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特開2023-117737変性セルロースナノファイバー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117737
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】変性セルロースナノファイバー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08B 11/04 20060101AFI20230817BHJP
   C08B 11/08 20060101ALI20230817BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C08B11/04
C08B11/08
C08L1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020461
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】金井 将浩
(72)【発明者】
【氏名】星 徹
【テーマコード(参考)】
4C090
4J002
【Fターム(参考)】
4C090AA05
4C090AA10
4C090BA28
4C090BB52
4C090BB68
4C090BB92
4C090BD14
4C090DA10
4C090DA32
4J002AB01W
4J002AB01X
4J002AB03X
4J002FA04W
4J002FA04X
4J002FB13W
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】本発明は、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができ、また、優れた疎水性がセルロースナノファイバーに付与されて疎水性物質との親和性に優れた変性セルロースナノファイバー組成物を提供する。
【解決手段】セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、前記セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、0.005モル以上6.0モル以下の前記シランカップリング剤の仕込み割合で修飾され、前記変性セルロースナノファイバー100質量部に対して、前記セルロース誘導体を10質量部以上2000質量部以下含む、変性セルロースナノファイバー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、
前記変性セルロースナノファイバーが、前記セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、0.005モル以上6.0モル以下の前記シランカップリング剤の仕込み割合で修飾され、
前記変性セルロースナノファイバー100質量部に対して、前記セルロース誘導体を10質量部以上2000質量部以下含む、変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項2】
セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーと、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、
前記変性セルロースナノファイバーが、前記セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、5.0モル以上6.0モル以下の前記シランカップリング剤の仕込み割合で修飾されている変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項3】
前記シランカップリング剤が、少なくともエポキシ基とアルコキシ基を有する請求項1または2に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が、エポキシ基とアルコキシ基とアルキル基を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項5】
前記シランカップリング剤が、下記一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、Xは、エポキシ基を含む有機官能基を示し、R、R、Rは、それぞれ、独立して、クロリド、炭素数1~5個のアルコキシ基または炭素数1~5個のアルキル基を表す。)で表される化合物である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項6】
前記R、前記R、前記Rのうち、少なくとも1つは炭素数1~5個のアルコキシ基であり、少なくとも1つは炭素数1~5個のアルキル基である請求項5に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項7】
前記シランカップリング剤が、3-グリシドキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランを含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項8】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項1に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項9】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースである請求項1に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項10】
前記ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシプロピルセルロースである請求項8または9に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項11】
前記分散媒100質量部に対して、前記セルロース誘導体を0.5質量部以上120質量部以下含む請求項1に記載の変性セルロースナノファイバー組成物
【請求項12】
前記変性セルロースナノファイバーの分散液である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項13】
前記変性セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の平均値が、5.0未満である請求項12に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項14】
前記変性セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の標準偏差が、1.0未満である請求項12または13に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【請求項15】
前記変性セルロースナノファイバーの平均繊維長が20μm以上200μm以下、平均繊維径が4nm以上100nm以下である請求項1乃至14のいずれか1項に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランカップリング剤によって修飾された変性ナノセルロースの組成物に関し、特に、疎水性物質に対しても親和性を示す変性セルロースナノファイバーの組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノセルロースは、パルプなどの植物繊維を水媒体中で解繊して得られる、太さがナノメートルオーダーのセルロース繊維である。ナノセルロースは、構造化セルロースによって、セルロースナノファイバーやセルロースクリスタル、セルロースウィスカー、バクテリアセルロースなどに分類される。セルロースナノファイバーは、軽量且つ高強度であることから、例えば、熱可塑性樹脂などの補強材としての利用が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、セルロースナノファイバーは、親水性であることから、有機溶媒への均一分散や樹脂等の疎水性対象への均一な混ぜ込みなどが困難であり、適用範囲が限定されるという問題があった。そこで、例えば、従来、含水状態のセルロースナノファイバーに有機酸ビニルを反応させ、その後に生成物を回収することによって、セルロースナノファイバーに疎水性を付与する技術などが提案されている(例えば、特許文献2参照)。以下、植物繊維などから得られた天然由来のセルロースナノファイバーに対して疎水性などの所望の特性を付与したセルロースナノファイバーを、「変性セルロースナノファイバー」ということがある。
【0004】
しかし、特許文献2に示す変性セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーと有機酸ビニルとの反応条件が厳しく、また生産工程も煩雑であるという問題があった。また、有機酸ビニルで変性されたセルロースナノファイバーでは、変性の程度によってはセルロースナノファイバーの分子構造自体が変化してしまい、セルロースナノファイバーの特性が変化してしまう可能性があるだけではなく、セルロースナノファイバーの疎水性の向上の点、ひいては、有機溶媒等の分散媒への分散性向上の点でも改善の余地があった。従って、特許文献2に示す変性セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーの分散性に優れた分散液を得る点で改善の必要性があり、依然として、セルロースナノファイバーの適用範囲が限定されるという問題があった。
【0005】
