレンサ26に近接するのを抑制すべく構成している。
【0063】
仮に、上述傾斜部56と下面部57との間に、車両上下方向に延びる面部、つまり、平面部が形成された場合には、下面部57に沿って車両後方に流れた床下走行風が下面部57後端から上記面部に巻き込まれて、渦が発生するので、空力特性の観点で好ましくない。
【0064】
図4に示すように、上述の下面部57の前端57aと、サイレンサ26の後端26bとの間には、車両前後方向に延びるつま先誘導範囲L1が形成されている。
図4に示すように、上述の後方延設部55の上記下面部57は、サイレンサ26の底面部に沿って延びている。すなわち、サイレンサ26を構成するサイレンサロアハウジング29の底面部29aは、車両前方が低く、車両後方が高くなる前低後高状に傾斜しており、このサイレンサロアハウジング29の傾斜状の底面部29aと、後方延設部55における上記下面部57とは略平行に形成されている(同図の点線α参照)。
【0065】
床下走行風は、サイレンサ26の底面部、すなわち、サイレンサロアハウジング29の底面部29aを通って車両後方に流れた後に、後方延設部55の下面部57に沿って流れる。上記サイレンサ26の底面部29aと下面部57とが略平行に形成されていることで、床下走行風が下面部57にて整流され、空力性能の向上を図るように構成したものである。つまり、リヤバンパフェイス40下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性の確保と、空力性能向上との両立を図るように構成している。
【0066】
図4に示すように、上述の後方延設部55の下部稜線X2は、当該後方延設部55の下面部57よりも上方に位置すると共に、リフトゲート22よりも下方に位置するリヤバンパフェイス40後面部の最も後端に位置する部位である最後端部位βに対して、距離L2だけ車両前方に位置するように構成している。
【0067】
これにより、上述の下部稜線X2の上記位置(前方オフセット位置)により、リヤバンパフェイス40の下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性を確実に実現しつつ、ユーザUSのつま先TOがサイレンサ26に近接するのを抑制するように構成している。
【0068】
さらに、
図2に示すように、上述の後方延設部55の車幅方向左右両端部55A,55Bは、サイレンサ26の車幅方向左右両端部26A,26Bと同じ位置、または、車幅方向の外側に位置する。この実施例では、
図2に示すように、後方延設部55の車幅方向左右両端部55A,55Bは、サイレンサ26の車幅方向左右両端部26A,26Bに対して、車幅方向の外側に位置するように構成されている。
【0069】
これにより、後方延設部55が、ユーザUSのつま先TO進入が想定される車幅方向の広い範囲に形成されることで、サイレンサ26に対してユーザUSのつま先TOが近接することを確実に抑制するように構成している。
<他の実施例>
【0070】
次に、
図6を参照して他の実施例について説明する。
図6は車両の後部構造の他の実施例を示す要部拡大断面図である。
図6に示すように、リヤバンパフェイス40のバンパフェイス中央下部50において上述の後方延設部55の上記下面部57は、発熱体としてのサイレンサ26の後面部近傍まで前方に延びている。また、該後方延設部55の下面部57の前端部57fからサイレンサ26の後面部、詳しくは、サイレンサロアハウジング29の後面部29bに沿って下方に延びる下方延出部58を設けている。
【0071】
この実施例では、
図6に示すように、上記下方延出部58は、サイレンサロアハウジング29の後面部29bに沿って下方ほど車両前方に位置するように前低後高状に傾斜して、下方に延びている。
そして、サイレンサロアハウジング29の後面部29bと、上記下方延出部58との間には、車両前後方向の間隙gを形成している。
【0072】
これにより、サイレンサ26が検知部60に近接して設けられる構造であっても、上述の下方延出部58により、ユーザUSのつま先TOがサイレンサ26に近接するのを抑制すべく構成している。
【0073】
