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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117769
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】音響処理装置、及び、音響処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020513
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】中村 一啓
(72)【発明者】
【氏名】垰 雅文
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA02
5D220AB01
5D220AB08
(57)【要約】
【課題】車内の騒音を検出し、より聴感上適正な音量及び音質にて音響を出力する。
【解決手段】車両に搭載される音響処理装置は、マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力する音源除去部と、車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する速度騒音レベル算出部と、所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する音量音源レベル算出部と、音量音源レベルと速度騒音レベルとの比であるSN比を出力するSN比算出部と、SN比に基づいて、騒音レベルに関するレベル、及び、速度騒音レベルを含む推定騒音レベル候補のうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する出力選択部と、を備え、マイクレベルは、車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示し、音源レベルは、車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される音響処理装置であって、
マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力する音源除去部と、
前記車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する速度騒音レベル算出部と、
所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する音量音源レベル算出部と、
前記音量音源レベルと前記速度騒音レベルとの比であるSN比を出力するSN比算出部と、
前記SN比に基づいて、前記騒音レベルに関するレベル、及び、前記速度騒音レベルを含む推定騒音レベル候補のうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する出力選択部と、を備え、
前記マイクレベルは、前記車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示し、
前記音源レベルは、前記車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す、
音響処理装置。
【請求項2】
前記出力選択部は、前記SN比が第1の閾値よりも大きい場合、前記速度騒音レベルを選択する、
請求項1に記載の音響処理装置。
【請求項3】
前記速度騒音レベルに基づいて前記騒音レベルを制限する騒音レベル制限部をさらに備え、
前記出力選択部における前記騒音レベルに関するレベルは、前記騒音レベル制限部によって制限された前記騒音レベルである、
請求項1又は2に記載の音響処理装置。
【請求項4】
前記推定騒音レベル候補は、前記マイクレベルに関するレベルをさらに含み、
前記出力選択部は、前記SN比に基づいて、前記マイクレベルに関するレベル、前記騒音レベルに関するレベル、及び、前記速度騒音レベルのうちのいずれか1つを選択し、前記推定騒音レベルとして出力する、
請求項1に記載の音響処理装置。
【請求項5】
前記出力選択部は、
前記SN比が第1の閾値よりも小さい場合、前記マイクレベルに関するレベルを選択し、
前記SN比が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値よりも大きい場合、前記速度騒音レベルを選択し、
前記SN比が前記第1の閾値以上であり、かつ、前記第2の閾値以下である場合、前記騒音レベルに関するレベルを選択する、
請求項4に記載の音響処理装置。
【請求項6】
前記速度騒音レベルに基づいて前記マイクレベルを制限するマイクレベル制限部をさらに備え、
前記出力選択部における前記マイクレベルに関するレベルは、前記マイクレベル制限部によって制限された前記マイクレベルである、
請求項4又は5に記載の音響処理装置。
【請求項7】
前記速度騒音レベルに基づいて前記騒音レベルを制限する騒音レベル制限部をさらに備え、
前記出力選択部における前記騒音レベルに関するレベルは、前記騒音レベル制限部によって制限された前記騒音レベルである、
