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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117681
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】振り分け距離計及びその計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/02 20060101AFI20230817BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G01B5/02
G01B11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020383
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波田野 利昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲也
【テーマコード(参考)】
2F062
2F065
【Fターム(参考)】
2F062AA02
2F062AA26
2F062CC22
2F062CC27
2F062DD24
2F062EE01
2F062EE04
2F062EE07
2F062EE09
2F062EE42
2F062EE47
2F062EE63
2F062FF03
2F062GG04
2F062GG71
2F062JJ04
2F062MM01
2F065AA02
2F065AA07
2F065FF02
2F065FF22
2F065HH13
2F065JJ09
2F065QQ28
2F065SS13
2F065UU03
(57)【要約】
【課題】 基準芯からその両方向の計測対象面までの距離を容易かつ安定して精度良く効率的に計測可能な振り分け距離計を提供する。
【解決手段】 基準芯を捕捉する捕捉領域の中心線から基準芯が外れた乖離距離を計測して出力する基準芯センサと、中心線から計測対象面までの実測距離を検出して出力する一対の距離センサと、を備え、実測距離を乖離距離で補正することにより振り分け距離を出力する。一対の距離センサは、それぞれが摺動伸縮する計測バーを備え、計測対象面に接触するその端部が平坦であり、それら端部を対向する計測対象面にそれぞれ密着させて、一対の距離センサを計測対象面に固定する。長手方向の中心部に配設された基準芯センサと、その両方向に延設された一対の距離センサと、制御部と、表示部と、を備えたベースプレートが、装置支持部に固定され、制御部が、振り分け距離を算出して表示部に表示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準芯に基づいて両方向に対向する計測対象面までの振り分け距離を計測する振り分け距離計であって、
前記基準芯を捕捉する捕捉領域の中心線から前記基準芯が外れた乖離距離を計測して出力する基準芯センサと、
前記中心線から前記計測対象面までの実測距離を検出して出力する一対の距離センサと、
を備え、
前記実測距離を前記乖離距離で補正することにより前記振り分け距離を出力する、
振り分け距離計。
【請求項2】
前記一対の距離センサは、それぞれが摺動伸縮する計測バーを備え、前記計測対象面に接触する前記計測バーの端部は計測対象物と平行に接触可能な平坦面を有し、それら平坦面を対向する前記計測対象面にそれぞれ密着させて、前記一対の距離センサを前記計測対象面に固定する、
請求項1記載の振り分け距離計。
【請求項3】
長手方向の中心部に配設された前記基準芯センサと、その両方向に延設された前記一対の距離センサと、制御部と、表示部と、を備えたベースプレートが、装置支持部に固定され、
前記制御部が、前記振り分け距離を算出して前記表示部に表示する、
請求項2に記載の振り分け距離計。
【請求項4】
前記装置支持部に姿勢調整機構を備える、
請求項3記載の振り分け距離計。
【請求項5】
前記基準芯は鉛直線であり、
前記ベースプレートは、両端に配設された前記一対の距離センサを含めた全体の水平保持を補助する姿勢検出部を備える、
請求項3記載の振り分け距離計。
【請求項6】
前記基準芯センサと、前記距離センサで取得した前記振り分け距離のデータを外部に送信する無線通信部を備える、
請求項1記載の振り分け距離計。
【請求項7】
前記装置支持部は、水平方向に伸縮する伸縮棒を有し、該伸縮棒により対向する前記計測対象面又は相当の壁面を弾性的に押圧した状態で保持される、
請求項3記載の振り分け距離計。
【請求項8】
前記基準芯は、天井又は床から鉛直に照射されるレーザ光であり、