また、上述の下方延出部58により、サイレンサ26の後面部、詳しくは、サイレンサロアハウジング29の後面部29bと上記下方延出部58との間の車両前後方向の空間(間隙g参照)が小さくなり、床下走行風をより一層良好に後方延設部55の下面部57に案内して、空力性能の向上を図るように構成している。
【0074】
仮に、後方延設部55の下面部57が、サイレンサ26の後面部29b近傍まで延びておらず、サイレンサ26の後面部29bと下面部57の前端との間の距離が大きい場合には、サイレンサ26の底面部29aに沿って流れる床下走行風が、当該サイレンサ26の底面部29a後端からサイレンサ26の後方上部空間に流入するので、空力性能の観点で好ましくない。
【0075】
図6で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、
図1~
図5で示した先の実施例とほぼ同様であるから、
図6において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
なお、
図1において、80はクオータウインドガラス、81はフューエルリッドである。
【0076】
以上のように、本実施例に係る車両の後部構造は、車両後部のリヤフロアパネル11下方に設けられる発熱体(サイレンサ26参照)と、車両後面を構成するリヤバンパフェイス40と、上記発熱体(サイレンサ26)の車両後方において、上記リヤバンパフェイス40下方へのユーザUSの脚部LE移動を検知する検知部60と、を備え、上記リヤバンパフェイス40の下部は、下方ほど車両前方に向かうように形成されており(前下がり部53参照)、上記リヤバンパフェイス40の下部において、車両後面視で上記発熱体(サイレンサ26)と上下方向に重複する位置に、車両後方に延設する後方延設部55を備えることを特徴としている(
図4参照)。
【0077】
このような車両の後部構造によれば、上記後方延設部55がユーザUSの脚部LEに当接、または、近接することで、ユーザUSの脚部LEの車両前方への進入が抑制される。このため、リヤバンパフェイス40下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性を確保しつつ、ユーザUSのつま先TOが発熱体(サイレンサ26)に近接するのを抑制することができる。
【0078】
要するに、上述のデザイン性の確保と、コスト、質量を増大させることなく、発熱体(サイレンサ26)にユーザUSのつま先TOが近接することの抑制と、の両立を図ることができる。
【0079】
また、かかる車両の後部構造においては、上記後方延設部55は、上記リヤバンパフェイス40の下端に位置している(
図4、
図5参照)。
このような車両の後部構造によれば、後方延設部55がリヤバンパフェイス40下端に位置することで、リヤバンパフェイス40下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性を確実に確保しつつ、ユーザUSのつま先TOが発熱体(サイレンサ26)に近接することを抑制できる。
【0080】
さらに、かかる車両の後部構造においては、上記後方延設部55は、下方ほど車両後方に向かう傾斜部56と、該傾斜部56の下端から稜線部(下部稜線X2)を介して車両前方に向かう下面部57と、を有する(
図4、
図5参照)。
【0081】
このような車両の後部構造によれば、上記傾斜部56と上記下面部57との間には上記稜線部(下部稜線X2)が位置するので、傾斜部56と下面部57との間において、車両上下方向に延びる面部が形成されるのを抑制して、デザイン性を確保しつつ、ユーザUSのつま先TOが発熱体(サイレンサ26)に近接するのを抑制することができる。
【0082】
さらにまた、かかる車両の後部構造においては、上記後方延設部55の上記下面部57は、上記発熱体(サイレンサ26)の底面部29aに沿って延びている(
図4参照)。
このような車両の後部構造によれば、床下走行風は発熱体(サイレンサ26)の底面部29aを通って車両後方に流れた後に、後方延設部55の下面部57に沿って流れる。これにより、床下走行風が整流されて、空力性能の向上を図ることができる。つまりリヤバンパフェイス40下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性の確保と、空力性能向上との両立を図ることができる。
【0083】
