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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117677
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】廃液切替弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/42 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
F16K1/42 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020377
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】続 昭博
(72)【発明者】
【氏名】若菜 翔
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA11
3H052BA25
3H052CA12
3H052EA02
(57)【要約】
【課題】流体をより流れやすくした廃液切替弁を提供する。
【解決手段】廃液切替弁11は、主流路軸線Lに沿って直線状に延びる主流路15が内部に形成された弁本体13と、主流路15上に設けられた複数の弁機構部17とを備える。各弁機構部17は、主流路15上に設けられた弁室21と、弁室内に配置され且つ先端部にテーパ部23bを有した弁体23とを備える。弁本体13には、主流路軸線Lと垂直な分岐流路軸線Mの方向に延びる分岐流路27と、弁室21と分岐流路27との間に延び且つ弁室21から分岐流路27へ向かって細くなる平滑な内周面を有した絞り部41とが形成され、分岐流路軸線Mの方向に弁体23を往復動作させて絞り部41の内周面に弁体23のテーパ部23bの外周面を接離させることによって弁機構部17の開閉を行うようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流路軸線に沿って直線状に延びる主流路が内部に形成された弁本体と、前記主流路上に設けられた複数の弁機構部とを備える廃液切替弁であって、
各弁機構部が、前記主流路上に設けられた弁室と、該弁室内に配置され且つ先端部にテーパ部を有した弁体とを備え、前記弁本体に、前記主流路軸線と垂直な分岐流路軸線の方向に延びる分岐流路と、前記弁室と前記分岐流路との間に延び且つ前記弁室から前記分岐流路へ向かって細くなる平滑な筒状の内周面を有した絞り部とが形成され、前記分岐流路軸線の方向に前記弁体を往復動作させて前記絞り部の前記内周面に前記弁体の前記テーパ部の外周面を接離させることによって前記弁機構部の開閉を行うようになっていることを特徴とする廃液切替弁。
【請求項2】
前記絞り部の前記内周面が凸状に湾曲する平滑な湾曲面である、請求項1に記載の廃液切替弁。
【請求項3】
前記弁室が前記主流路軸線及び前記分岐流路軸線と垂直な幅軸線の方向に前記主流路よりも拡張されているように形成されており、前記主流路の断面における前記幅軸線の方向の長さが前記分岐流路軸線の方向の長さよりも大きい、請求項1又は請求項2に記載の廃液切替弁。
【請求項4】
前記主流路の断面が前記分岐流路軸線の方向よりも前記幅軸線の方向に長い長方形状を有している、請求項3に記載の廃液切替弁。
【請求項5】
前記主流路が接続路を介して外部流路に接続されており、前記主流路の断面が前記幅軸線の方向に前記接続路の断面よりも大きくなっている、請求項3又は請求項4に記載の廃液切替弁。
【請求項6】
前記接続路が、前記外部流路から前記主流路へ向かって前記幅軸線の方向にテーパ状に拡大されている拡径部を含んでいる、請求項5に記載の廃液切替弁。
【請求項7】
前記主流路と前記弁室との接続部に面取りが施されている、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の廃液切替弁。
【請求項8】
前記弁体のテーパ部の外周面が、先端部側に位置する前部側傾斜面と該前部側傾斜面よりも前記分岐流路から遠い側に位置し且つ前記分岐流路軸線に対して該前部側傾斜面よりも大きい角度をなして延びる後部側傾斜面とを含み、前記後部側傾斜面が前記絞り部の内周面に接離する、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の廃液切替弁。
【請求項9】
