(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117732
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】バイオマス発電プラント、及び、バイオマス発電用の付加系統
(51)【国際特許分類】
F01K 27/00 20060101AFI20230817BHJP
F02B 45/08 20060101ALI20230817BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20230817BHJP
F22B 37/00 20060101ALI20230817BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
F01K27/00 Z
F02B45/08
F01N5/02 A
F22B37/00 Z
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020453
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内田 聡
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】船見 立朗
(72)【発明者】
【氏名】永冨 学
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 潤
【テーマコード(参考)】
3G081
5G066
【Fターム(参考)】
3G081BA01
3G081BC30
5G066HA17
5G066HB01
5G066HB08
5G066JB06
5G066KA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プラント全体の発電効率の向上を図りつつ、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減したバイオマス発電プラント及びバイオマス発電用の付加系統を提供する。
【解決手段】バイオマス発電プラント1は、バイオマスボイラ3、バイオマスボイラから供給される蒸気を駆動源とする蒸気タービン4及び蒸気タービンの駆動により発電するための第1発電機11を含む第1発電系統10と、バイオマスからバイオガスを生成するためのガス化炉24及びガス化炉から供給されるバイオガスを用いて発電するためのバイオガス発電装置を含む第2発電系統20とを備える。第1発電系統は、バイオマスボイラを駆動するための補機装置50及び補機装置に動力を付与するための補機モータ55をさらに含む。第2発電系統は、バイオガス発電装置によって生成される電力を補機モータに供給するためのモータ給電ライン63をさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスボイラと、前記バイオマスボイラから供給される蒸気を駆動源とする蒸気タービンと、前記蒸気タービンの駆動により発電するための第1発電機とを含む第1発電系統と、
バイオマスからバイオガスを生成するためのガス化炉と、前記ガス化炉から供給される前記バイオガスを用いて発電するためのバイオガス発電装置とを含む第2発電系統と
を備え、
前記第1発電系統は、
前記バイオマスボイラを駆動するための補機装置と、
前記補機装置に動力を付与するための補機モータと
をさらに含み、
前記第2発電系統は、
前記バイオガス発電装置によって生成される電力を前記補機モータに供給するためのモータ給電ラインを含む
バイオマス発電プラント。
【請求項2】
前記第2発電系統は、
前記モータ給電ラインと並列に設けられ、蓄エネ機器にエネルギーを供給するための供給機器に前記バイオガス発電装置によって生成された前記電力を供給するための別給電ラインと、
前記モータ給電ラインへの前記電力の供給量と、前記別給電ラインへの前記電力の供給量と、を調整するための電力調整部と
をさらに含む請求項1に記載のバイオマス発電プラント。
【請求項3】
前記供給機器は、前記蓄エネ機器としての電池に前記電力を供給するように構成される充電器を含む
請求項2に記載のバイオマス発電プラント。
【請求項4】
前記充電器は、電動車両を駆動するための前記電池としての車両用バッテリーに、前記電力を供給するように構成される請求項3に記載のバイオマス発電プラント。
【請求項5】
前記供給機器は、貯水タンクと、貯水タンク内の水を前記別給電ラインから供給される前記電力によって加熱するためのヒータとを有し、前記蓄エネ機器としてのタンクに温水を供給するように構成される温水器を含む
請求項2乃至4の何れか1項に記載のバイオマス発電プラント。
【請求項6】
前記電力調整部は、前記第1発電系統に接続される送電系統が停電した場合に、前記バイオガス発電装置によって生成された前記電力の全量を前記別給電ラインへ供給するように構成される
請求項2乃至5の何れか1項に記載のバイオマス発電プラント。
【請求項7】
前記バイオガス発電装置は、
前記ガス化炉から供給される前記バイオガスを燃料とするガスエンジンと、
前記ガスエンジンの駆動により発電するための第2発電機とを有し、
前記第2発電系統は、前記ガスエンジンの排熱を利用して水を加熱するための給水ヒータとをさらに含む
請求項1乃至6の何れか1項に記載のバイオマス発電プラント。
【請求項8】
前記第2発電系統は、前記給水ヒータによって加熱された前記水を熱源として、前記ガス化炉に供給される前記バイオマスに加熱処理を施すための加熱装置をさらに含む
請求項7に記載のバイオマス発電プラント。
【請求項9】
前記ガス化炉は、前記バイオマスボイラに供給されるバイオマスと同一種類のバイオマスによって作動可能に構成される
請求項1乃至8の何れか1項に記載のバイオマス発電プラント。
【請求項10】
前記第2発電系統に単位時間あたりに供給される前記バイオマスの量は、前記第1発電系統に前記単位時間あたりに供給される前記バイオマスの量よりも少ない
