(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117739
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】セルロースナノファイバー組成物
(51)【国際特許分類】
D21H 11/18 20060101AFI20230817BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
D21H11/18
D21H15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020463
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】金井 将浩
(72)【発明者】
【氏名】星 徹
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AF09
4L055AF10
4L055AF46
4L055EA04
4L055EA16
(57)【要約】
【課題】本発明は、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができるセルロースナノファイバー組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記セルロースナノファイバーの分散媒と、を含むセルロースナノファイバー組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記セルロースナノファイバーの分散媒と、を含むセルロースナノファイバー組成物。
【請求項2】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項1に記載のセルロースナノファイバー組成物。
【請求項3】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースである請求項2に記載のセルロースナノファイバー組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシプロピルセルロースである請求項2または3に記載のセルロースナノファイバー組成物。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバー100質量部に対して、前記セルロース誘導体を5.0質量部以上5000質量部以下含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー組成物。
【請求項6】
前記セルロースナノファイバー100質量部に対して、前記セルロース誘導体を10質量部以上2000質量部以下含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー組成物。
【請求項7】
前記セルロースナノファイバーの分散液である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー組成物。
【請求項8】
前記セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の平均値が、0.30以下である請求項7に記載のセルロースナノファイバー組成物。
【請求項9】
前記セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の標準偏差が、0.10以下である請求項7または8に記載のセルロースナノファイバー組成物。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー組成物の分散媒が除去されたセルロースナノファイバー成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノセルロース組成物に関し、特に、疎水性物質に対しても親和性を示すセルロースナノファイバー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノセルロースは、パルプなどの植物繊維を水媒体中で解繊して得られる、太さがナノメートルオーダーのセルロース繊維である。ナノセルロースは、ナノセルロースの構造化セルロースによって、セルロースナノファイバーやセルロースクリスタル、セルロースウィスカー、バクテリアセルロースなどに分類される。セルロースナノファイバーは、軽量且つ高強度であることから、例えば、熱可塑性樹脂などの補強材としての利用が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、セルロースナノファイバーは、親水性であることから、有機溶媒への均一分散が困難であり、適用範囲が限定されるという問題があった。そこで、例えば、従来、含水状態のセルロースナノファイバーに有機酸ビニルを反応させ、その後に生成物を回収することによって、セルロースナノファイバーに疎水性を付与することで、有機溶媒への分散性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。以下、植物繊維などから得られた天然由来のセルロースナノファイバーに対して疎水性などの所望の特性を付与したセルロースナノファイバーを、「変性セルロースナノファイバー」ということがある。
【0004】
しかし、特許文献2に示す変性セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーと有機酸ビニルとの反応条件が厳しく、また生産工程も煩雑であり、さらには、有機酸ビニルで変性された変性セルロースナノファイバーでは、変性の程度によりセルロースナノファイバー骨格の分子構造自体が変化してしまい、変性セルロースナノファイバーの疎水性の向上の点、ひいては、有機溶媒への分散性向上の点で改善の余地があった。従って、特許文献2に示す変性セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーの分散性に優れた分散液を得る点で改善の必要性があり、依然として、セルロースナノファイバーの適用範囲が限定されるという問題があった。
【0005】