前記主流路が、第1の端部と前記接続路に接続される第2の端部との間に延びており、前記複数の弁室が、少なくとも、前記第1の端部と、前記第2の端部とに設けられている、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の廃液切替弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工場、半導体製造、食品、バイオなどの各種産業分野における配管ラインに用いられ、廃液ラインを切り替えて流体を排出させることができる廃液切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の洗浄工程では、複数の薬液や純水等の液体が切り替えられて洗浄槽に供給された後に、洗浄槽のタンクから排出ラインを通して排出される。使用された液体は、廃液処理の観点から、種類ごとに排出ラインを切り替えて回収されることが好ましく、このために、排出ラインに切替弁を使用することが考えられる。例えば、切替弁としては、特許文献1や特許文献2に開示されているような流路切換装置を用いることができる。また、半導体洗浄工程では、一つの洗浄槽で多数のウエハを同時に洗浄するバッチ式の洗浄装置に加えて、少量多品種に対応させて各ウエハに使用されている材料に適した洗浄液を使用できるようにするために、一つの洗浄槽で一枚のウエハごとに洗浄を行う枚葉式の洗浄装置が採用されることも多くなってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4944049号公報
【特許文献2】特許第5039604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
枚葉式の洗浄装置では、スループットを上げるために、洗浄槽を多段に配置して並行して処理ができるようにしている。また、洗浄装置の洗浄槽からの廃液は、廃液ラインの揚程差を利用して排出されることが一般的である。このため、装置全体の大型化を抑制しつつ多段化を行うと、各洗浄槽から切替弁までの間に確保できる各廃液ラインの揚程差が小さくなる。ところが、従来の一般的な流路切換装置は、圧力損失が大きくて、いわゆる容量係数Cvが小さく、廃液の排出流量が少なくなってしまう。このため、洗浄槽の廃液タンクがオーバーフローを起こしやすいという問題がある。
【0005】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する問題を解決して、流体をより流れやすくした廃液切替弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的に鑑み、主流路軸線に沿って直線状に延びる主流路が内部に形成された弁本体と、前記主流路上に設けられた複数の弁機構部とを備える廃液切替弁であって、各弁機構部が、前記主流路上に設けられた弁室と、該弁室内に配置され且つ先端部にテーパ部を有した弁体とを備え、前記弁本体に、前記主流路軸線と垂直な分岐流路軸線の方向に延びる分岐流路と、前記弁室と前記分岐流路との間に延び且つ前記弁室から前記分岐流路へ向かって細くなる平滑な内周面を有した絞り部とが形成され、前記分岐流路軸線の方向に前記弁体を往復動作させて前記絞り部の前記内周面に前記弁体の前記テーパ部の外周面を接離させることによって前記弁機構部の開閉を行うようになっている廃液切替弁を提供する。
【0007】
上記廃液切替弁では、弁室と分岐流路との間に弁室から分岐流路へ向かって細くなるように設けられた絞り部の平滑な内周面に、弁体の先端部のテーパ部の外周面を接離させることによって、弁機構部の開閉を行うようになっている。ここで、「平滑」とは、内周面上に突起部や角部などが設けられていないことを意味する。絞り部がなく、主流路軸線と垂直な分岐流路軸線方向に延びる分岐流路と弁室との境界に形成された角部に弁体のテーパ部を接離させる場合には、弁機構部の開弁状態のときに弁体のテーパ部と角部との間の流路面積が急激に絞られた後に急激に広がるので、流体の流速の急激な変化により流体の圧力損失が大きくなるのに対して、上記廃液切替弁の弁機構部の開弁状態では、絞り部の内周面と弁体のテーパ部の外周面との間を流体が流通して流路面積が緩やかに変化するので、流体の流速の変化も緩やかになり圧力損失も小さくなる。また、弁体のテーパ部が絞り部の平滑な内周面に接離するので、絞り部とテーパ部との間における流体の流通が突起物等により妨げられない。この結果、弁室から分岐流路への流体の圧力損失を小さくでき、弁室から分岐流路へ流体が流れやすくなる。さらに、弁機構部が閉弁状態のときに絞り部内で弁体のテーパ部の外周面と絞り部の内周面とが当接する。したがって、絞り部内に収容される弁体の体積が増加し、弁室内において主流路の延長上に突出している弁体の部分の体積を少なくすることができる。この結果、主流路を流れる流体が閉弁状態になった弁機構部を通過するときに弁体が流体の流通を妨げることを抑制して、流体が廃液切替弁を経て分岐流路へ流通しやすくなる。