また、セルロースナノファイバーに疎水性を付与する技術として、芳香族基等の濡れ性から選定した修飾基とポリアルキレングリコール基等の立体反発性と疎水性から選定した修飾基という2種類の修飾基をセルロースナノファイバーの表面に結合させることで、少ない修飾基の質量でセルロースナノファイバーを疎水性へ改質することが提案されている。しかし、芳香族基等とポリアルキレングリコール基等の2種類の修飾基を用いた変性セルロースナノファイバーは、化学構造が複雑であり、セルロースナノファイバーの分散性に優れた分散液を得る点で改善の必要性があった。また、芳香族基等とポリアルキレングリコール基等の2種類の修飾基を用いた変性セルロースナノファイバーは、反応性に優れた官能基を有していないので、適用分野の拡大が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-11392号公報
【特許文献2】国際公開第2016/010016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができ、また、優れた疎水性がセルロースナノファイバーに付与されて疎水性物質との親和性に優れた変性セルロースナノファイバー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、
前記変性セルロースナノファイバーが、前記セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、0.005モル以上6.0モル以下の前記シランカップリング剤の仕込み割合で修飾され、
前記変性セルロースナノファイバー100質量部に対して、前記セルロース誘導体を10質量部以上2000質量部以下含む、変性セルロースナノファイバー組成物。
[2]セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーと、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、
前記変性セルロースナノファイバーが、前記セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、5.0モル以上6.0モル以下の前記シランカップリング剤の仕込み割合で修飾されている変性セルロースナノファイバー組成物。
[3]前記シランカップリング剤が、少なくともエポキシ基とアルコキシ基を有する[1]または[2]に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[4]前記シランカップリング剤が、エポキシ基とアルコキシ基とアルキル基を有する[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[5]前記シランカップリング剤が、下記一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、Xは、エポキシ基を含む有機官能基を示し、R、R、Rは、それぞれ、独立して、クロリド、炭素数1~5個のアルコキシ基または炭素数1~5個のアルキル基を表す。)で表される化合物である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[6]前記R、前記R、前記Rのうち、少なくとも1つは炭素数1~5個のアルコキシ基であり、少なくとも1つは炭素数1~5個のアルキル基である[5]に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[7]前記シランカップリング剤が、3-グリシドキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランを含む[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[8]前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種を含む[1]に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[9]前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースである[1]に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[10]前記ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシプロピルセルロースである[8]または[9]に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[11]前記分散媒100質量部に対して、前記セルロース誘導体を0.5質量部以上120質量部以下含む[1]に記載の変性セルロースナノファイバー組成物
[12]前記変性セルロースナノファイバーの分散液である[1]乃至[11]のいずれか1つに記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[13]前記変性セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の平均値が、5.0未満である[12]に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[14]前記変性セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の標準偏差が、1.0未満である[12]または[13]に記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
[15]前記変性セルロースナノファイバーの平均繊維長が20μm以上200μm以下、平均繊維径が4nm以上100nm以下である[1]乃至[14]のいずれか1つに記載の変性セルロースナノファイバー組成物。
【0009】
[1]の変性セルロースナノファイバー組成物に配合されている変性セルロースナノファイバーは、セルロースの水酸基にシランカップリング剤のシラノール基が化学結合することで、セルロースがシランカップリング剤で修飾される。すなわち、変性セルロースナノファイバーは、セルロースの水酸基にシランカップリング剤が化学結合した構造となっている。なお、「セルロースナノファイバー」とは、平均繊維径が1.0μm未満である、すなわち、平均繊維径がナノオーダーであるセルロースファイバーを意味する。
【0010】
また、[1]の変性セルロースナノファイバー組成物に配合されているセルロース誘導体は、変性セルロースナノファイバー組成物中において分散媒に溶解した状態となっている。変性セルロースナノファイバー組成物中においてセルロース誘導体が分散媒に溶解していることで、セルロース誘導体の水酸基と変性セルロースナノファイバー組成物中の変性セルロースナノファイバーの水酸基が相互作用し、変性セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態になっていると考えられる。
【0011】
なお、「変性セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度」とは、分散媒20mlに変性セルロースナノファイバー0.1gに対して、セルロース誘導体を所定量添加した変性セルロースナノファイバーの分散液を、4.5mlの容器中に2.0ml投入して、25℃の条件下、サイズが直径9mm、高さ6.5 mmであるスターラー(撹拌子)を用いて回転数1000rpmにて撹拌した際の、変性セルロースナノファイバーの分散液の高さ方向中央部分にて測定した、光路長1cm、波長400nmの光の透過度を意味する。また、1回の透過度の測定結果は、撹拌開始から2秒ごとに180秒間にわたって測定した各測定時間の透過度の平均透過度として算出した値である。また、「透過度の平均値」とは、3回の平均透過度の測定結果の平均値である。また、「透過度の標準偏差」とは、1回の平均透過度の測定、すなわち、2秒ごとに180秒間にわたって測定した透過度について、標準偏差を算出し、3回の平均透過度の測定結果で得られた各標準偏差の平均値を意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、前記セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、0.005モル以上6.0モル以下の前記シランカップリング剤の仕込み割合で修飾され、前記変性セルロースナノファイバー100質量部に対して、前記セルロース誘導体を10質量部以上2000質量部以下含むことにより、変性セルロースナノファイバー組成物中において、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができる。また、本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、優れた疎水性がセルロースナノファイバーに付与されていることで、変性セルロースナノファイバー組成物中のセルロースナノファイバーは疎水性物質に対する親和性に優れている。従って、本発明の変性セルロースナノファイバー組成物では、適用対象である疎水性物質へのセルロースナノファイバーへの分散を均一化でき、また、セルロースナノファイバーの特性を適用対象へ確実に付与することができる。
【0013】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーと、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、前記セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、5.0モル以上6.0モル以下の前記シランカップリング剤の仕込み割合で修飾されていることにより、変性セルロースナノファイバー組成物中において、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができ、また、優れた疎水性がセルロースナノファイバーに付与されていることで、変性セルロースナノファイバー組成物中のセルロースナノファイバーは疎水性物質に対する親和性に優れている。
【0014】