また、セルロースナノファイバーに疎水性を付与する技術として、芳香族基等の濡れ性から選定した修飾基とポリアルキレングリコール基等の立体反発性と疎水性から選定した修飾基という2種類の修飾基をセルロースナノファイバーの表面に結合させることで、少ない修飾基の質量でセルロースナノファイバーを疎水性へ改質することが提案されている。しかし、芳香族基等とポリアルキレングリコール基等の2種類の修飾基を用いた変性セルロースナノファイバーは、化学構造が複雑であり、依然として、セルロースナノファイバーの分散性に優れた分散液を得る点で改善の必要性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-11392号公報
【特許文献2】国際公開第2016/010016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができるセルロースナノファイバー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記セルロースナノファイバーの分散媒と、を含むセルロースナノファイバー組成物。
[2]前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種を含む[1]に記載のセルロースナノファイバー組成物。
[3]前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースである[2]に記載のセルロースナノファイバー組成物。
[4]前記ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシプロピルセルロースである[2]または[3]に記載のセルロースナノファイバー組成物。
[5]前記セルロースナノファイバー100質量部に対して、前記セルロース誘導体を5.0質量部以上5000質量部以下含む[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のセルロースナノファイバー組成物。
[6]前記セルロースナノファイバー100質量部に対して、前記セルロース誘導体を10質量部以上2000質量部以下含む[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のセルロースナノファイバー組成物。
[7]前記セルロースナノファイバーの分散液である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のセルロースナノファイバー組成物。
[8]前記セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の平均値が、0.30以下である[7]に記載のセルロースナノファイバー組成物。
[9]前記セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の標準偏差が、0.10以下である[7]または[8]に記載のセルロースナノファイバー組成物。
[10][7]乃至[9]のいずれか1つに記載のセルロースナノファイバー組成物の分散媒が除去されたセルロースナノファイバー成形品。
【0009】
[1]のセルロースナノファイバー組成物で配合されるセルロースナノファイバーは、疎水性などの所望の特性を付与した変性セルロースナノファイバーではない(以下、変性セルロースナノファイバーではないセルロースナノファイバーを単に「セルロースナノファイバー」ということがある。)。すなわち、セルロースナノファイバー組成物で配合されるセルロースナノファイバーは、親水性の化学構造となっている。なお、セルロースナノファイバーは、平均繊維径が1.0μm未満である、すなわち、平均繊維径がナノオーダーであるセルロースファイバーである。
【0010】
また、[1]のセルロースナノファイバー組成物で配合されるセルロース誘導体は、セルロースナノファイバー組成物中において分散媒に溶解した状態となっている。セルロースナノファイバー組成物中においてセルロース誘導体が分散媒に溶解していることで、セルロース誘導体の水酸基とセルロースナノファイバー組成物中のセルロースナノファイバーの水酸基が相互作用し、セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態になっていると考えられる。
【0011】
「セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度」とは、分散媒20mlにセルロースナノファイバー0.1gに対して、セルロース誘導体を所定量添加したセルロースナノファイバーの分散液を、25℃の条件下、4.5mlの容器中に2.0ml投入して、サイズが直径9mm、高さ6.5mmであるスターラー(撹拌子)を用いて回転数1000rpmにて撹拌した際の、セルロースナノファイバーの分散液の高さ方向中央部分にて測定した、光路長1cm、波長400nmの光の透過度を意味する。また、1回の透過度の測定結果は、撹拌開始から2秒ごとに180秒間にわたって測定した各測定時間の透過度の平均透過度として算出した値である。また、「透過度の平均値」とは、3回の平均透過度の測定結果の平均値である。また、「透過度の標準偏差」とは、1回の平均透過度の測定、すなわち、2秒ごとに180秒間にわたって測定した透過度について、標準偏差を算出し、3回の平均透過度の測定結果で得られた各標準偏差の平均値を意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセルロースナノファイバー組成物によれば、セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記変性セルロースナノファイバーの分散媒と、を含むことにより、セルロースナノファイバー組成物中において、セルロースナノファイバーの分散性が優れている。すなわち、本発明のセルロースナノファイバー組成物は、疎水性などの特性を付与した変性セルロースナノファイバーを用意しなくても、セルロースナノファイバーの分散性に優れた組成物となっている。従って、本発明のセルロースナノファイバー組成物では、適用対象である疎水性物資へのセルロースナノファイバーへの分散を均一化できるので、セルロースの適用範囲を容易に広げることができる。
【0013】
また、本発明のセルロースナノファイバー組成物によれば、セルロースナノファイバーを予め疎水性に変性しておく必要がないので、セルロースナノファイバーの骨格が維持されていることから、セルロースナノファイバーの特性を適用対象へ確実に付与することができる。
【0014】