請求項1乃至9の何れか1項に記載のバイオマス発電プラント。
【請求項11】
バイオマスボイラから供給される蒸気を駆動源として蒸気タービンが回転することで発電するように構成される発電系統であって、前記バイオマスボイラを駆動するための補機装置と、前記補機装置に動力を付与するための補機モータとを備える発電系統に追設されるバイオマス発電用の付加系統であって、
バイオマスからバイオガスを生成するためのガス化炉と、
前記ガス化炉から供給される前記バイオガスを用いて発電するためのバイオガス発電装置と、
前記バイオガス発電装置によって生成される電力を前記補機モータに供給するためのモータ給電ラインと
を備えるバイオマス発電用の付加系統。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオマス発電プラント、及び、バイオマス発電用の付加系統に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるバイオマス発電プラントでは、木屑、食品残渣、または畜糞等といったバイオマスを利用した発電が行われる。詳細には、バイオマスをガス化して得られるバイオガスを燃料としてスターリングエンジンが駆動し、スターリングエンジンに連結される発電機が稼働する。また、スターリングエンジンの排熱を利用して排熱ボイラが蒸気を生成し、該蒸気によって蒸気タービンが回転する。これにより、蒸気タービンに連結される別の発電機が稼働する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボイラを駆動するための補機装置を駆動するモータの電力の少なくとも一部は、例えばバイオマス発電プラントの起動運転時において、外部電源系統によってまかなわれる。外部電源系統が化石燃料を燃焼させて得られる電力を供給するのであれば、バイオマス発電プラントの運転に伴う環境負荷は大きくなる。また、外部電源系統が被災するなどして電力供給が途絶えると、バイオマス発電プラントの安定的な運転が困難となる。従って、外部電源系統への依存は低い方が好ましい。
【0005】
本開示の目的は、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減したバイオマス発電プラント、及び、バイオマス発電用の付加系統を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るバイオマス発電プラントは、
バイオマスボイラと、前記バイオマスボイラから供給される蒸気を駆動源とする蒸気タービンと、前記蒸気タービンの駆動により発電するための第1発電機とを含む第1発電系統と、
バイオマスからバイオガスを生成するためのガス化炉と、前記ガス化炉から供給される前記バイオガスを用いて発電するためのバイオガス発電装置とを含む第2発電系統(補機用補助発電系統)と
を備え、
前記第1発電系統は、
前記バイオマスボイラを駆動するための補機装置と、
前記補機装置に動力を付与するための補機モータと
をさらに含み、
前記第2発電系統は、
前記バイオガス発電装置によって生成される電力を前記補機モータに供給するためのモータ給電ラインを含む。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係るバイオマス発電プラントは、
バイオマスボイラから供給される蒸気を駆動源として蒸気タービンが回転することで発電するように構成される発電系統であって、前記バイオマスボイラを駆動するための補機装置と、前記補機装置に動力を付与するための補機モータとを備える発電系統に追設されるバイオマス発電用の付加系統であって、
バイオマスからバイオガスを生成するためのガス化炉と、
前記ガス化炉から供給される前記バイオガスを用いて発電するためのバイオガス発電装置と、
前記バイオガス発電装置によって生成される電力を前記補機モータに供給するためのモータ給電ラインと
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減したバイオマス発電プラント、及び、バイオマス発電用の付加系統を提供できる。また、本開示の幾つかの実施形態では、プラント全体の発電効率の向上を実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るバイオマス発電プラントを示す概略図である。
【
図2A】一実施形態に係るモータ給電ラインと別給電ラインを示す概略図である。
【
図2B】他の実施形態に係るモータ給電ラインと別給電ラインを示す概略図である。
【
図3】一実施形態に係る供給機器の構成を示す概略図である。
【
図4】一実施形態に係るガスエンジンの排熱利用を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0011】
<1.バイオマス発電プラント1の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係るバイオマス発電プラント1を示す概略図である。バイオマス発電プラント1は、バイオマスを利用して発電するように構成される。バイオマスは、動植物から得られる有機性の資源であり、例えば、木質バイオマス、農林水産物、食品廃棄物、または家畜排せつ物などである。バイオマス発電プラント1で利用されるバイオマスは何であってもよいが、以下の説明では木質バイオマス(より詳細には木屑)により発電がなされる実施形態を例示する。
【0012】
バイオマス発電プラント1は、少なくとも2つの発電系統を備える。1つ目の発電系統は、バイオマスの燃焼から得られる熱エネルギーを蒸気タービン4の回転エネルギーに変換して発電する第1発電系統10である。第1発電系統10によって生成される電力(以下、第1電力ともいう)は、例えば送電網であってもよい送電系統9に供給される。2つ目の発電系統は、バイオマスから得られるバイオガスの燃焼によってバイオガス発電装置23を駆動して発電する第2発電系統20である。第2発電系統20によって生成される電力(以下、第2電力ともいう)は、後述の補機モータ55に供給される。つまり、第2発電系統20は第1発電系統10の補機用補助発電系統である。また、