また、本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、変性セルロースナノファイバーが官能基として反応性に優れたエポキシ基を有するので、変性セルロースナノファイバーは、エポキシ基を介してさらなる修飾が可能となる。従って、本発明の変性セルロースナノファイバー組成物では、適用対象となる疎水性物質の範囲を容易に広げることができる。
【0015】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、シランカップリング剤が、少なくともエポキシ基とアルコキシ基を有することにより、セルロースを確実に修飾して変性セルロースナノファイバーに優れた疎水性を確実に付与することができる。
【0016】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、シランカップリング剤が、エポキシ基とアルコキシ基とアルキル基を有することにより、セルロースを確実に修飾して優れた疎水性を確実に付与しつつ、変性セルロースナノファイバー同士が凝集することを確実に抑制できるので、有機溶媒や樹脂等の疎水性物質への分散をより確実に均一化できる。
【0017】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、シランカップリング剤が、下記一般式(1)
【化2】
(一般式(1)中、Xは、エポキシ基を含む有機官能基を示し、R、R、Rは、それぞれ、独立して、クロリド、炭素数1~5個のアルコキシ基または炭素数1~5個のアルキル基を表す。)で表される化合物であることにより、変性セルロースナノファイバーの疎水性が確実に向上する。
【0018】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、シランカップリング剤が、3-グリシドキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランを含むことにより、より優れた疎水性を確実に付与しつつ、変性セルロースナノファイバー同士が凝集することをより確実に抑制できる。
【0019】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、セルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種を含むことにより、変性セルロースナノファイバー組成物中における変性セルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得ることができる。
【0020】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、セルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロースであることにより、変性セルロースナノファイバー組成物中における変性セルロースナノファイバーの分散性がより確実に向上する。
【0021】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物によれば、ヒドロキシアルキルセルロースがヒドロキシプロピルセルロースであることにより、変性セルロースナノファイバー組成物中における変性セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の変性セルロースナノファイバー組成物
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物について、以下に説明する。先ず、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物について、以下に説明する。
【0023】
本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物は、セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、前記セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、0.005モル以上6.0モル以下の前記シランカップリング剤の仕込み割合で修飾され、前記変性セルロースナノファイバー100質量部に対して、前記セルロース誘導体を10質量部以上2000質量部以下含む。本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物では、セルロース誘導体は分散媒に溶解しており、変性セルロースナノファイバーは分散媒に分散している状態となっている。
【0024】
本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物では、変性セルロースナノファイバー組成物中において、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができる。また、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物では、優れた疎水性がセルロースナノファイバーに付与されていることで、変性セルロースナノファイバー組成物中のセルロースナノファイバーは疎水性物質に対する親和性に優れている。従って、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物では、適用対象である疎水性物質へのセルロースナノファイバーへの分散を均一化でき、また、セルロースナノファイバーの特性を適用対象へ確実に付与することができる。また、変性セルロースナノファイバー組成物に含まれている変性セルロースナノファイバーは、官能基として反応性に優れたエポキシ基を有するので、エポキシ基を介してさらなる修飾が可能となる。従って、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物では、適用対象となる疎水性物質の範囲を容易に広げることができる。
【0025】
<変性セルロースナノファイバー>
本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物に配合されている変性セルロースナノファイバーは、セルロースの水酸基の少なくとも一部が、エポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾されている。すなわち、変性セルロースナノファイバーは、シランカップリング剤で変性されたセルロースナノファイバーである。
【0026】
変性セルロースナノファイバーの骨格を形成しているセルロースについて、以下に説明する。変性セルロースナノファイバーにおけるセルロースは、平均繊維径が1.0μm未満であるセルロースナノファイバーであれば、セルロースのサイズは、特に限定されないが、シランカップリング剤によるセルロースの修飾部位の均一化と変性セルロースナノファイバーの適用範囲の拡大の点から、平均繊維径は、4nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下が特に好ましい。また、セルロースの平均繊維長は、特に限定されないが、シランカップリング剤によるセルロースの修飾部位の均一化と変性セルロースナノファイバーの適用範囲の拡大の点から、20μm以上200μm以下が好ましく、50μm以上150μm以下が特に好ましい。セルロースの平均繊維径及び平均繊維長は、例えば、平均繊維径は、走査型プローブ顕微鏡や窒素吸着法で、平均繊維長は、電子顕微鏡(透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM))、走査型プローブ顕微鏡で測定することができる。
【0027】
セルロースナノファイバーとしては、天然物由来のセルロースを挙げることができる。具体的には、セルロースナノファイバーとしては、例えば、原料となる天然物由来であるセルロース前駆体に解繊処理を施してナノファイバー化したものを挙げることができる。セルロースナノファイバーの原料であるセルロース前駆体としては、例えば、パルプなどの植物繊維などを挙げることができる。
【0028】
次に、シランカップリング剤について、以下に説明する。シランカップリング剤とは、一分子内に官能基と加水分解性シリル基とを有する化合物であり、水と反応することにより、加水分解性シリル基がシラノール基となるものをいう。シランカップリング剤は、セルロースナノファイバーを構成するセルロースの水酸基を修飾するための置換基を有する。本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物に配合されている変性セルロースナノファイバーでは、シランカップリング剤は、官能基としてエポキシ基を有している。シランカップリング剤のシラノール基が、セルロースナノファイバーを構成するセルロースの水酸基と化学結合することにより、セルロースの水酸基を修飾する。セルロースの水酸基に、シランカップリング剤の加水分解性シリル基が加水分解されて生成したシラノール基が化学結合することで、セルロースがシランカップリング剤で修飾される。
【0029】
シランカップリング剤としては、セルロースを確実に修飾して変性セルロースナノファイバーに優れた疎水性を確実に付与することができる点から、アルコキシ基を有することが好ましい。すなわち、シランカップリング剤としては、少なくともエポキシ基とアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0030】
また、シランカップリング剤としては、セルロースを確実に修飾して優れた疎水性を確実に付与しつつ、変性セルロースナノファイバー同士が凝集することを確実に抑制できる点から、アルコキシ基とアルキル基を有することがより好ましい。すなわち、シランカップリング剤としては、少なくともエポキシ基とアルコキシ基とアルキル基を有する有機ケイ素化合物がより好ましい。変性セルロースナノファイバー同士が凝集することを確実に抑制できることで、有機溶媒や樹脂等の疎水性物質への分散をより確実に均一化できる。
【0031】
また、シランカップリング剤としては、例えば、変性セルロースナノファイバーの疎水性が確実に向上する点から、下記一般式(1)
