(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117690
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】空気調和システム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20230817BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20230817BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20230817BHJP
F24F 110/30 20180101ALN20230817BHJP
F24F 110/70 20180101ALN20230817BHJP
F24F 120/14 20180101ALN20230817BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/77
F24F110:10
F24F110:30
F24F110:70
F24F120:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020393
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泉
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠二
(72)【発明者】
【氏名】岡 浩二
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L056BD07
3L056BE01
3L260AB01
3L260AB15
3L260BA12
3L260CA04
3L260CA12
3L260CA15
3L260CA17
3L260FC02
3L260FC03
(57)【要約】
【課題】集中度の低下を抑制することのできる空気調和システムを提供する。
【解決手段】
本開示の一態様にかかる空気調和システムは、ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムであって、ユーザの集中度に関連する情報を取得する集中度センサと、部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、部屋の換気を行う換気ファンと、集中度センサと、空気調和機と、換気ファンと、を制御する制御部と、を備え、制御部は、集中度センサにより取得したユーザの集中度に関連する情報に基づいて、ユーザの集中度を判定し、判定されたユーザの集中度に基づいて、換気ファンの回転数を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムであって、
前記ユーザの集中度に関連する情報を取得する集中度センサと、
前記部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、
前記部屋の換気を行う換気ファンと、
前記集中度センサと、前記空気調和機と、前記換気ファンと、を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記集中度センサにより取得した前記ユーザの集中度に関連する情報に基づいて、前記ユーザの集中度を判定し、
判定された前記ユーザの集中度に基づいて、前記換気ファンの回転数を制御する、
空気調和システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記ユーザの集中度が低下したことに基づいて、前記換気ファンの回転数を低下させる、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
さらに、
前記部屋の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素センサ、
を備え、
前記制御部は、前記二酸化炭素センサにより検出された前記部屋の二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンの回転数を制御する、
請求項1または2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記制御部は、運転モード制御コマンドを受信して、前記空気調和システムに、前記ユーザの集中度を維持する集中力運転モード、または、前記集中力運転モードと異なる通常運転モード、を実行させるよう制御し、
前記制御部は、
前記集中力運転モードにおける前記部屋の第1目標二酸化炭素濃度と、前記第1目標二酸化炭素濃度よりも小さい前記通常運転モードにおける前記部屋の第2目標二酸化炭素濃度と、を設定し、
前記空気調和システムで、前記運転モード制御コマンドに基づいて、前記集中力運転モードまたは前記通常運転モードのいずれを実行しているかを判定し、
前記空気調和システムで前記集中力運転モードが実行されている場合、前記第1目標二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンの回転数を制御し、
前記空気調和システムで前記通常運転モードが実行されている場合、前記第2目標二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンの回転数を制御する、
請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記ユーザの集中度に基づいて、前記第1目標二酸化炭素濃度の値を更新する、
請求項4に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記ユーザの集中度が低下したことに基づいて、前記第1目標二酸化炭素濃度の値を増大させる、
請求項5記載の空気調和システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記集中力運転モードにおける前記換気ファンの第1上限回転数と、前記第1上限回転数よりも大きい前記通常運転モードにおける前記換気ファンの第2上限回転数と、を設定する、
請求項4から6のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記換気ファンの回転数が前記第1上限回転数であって、前記部屋の二酸化炭素濃度が前記第1目標二酸化炭素濃度を上回る場合、または、前記換気ファンの回転数が前記第2上限回転数であって、前記部屋の二酸化炭素濃度が前記第2目標二酸化炭素濃度を上回る場合、前記部屋の換気を促す換気警報を出力する、