前記基準芯センサは、前記レーザ光の位置を検出して該レーザ光との位置関係を特定可能な1次元又は2次元のレーザ受光型の光位置センサである、
請求項1記載の振り分け距離計。
【請求項9】
前記光位置センサは、捕捉領域にビームコンプレッサを装着され、
該ビームコンプレッサは、少なくとも焦点を有する対物レンズが鏡筒に配設されている、
請求項8に記載の振り分け距離計。
【請求項10】
エスカレーターを据え付ける途中、又はそれを設置した後の定期点検における品質管理用の計測治具として、
前記基準芯を振り分けの中心として、その両側に前記計測対象面が対面し、
該計測対象面の違いにより、フレーム振り分けと、レール振り分けと、パネル支え振り分けと、スカートガード振り分けと、の少なくとも何れかの振り分け距離を計測可能である、
請求項1~9の何れか1項に記載の振り分け距離計。
【請求項11】
前記計測治具により計測された結果は、予め設けられた所定の検査報告様式に形成される、
請求項10に記載の振り分け距離計。
【請求項12】
基準芯に基づいて両方向に対向する計測対象面までの振り分け距離を計測する振り分け距離計測方法であって、
基準芯センサの捕捉領域に前記基準芯を捕捉し、
前記基準芯センサは、前記捕捉領域の中心線から前記基準芯が外れた乖離距離を計測して出力し、
一対の距離センサにより、前記中心線から前記計測対象面までの実測距離を検出して出力し、
前記実測距離を前記乖離距離で補正することにより前記振り分け距離を出力する、
振り分け距離計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振り分け距離計及びその計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の施工において、基準芯から均等位置の振り分け距離を計測して位置決めすることが多く、その後の品質管理にも好適な振り分け距離計が望まれていた。規準芯は鉛直線であることが多く、その場合は、下げ振り等を基準芯に適用した寸法計測が一般的である。また、特許文献1に記載のように、下げ振りの位置検出装置は、建築作業等において、鉛直線である下げ振りの糸を基準芯として、計測対象である柱や壁面等の変位を測定する作業の際、従来から手間と時間を要した下げ振りの位置検出工程を容易化した技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-247862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の下げ振りの位置検出装置は、計測対象として、主に柱や壁面等を想定するため、これらの計測対象と基準芯が離れている場合には適用が困難であり、また、基準芯の両側に振り分けて配置された計測対象それぞれの位置を同時に計測できるものではなかった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基準芯からその両方向の計測対象面までの距離を容易かつ安定して精度良く効率的に計測可能な振り分け距離計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明は、基準芯に基づいて両方向に対向する計測対象面までの振り分け距離を計測する振り分け距離計であって、基準芯を捕捉する捕捉領域の中心線から基準芯が外れた乖離距離を計測して出力する基準芯センサと、中心線から計測対象面までの実測距離を検出して出力する一対の距離センサと、を備え、実測距離を乖離距離で補正することにより振り分け距離を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基準芯からその両方向の計測対象面までの距離を容易かつ安定して精度良く効率的に計測可能な振り分け距離計を提供できる。上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】前提技術に係る振り分け距離計測方法(以下、「前提技術の方法」ともいう)の概要を説明するための正面図である。
図2】本発明の基本形に係る振り分け距離計(以下、「本振り分け距離計」ともいう)の上面図である。
図3図2の本振り分け距離計の正面図である。
図4図2及び図3に示した本振り分け距離計のシステム構成を示す機能ブロック図である。
図5図1図4に示した本振り分け距離計による測定の説明をするための図である。
図6】変形例1に係る振り分け距離計(これも「本振り分け距離計」という)の正面図である。
図7】変形例2に係る振り分け距離計(これも「本振り分け距離計」という)の上面図である。
図8図7の本振り分け距離計の正面図である。
