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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117676
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】シーリング材組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20230817BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230817BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230817BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C09K3/10 G
C08K3/013
C08L71/02
C08L83/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020374
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】飯野 達哉
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB15
4J002CH051
4J002CP052
4J002DA036
4J002DE086
4J002DE136
4J002DE226
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002EX010
4J002EX030
4J002EX070
4J002EZ047
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD147
4J002FD200
4J002FD207
4J002FD310
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】 本発明は、硬化初期に十分な伸び物性(常態接着性)を有し且つ温水に浸漬した後においてもモジュラスの低下が抑制された(耐温水性)硬化物を生成することができるシーリング材組成物を提供する。
【解決手段】 本発明のシーリング材組成物は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)と、充填材(C)と、触媒(D)とを含み、シロキサンオリゴマー(B)の含有率が0.01~0.1であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、
フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)と、
充填材(C)と、
触媒(D)とを含み、
上記フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の含有量と、上記数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び上記フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)との総含有量との質量比[フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の含有量/(数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)並びにフェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の総含有量)]が0.01~0.1であることを特徴とするシーリング材組成物。
【請求項2】
フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の加水分解性官能基の含有量が10~30質量%であることを特徴とする請求項1に記載のシーリング材組成物。
【請求項3】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量が20000~40000であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシーリング材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含む変性シリコーン系シーリング材組成物は、硬化時に毒物を発生しない安全性を有していると共に、硬化して得られる硬化物が柔軟性(伸び物性)に優れていることから、シーリング材及び接着剤として広く用いられている。
【0003】
シーリング材の使用場所としては、キッチン、バスルーム、トイレ、洗面所などの水廻り用途が挙げられ、耐水性、特に、耐温水性が求められることが多い。
【0004】
特許文献1には、炭酸カルシウム粒子の表面がアモルファスリン酸カルシウムで被覆されていることを特徴とする炭酸カルシウム系樹脂用充填材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-11924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されている炭酸カルシウム系樹脂用充填材は、温水浸漬後のモジュラス維持率が低く、水や湿気に晒される水廻り用途では接着不良の原因になるという問題点を有している。
【0007】
本発明は、硬化初期に十分な伸び物性及び接着強度(常態接着性)を有し且つ温水に浸漬した後においてもモジュラスの低下が抑制された(耐温水性)硬化物を生成することができるシーリング材組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシーリング材組成物は、
数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、
フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)と、
充填材(C)と、
触媒(D)とを含み、
上記フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の含有量と、上記数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び上記フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)との総含有量との質量比[フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の含有量/(数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)並びにフェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の総含有量)]が0.01~0.1である。