請求項7に記載の空気調和システム。
【請求項9】
前記集中度センサは、前記ユーザの心拍数を取得する心拍数センサを含み、
前記制御部は、前記心拍数に基づいて、前記ユーザの集中度を判定する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項10】
ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムを制御する方法であって、
前記空気調和システムは、前記部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、前記部屋の換気を行う換気ファンと、を有し、
前記ユーザの集中度に関連する情報に基づいて前記ユーザの集中度を判定するステップと、
判定された前記ユーザの集中度に基づいて、前記換気ファンの回転数を制御するステップと、
を含む、
方法。
【請求項11】
前記換気ファンの回転数を制御するステップは、前記ユーザの集中度が低下したことに基づいて、前記換気ファンの回転数を低下させることを有する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記部屋の二酸化炭素濃度を検出するステップ、をさらに含み、
前記換気ファンの回転数を制御するステップは、検出された前記部屋の二酸化炭素濃度に基づいて、前記換気ファンの回転数を制御することを有する、
請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記空気調和システムは、前記ユーザの集中度を維持する集中力運転モード、または前記集中力運転モードと異なる通常運転モード、のいずれかを実行し、
前記方法は、前記部屋の目標二酸化炭素濃度を設定するステップ、をさらに含み、
前記部屋の目標二酸化炭素濃度を設定するステップは、
前記集中力運転モードにおける前記部屋の第1目標二酸化炭素濃度と、前記第1目標二酸化炭素濃度よりも小さい前記通常運転モードにおける前記部屋の第2目標二酸化炭素濃度と、を設定することを有し、
前記換気ファンの回転数を制御するステップは、
前記空気調和システムで前記集中力運転モードが実行されているときに、前記第1目標二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンを制御することと、
前記空気調和システムで前記通常運転モードが実行されているときに、前記第2目標二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンを制御することと、を有する
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記部屋の目標二酸化炭素濃度を設定するステップは、前記ユーザの集中度に基づいて、前記第1目標二酸化炭素濃度の値を更新することを有する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記部屋の目標二酸化炭素濃度を設定するステップは、前記ユーザの集中度が低下したことに基づいて、前記第1目標二酸化炭素濃度の値を増大させることを有する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記換気ファンの上限回転数を設定するステップ、をさらに備え、
前記換気ファンの上限回転数を設定するステップは、前記集中力運転モードにおける第1上限回転数と、前記第1上限回転数よりも大きい前記通常運転モードにおける第2上限回転数と、を設定することを有する、
請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記部屋の換気を促す換気警報を出力するステップ、をさらに含み、
前記部屋の換気を促す換気警報を出力するステップは、前記換気ファンの回転数が前記第1上限回転数であって、前記部屋の二酸化炭素濃度が前記第1目標二酸化炭素濃度を上回る場合、または、前記換気ファンの回転数が前記第2上限回転数であって、前記部屋の二酸化炭素濃度が前記第2目標二酸化炭素濃度を上回る場合、前記部屋の換気を促す換気警報を出力することを有する、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
コンピュータに請求項10から17のいずれか1項に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和システム、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの集中度合いを推定する空気調和システムが知られている。特許文献1には、撮像部と、室内環境情報を検知する検知部と、ユーザの集中度合いを推定する推定部と、を備える集中度推定装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の集中度推定装置では、撮像部が撮像したユーザの画像と、検知部が検知した室内環境情報とに基づいて、ユーザの集中度合いを推定し、集中度合いが上昇するよう空気調和装置を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の集中度推定装置では、集中度の低下を抑制する点で未だ改善の余地がある。
【0006】
本開示は、集中度の低下を抑制することのできる空気調和システム、方法、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる空気調和システムは、
ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムであって、
前記ユーザの集中度に関連する情報を取得する集中度センサと、
前記部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、
前記部屋の換気を行う換気ファンと、
前記集中度センサと、前記空気調和機と、前記換気ファンと、を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記集中度センサにより取得した前記ユーザの集中度に関連する情報に基づいて、前記ユーザの集中度を判定し、
判定された前記ユーザの集中度に基づいて、前記換気ファンの回転数を制御する。
【0008】
本開示の一態様にかかる方法は、
ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムを制御する方法であって、
前記空気調和システムは、前記部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、前記部屋の換気を行う換気ファンと、を有し、