図9図7及び図8に示した本振り分け距離計に付設されたビームコンプレッサの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本振り分け距離計を図に基づいて説明する。なお、各図において、同一の構成には同一の符号を付し、説明が重複する場合は、その説明を省略する場合がある。また、本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部品から成ること、複数の構成要素が一の部品から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、等を許容する。
【0010】
[前提技術]
図1は、前提技術の方法の概要を説明するための正面図である。図1に示すように、作業者6は、天井や梁等の下げ振り取付面7から下げ振り錘2を吊り下げられて形成された基準芯1である下げ振りの糸に、定規や巻き尺等の計測器(以下、「コンベックス等」ともいう)3を接近させ、構造物4の計測対象面5と基準芯1との距離を目視で計測する。
【0011】
構造物4や装置の組立時に、計測基準となる基準芯(中心線であることが多い)1から左右の既定の位置に部品を取り付ける場合がある。例えば、循環するエスカレーターのステップ(踏台)が走行するレールや、ステップの両側に設けられるスカートガードパネルは、安全性や乗り心地の観点から、エスカレーター中央の基準芯1から左右既定の位置に精度良く取り付ける必要がある。
【0012】
そのため、基準芯1から左右の計測対象5までの振り分け距離W/W図5)を正確に計測する必要がある。これらは、振り分け距離計10を用いない前提技術の方法によれば、後述する図5で測定の説明をする基準芯1から右側計測対象5までの距離W、基準芯1から左側計測対象5までの距離Wを、左右それぞれに相当の注意力を払って作業者6が計測する。
【0013】
しかし、この方法では、作業者により、定規の当て方(水平性、鉛直性)や、揺れる下げ振りに対する目盛りの読取り方が異なる場合があり、計測結果にバラツキが生じた。そこで、これを改善できる本振り分け距離計10について、図2図5を用いて、その基本例を説明する。
【0014】
[基本例]
図2に本振り分け距離計10の平面図を、図3に正面図を示す。本振り分け距離計10は、本体基部であるベースプレート107に、各構成部材が取り付けられて形成される。各構成部材は、基準芯センサ101と、距離センサ102と、姿勢検出部103と、制御部104と、表示部105と、電源106と、無線通信部112と、から構成される。
【0015】
姿勢検出部103は、水準器や傾斜センサ等であり、本振り分け距離計10において、主にベースプレート107の長手方向の水平度を利用者に確認させるためのものである。その姿勢検出部103は、緩い傾斜により中央部が高められた透明の容器内に充填された液体と泡との位置関係による水準器が好適である。
【0016】
ベースプレート107は、長手方向の中心部に、基準芯センサ101、制御部104、及び表示部105が配設される。基準芯センサ101は、基準芯センサブラケット110で支持される。基準芯センサ101の両方向に、一対の距離センサ102が延設される。すなわち、ベースプレート107の両端には、計測対象面5までの距離を検出する距離センサ102がそれぞれ対向するように取り付けられている。
【0017】
本振り分け距離計10(図5),12(図8)は、その本体基板であるベースプレート107が、装置支持部(雲台付三脚)108に固定された状態で使用される。そのため、ベースプレート107の下部は、装置支持部108から脱着可能な構造となっている。制御部104は、基準芯1から左右それぞれの振り分け距離W/Wを、後述する式(1),(2)により算出して表示部105に表示する。
【0018】
基準芯センサ101は、CCD透過型レーザセンサ等が好適であり、その中央部の所定空間に形成された計測範囲(以下、「捕捉領域」ともいう)に照射されたレーザが、捕捉対象5である基準芯1で遮られ、センサ受光面で影になった位置を検出するものである。
【0019】
また、一対の距離センサ102は、それぞれが摺動伸縮する計測バー109を備える。それら計測バー109の計測対象面5に接触する端部は計測対象物5と平行に接触可能な平坦面である。それら平坦面を対向する計測対象面5にそれぞれ密着させて、一対の距離センサ102を計測対象面5に固定する。距離センサ102は、計測バー109の端部を左右の計測対象面5に密着させ、距離センサ102を計測対象面5に対して垂直に接触させ、距離を計測する。
【0020】
基準芯1は鉛直線である場合が多いので、利用者は、ベースプレート107に備わる姿勢検出部(水準器)103を参照しながら、本振り分け距離計10全体を水平保持すると良い。すなわち、ベースプレート107、及びその両端に配設された一対の距離センサ102を含めた長尺形状の本振り分け距離計10全体を水平保持することにより、測定精度が高められる。