請求項4から6のいずれか1項に記載の音響処理装置。
【請求項8】
車両に搭載される音響処理装置であって、
マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力する音源除去部と、
前記車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する速度騒音レベル算出部と、
所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する音量音源レベル算出部と、
前記速度騒音レベルに基づいて制限された前記マイクレベルである、制限マイクレベルを出力するマイクレベル制限部と、
前記音量音源レベルと前記制限マイクレベルとの比であるSN比を出力するSN比算出部と、
前記SN比に基づいて、前記マイクレベル、前記騒音レベル、及び、前記制限マイクレベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する出力選択部と、を備え、
前記マイクレベルは、前記車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示し、
前記音源レベルは、前記車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す、
音響処理装置。
【請求項9】
車両に搭載される音響処理装置であって、
前記車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号から、適応フィルタを用いて音源信号を減算した、騒音信号を出力する音源除去部と、
前記車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する速度騒音レベル算出部と、
所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する音量音源レベル算出部と、
前記音量音源レベルと前記速度騒音レベルとの比であるSN比を出力するSN比算出部と、
前記SN比に基づいて、前記マイク信号の周波数特性を示すマイクレベル、前記騒音信号の周波数特性を示す騒音レベル、及び、前記速度騒音レベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する出力選択部と、を備え、
前記音源信号は、前記車内に設けられたスピーカから出力される、
音響処理装置。
【請求項10】
車両に搭載される装置による音響処理方法であって、
マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力し、
前記車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力し、
所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力し、
前記音量音源レベルと前記速度騒音レベルとの比であるSN比を出力し、
前記SN比に基づいて、前記騒音レベルに関するレベル、及び、前記速度騒音レベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力し、
前記マイクレベルは、前記車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示し、
前記音源レベルは、前記車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す、
音響処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響処理装置、及び、音響処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の停止時と走行時とでは車内の騒音レベルが異なる。そのため、車両に搭載された音響装置において、停止時の騒音レベルに基づいて音響装置の音量を調整しておいても、走行を始めるに伴って騒音レベルが増加すると、再生音の特に微小音量部分がマスクされ、音量不足に感じられることがある。
【0003】
特許文献1には、車内に設置したマイクを使用して音声帯域全般にわたる騒音を検出するとともに、再生音の影響が大きく騒音検出が困難な場合においては、車両の走行速度を手がかりとして騒音量を推定することにより、聴感と対応の良い騒音検出を可能とし、聴感上適正な自動音量音質調節機能を備える車載音響装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-121983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車内における、さらなる聴感上適正な音量及び音質での音響出力が求められている。
【0006】
