IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーNPC株式会社の特許一覧

特開2023-117647可変容量素子ユニット及びその製造方法
<>
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図1
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図2
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図3
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図4
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図5
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図6
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図7
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図8
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図9
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図10
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図11
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図12
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図13
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図14
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図15
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図16
  • 特開-可変容量素子ユニット及びその製造方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117647
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】可変容量素子ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/329 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
H01L29/93 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020322
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤竹 正仁
(72)【発明者】
【氏名】倉光 良明
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 邦之
(57)【要約】
【課題】容量可変比及び直線性が高い可変容量素子ユニットを提供する。
【解決手段】可変容量素子ユニットは、同一の半導体基板に形成された、少なくとも1つの第1可変容量素子と、第1可変容量素子と容量可変比の異なる少なくとも1つの第2可変容量素子とを備える。前記半導体基板は、前記半導体基板の主面の一部を含む平坦領域と、前記半導体基板の主面に設けられた凹部を含む凹部領域とを有する。前記第1可変容量素子は、前記平坦領域において、前記半導体基板の主面に沿って形成された第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成された第2導電型の第2半導体層とを有する。前記第2可変容量素子は、前記凹部領域において、前記凹部内の表面に沿って形成された第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成された第2導電型の第2半導体層とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の半導体基板に形成された、少なくとも1つの第1可変容量素子と、第1可変容量素子と容量可変比の異なる少なくとも1つの第2可変容量素子と、を備え、
前記半導体基板は、前記半導体基板の主面の一部を含み、前記少なくとも1つの第1可変容量素子が形成される平坦領域と、前記半導体基板の主面に設けられた凹部を含み、前記少なくとも1つの第2可変容量素子が形成される凹部領域と、を有し、
前記第1可変容量素子は、前記半導体基板の前記平坦領域において、前記半導体基板の主面に沿って形成された第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成された第2導電型の第2半導体層と、を有し、
前記第2可変容量素子は、前記半導体基板の前記凹部領域において、前記凹部内の表面に沿って形成された第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成された第2導電型の第2半導体層と、を有する、可変容量素子ユニット。
【請求項2】
前記凹部は、前記半導体基板の主面から離れるに従い、積層方向に垂直な該凹部の断面積を小さくする傾斜面を有し、
前記第2可変容量素子における前記第1半導体層及び前記第2半導体層が、前記凹部の傾斜面に形成されている、請求項1に記載の可変容量素子ユニット。
【請求項3】
前記凹部は、断面略V字型の溝である、請求項2に記載の可変容量素子ユニット。
【請求項4】
前記第2可変容量素子における前記第2半導体層の積層方向厚みは、前記第1可変容量素子における前記第2半導体層の積層方向厚みよりも小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の可変容量素子ユニット。
【請求項5】
前記第1可変容量素子は、該第1可変容量素子の前記第2半導体層上に形成された絶縁膜をさらに備え、
前記第2可変容量素子は、該第2可変容量素子の前記第2半導体層上に形成された絶縁膜をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の可変容量素子ユニット。
【請求項6】
前記第1可変容量素子における前記絶縁膜及び前記第2可変容量素子における前記絶縁膜は、熱酸化膜であり、
前記第2可変容量素子における前記絶縁膜の積層方向厚みは、前記第1可変容量素子における前記絶縁膜の積層方向厚みよりも大きい、請求項5に記載の可変容量素子ユニット。
【請求項7】
前記第1可変容量素子における前記絶縁膜及び前記第2可変容量素子における前記絶縁膜は、蒸着膜であり、前記第2可変容量素子における前記絶縁膜の積層方向厚みは、前記第1可変容量素子における前記絶縁膜の積層方向厚みと同じである、請求項5に記載の可変容量素子ユニット。
【請求項8】
前記半導体基板上に、前記少なくとも1つの第1可変容量素子と、前記少なくとも1つの第2可変容量素子とが、直線状或いはマトリックス状に配置され、
前記半導体基板を平面視した際の、前記少なくとも1つの第1可変容量素子の総面積A1と、前記少なくとも1つの第2可変容量素子の総面積A2との比(A1:A2)が、1:9~9:1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の可変容量素子ユニット。
【請求項9】
半導体基板の主面の一部に少なくとも1つの凹部を形成し、前記半導体基板に平坦領域及び凹部領域を設ける第1工程と、
前記半導体基板の前記平坦領域及び前記凹部領域に絶縁膜を形成する第2工程と、
前記半導体基板に前記絶縁膜を介してイオン注入を行い、前記半導体基板の前記平坦領域及び前記凹部領域に、第1導電型の第1半導体層を形成する第3工程と、
