(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117724
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】プライマー組成物及び皮膜形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20230817BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230817BHJP
C09D 151/00 20060101ALI20230817BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230817BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230817BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20230817BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20230817BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/00 D
C09D151/00
C09D7/61
C09D201/00
B05D1/36 Z
B05D3/02 Z
B05D7/24 302T
B05D7/24 302P
B05D7/24 303B
B05D7/24 302Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020443
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶川 凌平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聖弥
(72)【発明者】
【氏名】嶋橋 克将
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 保紀
(72)【発明者】
【氏名】産一 盛裕
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AE03
4D075AE06
4D075BB16X
4D075BB21Z
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4D075EC03
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4J038CG141
4J038CH121
4J038CP111
4J038DG191
4J038DG261
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4J038MA06
4J038MA14
4J038NA11
4J038PA06
4J038PA07
(57)【要約】
【課題】基材と皮膜との間に塗布することにより、基材と皮膜との間に優れた密着性を付与することができるプライマー組成物、及び、基材表面に、密着性に優れた皮膜を形成することができる皮膜形成方法を提供する。
【解決手段】ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有するプライマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有するプライマー組成物。
【請求項2】
前記ウレタン変性アクリル樹脂は、アクリル樹脂にウレタン成分をグラフト化させた樹脂である、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記ウレタン変性アクリル樹脂は、前記ウレタン成分の比率が、前記ウレタン変性アクリル樹脂を100質量%として、10~80質量%である、請求項2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記ウレタン変性アクリル樹脂は、水酸基価が0~150KOHmg/gである、請求項1~3のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記ウレタン変性アクリル樹脂は、重量平均分子量が10000~100000である、請求項1~4のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項6】
前記コロイダルシリカは、有機溶剤分散型コロイダルシリカである、請求項1~5のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項7】
前記コロイダルシリカの平均粒子径は、1~50nmである、請求項1~6のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項8】
前記コロイダルシリカの含有量は、前記ウレタン変性アクリル樹脂を100質量部として、1~60質量部である、請求項1~7のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項9】
基材表面に皮膜を形成する皮膜形成方法であって、
(1)ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有するプライマー組成物を基材表面に塗布し、プライマー層を形成する工程1、
(2)前記プライマー層上に皮膜形成組成物を塗布して、皮膜形成組成物層を形成する工程2、及び、
(3)前記皮膜形成組成物層を加熱してシラノール基を有する皮膜を形成する工程3を有し、
前記プライマー組成物は、ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有する、皮膜形成方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載のプライマー組成物からなるプライマー層を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物及び皮膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等の基材表面に、基材に防錆性を付与すること等を目的として、化成皮膜が形成されている。このような化成皮膜には、防錆性の長期持続性を考慮して、基材への密着性が要求される。
【0003】