【0009】
[加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)]
シーリング材組成物は、数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を含む(以下、単に「ポリオキシアルキレン系重合体(A)」ということがある)。数平均分子量が10000以上の加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)によれば、雰囲気中や目地部などに存在する湿気により硬化(湿気硬化)することができるシーリング材組成物を提供することが可能となる。
【0010】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、分子中に加水分解性シリル基を有しており、分子末端に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。加水分解性シリル基は、主鎖の両末端のうちの何れか一方の末端のみに、又は、両末端に結合していることがより好ましい。加水分解性シリル基が主鎖の末端に結合していると、シーリング材組成物の硬化物の優れた柔軟性(伸び物性)を維持して優れた常態接着性を付与することができる。なお、ポリオキシアルキレン系重合体(A)が分子中に複数個の加水分解性シリル基を有する場合、加水分解性シリル基は同一であっても互いに相違していてもよい。
【0011】
本発明において、加水分解性シリル基とは、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基又はシラノール基のように、湿気又は架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することによって縮合反応を生じる基をいう。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接、水酸基が結合している官能基(≡Si-OH)を意味する。
【0012】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0013】
なかでも、加水分解性シリル基としては、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性を維持しつつ、優れた耐温水性を付与することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。
【0014】
アルコキシシリル基は、-SiR2 j(OR33-jで示される構造を有していることが好ましい。式中、R2は、置換基を有してもよい炭素数が1~20のアルキル基又は水素原子を表す。R3は、炭素数が1~6のアルキル基を表す。jは、0~2の整数を表す。
【0015】
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、シーリング材組成物の硬化物に優れた耐温水性を付与することができるので、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が好ましく、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシシリル基がより好ましい。
【0016】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、1分子中に平均して、好ましくは1.0~4.0個、より好ましくは1.0~3.0個の加水分解性シリル基を有している。ポリオキシアルキレン系重合体(A)における加水分解性シリル基の数が1.0個以上であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時強度(接着強度)が向上する。又、ポリオキシアルキレン系重合体(A)における加水分解性シリル基の数が3.0個以下であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時伸び率(伸び物性)が向上する。
【0017】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリオキシアルキレン系重合体中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0018】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)は、例えば、末端に水酸基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、次いで、得られた反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化することによって製造することができる。
【0019】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましい。
-(O-R1n- (1)
(式中、R1は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)
【0020】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖は、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0021】
本発明において、アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。
【0022】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH25-]、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0023】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられ、シーリング材組成物の硬化物のゴム弾性が向上するので、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0024】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)は、シーリング材組成物の硬化物が優れた耐温水性を有するので、主鎖骨格がポリオキシプロピレンであって分岐鎖を有し、主鎖骨格の末端に加水分解性シリル基としてジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体が好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格とは、分子中において、最も長い分子鎖をいう。分子鎖の長さは、分子鎖を構成している原子の数が多いほど長いと判断できる。分岐鎖とは、2個以上の炭素が結合して構成された分子鎖をいい、炭素数が1個であるメチル基は分岐鎖には含めない。