【0021】
装置支持部108は、カメラ等の支持に使用される高さ調整可能なカメラスタンドや三脚等を流用すれば良い。この装置支持部108は、2軸以上の自由度を有する雲台をはじめとする姿勢調整機構111を備えると、使い勝手が良好である。
【0022】
以上が、本振り分け距離計10の基本構成であり、これだけでも実用性を発揮できる。さらに、この本振り分け距離計10は、無線通信部112を備えているので、計測結果をノートPC、タブレット、スマートフォン等の携帯端末113に無線伝送して利便性を高めた構成を図3及び図4に示している。
【0023】
図4は、図2及び図3に示した本振り分け距離計10のシステム構成を示す機能ブロック図である。図3で簡単に説明し、図4にも示すように、本振り分け距離計10は、マイコン等により構成された制御部104と、電源106を備える。電源106は、制御部104、及び各センサ、及び無線通信部112に電源を供給する。
【0024】
本振り分け距離計10は、基準芯センサ101と、距離センサ102で取得した振り分け距離W/W図5)のデータを外部に送信する無線通信部102aを備えると良い。本振り分け距離計10は、この無線通信部102aから離れて位置する無線通信部102b(まとめて102)により、携帯端末113と通信可能に接続される。
【0025】
制御部104を構成するマイコン等は、ワンチップタイプで良く、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行して演算機能を形成する。制御部104は、基準芯センサ101、及び距離センサ102で取得したデータを集約し、演算処理する。
【0026】
制御部104は、演算処理されたデータを表示部105に計測結果として表示するとともに、同データを無線通信部112aにも送る。その無線伝送されたデータは、記録設備側の無線通信部112bで受信され、携帯端末113に記録されるほか、そのデータを用いて後述する検査報告書の作成まで自動化、又は半自動化しても良い。
【0027】
携帯端末113は、振り分け距離W/Wのデータを受信することにより、検査作業の進捗を遠隔監視のために表示できるほか、データ管理の点でも好都合である。例えば、無線通信部112(112a及び112bの総称)は、Wi-Fiによる通信機能であり、そのようなインターフェースを介して、本振り分け距離計10からノートパソコン等の携帯端末113へ、測定済のデータを送り届けるだけでも、作業者がデータを紙に手書きする手間が省ける。
【0028】
より具体的には、エスカレーター用の計測治具の用途において、本振り分け距離計10は、計測治具により計測された結果を、予め設けられた所定の様式の検査報告書に網羅すると良い。このように、検査報告書作成アプリケーションを実行中の携帯端末113において、受信した振り分け距離W/Wのデータが所定枠に自動的に記入されるだけで、品質保証部等へ提出すべき検査報告書が見栄え良く作成される。なお、検査報告書は、説明の便宜上の表現であり、該当する電子データも含まれる。
【0029】
図5は、図1図4に示した本振り分け距離計10による測定の説明をするための図である。図5に示すように、制御部104は、基準芯センサ101で取得する装置中心と基準芯間の距離Xと、左右の距離センサ102で検出するXとXデータを取得する。さらに、制御部104は、全幅Wと、振り分け距離W,Wと、を表示部105に表示させる機能に加えて、これらのデータを記録する機能等も有している。
【0030】
制御部104において、基準芯1からの振り分け距離W,Wは、左右それぞれ下式(1),(2)のように算出される。ここで、Xはベースプレート107の長さ(左右の距離センサ102間距離)であるため既知である。
左側振り分け距離: W = X + X/2 + X・・・・(1)
右側振り分け距離: W = X + X/2 - X・・・・(2)
【0031】
このように、本振り分け距離計10は、基準芯1から両方向に対向する計測対象面5までの振り分け距離W/Wを計測するために、基準芯センサ101と、一対の距離センサ102と、を用いる。基準芯センサ101は、基準芯1を捕捉する捕捉領域(図2図3及び図9の符号32も参照)を有し、その捕捉領域の中心線から基準芯1が外れた乖離距離Xを計測して出力する。
【0032】
一方、一対の距離センサ102は、捕捉領域の中心線から計測対象面5までの実測距離X/Xを検出して出力する。本振り分け距離計10は、このように取得された実測距離X/Xを乖離距離Xで補正することにより、振り分け距離W/Wを出力する。補正の計算式は、上式(1),(2)のとおりである。