前記ユーザの集中度に関連する情報に基づいて前記ユーザの集中度を判定するステップと、
判定された前記ユーザの集中度に基づいて、前記換気ファンの回転数を制御するステップと、
を含む。
【0009】
本開示の一態様にかかるプログラムは、
コンピュータに上述の方法を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、集中度の低下を抑制することのできる空気調和システム、方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1にかかる空気調和システムの構成を示すブロック図
【
図2】
図1の空気調和システムの換気ファンの回転数の制御動作を説明するフローチャート
【
図3】実施の形態2にかかる空気調和システムの構成を示すブロック図
【
図4】
図3の空気調和システムの換気ファンの回転数の制御動作を説明するフローチャート
【
図5】第1目標二酸化炭素濃度を更新するステップを説明するフローチャート
【
図6】換気ファンの回転数を制御するステップを説明するフローチャート
【
図7】二酸化炭素濃度の濃度差と換気ファンの回転数の増減との関係を示すグラフ
【
図8】実施の形態2の変形例にかかる空気調和システムの換気ファンの回転数の制御動作を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明に至った経緯)
部屋の空調を制御する空気調和システムにおいて、部屋にいるユーザの集中度を推定し、ユーザの集中度を低下させないような空調制御を行うことが検討されている。例えば、特許文献1に記載の集中度推定装置では、ユーザの画像と室内環境情報とに基づいて、ユーザの集中度合いを推定する。また、特許文献1に記載の集中度推定装置では、室内環境情報におけるCO2濃度を用いて、集中度合いを向上させるような空調制御が行われる。
【0013】
例えば、CO2濃度が高いほど集中力が低下するため、部屋のCO2濃度を低下させるよう換気を行う空調制御を実行することで、集中度合いを向上させることが検討されている。
【0014】
部屋のCO2濃度を下げるため換気ファンの回転数を上げると、換気ファンの騒音が増大して、かえって集中力を低下させてしまうという課題がある。本発明者(ら)は、ユーザの集中を妨げない程度のCO2濃度を維持しつつ換気ファンの回転数を下げることで、集中度の低下を抑制することができる空気調和システム、方法、およびプログラムについて検討し、以下の発明に至った。
【0015】
本開示の第1態様にかかる空気調和システムは、
ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムであって、
前記ユーザの集中度に関連する情報を取得する集中度センサと、
前記部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、
前記部屋の換気を行う換気ファンと、
前記集中度センサと、前記空気調和機と、前記換気ファンと、を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記集中度センサにより取得した前記ユーザの集中度に関連する情報に基づいて、前記ユーザの集中度を判定し、
判定された前記ユーザの集中度に基づいて、前記換気ファンの回転数を制御する。
【0016】
このような構成により、集中度の低下を抑制することができる。
【0017】
本開示の第2態様にかかる空気調和システムにおいて、
前記制御部は、前記ユーザの集中度が低下したことに基づいて、前記換気ファンの回転数を低下させてもよい。
【0018】
このような構成により、換気ファンの騒音を小さくすることができ、集中度の低下を抑制することができる。
【0019】
本開示の第3態様にかかる空気調和システムにおいて、
さらに、
前記部屋の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素センサ、
を備え、
前記制御部は、前記二酸化炭素センサにより検出された前記部屋の二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンの回転数を制御してもよい。
【0020】
このような構成により、部屋の二酸化炭素濃度を適切な値に維持しつつ、換気ファンの騒音を抑制して集中度の低下を抑制することができる。
【0021】
本開示の第4態様にかかる空気調和システムにおいて、
前記制御部は、運転モード制御コマンドを受信して、前記空気調和システムに、前記ユーザの集中度を維持する集中力運転モード、または、前記集中力運転モードと異なる通常運転モード、を実行させるよう制御し、
前記制御部は、
前記集中力運転モードにおける前記部屋の第1目標二酸化炭素濃度と、前記第1目標二酸化炭素濃度よりも小さい前記通常運転モードにおける前記部屋の第2目標二酸化炭素濃度と、を設定し、
前記空気調和システムで、前記運転モード制御コマンドに基づいて、前記集中力運転モードまたは前記通常運転モードのいずれを実行しているかを判定し、
前記空気調和システムで前記集中力運転モードが実行されている場合、前記第1目標二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンの回転数を制御し、
前記空気調和システムで前記通常運転モードが実行されている場合、前記第2目標二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンの回転数を制御してもよい。
【0022】
このような構成により、集中力運転モードでは、部屋の二酸化炭素濃度を、集中力の維持に影響を与えない程度まで高く維持して換気ファンの騒音を抑制して集中度の低下を抑制する一方で、通常運転モードでは部屋の二酸化炭素濃度を低くして部屋を十分に換気できるような換気制御を行うことができる。
【0023】
本開示の第5態様にかかる空気調和システムにおいて、
前記制御部は、前記ユーザの集中度に基づいて、前記第1目標二酸化炭素濃度の値を更新してもよい。
【0024】
このような構成により、ユーザの集中度に応じた二酸化炭素濃度を設定することができる。
【0025】
本開示の第6態様にかかる空気調和システムにおいて、
前記制御部は、
前記ユーザの集中度が低下したことに基づいて、前記第1目標二酸化炭素濃度の値を増大させてもよい。
【0026】
このような構成により、ユーザの集中度が低下した場合に第1目標二酸化炭素濃度を増大させることで換気ファンの回転数を下げることができ、騒音を抑制して集中度の低下を抑制することができる。
【0027】
本開示の第7態様にかかる空気調和システムにおいて、