本開示の目的は、車内において、より聴感上適正な音量及び音質にて音響を出力することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る音響処理装置は、車両に搭載される音響処理装置であって、マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力する音源除去部と、前記車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する速度騒音レベル算出部と、所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する音量音源レベル算出部と、前記音量音源レベルと前記速度騒音レベルとの比であるSN比を出力するSN比算出部と、前記SN比に基づいて、前記騒音レベルに関するレベル、及び、前記速度騒音レベルを含む推定騒音レベル候補のうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する出力選択部と、を備え、前記マイクレベルは、前記車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示し、前記音源レベルは、前記車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す。
【0008】
本開示の一態様に係る音響処理装置は、車両に搭載される音響処理装置であって、マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力する音源除去部と、前記車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する速度騒音レベル算出部と、所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する音量音源レベル算出部と、前記速度騒音レベルに基づいて制限された前記マイクレベルである、制限マイクレベルを出力するマイクレベル制限部と、前記音量音源レベルと前記制限マイクレベルとの比であるSN比を出力するSN比算出部と、前記SN比に基づいて、前記マイクレベル、前記騒音レベル、及び、前記制限マイクレベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する出力選択部と、を備え、前記マイクレベルは、前記車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示し、前記音源レベルは、前記車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す。
【0009】
本開示の一態様に係る音響処理装置は、車両に搭載される音響処理装置であって、前記車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号から、適応フィルタを用いて音源信号を減算した、騒音信号を出力する音源除去部と、前記車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する速度騒音レベル算出部と、所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する音量音源レベル算出部と、前記音量音源レベルと前記速度騒音レベルとの比であるSN比を出力するSN比算出部と、前記SN比に基づいて、前記マイク信号の周波数特性を示すマイクレベル、前記騒音信号の周波数特性を示す騒音レベル、及び、前記速度騒音レベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する出力選択部と、を備え、前記音源信号は、前記車内に設けられたスピーカから出力される。
【0010】
本開示の一態様に係る音響処理方法は、マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力し、前記車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力し、所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力し、前記音量音源レベルと前記速度騒音レベルとの比であるSN比を出力し、前記SN比に基づいて、前記騒音レベルに関するレベル、及び、前記速度騒音レベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力し、前記マイクレベルは、前記車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示し、前記音源レベルは、前記車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す。
【0011】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、車内において、より聴感上適正な音量及び音質にて音響を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係る音響処理装置の構成例を示すブロック図
図2】本実施の形態に係る騒音レベル推定部の第1の構成例を示すブロック図
図3】本実施の形態に係る騒音レベル推定部の第2の構成例を示すブロック図