図1の例では、第2電力は補機モータ55のみならず上述の送電系統9と後述の供給機器30とにも供給される。
【0013】
補機モータ55に供給される電力は主に第2電力によってまかなわれるが、例えばバイオマス発電プラント1の起動時などの特定の期間においては、外部電源系統(図示外)から供給される電力によってまかなわれてもよい。外部電源系統は、火力発電所で発電された電力を供給してもよいし、風力発電所、太陽光発電所、または潮汐発電所など再生可能エネルギー利用型の発電所で発電された電力を供給してもよい。
【0014】
<2.第1発電系統10の詳細>
図1で例示される第1発電系統10は、バイオマスを燃料とするバイオマスボイラ3と、バイオマスボイラ3から供給される蒸気を駆動源とする蒸気タービン4と、蒸気タービン4の駆動により発電するための第1発電機11と、第1発電機11によって生成された電力を送電系統9に供給するための第1給電ライン61とを含む。
【0015】
バイオマスボイラ3は、バイオマス供給装置81から供給されるバイオマスを燃焼させるための火炉39を備える。バイオマスの燃焼で得られる熱エネルギーによって、バイオマスボイラ3では蒸気(過熱蒸気)が生成される。蒸気は蒸気供給ラインL1を経由して蒸気タービン4に供給されて、蒸気タービン4は回転する。これにより、蒸気タービン4に連結される第1発電機11は発電する。蒸気タービン4から排出される蒸気は、復水器6にて復水されて、ボイラ給水ラインL2を経由して火炉39に戻る。ボイラ給水ラインL2には、復水を火炉39に送出するための給水ポンプ7が設けられている。
【0016】
なお、概略図としての
図1では、ボイラ給水ラインL2における各種装置の図示が省略されている。例えば、給水ポンプ7の上流には復水を脱気するための脱気器が設けられており、脱気器と復水器6との間には、復水を脱気器に送出するための脱気器給水ポンプが設けられる。また、脱気器給水ポンプの上流には復水を加熱するための給水加熱器が設けられており、給水加熱器と復水器6との間には、復水を給水加熱器に送出するための復水ポンプが設けられる。給水ポンプ7、脱気器給水ポンプ、及び、復水ポンプは復水をバイオマスボイラ3に供給するためのポンプであり、バイオマスボイラ3が駆動するための補機装置50として機能する。
【0017】
火炉39の内部でバイオガスの燃焼により発生する排ガスは、煙道17、空気予熱器14、及び、バグフィルタ18を順に通過する。排ガスに含まれるダストはバグフィルタ18によって集塵され、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)19は、バグフィルタ18から排ガスを吸引して排気筒8へ送出する。空気予熱器14は、押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)12によって送出される空気を、煙道17を通過した排ガスを熱源として加熱するように構成される。空気予熱器14から排出される加熱された空気は、バイオマスの燃焼用空気(燃焼用ガス)としてバイオマスボイラ3に供給される。なお、上記の誘引通風機19と押込通風機12は、ガス(排ガスまたは燃焼用ガス)を吸引または送出する通風機であり、バイオマスボイラ3が駆動するための補機装置50として機能する。
【0018】
上記のように幾つかの実施形態では、第1発電系統10の構成要素である補機装置50は、給水ポンプ7、脱気器給水ポンプ、及び、復水ポンプなどのポンプと、誘引通風機19及び押込通風機12などの通風機とを含む。そして、第1発電系統10は、これら補機装置50に動力を付与するための補機モータ55をさらに備える。概略図としての
図1では図面を見やすくする都合、補機装置50から離れた位置にて補機モータ55を図示している。また、補機モータ55は単数である必要はなく、各々の補機装置50に搭載されてもよい。
【0019】
<3.第2発電系統20の詳細>
図1で例示される第2発電系統20は、バイオマス供給装置81から供給されるバイオマスを加熱処理するための加熱装置21と、加熱処理されたバイオマスからバイオガスを生成するためのガス化炉24と、ガス化炉24から供給されるバイオガスを用いて発電するためのバイオガス発電装置23とを含む。
【0020】
本例の加熱装置21は一例として乾燥庫である。本例では、加熱された空気に木質バイオマスが晒されることにより、加熱処理(乾燥処理)は実行される。ガス化炉24は、加熱装置21で加熱処理されたバイオマスに更なる加熱処理を施す。該加熱処理は一例として蒸し焼きであり、ガス化炉24内で蒸し焼きされるバイオマスは熱分解し、バイオガスが生成される。ガス化炉24から排出されるバイオガスは、例えば防塵装置26を経由してバイオガス発電装置23に供給される。
【0021】
図1で例示されるバイオガス発電装置23は、ガス化炉24から防塵装置26を経由して供給されるバイオガスを燃料とするガスエンジン25と、ガスエンジン25の駆動により発電するための第2発電機22とを有する。第2発電機22は、ガスエンジン25に連結されており、ガスエンジン25の駆動に伴い発電する。これにより、第2電力が生成される。
【0022】
本例の第2発電系統20は、第2電力を送電系統9に供給するための第2給電ライン62と、第2給電ライン62と補機モータ55とに接続されるモータ給電ライン63と、モータ給電ライン63と並列に設けられる別給電ライン64とを含む。第2給電ライン62は、一例として、第1発電機11と送電系統9の間において第1給電ライン61に接続される。一例として分岐給電ライン67を介して第2給電ライン62に接続されるモータ給電ライン63は、バイオガス発電装置23によって生成された第2電力を補機モータ55に供給するように構成されている。補機モータ55は、第2電力の他に外部電源系統(図示外)から電力を一時的に受けるように構成される。また、別給電ライン64は供給機器30に第2電力を供給するように構成される。供給機器30の詳細は後述する。