前記半導体基板に前記絶縁膜を介してイオン注入を行い、前記半導体基板の前記平坦領域及び前記凹部領域における前記第1半導体層上に、第2導電型の第2半導体層を形成する第4工程と、を有する、可変容量素子ユニットの製造方法。
【請求項10】
前記第1工程において、前記凹部として、前記半導体基板の主面から離れるに従い、前記半導体基板の主面に平行な断面積が小さくなる傾斜面を有する凹部を形成し、 前記第3工程において、前記凹部領域に対し、前記傾斜面に前記第1半導体層を形成し、
前記第4工程において、前記第1半導体層上に前記第2半導体層を形成する、請求項9に記載の可変容量素子ユニットの製造方法。
【請求項11】
前記第2工程において、前記半導体基板の表層部を熱酸化して、前記平坦領域及び前記凹部領域に熱酸化膜を形成する、請求項9又は10に記載の可変容量素子ユニットの製造方法。
【請求項12】
前記第2工程において、気相成長法により、前記平坦領域及び前記凹部領域に半導体材料の酸化物又は窒化物で構成された絶縁膜を形成する、請求項9又は10に記載の可変容量素子ユニットの製造方法。
【請求項13】
前記第1工程において、平坦領域及び凹部領域が直線状又はマトリックス状に設けられるように、前記少なくとも1つの凹部を複数形成する、請求項9~12のいずれか一項に記載の可変容量素子ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量素子ユニット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量ダイオード(Variable Capacitance Diode)は、可変容量素子として知られるダイオードである。可変容量ダイオードとしては、特許文献1のような構成が知られている。可変容量ダイオードは、可変容量の逆方向電圧を印加すると、pn接合の空乏層がコンデンサとしてはたらくことを利用したものである。可変容量ダイオードに印加する逆方向電圧の大きさを変化させると、可変容量ダイオードのpn接合の空乏層の幅が変化するため、その容量が変化する。
【0003】
可変容量ダイオードは、例えば、高周波フィルタ、TVチューナ、水晶振動子を共振器としたVCXO( Voltage Controlled Xtal Oscillator)等の電圧制御可変発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)などに用いられる。
【0004】
可変容量素子は、印加される逆方向電圧の大きさの変化に対する容量の変化のグラフの直線性が高いほど、容量を容易に制御できることが知られている。
【0005】
可変特性が複数種類必要な場合、複数の可変容量素子を組み合わせて用いられる。例えば、特許文献2には、可変特性の異なる複数の可変容量素子を組み合わせる方法が開示されている。特許文献2に開示された方法では、可変容量素子ごとに異なるマスクを用いて、順々にイオン注入を行い、可変特性の異なる複数の可変容量素子を作成している。
【0006】
また、特許文献3では、表面に酸化膜が形成された埋込電極部を、半導体基板部に形成された不純物領域に埋め込み、電圧印加部によって埋込電極部と半導体基板部の間に任意の直流電圧を印加して、酸化膜の内部に形成された電荷蓄積部に、印加された直流電圧に応じた電荷量を蓄積して可変容量半導体素子を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3-147375号公報
【特許文献2】特開2010-003987号公報
【特許文献3】特開2016-134432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~3では、容量可変比が高く且つ逆方向電圧の大きさに対する容量可変比のプロファイルの直線性が高い可変容量素子ユニットを得ることは難しい。
【0009】
また、特許文献2のような方法では、それぞれの可変容量素子を製造するためにマスクを可変容量素子ごとに形成する必要がある。従って、所望の可変容量特性ごとにマスク形成工程が必要となり、製造工程が煩雑化や製造コストの増大を招く。
更に、その他の方法として、熱拡散を利用し、インプラントと熱拡散によって可変容量特性を調節する方法が知られている。しかしながら、本方法では素子製造の難易度が高く、現実的な解決策とは言い難い。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、容量可変比が高く且つ逆方向電圧の大きさに対する容量可変比のプロファイルの直線性が高い可変容量素子ユニットを簡便に製造することが可能な方法、並びに容量可変比及び直線性が高い可変容量素子ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の第一の態様に係る可変容量素子ユニットは、同一の半導体基板に形成された、少なくとも1つの第1可変容量素子と、第1可変容量素子と容量可変比の異なる少なくとも1つの第2可変容量素子と、を備え、前記半導体基板は、前記半導体基板の主面の一部を含み、前記少なくとも1つの第1可変容量素子が形成される平坦領域と、前記半導体基板の主面に設けられた凹部を含み、前記少なくとも1つの第2可変容量素子が形成される凹部領域と、を有し、前記第1可変容量素子は、前記半導体基板の前記平坦領域において、前記半導体基板の主面に沿って形成された第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成された第2導電型の第2半導体層と、を有し、前記第2可変容量素子は、前記半導体基板の前記凹部領域において、前記凹部内の表面に沿って形成された第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成された第2導電型の第2半導体層と、を有する。
【0012】
(2)上記態様に係る可変容量素子ユニットにおいて、前記凹部は、前記半導体基板の主面から離れるに従い、積層方向に垂直な該凹部の断面積を小さくする傾斜面を有し、前記第2可変容量素子における前記第1半導体層及び前記第2半導体層が、前記凹部の傾斜面に形成されていてもよい。
【0013】
(3)上記態様に係る可変容量素子ユニットにおいて、前記凹部は、断面略V字型の溝であってもよい。
【0014】
(4)上記態様に係る可変容量素子ユニットにおいて、前記第2可変容量素子における前記第2半導体層の積層方向厚みは、前記第1可変容量素子における前記第2半導体層の積層方向厚みよりも小さくてもよい。
【0015】
(5)上記態様に係る可変容量素子ユニットにおいて、前記第1可変容量素子は、該第1可変容量素子の前記第2半導体層上に形成された絶縁膜をさらに備え、前記第2可変容量素子は、該第2可変容量素子の前記第2半導体層上に形成された絶縁膜をさらに備えていてもよい。
【0016】
(6)上記態様に係る可変容量素子ユニットにおいて、前記第1可変容量素子における前記絶縁膜及び前記第2可変容量素子における前記絶縁膜は、熱酸化膜であり、前記第2可変容量素子における前記絶縁膜の積層方向厚みは、前記第1可変容量素子における前記絶縁膜の積層方向厚みよりも大きくてもよい。
【0017】
(7)上記態様に係る可変容量素子ユニットにおいて、前記第1可変容量素子における前記絶縁膜及び前記第2可変容量素子における前記絶縁膜は、蒸着膜であり、前記第2可変容量素子における前記絶縁膜の積層方向厚みは、前記第1可変容量素子における前記絶縁膜の積層方向厚みと同じであってもよい。
【0018】
(8)上記態様に係る可変容量素子ユニットにおいて、前記半導体基板上に、前記少なくとも1つの第1可変容量素子と、前記少なくとも1つの第2可変容量素子とが、直線状或いはマトリックス状に配置され、前記半導体基板を平面視した際の、前記少なくとも1つの第1可変容量素子の総面積A1と、前記少なくとも1つの第2可変容量素子の総面積A2との比(A1:A2)が、1:9~9:1であってもよい。
【0019】
(9)本発明の第二の態様に係る可変容量素子ユニットの製造方法は、半導体基板の主面の一部に少なくとも1つの凹部を形成し、前記半導体基板に平坦領域及び凹部領域を設ける第1工程と、前記半導体基板の前記平坦領域及び前記凹部領域に絶縁膜を形成する第2工程と、前記半導体基板に前記絶縁膜を介してイオン注入を行い、前記半導体基板の前記平坦領域及び前記凹部領域に、第1導電型の第1半導体層を形成する第3工程と、前記半導体基板に前記絶縁膜を介してイオン注入を行い、前記半導体基板の前記平坦領域及び前記凹部領域における前記第1半導体層上に、第2導電型の第2半導体層を形成する第4工程と、を有する。
