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特開2023-117728化粧シート及び化粧シートの製造方法
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  • 特開-化粧シート及び化粧シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117728
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230817BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230817BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 101
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020448
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】塩田 歩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彩加
【テーマコード(参考)】
2C056
4F100
【Fターム(参考)】
2C056FC06
4F100AK01C
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EC03
4F100HB31B
4F100JB16C
4F100JD09B
4F100JN01C
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】意匠性の低下と環境負荷の増加を抑制することが可能な化粧シートと、化粧シートの製造方法を提供する。
【解決手段】
基材層2と、基材層2に積層され、且つ水性インクを用いてインクジェット法により形成された印刷層3と、印刷層3に積層された透明熱可塑性樹脂層4とを備える化粧シート1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層に積層され、且つ水性インクを用いて形成された印刷層と、
前記印刷層に積層された透明熱可塑性樹脂層と、を備える化粧シート。
【請求項2】
前記印刷層の最も厚い部分の厚さと、前記印刷層の最も薄い部分の厚さと、の差は、5μm以下である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
前記透明熱可塑性樹脂層は、前記印刷層と接した状態で印刷層に積層されている請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。
【請求項4】
前記基材層は、塩化ビニル系樹脂を用いて形成されている請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項5】
基材層と、
前記基材層に積層され、且つ水性インクを用いて形成された印刷層と、
前記印刷層に積層された透明熱可塑性樹脂層と、を備える化粧シートの製造方法であって、
前記印刷層は、インクジェット法を用いて形成されており、前記印刷層と前記透明熱可塑性樹脂層は熱融着により積層されている化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートと、化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
壁材や床材等の装飾に用いられる化粧シートとして、例えば、特許文献1に開示されている化粧シートが提案されている。
特許文献1に開示されている化粧シートは、塩化ビニル系樹脂を用いて形成した基材層と、光硬化性のインクを用いて形成され、基材層に積層された印刷層と、印刷層に積層された接着層を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-196173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている化粧シートは、印刷層を、光硬化性のインクを用いて形成しているため、印刷層の表面に凹凸部が形成される。そして、凹凸部を接着層によって平坦にしている。
しかしながら、接着層を備える構成の化粧シートは、凹凸部によって接着層の厚さがばらつくため、意匠性が低下する可能性がある。
接着層を備えてない構成の化粧シートとしては、溶剤系のインクを用いて印刷層を形成した化粧シートが提案されているが、溶剤系のインクは、光硬化性のインク等と比較して、環境負荷が増加する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を鑑み、意匠性の低下と環境負荷の増加を抑制することが可能な化粧シートと、化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材層と、基材層に積層され、且つ水性インクを用いて形成された印刷層と、印刷層に積層された透明熱可塑性樹脂層とを備える化粧シートである。
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材層と、基材層に積層され、且つ水性インクを用いて形成された印刷層と、印刷層に積層された透明熱可塑性樹脂層とを備える化粧シートの製造方法である。そして、印刷層は、インクジェット法を用いて形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、意匠性の低下と環境負荷の増加を抑制することが可能な化粧シートと、化粧シートの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態における化粧シートの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
(第一実施形態)
以下、図1を参照して、化粧シート1の構成について説明する。
図1に示すように、化粧シート1は、基材層2と、印刷層3と、透明熱可塑性樹脂層4を備える。
<基材層>
基材層2は、例えば、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル)を用いて形成されている。