【0023】
上記構成によれば、第1発電系統10の補機装置50の電力を第2発電系統20がまかなうことができるので、外部電源系統への依存を低減できる。また、第2発電系統20はバイオマスを利用して発電をするため、環境負荷を低減できる。以上より、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減したバイオマス発電プラント1が実現される。また、ガス化炉24とガスエンジン25を用いた発電は、バイオマスボイラ3と蒸気タービン4を用いた発電よりも効率的に行える。従って、バイオマス供給装置81がバイオマスの全てを第1発電系統10に供給する場合に比べて、本実施形態ではバイオマス発電プラント1の全体的な効率を向上させることもできる。
【0024】
なお、他の実施形態に係る第2発電系統20は、第2給電ライン62または別給電ライン64の少なくとも一方を含まなくてもよい。つまり、第2発電系統20は補機モータ55に給電可能でありさえすればよい。また、バイオマス供給装置81は、第1発電系統10には木質バイオマスを供給し、第2発電系統20には食品廃棄物または家畜排せつ物を供給してもよい。この場合、ガス化炉24は、食品廃棄物または家畜排せつ物をメタン発酵させてバイオガスを生成してもよい。いずれの実施形態においても既述の理由によって、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減したバイオマス発電プラント1が実現される。
【0025】
さらに他の実施形態について説明すると、バイオガス発電装置23は、ガスエンジン25と第2発電機22とを有する代わりに、バイオガスを利用した固体酸化物形燃料電池(SOFC)を有してもよい。あるいは、他の実施形態に係る第2発電系統20は、加熱装置21、ガス化炉24、及び、ガスエンジン25を備える代わりに、バイオマスボイラ、及び、第2発電系統20に連結される蒸気タービンを備えてもよい。これらのバイオマスボイラと蒸気タービンはそれぞれ、第1発電系統10のバイオマスボイラ3と蒸気タービン4よりも小型であってもよい。いずれの実施形態においても既述の理由によって、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減したバイオマス発電プラント1が実現される。
【0026】
<4.モータ給電ライン63と別給電ライン64の詳細>
図2Aと
図2Bは、本開示の幾つかの実施形態に係るモータ給電ライン63と別給電ライン64との構成の詳細を示す概略図である。同図で例示される第2発電系統20A、20B(20)は、モータ給電ライン63への第2電力の供給量と、別給電ライン64への第2電力の供給量とを調整するための電力調整部65A、65B(65)をさらに含む。電力調整部65は、分岐給電ライン67を介して第2給電ライン62に接続される。バイオマス発電プラント1のコントローラ(図示外)によって制御されてもよい電力調整部65は、一例として分電盤である。他の例では、電力調整部65はスイッチチング回路によって構成されてもよい。
【0027】
図2Aで例示される電力調整部65Aは、モータ給電ライン63及び別給電ライン64への第2電力の配分量を調整するように構成される。本実施形態では、例えばバイオマス発電プラント1の定格運転中、分岐給電ライン67から供給される第2電力の全量は、モータ給電ライン63に供給される。
【0028】
図2Bで例示される第2発電系統20は、モータ給電ライン63と別給電ライン64とに並列な調整給電ライン66をさらに備える。電力調整部65Bは、モータ給電ライン63への第2電力の供給量、別給電ライン64への第2電力の供給量、及び、調整給電ライン66への第2電力の供給量を調整するように構成される。上述の調整給電ライン66は第2電力を負荷調整ユニット35に供給するように構成される。例えばバイオマス発電プラント1の定格運転中、分岐給電ライン67から供給される第2電力の全量は、電力調整部65Bによってモータ給電ライン63と調整給電ライン66とに配分される。負荷調整ユニット35は、補機モータ55に供給する必要のない余剰分の第2電力を消費する。負荷調整ユニット35が設けられることにより、第1発電系統10の負荷変動に応じた第2電力を補機モータ55に供給することが可能となる。
【0029】
図2A、
図2Bで示される供給機器30は、上述のように、電気エネルギーまたは熱エネルギーの少なくとも一方を含むエネルギーを蓄エネ機器70に供給するように構成される。蓄エネ機器70は運搬可能であり、バイオマス発電プラント1の送電系統9の配備場所に制限されることなく、電気エネルギーまたは熱エネルギーをバイオマス発電プラント1の敷地外に運び出すことが可能である。なお、蓄エネ機器70に充電されるエネルギーは、バイオマス発電プラント1の敷地内で利用されてもよい。
【0030】
上記構成によれば、電力調整部65は、第2発電機22によって生成された電力を、補機モータ55とは別の蓄エネ機器70に供給することもできる。よって、バイオマス発電プラント1の送電系統9の配備場所に制限されることなく、バイオマス発電プラント1の敷地外にエネルギーを運び出すことも必要に応じて可能となる。従って、バイオマス発電プラント1によって生成されるエネルギーの配送に柔軟性を持たせることができる。
【0031】
<5.供給機器30の詳細>
図3は、本開示の一実施形態に係る供給機器30の構成を示す概略図である。供給機器30は、蓄エネ機器70としての電池71に第2電力を供給するように構成される充電器31を含む。上記構成によれば、第2発電機22によって生成された第2電力を蓄電した電池71をバイオマス発電プラント1の敷地外に運び出すことができる。
【0032】