化成皮膜に基材への密着性を付与する方法として、例えば、合成樹脂成形品の表面に、塗料用樹脂とオルガノシリケート化合物とを含むプライマー組成物によりプライマー層を形成し、上記プライマー層の上にコーティング組成物を塗布して表面防汚層を形成することが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、プライマー組成物がアクリル樹脂、ウレタン樹脂等の塗料用樹脂、及び、オルガノシリケート化合物を含有することが開示されている。上記オルガノシリケート化合物は、加水分解の程度により密着性が影響され、プライマー層の上に積層されるコーティング組成物との密着性が十分でないという問題がある。
【0005】
従って、基材と皮膜との間に塗布することにより、基材と皮膜との間に優れた密着性を付与することができるプライマー組成物、及び、基材表面に、密着性に優れた皮膜を形成することができる皮膜形成方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基材と皮膜との間に塗布することにより、基材と皮膜との間に優れた密着性を付与することができるプライマー組成物、及び、基材表面に、密着性に優れた皮膜を形成することができる皮膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有するプライマー組成物、及び、当該プライマー組成物を用いた皮膜形成方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記のプライマー組成物及び皮膜形成方法に関する。
1.ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有するプライマー組成物。
2.前記ウレタン変性アクリル樹脂は、アクリル樹脂にウレタン成分をグラフト化させた樹脂である、項1に記載のプライマー組成物。
3.前記ウレタン変性アクリル樹脂は、前記ウレタン成分の比率が、前記ウレタン変性アクリル樹脂を100質量%として、10~80質量%である、項2に記載のプライマー組成物。
4.前記ウレタン変性アクリル樹脂は、水酸基価が0~150KOHmg/gである、項1~3のいずれかに記載のプライマー組成物。
5.前記ウレタン変性アクリル樹脂は、重量平均分子量が10000~100000である、項1~4のいずれかに記載のプライマー組成物。
6.前記コロイダルシリカは、有機溶剤分散型コロイダルシリカである、項1~5のいずれかに記載のプライマー組成物。
7.前記コロイダルシリカの平均粒子径は、1~50nmである、項1~6のいずれかに記載のプライマー組成物。
8.前記コロイダルシリカの含有量は、前記ウレタン変性アクリル樹脂を100質量部として、1~60質量部である、項1~7のいずれかに記載のプライマー組成物。
9.基材表面に皮膜を形成する皮膜形成方法であって、
(1)ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有するプライマー組成物を基材表面に塗布し、プライマー層を形成する工程1、
(2)前記プライマー層上に皮膜形成組成物を塗布して、皮膜形成組成物層を形成する工程2、及び、
(3)前記皮膜形成組成物層を加熱してシラノール基を有する皮膜を形成する工程3を有し、
前記プライマー組成物は、ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有する、皮膜形成方法。
10.項1~8のいずれかに記載のプライマー組成物からなるプライマー層を有する物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプライマー組成物は、基材と皮膜との間に塗布することにより、基材と皮膜との間に優れた密着性を付与することができる。また、本発明の皮膜形成方法は、基材表面に、密着性に優れた皮膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.プライマー組成物
本発明のプライマー組成物は、ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有するプライマー組成物である。一般に、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等の基材表面にシラノール基等を有する皮膜を形成する場合、シラノール基を有する皮膜では、基材表面の水酸基と皮膜のシラノール基との脱水縮合により酸素を介した共有結合を形成し、密着性を確保できる。金属材料、セラミックス材料等では、表面の酸化膜における水酸基の量によりシラノール基を有する皮膜との密着性が大きく異なるため、表面の水酸基が少ない基材では密着性が十分でないという問題がある。また、樹脂成分が水酸基を含有していないABS、PC、PET等の樹脂材料には密着性が確保できないという問題がある。
【0012】
本発明のプライマー組成物は、基材を構成する各種材料との密着性に優れたウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有する。上記ウレタン変性アクリル樹脂は、アクリル樹脂を密着性に優れたウレタン成分により変性した構成の樹脂であるので、本発明のプライマー組成物が基材との間で優れた密着性を示すことができる。また、本発明のプライマー組成物は、コロイダルシリカを含有するので、プライマー組成物を用いて形成したプライマー層にシラノール基を付与することができ、当該プライマー層上に形成されるシラノール基を有する皮膜との密着性を向上させることができる。
【0013】
更に、本発明のプライマー組成物は、コロイダルシリカを含有するので、プライマー層にアンカー効果を付与することができ、プライマー層上に形成されるシラノール基を有する皮膜との密着性を更に向上させることができる。
【0014】
以上より、本発明のプライマー組成物を基材と皮膜との間に用いることにより、基材と皮膜とを十分に密着させることができる。
【0015】
更に、本発明のプライマー組成物を基材と皮膜との間に塗布することにより、塗布しない場合と対比して、皮膜の耐摩耗性を向上させることができる。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
(ウレタン変性アクリル樹脂)
ウレタン変性アクリル樹脂としてはアクリル樹脂をウレタン成分により変性した構成の樹脂である。
【0018】