【0025】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、10000以上であり、20000以上が好ましく、22000以上がより好ましく、25000以上がより好ましく、28000以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、40000以下が好ましく、38000以下がより好ましく、35000以下がより好ましく、33000以下がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量が10000以上であると、シーリング材組成物の硬化物は優れた常態接着性において優れた最大荷重時伸びを有する。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量が40000以下であると、シーリング材組成物の硬化物の耐温水性が向上する。
【0026】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下がより好ましい。加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であると、シーリング材組成物の硬化物は、常態接着性において優れた最大荷重時伸びを有する。
【0027】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、ポリオキシアルキレン系重合体6~7mgを採取し、採取したポリオキシアルキレン系重合体を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo-DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてポリオキシアルキレン系重合体の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0028】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてポリオキシアルキレン系重合体をBHTを含むo-DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0029】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体における数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0030】
[フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)]
シーリング材組成物は、フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)(以下、単に「シロキサンオリゴマー(B)」ということがある)を含む。シロキサンオリゴマー(B)は、ポリシロキサン骨格-(O-Si)p-(pは、繰り返し単位の数であって正の整数である)を含み且つフェニル基及び加水分解性官能基を有している。シーリング材組成物がシロキサンオリゴマー(B)を含有していると、ポリオキシアルキレン系重合体(A)とシロキサンオリゴマー(B)とが架橋構造を形成することによって、シーリング材組成物の硬化物にシロキサンオリゴマー(B)が取り込まれ、シーリング材組成物の硬化物に優れた耐温水性が付与される。
【0031】
更に、シロキサンオリゴマー(B)は、分子中にフェニル基を有し、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と優れた相溶性を有しているので、シロキサンオリゴマー(B)及びポリオキシアルキレン系重合体(A)が、シーリング材組成物の硬化物において均一な架橋構造を形成し、シーリング材組成物の硬化物は優れた耐温水性を有する。
【0032】
シロキサンオリゴマー(B)の主鎖骨格は、ポリシロキサン骨格-(O-Si)p-を含む直鎖構造であることが好ましく、ポリシロキサン骨格-(O-Si)p-であることがより好ましい。シロキサンオリゴマー(B)及びポリオキシアルキレン系重合体(A)が、シーリング材組成物の硬化物において均一な架橋構造を形成し、シーリング材組成物の硬化物は優れた耐温水性を有する。シロキサンオリゴマー(B)の主鎖骨格とは、分子中において、最も長い分子鎖をいう。分子鎖の長さは、分子鎖を構成している原子の数が多いほど長いと判断できる。
【0033】
シロキサンオリゴマー(B)の主鎖骨格において、ポリシロキサン骨格-(O-Si)p-の含有量は、シーリング材組成物の硬化物が優れた耐温水性を有するので、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0034】
シロキサンオリゴマー(B)において、加水分解性官能基は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の加水分解性シリル基と反応して架橋構造を形成することができる官能基であればよい。加水分解性官能基としては、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性を維持しつつ、優れた耐温水性を付与することができるので、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などが挙げられる。なかでも、シーリング材組成物の硬化物に優れた耐温水性を付与することができるので、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0035】
シロキサンオリゴマー(B)は、例えば、多官能アルコキシシラン化合物を酸、塩基、有機錫化合物、有機チタン化合物などの公知の触媒の存在下にて部分的に加水分解、脱アルコール縮合させて得ることができる。具体的には、分子鎖末端や側鎖などに加水分解性官能基を有し、直鎖構造の主鎖骨格、又は三次元網目構造を有しているシロキサンオリゴマーなどが挙げられる。
【0036】
シロキサンオリゴマー(B)としては、式(2)で表されるアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物が好ましい。
4m-Si(OR54-m (2)
【0037】
4m-Si(OR54-m中、R4、R5はそれぞれ独立して、炭素数が1~8であって置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。R4が分子中に複数個存在する場合、複数個のR4は、同一であっても互いに相違してもよい。R5が分子中に複数個存在する場合、複数個のR5は、同一であっても互いに相違してもよい。置換基R4のうち、少なくとも1個の置換基はフェニル基である。mは1又は2である。mは、シーリング剤組成物の硬化物が優れた耐温水性を有するので、1が好ましい。
【0038】