【0008】
上記廃液切替弁では、前記絞り部の前記内周面が凸状に湾曲する平滑な湾曲面であることが好ましい。
【0009】
また、前記弁室が前記主流路軸線及び前記分岐流路軸線と垂直な幅軸線の方向に前記主流路よりも拡張されているように形成されており、前記主流路の断面における前記幅軸線の方向の長さが前記分岐流路軸線の方向の長さよりも大きいことが好ましく、前記主流路の断面が前記分岐流路軸線の方向よりも前記幅軸線の方向に長い長方形状を有していることがさらに好ましい。
【0010】
さらに、前記主流路が接続路を介して外部流路に接続されており、前記主流路の断面が前記幅軸線の方向に前記接続路の断面よりも大きくなっていることが好ましく、前記接続路が、前記外部流路から前記主流路へ向かって前記幅軸線の方向にテーパ状に拡大されている拡径部を含んでいることがさらに好ましい。
【0011】
上記廃液切替弁では、前記主流路と前記弁室との接続部に面取りが施されているようにしてもよい。
【0012】
また、上記廃液切替弁では、前記弁体のテーパ部の外周面が、先端部側に位置する前部側傾斜面と該前部側傾斜面よりも前記分岐流路から遠い側に位置し且つ前記分岐流路軸線に対してなす角度が該前部側傾斜面よりも大きい後部側傾斜面とを含み、前記後部側傾斜面が前記絞り部の内周面に接離するようにしてもよい。
【0013】
一つの実施形態として、前記主流路が、第1の端部と前記接続路に接続される第2の端部との間に延びており、前記複数の弁室が、少なくとも、前記第1の端部と、前記第2の端部とに設けられているようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弁室と分岐流路との間の圧力損失を小さくでき、弁室と分岐流路との間で流体が流れやすくなる。また、主流路を流れる流体が弁閉状態になった弁機構部を通過するときに流体の流通を妨げることを抑制することができ、流体が廃液切替弁を通して分岐流路へ流通しやすくなる。したがって、流体が廃液切替弁を通過しやすくなる。この結果、小さい揚程差の廃液ラインに廃液切替弁を使用した場合でも、流量の低下を抑制して、十分な廃液流量を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による廃液切替弁の全体構成を示す縦断面図である。
図2図1に示されている廃液切替弁の弁本体を切断した状態で示す斜視図である。
図3図1に示されている廃液切替弁の弁本体を図1の上方から見たときの横断面図である。
図4図3の線A-Aに沿った廃液切替弁の弁本体の矢視断面図である。
図5】本発明による廃液切替弁の変形形態における弁本体の弁室部分を拡大して示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明による廃液切替弁の実施の形態を説明する。
最初に、図1を参照して、廃液切替弁11の全体構成を説明する。
【0017】
廃液切替弁11は、主流路軸線Lに沿って直線状に延びる主流路15が内部に形成された弁本体13と、主流路15上に設けられた複数の弁機構部17とを備えており、主流路軸線Lの方向の主流路15の一方の端部が接続路19を介して外部の流路に接続される。図示されている実施形態では、廃液切替弁11は、三つの弁機構部17A,17B,17Cを備えているが、二つ又は四つ以上の弁機構部17を備えていてもよい。
【0018】
弁機構部17A,17B,17Cは基本的に同じ構成であり、図中では各弁機構部17A,17B,17Cに共通の構成に共通の参照符号を付しているが、以下の説明では、各弁機構部17A,17B,17Cのうちの特定のものの構成を指すときには対応して参照符号にA,B,Cの記号を付し、特定の弁機構部17A,17B,17Cではなく各弁機構部17に共通の構成として指すときには、A,B,Cの記号を付さないものとする。
【0019】