【0011】
<印刷層>
印刷層3は、基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されている。
また、印刷層3は、水性インクを用いて形成されている。
印刷層3を形成する水性インクとしては、例えば、LIOJETAPシリーズ(東洋インキ製)を用いる。
印刷層3を形成する方法としては、例えば、インクジェット法を用いる。
印刷層3によって形成する絵柄は、例えば、木目柄や石目柄である。
図示を省略するが、印刷層3には、厚さの異なる部分が存在する。
印刷層3の最も厚い部分の厚さと、印刷層3の最も薄い部分の厚さとの差は、5[μm]以下である。
印刷層3の厚さは、例えば、3[μm]以上10[μm]以下の範囲内に設定する。
【0012】
<透明熱可塑性樹脂層>
透明熱可塑性樹脂層4は、印刷層3と接した状態(例えば、印刷層3と面接触した状態)で、印刷層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、印刷層3を保護することで、耐磨耗性や耐溶剤性等の良好な表面物性を付与するための層である。なお、透明熱可塑性樹脂層4の上(図1では、上側の面の上)には、耐傷性等、物性のさらなる向上のために、表面保護層を設けても良い。
透明熱可塑性樹脂層4は、例えば、透明な塩化ビニル系樹脂(透明なポリ塩化ビニル)を用いて形成されている。
透明熱可塑性樹脂層4を形成する方法としては、例えば、熱融着を用いる。
【0013】
<化粧シートの製造方法>
化粧シート1の製造方法について、一例を挙げて説明する。
まず、塩化ビニル系樹脂等の樹脂材料を、例えば、押出機から押し出し、冷却ロールで冷却してフィルム状の基材層2を形成する。
次に、基材層2の一方の面に、インクジェット法を用いて水性インクを塗布し、塗布した水性インクを硬化させて、印刷層3を形成する。そして、印刷層3の一方の面に、透明なポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂材料を用いて形成したフィルムを熱融着させて、透明熱可塑性樹脂層4を形成する。
なお、各層を形成する際に、塗工面に対してコロナ処理等の表面処理を行っても良い。
以上により、基材層2、印刷層3、透明熱可塑性樹脂層4を備える化粧シート1を製造する。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0014】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)基材層2と、基材層2に積層され、且つ水性インクを用いて形成された印刷層3と、印刷層3に積層された透明熱可塑性樹脂層4とを備える。
このため、印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4との密着性が低下する要因となる、印刷層3の表面に形成される凹凸部が、水性インクを用いて印刷層3を形成することで減少する。これにより、印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4との間に浮きが生じ、浮きが生じた部分が白く見えてしまうことで、印刷層3に形成された印刷柄が白化したように見えてしまうことを、低減させることが可能となる。なお、「浮き」とは、印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4との間に空間ができてしまうことである。
これに加え、水性インクを用いて印刷層3を形成することで、溶剤系等、環境に与える負荷が大きい材料を用いて印刷層3を形成した場合と比較して、環境負荷の増加を抑制することが可能となる。
その結果、意匠性の低下と環境負荷の増加を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる。
【0015】
また、印刷層3の表面が平滑な面になることで、印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4との接着面積が増加して、印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4との接着力を向上させることが可能となる。
さらに、印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4との間に、接着層としてのプライマー層を形成する工程を省略することが可能となり、プライマー層を形成する構成と比較して、製造工程と材料の削減が可能となる。これに加え、プライマー層を形成する構成と比較して、化粧シート1の意匠性が低下する可能性を低減させることが可能となる。
【0016】
(2)印刷層3の最も厚い部分の厚さと、印刷層3の最も薄い部分の厚さと、の差は、5μm以下である。
その結果、印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4との密着性が低下する要因となる、印刷層3の表面に形成される凹凸部が減少し、印刷層3に形成された印刷柄が白化したように見えてしまうことを、低減させることが可能となる。
【0017】
(3)透明熱可塑性樹脂層4は、印刷層3と接した状態で、印刷層3に積層されている。
その結果、透明熱可塑性樹脂層4と印刷層3との間に空間が形成されている状態で、透明熱可塑性樹脂層4が印刷層3に積層されている構成と比較して、透明熱可塑性樹脂層4による、印刷層3を保護する能力を向上させることが可能となる。
【0018】
(4)基材層2は、塩化ビニル系樹脂を用いて形成されている。
その結果、一般的な材料を用いて、基材層2を形成することが可能となる。
(5)透明熱可塑性樹脂層4は、透明な塩化ビニル系樹脂を用いて形成されている。
その結果、一般的な材料を用いて、透明な透明熱可塑性樹脂層4を形成することが可能となる。
【0019】
また、第一実施形態の化粧シートの製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(6)印刷層3は、インクジェット法を用いて形成されており、印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4は熱融着により積層されている。