ウレタン変性アクリル樹脂としては、上記構成を備えていれば特に限定されないが、アクリル樹脂にウレタン成分をグラフト化させた樹脂を用いることが好ましい。このようなウレタン変性アクリル樹脂は、アクリル樹脂を主鎖とするアクリル主鎖に、ウレタン成分であるウレタン部分をグラフト化した構造が特徴であり、ウレタン部分はポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル等のどの成分であってもよい。
【0019】
上記ウレタン変性アクリル樹脂は、市販品を用いることができる。
【0020】
上記ウレタン変性アクリル樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
ウレタン変性アクリル樹脂は、ウレタン成分の比率が、ウレタン変性アクリル樹脂を100質量%として、10~80質量%が好ましく、15~60質量%がより好ましく、20~40質量%が更に好ましい。ウレタン成分の比率の下限が上記範囲であることにより、基材と皮膜との間に、より一層優れた密着性を付与することができる。ウレタン成分の比率の上限が上記範囲であることにより、プライマー層のクラックがより一層抑制される。
【0022】
ウレタン変性アクリル樹脂の水酸基価は、0~150KOHmg/gが好ましく、10~80KOHmg/gがより好ましく、30~70KOHmg/gが更に好ましい。水酸基価の下限が上記範囲であることにより、基材と皮膜との間に、より一層優れた密着性を付与することができる。水酸基価の上限が上記範囲であることにより、プライマー層の耐水性がより一層向上する。
【0023】
ウレタン変性アクリル樹脂の重量平均分子量は、10000~100000が好ましく、20000~80000がより好ましく、30000~50000が更に好ましい。重量分子量の下限が上記範囲であることにより、基材と皮膜との間に、より一層優れた密着性を付与することができる。重量分子量の上限が上記範囲であることにより、プライマー組成物の塗装性がより一層向上する。
【0024】
プライマー組成物中のウレタン変性アクリル樹脂の含有量は、プライマー組成物を100質量%として、0.5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~45質量%が更に好ましく、20~40質量%が特に好ましい。ウレタン変性アクリル樹脂の含有量の下限が上記範囲であることにより、基材と皮膜との間に、より一層優れた密着性を付与することができる。ウレタン変性アクリル樹脂の含有量の上限が上記範囲であることにより、プライマー層のクラックがより一層抑制される。
【0025】
(コロイダルシリカ)
コロイダルシリカとしては特に限定されず、水分散型コロイダルシリカ、疎水性コロイダルシリカ、有機溶剤分散型コロイダルシリカ等を用いることができる。これらの中でも、プライマー組成物が有機溶剤を含有する場合に、プライマー組成物中での分散性に優れる点で、有機溶剤分散型コロイダルシリカが好ましい。
【0026】
コロイダルシリカの平均粒子径は、1~400nmが好ましく、1~100nmがより好ましく、1~50nmがより好ましく、1~20nmが更に好ましく、5~15nmが特に好ましい。平均粒子径の下限が上記範囲であることにより、基材と皮膜との間に、より一層優れた密着性を付与することができる。平均粒子径の上限が上記範囲であることにより、プライマー層の透明性がより一層向上する。
【0027】
有機溶剤分散型コロイダルシリカは、市販品を用いることができる。
【0028】
上記コロイダルシリカは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
プライマー組成物中のコロイダルシリカの濃度は特に限定されず、プライマー組成物中のウレタン変性アクリル樹脂を100質量部として、0.5~80質量部が好ましく、1~70質量部がより好ましく、1~65質量部が更に好ましく、1~60質量部が特に好ましく、20~60質量部が最も好ましい。濃度の下限が上記範囲であることにより、基材と皮膜との間に、より一層優れた密着性を付与することができる。濃度の上限が上記範囲であることにより、プライマー層及び皮膜のクラックの発生がより一層抑制される。
【0030】
(有機溶剤)
本発明のプライマー組成物は、有機溶剤を含有していてもよい。
【0031】
有機溶剤としては特に限定されず、極性溶媒、非極性溶媒等を用いることができる。これらの中でも、よりコロイダルシリカ粒子の分散安定性に優れる点で、極性溶媒が好ましい。
【0032】
有機溶剤としては、具体的には、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、よりコロイダルシリカの分散安定性に優れる点で、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒が好ましく、これらの極性溶媒がより好ましい。
【0033】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ターシャリーブタノール、セカンダリーブチルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチルヘキシルアルコール、イソブタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0034】
グリコール系溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0035】
グリコールエーテル系溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等が挙げられる。
【0036】
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
【0037】
上記有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
プライマー組成物中の有機溶剤の含有量は特に限定されず、プライマー組成物を100質量%として20~90質量%が好ましく、30~85質量%がより好ましく、40~80質量%が更に好ましい。有機溶剤の含有量の下限が上記範囲であることにより、プライマー組成物の安定性がより向上し、且つ、塗布後の基材表面での過剰なコロイダルシリカの析出を抑制することができるため、より外観不良を抑制することができる。有機溶剤の含有量の上限が上記範囲であることにより、基材と皮膜との密着性がより向上する。