図4】本実施の形態に係る騒音レベル推定部の第3の構成例を示すブロック図
図5】本実施の形態に係る騒音レベル推定部の第4の構成例を示すブロック図
図6】第4の構成例を有する騒音レベル推定部が行う処理の一例を示すフローチャート
図7A】マイクレベルを推定騒音レベルとして算出したSN比を横軸としたグラフ
図7B】音源除去部から出力される騒音レベルを推定騒音レベルとして算出したSN比を横軸とした誤差を示すグラフ
図7C】SN比が閾値Th2以下である場合には、マイクレベルを推定騒音レベルとし、SN比が閾値Th2よりも大きい場合には、速度騒音レベルを推定騒音レベルとして算出したSN比を横軸としたグラフ
図7D】SN比が閾値Th2以下である場合には、音源除去部から出力される騒音レベルを推定騒音レベルとし、SN比が閾値Th2よりも大きい場合には、速度騒音レベルを推定騒音レベルとして算出したSN比を横軸としたグラフ
図8A】マイクに突発的な騒音が入力されない場合における、推定騒音レベルの時間変化を示すグラフ
図8B】騒音レベル制限部が設けられず、マイクに突発的な騒音が入力された場合における、推定騒音レベルの時間変化を示すグラフ
図8C】騒音レベル制限部が設けられ、マイクに突発的な騒音が入力された場合における、推定騒音レベルの時間変化を示すグラフ
図9】本実施の形態に係る騒音レベル推定部の第5の構成例を示すブロック図
図10】第5の構成例を有する騒音レベル推定部が行う処理の一例を示すフローチャート
図11図10に示すサブ処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0015】
(本実施の形態)
<音響処理装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る音響処理装置10の構成例を示すブロック図である。
【0016】
音響処理装置10は、車両に搭載され、音源から得られる音源信号を音響として車内に出力する。音響処理装置10は、図1に示すように、音源信号入力部11、騒音追従型イコライザ12、音量増幅部13、スピーカ14、マイク信号入力部15、速度入力部16、音量入力部17、騒音レベル推定部18、音源レベル分析部19、及び、補償量算出部20を含んで構成される。
【0017】
音源信号入力部11には、音源信号が入力される。音源の例として、ラジオ、カセットテープ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、USBメモリ、SDカード、インターネットストリーミング等が挙げられる。すなわち、音源信号は、音源から再生された音の時間信号である。
【0018】
騒音追従型イコライザ12は、音源信号入力部11に入力された音源信号の周波数特性を、後述する補償量算出部20から出力される補償量に基づいて調整し、調整後の音源信号を出力する。以下、音源信号の周波数特性を音源レベルと称する。補償量は、車両の走行等によって車内に生じる騒音のために聞こえにくくなっている音源レベルを、聞こえやすい音源レベルになるように補償するための量を示す。すなわち、騒音追従型イコライザ12は、補償量に基づいて、騒音によって聞こえにくくなっている音源レベルを、聞こえやすい音源レベルになるように調整する。また、補償量は車内の騒音に基づいて算出される量であるため、騒音の変化に応じて補償量も変化する。したがって、騒音追従型イコライザ12は、補償量を用いて、音源レベルを、聞こえやすいものとなるように、騒音の変化に追従して調整できる。これにより、車内の乗員は、車内に騒音が生じている場合でも、音源を再生することによって生じる音響を聞きやすくなる。
【0019】
音量増幅部13は、騒音追従型イコライザ12から出力された音源信号を、音量入力部17に入力された音量に基づいて増幅し、増幅した音源信号を出力する。なお、音量増幅部13は、アンプと読み替えられてもよい。
【0020】
スピーカ14は、車内に設置され、音量増幅部13から出力された音源信号を、音響として出力する。
【0021】
マイク信号入力部15には、マイク信号が入力される。マイク信号は、車内に設置されたマイクに集音された音の時間信号である。したがって、マイク信号には、スピーカ14から車内に出力された音響の信号と、車内で聞こえる騒音の信号とが含まれ得る。
【0022】
速度入力部16には、車両の速度を示す値が入力される。車両の速度は、車両に搭載される車速センサから自動的に取得されてよい。
【0023】
音量入力部17は、音源信号をスピーカ14から音響として出力する際の音量を示す値が入力される。音量は、車内の乗員によって入力されてよい。例えば、乗員は、音響処理装置10を操作して、スピーカ14から出力される音響の音量を大きくしたり、小さくしたりすることができる。
【0024】
騒音レベル推定部18は、マイク信号入力部15に入力されたマイク信号と、音量増幅部13から出力された音源信号と、速度入力部16に入力された速度と、音量入力部17に入力された音量とに基づいて、車内における騒音の周波数特性を示す騒音レベルを推定し、推定騒音レベルとして出力する。なお、騒音レベル推定部18の詳細については後述する。
【0025】