【0033】
本振り分け距離計測方法は、基準芯1から両方向に対向する計測対象面5までの振り分け距離W/Wを計測する方法であり、つぎの手順で実行される。まず、作業者等が基準芯センサ101の捕捉領域に基準芯1を捕捉させる。つぎに、基準芯センサ101は、捕捉領域の中心線から基準芯1が外れた乖離距離Xを計測して出力する。つぎに、一対の距離センサ102により、中心線から計測対象面5までの実測距離X/Xを検出して出力する。最後に、実測距離X/Xを乖離距離Xで補正することにより振り分け距離W/Wを出力する。
【0034】
本振り分け距離計10を用いた計測方法によれば、基準芯からその両方向の計測対象面までの距離を容易かつ安定して精度良く効率的に計測可能となるため、寸法計測のリードタイム短縮にも寄与する。また、目視計測に依存しないため、作業者による計測のバラツキも無くなり、計測の再現性向上にもなる。
【0035】
本振り分け距離計10は、エスカレーターを据え付ける途中、又はそれを設置した後の定期点検における品質管理用の計測治具として好適である。その用途別において、本振り分け距離計10は、基準芯1を振り分けの中心として、その両側に計測対象面5を対面させる。
【0036】
その計測対象5の違いにより、本振り分け距離計10は、フレーム振り分けと、レール振り分けと、パネル支え振り分けと、スカートガード振り分けと、の少なくとも何れかの振り分け距離を計測可能である。このような用途に特化した本振り分け距離計10は、作業効率改善効果の高い、品質管理用の計測治具である。
【0037】
本振り分け距離計10の適用例として、一般ビルの1階分を架け渡す標準長さのエスカレーターの場合、規準芯に対する均等振り分け距離計測箇所は、上下2×20=約40箇所にも及ぶ。その目的に対し、本振り分け距離計10を用いない場合であっても、最小目盛りが1mmの巻き尺を用いて、0.5mmの精度が求められる。そこで、本振り分け距離計10を用いることにより、作業員の負担や誤差を大幅に軽減できる。
【0038】
計測治具として完成度を高めた本振り分け距離計10は、エスカレーターの据え付け途中、又は設置後の定期点検において、つぎのように運用される。例えば、エスカレーターの保守作業者は、棒状の治具である本振り分け距離計10を水平に把持し、計測箇所に立ち止まって仮固定して計測し、計測後に前進する、という要領で間欠歩行する。保守作業者は、この間欠歩行をエスカレーターの片道1回だけ実行すれば、品質保証部へ提出すべき検査報告書(相当の電子データ)がノートPC(携帯端末)113に形成される。
【0039】
[変形例1]
基本例では、振り分け距離計10の装置支持部108は、カメラ等で使用する三脚を想定していたが、計測する環境によっては、狭隘であるため、所定範囲で平坦な足場が確保されず、三脚を設置するのが困難な場合もある。
【0040】
図6は、変形例1に係る本振り分け距離計11の正面図である。図6の本振り分け距離計11は、装置支持部108として、姿勢調整機構111を備え、水平方向に伸縮する伸縮棒114に変更することで、三脚の代用に固定手段が得られる。本振り分け距離計11は、計測時に対向する壁面や構造物面に伸縮棒114を突っ張ることで、振り分け距離計10の自重を支持する構造となる。
【0041】
[変形例2]
基本例の振り分け距離計10において、基準芯1に下げ振りを想定したが、計測環境によっては、下げ振りの設置が困難な場合も考えられる。そこで、下げ振りの代替としてレーザ光を用いた変形例を説明する。図7、及び図8にレーザ光8を基準芯1とした場合の振り分け距離計10を示す。
【0042】
図7は、変形例2に係る本振り分け距離計12の上面図であり、図8はその正面図である。図7、及び図8に示すように、床面に設置されたレーザ鉛直器9から鉛直に照射されたレーザ光8が基準芯となる。
【0043】
この基準芯センサの代替として、レーザ受光型基準芯センサ115でレーザ光8の位置を検出しても良い。このような図7の変形例2に係る本振り分け距離計12でも、図2図6の基本例に係る本振り分け距離計10と同等の計測原理をより簡単かつ正確に実現できる。
【0044】
なお、図7の本振り分け距離計12は、レーザ受光型基準芯センサ115として、フォトダイオードの表面抵抗を利用したスポット光の位置検出素子を想定したが、レーザ光の位置を検出できればセンサの種類は問わない。また、レーザ鉛直器9も上方照射型と、下方照射型があるため、下方照射型であれば、レーザ鉛直器9を天井等、振り分け距離計10の上方に設置しても構わない。
【0045】
基準芯1は、天井又は床から鉛直に照射されるレーザ光8である場合も多い。その場合、基準芯センサは、レーザ光8の位置を検出してレーザ光8との位置関係を特定可能な1次元又は2次元のレーザ受光型の光位置センサ(PSD:Position Sensitive Detector)115を採用すると良い。