本実施形態の電池71は、一例として、電動車両41を駆動するための車両用バッテリーである。つまり、充電器31は電池71としての車両用バッテリーに第2電力を供給(充電)するように構成される。電動車両41は、電気自動車、ハイブリッドカー、電動二輪車、または、電動四輪車などである。電動車両41が電気自動車である場合、充電器31はEV充電ステーションを構成する。さらに、電動車両41は、車両用バッテリーが固定されるバッテリー固定式電動車両であってもよいし、車両用バッテリーが交換できるバッテリー交換式電動車両であってもよい。後者の場合、充電器31はバッテリー交換ステーションを構成してもよく、充電された複数の車両用バッテリーを電動車両41は積載してもよい。
【0033】
上記構成によれば、バイオマス発電プラント1にて充電用の電池71を常時保管する必要がなくなり、バイオマス発電プラント1における充電設備の管理を容易化できる。また、バイオマス発電プラント1の敷地外を走行する電動車両41を活用して、プラント周辺地域に電気エネルギーを自在に送ることが可能となる。これにより、電気エネルギーの配送量を増大できると共に、配送先に電気エネルギーを届ける所要時間の短縮化が実現され、プラント周辺地域への貢献度を向上することができる。
【0034】
図3で例示される供給機器30は、蓄エネ機器70としてのタンク72に温水を供給するように構成される温水器32を含む。この温水器32は、貯水タンク33と、別給電ライン64から供給される第2電力によって貯水タンク33内の水を加熱するためのヒータ34とを有する。ヒータ34の加熱によって貯水タンク33内で生成される温水は、例えば給水車42に搭載されるタンク72に供給される。上記構成によれば、第2発電機22によって生成される電力を熱エネルギーに変換して、バイオマス発電プラント1の敷地外に運び出すことができる。これにより、プラント周辺地域に温水を届けることが可能となり、プラント周辺地域への貢献度を向上することができる。なお、タンク72は保温タンクであってもよく、また、上述の電動車両41によって運搬されてもよい。この場合、プラント周辺地域に温水と電気を同時に送り届けることが可能となる。
【0035】
図2A、
図2Bに戻り、本開示の一実施形態に係る電力調整部65は、第1発電系統10に接続される送電系統9(
図1参照)が停電した場合、第2発電機22によって生成される第2電力の全量を別給電ライン64へ供給するように構成される。例えば災害などによって送電系統9の一部が破損し送電系統9の停電が起きた場合、送電系統9に設けられる変電所が該停電を検知する。この場合、バイオマス発電プラント1のコントローラによって制御されてもよい電力調整部65は、第2発電機22で生成される第2電力の全量を供給機器30に供給する。これにより、供給機器30は蓄エネ機器70にエネルギーを迅速に供給でき、バイオマスボイラ3の周辺被災地域に蓄エネ機器70を迅速に配送することが可能となる。
【0036】
上記構成によれば、例えば災害が発生して送電系統9が停電した場合、第2発電機22によって生成された第2電力の全量を供給機器30に供給する。これにより、電気エネルギーまたは熱エネルギー(温水)を蓄エネ機器70に迅速に補給することができ、被災したプラント周辺地域内の病院、避難所、または老人ホームといった施設に蓄エネ機器70を迅速に配送することができる。これにより、プラント周辺地域への貢献度を向上することができる。
【0037】
<6.ガスエンジン25の排熱利用>
図4は、一実施形態に係るガスエンジン25の排熱利用を示す概略図である。第2発電系統20は、ガスエンジン25の排熱を利用して水を加熱するための給水ヒータ91を備える。給水ヒータ91は、ガスエンジン25から排出される比較的高温の排ガスと、水とを熱交換させるように構成される。より具体的な構成として、給水ヒータ91は、水を貯める貯留槽と、貯留槽の内部に配置される排ガス配管とを備える。排ガスが排ガス配管を流れることで、貯留槽の内部の水は加熱される。給水ヒータ91にて加熱された水(温水)は、後述するように加熱装置21の熱源として利用されてもよいし、バイオマス発電プラント1の敷地内にある建物の床暖房の熱源として利用されてもよいし、給湯水として利用されてもよい。給湯水は、上述したタンク72に供給されても何ら問題ない。
【0038】
上記構成によれば、ガスエンジン25から不可避的に発生する排熱を利用して温水が生成可能となる。従って、バイオガスによって生成されるエネルギーをより無駄なく利用することができる。
【0039】
図4の例では、給水ヒータ91によって加熱された水(温水)が、加熱装置21の熱源として利用される。具体的には、第2発電系統20は、給水ヒータ91と加熱装置21との間で水を循環させるように構成される循環水ライン92を備える。給水ヒータ91にて加熱された水(温水)は、循環水ライン92を経由して加熱装置21に流入する。温水は、加熱装置21内で空気の加熱用熱源として利用される。加熱装置21から流出する冷まされた水は、循環水ライン92を経由して給水ヒータ91に戻る。
【0040】
このように、第2発電系統20の構成要素である加熱装置21は、給水ヒータ91によって加熱された水を熱源として、ガス化炉24に供給されるバイオマスに加熱処理(乾燥処理)を施す。上記構成によれば、加熱装置21が設けられることでガス化炉24におけるバイオマスの予熱が不要となり、ガス化炉24におけるバイオガスの生成を促進することができる。そして、ガスエンジン25から不可避的に発生する排熱をバイオガスの生成に活用することができる。
【0041】
<7.その他>
図1に戻り、ガス化炉24は、バイオマスボイラ3に供給されるバイオマスと同一種類のバイオマスによって作動するように構成される。より具体的な一例として、
図1では、バイオマス供給装置81が、バイオマスボイラ3と加熱装置21の双方に同一種類のバイオマスを供給するように構成される。
【0042】
上記構成によれば、バイオマスの貯蔵、輸送等の取扱い設備及び燃料調達ルートの共有化が可能になる。これにより、設備のコストダウンが可能になる。また、同一種類のバイオマスを調達することで、調達する際のボリュームディスカウントが可能になる。