前記制御部は、前記集中力運転モードにおける前記換気ファンの第1上限回転数と、前記第1上限回転数よりも大きい前記通常運転モードにおける前記換気ファンの第2上限回転数と、を設定してもよい。
【0028】
このような構成により、集中力運転モードの第1上限回転数を、通常運転モードの第2上限回転数よりも小さく設定することで、集中力運転モードにおいて換気ファンの回転数を小さくして騒音を抑制することができ、集中度の低下を抑制することができる。
【0029】
本開示の第8態様にかかる空気調和システムにおいて、
前記制御部は、前記換気ファンの回転数が前記第1上限回転数であって、前記部屋の二酸化炭素濃度が前記第1目標二酸化炭素濃度を上回る場合、または、前記換気ファンの回転数が前記第2上限回転数であって、前記部屋の二酸化炭素濃度が前記第2目標二酸化炭素濃度を上回る場合、前記部屋の換気を促す換気警報を出力してもよい。
【0030】
このような構成により、換気ファンによる換気で部屋の二酸化炭素濃度を適切に維持できない場合に警告を出力することができる。
【0031】
本開示の第9態様にかかる空気調和システムにおいて、
前記集中度センサは、前記ユーザの心拍数を取得する心拍数センサを含み、
前記制御部は、前記心拍数に基づいて、前記ユーザの集中度を判定してもよい。
【0032】
このような構成により、ユーザの心拍数に基づいてより正確に集中度を判定することができる。
【0033】
本開示の第10態様にかかる方法は、
ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムを制御する方法であって、
前記空気調和システムは、前記部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、前記部屋の換気を行う換気ファンと、を有し、
前記ユーザの集中度に関連する情報に基づいて前記ユーザの集中度を判定するステップと、
判定された前記ユーザの集中度に基づいて、前記換気ファンの回転数を制御するステップと、
を含む。
【0034】
このような構成により、集中度の低下を抑制することができる。
【0035】
本開示の第11態様にかかる方法において、
前記換気ファンの回転数を制御するステップは、前記ユーザの集中度が低下したことに基づいて、前記換気ファンの回転数を低下させることを有してもよい。
【0036】
このような構成により、換気ファンの騒音を小さくすることができ、集中度の低下を抑制することができる。
【0037】
本開示の第12態様にかかる方法において、
前記部屋の二酸化炭素濃度を検出するステップ、をさらに含み、
前記換気ファンの回転数を制御するステップは、検出された前記部屋の二酸化炭素濃度に基づいて、前記換気ファンの回転数を制御することを有してもよい。
【0038】
このような構成により、部屋の二酸化炭素濃度を適切な値に維持しつつ、換気ファンの騒音を抑制して集中度の低下を抑制することができる。
【0039】
本開示の第13態様にかかる方法において、
前記空気調和システムは、前記ユーザの集中度を維持する集中力運転モード、または前記集中力運転モードと異なる通常運転モード、のいずれかを実行し、
前記方法は、前記部屋の目標二酸化炭素濃度を設定するステップ、をさらに含み、
前記部屋の目標二酸化炭素濃度を設定するステップは、
前記集中力運転モードにおける前記部屋の第1目標二酸化炭素濃度と、前記第1目標二酸化炭素濃度よりも小さい前記通常運転モードにおける前記部屋の第2目標二酸化炭素濃度と、を設定することを有し、
前記換気ファンの回転数を制御するステップは、
前記空気調和システムで前記集中力運転モードが実行されているときに、前記第1目標二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンを制御することと、
前記空気調和システムで前記通常運転モードが実行されているときに、前記第2目標二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンを制御することと、を有してもよい。
【0040】
このような構成により、集中力運転モードでは、通常運転モードよりも、部屋の二酸化炭素濃度を高く維持することで、換気ファンの騒音を抑制して集中度の低下を抑制することができる。
【0041】
本開示の第14態様にかかる方法において、
前記部屋の目標二酸化炭素濃度を設定するステップは、前記ユーザの集中度に基づいて、前記第1目標二酸化炭素濃度の値を更新することを有してもよい。
【0042】
このような構成により、ユーザの集中度に応じた二酸化炭素濃度を設定することができる。
【0043】
本開示の第15態様にかかる方法において、
前記部屋の目標二酸化炭素濃度を設定するステップは、前記ユーザの集中度が換気ファンの騒音により低下したことに基づいて、前記第1目標二酸化炭素濃度の値を増大させることを有してもよい。
【0044】
このような構成により、ユーザの集中度が低下した場合に第1目標二酸化炭素濃度を増大させることで換気ファンの回転数を下げることができ、騒音を抑制して集中度の低下を抑制することができる。
【0045】
本開示の第16態様にかかる方法は
前記換気ファンの上限回転数を設定するステップ、をさらに備え、
前記換気ファンの上限回転数を設定するステップは、前記集中力運転モードにおける第1上限回転数と、前記第1上限回転数よりも大きい前記通常運転モードにおける第2上限回転数と、を設定することを有してもよい。
【0046】
このような構成により、集中力運転モードの第1上限回転数を、通常運転モードの第2上限回転数よりも小さく設定することで、集中力運転モードにおいて換気ファンの騒音を抑制することができ、集中度の低下を抑制することができる。
【0047】
本開示の第17態様にかかる方法は、
前記部屋の換気を促す換気警報を出力するステップ、をさらに含み、
前記部屋の換気を促す換気警報を出力するステップは、前記換気ファンの回転数が前記第1上限回転数であって、前記部屋の二酸化炭素濃度が前記第1目標二酸化炭素濃度を上回る場合、または、前記換気ファンの回転数が前記第2上限回転数であって、前記部屋の二酸化炭素濃度が前記第2目標二酸化炭素濃度を上回る場合、前記部屋の換気を促す換気警報を出力することを有してもよい。
【0048】
このような構成により、換気ファンによる換気で部屋の二酸化炭素濃度を適切に維持できない場合に警告を出力することができる。
【0049】
本開示の第18態様にかかるプログラムは、
コンピュータに上述のいずれかの方法を実行させる。
【0050】
このような構成により、集中度の低下を抑制することができる。
【0051】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0052】
(実施の形態1)