シーリング材組成物の硬化物の耐温水性が向上するので、シロキサンオリゴマー(B)の主鎖骨格が、ポリシロキサン骨格-(O-Si)p-(pは、繰り返し単位の数であって正の整数である)を含む直鎖構造である場合、シロキサンオリゴマー(B)は、側鎖にフェニル基を有することが好ましい。
【0039】
シーリング材組成物の硬化物の耐温水性が向上するので、シロキサンオリゴマー(B)の主鎖骨格が、ポリシロキサン骨格-(O-Si)p-(pは、繰り返し単位の数であって正の整数である)を含む直鎖構造である場合、シロキサンオリゴマー(B)は、主鎖末端にアルコキシ基を有することが好ましい。アルコキシ基としては、上述の通り、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などが挙げられる。シーリング材組成物の硬化物に優れた耐温水性を付与することができるので、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0040】
シロキサンオリゴマー(B)の製造方法としては、R4m-Si(OR54-mで表されるアルコキシシラン化合物に公知の加水分解反応のための触媒を加え、水分の存在下で加温しながら攪拌することにより部分加水分解縮合することによって製造することができる。
【0041】
式(2)で表されるアルコキシシラン化合物において、mが1の場合に、式(2)で表されるアルコキシシラン化合物の加水分解縮合物が、直鎖構造となった場合には、側鎖中に(-OR5)で示されるアルコキシ基を有する。
【0042】
式(2)で表されるアルコキシシラン化合物において、mが1の場合に、式(2)で表されるアルコキシシラン化合物の加水分解縮合物が、三次元網目構造となった場合には、三次元網目構造中に部分的に(-OR5)で示されるアルコキシ基を含有する。
【0043】
式(2)で表されるアルコキシシラン化合物中に、mが2である式(2)で表されるアルコキシシラン化合物が含有されていてもよいが、シロキサンオリゴマー(B)に効果的に(-OR5)で示されるアルコキシ基を含有させ、シーリング材組成物の硬化物の耐温水性を向上させることができるので、式(2)で表されるアルコキシシラン化合物において、mは1であることが好ましい。
【0044】
シロキサンオリゴマー(B)中における加水分解性官能基の含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。シロキサンオリゴマー(B)中における加水分解性官能基の含有量は、30質量%以下が好ましい。加水分解性官能基の含有量が10質量%以上であると、シーリング材組成物の硬化物の耐温水性が向上する。加水分解性官能基の含有量が30質量%以下であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性が向上する。
【0045】
なお、シロキサンオリゴマー(B)中における加水分解性官能基の含有量は、1H-NMRおよび29Si-NMRによって測定された値をいう。シロキサンオリゴマー(B)中における加水分解性官能基の含有量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
1H-NMR測定条件>
測定装置 Bruker Biospin社製 商品名「AVANCE 400」
測定条件 プローブ:Prodigy(BBO)
回転数 :20Hz
測定パルス :Single pulse
溶媒 :重クロロホルム
濃度 :1H・・・約1wt/vol%
温度 :25℃(298K)
スキャン回数:64回
化学シフト基準:クロロホルム 7.26ppm
29Si-NMR測定条件>
測定装置 Bruker Biospin社製 商品名「AVANCE 400」
測定条件 プローブ :Prodigy(BBO)
回転数 :20Hz
測定パルス :Single pulse
溶媒 :重クロロホルム
濃度 :29Si‥‥約5wt/vol%
温度 :25℃(298K)
スキャン回数:360回
化学シフト基準:TMS 0.0ppm
【0046】
シロキサンオリゴマー(B)は、直鎖構造の主鎖骨格に結合している側鎖にフェニル基を有していることが好ましく、主鎖骨格に側鎖として直接結合しているフェニル基を有していることがより好ましい。主鎖骨格に結合している側鎖にフェニル基を有していると、ポリオキシアルキレン系重合体(A)とシロキサンオリゴマー(B)との相溶性が向上し、シーリング材組成物の硬化物が、優れた耐温水性を有するので好ましい。
【0047】
シーリング材組成物において、フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の含有量と、数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び上記フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)との総含有量との質量比[フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の含有量/(数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)並びにフェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の総含有量)](以下、単に「シロキサンオリゴマー含有率」ということがある)は、0.01以上であり、0.02以上がより好ましく、0.03以上がより好ましく、0.04以上がより好ましい。シロキサンオリゴマー含有率が、0.01以上であると、シーリング材組成物の硬化物は優れた耐温水性及び常態接着性を有する。
【0048】
シーリング材組成物において、フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の含有量と、数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び上記フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)との総含有量との質量比[フェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の含有量/(数平均分子量が10000以上で且つ加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)並びにフェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の総含有量)]は、0.1以下であり、0.09以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.07以下がより好ましく、0.06以下がより好ましい。シロキサンオリゴマー含有率が0.1以下であると、シーリング材組成物の硬化物は優れた耐温水性及び常態接着性を有する。
【0049】