【0020】
(10)上記態様に係る可変容量素子ユニットの製造方法において、前記第1工程において、前記凹部として、前記半導体基板の主面から離れるに従い、前記半導体基板の主面に平行な断面積が小さくなる傾斜面を有する凹部を形成し、前記第3工程において、前記凹部領域に対し、前記傾斜面に前記第1半導体層を形成し、前記第4工程において、前記第1半導体層上に前記第2半導体層を形成してもよい。
【0021】
(11)上記態様に係る可変容量素子ユニットの製造方法において、前記第2工程において、前記半導体基板の表層部を熱酸化して、前記平坦領域及び前記凹部領域に熱酸化膜を形成してもよい。
【0022】
(12)上記態様に係る可変容量素子ユニットの製造方法において、前記第2工程において、化学気相成長法又は物理気相成長法により、前記平坦領域及び前記凹部領域に、半導体材料の酸化物又は窒化物で構成された絶縁膜を形成してもよい。
【0023】
(13)上記態様に係る可変容量素子ユニットの製造方法において、前記第1工程において、平坦領域及び凹部領域が直線状又はマトリックス状に設けられるように、前記少なくとも1つの凹部を複数形成してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容量可変比が高く且つ逆方向電圧の大きさに対する容量可変比のプロファイルの直線性が高い可変容量素子ユニットを簡便に製造することが可能な方法、並びに容量可変比及び直線性が高い可変容量素子ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る可変容量素子ユニットの一例を示す断面模式図である。
図2】本実施形態に係る可変容量素子のユニットを構成する第1,第2可変容量素子の配置の一例を示す平面図である。
図3】本実施形態に係る可変容量素子ユニットを構成する第1,第2可変容量素子の配置の他の一例を示す平面図である。
図4】本実施形態に係る可変容量素子ユニットの他の一例を示す断面模式図である。
図5】本実施形態に係る可変容量素子ユニットの製造方法の一例を説明するための図である。
図6】本実施形態に係る可変容量素子ユニットの製造方法の第1工程を説明するための図である。
図7】可変容量素子ユニットの製造方法の第2工程を説明するための図である。
図8】可変容量素子ユニットの製造方法の第3工程を説明するための図である。
図9】可変容量素子ユニットの製造方法の第4工程を説明するための図である。
図10図7の第2工程の変形例を説明するための図である。
図11図8の第3工程の変形例を説明するための図である。
図12図9の第4工程の変形例を説明するための図である。
図13図1の可変容量素子を備える電圧制御型水晶発振器の回路図の一例である。
図14】製造例1及び製造例2においてシリコン基板の(100)面及び(111)面に熱酸化膜SiOが形成する速度を示す図である。
図15】製造例3及び製造例4で得られた基板深さと可変容量素子の不純物濃度の関係を示す図である。
図16】製造例3及び製造例4で得られた可変容量素子の不純物濃度の分布を示す断面図である。
図17】実施例1、比較例1及び比較例2の可変容量素子ユニットに加えられる逆方向のバイアス電圧を変化させたときの容量可変比(C/C)の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。このため、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっている場合がある。
【0027】
[可変容量素子]
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る可変容量素子ユニット100の断面構造を模式的に示す図である。
図1に示すように、可変容量素子ユニット100は、同一の半導体基板10に形成された、少なくとも1つの第1可変容量素子1Aと、第1可変容量素子1Aと容量可変比の異なる少なくとも1つの第2可変容量素子1Bと、を備える。図1において、可変容量素子ユニット100の第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bは、それぞれアノード電極の端子65とカソード電極の端子60とに接続されており、カソード電極が共通となっている。図1には、本発明の理解を容易にするために、可変容量素子ユニット100の回路図の例を合わせて示す。
【0028】
この可変容量素子ユニット100は、例えば半導体基板10、絶縁膜20、カソード電極構造体30、カソード電極本体31、カソードコンタクト32、アノード電極構造体35、アノード電極本体36、アノードコンタクト37、素子分離酸化膜40、及び絶縁層50を備える。半導体基板10は、例えばシリコンを含む半導体であり、第1導電型のベース基板11、第1導電型の第1半導体層12、第2導電型の第2半導体層13を含む。
【0029】
半導体基板10は、半導体基板10の主面Sの一部を含み、少なくとも1つの第1可変容量素子1Aが形成される平坦領域RAと、半導体基板10の主面Sに設けられた凹部PBを含み、少なくとも1つの第2可変容量素子1Bが形成される凹部領域RBと、を有する。
【0030】
第1可変容量素子1Aは、半導体基板の平坦領域RAにおいて、半導体基板10の主面Sに沿って形成された第1導電型の第1半導体層12Aと、第1半導体層上に形成された第2導電型の第2半導体層13Aと、を有する。ここで、半導体基板10の主面Sの結晶面は、例えば(100)面である。第1半導体層12Aは、例えば半導体基板10のベース基板11上に形成されている。第1可変容量素子1Aは、例えば第2半導体層13A上に形成された絶縁膜20Aをさらに有する。
【0031】
ベース基板11は、例えば低濃度のホウ素等の不純物元素を一様な濃度で含むp型の半導体である。第1半導体層12Aは、例えばホウ素等の不純物元素を含むp型の半導体層である。第2半導体層13Aは、例えばヒ素等の不純物元素を含むn型半導体層である。第1可変容量素子1Aは、第1半導体層12Aおよび第2半導体層13Aでpn接合(pn接合面19)を形成している。pn接合面19は、第1半導体層12Aおよび第2半導体層13Aの境界面であり、不純物濃度が極小値をとる座標面である。pn接合において、第1半導体層12Aは、例えばpn接合面19から離れるに従い不純物濃度が増大し、ある座標でp型不純物元素濃度が最も高い極大値を取り、極大値から離れるに従い不純物元素濃度が低下する構造になっている。すなわち、第1半導体層12Aは、pn接合面19から離れるに従い不純物濃度が増大する第1領域と、第1領域よりもpn接合面19から離間した領域であり、pn接合面19から離れるに従い不純物濃度が低下する第2領域と、を有する。また、すなわち第1可変容量素子1Aは、例えば超階段接合型である。pn接合において、pn接合面近傍の極大値から基板内部側の深さ方向の濃度が低くなる超階段接合にすると、後述する原理により空乏層が電圧印加に応じて積層方向に広がるので、容量可変比を大きくすることができる。
【0032】
第1半導体層12は、例えば半導体基板10の面内方向における全面に亘って設けられている。第2半導体層13Aは、例えば隣接する素子分離酸化膜40,40に区画された領域であり、その一部がカソードコンタクト32と接している。
【0033】
第1半導体層12A、第2半導体層13A、絶縁膜20Aの積層方向厚みを、それぞれT12A、T13A,T20Aで示す(図1)。ここで、積層方向厚みとは、第1半導体層12A,第2半導体層13A、絶縁膜20Aが積層する方向における厚みであり、半導体基板10の主面Sに垂直な方向における厚みである。第1半導体層12Aの積層方向厚みT12Aは、後述する第1半導体層12Bの積層方向厚みT12Bよりも大きいことが好ましく、第2半導体層13Aの積層方向厚みT13Aは、後述する第2半導体層13Bの積層方向厚みT13Bよりも大きいことが好ましく、絶縁膜20Aの積層方向厚みT20Aは、後述する絶縁膜20Bの積層方向厚みT20Bよりも小さいことが好ましい。当該構成により、可変容量素子ユニット100の自由度を高めることができる。