音源レベル分析部19は、音量増幅部13から出力された音源信号の周波数特性を分析し、分析した周波数特性を示す音源レベルを出力する。なお、音源レベル分析部19は、音源レベルに所定の重み付けを行い、重み付けを行った後の音源レベルを出力してもよい。
【0026】
補償量算出部20は、音源レベル分析部19から出力された音源レベルと、騒音レベル推定部18から出力された推定騒音レベルとに基づいて補償量を算出し、算出した補償量を出力する。例えば、補償量算出部20は、音源レベルと推定騒音レベルとの差が所定の閾値未満である周波数帯域について、当該周波数帯域の音源レベルを高めるような補償量を算出する。
【0027】
なお、音響処理装置10は、プロセッサ、メモリ及びストレージ等を備えてよい。そして、騒音追従型イコライザ12、騒音レベル推定部18、音源レベル分析部19、及び、補償量算出部20は、プロセッサがメモリ及びストレージ等と協働して所定のコンピュータプログラムを実行することにより実現されてもよい。あるいは、騒音追従型イコライザ12、騒音レベル推定部18、音源レベル分析部19、及び、補償量算出部20の少なくとも1つは、集積回路によって実現されてもよい。集積回路の例として、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)が挙げられる。
【0028】
<第1の構成例>
図2は、本実施の形態に係る騒音レベル推定部18の第1の構成例を示すブロック図である。
【0029】
第1の構成例に係る騒音レベル推定部18は、マイクレベル分析部31、音源レベル分析部32、音源除去部33、速度騒音レベル算出部34、音量音源レベル算出部35、SN比算出部36、及び、出力選択部37を備える。
【0030】
マイクレベル分析部31は、マイク信号入力部15に入力されたマイク信号の周波数特性を分析し、分析した周波数特性を示すマイクレベルを出力する。
【0031】
音源レベル分析部32は、音量増幅部13から出力された音源信号の周波数特性を分析し、分析した周波数特性を示す音源レベルを出力する。なお、音源レベル分析部32は、音源レベルに所定の重み付けを行い、重み付けを行った後の音源レベルを出力してもよい。
【0032】
音源除去部33は、マイクレベル分析部31から出力されたマイクレベルから、音源レベル分析部32から出力された音源レベルを除去することにより、騒音レベルを算出する。例えば、音源除去部33は、減算処理部38を含み、減算処理部38は、マイクレベル(M)から音源レベル(S1)を減算したものを、騒音レベル(M-S1)として出力する。
【0033】
速度騒音レベル算出部34は、速度入力部16に入力された車両の速度に基づいて速度騒音レベルを算出し、算出した速度騒音レベル(N2)を出力する。速度騒音レベルは、ある速度のときの車内における騒音の周波数特性を示す。例えば、音響処理装置10の提供者は、各速度のときの車内の騒音レベルを測定し、各速度とその速度のときに測定した騒音レベルとを対応付けた速度騒音レベルテーブルを予め生成しておく。そして、当該提供者は、その速度騒音レベルテーブルを、音響処理装置10のメモリ又はストレージ等に予め格納しておく。速度騒音レベル算出部34は、その速度騒音レベルテーブルを用いて、速度入力部16に入力された速度に対応する速度騒音レベルを算出する。
【0034】
音量音源レベル算出部35は、音量入力部17に入力された音量に基づいて音量音源レベルを算出し、算出した音量音源レベル(S2)を出力する。音量音源レベルは、所定の音源信号のある音量のときの周波数特性を示す。例えば、音響処理装置10の提供者は、各音量のときの所定の音源信号の音源レベルを測定し、各音量とその音量のときに測定した音源レベルとを対応付けた音量音源レベルテーブルを予め生成しておく。そして、当該提供者は、その音量音源レベルテーブルを、音響処理装置10のメモリ又はストレージ等に予め格納しておく。音量音源レベル算出部35は、その音量音源レベルテーブルを用いて、音量入力部17に入力された音量に対応する音量音源レベルを算出する。
【0035】
SN比算出部36は、音量音源レベル算出部35から出力された音量音源レベル(S2)と、速度騒音レベル算出部34から出力された速度騒音レベル(N2)との比をSN比として算出し、算出したSN比を出力する。
【0036】
出力選択部37は、SN比算出部36から出力されたSN比に基づいて、マイクレベル分析部31から出力されたマイクレベル(M)と、音源除去部33から出力された騒音レベル(M-S1)と、速度騒音レベル算出部34から出力された速度騒音レベル(N2)とのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。例えば、出力選択部37は、次の(A1)~(A3)に示す選択を行う。
【0037】
(A1)出力選択部37は、SN比が所定の閾値Th0よりも小さい場合、マイクレベル(M)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。
(A2)出力選択部37は、SN比が所定の閾値Th1よりも大きい場合、速度騒音レベル(N2)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。なお、閾値Th1は閾値Th0よりも大きい。