シーリング材組成物において、シロキサンオリゴマー含有率を0.01~0.1にすると共に、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量を10000以上、好ましくは20000~40000とすることによって、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性及び耐温水性をより向上させることができる。
【0050】
[充填材(C)]
シーリング材組成物は、充填材を含有している。シーリング材組成物が充填材を含有していると、シーリング材組成物の硬化物は優れた常態接着性を有する。
【0051】
充填材としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができる。これらの充填材(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、充填材としては炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0052】
炭酸カルシウムとしては、沈降性炭酸カルシウム、及び重質炭酸カルシウムが好ましく挙げられる。沈降性炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウム、及び膠質炭酸カルシウムが挙げられる。
【0053】
炭酸カルシウムとしては、沈降性炭酸カルシウム又は重質炭酸カルシウムのうち何れか一方を用いてもよいし又は双方を用いてもよい。なかでも、沈降性炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムを用いることが好ましい。沈降性炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムとを組み合わせて用いることにより、シーリング材組成物の硬化物に適度な柔軟性(伸び物性)を与え、優れた常態接着性を付与することができる。
【0054】
充填材として重質炭酸カルシウム及び沈降性炭酸カルシウムを用いる場合、シーリング材組成物中における沈降性炭酸カルシウムの含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)とフェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して10質量部以上が好ましい。充填材として重質炭酸カルシウム及び沈降性炭酸カルシウムを用いる場合、シーリング材組成物中における沈降性炭酸カルシウムの含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)とフェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましい。沈降性炭酸カルシウムの含有量が10質量部以上であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時強度が向上する。沈降性炭酸カルシウムの含有量が300質量部以下であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時伸びが向上する。
【0055】
充填材として重質炭酸カルシウム及び沈降性炭酸カルシウムを用いる場合、シーリング材組成物中における重質炭酸カルシウムの含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)とフェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して、30質量部以上が好ましい。充填材として重質炭酸カルシウム及び沈降性炭酸カルシウムを用いる場合、シーリング材組成物中における重質炭酸カルシウムの含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)とフェニル基及び加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して、500質量部以下が好ましく、350質量部以下がより好ましく、150質量部以下がより好ましい。重質炭酸カルシウムの含有量が30質量部以上であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時伸びが向上する。重質炭酸カルシウムの含有量が500質量部以下であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時強度が向上する。
【0056】
シーリング材組成物中における沈降性炭酸カルシウムの含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量に対して10質量部以上が好ましい。シーリング材組成物中における沈降性炭酸カルシウムの含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量に対して300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましい。沈降性炭酸カルシウムの含有量が10質量部以上であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時強度が向上する。沈降性炭酸カルシウムの含有量が300質量部以下であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時伸びが向上する。
【0057】
シーリング材組成物中における重質炭酸カルシウムの含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量に対して30質量部以上が好ましい。シーリング材組成物中における重質炭酸カルシウムの含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量に対して500質量部以下が好ましく、350質量部以下がより好まし、150質量部以下がより好ましい。重質炭酸カルシウムの含有量が30質量部以上であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時伸びが向上する。重質炭酸カルシウムの含有量が500質量部以下であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性における最大荷重時強度が向上する。
【0058】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01~5μmが好ましく、0.05~2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシウムによれば、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性が向上する。なお、炭酸カルシウムの平均粒子径は、レーザー散乱法による体積基準の粒度分布における50%累積粒子径をいう。