【0034】
ベース基板11の不純物元素の濃度は、例えば1015/cm~1016/cmであり、第1半導体層12Aの不純物元素の濃度は、例えば1016/cm~1018/cmであり、第2半導体層13Aの不純物元素の濃度は、例えば1017/cm~1021/cmである。
【0035】
第1半導体層12Aにおいて、pn接合面19からわずかに離れた領域では、pn接合面19から離れるに従い急峻に不純物濃度が増大し、極大値をとると、pn接合面から離れるに従い急峻に不純物濃度が低下する。pn接合面19から不純物濃度の極大値までの領域において、第1半導体層12Aの厚み方向における不純物の濃度勾配は、例えば-2.019~+5.019(個/cm・μm)であり、-1.019~+3.019(個/cm・μm)であることが好ましい。また、第1半導体層12Aにおいて、不純物濃度の極大値よりもpn接合面19から離間した領域における不純物の濃度勾配は、-1.019~+1.017(個/cm・μm)であり、-1.019~+1.016(個/cm・μm)であることが好ましい。ここで、第1半導体層12Aの厚み方向における不純物の濃度勾配は、第1半導体層12Aの積層方向における等間隔の任意の10箇所の不純物濃度プロファイルを積層方向位置に対して微分した平均値で求められる。また、-1×1019(個/cm・μm)はpn接合面19から離れるに従い、不純物濃度が1×1019(個/cm・μm)減少する事を、0(個/cm・μm)は、不純物濃度が変化しない事を、1×1019(個/cm・μm)は、1×1019(個/cm・μm)増加する事を意味する。
【0036】
絶縁膜20Aは、例えば熱酸化膜、或いはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の半導体材料の酸化物又は窒化物で構成された、気相堆積法によって堆積させた膜である。絶縁膜20Aは、例えば、蒸着膜である。
【0037】
第2可変容量素子1Bは、半導体基板10の凹部領域RBにおいて、凹部PBの表面SBに沿って形成された第1導電型の第1半導体層12Bと、第1半導体層12B上に形成された第2導電型の第2半導体層13Bと、を有する。第2半導体層13Bは、例えば隣接する素子分離酸化膜40,40に区画された領域であり、その一部がカソードコンタクト32と接している。第1半導体層12Bは、例えば半導体基板10のベース基板11上に形成されている。第2可変容量素子1Bは、例えば第2半導体層13B上に形成された絶縁膜20Bをさらに有する。
【0038】
凹部PBは、半導体基板10の厚み方向に凹んでいる。凹部PBは、例えば半導体基板10の主面Sから離れるに従い、半導体基板10の厚み方向に垂直な断面積を小さくする傾斜面10を含み、傾斜面10で構成されていてもよい。図1に示す凹部PBは、傾斜面10で構成されており、断面略V字型の形状をしている。すなわち、図1に示す凹部PBは、半導体基板10の主面Sと垂直な断面における凹部PBは、略V字型である。ここで、主面Sは、例えばシリコン基板の(100)面であり、傾斜面10の結晶面は、例えばシリコン基板の(111)面である。
【0039】
半導体基板10の厚み方向から平面視して、凹部PBは、例えばスポット状に設けられてもよいし、線状に設けられていてもよい。また、凹部PBは、半導体基板10の面内方向に沿って連続的又は間欠的に設けられた溝であっていてもよい。
【0040】
第1半導体層12B、第2半導体層13B、及び絶縁膜20Bの積層方向厚みを、それぞれT12B,T13B、及びT20Bで示す(図1)。ここで、第1半導体層12B、第2半導体層13B、絶縁膜20Bの積層方向厚みとは、それぞれ第1半導体層12B、第2半導体層13B、及び絶縁膜20Bが積層する方向における厚みであり、傾斜面10に垂直な方向における厚みである。半導体基板10の主面Sに対する傾斜面10の角度は、例えば15°~75°であり、50°~60°であることが好ましい。主面Sが、シリコン基板の(100)面であり、傾斜面10の結晶面が、シリコン基板の(111)面であるとき、半導体基板10の主面Sに対する傾斜面10Tの角度は、54.7°となる。
【0041】
第1半導体層12Bの積層方向厚みT12Bは、例えば第1半導体層12Aの積層方向厚みT12A以上であり、第1半導体層12Aの積層方向厚みT12Aよりも大きいことが好ましい。所望の容量可変比に応じて任意に設計することができるが、第1半導体層12Bの積層方向厚みT12Bは、第1半導体層12Aの積層方向厚みT12Aの1.1倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。
第2半導体層13Bの積層方向厚みT13Bは、例えば第2半導体層13Aの積層方向厚みT13A以下であり、第2半導体層13Aの積層方向厚みT13Aよりも小さいことが好ましい。所望の容量可変比に応じて任意に設計することができるが、第2半導体層13Bの積層方向厚みT13Bは、第2半導体層13Aの積層方向厚みT13Aの0.8倍以下であることがより好ましく、0.5倍以下であることがさらに好ましい。
【0042】
第2半導体層13Bの積層方向厚みT13Bは第2半導体層13Aの積層方向厚みT13Aよりも小さいことで、第1半導体層12Aと第1半導体層12Bとの不純物濃度プロファイルに違いを設けやすい。具体的には、不純物濃度の最大値および最小値が第1半導体層12Aと第1半導体層12Bとで略同等である場合、第2半導体層13Bの積層方向厚みT13Bは第2半導体層13Aの積層方向厚みT13Aよりも小さいことで、第1半導体層12Bの不純物濃度プロファイルを第1半導体層12Aと異なる不純物濃度プロファイルにすることができる。具体的には、第1半導体層12Aの不純物濃度プロファイルを第1半導体層12Bの不純物濃度プロファイルよりも急峻にすることができ、例えば超階段接合とすることができる。
【0043】
第1半導体層12B及び第2半導体層13Bの不純物の元素の濃度プロファイルは、第1半導体層12A及び第2半導体層13Aの不純物元素の濃度プロファイルと異なる。具体的には、第1半導体層12Aは、pn接合面19から離れるに従い、第1半導体層12Bよりも急峻に不純物濃度が変化し、第1半導体層12Bは、pn接合面19から離れるに従い、第1半導体層12Aよりも緩やかに不純物濃度が変化する。第1半導体層12Bにおいて、pn接合面19からわずかに離れた領域では、pn接合面から離れるに従い緩やかに不純物濃度が増大し、極大値をとると、pn接合面から離れるに従い緩やかに不純物濃度が低下する。すなわち、第1半導体層12Bも第1半導体層12Aと同様、第1領域と第2領域とを有する。第1半導体層12Bにおいて、pn接合面19から不純物濃度の極大値までの領域における厚み方向の不純物の濃度勾配は、例えば1×1018~+5×1019(個/cm・μm)であり、+5×1018~+2×1019(個/cm・μm)であることが好ましい。また、第1半導体層12Bにおいて、不純物濃度の極大値よりもpn接合面19から離間した領域における不純物の濃度勾配は、-5×1019~-5×1016(個/cm・μm)であり、-1×1019~-1×1017(個/cm・μm)であることが好ましい。ここで、-1×1019(個/cm・μm)はpn接合面19から1μm離れるに従い、不純物濃度が1×1019(個/cm)減少する事を、0(個/cm)は、不純物濃度が変化しない事を、1×1019(個/cm)は、1×1019(個/cm)増加する事を意味する。また、第1半導体層12Bの厚み方向における不純物の濃度勾配と、第1半導体層12Aの厚み方向における不純物の濃度勾配との差は、2×1018(個/cm・μm)以上であることが好ましい。pn接合面19の位置から逆バイアス電圧V=0Vでの空乏層幅Wだけ深い箇所の第1半導体層12Aの不純物元素の濃度プロファイル勾配(個/cm・μm)がプラスの値、または、ゼロから始まる濃度プロファイルであることが好ましい。
【0044】