このため、基材層2へ印刷層3を形成する工程を、インクジェット法を用いて水性インクで行うことで、プライマー層を形成することなく、印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4との密着性を向上させることが可能となる
【0020】
その結果、意匠性の低下と環境負荷の増加を抑制することが可能な化粧シートの製造方法を提供することが可能となる。
さらに、プライマー層を形成する方法と比較して、接着層としてのプライマー層を形成する工程を省略することが可能となり、製造工程の簡略化が可能となる。これに加え、プライマー層を形成する方法と比較して、化粧シート1の意匠性が低下する可能性を低減させることが可能となる。
【実施例0021】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例1及び2の化粧シートと、比較例1から6の化粧シートについて説明する。
(実施例1)
基材層は、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル)を用いて形成した。
印刷層は、基材層の一方の面に、インクジェット法(IJ)を用いて、水性インクを用いて形成した。また、印刷層によって形成する絵柄は、木目柄とした。
透明熱可塑性樹脂層は、透明な塩化ビニル系樹脂フィルム(ポリ塩化ビニル)を用いて、熱融着により形成した。
(実施例2)
印刷層によって形成する絵柄を石目柄とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の化粧シートを形成した。
【0022】
(比較例1)
印刷層を、インクジェット法を用いて、紫外線硬化性のインク(UV)を用いて形成した点と、印刷層と透明熱可塑性樹脂層との間にプライマー層を形成した点とを除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の化粧シートを形成した。
(比較例2)
印刷層を、グラビア印刷法(GR)を用いて、溶剤系のインクを用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例2の化粧シートを形成した。
【0023】
(比較例3)
印刷層を、インクジェット法を用いて、紫外線硬化性のインクを用いて形成した点と、印刷層と透明熱可塑性樹脂層との間にプライマー層を形成した点を除き、実施例2と同様に形成して、比較例3の化粧シートを形成した。
(比較例4)
印刷層によって形成する絵柄を石目柄とした点を除き、比較例2と同様に形成して、比較例4の化粧シートを形成した。
【0024】
(比較例5)
印刷層を、インクジェット法を用いて、紫外線硬化性のインクを用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例5の化粧シートを形成した。
(比較例6)
印刷層を、インクジェット法を用いて、紫外線硬化性のインクを用いて形成した点を除き、実施例2と同様に形成して、比較例6の化粧シートを形成した。
【0025】
(性能評価、評価結果)
実施例1及び2の化粧シートと、比較例1から6の化粧シートに対し、それぞれ、意匠性、環境負荷、製造効率を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0026】
<意匠性>
それぞれの化粧シートに対し、公知のグラビア印刷で作成したサンプルとなる化粧シートの意匠性との目視による比較により、意匠性を評価した。
評価基準としては、優れている場合を「◎」、良好な場合を「○」、製品としての品質を満足していない場合を「×」と評価した。
【0027】
<環境負荷>
それぞれの化粧シートに対し、印刷層を形成する材料によって環境へ及ぼす影響を考察し、環境負荷を評価した。
評価基準としては、環境へ及ぼす影響が無い場合を「◎」、環境へ及ぼす影響が少ない場合を「〇」、環境へ及ぼす影響が有る場合を「×」と評価した。
【0028】
<製造効率>
それぞれの化粧シートに対し、製造工程の多さと、材料の数を比較して、製造効率を評価した。
評価基準としては、製造工程の工程数と材料の数が最も少ない場合を「◎」、製造工程の多さ及び材料の数において劣る場合を「×」と評価した。
【0029】
【表1】
【0030】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1及び2の化粧シートは、全ての評価試験に対して、優れた性能を示した。一方、比較例1から6の化粧シートは、全ての評価試験に対しては、優れた性能を示すことが不可能であった。
特に、実施例1及び2の化粧シートは、比較例5及び6の化粧シートと比較して、印刷層と透明熱可塑性樹脂層との間に形成される隙間が小さいことで、意匠性が優れていることが確認された。また、比較例5及び6の化粧シートは、絵柄によって形成される濃淡の境目部分において、白化が発生しているように見えることが確認された。
【0031】
また、比較例5及び6の化粧シートでは、紫外線硬化性のインクを用いて印刷層を形成しているため、印刷層における、最も厚い部分の厚さと最も薄い部分の厚さとの差が、絵柄における濃色の部分で約15[μm]以上20[μm]以下の範囲内となり、絵柄における淡色の部分で約7[μm]以上10[μm]以下の範囲内となる。
これに対し、実施例1及び2の化粧シートでは、水性インクを用いて印刷層を形成しているため、印刷層における、最も厚い部分の厚さと最も薄い部分の厚さとの差が、絵柄における濃色の部分と淡色の部分で、それぞれ、5[μm]以下となり、印刷層と透明熱可塑性樹脂層との間に形成される隙間が小さくなるため、意匠性が向上する。
【0032】
また、比較例1、3、5、6の化粧シートでは、紫外線硬化性のインクを用いて印刷層を形成しており、比較例2及び4の化粧シートに関しては、溶剤系のインクを用いて印刷層を形成しているため、実施例1及び2の化粧シートと異なり、環境へ影響を及ぼす要素が存在する。
【0033】
また、比較例1及び3の化粧シートでは、プライマー層を形成していることで、実施例1及び2の化粧シートと比較して、製造工程が増加するとともに、材料の数が増加する。
【符号の説明】
【0034】
1…化粧シート、2…基材層、3…印刷層、4…透明熱可塑性樹脂層
図1