【0059】
炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、シーリング材組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシウムが凝集することを抑制することができる。
【0060】
シーリング材組成物中における無機充填材の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して1質量部以上が好ましく、30質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、80質量部以上がより好ましく、100質量部以上がより好ましい。シーリング材組成物中における無機充填材の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して800質量部以下が好ましく、600質量部以下が好ましく、450質量部以下がより好ましく、300質量部以下がより好ましく、200質量部以下がより好ましい。無機充填材の含有量が1質量部以上であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性が向上する。無機充填材の含有量が800質量部以下であると、シーリング材組成物の粘度上昇を抑え、シーリング材組成物の塗工性が向上する。
【0061】
[触媒]
シーリング材組成物は、触媒を含有している。触媒とは、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の加水分解性シリル基及びシロキサンオリゴマー(B)の加水分解性官能基の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0062】
触媒としては、シラノール縮合触媒が好ましく、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0063】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、シーリング材組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0064】
シーリング材組成物中における触媒の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。触媒の含有量が1質量部以上であると、シーリング材組成物の硬化速度を速くして、シーリング材組成物の湿気硬化性を向上させることができる。触媒の含有量が10質量部以下であると、シーリング材組成物が適度な硬化速度を有し、シーリング材組成物の取扱性を向上させることができる。
【0065】
[可塑剤]
シーリング材組成物は、可塑剤を含有していることが好ましい。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソウンデシル、及びフタル酸ビスブチルベンジルなどのフタル酸エステル;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールが挙げられる。なかでも、ポリアルキレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコールがより好ましい。可塑剤は、23℃及び1.01×105Pa(1気圧)において液状であることが好ましい。
【0066】
可塑剤がポリマーである場合、可塑剤の数平均分子量は、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。可塑剤がポリマーである場合、可塑剤の数平均分子量は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましい。可塑剤の数平均分子量が上記範囲内である場合、シーリング材組成物の硬化物は、耐温水性に優れている。
【0067】
なお、本発明において、可塑剤がポリマーである場合、可塑剤の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって、ポリスチレン換算されて測定された値である。具体的な測定方法や測定条件は、上述したポリオキシアルキレン系重合体(A)と同様である。
【0068】
シーリング材組成物中における可塑剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。シーリング材組成物中における可塑剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がより好ましい。
【0069】
[脱水剤]
シーリング材組成物は、脱水剤を含むことが好ましい。脱水剤によれば、シーリング材組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によってシーリング材組成物が硬化することを抑制することができる。
【0070】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0071】
シーリング材組成物中における脱水剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤による効果が十分に得られる。又、脱水剤の含有量が20質量部以下であると、シーリング材組成物が優れた硬化性を有する。
【0072】
[他の添加剤]
シーリング材組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0073】
[チキソ性付与剤]
チキソ性付与剤は、シーリング材組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0074】
シーリング材組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~150質量部がより好ましい。チキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、シーリング材組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。又、チキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、シーリング材組成物が適度な粘度を有し、シーリング材組成物の取扱性が向上する。
【0075】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。シーリング材組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0076】
[酸化防止剤]
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。シーリング材組成物中における酸化防止剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましい。