本発明のセルロースナノファイバー組成物によれば、セルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種を含むことにより、セルロースナノファイバー組成物中におけるセルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得ることができる。
【0015】
本発明のセルロースナノファイバー組成物によれば、セルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロースであることにより、セルロースナノファイバー組成物中におけるセルロースナノファイバーの分散性がより確実に向上する。
【0016】
本発明のセルロースナノファイバー組成物によれば、ヒドロキシアルキルセルロースがヒドロキシプロピルセルロースであることにより、セルロースナノファイバー組成物中におけるセルロースナノファイバーの分散性がさらに向上する。
【0017】
本発明のセルロースナノファイバー組成物によれば、セルロースナノファイバー100質量部に対して、セルロース誘導体を5.0質量部以上5000質量部以下含むことにより、セルロースナノファイバー組成物中におけるセルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得ることができる。また、本発明のセルロースナノファイバー組成物によれば、セルロースナノファイバー100質量部に対して、セルロース誘導体を10質量部以上2000質量部以下含むことにより、セルロースナノファイバー組成物中におけるセルロースナノファイバーの優れた分散性をさらに確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、比較例1(左)、実施例1(中央)、実施例2(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
【
図2】
図2は、比較例1(左)、実施例3(中央)、実施例4(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
【
図3】
図3は、比較例1(左)、実施例5(中央)、実施例6(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
【
図4】
図4は、比較例1(左)、実施例7(中央)、実施例8(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
【
図5】
図5は、比較例1(左)、実施例9(中央)、実施例10(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
【
図6】
図6は、比較例1(上段)、実施例1(下段左)、実施例2(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
【
図7】
図7は、比較例1(上段)、実施例3(下段左)、実施例4(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
【
図8】
図8は、比較例1(上段)、実施例5(下段左)、実施例6(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
【
図9】
図9は、比較例1(上段)、実施例7(下段左)、実施例8(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
【
図10】
図10は、比較例1(上段)、実施例9(下段左)、実施例10(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のセルロースナノファイバー組成物は、セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、前記セルロースナノファイバーの分散媒と、を含む。本発明のセルロースナノファイバー組成物では、セルロース誘導体は分散媒に溶解しており、セルロースナノファイバーは分散媒に分散している状態となっている。
【0020】
本発明のセルロースナノファイバー組成物では、セルロースナノファイバー組成物中において、セルロースナノファイバーは優れた分散性を有している。すなわち、本発明のセルロースナノファイバー組成物は、疎水性などの特性を付与した変性セルロースナノファイバーを用意しなくても、セルロースナノファイバーの分散性に優れた組成物となっている。従って、本発明のセルロースナノファイバー組成物では、適用対象である疎水性物資へのセルロースナノファイバーへの分散を均一化できるので、セルロースの適用範囲を容易に広げることができる。また、本発明のセルロースナノファイバー組成物は、セルロースナノファイバーを予め疎水性に変性しておく必要がないので、セルロースナノファイバーの骨格が維持されていることから、セルロースナノファイバーの特性を適用対象へ確実に付与することができる。
【0021】
<セルロースナノファイバー>
本発明のセルロースナノファイバー組成物に配合されるセルロースナノファイバーについて、以下に詳細を説明する。本発明のセルロースナノファイバー組成物に配合されるセルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーに対して疎水性などの所望の特性を付与した変性セルロースナノファイバーではなく、変性処理をしていない親水性のセルロースナノファイバーである。従って、セルロースナノファイバー組成物にセルロースナノファイバーを配合するにあたり、疎水性などの所望の特性を付与するためにセルロースナノファイバーを変性する必要はない。
【0022】
セルロースナノファイバーは、平均繊維径が1.0μm未満である。平均繊維径が1.0μm未満であるセルロースナノファイバーであれば、セルロースのサイズは、特に限定されないが、セルロースナノファイバーの適用範囲の拡大の点から、平均繊維径は、4nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下が特に好ましい。また、セルロースナノファイバーの平均繊維長は、特に限定されないが、セルロースナノファイバーの適用範囲の拡大の点から、20μm以上200μm以下が好ましく、50μm以上150μm以下が特に好ましい。セルロースの平均繊維径及び平均繊維長は、例えば、平均繊維径は、走査型プローブ顕微鏡や窒素吸着法、平均繊維長は、電子顕微鏡(透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM))や走査型プローブ顕微鏡で測定することができる。