(A3)出力選択部37は、SN比が上記(A1)及び(A2)のいずれにも該当しない場合、騒音レベル(M-S1)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。すなわち、出力選択部37は、SN比が閾値Th0以上であり、かつ、閾値Th1以下である場合、騒音レベル(M-S1)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。
【0038】
なお、上記マイクレベルは、マイクレベルに関するレベルに含まれてよい。上記騒音レベルは、騒音レベルに関するレベルに含まれてよい。また、マイクレベルに関するレベル、騒音レベルに関するレベル、及び、速度騒音レベルは、推定騒音レベル候補に含まれてよい。
【0039】
次に、本実施の形態において、出力選択部37が、上記の(A1)~(A3)のように選択を行う理由について説明する。
【0040】
上記(A3)に示す騒音レベル(M-S1)は、音源信号と騒音信号との間にエネルギー加算が成立すると仮定して、マイクレベル(M)から音源レベル(S1)を減算して算出されたものである。ここで、音源信号と騒音信号との間にエネルギー加算が成立するとは、マイク信号が、音源信号と騒音信号とを単純に加算したもので示される、ということを意味する。しかし、音源信号が騒音信号よりも十分に大きい場合、音源信号と騒音信号との間に単純なエネルギー加算が成立しない。したがって、この場合、マイクレベル(M)から音源レベル(S1)を減算して算出された騒音レベル(M-S1)は、実際の騒音レベルに対して大きな誤差を含みうる。補償量算出部20が大きな誤差を含む騒音レベル(M-S1)を用いて補償量を算出すると、実際の騒音レベルから大きくずれた補償量が算出される。騒音追従型イコライザ12が、そのように実際の騒音レベルから大きくずれた補償量を用いて音源レベルを調整すると、例えば音源レベルを不要に大きくしてしまい、聴感上適正でない音量及び音質にて音響が出力されるといった問題が生じる。
【0041】
これに対して、本実施の形態では、音源信号が騒音信号よりも十分に大きい場合、すなわち、SN比が所定の閾値Th1よりも大きい場合、出力選択部37は、上記(A2)に示すように、速度騒音レベル(N2)を選択及び出力する。したがって、補償量算出部20は、音源信号が騒音信号よりも十分に大きい場合、速度騒音レベル(N2)を用いて補償量を算出するため、上記の騒音レベル(M-S1)を用いた場合のような聴感上適正でない音量及び音質にて音響が出力されるといった問題が生じにくい。
【0042】
なお、出力選択部37が、音源信号が騒音信号よりも十分に小さい場合、すなわち、SN比が所定の閾値Th0よりも小さい場合に上記(A1)に示す選択を行っている理由は、次の通りである。すなわち、SN比が所定の閾値Th0よりも小さい場合、マイクレベル(M)は、騒音成分が支配的であるため、車内の騒音の周波数特性を適切に表していると推定できるためである。
【0043】
第1の構成例によれば、騒音レベル推定部18は、車内の騒音をより適切に表現している推定騒音レベルを補償量算出部20に提供できる。よって、音響処理装置10は、車内の騒音によって聞こえにくくなっている音源信号を、より聞こえやすいような音源信号に適切に調整し、音響としてスピーカ14から出力することができる。すなわち、音響処理装置10は、車内の騒音に対して、聴感上より適正な音量及び音質にて音響を出力することができる。
【0044】
<第2の構成例>
図3は、本実施の形態に係る騒音レベル推定部18の第2の構成例を示すブロック図である。
【0045】
第2の構成例に係る騒音レベル推定部18は、マイクレベル分析部31、音源除去部33、速度騒音レベル算出部34、音量音源レベル算出部35、SN比算出部36、出力選択部37、及び、騒音レベル分析部39を備える。
【0046】
マイクレベル分析部31、速度騒音レベル算出部34、音量音源レベル算出部35、及び、SN比算出部36は、第1の構成例と同様の処理を行う。
【0047】
音源除去部33は、減算処理部38と、適応フィルタ部40と、LMS(Least Mean Squares)アルゴリズム部41とを含んで構成される。
【0048】
適応フィルタ部40は、音量増幅部13から出力された音源信号に対して、LMSアルゴリズム部41から出力される補正係数に基づく可変フィルタを施し、可変フィルタ適用後の音源信号を出力する。
【0049】
減算処理部38は、マイク信号入力部15に入力されたマイク信号から、適応フィルタ部40から出力された音源信号を減算した騒音信号を出力する。
【0050】
LMSアルゴリズム部41は、音量増幅部13から出力された音源信号と、減算処理部38から出力された騒音信号とに基づいて、LMSアルゴリズムによって補正係数を算出し、適応フィルタ部40に出力する。なお、補正係数の算出方法には、LMSアルゴリズムに限られず、他の適応アルゴリズムが用いられてもよい。
【0051】