加えて、かかる車両の後部構造においては、上記後方延設部55の上記下面部57は、上記発熱体(サイレンサ26)の後面部29b近傍まで延びて、該後方延設部55の上記下面部57の前端部57fから上記発熱体(サイレンサ26)の後面部29bに沿って下方に延びる下方延出部58を有する(
図6参照)。
【0084】
このような車両の後部構造によれば、発熱体(サイレンサ26)が検知部60に近接して設けられる場合であっても、上記下方延出部58にて、ユーザUSのつま先TOが発熱体(サイレンサ26)に近接するのを抑制することができる。また、上記下方延出部58により、発熱体(サイレンサ26)の後面部29bと当該下方延出部58との間の車両前後方向の空間(間隙g参照)が小さくなり、床下走行風をより一層良好に後方延設部55の下面部57に案内することができて、空力性能の向上を図ることができる。
【0085】
また、かかる車両の後部構造においては、上記後方延設部55の上記稜線部(下部稜線X2)は、当該後方延設部55の下面部57よりも上方に位置し、かつ、リフトゲート22より下方に位置するリヤバンパフェイス40後面部の最も後端に位置する部位(最後端部位β参照)に対して、車両前方に位置する(
図4参照)。
【0086】
このような車両の後部構造によれば、上記稜線部(下部稜線X2)の上述の位置により、リヤバンパフェイス40下部が下方ほど車両前方に傾斜するデザイン性を確実に実現しつつ、ユーザUSのつま先TOが発熱体(サイレンサ26)に近接することを抑制できる。
【0087】
さらに、かかる車両の後部構造においては、上記後方延設部55の車幅方向両端部(車幅方向左右両端部55A,55B)は、上記発熱体(サイレンサ26)の車幅方向両端部(車幅方向左右両端部26A,26B)と同じ位置、または、車幅方向の外側に位置する(
図2参照)。
このような車両の後部構造によれば、発熱体(サイレンサ26)に対してユーザUSのつま先TOが近接することを確実に抑制することができる。
【0088】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のリヤフロアパネルは、実施例のリヤフロアパネル11に対応し、
以下同様に、
リフトゲートは、リフトゲート22に対応し、
発熱体は、サイレンサ26に対応し、
発熱体の車幅方向両端部は、サイレンサ26の車幅方向左右両端部26A,26Bに対応し、
発熱体の底面部は、サイレンサ26の底面部29aに対応し、
発熱体の後面部は、サイレンサ26の後面部29bに対応し、
バンパフェイスは、リヤバンパフェイス40に対応し、
後方延設部は、後方延設部55に対応し、
後方延設部の車幅方向両端部は、後方延設部55の車幅方向左右両端部55A,55Bに対応し、
傾斜部は、傾斜部56に対応し、
下面部は、下面部57に対応し、
下方延出部は、下方延出部58に対応し、
検知部は、検知部60に対応し、
稜線部は、下部稜線X2に対応し、
バンパフェイス後面部の最も後端に位置する部位は、最後端部位βに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施例を得ることができる。
【0089】
例えば、発熱体は、サイレンサ26に代えて、レンジエクステンダの内燃機関であってもよい。因に、レンジエクステンダは、前輪などの駆動輪を駆動するモータと、該モータに電力を供給するバッテリと、該バッテリに発電電力を充電する発電機と、この発電機を駆動するエンジンとを備え、バッテリの電気容量が所定値以下に低下した時、エンジンにより発電機を駆動し、その発電電力をバッテリに供給して充電するように構成されたものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明は、ハンズフリーパワーリフトゲートシステムが採用される車両の後部構造について有用である。
【符号の説明】
【0091】
11…リヤフロアパネル
22…リフトゲート
26…サイレンサ(発熱体)
26A,26B…車幅方向左右両端部
29a…底面部
29b…後面部
40…リヤバンパフェイス(バンパフェイス)
55…後方延設部
55A,55B…車幅方向左右両端部
56…傾斜部
57…下面部
58…下方延出部
60…検知部
X2…下部稜線(稜線部)
β…最後端部位