【0043】
また、
図1で例示される第2発電系統20は、第1発電系統10と同時期に設置されることに限定されない。つまり、第2発電系統20は、既存の第1発電系統10に追設されるバイオマス発電用の付加系統であってもよい。当該実施形態においても、既述の理由によって、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減することができる。
【0044】
一例として、補機装置50の必要動力を、補機モータ55を介して賄うバイオガス発電装置23の発電容量の上限値は、第1発電機11の発電容量の30%以下、より具体的には15%以下とし、下限値は、補機装置50に含まれる給水ポンプ7、脱気器給水ポンプ、復水ポンプなどのポンプ、誘引通風機19、押込通風機12などの通風機のうち、必要動力が最も小さい補機装置50の必要動力を、補機モータ55を介してまかなうことのできる発電容量以上であることが望ましい。下限値について換言すると、バイオガス発電装置23の発電容量は、複数の補機モータ55のうちで、定格回転速さにおける消費電力が最も少ない補機モータ55の消費電力(最大消費電力)以上であることが望ましい。これにより、少なくとも1台以上の補機装置50の必要動力を第2発電系統20がまかなうことができるため、外部電源系統への依存を低減できる。また、プラント建設において過剰な設備投資を回避することができる。
【0045】
また、第2発電系統20の発電容量を抑えることで、上流側のガス化炉24の燃料使用量を低減できる。一実施形態では、第2発電系統20(より具体的な一例として加熱装置21)に単位時間当たりに燃料として供給されるバイオマスの量(以下、第2供給量ともいう)は、第1発電系統10のバイオマスボイラ3に燃料として供給されるバイオマスの量(以下、第1供給量ともいう)よりも少ない。例えば、第2供給量が第1供給量の20%以下となる場合、災害等で送電系統9の停電が起きた際に、バイオマスボイラ3用に用意されているバイオマスをガス化炉24に転用することで、少い発電量ながら5倍の期間、発電を続けることができるため、周辺の道路が寸断されているような場合であっても、周辺の被災地域へ熱や電気を供給することが可能となる。
【0046】
<8.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0047】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るバイオマス発電プラント(1)は、
バイオマスボイラ(3)と、前記バイオマスボイラから供給される蒸気を駆動源とする蒸気タービン(4)と、前記蒸気タービンの駆動により発電するための第1発電機(11)とを含む第1発電系統(10)と、
バイオマスからバイオガスを生成するためのガス化炉(24)と、前記ガス化炉から供給される前記バイオガスを用いて発電するためのバイオガス発電装置(23)とを含む第2発電系統(20)と
を備え、
前記第1発電系統は、
前記バイオマスボイラを駆動するための補機装置(50)と、
前記補機装置に動力を付与するための補機モータ(55)と
をさらに含み、
前記第2発電系統は、
前記バイオガス発電装置によって生成される電力を前記補機モータに供給するためのモータ給電ライン(63)を含む。
【0048】
上記1)の構成によれば、第1発電系統の補機装置の電力を第2発電系統がまかなうことができるので、外部電源系統への依存を低減できる。また、第2発電系統はバイオマスを利用して発電をするため、環境負荷を低減できる。以上より、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減したバイオマス発電プラントが実現される。
【0049】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のバイオマス発電プラントであって、
前記第2発電系統は、
前記モータ給電ラインと並列に設けられ、蓄エネ機器にエネルギーを供給するための供給機器に前記バイオガス発電装置によって生成された前記電力を供給するための別給電ライン(64)と、
前記モータ給電ラインへの前記電力の供給量と、前記別給電ラインへの前記電力の供給量と、を調整するための電力調整部(65)とをさらに含む。
【0050】
上記2)の構成によれば、電力調整部は、バイオガス発電装置によって生成された電力(第2電力)を、補機モータとは別の蓄エネ機器に供給することもできる。よって、バイオマス発電プラントの送電系統の配備場所に制限されることなく、バイオマス発電プラントの敷地外にエネルギーを運び出すことも必要に応じて可能となる。バイオマス発電プラントによって生成されるエネルギーの配送に柔軟性を持たせることができる。
【0051】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のバイオマス発電プラントであって、
前記供給機器は、前記蓄エネ機器としての電池に前記電力を供給するように構成される充電器(31)を含む。
【0052】
上記3)の構成によれば、第2発電機によって生成される電力を蓄電した電池をバイオマス発電プラントの敷地外に運び出すことができる。
【0053】
4)幾つかの実施形態では、上記3)に記載のバイオマス発電プラントであって、
前記充電器は、電動車両を駆動するための前記電池としての車両用バッテリーに、前記電力を供給するように構成される。
【0054】
上記4)の構成によれば、バイオマス発電プラントにて充電用の電池を常時保管する必要がなくなり、バイオマス発電プラントにおける充電設備の管理を容易化できる。また、バイオマス発電プラントの敷地外を走行する電動車両を活用して、プラント周辺地域に電気エネルギーを自在に送ることが可能となる。これにより、電気エネルギーの配送量を増大できると共に、配送先に電気エネルギーを届ける所要時間の短縮化が実現される。