【化3】
(一般式(1)中、Xは、エポキシ基を含む有機官能基を示し、R、R、Rは、それぞれ、独立して、クロリド、炭素数1~5個のアルコキシ基または炭素数1~5個のアルキル基を表す。)で表される化合物が好ましい。一般式(1)の化合物では、R、R、RとSiとの化学結合で、加水分解性シリル基が形成されている。
【0032】
一般式(1)の化合物におけるR、R、Rとしては、セルロースナノファイバーをより確実に修飾できる点から、それぞれ、独立して、炭素数1~3個のアルコキシ基または炭素数1~3個のアルキル基がより好ましく、炭素数1~2個のアルコキシ基または炭素数1~2個のアルキル基が特に好ましい。また、セルロースナノファイバーをより確実に修飾して優れた疎水性を確実に付与しつつ、変性セルロースナノファイバー同士が凝集することをより確実に抑制できる点から、一般式(1)の化合物におけるR、R、Rのうち、少なくとも1つは炭素数1~5個のアルコキシ基であり、少なくとも1つは炭素数1~5個のアルキル基であることが好ましい。
【0033】
一般式(1)の化合物におけるXは、エポキシ基を含む有機官能基であれば、その化学構造は特に限定されないが、優れた疎水性を確実に付与する点から、X-の官能基としては、下記一般式(2)
E-R-O-R- (2)
(一般式(2)中、Eはエポキシ基、R、Rは、それぞれ、独立して、炭素数1~5個の脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数1~3個の脂肪族炭化水素基を表す。)で表される有機官能基が好ましい。
【0034】
シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。このうち、より優れた疎水性を確実に付与しつつ、変性セルロースナノファイバー同士が凝集することをより確実に抑制できる点から、3-グリシドキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランが好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
変性セルロースナノファイバーのシランカップリング剤の仕込み割合は、セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、0.005モル以上6.0モル以下の範囲であれば、特に限定されないが、その下限値は、変性セルロースナノファイバーに優れた疎水性を確実に付与する点から、セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、0.01モルのシランカップリング剤の仕込み割合が好ましく、0.05モルのシランカップリング剤の仕込み割合がより好ましく、0.20モルのシランカップリング剤の仕込み割合が特に好ましい。一方で、変性セルロースナノファイバーのシランカップリング剤の仕込み割合の上限値は、セルロースナノファイバーの結晶構造を維持することで高い強度が損なわれるのを防止する点から、セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、5.0モルが好ましく、セルロースナノファイバーの結晶構造をより確実に維持する点から、セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、3.0モルが特に好ましい。上記したシランカップリング剤の仕込み割合は、セルロースナノファイバーの構成単位であるβ―グルコース1個当たりの、シランカップリング剤の個数割合を意味することとなる。
【0036】
セルロースナノファイバーの水酸基の少なくとも一部が、エポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾されていることは、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)にて確認することができる。すなわち、シランカップリング剤によって修飾されていない、未処理のセルロースナノファイバーの赤外線吸収スペクトルと、変性セルロースナノファイバーの赤外線吸収スペクトルと、を比較することで、セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾されていることを確認できる。
【0037】
具体的には、シランカップリング剤が、アルキル基を有する場合には、赤外線吸収スペクトルの1260cm-1、798cm-1、763cm-1の領域にSi-C結合由来の吸収ピークが現れるのに対し、未処理のセルロースナノファイバーでは、1260cm-1、798cm-1、763cm-1の領域に吸収ピークが現れない。従って、赤外線吸収スペクトルの1260cm-1、798cm-1、763cm-1の領域における吸収ピークの有無を確認することで、セルロースがシランカップリング剤によって修飾されているか否かを確認することができる。
【0038】
また、シランカップリング剤が、アルキル基を有さない場合でも、赤外線吸収スペクトルの900cm-1付近の領域にエポキシ基由来の吸収ピークが現れる。未処理のセルロースナノファイバーでも赤外線吸収スペクトルの900cm-1付近の領域に吸収ピークが現れるが、変性セルロースナノファイバーでは、900cm-1付近の領域においてはエポキシ基由来の吸収ピークとセルロースナノファイバー由来の吸収ピークが重なることでピーク強度が強くなる。従って、900cm-1付近の領域におけるピーク強度の強さを確認することで、セルロースがシランカップリング剤によって修飾されているか否かを確認することができる。
【0039】
本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物に配合されている変性セルロースナノファイバーのサイズは、特に限定されないが、骨格を形成するセルロースの平均繊維径が1.0μm未満であることに対応して、例えば、平均繊維径1.0μm未満が挙げられる。変性セルロースナノファイバーのサイズは、シランカップリング剤によるセルロースの修飾部位の均一化と変性セルロースナノファイバーの適用範囲の拡大の点から、平均繊維径は、4nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下が特に好ましい。また、変性セルロースナノファイバーの平均繊維長は、シランカップリング剤によるセルロースの修飾部位の均一化と変性セルロースナノファイバーの適用範囲の拡大の点から、20μm以上200μm以下が好ましく、50μm以上150μm以下が特に好ましい。
【0040】
本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物に配合されている変性セルロースナノファイバーは、優れた疎水性が付与されており、疎水性物質との親和性に優れているので、樹脂等の疎水性物質に対する混合分散性に優れている。また、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物に配合されている変性セルロースナノファイバーは、変性されていてもセルロースナノファイバーの分子構造自体が変化することが抑制されているので、セルロースナノファイバー本来の特性が維持されている。従って、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物に配合されている変性セルロースナノファイバーは、高強度を有していることから、例えば、疎水性物質に対する補強材として優れた機能を発揮する。
【0041】
次に、変性セルロースナノファイバーの製造方法について、以下に説明する。変性セルロースナノファイバーは、例えば、変性セルロースナノファイバーの骨格を形成しているセルロース(セルロースナノファイバー)が水に分散したセルロース水分散体を用意するセルロース用意工程と、用意したセルロース水分散体にエポキシ基を有するシランカップリング剤を混合して反応液を得る反応液作製工程と、得られた反応液を乾燥処理してセルロース(セルロースナノファイバー)の水酸基がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーを得る乾燥工程にて、製造することができる。
【0042】
セルロース用意工程としては、例えば、原料となる天然物由来であるセルロース前駆体に解繊処理を施してセルロース前駆体をナノファイバー化してセルロースナノファイバーを得る方法を挙げることができる。セルロース前駆体を解繊処理する方法は、特に限定されず、例えば、ミキサー、高速ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、高速回転ミキサー、グラインダー、凍結粉砕、メディアミル、ボールミル等を用いた解繊処理を挙げることができる。
【0043】
反応液作製工程としては、例えば、水にセルロースナノファイバーが分散しているセルロース水分散体に、セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、0.005モル以上6.0モル以下のエポキシ基を有するシランカップリング剤を添加する方法が挙げられる。また、乾燥工程としては、作製した反応液に乾燥処理を施すことで、反応液から水を除去する方法が挙げられる。
【0044】
<セルロース誘導体>
本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物に配合されるセルロース誘導体は、セルロースがエポキシ基を有するシランカップリング剤以外の化学構造で修飾されている化合物である点で、変性セルロースナノファイバーとは異なる成分である。セルロース誘導体は、変性セルロースナノファイバー組成物中において分散媒に溶解した状態となっている。例えば、セルロース誘導体は水酸基を有しており、変性セルロースナノファイバー組成物中においてセルロース誘導体が分散媒に溶解していることで、セルロース誘導体の水酸基と変性セルロースナノファイバー組成物中の変性セルロースナノファイバーの水酸基が相互作用し、変性セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態になっていると考えられる。また、変性セルロースナノファイバーとセルロース誘導体は、どちらもセルロース骨格を有することから分子構造が類似している。従って、変性セルロースナノファイバーはセルロース誘導体との親和性が高く、変性セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態になりやすいと考えられる。また、変性セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態になっていることで、セルロース誘導体の界面活性能が発揮されて、変性セルロースナノファイバー組成物中において、変性セルロースナノファイバーは優れた分散性を有することとなると考えられる。