[全体構成]
図1は、実施の形態1にかかる空気調和システム1の構成を示すブロック図である。
【0053】
空気調和システム1は、ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行うシステムである。本実施の形態において、空調制御とは、ユーザの存在する部屋の空気の温度、湿度、清浄度、または気流などを調節することをいい、換気制御とは、ユーザの存在する部屋の空気を部屋の外の空気と入れ替える際の、換気量などを調節することをいう。
【0054】
図1に示すように、空気調和システム1は、集中度センサ11と、空気調和機12と、換気ファン13と、制御部14と、を備える。
【0055】
<集中度センサ>
集中度センサ11は、例えば、部屋にいるユーザの生体情報を取得することのできるセンサ、またはユーザの体動などを取得することのできるカメラなど、ユーザの集中度に関連する情報を取得することのできるセンサを含む。ユーザの集中度に関連する情報とは、部屋にいるユーザの集中度を推定することのできる情報であり、例えば、ユーザの生体情報、または、ユーザの体動の有無などの情報を含む。生体情報としては、例えば、ユーザの心拍数、脳波、眼球の動き、呼吸、または脈波などの情報が挙げられる。体動としては、例えば、ユーザの頭部の動き、または姿勢の変化などが挙げられる。
【0056】
本実施の形態では、集中度センサ11は、ユーザの心拍数を取得することのできる心拍数センサである。本実施の形態では、集中度センサ11は、例えば、ユーザが身に着けるウェアラブルデバイスであり、常時、または定期的に、ユーザの心拍数を取得することができる。また、集中度センサ11は、ユーザの心拍数を非接触で検知することのできるマイクロ波センサ、またはミリ波センサ等であってもよい。
【0057】
本実施の形態において、集中度とは、行っている作業に対するユーザの集中の度合いを示す。集中度は、集中度センサ11で取得した心拍数に基づいて推定することができる。例えば、検出された心拍数が所定の上限値を超える、または所定の下限値を下回る場合に、集中度が低下していると判定することができる。具体的には、作業を行っていないときのユーザの1分間当たりの心拍数(平常時心拍数)を基準にして、例えば、平常時心拍数の1.2倍の値を心拍数の上限値とし、平常時心拍数の0.9倍の値を心拍数の下限値とすることができる。
【0058】
作業に従事して集中している場合、ユーザは若干の緊張状態となる。作業を行っているときのユーザの1分間当たりの心拍数(作業時心拍数)が、平常時心拍数よりも少し心拍数の高い状態、すなわち平常時心拍数の約1.1倍程度であると、ユーザの集中度が高い状態であると推定することができる。作業時心拍数が平常時心拍数の1.1倍を超えて高まる傾向にある場合には、緊張が高まっている状態であり、「集中度が低下している」と推定することができる。一方、集中時心拍数が平常時心拍数の1.1倍よりも低下する傾向にある場合には、緊張状態が解かれリラックスした状態であり、「集中度が低下している」と推定することができる。したがって、所定の上限値(平常時心拍数の1.2倍の値)を超える場合、または所定の下限値(平常時心拍数の0.9倍の値)を下回る場合に、集中度が低下していると推定することができる。
【0059】
<空気調和機>
空気調和機12は、部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節することができ、ユーザの存在する部屋の空調制御を行う。空気調和機12は、例えば、冷房機能、暖房機能、加湿機能、除湿機能、または空気清浄機能を有していてもよく、これらの機能を自由に組み合わせて、部屋の空気を調和することができる。
【0060】
<換気ファン>
換気ファン13は、ユーザの存在する部屋の換気制御を行う。換気ファン13は、例えば、シロッコファン等で構成される。換気ファン13を回転させることにより、部屋の内部の空気と部屋の外部の空気とを入れ替えることができる。換気ファン13は、例えば、部屋の壁面に取り付けられた換気扇であってもよく、または空気調和機12に配置された換気装置であってもよい。
【0061】
空気調和機12と換気ファン13とはそれぞれが別々に動作してもよいし、空気調和機12と換気ファン13とがともに動作して、部屋の空調制御と換気制御とを一緒に行ってもよい。
【0062】
<制御部>
制御部14は、集中度センサ11と、空気調和機12と、換気ファン13と、を制御する。制御部14は、例えば、プログラムを記憶したメモリと、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサに対応する処理回路を備える。制御部14の機能は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることにより実現してもよい。制御部14は、メモリに格納されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行うことで、所定の機能を実現する。
【0063】
本実施の形態では、制御部14は、集中度センサ11により取得したユーザの集中度に関連する情報、すなわちユーザの心拍数に基づいて、ユーザの集中度を判定する。上述したように、例えば、ユーザの作業時心拍数に基づく作業時の集中度と平常時心拍数に基づく平常時の集中度とを比較して、ユーザの集中度が平常時よりも高い状態にあるか、平常時よりも低い状態にあるかを判定する。
【0064】
また、制御部14は、判定したユーザの集中度に基づいて、換気ファン13の回転数を制御する。例えば、制御部14は、平常時の集中度と比較してユーザの集中度が低下したことに基づいて、換気ファンの回転数を低下させてもよい。
【0065】
[換気ファンの回転数の制御]
図2は、
図1の空気調和システム1の換気ファン13の回転数の制御動作を説明するフローチャートである。
図2を参照して、本実施の形態における換気ファンの回転数の制御について説明する。
【0066】
まず、制御部14は、集中度センサ11により取得したユーザの集中度に関する情報に基づいて、ユーザの集中度を判定する(ステップS11)。本実施の形態では、上述したように集中度センサ11は心拍数センサであり、制御部14は、ユーザの心拍数に基づいて平常時の集中度と比較してユーザの集中度が低下したか否かを判定する。具体的には、上述したように、ユーザの平常時心拍数を基準として、作業時心拍数が平常時心拍数の1.2倍を超える場合、または0.9倍を下回る場合には、平常時よりも集中度が低下していると判定する。
【0067】
制御部14が、ユーザの集中度が低下したと判定する場合(ステップS11のYes)、ステップS12に進む。制御部14が、ユーザの集中度が低下していないと判定する場合(ステップS11のNo)、処理が終了する。