【0023】
セルロースナノファイバーとしては、天然物由来のセルロースを挙げることができる。具体的には、セルロースナノファイバーとしては、例えば、原料となる天然物由来であるセルロース前駆体に解繊処理を施してナノファイバー化したものを挙げることができる。セルロースナノファイバーの原料であるセルロース前駆体としては、例えば、パルプなどの植物繊維などを挙げることができる。
【0024】
<セルロース誘導体>
セルロースナノファイバー組成物に配合されるセルロース誘導体は、セルロースが化学的に修飾されることで得られる化合物である点で、セルロースナノファイバーとは異なる成分である。セルロース誘導体は、セルロースナノファイバー組成物中において分散媒に溶解した状態となっている。セルロースナノファイバー組成物中においてセルロース誘導体が分散媒に溶解していることで、セルロース誘導体の水酸基とセルロースナノファイバー組成物中のセルロースナノファイバーの水酸基が相互作用し、セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態になっていると考えられる。また、セルロースナノファイバーとセルロース誘導体は、どちらもセルロース骨格を有することから分子構造が類似している。従って、セルロースナノファイバーはセルロース誘導体との親和性が高いことから、セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態になりやすいと考えられる。セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態になっていることで、セルロース誘導体の界面活性能が発揮されて、セルロースナノファイバー組成物中において、セルロースナノファイバーは優れた分散性を有することとなると考えられる。
【0025】
また、本発明のセルロースナノファイバー組成物では、生体適合性の材料であるセルロース誘導体を使用するので、環境負荷を低減でき、安全性にも優れている。
【0026】
セルロース誘導体は、セルロースの水酸基の少なくとも一部が化学反応して得られる誘導体であれば、特に限定されず、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が挙げられる。これらのうち、セルロースナノファイバー組成物中におけるセルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得ることができる点から、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロースが好ましく、セルロースナノファイバーの分散性がより確実に向上する点で、ヒドロキシアルキルセルロースが特に好ましい。セルロース誘導体として、例えば、ヒドロキシアルキルセルロースとアルキルセルロースを併用してもよく、いずれかを単独で使用してもよい。
【0027】
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシペンチルセルロース、ヒドロキシヘキシルセルロース等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、セルロースナノファイバー組成物中におけるセルロースナノファイバーの分散性がさらに向上する点から、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0028】
アルキルセルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロース等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、セルロースナノファイバーの優れた分散性をより確実に得ることができる点から、メチルセルロース、エチルセルロースが好ましく、エチルセルロースが特に好ましい。
【0029】
カルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシブチルセルロース、カルボキシペンチルセルロース、カルボキシヘキシルセルロース等が挙げられる。
【0030】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとは、ヒドロキシアルキルとアルキルとを有するセルロースである。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシメチルブチルセルロース等のヒドロキシメチルとアルキルとを有するセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルブチルセルロース等のヒドロキシエチルとアルキルとを有するセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルプロピルセルロース、ヒドロキシプロルブチルセルロース等のヒドロキシプロピルとアルキルとを有するセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルエチルセルロース、ヒドロキシブチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルブチルセルロース等のヒドロキシブチルとアルキルとを有するセルロースが挙げられる。
【0031】
セルロース誘導体の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、セルロースナノファイバー100質量部に対して、セルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得る点から、5.0質量部が好ましく、セルロースナノファイバーの優れた分散性をさらに確実に得る点から、10質量部がより好ましく、セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上する点から、100質量部がさらに好ましく、200質量部が特に好ましい。一方で、セルロース誘導体の配合量の上限値は、セルロースナノファイバー100質量部に対して、セルロースナノファイバーの特性を適用対象へ確実に付与しつつ、セルロースナノファイバーの優れた分散性を確実に得る点から、5000質量部が好ましく、セルロースナノファイバーの優れた分散性をさらに確実に得る点から、4000質量部がより好ましく、3000質量部さらに好ましく、2000質量部が特に好ましい。