【0045】
また、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物では、生体適合性の材料であるセルロース誘導体を使用するので、環境負荷を低減でき、安全性にも優れている。
【0046】
セルロース誘導体は、セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤以外の化合物と化学反応して得られる誘導体であれば、特に限定されず、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が挙げられる。これらのセルロース誘導体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、変性セルロースナノファイバー組成物中における変性セルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得ることができる点から、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロースが好ましく、変性セルロースナノファイバー組成物中における変性セルロースナノファイバーの分散性がより確実に向上する点から、ヒドロキシアルキルセルロースが特に好ましい。また、セルロース誘導体として、例えば、ヒドロキシアルキルセルロースとアルキルセルロースを併用してもよく、いずれかを単独で使用してもよい。
【0047】
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシペンチルセルロース、ヒドロキシヘキシルセルロース等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、変性セルロースナノファイバー組成物中における変性セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上する点から、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0048】
アルキルセルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロース等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、変性セルロースナノファイバー組成物中における変性セルロースナノファイバーの優れた分散性をより確実に得ることができる点から、メチルセルロース、エチルセルロースが好ましく、エチルセルロースが特に好ましい。
【0049】
カルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシブチルセルロース、カルボキシペンチルセルロース、カルボキシヘキシルセルロース等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとは、ヒドロキシアルキルとアルキルとを有するセルロースである。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシメチルブチルセルロース等のヒドロキシメチルとアルキルとを有するセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルブチルセルロース等のヒドロキシエチルとアルキルとを有するセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルプロピルセルロース、ヒドロキシプロルブチルセルロース等のヒドロキシプロピルとアルキルとを有するセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルエチルセルロース、ヒドロキシブチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルブチルセルロース等のヒドロキシブチルとアルキルとを有するセルロースが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
セルロース誘導体の変性セルロースナノファイバーに対する配合量は、変性セルロースナノファイバー100質量部に対してセルロース誘導体10質量部以上2000質量部以下の範囲であれば、特に限定されないが、その下限値は、変性セルロースナノファイバー100質量部に対して、変性セルロースナノファイバー組成物中における変性セルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得る点から、30質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、50質量部が特に好ましい。一方で、セルロース誘導体の配合量の上限値は、変性セルロースナノファイバー100質量部に対して、セルロースナノファイバーの特性を適用対象へ確実に付与し、また、変性セルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得る点から、1800質量部が好ましく、1600質量部がより好ましく、1500質量部が特に好ましい。
【0052】
セルロース誘導体の後述する分散媒に対する配合量は、特に限定されないが、その下限値は、分散媒100質量部に対して、変性セルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得る点から、0.5質量部が好ましく、2.0質量部がより好ましく、3.0質量部が特に好ましい、一方で、セルロース誘導体の分散媒への添加量の上限値は、分散媒100質量部に対して、変性セルロースナノファイバーの特性を適用対象へ確実に付与する点から、120質量部が好ましく、75質量部がより好ましく、50質量部が特に好ましい。
【0053】
<分散媒>
分散媒は、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物中において変性セルロースナノファイバーを分散させ、また、セルロース誘導体が溶解する媒体として機能する。本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物では、セルロース誘導体は分散媒に溶解しており、変性セルロースナノファイバーは分散媒に分散している状態となっている。これにより、変性セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態となり、変性セルロースナノファイバー組成物中において、変性セルロースナノファイバーは優れた分散性を有することとなる。
【0054】
分散媒としては、例えば、有機溶媒を挙げることができる。有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、エタノール、プロパノール等の炭素数1~5個のアルコール、シクロヘキサノール、プロピレングリコール、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、セロソルブ、ブチルセロソルブ、氷酢酸、ギ酸、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ピリジン、塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼン:メタノール(1:1(体積比))の混合物、トルエン:エタノール(3:2(体積比))の混合物、グリセリン:水(3:7(体積比))の混合物などを挙げることができる。また、分散媒としては、水を挙げることができる。これらの各種分散媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、分散媒用意工程で用意する分散液として、水と相溶する有機溶媒を任意の割合で混合した溶液を使用してもよい。
【0055】
変性セルロースナノファイバー100質量部に対する分散媒の配合量は、特に限定されず、セルロースナノファイバー組成物の使用条件やセルロースナノファイバーの分散媒中における分散状態等に応じて、適宜選択可能である。
【0056】
上記から、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物の態様は、変性セルロースナノファイバーの分散液であり、例えば、変性セルロースナノファイバーが有機溶媒に分散した分散液である。
【0057】
<第1の変性セルロースナノファイバー組成物の製造方法>
本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物は、上記のようにして得られた変性セルロースナノファイバーを用意する変性セルロースナノファイバー用意工程と、分散媒中にセルロース誘導体を添加するセルロース誘導体添加工程と、セルロース誘導体を添加した分散媒に、用意した変性セルロースナノファイバーをさらに添加する変性セルロースナノファイバー添加工程と、セルロース誘導体と変性セルロースナノファイバーを添加した分散媒を撹拌する撹拌工程にて、製造することができる。
【0058】
第2の変性セルロースナノファイバー組成物
次に、本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物について、以下に説明する。
【0059】