【0077】
[光安定剤]
シーリング材組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができるシーリング材組成物を提供することができる。
【0078】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0079】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に経時的なゴム弾性の低下が抑制されているシーリング材組成物を提供することができる。
【0080】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0081】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。又、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0082】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(3)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0083】
【化1】
【0084】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、硬化後に経時的なゴム弾性の低下がより高く抑制されているシーリング材組成物を提供することができる。
【0085】
シーリング材組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0086】
[アミノシランカップリング剤]
シーリング材組成物は、アミノシランカップリング剤を含有していることが好ましい。アミノシランカップリング剤を用いることにより、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性を向上させることができる。なお、アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含有している化合物を意味する。
【0087】
アミノシランカップリング剤として、具体的には、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0088】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。
【0089】
シーリング材組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びシロキサンオリゴマー(B)の総含有量100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。アミノシランカップリング剤の含有量が上記範囲内であると、シーリング材組成物の硬化物の常態接着性が向上する。
【0090】
[シーリング材組成物]
シーリング材組成物は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)、シロキサンオリゴマー(B)、充填材(C)及び触媒(D)並びに、必要に応じて添加される添加剤を汎用の手段を用いて真空雰囲気下にて均一に混合することによって製造することができる。
【0091】
シーリング材組成物は、空気や構造物などに含まれている湿気(水分)によって硬化し、常態接着性に優れ且つ優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を形成することができることから、シーリング材として好適に用いることができる。
【0092】
特に、シーリング材組成物を湿気によって硬化させて得られる硬化物は、優れた耐温水性を有している。キッチン、バスルーム、トイレ、洗面所などの水廻り場所は、水や湿気に晒されることが多いが、シーリング材組成物の硬化物は優れた耐温水性を有しているので、水廻り場所などにおいても、シーリング材組成物の硬化物は、水分に対する曝露にもかかわらず優れたモジュラスを維持し、長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。
【0093】
シーリング材組成物を建築構造物のシーリング部に充填してシーリング構造を得る方法としては、シーリング材組成物をシーリング部に充填した後に養生させて、空気中又は構造物に含まれる水分によって湿気硬化させる方法などが挙げられる。
【0094】
得られるシーリング構造は、建築構造物の構造部材と、互いに隣接する構造部材間に形成されたシーリング部に充填された、シーリング材組成物の硬化物とを有している。建築構造物の構造部材としては、例えば、外壁、内壁、天井部などの壁部、洗面台、バスタブ、システムキッチン本体などが挙げられる。シーリング材組成物は、水廻り場所に形成されたシーリング部に充填されて用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0095】
本発明のシーリング材組成物は、上述の如き構成を有しているので、硬化物が常態接着性に優れており、シーリング部を形成している構造部材に長期間に亘って強固に密着した状態を維持し、シーリング部を長期間に亘って安定的に閉塞した状態を維持することができる。
【0096】
更に、本発明のシーリング材組成物は、その硬化物が耐温水性に優れ、温水浸漬後においても優れたモジュラスを維持しており、水廻り場所などにおいて、水や湿気に晒されたとしても優れたゴム弾性を維持し、シーリング部を安定的に閉塞した状態を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下に、本発明に関して実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0098】
実施例及び比較例のシーリング材組成物の製造において下記の原料を使用した。
[加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)]
・ポリオキシアルキレン系重合体(A1)(主鎖がポリオキシプロピレンであり且つ主鎖に分岐鎖を有するポリオキシプロピレン系重合体、加水分解性シリル基(主鎖の末端に結合):ジメトキシシリル基、一分子量あたりのジメトキシシリル基の平均個数:3.0個、分岐鎖の炭素数:2個以上で且つ12個以下、数平均分子量:30000、分子量分布(Mw/Mn):1.1、AGC社製 製品名「エクセスターS6735D」)
【0099】
・ポリオキシアルキレン系重合体(A2)(主鎖がポリオキシプロピレンであり且つ主鎖に分岐鎖を有するポリオキシプロピレン系重合体、加水分解性シリル基(主鎖の末端に結合):ジメトキシシリル基、一分子量あたりのジメトキシシリル基の平均個数:3.0個、分岐鎖の炭素数:2個以上で且つ12個以下、数平均分子量:8000、分子量分布(Mw/Mn):1.1、AGC社製 製品名「エクセスターS6250」)