【0032】
<分散媒>
分散媒は、セルロースナノファイバー組成物中においてセルロースナノファイバーを分散させ、また、セルロース誘導体が溶解する媒体として機能する。本発明のセルロースナノファイバー組成物では、セルロース誘導体は分散媒に溶解しており、セルロースナノファイバーは分散媒に分散している状態となっていることにより、セルロースナノファイバーにセルロース誘導体が配位しているような状態となり、セルロースナノファイバー組成物中において、セルロースナノファイバーは優れた分散性を有することとなる。
【0033】
分散媒としては、有機溶媒を挙げることができる。有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、プロパノール等の炭素数1~5個のアルコール、シクロヘキサノール、プロピレングリコール、シクロヘキサノン、ジオキサン、セロソルブ、ブチルセロソルブ、氷酢酸、ギ酸、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ピリジン、塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼン:メタノール(1:1(体積比))の混合物、トルエン:エタノール(3:2(体積比))の混合物、グリセリン:水(3:7(体積比))の混合物などを挙げることができる。また、分散媒としては、水を挙げることができる。これらの各種分散媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、分散液として、水と相溶する有機溶媒を任意の割合で混合した溶液を使用してもよい。
【0034】
分散媒の配合量は、特に限定されず、本発明のセルロースナノファイバー組成物の使用条件等により、選択可能である。
【0035】
上記から、本発明のセルロースナノファイバー組成物の態様は、セルロースナノファイバーの分散液であり、例えば、セルロースナノファイバーが有機溶媒に分散した分散液である。
【0036】
セルロースナノファイバーの分散液について、波長400nmの光の透過度を測定することで、セルロースナノファイバーの分散液におけるセルロースナノファイバーの分散状態を評価することができる。セルロースナノファイバーの分散液においてセルロースナノファイバーの分散性が低く、分散液の底部にてセルロースナノファイバーが凝集した状態となっているほど、セルロースナノファイバーの分散液の高さ方向中央部分にて測定した波長400nmの光の透過度は高くなる。一方で、セルロースナノファイバーの分散液においてセルロースナノファイバーが高い分散性を有し、セルロースナノファイバーの凝集状態が低減されている、すなわち、セルロースナノファイバーの分散が均一化されているほど、セルロースナノファイバーの分散液の高さ方向中央部分にて測定した波長400nmの光の透過度は低くなる。
【0037】
セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の平均値は、セルロースナノファイバーの優れた分散性が確実に得られている点から、0.30以下が好ましく、0.20以下がより好ましく、セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上している点から、0.10以下が特に好ましい。なお、上記した光の透過度の平均値の下限値としては、例えば、0.02が挙げられる。
【0038】
セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の標準偏差を測定することで、セルロースナノファイバーの分散液におけるセルロースナノファイバーの分散状態を評価することができる。セルロースナノファイバーの分散液においてセルロースナノファイバーの分散性が低く、分散液の底部にてセルロースナノファイバーが凝集しやすい状態となっているほど、セルロースナノファイバーの分散安定性が低いので、透過度の標準偏差は高くなる。一方で、セルロースナノファイバーの分散液においてセルロースナノファイバーの凝集状態が低減され、セルロースナノファイバーの分散が均一化されているほど、セルロースナノファイバーの分散安定性が高いので、透過度の標準偏差は低くなる。
【0039】
セルロースナノファイバーの分散液の、撹拌手段の回転数1000rpmにおける波長400nmの光の透過度の標準偏差は、セルロースナノファイバーの優れた分散性が確実に得られている点から、0.10以下が好ましく、0.06以下がより好ましく、セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上している点から、0.03以下がさらに好ましく、0.02以下が特に好ましい。
【0040】
<セルロースナノファイバー成形品>
本発明のセルロースナノファイバー組成物を所定形状に形成後、セルロースナノファイバー組成物から分散媒を乾燥等により除去することにより、所定形状のセルロースナノファイバー成形品を得ることができる。本発明のセルロースナノファイバー組成物では、セルロースナノファイバーの凝集状態が低減され、セルロースナノファイバーの分散が均一化されているので、本発明のセルロースナノファイバー組成物から分散媒が除去されて得られたセルロースナノファイバー成形品は、セルロースナノファイバーの分布が均一化され、また、表面が平滑化されている。また、本発明のセルロースナノファイバー組成物は、セルロースナノファイバーの優れた分散性に加えて、適度な流動性も有しているので、フィルム状の成形品を容易に得ることができる。
【0041】
<セルロースナノファイバー組成物の製造方法>
本発明のセルロースナノファイバー組成物は、セルロースナノファイバーが水に分散したセルロースナノファイバー水分散体またはセルロースナノファイバー粉末を用意するセルロースナノファイバー用意工程と、セルロースナノファイバー水分散体の場合にはセルロースナノファイバー水分散体を乾燥処理して水分を除去する乾燥工程と、分散媒中にセルロース誘導体を添加するセルロース誘導体添加工程と、セルロース誘導体を添加した分散媒に、必要に応じて乾燥処理を施したセルロースナノファイバーをさらに添加するセルロースナノファイバー添加工程と、セルロース誘導体とセルロースナノファイバーを添加した分散媒を撹拌する撹拌工程にて、製造することができる。