本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物は、セルロースの水酸基の少なくとも一部がエポキシ基を有するシランカップリング剤によって修飾された変性セルロースナノファイバーと、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、前記セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり、5.0モル以上6.0モル以下の前記シランカップリング剤の仕込み割合で修飾されている。
【0060】
本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物では、セルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたりシランカップリング剤の仕込み割合が5.0モル以上6.0モル以下で修飾されている変性セルロースナノファイバーが配合され、この変性セルロースナノファイバーが分散媒に分散している状態となっている。本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物では、セルロース誘導体を含まない点で、本発明の第1の変性セルロースナノファイバー組成物とは異なっている。
【0061】
本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物でも、変性セルロースナノファイバー組成物中において、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができる。また、本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物でも、優れた疎水性がセルロースナノファイバーに付与されていることで、変性セルロースナノファイバー組成物中のセルロースナノファイバーは疎水性物質に対する親和性に優れている。従って、本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物でも、適用対象である疎水性物質へのセルロースナノファイバーへの分散を均一化でき、また、セルロースナノファイバーの特性を適用対象へ確実に付与することができる。また、本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物に含まれている変性セルロースナノファイバーは、官能基として反応性に優れたエポキシ基を有するので、エポキシ基を介してさらなる修飾が可能となる。従って、本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物でも、適用対象となる疎水性物質の範囲を容易に広げることができる。
【0062】
本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物の態様は、変性セルロースナノファイバーの分散液であり、例えば、変性セルロースナノファイバーが有機溶媒に分散した分散液である。
【0063】
本発明の第2の変性セルロースナノファイバー組成物は、上記のようにして得られた変性セルロースナノファイバーを用意する変性セルロースナノファイバー用意工程と、分散媒中に、用意した変性セルロースナノファイバーを添加する変性セルロースナノファイバー添加工程と、変性セルロースナノファイバーを添加した分散媒を撹拌する撹拌工程にて、製造することができる。
【0064】
変性セルロースナノファイバー組成物の光の透過率
次に、本発明の変性セルロースナノファイバー組成物の光の透過率について説明する。
【0065】
変性セルロースナノファイバーの分散液について、波長400nmの光の透過度を測定することで、変性セルロースナノファイバーの分散液における変性セルロースナノファイバーの分散状態を評価することができる。変性セルロースナノファイバーの分散液において変性セルロースナノファイバーの分散性が低く、分散液の底部にて変性セルロースナノファイバーが凝集した状態となっているほど、変性セルロースナノファイバーの分散液の高さ方向中央部分にて測定した波長400nmの光の透過度は高くなる。一方で、変性セルロースナノファイバーの分散液において変性セルロースナノファイバーが高い分散性を有し、変性セルロースナノファイバーの凝集状態が低減されている、すなわち、変性セルロースナノファイバーの分散が均一化されているほど、変性セルロースナノファイバーの分散液の高さ方向中央部分にて測定した波長400nmの光の透過度は低くなる。
【0066】
変性セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の平均値は、変性セルロースナノファイバーの優れた分散性が確実に得られている点から、5.0未満が好ましく、2.0未満がより好ましく、変性セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上している点から、1.0未満が特に好ましい。なお、上記した光の透過度の平均値の下限値としては、例えば、0.02が挙げられる。
【0067】
変性セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の標準偏差を測定することで、変性セルロースナノファイバーの分散液における変性セルロースナノファイバーの分散状態を評価することができる。変性セルロースナノファイバーの分散液において変性セルロースナノファイバーの分散性が低く、分散液の底部にて変性セルロースナノファイバーが凝集しやすい状態となっているほど、変性セルロースナノファイバーの分散安定性が低いので、透過度の標準偏差は高くなる。一方で、変性セルロースナノファイバーの分散液において変性セルロースナノファイバーの凝集状態が低減され、変性セルロースナノファイバーの分散が均一化されているほど、変性セルロースナノファイバーの分散安定性が高いので、透過度の標準偏差は低くなる。
【0068】
変性セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の標準偏差は、変性セルロースナノファイバーの優れた分散性が確実に得られている点から、1.0未満が好ましく、0.80未満がより好ましく、変性セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上している点から、0.60未満がさらに好ましく、0.50未満が特に好ましい。
【0069】
変性セルロースナノファイバーフィルムの成形品
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物を所定形状に形成後、変性セルロースナノファイバー組成物から分散媒を乾燥等により除去することにより、所定形状の変性セルロースナノファイバー成形品を得ることができる。本発明の変性セルロースナノファイバー組成物では、変性セルロースナノファイバーの凝集状態が低減され、変性セルロースナノファイバーの分散が均一化されているので、本発明の変性セルロースナノファイバー組成物から分散媒が除去されて得られた変性セルロースナノファイバー成形品は、変性セルロースナノファイバーの分布が均一化され、また、表面が平滑化されている。また、本発明の変性セルロースナノファイバー組成物は、変性セルロースナノファイバーの優れた分散性に加えて、適度な流動性も有しているので、フィルム状の成形品を容易に得ることができる。
【実施例0070】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0071】
<変性セルロースナノファイバー組成物の調製>
実施例1
セルロースナノファイバー水分散体(平均繊維長100μm、平均繊維径30~40nm、モリマシナリー株式会社製「CellFim C-100(水分量約95質量%)」)をセルロースナノファイバー成分で1.0gを水300gに分散させ、セルロースナノファイバー分散液を用意した。用意したセルロースナノファイバー分散液を、撹拌速度1350rpm、室温の条件にてスターラーで撹拌しながら、3-グリシドキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン(以下、「GOPDMS」ということがある。エポキシ基を有するシランカップリング剤に相当)をセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり0.005モルの仕込み割合となるように添加して、所定時間撹拌することで、セルロースナノファイバーとシランカップリング剤が混合した反応液を調製した。得られた反応液を、透析膜を用いて純水中で透析した。透析膜を用いた透析は、24時間行った。GOPDMSの添加から透析膜による透析の終了までは、25℃の室温環境下にて行った。透析した反応液を、凍結乾燥機にて、所定の凍結温度、減圧条件(真空度)10Pa、凍結乾燥時間72時間の条件で乾燥処理することで、凍結した反応液中の水分を昇華させた(乾燥工程)。このようにして、セルロースナノファイバーをGOPDMSで修飾した実施例1で使用する変性セルロースナノファイバーを調製した。
【0072】
セルロースナノファイバーがGOPDMSで修飾されていることは、得られた変性セルロースナノファイバーをFT-IR(株式会社パーキンエルマー社製「Spectrum One(A)」)で分析して、得られた赤外線吸収スペクトルの1260cm-1、798cm-1、763cm-1の領域にSi-C結合由来の吸収ピークが現れ、また、GOPDMSで修飾する前のセルロースナノファイバーと比較して、赤外線吸収スペクトルの900cm-1付近の領域におけるピーク強度が強いことで確認をした。
【0073】
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.01g添加して撹拌し、ヒドロキシプロピルセルロースがテトラヒドロフランに溶解したことを確認後、ヒドロキシプロピルセルロースが溶解した溶液に、上記のようにして作製した変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:0.1)を添加して24時間撹拌し、変性セルロースナノファイバーの分散液である、実施例1の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0074】