【0039】
(他の成分)
本発明のプライマー組成物は、上記ウレタン変性アクリル樹脂、及び、上記コロイダルシリカの他に、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、架橋促進剤等が挙げられる。
【0040】
上記架橋促進剤としては、イソシアネート化合物、有機金属化合物等を用いることができる。
【0041】
プライマー組成物中の他の成分の含有量としては、本発明の効果を阻害しなければ特に限定されず、本発明のプライマー組成物を100質量%として10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。また、他の成分の含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
【0042】
(プライマー組成物の製造方法)
上記プライマー組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、上記ウレタン変性アクリル樹脂に、上記コロイダルシリカ、及び、必要に応じて上記有機溶剤、他の成分を、上述の配合で順次添加して、撹拌する製造方法が挙げられる。
【0043】
撹拌する際のプライマー組成物の温度は特に限定されず、10~40℃程度の常温で撹拌すればよい。また、撹拌時間は、ウレタン変性アクリル樹脂にコロイダルシリカが均一に分散することができれば特に限定されず、1~120分程度とすればよい。
【0044】
(物品)
本発明は、また、上記プライマー組成物からなるプライマー層を有する物品でもある。このような物品としては、後述する皮膜形成方法における工程1により、基材表面にプライマー層が形成された物品が挙げられる。
【0045】
2.皮膜形成方法
本発明の皮膜形成方法は、基材表面に皮膜を形成する皮膜形成方法であって、
(1)ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有するプライマー組成物を基材表面に塗布し、プライマー層を形成する工程1、
(2)前記プライマー層上に皮膜形成組成物を塗布して、皮膜形成組成物層を形成する工程2、及び、
(3)前記皮膜形成組成物層を加熱してシラノール基を有する皮膜を形成する工程3を有し、
前記プライマー組成物は、ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有する皮膜形成方法である。以下、各工程について説明する。
【0046】
(工程1)
工程1は、ウレタン変性アクリル樹脂、及び、コロイダルシリカを含有するプライマー組成物を基材表面に塗布し、プライマー層を形成する工程である。プライマー組成物は、上記に説明した本発明のプライマー組成物を用いればよい。
【0047】
基材としては特に限定されず、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられる。また、これらの材料が組み合わせて用いられる二色成型品も基材として用いることができる。
【0048】
金属材料としては特に限定されず、例えば、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、クロム、コバルト、ニッケル、鉄、銅、錫、又は、これらの合金等が挙げられる。
【0049】
セラミックス材料としては特に限定されず、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、チタニア、フェライト、ほうろう等が挙げられる。
【0050】
樹脂材料としては特に限定されず、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ABS樹脂のブタジエンゴム成分がアクリルゴム成分に置き換わった樹脂(AAS樹脂)、ABS樹脂のブタジエンゴム成分がエチレン-プロピレンゴム成分等に置き換わった樹脂(AES樹脂)等のスチレン系樹脂が挙げられる。また、上記スチレン系樹脂とポリカーボネート(PC)樹脂とのアロイ化樹脂(例えば、PC樹脂の混合比率が30~70質量%程度のアロイ化樹脂)等も挙げられる。特に、ABS樹脂とポリカーボネート樹脂とのアロイ化樹脂(PC/ABS樹脂)、例えば、PC樹脂の混合比率が30~70質量%程度のアロイ化樹脂であるPC/ABS樹脂等も挙げられる。更に、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリブチレンテレフタラート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアミド樹脂等も挙げられる。また、上述の樹脂材料の表面に、クロムめっき等の金属めっき処理を施した樹脂材料も用いることができる。
【0051】
基材表面にプライマー組成物を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、バーコート等の公知の塗布方法により塗布すればよい。
【0052】
工程1による基材表面上のプライマー組成物の塗布量は特に限定されず、10~1000g/m2が好ましく、50~500g/m2がより好ましい。
【0053】
工程1による基材表面上のプライマー層の厚みは塗布量は特に限定されず、1~10μmが好ましく、2~5μmがより好ましい。
【0054】
以上説明した工程1により、基材表面にプライマー層が形成される。
【0055】
(工程2)
工程2は、前記プライマー層上に皮膜形成組成物を塗布して、皮膜形成組成物層を形成する工程である。
【0056】
皮膜形成組成物としては、後述する工程3において加熱によりシラノール基を有する皮膜を形成することができれば特に限定されない。このような皮膜形成組成物としては、例えば、アルコキシシラン、ケイ酸化合物、及びシリコーン変性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種、触媒、水、並びに溶媒を含有する皮膜形成組成物が挙げられる。
【0057】