【0042】
セルロースナノファイバー用意工程としては、例えば、原料となる天然物由来であるセルロース前駆体に解繊処理を施してセルロース前駆体をナノファイバー化してセルロースナノファイバーを得る方法を挙げることができる。セルロース前駆体を解繊処理する方法は、特に限定されず、例えば、ミキサー、高速ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、高速回転ミキサー、グラインダー、凍結粉砕、メディアミル、ボールミル等を用いた解繊処理を挙げることができる。
【実施例0043】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0044】
<セルロースナノファイバー組成物の調製>
実施例1
セルロースナノファイバー水分散体(平均繊維長100μm、平均繊維径30~40nm、モリマシナリー株式会社製「CellFim C-100(水分量約95質量%)」)を乾燥処理してセルロースナノファイバー水分散体から水分を除去して固相のセルロースナノファイバーを得た。テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.01gと上記のようにして得られた固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:0.1)添加して、24時間撹拌することで、セルロースナノファイバーの分散液であるセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0045】
実施例2
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.03gと固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:0.3)添加した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0046】
実施例3
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.05gと固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:0.5)添加した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0047】
実施例4
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.1gと固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:1)添加した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0048】
実施例5
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.3gと固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:3)添加した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0049】
実施例6
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.5gと固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:5)添加した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0050】
実施例7
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を0.7gと固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:7)添加した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0051】
実施例8
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を1.0gと固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:10)添加した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0052】
実施例9
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を1.5gと固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:15)添加した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0053】
実施例10
テトラヒドロフラン(分散媒)20ml中にヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を2.0gと固相のセルロースナノファイバー0.1g(セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:20)添加した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0054】
比較例1
ヒドロキシプロピルセルロース(セルロース誘導体)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー組成物を調製した。
【0055】
<評価項目>
(1)セルロースナノファイバー組成物の分散性
実施例1~10のセルロースナノファイバー組成物、比較例1のセルロースナノファイバー組成物について、0.5ml採取し、そこにテトラヒドロフラン6mlを添加して分散性評価用の試料を作製し、セルロースナノファイバーの分散状態を目視にて観察し、以下のように評価した。
◎:セルロースナノファイバーの分散状態が非常に優れている。