実施例2
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.05g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:0.5)を添加した以外は、実施例1と同様にして実施例2の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0075】
実施例3
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.1g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:1)を添加した以外は、実施例1と同様にして実施例3の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0076】
実施例4
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.5g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:5)を添加した以外は、実施例1と同様にして実施例4の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0077】
実施例5
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を1.0g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:10)を添加した以外は、実施例1と同様にして実施例5の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0078】
実施例6
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を2.0g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:20)を添加した以外は、実施例1と同様にして実施例6の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0079】
実施例7
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり1.0モルの仕込み割合となるように添加した以外は、実施例1と同様にして実施例7の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0080】
実施例8
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり1.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.05g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:0.5)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例8の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0081】
実施例9
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり1.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.1g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:1)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例9の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0082】
実施例10
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり1.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.5g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:5)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例10の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0083】
実施例11
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり1.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を1.0g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:10)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例11の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0084】
実施例12
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり1.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を2.0g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:20)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例12の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0085】
実施例13
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり3.0モルの仕込み割合となるように添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例13の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0086】
実施例14
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり3.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.05g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:0.5)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例14の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0087】
実施例15
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり3.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.1g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:1)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例15の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0088】
実施例16
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり3.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.5g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:5)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例16の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0089】
実施例17
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり3.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を1.0g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:10)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例17の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0090】
実施例18
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり3.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を2.0g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:20)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例18の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0091】
実施例19
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり6.0モルの仕込み割合となるように添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例19の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0092】