各弁機構部17は、主流路15上に設けられた弁室21と、該弁室21内に配置された弁体23と、弁体23を駆動するための駆動部25によって構成されている。各弁室21は、概略円筒形状の内周面を有して主流路軸線Lと垂直な分岐流路軸線Mの方向に延びており、複数の弁室21が主流路軸線Lの方向に等間隔で設けられている。図示されている実施形態では、主流路軸線Lの方向において接続路19に接続される主流路15の一方の端部に弁機構部17Cの弁室21Cが設けられ、主流路15の他方の端部に弁機構部17Aの弁室21Aが設けられ、弁室21Aと弁室21Cの間の主流路15上に弁機構部17Bの弁室21Bが設けられている。
【0020】
弁室21には、分岐流路軸線Mの方向に延びる分岐流路27が連通しており、分岐流路27から弁室21への開口部に弁座が形成されている。また、分岐流路軸線Mの方向に弁室21を挟んで分岐流路27と対向するように、駆動部25が弁本体13に取り付けられており、駆動部25を用いて分岐流路軸線Mの方向に弁体23を往復動させて弁体23を弁座に接離させることによって、弁機構部17を開閉させ、主流路15と分岐流路27との間の流通と遮断とを切り替えられるようになっている。
【0021】
図示されている実施形態では、弁体23は、弁体23の上端部の外周部から半径方向外方に延び且つ外周部が概略円形状を有したダイヤフラム部29を備えている。また、駆動部25は、内部に収容空間であるシリンダ部が形成されている駆動部筐体31と、シリンダ部内に摺動可能に収容されているピストン33と、ピストン33から弁室21へ向かって延び且つ弁体23に連結されるステム35と、ダイヤフラム押さえ37と、ピストンを付勢する付勢部材39とによって構成されている。
【0022】
弁本体13には、分岐流路軸線Mの方向に分岐流路27と対向する位置に、各弁室21まで延びる開口部が形成されており、この開口部を覆うようにダイヤフラム部29が配置される。駆動部筐体31の底部には、シリンダ部の開口部を覆うようにダイヤフラム押さえ37が取り付けられている。ダイヤフラム部29の外周縁部は、弁本体13にボルト等で固定された駆動部筐体31によって、ダイヤフラム押さえ37と弁本体13との間に挟持されている。このように、弁室21と駆動部25との間がダイヤフラム部29によって区画され、弁体23がダイヤフラム部29を介して弁本体13に支持された状態で弁室21内に配置されている。ダイヤフラム部29によって支持される弁体23には、ピストン33からダイヤフラム押さえ37を貫通して延びるステム35が連結されている。
【0023】
シリンダ部内の空間は、ピストン33によって二つの空間に区画されており、その一方に付勢部材39が配置され、他方の空間に対して駆動流体の供給及び排出を行うことによってピストン33を分岐流路軸線Mの方向に往復動させて、ステム35を介して弁体23を弁座に対して接離させる。詳細には、弁機構部17Aでは、ピストン33Aを弁室21Aから離れさせる向きへ付勢力を作用させるように、図1においてシリンダ部内のピストン33Aよりも下側の空間に付勢部材39Aが配置されている。したがって、シリンダ部内のピストン33Aよりも上側の空間に駆動流体を供給することによって、付勢部材39Aの付勢力に抗して分岐流路軸線Mの方向に弁室21Aに近づける向きへピストン33Aを移動させ、分岐流路軸線Mの方向に弁座から離間した状態から弁座に接近させる向きへステム35Aを介して弁体23を移動させ、弁座に当接させることができる。また、シリンダ部内のピストン33Aよりも上側の空間から駆動流体を排出することによって、付勢部材39Aの付勢力により分岐流路軸線Mの方向に弁室21Aから離れさせる向きへピストン33Aを移動させ、分岐流路軸線Mの方向に弁座から離れさせる向きへステム35Aを介して弁体23を移動させ、弁座から離間させることができる。
【0024】
一方、弁機構部17B及び弁機構部17Cでは、ピストン33B,33Cを弁室21B,21Cに接近させる向きへ付勢力を作用させるように、シリンダ部内のピストン33B,33Cよりも上側の空間に付勢部材39B,39Cが配置されている。したがって、シリンダ部内のピストン33B,33Cよりも下側の空間に駆動流体を供給することによって、付勢部材39B,39Cの付勢力に抗して分岐流路軸線Mの方向に弁室21B,21Cから離れさせる向きへピストン33B,33Cを移動させ、分岐流路軸線Mの方向に弁座から離れさせる向きへステム35B,35Cを介して弁体23を移動させ、弁座から離間させることができる。また、シリンダ部内のピストン33B,33Cよりも下側の空間から駆動流体を排出することによって、付勢部材39B,39Cの付勢力により分岐流路軸線Mの方向に弁室21B,21Cに接近させる向きへピストン33B,33Cを移動させ、分岐流路軸線Mの方向に弁座に接近させる向きへステム35Aを介して弁体23を移動させ、弁座に当接させることができる。