【0068】
ユーザの集中度が低下したと判定されると、制御部14は、換気ファン13の回転数を制御する(ステップS12)。具体的には、制御部14は、ユーザの集中度が低下した場合に、換気ファンの回転数を低下させる。集中度が低下した場合に換気ファン13の回転数を低下させることで、換気ファン13の騒音を小さくしてユーザの集中度の低下を抑制することができる。
【0069】
換気ファン13の回転数を段階的に低下させてもよい。例えば、換気ファン13の回転数を500rpmずつ等、所定の値ずつ低下させてもよい。または、集中度がどの程度低下したかに応じて、制御部14が換気ファン13の回転数をどれだけ低下させるかを決定してもよい。
【0070】
図2を参照して説明した換気ファンの回転数を制御する動作は、所定の時間間隔で定期的に実行することができる。または、換気ファンの回転数を制御する動作は、ユーザの集中度の低下が検出されたタイミングで実行されてもよい。
【0071】
上述した実施の形態は、プログラムにも適用することができる。また、上述した実施の形態は、プログラムとして記録媒体に記録することもできる。
【0072】
[効果]
上述した実施の形態によると、集中度の低下を抑制することができる。空気調和システム1では、ユーザの集中度に応じて換気ファン13の回転数を制御して、騒音を抑制することができるため、部屋の換気をしつつ、ユーザの集中度の低下を抑制することができる。
【0073】
また、空気調和システム1では、ユーザの集中度が低下した場合に、換気ファン13の回転数を低下させる制御を行うため、集中度が低下してきたタイミングで騒音を低下させることができ、ユーザの集中度の低下を抑制することができる。
【0074】
なお、上述した実施の形態では、集中度センサ11が心拍数センサである例について説明したが、これに限定されない。集中度センサ11は、ユーザの集中度を推定することのできる生体情報を取得するセンサであってもよい。生体情報を取得するセンサとして、例えば、ユーザの脳波を測定する脳波センサ、眼球の動きを計測するアイトラッカー、脈波測定する脈波センサなど、任意の生体情報センサを使用することができる。または、集中度センサ11は、ユーザの体動を記録するカメラ等であってもよい。
【0075】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2にかかる空気調和システムについて説明する。なお、実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0076】
図3は、実施の形態2にかかる空気調和システム1Aの構成を示すブロック図である。
図3に示すように、実施の形態2では、空気調和システム1Aが二酸化炭素センサ15を備える点で、実施の形態1と異なる。また、空気調和システム1Aは、操作端末16を備えている点で、実施の形態1と異なる。
【0077】
<二酸化炭素センサ>
二酸化炭素センサ15は、ユーザの存在する部屋の二酸化炭素濃度を検出するセンサである。二酸化炭素センサ15により、部屋の空気中に含まれる二酸化炭素の濃度を測定することができる。
【0078】
本実施の形態では、制御部14が、ユーザの集中度および部屋の二酸化炭素濃度に基づいて、換気ファン13の回転数を制御する。
【0079】
<操作端末>
操作端末16は、空気調和システム1Aの運転モード制御コマンドを送信する端末である。操作端末16は、例えば、空気調和システム1Aのリモートコントローラであってもよい。または、操作端末16は、空気調和システム1Aを含む、複数の家電製品を管理および制御することのできるコントローラであってもよい。あるいは、操作端末16は、例えば、スマートフォンまたはタブレットなどの電子機器であってもよい。
【0080】
操作端末16から送信された運転モード制御コマンドは、制御部14で受信されて、制御部14により空気調和システム1Aの運転モードの切り替えが行われる。また、操作端末16からは、空気調和システム1Aの設定温度または設定湿度等の、空気調和システム1Aの運転に関する制御信号を送信してもよい。
【0081】
<運転モード制御コマンド>
運転モード制御コマンドは、空気調和システム1Aの運転モードに関する制御信号である。本実施の形態では、空気調和システム1Aは、ユーザの集中度を維持する集中力運転モードと、集中力運転モードと異なる通常運転モードと、の2つの運転モードを有し、いずれかの運転モードが実行される。集中力運転モードは、部屋にいるユーザが集中度を要する作業を行う場合などに実行され、ユーザの集中度を低下させにくい空調制御および換気制御が行われる。ユーザの集中度を低下させにくい空調制御とは、例えば、暑さ、暖かさ、涼しさ、寒さなどのユーザにより体感される部屋の空気環境を示す「温冷感」を低下させて、集中度を高めるよう部屋の空調を制御することである。また、ユーザの集中度を低下させにくい換気制御とは、例えば、換気ファン13の回転数を変更して騒音を抑制し、集中度を高めるよう部屋の換気を制御することである。
【0082】
集中力運転モードでは、空気調和システム1Aが換気制御を実行している場合に、ユーザの集中度を低下させるのを防ぐために、ユーザの集中度および部屋の二酸化炭素濃度に基づいて、換気ファン13の回転数が制御される。通常運転モードは、集中力運転モードとは異なり、ユーザの集中度に関わらず、部屋の温度、湿度、または二酸化炭素濃度に基づいて部屋の空調制御および換気制御を実行する運転モードである。
【0083】
[換気ファンの回転数の制御]
図4は、
図3の空気調和システム1Aの換気ファン13の回転数の制御動作を説明するフローチャートである。
図4を参照して、本実施の形態における換気ファンの回転数の制御について説明する。
【0084】
まず、制御部14は、空気調和システム1Aが、集中力運転モードまたは通常運転モードのいずれの運転モードで稼働しているかを判定する(ステップS21)。制御部14は、操作端末16から受信した運転モード制御コマンドに基づいて、集中力運転モードまたは通常運転モードのいずれを実行しているかを判定する。
【0085】
制御部14が、空気調和システム1Aで集中力運転モードが実行されていると判定した場合(ステップS21のYes)、部屋の二酸化炭素濃度の目標値である第1目標二酸化炭素濃度を設定する(ステップS22)。制御部14が、空気調和システム1Aで通常運転モードが実行されていると判定した場合(ステップS21のNo)、部屋の二酸化炭素濃度の目標値である第2目標二酸化炭素濃度を設定する(ステップS28)。
【0086】