上記アルコシキシランとしては特に限定されず、例えば、式:(R1)mSi(OR2)4―m(式中、R1は官能基、R2は低級アルキル基である。mは0~3の整数である)で表され、上記化学式において、官能基としては、ビニル、3-グリシドキシプロピル、3-グリシドキシプロピルメチル、2-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチル、p-スチリル、3-メタクリロキシプロピル、3-メタクリロキシプロピルメチル、3-アクリロキシプロピル、3-アミノプロピル、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチル、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピル、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピル、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピル、3-メルカプトプロピル、3-メルカプトプロピルメチル、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピル、3-プロピルコハク酸無水物等を例示できる。
【0058】
上記低級アルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル等の炭素数1~6程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。
【0059】
上記化学式で表されるアルコキシシランの具体例としては、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OC2H5)3、C2H5Si(OCH3)3、C2H5Si(OC2H5)4、CHCH2Si(OCH3)3、CH2CHOCH2O(CH2)3Si(CH3O)3、CH2C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3、CH2CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3、NH2(CH2)3Si(OCH3)3、SH(CH2)3Si(CH3)3、NCO(CH2)3Si(C2H5O)3を挙げることができる。
【0060】
上記アルコキシシランは、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂と混合して用いることができる。また、これらの樹脂のシリコーン変性樹脂を混合して用いてもよく、これらの中でも、シリコーン変性アクリル樹脂が好ましい。
【0061】
上記アルコキシシランは、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0062】
上記ケイ酸化合物としては特に限定されず、各種の公知のケイ酸化合物を用いることができる。ケイ酸化合物の具体例としては、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アンモニウム、ケイ酸コリン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ヘキサフルオロケイ酸等が挙げられる。
【0063】
上記ケイ酸化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
上記シリコーン変性樹脂としては特に限定されず、各種の公知のシリコーン変性樹脂を用いることができる。シリコーン変性樹脂の具体例としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂等のシリコーン変性樹脂が挙げられう、これらの中でも、シリコーン変性アクリル樹脂が好ましい。
【0065】
皮膜形成組成物は、水及び触媒を含有することが好ましい。これによりアルコキシシリル基が加水分解し、後述する工程3によりシラノール基を有する皮膜を形成することができる。
【0066】
触媒としては、酸、塩基、有機金属化合物等を用いることができる。
【0067】
上記酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸等が挙げられる。
【0068】
上記塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0069】
上記有機金属化合物としては、例えば、金属成分として、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、錫などを含む水溶性の有機金属キレート化合物、金属アルコキシド等を用いることができる。
【0070】
上記有機金属化合物のうち、有機チタン化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラオクチルチタネート等のチタンアルコキシド化合物;チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジオクチロキシビスエチルアセトアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンジイソプロポキシビスエチルアセチルアセトネート、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネート等のチタンキレート化合物等が挙げられる。有機ジルコニウム化合物としては、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド化合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート等のジルコニウムキレート化合物が挙げられる。有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート等のアルミニウムアルコキシド化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物が挙げられる。
【0071】
上記触媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
上記触媒の含有量は特に限定的されず、皮膜形成組成物を100質量%として、通常、0.01~50質量%程度とすればよく、0.1~20質量%程度とすることが好ましい。
【0073】
水の含有量は、通常、皮膜形成組成物を100質量%として、0.1~50質量%程度とすればよい。
【0074】
溶媒としては、アルコキシシリル基が有機溶剤中で加水分解、縮重合反応を起こさせることができれば特に限定されず、アルコール系、グリコール系、グリコールエーテル系、グリコールエステル系、エーテル系、エーテルアルコール系、ケトン系等の溶剤を用いることができる。
【0075】