【0046】
図7及び図8の変形例2に係る本振り分け距離計12において、レーザ光の検出精度を高め、検出範囲を向上させるためにオプション装備可能なビームコンプレッサ20について説明する。図9は、変形例2の本振り分け距離計12にオプション装備されたビームコンプレッサ20の縦断面図である。
【0047】
図9に示すように、1次元又は2次元の位置検出素子であるPSDセンサ31の捕捉領域32が狭すぎて、レーザ光を捕捉するための初期合わせ込みが困難ならば、ビームコンプレッサ20をオプション装備すれば改善できる。すなわち、ビームコンプレッサ20は、鏡筒24に設けた凸レンズ21その他を組み合わせれば、その集光作用により、捕捉領域32の狭い領域にも、レーザ光を多方向から呼び込み易くする効果を発揮する。
【0048】
図9は、変形例2の本振り分け距離計12において、鏡筒24と、PSDセンサ31と、を組み合わせた要部説明図である。図9に示すように、本振り分け距離計12は、図2図8の基本例や変形例1に係る本振り分け距離計10,11と同等の計測原理であって、さらに使い易いものを実現する。
【0049】
レーザ受光装置30は、鏡筒24と、対物レンズ21と、像側レンズ22と、レーザ受光型基準芯センサ31と、光学フィルタ23と、を備えている。鏡筒24は、筒状又は同等機能であり、ベースプレート107に取り付けられる。対物レンズ21は、鏡筒24の下方側開口部に備えられ、少なくとも焦点を有する凸レンズ等で良い。像側レンズ22は、鏡筒24内に配置され、対物レンズ21の上方(後方)に位置し、対物レンズ21からのレーザ光8aをレーザ受光型基準芯センサ31へ案内する。
【0050】
レーザ受光型基準芯センサ31は、鏡筒24内に配置され、像側レンズ22の上方(後方)に位置し、集光された像側レンズ22のレーザ光8bを受光する。光学フィルタ23は、対物レンズ21の下方(前方)側に配置され、外乱光抑制手段を形成し、レーザ光8a以外の外乱光の透過を抑制する。
【0051】
ビームコンプレッサ20は、対物レンズ21と、像側レンズ22と、によりレーザ光収束手段を構成する。このレーザ光収束手段は、鉛直レーザ8aが遠方に設置されて発光される場合、遠距離で広がったレーザ光8aを再び収束させる。したがって、図9の変形例2に係る振り分け距離計12は、ビームコンプレッサ20を備えることにより、レーザ光8aの検出精度、範囲を向上させることができる。
【0052】
[補足]
下げ振り等を基準芯とする寸法計測において、作業者は、コンベックス等3の計測器を手で把持して水平に維持しつつ、基準芯1に計測基準を合わせ、短時間で高精度に、計測器の目盛りを読み取る作業を完結させることが容易でなかった。さらに、それを発展させた振り分け距離の計測作業において、作業員は、つぎの苦労を余儀なくされた。
【0053】
すなわち、当該作業には、振れが止まるまで待たされる無駄時間及び心労と、静止させた糸を基準にして両側の計測対象まで2箇所の寸法計測に要する目配り負担と、その実現に伴う不自然な作業姿勢と、取得した計測データを記録する手間、といった苦労を伴う。したがって、作業員にとって、これらを反復継続することは、集中力を要する重労働であった。
【0054】
また、作業者によるバラツキと、熟練者確保の困難さと、熟練者でも高齢化による視力低下や集中力の低下と、いった諸般の事情が悪化する傾向は、今後も不可避と考えられる。これに対し、引用文献1の下げ振りの位置検出装置は、下げ振りの位置検出についてのみ解決するが、上記重労働を全面的に軽減できるものではなかった。本振り分け距離計10~12によれば、これらの課題を解決できる。
【符号の説明】
【0055】
1…基準芯(下げ振り)、2…下げ振り錘、3…コンベックス、4…構造物、5…計測対象面、6…作業者、7…下げ振り取付面、8…レーザ光、9…レーザ鉛直器、10~12…振り分け距離計、20…ビームコンプレッサ、21…凸レンズ(対物レンズ)、22…像側レンズと、23…光学フィルタと、24…鏡筒、30…レーザ受光装置、31,115…レーザ受光型基準芯センサ(PSD)、32…捕捉領域、101…基準芯センサ、102…距離センサ、103…姿勢検出部(水準器)、104…制御部、105…表示部、106…電源、107…ベースプレート、108…装置支持部(姿勢調整機構(雲台)111を備えた三脚等)、109…計測バー、110…基準センサブラケット、111…姿勢調整機構(雲台)、112…無線通信部、113…携帯端末、114…伸縮棒
図1
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図9