部屋の換気が行われない場合、部屋にいるユーザの呼吸などにより部屋の二酸化炭素濃度が上昇する。通常、部屋の二酸化炭素濃度が1000ppm以下であれば、部屋は適切に換気されているとされる。一方で、部屋の二酸化炭素濃度が2500ppm以上となると、眠気や倦怠感等によりユーザの作業に対するパフォーマンスが著しく低下することも知られている。部屋の二酸化炭素濃度が1000ppm以上2000ppm以下である場合、ユーザが眠気や倦怠感等を感じることは少なく、ユーザの集中度への影響は小さいと考えられている。
【0087】
制御部14は、集中力運転モードにおける第1目標二酸化炭素濃度を、ユーザの集中度に対する悪影響の小さい範囲である2000ppm以下の値に設定する。例えば、本実施の形態では、ステップS22で、制御部14は、第1目標二酸化炭素濃度を1200ppmに設定する。また、ステップS28で、制御部14が、通常運転モードにおける第2目標二酸化炭素濃度は、適切に換気が行われていることの目安となる1000ppmに設定するとよい。第1目標二酸化炭素濃度および第2目標二酸化炭素濃度の設定値は例示であり、上述の値に限定されるものではないが、第2目標二酸化炭素濃度は、第1目標二酸化炭素濃度よりも小さい値に設定される。
【0088】
ステップS22で制御部14が第1目標二酸化炭素濃度を設定すると、制御部14は、集中力運転モードにおける換気ファン13の第1上限回転数を設定する(ステップS23)。第1上限回転数は、集中力運転モードにおける換気ファン13の回転数の上限値であり、例えば4500rpmとすることができる。また、ステップS28で制御部14が第2目標二酸化炭素濃度を設定すると、制御部14は、通常運転モードにおける換気ファン13の第2上限回転数を設定する(ステップS29)。第2上限回転数は、通常運転モードにおける換気ファン13の回転数の上限値である。第2上限回転数は、第1上限回転数よりも大きい値に設定し、例えば7500rpmとすることができる。第1上限回転数および第2上限回転数は、それぞれの運転モードに対して所定の値が設定される。
【0089】
空気調和システム1Aが集中力運転モードを実行している場合、騒音によるユーザの集中度の低下を抑制するために、換気ファン13の第1上限回転数は、通常モードにおける第2上限回転数よりも小さい値に設定するとよい。本実施の形態では、ステップS23で、制御部14が第1上限回転数を、例えば4500rpmに設定する。また、ステップS29で、制御部14が第2上限回転数を、例えば7500rpmに設定する。換気ファン13の種類により換気能力が異なるため、第1上限回転数および第2上限回転数は適宜変更可能である。
【0090】
空気調和システム1Aで集中力運転モードが実行されている場合、制御部14は、第1目標二酸化炭素濃度と第1上限回転数とを設定する(ステップS21のYes、ステップS22~S23)。その後、制御部14は、ユーザの集中度を判定する(ステップS24)。集中度を判定するステップは、実施の形態1と同様に集中度センサ11により取得した情報に基づいて、ユーザの集中度が低下したか否かを判定する。
【0091】
制御部14が、ユーザの集中度が低下していないと判定する場合(ステップS24のNo)、ステップS26に進む。制御部14が、ユーザの集中度が低下したと判定する場合(ステップS24のYes)、制御部14は、第1目標二酸化炭素濃度を更新する(ステップS25)。ユーザの集中度が低下していると判定された場合、換気ファン13の騒音によりユーザの集中度が低下している可能性がある。このため、部屋の第1目標二酸化炭素濃度を上げて部屋の換気量を小さくすることにより、換気ファン13の回転数を小さくして騒音を抑制することができるようにする。
【0092】
図5は、第1目標二酸化炭素濃度を更新するステップを説明するフローチャートである。
図5を参照して、第1目標二酸化炭素濃度を更新するステップをより詳細に説明する。ステップS24で、制御部14によりユーザの集中度が低下していると判定されると、制御部14は、第1目標二酸化炭素濃度の値を増大させる。本実施の形態では、上述したように、ステップS22で第1目標二酸化炭素濃度が1200ppmに設定されている。制御部14は、第1目標二酸化炭素濃度を増大させる(ステップS251)。具体的には、制御部14は、第1目標二酸化炭素濃度を、1200ppmから、例えば200ppm上げて1400ppmに増大させる。
【0093】
次に、制御部14は、第1目標二酸化炭素濃度が、上限二酸化炭素濃度よりも大きいか否かを判定する(ステップS252)。上限二酸化炭素濃度は、例えば2000ppmであり、部屋にいるユーザの集中度に影響のない範囲で設定することができる。制御部14により、第1目標二酸化炭素濃度が上限二酸化炭素濃度以下であると判定されると(ステップS252のNo)、第1目標二酸化炭素濃度を更新するステップが終了する。制御部14により、第1目標二酸化炭素濃度が上限二酸化炭素濃度を超えていると判定されると(ステップS252のYes)、第1目標二酸化炭素濃度を上限二酸化炭素濃度に設定する(ステップS253)。すなわち、ステップS252で、第1目標二酸化炭素濃度が2000ppm(上限二酸化炭素濃度)を超えていると判定されると、制御部14が第1目標二酸化炭素濃度を2000ppmに更新する。また、ステップS252で、第1目標二酸化炭素濃度が2000ppm以下である場合には、ステップS251で更新された第1目標二酸化炭素濃度は更新されず値を維持する。ステップS253で、第1目標二酸化炭素濃度が更新されると、第1目標二酸化炭素濃度を更新するステップが終了する。
【0094】
図4に戻って、制御部14が第1目標二酸化炭素濃度を更新すると、二酸化炭素センサ15が、部屋の二酸化炭素濃度を検出する(ステップS26)。
【0095】
ステップS26で検出された部屋の二酸化炭素濃度に基づいて、制御部14は、換気ファン13の回転数を制御する(ステップS27)。
【0096】
図6は、換気ファン13の回転数を制御するステップを説明するフローチャートである。
図6を参照して、換気ファン13の回転数を制御するステップをより詳細に説明する。
【0097】
まず、制御部14は、換気ファン13の目標回転数を設定する(ステップS271)。換気ファン13の目標回転数は、部屋の二酸化炭素濃度を、第1目標二酸化炭素濃度または第2目標二酸化炭素濃度に近づけるために設定される換気ファン13の回転数である。
【0098】
図7は、二酸化炭素濃度の濃度差と換気ファン13の回転数の増減との関係を示すグラフである。
図7において、二酸化炭素濃度の濃度差とは、ステップS26で検出した部屋の二酸化炭素濃度から、ステップS22、S25、S28のいずれかで設定された目標二酸化炭素濃度を引いた値である。換気ファン13の回転数の増減は、現在の換気ファン13の回転数に対する、回転数の増加数または減少数を示す。本実施の形態では、