第1可変容量素子1Aにおいて、接合面19よりも半導体基板の主面Sから離間した位置に設けられる第1半導体層12Aの不純物濃度が一度急峻に上昇し、さらに深くなるに従い急峻に低下する事で容量―電圧変化が鋭くなり、容量―電圧カーブが鋭くなる。従って、低い逆バイアス電圧で容量の下限値を採る。一方、第2可変容量素子1Bにおいて、合面19よりも半導体基板の主面Sから離間した位置に設けられる第1半導体層12Aの不純物濃度が一度緩やかに上昇し、さらに深くなるに従い緩やかに低下する事で容量―電圧変化が鈍く、容量―電圧カーブが緩やかになり、高い逆バイアス電圧で容量の下限値を採る。容量の下限値は、下記の[数1],[数2]より半導体基板10の不純物濃度でほぼ決定される。
【0045】
【数1】
【0046】
【数2】
(W:空乏層幅、Vbi:ビルトイン電圧(内蔵電位)、ε:シリコンの誘電率、ε0:真空中の誘電率、q:電荷素量、ni:シリコンの真性キャリア密度、NA:p型不純物濃度、NB:n型不純物濃度、k:ボルツマン定数、T:絶対温度)
【0047】
第1半導体層12Bの厚み方向における不純物濃度のプロファイルの傾きが上記範囲であると、第1可変容量素子1Aと第2可変容量素子1Bとを組み合わせることにより、容量可変比を容易に調整することができる。
【0048】
第1半導体層12Bの不純物元素の濃度は、例えば1015/cm~1018/cmであり、第2半導体層13Bの不純物元素の濃度は、例えば5.0×1016/cm~1.0×1021/cmである。尚、第2半導体層13Bの不純物濃度の最大値は、第1半導体層12Bの不純物濃度の最大値よりも高い。同様に、第2半導体層13Aの不純物濃度の最大値は、第1半導体層12Aの不純物濃度の最大値よりも高い。
【0049】
絶縁膜20Bは、例えば熱酸化膜、或いはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等のCVD膜である。絶縁膜20Bの積層方向厚みT20Bは、絶縁膜20Aの積層方向厚みT20Aよりも大きいことが好ましく、絶縁膜20Aの積層方向厚みT20Aと同じであってもよい。具体的には、絶縁膜20Bの積層方向厚みT20Bは、絶縁膜20Aの積層方向厚みT20Aの1.2倍以上2.0倍以下であることが好ましい。
【0050】
上述のとおり、可変容量素子ユニット100は、半導体基板10の平坦領域RAおよび凹部領域RBにおいて、不純物濃度プロファイルが異なる。
【0051】
第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bにカソード電極の端子60からアノード電極の端子65へ逆方向電圧を加えると、電流はほとんど流れず、pn接合面19付近に空乏層が形成される。第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bに印加する逆方向電圧を大きくすると、それぞれの空乏層が積層方向に広がる。すなわち、逆方向電圧の大きさを変化させることで、第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bの容量を変化させることができる。
【0052】
逆方向電圧の大きさに対する、可変容量素子の容量の変化の仕方は、可変容量素子ごとに異なる。一般的に、逆方向電圧が小さい場合、逆方向電圧の変化に対し、可変容量素子の容量変化が大きく、逆方向電圧が大きい場合、逆方向電圧の変化に対し、可変容量素子の容量変化が小さい。一方、逆方向電圧の大小に関わらず一様に変化する可変容量素子の場合、容量可変比の制御が容易であり、好ましい。すなわち、逆方向電圧の大きさに対する容量可変比のプロファイルの直線性が高い可変容量素子が望ましい。
【0053】
可変容量素子の容量可変比及び逆方向電圧の大きさに対する容量可変比のプロファイルの直線性は、可変容量素子を構成する半導体層の不純物濃度プロファイルに依存する。従って、不純物濃度プロファイルの異なる第1可変容量素子1Aと第2可変容量素子1Bとでは、容量可変比及び逆方向電圧の大きさに対する容量可変比のプロファイルの直線性が異なる。具体的には、第1可変容量素子1Aの容量可変比は、第2可変容量素子1Bの容量可変比よりも大きい。また、第2可変容量素子1Bの逆方向電圧に対する容量可変比のプロファイルの直線性は、第1可変容量素子1Aの直線性よりも高い。よって、第1可変容量素子1Aと第2可変容量素子1Bとを組み合わせた構成とすることで、例えば容量可変比が第2可変容量素子1Bよりも高く、且つ、逆方向電圧の変化に対する容量可変比のプロファイルの直線性が第1可変容量素子1Aよりも高い可変容量素子ユニット100が得られる。
【0054】
図2及び図3は、本実施形態に係る可変容量素子のユニットを構成する第1可変容量素子1A,第2可変容量素子1Bの配置の一例を示す平面図である。
図2及び図3に示すように、可変容量素子ユニット100A、100Bは、例えば少なくとも1つの第1可変容量素子1Aと、少なくとも1つの第2可変容量素子1Bとは、半導体基板10に直線状或いはマトリックス上に配置される。可変容量素子ユニット100,100A,100Bにおいて、第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bは、例えば並列に接続される。半導体基板10を平面視した際の、第1可変容量素子1Aの総面積A1と第2可変容量素子1Bの総面積A2との比(A1:A2)は、1:9~9:1であることが好ましい。ここで、第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bの面積は、それぞれ半導体基板10を平面視したときの第2半導体層13Aおよび第2半導体層13Bの面積のことをいう。
【0055】
第1可変容量素子1Aと第2可変容量素子1Bとの総面積の比が、上記範囲内であると、容量可変比および直線性を好ましい範囲にすることができる。
【0056】
尚、可変容量素子ユニットにおける第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bの数及び面積比は、図2及び図3に示す例に限定されず、所望の容量可変比及び直線性に応じて任意に選択することができる。
【0057】
上述したように、本実施形態によれば、可変容量素子ユニット100が、平坦領域RAを有する第1可変容量素子1A、及び凹部領域RBを有し第1可変容量素子1Aと容量可変比の異なる第2可変容量素子1Bを有する構成であるので、容量可変比が互いに異なる第1可変容量素子1Aと第2可変容量素子1Bの組合せにより、容量可変比が高く、且つ逆方向電圧の大きさに対する容量可変比のプロファイルの直線性が高い可変容量素子ユニット100を容易に実現することができる。
【0058】
尚、上記実施形態では、ベース基板11の不純物濃度が一様である構造であるが、これに限らず、ベース基板11内で不純物元素が多様であってもよく、第1半導体層12Aから離間している領域ほど不純物濃度が低い構造であってもよい。また上記実施形態では、半導体基板10の主面Sに垂直な断面における凹部PBの形状がV字型である例を示したが、凹部PBの形状は、U字型や、台形であってもよい。また、傾斜面10は主面Sに対する角度が直線形状である構成に限定されず、曲線形状であってもよい。
【0059】
また、第1半導体層12A及びベース基板11がpn接合面19から離間している領域ほど不純物濃度が低い超階段接合構造を用いて説明したが、pn接合を利用した可変容量素子であればその構造は限定されない。
また、本実施形態では、第1導電型がN型であり、第2導電型がP型である可変容量素子について説明したが、これに限らず、第1導電型がP型であり、第2導電型がN型であってもよい。
第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bは、アノードコンタクト37と第1半導体層12との間に、第1導電型であって第1半導体層12よりも不純物元素濃度の高い反転防止層をさらに有していてもよい。
尚、半導体基板10の主面Sに沿って形成される、又は凹部の傾斜面10に沿って形成される、とは、主面S、乃至凹部の傾斜面10に略平行であればよく、主面S,乃至凹部の傾斜面10に露出する構成に限定されない。