溶剤の含有量は、上記成分を溶解させることができれば特に限定されず、皮膜形成組成物を100質量%として、1~95質量%程度とすればよい。
【0076】
プライマー層上に皮膜形成組成物を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、バーコート等の公知の塗布方法により塗布すればよい。
【0077】
工程2による皮膜形成組成物の塗布量は特に限定されず、10~1000g/m2が好ましく、50~500g/m2がより好ましい。
【0078】
以上説明した工程2により、プライマー層上に皮膜形成組成物層が形成される。
【0079】
(工程3)
工程3は、皮膜形成組成物層を加熱して、シラノール基を有する皮膜を形成する工程である。工程3において皮膜形成組成物層を加熱することにより、皮膜形成組成物中の溶媒を揮発させるとともにシラノール基を有する皮膜を形成することができる。
【0080】
加熱の方法としては、工程2で形成された皮膜形成組成物層の溶媒を揮発させることができ、シラノール基を有する皮膜とすることができれば特に限定されず、基材表面に形成されたプライマー層及び皮膜形成組成物層を、基材及びプライマー層ごと恒温槽に入れる方法、基材及びプライマー層ごと乾燥機に入れる方法等の方法により加熱することができる。
【0081】
加熱温度は、20℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、加熱温度は、300℃以下が好ましく250℃以下がより好ましい。
【0082】
加熱時間は特に限定されず、3分以上が好ましく、5分以上がより好ましい。また、加熱時間は、120分以下が好ましく60分以下がより好ましい。
【0083】
工程3により形成される皮膜の厚みは特に限定されず、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。また、皮膜の厚みは0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。皮膜の厚みの上限が上記範囲であることにより、皮膜が透明であることとあいまって、基材により優れた防錆性を付与できるとともに、基材の外観の低下が抑制される。皮膜の厚みの下限が上記範囲であることにより、基材により優れた防錆性を付与することができる。
【0084】
以上説明した工程3により、皮膜形成組成物層が加熱されて、シラノール基を有する皮膜が形成される。
【実施例0085】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0086】
なお、実施例及び比較例で用いる原料として、以下の原料を用意した。
【0087】
[プライマー組成物]
(樹脂成分)
・ウレタン変性アクリル樹脂:ウレタン成分をグラフト化させたウレタン変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂100質量%中のウレタン成分の比率30質量%、水酸基価30KOHmg/g、分子量40000
・アクリルポリオール:水酸基価60KOHmg/g、分子量50000
・アクリルポリオール+イソシアネート硬化剤:アクリルポリオールとイソシアネート硬化剤とを反応させた樹脂、 水酸基価60KOHmg/g、分子量50000
【0088】
(コロイダルシリカ)
・平均粒子径が10nmのコロイダルシリカ:有機溶剤分散型コロイダルシリカ
・平均粒子径が50nmのコロイダルシリカ:有機溶剤分散型コロイダルシリカ
・平均粒子径が100nmのコロイダルシリカ:有機溶剤分散型コロイダルシリカ
【0089】
(有機溶剤)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0090】
[皮膜形成組成物]
(樹脂成分)
・シリコーン変性アクリル樹脂
(溶媒)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0091】
[基材]
・クロムめっき処理品:クロムめっき処理直後の処理品、及び、クロムめっき処理を施してから3ヶ月経過した処理品を用意した。
・ガラス
・ABS樹脂
・PC樹脂
【0092】
(プライマー組成物の調製)
表1~3に示す樹脂を100g用意した。当該樹脂を100質量部として、表1~3に示す配合となるようコロイダルシリカ及び溶媒を用意し、これらを用いて実施例及び比較例のプライマー組成物を調製した。具体的には、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルに樹脂成分を溶解させ、コロイダルシリカを添加して、25℃で30分間撹拌することにより行った。
【0093】
(皮膜形成組成物の調製)
表1~3に示す配合により、実施例及び比較例の皮膜形成組成物を調製した。具体的には、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルにシリコーン変性アクリル樹脂を溶解させ、皮膜形成組成物を調製した。
【0094】
(プライマー層の形成)
基材表面にプライマー組成物を100g/m2の塗布量でスプレー塗布し、室温で10分間放置して、プライマー層を形成した。プライマー層の厚みは3μmであった。
【0095】
(皮膜形成組成物層の形成)
プライマー層上に皮膜形成組成物を200g/m2の塗布量でスプレー塗布し、皮膜形成組成物層を形成した。皮膜形成組成物層の厚みは5μmであった。
【0096】
(皮膜の形成)
皮膜形成組成物層を加熱して、皮膜を形成した。具体的には、基材と、当該基材表面に形成された、プライマー層及び皮膜形成組成物層が積層された積層体とを、恒温槽を用いて80℃、30分の条件で加熱して、皮膜を形成した。皮膜の厚みは10μmであった。
【0097】
上記実施例及び比較例で皮膜が形成された基材について、下記評価を行った。
【0098】
密着性評価
皮膜の密着性を、JIS K 5600-5-6に準拠した測定方法により測定し、下記評価基準に従って評価した。
○:剥がれが生じた
×:剥がれが生じなかった
【0099】
外観評価
基材表面にプライマー層、及び皮膜が形成された積層体の外観を皮膜側から目視で観察し、クラックの発生、及び、透明性を下記評価基準に従って評価した。
(クラック)
○:クラックが見られなかった
△:一部にクラックが見られた
×:全面にクラックが見られた
(透明性)
○:透明であった
△:半透明であった
×:透明性を示さなかった
【0100】
結果を表1~3に示す。
【0101】
【0102】
【0103】