○:セルロースナノファイバーの凝集状態が若干見られるものの、良好な分散状態である。
×:セルロースナノファイバーの多くが凝集状態となっており、セルロースナノファイバーの分散性が認められない。
【0056】
(2)セルロースナノファイバー組成物から得られたフィルムの成形性
実施例1~10のセルロースナノファイバー組成物、比較例1のセルロースナノファイバー組成物の調製後、セルロースナノファイバー組成物をシャーレに展開して、35℃の空気恒温槽中に4時間放置して、テトラヒドロフランを揮発させてセルロースナノファイバーフィルムを得た。セルロースナノファイバーフィルムの成形状態を目視にて観察し、以下のように評価した。
◎:セルロースナノファイバーフィルムの表面状態は平滑であり、セルロースナノファイバーのムラもほとんど認められず、セルロースナノファイバーフィルムの成形状態が非常に優れている。
○:セルロースナノファイバーフィルムの表面状態は若干粗く、セルロースナノファイバーのムラも若干見られるものの、良好な成形状態である。
×:セルロースナノファイバーフィルムが形成できない、またはセルロースナノファイバーのムラが多く見られ、セルロースナノファイバーフィルムへの成形性が認められない。
【0057】
(3)波長400nmの光の透過度
実施例1~10のセルロースナノファイバー組成物、比較例1のセルロースナノファイバー組成物について、4.5mlの容器中に2.0ml投入して、25℃の条件下、サイズが直径9mm、高さ6.5mmであるスターラーを用いて回転数1000rpmにて撹拌し、撹拌中におけるセルロースナノファイバー組成物の高さ方向中央部分に波長400nmの光を光路長1cmにて照射し、入射光の放射強度(I0)とセルロースナノファイバー組成物を透過した光の放射強度(I)から波長400nmの光の透過度を測定した。1回の透過度の測定値は、撹拌開始から2秒ごとに180秒間にわたって測定した各測定時間の透過度の平均値(平均透過度)として算出した。これを3回繰り返して得られた平均透過度(n=3)の平均値を波長400nmの光の透過度とした。
【0058】
(4)透過度の標準偏差
2秒ごとに180秒間にわたって測定した1回の平均透過度の測定について、標準偏差を算出し、3回の平均透過度の測定結果で得られた各標準偏差の平均値から透過度の標準偏差を求めた。
【0059】
評価結果を下記表1に示す。なお、
図1は、比較例1(左)、実施例1(中央)、実施例2(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
図2は、比較例1(左)、実施例3(中央)、実施例4(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
図3は、比較例1(左)、実施例5(中央)、実施例6(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
図4は、比較例1(左)、実施例7(中央)、実施例8(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
図5は、比較例1(左)、実施例9(中央)、実施例10(右)におけるセルロースナノファイバー組成物の分散性を示す写真である。
図6は、比較例1(上段)、実施例1(下段左)、実施例2(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
図7は、比較例1(上段)、実施例3(下段左)、実施例4(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
図8は、比較例1(上段)、実施例5(下段左)、実施例6(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
図9は、比較例1(上段)、実施例7(下段左)、実施例8(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
図10は、比較例1(上段)、実施例9(下段左)、実施例10(下段右)におけるセルロースナノファイバー組成物の成形性を示す写真である。
【0060】
【0061】
上記表1及び
図1~5から、セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、セルロースナノファイバーの分散媒と、を含む実施例1~10のセルロースナノファイバー組成物では、セルロースナノファイバーの分散性に優れていた。特に、セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:1~1:20である実施例4~10では、セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上した。
【0062】
また、上記表1と
図6~10から、実施例1~10のセルロースナノファイバー組成物では、セルロースナノファイバーの成形性にも優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができることが判明した。特に、セルロースナノファイバー:ヒドロキシプロピルセルロースの質量比=1:1~1:20である実施例4~10では、成形性がさらに向上した。
【0063】
また、波長400nmの光の透過度が0.176以下、透過度の標準偏差が0.075以下にそれぞれ低減されている実施例1~10では、分散性と成形性に優れていた。特に、波長400nmの光の透過度が0.095以下、透過度の標準偏差が0.014以下にそれぞれに低減されている実施例4~10では、セルロースナノファイバーの分散性と成形性がさらに向上した。
【0064】
一方で、上記表1と
図1~5から、セルロース誘導体を添加しなかった比較例1のセルロースナノファイバー組成物では、セルロースナノファイバーの分散性を得ることができなかった。また、上記表1と
図6~10から、比較例1のセルロースナノファイバー組成物では、成形性が得られず、セルロースの適用範囲を広げるのは難しいことが判明した。比較例1では、波長400nmの光の透過度が0.661であり、透過度の標準偏差が1.096であった。
本発明のセルロースナノファイバー組成物は、セルロースナノファイバーの分散性に優れており、セルロースの適用範囲を容易に広げることができるので、広汎な分野で利用可能であり、例えば、成形品の材料となる樹脂組成物の分野を挙げることができる。