【0060】
尚、図1においては、カソード電極構造体30及びその直下に位置する素子分離酸化膜40を有し、結線する構成を示したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、本発明は、図4に示すような可変容量素子ユニット100´であってもよい。可変容量素子ユニット100´は、アノード電極構造体35(アノード電極本体36及びアノードコンタクト37)と、カソード電極構造体30(カソード電極本体31及びカソードコンタクト32)と、第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bを分離する素子分離酸化膜40とを備えず、第2半導体層13X及び絶縁膜20Xのそれぞれが、素子分離酸化膜40に分離されていない点で、可変容量素子ユニット100と異なる。可変容量素子ユニット100´において、可変容量素子ユニット100と同様の構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。可変容量素子ユニット100´は、第1可変容量素子1Aの第1半導体層12Aと第2可変容量素子1Bの第1半導体層12Bとが接続されており、第1可変容量素子1Aの第2半導体層13Aと第2可変容量素子1Bの第2半導体層13Bとが接続されている。本変形例に係る可変容量素子ユニット100´によれば、容量可変比が高く、且つ逆方向電圧の大きさに対する容量可変比のプロファイルの直線性が高い可変容量素子ユニット100´を実現することができ、更に、アノード電極構造体及びカソード電極構造体を設けずに同型の各半導体層が結線されているので、構造の簡素化を実現することができる。
【0061】
[可変容量素子ユニットの製造方法]
次に、本実施形態に係る可変容量素子ユニットの製造方法の一例を説明する。以下、第1可変容量素子1Aの平坦領域RA及び第2可変容量素子1Bの凹部領域RBを形成する工程を中心に説明する。
【0062】
本実施形態に係る可変容量素子ユニットの製造方法は、半導体基板に平坦領域及び凹部領域を設ける第1工程、平坦領域及び凹部領域に絶縁膜を形成する第2工程、平坦領域及び凹部領域に第1導電型の第1半導体層を形成する第3工程、及び平坦領域及び凹部領域における第1半導体層上に第2導電型の第2半導体層を形成する第4工程を有する。
【0063】
本実施形態に係る可変容量素子ユニットの製造方法では、先ず、図5に示すような半導体基板を準備する。準備する半導体基板は、例えばSi等の公知の半導体元素を主成分として含む半導体基板であり、不純物元素がドープされた第1導電型の半導体基板であってもよい。不純物元素がドープされている場合、主面Sから離間している領域ほど、不純物元素濃度が低い構成であることが好ましい。半導体基板の主面Sの結晶面は、例えば(100)面である。以下、半導体基板が、p型<100>シリコン結晶基板である場合を例に本実施形態に係る可変容量素子ユニットの製造方法について説明する。
【0064】
(第1工程)
次いで、図6に示すように、pの半導体基板の主面Sの一部に少なくとも1つの凹部PBを形成し、半導体基板に平坦領域RA及び凹部領域RBを設ける。第1工程は、凹部PBとして、半導体基板の主面に平行な断面積が、半導体基板の主面Sから離れるに従い小さくなる傾斜面10を有する凹部PBを形成する。この第1工程では、半導体基板に対し、平坦領域RA及び凹部領域RBが直線状又はマトリックス状に設けられるように、凹部PBを複数形成する。第1工程は、半導体基板の主面Sにスポット状に凹部を設けてもよく、溝状に凹部を形成してもよい。
【0065】
第1工程における凹部形成は、例えば、エッチングにより行う。第1工程の凹部形成は、アルカリエッチングなどの異方性エッチングにより行ってもよく、等方性エッチングにより行ってもよい。第1工程を、異方性エッチングで行うことにより、図6に示すような直線的な傾斜面10で構成された断面略V字型や、傾斜面10と主面Sに平行な面を有する断面略台形の凹部を形成できる。傾斜面10の結晶面は、主面Sの結晶面と異なり、例えば(111)面である。また、第1工程を等方性エッチングで行うと、断面略U字型の凹部を形成することができる。
【0066】
(第2工程)
次いで、図7に示すように、半導体基板の表層部を熱酸化し、平坦領域RA及び凹部領域RBに絶縁膜20を形成する。第2工程は、例えば半導体基板を大気雰囲気で加熱することにより、例えば平坦領域RA及び凹部領域RBに絶縁膜20として熱酸化膜SiOを形成する。
【0067】
平坦領域RAにおける半導体基板の主面Sと、凹部領域RBにおける凹部の表面SBとでは、結晶面が異なり、半導体基板の主面Sの結晶面は(100)面、凹部の表面SBの結晶面は(111)面である。熱酸化の異方性により、凹部領域RBにおける絶縁膜20Bの積層方向厚みT20Bが平坦領域RAにおける絶縁膜20Aの積層方向厚みT20Aよりも大きくなるように形成される。
【0068】
(第3工程)
次いで、図8に示すように、半導体基板に絶縁膜20及び所定パターンを有する単一のマスク(不図示)を介してイオン注入を行い、半導体基板の平坦領域RAにおける主面Sに沿ってp型の第1半導体層12Aを形成すると共に、凹部領域RBの表面SBに沿ってp型の第1半導体層12Bを形成する。
【0069】
第3工程において、イオン注入する不純物元素は、例えばホウ素である。本実施形態では、マスクのパターンは、半導体基板を平面視して、第1半導体層を形成する領域に対応している。凹部PBが傾斜面10を有するため、第3工程では、傾斜面10に第1半導体層12Bが形成される。
【0070】
(第4工程)
次いで、図9に示すように、半導体基板に絶縁膜20及び所定パターンを有する単一のマスクを介してイオン注入を行い、半導体基板の平坦領域RAにおける第1半導体層12A上にn型(N)の第2半導体層13Aを形成し、凹部領域RBにおける第1半導体層12B上にn型の第2半導体層13Bを形成する。すなわち、第2半導体層13Aおよび第2半導体層13Bを、それぞれ第1半導体層12Aと絶縁膜20Aとの間、及び、第1半導体層12Bと絶縁膜20Bとの間に形成する。ここで、マスクのパターンは、半導体基板を平面視して、第2半導体層を形成する領域に対応している。第4工程において、イオン注入する不純物元素は、例えばヒ素である。
【0071】
尚、第4工程におけるイオン注入の加速エネルギーは、第3工程におけるイオン注入の加速エネルギーよりも大きいことが好ましい。例えば、第4工程におけるイオン注入エネルギーを25KeVとし、第3工程におけるイオン注入の加速エネルギーを15KeVとすることが好ましい。また、第4工程におけるイオン注入量は、第3工程におけるイオン注入量よりも多いことが好ましい。このようにすることで、第1半導体層と第2半導体層とを超階段接合にすることができる。
【0072】
第2半導体層13Bの積層方向厚みT13Bは、平坦領域RAの主面Sに対して垂直な方向からイオン注入する場合、平坦領域RAと凹部領域RBとでは、チャネリングの影響と、絶縁膜20の積層方向厚みが異なるため、凹部領域RBでは、不純物イオンが通過する絶縁膜20の距離が相対的に長くなるために、第2半導体層13Aの積層方向厚みT13Aよりも小さくなる。第2半導体層13A,13Bの作製に伴い、第1半導体層12Bの厚みT12Bは、第1半導体層12Aの厚みT12Aよりも大きくなる。
【0073】
次いで、例えば以下の方法により平坦領域RA及び凹部領域RBの周辺部材を設ける。先ず、絶縁膜20上に絶縁層を形成する。次いで、エッチングにより、絶縁膜20及び絶縁層、並びに第1半導体層12及び第2半導体層13に必要な窓開けを行う。次いで、図1に示すような素子分離酸化膜を形成する。次いで、カソードコンタクト32及びアノードコンタクト37を形成する。次いで、銅、アルミニウム等の金属膜を積層して、カソードコンタクト32と接するようにカソード電極本体31を形成し、アノードコンタクト37と接するようにアノード電極本体36を形成する。これらのカソード電極本体31およびアノード電極本体36がそれぞれカソードの端子60、及びアノード電極の端子65に対応する。次いで、エッチングを行い、カソード電極構造体30及びアノード電極構造体35の形状を整え、それらを絶縁するように絶縁体を設け、絶縁層50を形成する。これにより、可変容量素子ユニット100が製造される。