【0055】
5)幾つかの実施形態では、上記2)から4)のいずれかに記載のバイオマス発電プラントであって、
前記供給機器は、貯水タンク(33)と、貯水タンク内の水を前記別給電ラインから供給される前記電力によって加熱するためのヒータ(34)とを有し、前記蓄エネ機器としてのタンクに温水を供給するように構成される温水器(32)を含む。
【0056】
上記5)の構成によれば、第2発電機によって生成される電力を熱エネルギーに変換して、バイオマス発電プラントの敷地外に運び出すことができる。
【0057】
6)幾つかの実施形態では、上記2)から5)のいずれかに記載のバイオマス発電プラントであって、
前記電力調整部は、前記第1発電系統に接続される送電系統が停電した場合に、前記バイオガス発電装置によって生成された前記電力の全量を前記別給電ラインへ供給するように構成される。
【0058】
上記6)の構成によれば、例えば災害が発生して送電系統が停電した場合、第2発電機によって生成された第2電力の全量を供給機器に供給する。これにより、エネルギーを蓄エネ機器に迅速に補給することができ、被災したプラント周辺地域内の病院、避難所、または老人ホームといった支援を優先すべき主要施設に蓄エネ機器を迅速に配送することができる。これにより、プラント周辺地域への貢献度を向上することができる。
【0059】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から6)のいずれかに記載のバイオマス発電プラントであって、
前記バイオガス発電装置は、
前記ガス化炉から供給される前記バイオガスを燃料とするガスエンジン(25)と、
前記ガスエンジンの駆動により発電するための第2発電機(22)とを有し、
前記第2発電系統は、前記ガスエンジンの排熱を利用して水を加熱するための給水ヒータ(91)をさらに含む。
【0060】
上記7)の構成によれば、ガスエンジンから不可避的に発生する排熱を利用して温水が生成可能となる。従って、バイオガスによって生成されるエネルギーをより無駄なく利用することができる。
【0061】
8)幾つかの実施形態では、上記7)に記載のバイオマス発電プラントであって、
前記第2発電系統は、前記給水ヒータによって加熱された前記水を熱源として、前記ガス化炉に供給される前記バイオマスに加熱処理を施すための加熱装置(21)をさらに含む。
【0062】
上記8)の構成によれば、ガス化炉におけるバイオマスの予熱が不要となり、ガス化炉におけるバイオガスの生成を促進することができる。そして、ガスエンジンから不可避的に発生する排熱をバイオガスの生成に活用することができる。
【0063】
9)幾つかの実施形態では、上記1)から8)のいずれかに記載のバイオマス発電プラントであって、
前記ガス化炉は、前記バイオマスボイラに供給されるバイオマスと同一種類のバイオマスによって作動可能に構成される。
【0064】
上記9)の構成によれば、バイオマスの貯蔵、輸送等の取扱い設備及び燃料調達ルートの共有化が可能になる。これにより、設備のコストダウンが可能になる。また、同一種類のバイオマスを調達することで、調達する際のボリュームディスカウントが可能になる。
【0065】
10)幾つかの実施形態では、上記1)から9)のいずれかに記載のバイオマス発電プラントであって、
前記第2発電系統に単位時間あたりに供給される前記バイオマスの量は、前記第1発電系統に前記単位時間あたりに供給される前記バイオマスの量よりも少ない。
【0066】
上記10)の構成によれば、災害等で送電系統の停電が起きた際に、バイオマスボイラ用に用意されている燃料を第2発電系統に転用することで、少い発電量ながら長期間、第2発電系統にて発電を続けることができるため、周辺の道路が寸断されているような場合であっても、周辺の被災地域へ熱や電気を供給することが可能となる。
【0067】
11)本開示の少なくとも一実施形態に係るバイオマス発電用の付加系統(第2発電系統20)は、
バイオマスボイラ(3)から供給される蒸気を駆動源として蒸気タービン(4)が回転することで発電するように構成される発電系統であって、前記バイオマスボイラを駆動するための補機装置(50)と、前記補機装置に動力を付与するための補機モータ(55)とを備える発電系統(第1発電系統10)に追設されるバイオマス発電用の付加系統であって、
バイオマスからバイオガスを生成するためのガス化炉(24)と、
前記ガス化炉から供給される前記バイオガスを燃料とするガスエンジン(25)と、
前記ガスエンジンの駆動により発電するための第2発電機(22)と、
前記第2発電機によって生成される電力を前記補機モータに供給するためのモータ給電ライン(63)とを備える。
【0068】
上記11)の構成によれば、上記1)と同様の理由により、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減したバイオマス発電用の付加系統が実現される。
【0069】
<9.備考>
蓄エネ機器70は、バイオマス発電プラント1にて生成される電力から得られるエネルギーを蓄積することに限定されない。例えば、太陽光発電プラント、風力発電プラント、潮汐発電プラント、または地熱発電プラントといった再生可能エネルギー利用型の発電プラントから得られるエネルギーが蓄エネ機器70に蓄積されてもよい。そして、蓄エネ機器70は、以下のように配送されてもよい。
【0070】
<9-1.情報処理装置を利用した蓄エネ機器70の配送方法の例示>
再生可能エネルギー利用型の発電プラントの周辺地域が被災した場合に、蓄エネ機器70は周辺被災地域に配送されてもよい。このときの蓄エネ機器70の配送手段は、ガソリン車または電動車両などの車両であってもよい。そして、配送先は、病院、避難施設、または老人ホームなど、支援する必要性が比較的高いとされる施設に優先的に配送されるのが好ましい。施設の住所(位置情報)と施設の優先順位とを対応付けた配送先情報が管理されることで、優先度の高い施設への蓄エネ機器70の配送が可能となる。