【0025】
このように、弁機構部17Aと弁機構部17B,17Cをその挙動が異なるように構成することによって、万一、弁機構部17A,17B,17Cに対する駆動流体の供給が行われなくても、弁機構部17Aが開いて廃液切替弁11を通して廃液を排出することが可能となるようになっている。
【0026】
図1に示されているように、弁体23は、円柱状の中央部23aと、中央部23aから先端部(分岐流路27に近い側の端部)へ向かって細くなる前部テーパ部23bと、中央部23aから駆動部25へ向かって細くなる後部テーパ部23cとを含んでおり、概略独楽形状を有している。前部テーパ部23bの外周面は、先端部側に位置する前部側傾斜面と、前部側傾斜面よりも分岐流路27から遠い側に位置し且つ分岐流路軸線Mに対して前部側傾斜面よりも大きい角度をなして延びる後部側傾斜面とを含むことが好ましい。また、図2によく示されているように、弁室21と分岐流路27との間には、弁室21から分岐流路27へ向かって細くなる平滑な筒状の内周面を有した概略漏斗形状の絞り部41が設けられている。絞り部41の内周面は、凸状に湾曲する平滑な湾曲面であることが好ましいが、平面状の傾斜面であってもよい。なお、本明細書中において、「平滑」とは、内周面上に突起部や角部などが設けられていないことを意味する。弁機構部17では、このような構成の絞り部41の平滑な内周面上に、弁体23の前部テーパ部23bのテーパ状の外周面が接離し、弁室21と分岐流路27との間の開閉が行われるようになっている。すなわち、絞り部41の内周面が弁座として機能するようになっている。
【0027】
従来の切替弁のように分岐流路27が弁室21に直接開口している場合、分岐流路27の内周面と弁室21の壁面との接続部に概略直角の角部が形成され、この角部が弁座として機能し、弁体23の前部テーパ部23bの外周面が角部に対して接離することになる。すると、弁体23の前部テーパ部23bが角部から離間して開弁状態になったとき、弁体23の前部テーパ部23bと角部との間の流路面積が急激に絞られた後に急激に広がるので、弁室21から分岐流路27へ流れる流体の流速が急激に変化する。この結果、流体の圧力損失が大きくなって、弁室21から分岐流路27への流量が減少しやすくなる。これに対して、廃液切替弁11では、弁機構部17が開弁状態になって絞り部41の内周面から弁体23の前部テーパ部23bの外周面が離間しているとき、弁体23の前部テーパ部23bの外周面と絞り部41の内周面との間の流路面積が相対的に緩やかに変化するので、流体の流速の変化も相対的に緩やかになる。この結果、流体の圧力損失も小さくなって、弁室21から分岐流路27へ流体が流れやすくなり、圧力損失による弁室21から分岐流路27への流量の減少を抑制することが可能となる。
【0028】
また、廃液切替弁11では、絞り部41の内周面が平滑で、内周面上に突起部等が設けられておらず、弁体23の前部テーパ部23bの外周面が直接的に絞り部41の内周面に当接するようになっている。したがって、弁体23の前部テーパ部23bの外周面と絞り部41の内周面との間を流体が流れるときの流速の変化を小さくでき、圧力損失が小さくなるので、弁室21から分岐流路27への流量の減少をさらに抑制しやすくなる。また、弁座部に突起部がある場合、スラリーなどが弁座部に残り、次に流す洗浄剤などに混ざって、洗浄剤を再利用できなくなることがある。廃液切替弁11では、絞り部41の内周面上に突起部が設けられていないので、スラリーなどの残留を防ぐことができる。さらに、上述のような構成の廃液切替弁11では、弁機構部17が閉弁状態のときに、弁体23の前部テーパ部23bの外周面と弁座(すなわち絞り部41の内周面)との当接が絞り部41内で行われる。したがって、弁室21の壁面と分岐流路27の内周面との接続部に形成される角部が弁座となる場合と比較して、弁室21内において主流路15の延長上に突出している弁体23の部分の体積を少なくすることができる。この結果、主流路15を流れる流体が閉弁状態になった弁機構部(例えば弁機構部17Bや弁機構部17C)を通過して下流側に通過するときに、弁体23が流体の流通を妨げることを抑制して、流体が主流路15を下流側に流れやすくすることが可能となる。弁体23が後部テーパ部23cを含んでいることも、弁室21内において主流路15の延長上に突出している弁体23の部分の体積を少なくする効果に寄与している。また、同様の観点で、弁体23の中央部23aは、分岐流路軸線Mに垂直な方向の断面の直径が最も大きい部位であるので、必要な強度を維持できる範囲で分岐流路軸線Mの方向の厚さを薄くすることが好ましい。中央部23aを設けることなく、前部テーパ部23bと後部テーパ部23cのみによって弁体23を構成してもよい。