【0074】
本実施形態にかかる可変容量素子ユニットの製造方法によれば、半導体基板に平坦領域と凹部領域とを形成し、平坦領域と凹部領域を含む半導体基板にイオン注入するので、凹部でイオンの飛翔距離を調整でき、また半導体基板の表面に結晶面が異なる領域を設けることができ、半導体基板の主面Sと結晶面が異なる領域を形成することができるため、角度又はエネルギーを調整して複数回に分けてイオン注入を行うことなく、単一の工程で不純物元素の濃度プロファイルの異なる第1半導体層12又は第2半導体層13を形成し、第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bを有する可変容量素子ユニット100を簡便に製造することができる。また、第1可変容量素子1Aと第2可変容量素子1Bとで共通のマスクを用いて一度にイオン注入を行うことができるため、製造工程の簡略化やコスト低減を実現することができる。尚、第1半導体層12は、後述する第2半導体層13と比べ、平坦領域と凹部領域とで、不純物濃度プロファイルの違いが小さい。これは、第1半導体層を形成する際にイオン注入されるイオンの原子量に起因する。第1半導体層を形成する際にイオン注入されるホウ素等のイオンは軽元素のイオンなので、ホウ素に対する絶縁膜やシリコン基板の阻止能が小さく、それらに対して影響度が小さいため、第1半導体層12の不純物濃度プロファイルは、第2半導体層13の不純物濃度プロファイルと比べ、平坦領域及び凹部領域における差が小さくなりやすい。
【0075】
また、本実施形態に係る可変容量素子ユニットの製造方法は、上記の例に限定されず、適宜変更して実施することができる。例えば、p型の領域とn型の領域とを逆にした構成であってもよい。すなわち、第3工程および第4工程においてイオン注入する不純物元素を入れ替えてもよい。
【0076】
また例えば、上記の例と同様に第1工程を行った後、第2工程を上記の例と異なる方法で実施してもよい。図10は、図7の第2工程の変形例を説明するための図である。図10に示すように、本変形例の第2工程では、例えば化学気相成長法により、平坦領域RA及び凹部領域RBに絶縁膜20´として、気相成長法により、酸化物SiO、窒化物SiN等を堆積して絶縁膜を形成する。気相成長法は、等方性の成膜方法であるため、凹部領域RBには、平坦領域RAの絶縁膜20Aの積層方向厚みT20Aと同じ大きさの絶縁膜20´Bが形成される。すなわち、絶縁膜20´Bの積層方向厚みT20´Bは、絶縁膜20Aの積層方向厚みT20Aと同じ大きさである。
【0077】
次いで、上記実施形態と同様の方法で第3工程を行う。すなわち、図11に示すように、半導体基板に絶縁膜20及び所定のパターンのマスクを介してイオン注入を行い、第1半導体層12´を形成する。具体的には、半導体基板の平坦領域RAにおける主面Sに沿ってp型の第1半導体層12Aを形成し、凹部領域RBにp型の第1半導体層12´Bを形成する。
【0078】
次いで、上記実施形態と同様の方法で、第4工程を行う。すなわち、図12に示すように、半導体基板に絶縁膜20及び所定のパターンのマスクを介してイオン注入を行い、半導体基板の平坦領域RAにおける第1半導体層12A上に第2半導体層13Aを形成し、凹部領域RBにおける第1半導体層12´B上にn型の第2半導体層13´Bを形成する。すなわち、第2半導体層13Aおよび第2半導体層13´Bを、それぞれ第1半導体層12Aと絶縁膜20Aとの間、及び、第1半導体層12´Bと絶縁膜20´Bとの間に、形成する。変更例に係る可変容量素子ユニットの製造方法であっても、凹部領域RBの第2半導体層13´Bは、平坦領域RAの第2半導体層13Aと異なる不純物濃度プロファイルを有する。平坦領域RAの第2半導体層13A及び凹部領域RBの第2半導体層13´Bの不純物濃度プロファイルの違いは、第2半導体層を形成する際にイオン注入されるヒ素等のイオンの原子量が大きいことに起因する。具体的には、ヒ素に対する絶縁膜やシリコン基板のイオン核阻止能は、大きい。そのため、シリコンとの衝突散乱でのヒ素の飛翔距離は、通過する絶縁膜20A、20´Bと注入角度に対して大きく影響される。このように、構造及び注入されるイオン種の違いが原因で、第2半導体層13Aは、第2半導体層13´Bよりも急峻な不純物の濃度勾配を有する。また、第2半導体層13´Bの積層方向厚みT13´Bは、第2半導体層13Aの積層方向厚みT13Aと比べ大きい。尚、変形例に係る可変容量素子ユニットの製造方法において、第2半導体層13´Bの積層方向厚みT13´B及び第2半導体層13Aの積層方向厚みT13Aの差は、上記の例の第2半導体層13´Bの積層方向厚みT13´B及び第2半導体層13Aの積層方向厚みT13Aの差と比べ、小さい。また、プロファイルの異なる第2半導体層13A,13´Bを形成することで第1半導体層12A,12´Bも異なる厚み・プロファイルとなりやすい。
【0079】
次いで、上記実施形態と同様の方法で素子分離酸化膜、絶縁層、アノード電極、カソード電極等を形成し、可変容量素子ユニットを製造する。このように、変形例に係る可変容量素子ユニットの製造方法であっても、凹部によりドーピングするイオンの飛翔距離を調整できるため、平坦領域RAと凹部領域RBに対し、それぞれ別々のマスクを設けてイオン注入する必要がなく、単一の工程で不純物元素の濃度プロファイルの異なる第1半導体層12´又は第2半導体層13´を形成することができる。従って、第1可変容量素子および第2可変容量素子を有する可変容量素子ユニットを簡便に製造することができる。尚、変形例で製造した可変容量素子ユニットにおける第1可変容量素子および第2可変容量素子の不純物元素の濃度プロファイルの違いは、上記実施形態の可変容量素子ユニットの製造方法で製造された第1可変容量素子及び第2可変容量素子の不純物元素の濃度プロファイルの違いよりも程度が小さい。よって、仕様、用途に応じて製造方法を選択することで、所望の特性を有する可変容量素子ユニットを製造することができる。
【0080】
図13は、上記実施形態の可変容量素子ユニット100を備える電圧制御型発振器200の回路図の一例である。電圧制御型発振器200は、例えば内部回路71と、抵抗72と、保護ダイオード73と、VDD端子74と、入力端子75と、VSS端子76と、可変容量素子ユニット100と、を有する。VDD端子の電圧は設置電圧であり、VSS端子の電圧は電源電圧である。電圧制御型発振器200において、VDD端子74と、VSS端子76との間には、内部回路71が設けられている。この内部回路71は、例えば反転増幅器や帰還抵抗など一般的な発振回路による構成である。入力端子75は、抵抗72を介し内部回路71に対して水晶などの圧電振動子が接続される端子であり、この入力端子75とVSS端子76との間には可変容量素子ユニット100が設けられている。図示していないが、可変容量素子ユニット100の第1可変容量素子1Aおよび第2可変容量素子1Bの入力端子75側には、別の端子を通じて制御電圧が与えられ、その容量値が調整される。さらに、VDD端子74とVSS端子76との間にも保護素子として、保護ダイオード73が設けられている。また、図13に示す端子aおよびbはそれぞれ図1に示したカソード電極の端子60、アノードの端子65に対応する。
【0081】
ここまで、可変容量素子ユニット、およびその製造方法、並びに可変容量素子ユニットを用いた電圧制御型発振器について記載したが、上記の実施形態及び変形例の特徴的な構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
【実施例0082】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
[製造例1]
製造例1として、シリコン基板を窒素希釈された乾燥酸素雰囲気中で加熱し、シリコン基板の(100)面上に熱酸化膜を形成する場合の積層方向厚みの経時変化をSILVACO社TCAD「ATHENA」によりシミュレーションした。製造例1では、加熱温度が900℃である条件でシミュレーションした。
【0084】