【0071】
上記配送先情報は、例えば発電プラントに設けられてもよい情報処理装置(パーソナルコンピュータまたはサーバ)によって管理される。情報処理装置が、蓄エネ機器70に紐づけられたユーザ端末に上記の配送先情報を送信することで、ユーザは蓄エネ機器70を効率的に配送するできる。なお、ユーザ端末は、スマートフォン、タブレット、ウエアラブル端末、カーナビ、または、パーソナルコンピュータなどである。
【0072】
配送先情報に含まれる優先順位は、ユーザ端末の表示画面において、例えばリストとして表示されてもよい。該リストは、単独で表示されてもよいし、被災地マップと重なるようにして表示されてもよい。また、十分なエネルギーが届けられた配送先については、表示画面における表示態様が変化してもよい。具体的には、リストから該当する配送先を消去する表示制御、該当する配送先に特定のマークを付与する表示制御、テキスト情報を追加する表示制御がユーザ端末で実行されてもよい。このような表示制御は、情報処理装置からユーザ端末に規定の指示信号が送られることで実行可能である。
【0073】
プラント周辺地域が被災した場合、被災地域の道路の一部は寸断されている可能性がある。そこで、ユーザ端末は、配送先までの通行可能な道路情報を取得してからルート表示してもよい。道路情報の取得は、例えば、道路情報を提供するサービスを展開するサーバから取得してもよい。
【0074】
上述した配送先情報は、配送先が必要とするエネルギー(電気エネルギーまたは熱エネルギー)を示すエネルギー情報を含んでもよい。この場合、エネルギー情報は配送先のそれぞれに対応付けられてもよい。そして、電気エネルギー(電池71)と、熱エネルギー(温水を貯留するタンク72)の双方を必要とする配送先については、ユーザ端末でそのことが判るように表示されてもよい。具体的には、該当する配送先に電池71とタンク72の双方を配送するよう促すメッセージを表示する表示制御が実行されてもよい。もしくは、該当する配送先の表示態様を変える表示制御(配送先の色を変更する表示制御または配送先に特定のマークを付与する表示制御)がユーザ端末において実行されてもよい。
【0075】
情報処理装置からの配送先情報を受信するユーザ端末は、例えば情報処置装置などに予め登録されてもよい。該登録は、慈善登録団体を介して行われてもよいし、ユーザが個別に登録してもよい。プラント周辺地域が被災した場合、登録されたユーザ端末に対して支援依頼を一斉に通知する制御を情報処理装置は実行してもよい。また、ユーザ端末は、非被災地にいるユーザに協力要請をするための位置連動型ポップアップ通知機能を有してもよい。
【0076】
<9-2.蓄エネ機器70の配送方法の例示>
蓄エネ機器70は発電プラントで保有される運搬可能な電池71であってもよい。この電池71は、上述のように電動車両41に搭載される車両用バッテリーであってもよい。そして、電動車両41は、車両用バッテリーが固定されるバッテリー固定式電動車両であってもよいし、車両用バッテリーが交換できるバッテリー交換式電動車両であってもよい。後者の場合、充電器31はバッテリー交換ステーションを構成してもよく、電動車両41は充電された複数の車両用バッテリーを積載してもよい。
【0077】
蓄エネ機器70としての電池71は、型落ちの電池71、リサイクル品としての電池71、または、検品で不合格となった電池71であってもよい。このような電池71は蓄電量が低い傾向にあるが、その反面、入手時のコストを低減できる。災害時などの特定タイミングを除いた平常時に電池71を保管するのであれば、このような電池71を利用することで、コスト低減を図ることが可能である。なお、電動車両は搭載される車両用バッテリーの他に、上記のような低コストの電池71をあわせて運搬してもよい。これにより、電動車両1台あたりが運搬できる電気エネルギーを増大させることができる。
【0078】
また、発電プラントで保有される運搬可能な電池71の総容量は、周辺地域が被災した場合に必要となる非常時電力需要(試算値)相当であることが好ましい。これにより発電プラントの運営コストが過剰になることを抑制しつつ、災害発生時、周辺被災地域の需要に見合った電力を迅速に供給することができる。
【0079】
また、発電プラントで保有される運搬可能な電池71の個数は、周辺地域が被災した場合に支援が必要となる優先度の高い施設数の個数(試算値)以上であることが好ましい。これにより、災害発生時、支援する優先度の高い施設のそれぞれに電池71を配送することができるので、当該施設の迅速な支援に貢献することができる。また、電動車両は、充電された電池71と温水が貯留されるタンク72を同時に運搬してもよい。
【0080】
<9-3.その他>
発電プラントでは、季節などの環境情報の変化を加味して、電池71を充電するための電力量と、タンク72に温水を充填するための電力量との配分量を決定してもよい。例えば、夏における災害発生時には、温水の発生量を冬に比べて低下させて、電池71を充電させるための電力量を増加させてもよい。これにより、被災地における冷房用の電力が不足するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 :バイオマス発電プラント
3 :バイオマスボイラ
4 :蒸気タービン
9 :送電系統
10 :第1発電系統
11 :第1発電機
20 :第2発電系統
21 :加熱装置
22 :第2発電機
24 :ガス化炉
25 :ガスエンジン
30 :供給機器
31 :充電器
32 :温水器
33 :貯水タンク
34 :ヒータ
41 :電動車両
50 :補機装置
55 :補機モータ
61 :第1給電ライン
62 :第2給電ライン
63 :モータ給電ライン
64 :別給電ライン
65 :電力調整部
65A :電力調整部
65B :電力調整部
66 :調整給電ライン
67 :分岐給電ライン
70 :蓄エネ機器
71 :電池
72 :タンク
81 :バイオマス供給装置
91 :給水ヒータ