実施例20
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり6.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.05g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:0.5)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例20の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0093】
実施例21
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり6.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.1g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:1)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例21の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0094】
実施例22
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり6.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.5g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:5)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例22の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0095】
実施例23
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり6.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を1.0g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:10)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例23の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0096】
実施例24
GOPDMSをセルロースナノファイバーのβ―グルコースユニット1.0モルあたり6.0モルの仕込み割合となるように添加した。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を2.0g添加した溶液に変性セルロースナノファイバー0.1g(変性セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:20)を添加した。上記以外は、実施例1と同様にして実施例24の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0097】
実施例25
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中に、ヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を添加せずに変性セルロースナノファイバー0.1gを添加した以外は、実施例19と同様にして実施例25の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0098】
比較例1
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中に、ヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を添加せずに変性セルロースナノファイバー0.1gを添加した以外は、実施例1と同様にして比較例1の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0099】
比較例2
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中に、ヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を添加せずに変性セルロースナノファイバー0.1gを添加した以外は、実施例7と同様にして比較例2の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0100】
比較例3
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中に、ヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を添加せずに変性セルロースナノファイバー0.1gを添加した以外は、実施例13と同様にして比較例3の変性セルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0101】
<評価項目>
(1)波長400nmの光の透過度
実施例1~25の変性セルロースナノファイバー組成物、比較例1~3の変性セルロースナノファイバー組成物について、4.5mlの容器中に2.0ml投入して、25℃の条件下、サイズが直径9mm、高さ6.5mmであるスターラーを用いて回転数1000rpmにて撹拌し、撹拌中における変性セルロースナノファイバー組成物の高さ方向中央部分に波長400nmの光を光路長1cmにて照射し、入射光の放射強度(I)とセルロースナノファイバー組成物を透過した光の放射強度(I)から波長400nmの光の透過度を測定した。1回の透過度の測定値は、撹拌開始から2秒ごとに180秒間にわたって測定した各測定時間の透過度の平均値(平均透過度)として算出した。これを3回繰り返して得られた平均透過度(n=3)の平均値を波長400nmの光の透過度とした。透過度は、以下のように評価した。
◎:透過度が1.0未満であり、変性セルロースナノファイバーの分散状態が非常に優れている。
○:透過度が1.0以上5.0未満であり、変性セルロースナノファイバーの凝集状態が若干見られるものの、良好な分散状態である。
×:透過度が5.0以上であり、変性セルロースナノファイバーの多くが凝集状態となっており、変性セルロースナノファイバーの分散性が認められない。
【0102】
(2)透過度の標準偏差
2秒ごとに180秒間にわたって測定した1回の平均透過度の測定について、標準偏差を算出し、3回の平均透過度の測定結果で得られた各標準偏差の平均値から透過度の標準偏差を求めた。透過度の標準偏差は、以下のように評価した。
◎:透過度の標準偏差が0.50未満
○:透過度の標準偏差が0.50以上1.0未満
×:透過度の標準偏差が1.0以上
【0103】
評価結果を下記表1~表4に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
上記表1~表4から、セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり0.005モル以上6.0モル以下のシランカップリング剤の仕込み割合で修飾された変性セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、セルロースナノファイバーの分散媒と、を含み、変性セルロースナノファイバー100質量部に対してセルロース誘導体を10質量部以上2000質量部以下含む実施例1~24の変性セルロースナノファイバー組成物では、波長400nmの光の透過度及び透過度の標準偏差に優れており、変性セルロースナノファイバーの分散性に優れていた。特に、変性セルロースナノファイバー100質量部に対してセルロース誘導体を50質量部以上含む実施例では、変性セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上する傾向があった。また、セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり1.0モルのシランカップリング剤の仕込み割合で修飾された変性セルロースナノファイバーを配合した実施例の変性セルロースナノファイバー組成物では、波長400nmの光の透過度及び透過度の標準偏差がさらに優れており、変性セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上した。
【0109】
また、上記表4から、セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり6.0モルのシランカップリング剤の仕込み割合で修飾された変性セルロースナノファイバーを配合した実施例の変性セルロースナノファイバー組成物では、セルロース誘導体を含まない実施例25でも、波長400nmの光の透過度及び透過度の標準偏差に優れており、変性セルロースナノファイバーの分散性に優れていた。
【0110】
一方で、上記表1~表3から、セルロースのβ―グルコースユニット1.0モルあたり3.0モル以下のシランカップリング剤の仕込み割合で修飾された変性セルロースナノファイバーを配合し、セルロース誘導体を含まない比較例1~3のセルロースナノファイバー組成物では、優れた波長400nmの光の透過度と優れた透過度の標準偏差を両立することができず、変性セルロースナノファイバーの分散性を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の変性セルロースナノファイバー組成物は、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができるので、広汎な分野で利用可能であり、例えば、成形品の材料となる樹脂組成物の分野を挙げることができる。