[製造例2]
シリコン基板の(111)面上に熱酸化膜を形成する場合の積層方向厚みの経時変化をシミュレーションしたこと以外は、製造例1と同様にした。
【0085】
製造例1及び製造例2の結果を図14に示す。図14において、炉内の温度が900℃に達したときの時間が、成膜時間の0分に対応する。図14に示される通り、熱酸化膜の厚みは、成膜時間、すなわち拡散時間に比例して増加する。製造例1及び製造例2から、シリコン基板の(100)面及び(111)面を大気中で同じ時間だけ加熱すると、(111)面上に形成される熱酸化膜の厚みは、(100)面上に形成される熱酸化膜の厚みよりも大きくなることが確認された。
【0086】
[製造例3]
製造例3として、製造例1と同じシミュレーションソフトを用い、以下の条件で製造した可変容量素子の基板深さ方向に関する不純物濃度プロファイルを求めた。
【0087】
シリコン基板に断面略V字形の凹部を形成し、その表面である(111)面に熱酸化膜を形成し、イオン注入を行うことで、シリコン基板と熱酸化膜との間にp-第1半導体層及びn+第2半導体層を形成した。具体的には、先ず、シリコン基板にアルカリ溶液を用いて異方性エッチングを行うことで、(111)面を傾斜面に有し、傾斜面からなる、深さ5μmの凹部を形成した。次いで、拡散炉にて乾燥酸素を含む雰囲気下で加熱し、厚み345Åの熱酸化膜を形成した。次いで、熱酸化膜を介してシリコン基板上に、15keVの加速エネルギーでBイオンをドーズ量5.0×1013個/cmでイオン注入し、第1半導体層を形成した。次いで、熱酸化膜を介してシリコン基板に、20keVの加速エネルギーでAsイオンをドーズ量5.0×1015個/cmでイオン注入し、第1半導体層上に第2半導体層を形成した。
【0088】
[製造例4]
製造例4では、製造例1と同じシミュレーションソフトを用い、以下の条件で製造した可変容量素子の基板深さ方向に関する不純物濃度プロファイルを求めた。
凹部を形成していないシリコン基板の表面である(100)面に熱酸化膜を形成したこと以外は、製造例3と同様にした。尚、製造例4と製造例3とは、同じ基板で行っており、凹部を形成しない平坦領域を製造例4とした。すなわち、凹部を形成していないシリコン基板の表面である(100)面に製造例3と同様の方法で、厚み250Åの熱酸化膜を形成した。次いで、熱酸化膜を介して、製造例3と同様の条件でイオン注入を行い、シリコン基板と熱酸化膜との間に第1半導体層及び第2半導体層を形成した。
【0089】
図15に、製造例3及び製造例4で得られた基板深さと可変容量素子の不純物濃度の関係のシミュレーション結果を、図16に、製造例3及び製造例4で得られた可変容量素子の不純物濃度の分布のシミュレーション結果をそれぞれ示す。
【0090】
製造例3では、厚み約0.03μmの第2半導体層中で不純物濃度が連続的に下がり、深さ約0.035μmの位置にpn接合面が形成されている(図15中符号xj)。製造例3における第1半導体層の不純物濃度は、pn接合面からわずかに熱酸化膜と離れる方向に離間した領域(第1領域)である深さ0.085μmまでの領域において、不純物濃度が急峻に高くなり、深さ約0.085μmの位置で最も高くなる(極大値)。第1半導体層の不純物濃度は、深さ0.085μ~0.30μmの領域において、下がっている(第2領域)。製造例3の第1領域(深さ0.035μm~0.085μm)における不純物の濃度勾配は、2.5×1019(個/cm・μm)であり、第2領域(深さ0.085μm~0.30μm)における不純物の濃度勾配は、-5.8×1018(個/cm・μm)であった。であった。
【0091】
図15において、第2半導体層と熱酸化膜との界面を深さ0μmとした。
製造例4では、厚み約0.1μmの第2半導体層中で不純物濃度が連続的に下がり、深さ約0.1μmの位置にpn接合面が形成されている(図15中符号xj)。製造例4における第1半導体層の不純物濃度は、pn接合面から0.12μm程度までの領域であって、熱酸化膜と離れる方向に離間した領域(第1領域)において、急峻に高まり、第1半導体層の深さ約0.12μmの位置で最も高く、深さ約0.12μm~0.28μmの領域(第2領域)にかけて急峻に下がっている。製造例4の第1領域(深さ0.10μm~0.12μm)における不純物濃度の濃度勾配は、3.2×1019(個/cm・μm)であり、第2領域(深さ0.12μm~0.28μm)における不純物濃度の濃度勾配は、-4.0×1018/cm・μmであった。
【0092】
図15,16に示される通り、製造例4の第1半導体層は、製造例3の第1半導体層と比べ、急峻な不純物の濃度勾配を有することが確認された。また、第2半導体層の不純物濃度は製造例3の方が低く、pn接合面の位置は製造例3の方が浅い。このように、製造例4と製造例3とでは、不純物濃度プロファイルが異なることが分かる。
【0093】
[実施例1]
実施例1として、4つの第1可変容量素子および1つの第2可変容量素子が並列に接続された可変容量素子ユニットを製造した。具体的には、シリコン基板の一部をエッチングし、断面略V字形の凹部を1つ形成し、マトリクス状に並ぶ平坦領域及び断面略V字形の凹部を形成した。次いで、乾燥酸素を含む雰囲気の拡散炉にてシリコン基板を加熱し、平坦領域及び凹部領域に熱酸化膜を形成した。次いで、シリコン基板に熱酸化膜を介してイオン注入を行い、シリコン基板上に第1半導体層を形成し、第1半導体層上に第2半導体層を形成した。平坦領域の形成及び凹部領域の形成は、それぞれ比較例2及び実施例2と同様の条件で行った。次いで、絶縁層、素子分離酸化膜、カソード電極、アノード電極を形成し、平坦領域で構成された4つの第1可変容量素子および1つの第2可変容量素子が並列に接続されるように結線した。
【0094】
実施例1において、シリコン基板を平面視した際の、4つの第1可変容量素子の総面積A1と1つの第2可変容量素子の総面積A2との比A1:A2は、1:4とした。
【0095】
[比較例1]
5つの第2可変容量素子が並列に接続された可変容量素子ユニットを製造したこと以外は、実施例1と同様にした。すなわち、比較例1の可変容量素子ユニットは、凹部領域を有する可変容量素子のみで構成されており、それぞれの可変容量素子は、製造例3と同様の方法で製造した。
【0096】
[比較例2]
5つの第1可変容量素子が並列に接続された可変容量素子ユニットを製造したこと以外は、実施例1と同様にした。すなわち、比較例2の可変容量素子ユニットは、平坦領域を有する可変容量素子のみで構成されており、それぞれの可変容量素子は、製造例4と同様の方法で製造した。
【0097】
実施例1、比較例1及び比較例2の可変容量素子ユニットに逆方向のバイアス電圧を加え、逆方向のバイアス電圧を変化させて可変容量素子ユニットの容量可変比(C/C)を求めた。実施例1、比較例1及び比較例2の可変容量素子ユニットの容量可変比の変化を図17に示す。図17において、バイアス電圧を加えなかったときの容量をCと示し、逆バイアス電圧を加えたときの容量をCと示す。
【0098】
図17の結果から、比較例1の可変容量素子ユニットでは、容量可変比が小さく、また、比較例2の可変容量素子ユニットでは、逆バイアス電圧の変化に対する容量可変比のプロファイルの直線性が低いことが分かった。これに対し、実施例1の可変容量素子ユニットでは、容量可変比が大きく、且つバイアス電圧の変化に対する容量可変比のプロファイルの直線性が高いことが分かった。
【符号の説明】
【0099】
10:半導体基板、10:傾斜面、11:ベース基板、12、12´、12A、12B、12´B:第1半導体層、13、13´13A、13B、13´B:第2半導体層、
19:pn接合面、20:絶縁膜、30:カソード電極構造体、31:カソード電極本体、32:カソードコンタクト、35:アノード電極構造体、36:アノード電極本体、
37:アノードコンタクト、40:素子分離酸化膜、50:絶縁層、60:カソード電極の端子、65:アノード電極の端子、100:可変容量素子ユニット、PB:凹部、
RA:平坦領域、RB:凹部領域、S:半導体基板の主面、SB:凹部の表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17