【0100】
[加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B1)]
・シロキサンオリゴマー(B1)(主鎖骨格:直鎖状のポリシロキサン骨格-(O-Si)p-、主鎖骨格に側鎖としてフェニル基が直接結合している、主鎖を構成しているポリ直鎖状のポリシロキサン骨格の末端に加水分解性官能基としてメトキシ基を有する、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製 商品名「XR31-B2230」、1分子中の加水分解性官能基の含有量:30質量%)
【0101】
[加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B2)]
・シロキサンオリゴマー(B2)(主鎖骨格:直鎖状のポリシロキサン骨格-(O-Si)p-、主鎖骨格に側鎖としてフェニル基が直接結合している、主鎖を構成しているポリ直鎖状のポリシロキサン骨格の末端に加水分解性官能基としてメトキシ基を有する、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製 商品名「TSR165」、1分子中の加水分解性官能基の含有量:15質量%)
【0102】
[加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B3)]
・シロキサンオリゴマー(B3)(主鎖骨格:直鎖状のポリシロキサン骨格-(O-Si)p-、主鎖骨格に側鎖としてフェニル基が直接結合している、主鎖を構成しているポリ直鎖状のポリシロキサン骨格の末端に加水分解性官能基としてメトキシ基を有する、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製 商品名「XC96-C2814」、1分子中における加水分解性官能基の含有量:8質量%)
【0103】
[加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー(B4)]
・シロキサンオリゴマー(B4)(主鎖骨格:直鎖状のポリシロキサン骨格-(O-Si)p-、主鎖骨格に側鎖としてメチル基が直接結合している、主鎖を構成している直鎖状のポリシロキサン骨格の末端に加水分解性官能基としてメトキシ基を有する、分子中にフェニル基を含有しない、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製 商品名「XR31-B2733」、1分子中における加水分解性官能基の含有量:15質量%)
【0104】
[充填材]
・沈降性炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製 商品名「カルファイン200M」、平均粒子径:0.5μm)
・重質炭酸カルシウム(日東粉化社製 商品名「NCC2310」、平均粒子径:1.0μm)
【0105】
[可塑剤]
・可塑剤(ポリプロピレングリコール、加水分解性シリル基を有しない、数平均分子量3000、AGC社製 商品名「エクセノール3020」)
【0106】
[脱水剤]
・ビニルトリメトシシラン(信越化学工業株式会社製 商品名「KBM-1003」)
【0107】
[触媒]
・シラノール縮合触媒(1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、日東化成株式会社製 商品名「ネオスタンU-130」)
【0108】
[アミノシランカップリング剤]
・アミノシランカップリング剤(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製 商品名「KBM-603」)
【0109】
(実施例1~5、比較例1~4)
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー、充填材、可塑剤、ビニルトリメトキシシラン、シラノール縮合触媒及びアミノシランカップリング剤をそれぞれ表1に示した配合量となるようにして、密封した攪拌機中で減圧しながら均一になるまで混合することによりシーリング材組成物を得た。
【0110】
なお、表1において、「加水分解性官能基を有するシロキサンオリゴマー」は、単に「シロキサンオリゴマー」と表記した。
【0111】
得られたシーリング材組成物について、硬化物の初期最大荷重時伸び、初期50%モジュラス及び初期最大荷重時強度を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0112】
得られたシーリング材組成物について、硬化物の耐温水性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0113】
(硬化物の初期最大荷重時伸び、初期最大荷重時強度及び初期50%モジュラス)
硬化性組成物を用いて、JIS A1439 4.21に準拠して、H型試験体を作製した。具体的には、アルマイト処理を施したアルミニウム板(縦50mm×横50mm×厚み3mm)2枚を用い、これらのアルミニウム板の間にスペーサーを挟むことによってアルミニウム板間の中央部に直方体状の空間(縦12mm×横50mm×高さ12mm)を形成した。この空間内にシーリング材組成物を空気が入らないように充填し、温度23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で14日間放置した。更に、シーリング材組成物を温度30℃及び相対湿度50%の雰囲気下で14日間放置することによって硬化性組成物を養生させて湿気硬化させることにより、2枚のアルミニウム板がシーリング材組成物の硬化物によって接着一体化されてなるH型試験体を作製した。
【0114】
そして、作製直後のH型試験体について、温度23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/分で引張試験をJIS A1439に準拠して行い、最大荷重時伸び(初期最大荷重時伸び)[%]、最大荷重時強度(初期最大荷重時強度)[N/mm2]及び50%モジュラス(初期50%モジュラス)[N/mm2]を測定した。得られた結果を、表1における「初期 最大荷重時伸び(%)」、「初期 最大荷重時強度(N/mm2)」及び「初期 50%モジュラス(N/mm2)」の欄にそれぞれ記載した。
【0115】
(耐温水性)
常態接着性と同様の要領でH型試験体を作製し、更に、H型試験体を温度50℃の温水に7日間浸漬した。この浸漬後のH型試験体について、50%モジュラス(温水浸漬後モジュラス)[N/cm2]を常態接着性の測定時と同様の要領で測定し、得られた結果を表1における「温水浸漬後 50%モジュラス」の欄にそれぞれ記載した。シーリング材組成物の硬化物の温水浸漬後の50%モジュラス維持率を下記式に基づいて算出した。
50%モジュラス維持率(%)
=100×(温水浸漬後50%モジュラス/初期50%モジュラス)
【0116】
【表1】