図7のグラフに基づいて、目標二酸化炭素濃度と部屋の二酸化炭素濃度との濃度差から、換気ファン13の回転数を算出する。
【0099】
空気調和システム1Aで集中力運転モードが実行されている場合、第1目標二酸化炭素濃度に基づいて換気ファン13の目標回転数が設定される。また、空気調和システム1Aで通常運転モードが実行されている場合、第2目標二酸化炭素濃度に基づいて換気ファン13の目標回転数が設定される。
【0100】
例えば、空気調和システム1Aが集中力運転モードで稼働している場合、
図4のステップS22またはS25で設定された第1目標二酸化炭素濃度が1200ppmで、
図4のステップS26で検出された部屋の二酸化炭素濃度が1700ppmであるとする。この場合、二酸化炭素の濃度差は、1700ppm-1200ppm=+500ppmである。この場合、換気ファン13を、現在の回転数に対して3000rpm上乗せした回転数で動かすことで、部屋の二酸化炭素濃度を目標二酸化炭素濃度に近づけることができる。例えば、現在の換気ファン13の回転数が1000rpmである場合、換気ファン13の目標回転数は1000rpm+3000rpm=4000rpmに設定される。
【0101】
次に、制御部14は、ステップS271で設定された目標回転数が、第1上限回転数または第2上限回転数よりも小さいか否かを判定する(ステップS272)。制御部14により、目標回転数が第1上限回転数または第2上限回転数よりも小さいと判定されると(ステップS272のYes)、ステップS273に進む。
【0102】
制御部14により、目標回転数が第1上限回転数または第2上限回転数以上であると判定されると(ステップS272のNo)、制御部14は、目標回転数を第1上限回転数または第2上限回転数に更新する(ステップS274)。この場合、目標回転数が上限回転数以上となるため、制御部14が換気ファン13の回転数を上限回転数にキープすることができることを意味する。
【0103】
換気ファン13の目標回転数を第1上限回転数または第2上限回転数に更新すると、制御部14は、換気を促す換気警報を出力する(ステップS275)。ステップS274で更新された換気ファン13の目標回転数の場合、部屋の二酸化炭素濃度を目標二酸化炭素濃度にするためには換気能力が不足している。このため、制御部14は、窓を開けて換気を行うといった空気調和システム1Aの換気ファン13以外の手段で部屋の換気を行うよう、ユーザに対して警告メッセージを出力する。
【0104】
換気警報は、例えば、空気調和システム1Aに含まれるスピーカー(図示省略)からの音声出力であってもよく、または操作端末16の表示画面への文字または図形等の出力であってもよい。
【0105】
制御部14が、換気ファン13の回転数を目標回転数に変更して(ステップS273)、処理が終了する。
【0106】
図4~
図7を参照して説明した換気ファン13の回転数を制御する動作は、所定の時間間隔で定期的に実行することができる。所定の時間間隔で実行することで、ユーザの集中度が低下しなくなるまで、第1目標二酸化炭素濃度を段階的に増大させることができる。第1目標二酸化炭素濃度を段階的に増大させると、ユーザの集中度が低下するにつれて換気ファン13の回転数が下がることとなり、ユーザの集中度に応じて騒音を抑制することができる。
【0107】
上述した実施の形態は、プログラムにも適用することができる。また、上述した実施の形態は、プログラムとして記録媒体に記録することもできる。
【0108】
[効果]
上述した実施の形態によると、二酸化炭素センサにより、部屋の二酸化炭素濃度を検出することで、部屋の二酸化炭素濃度を適切な値に維持しつつ、換気ファンの騒音を抑制して、ユーザの集中度の低下を抑制することができる。
【0109】
また、空気調和システム1Aは、ユーザの集中度を維持する集中力運転モードと、通常運転モードと、を実行することができる。集中力運転モードでは、部屋の第1目標二酸化炭素濃度を高めに設定するため、換気ファン13の回転数を下げることができ、騒音を抑制してユーザの集中度の低下を抑制することができる。通常運転モードでは、第1目標二酸化炭素濃度よりも小さい第2目標二酸化炭素濃度に設定するため、換気ファン13の回転数を上げて部屋の換気量を増やすことができる。このように、運転モードに応じて、部屋の換気制御を変更することができる。
【0110】
また、集中力運転モードと通常運転モードとのそれぞれにおいて、換気ファン13の第1上限回転数と第2上限回転数とを設定することにより、換気ファン13の回転数が上限値を超えた場合に、喚起を促す警告を出力することができる。このため、換気ファン13の回転数が上限に達した場合でも、部屋の二酸化炭素濃度を適切に維持することができる。
【0111】
また、上述した実施の形態では、ユーザの集中度の低下に伴い、第1目標二酸化炭素濃度を増大させる例について説明したが、これに限定されない。
【0112】
図8は、実施の形態2の変形例にかかる空気調和システム1Aの換気ファン13の回転数の制御動作を説明するフローチャートである。
図8に示すように、集中力運転モードにおいて、ステップS21~ステップS29は、
図4のステップS21~ステップS29と同様であるため、説明を省略する。
【0113】
ステップS24で、制御部14によりユーザの集中度が低下していないと判定した場合、ステップS30で、制御部14は、第1目標二酸化炭素濃度が第2目標二酸化炭素濃度以下であるか否かを判定する。制御部14により、第1目標二酸化炭素濃度が第2目標二酸化炭素濃度以下であると判定された場合(ステップS30のYes)、ステップS26に進む。制御部14により、第1目標二酸化炭素濃度が第2目標二酸化炭素濃度よりも大きいと判定された場合(ステップS30のNo)、制御部14は、第1目標二酸化炭素濃度を低下させる(ステップS31)。ステップS31において、第1目標二酸化炭素濃度は、例えば50ppmずつ低下させることができる。
【0114】
集中力運転モードにおいて、ユーザの集中度が低下していない場合に、段階的に第1目標二酸化炭素濃度を低下させることにより、集中度を低下させない範囲で目標二酸化炭素濃度を下げて部屋を換気することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本開示は、換気機能を有する空気調和システムに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1、1A 空気調和システム
11 集中度センサ
12 空気調和機
13 換気ファン
14 制御部
15 二酸化炭素センサ
16 操作端末