【0029】
前部テーパ部23bの外周面が前部側傾斜面と後部側傾斜面とを含んでいる場合、図1において弁機構部17Bや弁機構部17Cに示されているように、後部側傾斜面が絞り部41の内周面に接離するように弁体23が構成されているが好ましい。このような構成にすることによって、弁体23の前部テーパ部23bの外周面と絞り部41の内周面との間を通過した流体が乱流を発生しにくくなると共に、流体の滞留を抑制することができ、弁体23への気泡の付着を抑制することができる。
【0030】
また、絞り部41の内周面が凸状に湾曲する平滑な湾曲面によって構成されていれば、弁体23の前部テーパ部23bの外周面と絞り部41の内周面とが線接触となって、接触面積が小さくなるので、シール圧が増加し、シール性能を向上させることができる。
【0031】
次に、図2から図4を参照して、廃液切替弁11の構造の詳細をさらに説明する。
【0032】
図2に示されているように、廃液切替弁11の弁本体13には、外部流路(図示せず)と主流路15とを連通させるために接続路19が設けられている。接続路19は、外部流路に接続される直管部19aと、直管部19aと主流路15との間に設けられる拡径部19bとを含んでいる。
【0033】
また、図2及び図3を参照するとよく分かるように、弁室21は、弁体23が内部で分岐流路軸線Mの方向に往復動できるように、分岐流路軸線Mと垂直な断面における直径が接続路19や分岐流路27の直径よりも大きくなっている。このため、弁室21は、主流路軸線L及び分岐流路軸線Mと垂直な幅軸線Nの方向に接続路19や主流路15よりも太く、弁室21の一部が接続路19や主流路15に対して幅軸線Nの方向に凸状に拡張された形態となっている。
【0034】
多段の洗浄槽を備える枚葉式の洗浄装置に廃液切替弁11を使用する場合、廃液切替弁11が占有する領域の上下幅を小さくする必要があり、分岐流路軸線Mが概略水平になるように廃液切替弁11が配置される。詳細には、例えば、廃液切替弁11の駆動部25側が分岐流路27側よりも僅かに高い位置に配置されるように、廃液切替弁11が配置される。このような配置で廃液切替弁11が使用されると、外部流路から流入する流体中に含まれる気泡が、弁室21において接続路19や主流路15に対して幅軸線Nの方向に凸状に拡張された部分(以下、単に「拡張部43」と記載する。)の特に上側に位置する領域に捕捉されて滞留しやすくなる。拡張部43に滞留した気泡は、主流路15を流通する流体が閉弁状態の弁機構部17の弁室21を円滑に下流側に通過する妨げとなり、廃液流量の低下の要因となり得る。特に、外部流路に近い側に設けられた弁機構部17Cの弁室21Cの拡張部43Cに気泡が滞留すると、流量低下への影響が大きくなる。
【0035】
このような拡張部43への気泡の滞留を抑制するために、廃液切替弁11では、主流路15及び接続路19に対して幅軸線Nの方向に突出する弁室21の拡張部43の突出量を減少させる、すなわち幅軸線Nの方向における主流路15及び接続路19の最大寸法と弁室21の最大寸法の差を減少させるようにしている。具体的には、接続路19が、円形状の断面(主流路軸線Lに垂直な断面)を有する直管部19aと、外部流路に接続される直管部19aから主流路15へ向かって幅軸線Nの方向にテーパ状に拡大された拡径部19bとを含むようになっている。図示されている実施形態では、接続路19の拡径部19bが、主流路15の一方の端部に設けられた弁機構部17Cの弁室21Cに接続されている。また、主流路15の断面が幅軸線Nの方向に拡張され、主流路15の断面における幅軸線Nの方向の長さが分岐流路軸線Mの方向の長さよりも大きくなっている。一つの実施形態として、主流路15の断面形状は、図4に示されているように、幅軸線Nの方向の長さが分岐流路軸線Mの方向の長さよりも大きい概略長方形状とすることができる。しかしながら、主流路15に対して幅軸線Nの方向に突出する弁室21の拡張部43の突出量を減少させることができていれば、主流路15は、他の断面形状を有していてもよく、例えば、分岐流路軸線Mの方向が短軸になっており且つ幅軸線Nの方向が長軸になっている楕円形状の断面を有するようにすることも可能である。また、主流路15の断面が幅軸線Nの方向に接続路19の拡径部19bの断面よりも大きくなっていることが好ましい。
【0036】
なお、図2に示されているように、主流路15を流れる流体の抵抗を低下させるために、分岐流路軸線Mの方向において、主流路15の長さ(断面における最大部分の長さ)及び接続路19の拡径部19bの長さ(断面における最大部分の長さ)が接続路19の直管部19aの長さと等しくなっていることが好ましく、弁室21の長さも接続路19の直管部19aの長さと等しくなっていることがさらに好ましい。
【0037】
廃液切替弁11の変形形態として、図5に示されているように、主流路15の内周面と分岐流路軸線M周りの弁室21の壁面との接続部に面取りを施して面取り部45を設けてもよい。面取り部45は、R面取りで主流路15の内周面と分岐流路軸線M周りの弁室21の壁面とを湾曲面で接続するように構成してもよく、C面取りで主流路15の内周面と分岐流路軸線M周りの弁室21の壁面とを平面で接続するように構成してもよい。このような面取り部45を設けることにより、弁機構部17が閉弁状態のときに弁体23を迂回して流れやすくなり、主流路15の流れを阻害しにくくなる効果を奏する。
【0038】
次に、図1に示されている廃液切替弁11の動作を説明する。
【0039】
廃液切替弁11には、外部配管内に設けられた外部流路から接続路19を介して流体が流入する。廃液切替弁11に流入した流体は接続路19を経て主流路15内を流通する。主流路15に設けられた複数の弁機構部17は、外部流路から流入する廃液の種類に応じて択一的に開弁状態にされ、選択されなかった弁機構部17は閉弁状態にされる。閉弁状態の弁機構部17では、駆動部25によって弁体23が分岐流路軸線Mの方向に絞り部41へ向けて移動させられ、弁体23の前部テーパ部23bの外周面が絞り部41の内周面に当接して分岐流路27への流体の流入が阻止される。弁機構部17Bや弁機構部17Cが閉弁状態になっているときには、主流路15内の流体は、弁室21B,21C内に流入した後に弁室21B,21Cに配置される弁体23B,23Cを迂回して下流側の主流路15へ流れていく。また、廃液切替弁11では、主流路15や接続路19に対する弁室21の拡張部43の突出量が小さくなっているので、拡張部43に滞留した気泡も流体の流れに乗って拡張部43から下流側の主流路15にに排出されやすく、拡張部43に気泡が滞留して主流路15における流体の流通を阻害することが抑制される。
【0040】
一方、択一的に選択された開弁状態の弁機構部17では、駆動部25によって弁体23が分岐流路軸線Mの方向に絞り部41から離れる向きへ移動させられ、弁体23の前部テーパ部23bの外周面が絞り部41の内周面から離間して、弁体23の前部テーパ部23bの外周面と絞り部41の内周面との間を通って流体が弁室21から分岐流路27へ排出される。絞り部41の内周面は弁室21から分岐流路27へ向かって漏斗状に細くなっているので、弁体23の前部テーパ部23bの傾斜した外周面と絞り部41の内周面との間では、流路面積の変化が緩やかで圧力損失も抑制され、弁室21から分岐流路27へ流体が流通しやすくなる効果を奏する。したがって、外部流路の揚程が小さい場合でも、十分な廃液流量を確保しやすくなる。
【0041】
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明による廃液切替弁を説明したが、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、図示されている実施形態では、三つの弁機構部17が設けられているが、二つ又は四つ以上の弁機構部17を設けてもよい。また、弁機構部17が主流路軸線Lの方向における主流路15の両端部に設けられているが、例えば接続路19側の弁機構部17を主流路軸線L方向に中央寄りに設けて、接続路19を主流路15の端部に直接接続するようにしてもよい。さらに、駆動部25として、正作動タイプ、逆作動タイプ及び復動タイプを目的に応じて適宜に選択して使用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
11 廃液切替弁
13 弁本体
15 主流路
17,17A,17B,17C 弁機構部
19 接続路
19a 直管部
19b 拡径部
21,21A,21B,21C 弁室
23、23A,23B,23C 弁体
23a 前部テーパ部
27,27A,27B,27C 分岐流路
41 絞り部
43 拡張部
45 面取り部
図1
図2
図3
図4
図5