騒音レベル分析部39は、減算処理部38から出力された騒音信号の周波数特性を分析し、その分析した周波数特性を示す騒音レベル(M-S1)を出力する。
【0052】
出力選択部37は、SN比算出部36から出力されたSN比に基づいて、マイクレベル分析部31から出力されたマイクレベル(M)と、騒音レベル分析部39から出力された騒音レベル(M-S1)と、速度騒音レベル算出部34から出力された速度騒音レベル(N2)とのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。なお、出力選択部37は、第1の構成例にて説明した(A1)~(A3)によって選択を行ってよい。
【0053】
第2の構成例によれば、騒音レベル推定部18は、車内の騒音をより適切に表現している推定騒音レベルを補償量算出部20に提供できる。よって、音響処理装置10は、車内の騒音によって聞こえにくい音源信号を、より聞こえやすい音源信号に調整して、音響としてスピーカ14から出力することができる。
【0054】
なお、騒音信号が音源信号よりも十分に大きい場合、又は、音源信号が騒音信号よりも十分に小さい場合、音源信号に対する適応フィルタ部40の除去性能が低下することが考えられる。この場合、音源除去部33は、除去性能が低下しうる場合は適応フィルタ部40を用いず、除去性能が低下しないと考えられる場合に適応フィルタ部40を用いるよう構成されてもよい。これにより、音源除去部33から出力される騒音信号の誤差が小さくなるため、音響処理装置10は、聴感上より適正な音量及び音質にて音響を出力できる。
【0055】
<第3の構成例>
図4は、本実施の形態に係る騒音レベル推定部18の第3の構成例を示すブロック図である。
【0056】
第3の構成例に係る騒音レベル推定部18は、マイクレベル分析部31、音源レベル分析部32、音源除去部33、速度騒音レベル算出部34、音量音源レベル算出部35、SN比算出部36、出力選択部37、及び、マイクレベル制限部42を備える。
【0057】
マイクレベル分析部31、音源レベル分析部32、音源除去部33、音量音源レベル算出部35、及び、速度騒音レベル算出部34は、第1の構成例と同様の処理を行う。
【0058】
マイクレベル制限部42は、速度騒音レベル算出部34から出力される速度騒音レベル(N2)に基づいて、マイクレベル分析部31から出力されるマイクレベル(M)の上限及び下限を制限し、制限したマイクレベルを制限マイクレベル(M2)として出力する。例えば、マイクレベル制限部42は、次の(B1)~(B3)の処理を行う。
【0059】
(B1)マイクレベル制限部42は、マイクレベル(M)が速度騒音レベル(N2)に所定値Max1を加算したレベルよりも大きい場合、速度騒音レベル(N2)に所定値Max1を加算したレベルを、制限マイクレベル(M2)として出力する。
(B2)マイクレベル制限部42は、マイクレベル(M)が速度騒音レベル(N2)から所定値Min1を減算したレベルよりも小さい場合、速度騒音レベル(N2)から所定値Min1を減算したレベルを、制限マイクレベル(M2)として出力する。
(B3)マイクレベル制限部42は、マイクレベル(M)が上記(B1)及び(B2)のいずれにも該当しない場合、マイクレベル(M)をそのまま制限マイクレベル(M2)として出力する。すなわち、マイクレベル制限部42は、マイクレベル(M)が、速度騒音レベル(N2)に所定値Max1を加算したレベル以下であり、かつ、速度騒音レベル(N2)から所定値Min1を減算したレベル以上である場合、マイクレベル(M)をそのまま制限マイクレベル(M2)として出力する。
【0060】
SN比算出部36は、音量音源レベル算出部35から出力された音量音源レベル(S2)と、マイクレベル制限部42から出力された制限マイクレベル(M2)との比を算出し、その算出した比をSN比として出力する。
【0061】
出力選択部37は、SN比算出部36から出力されたSN比に基づいて、マイクレベル分析部31から出力されたマイクレベル(M)と、音源除去部33から出力された騒音レベル(M-S1)と、マイクレベル制限部42から出力された制限マイクレベル(M2)とのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。例えば、出力選択部37は、次の(C1)~(C3)に示す選択を行う。
【0062】
(C1)出力選択部37は、SN比が所定の閾値Th0よりも小さい場合、マイクレベル(M)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。
(C2)出力選択部37は、SN比が所定の閾値Th1よりも大きい場合、制限マイクレベル(M2)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。なお、閾値Th1は閾値Th0よりも大きい。
(C3)出力選択部37は、SN比が上記(C1)及び(C2)のいずれにも該当しない場合、騒音レベル(M-S1)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。すなわち、出力選択部37は、SN比が、閾値Th0以上であり、かつ、閾値Th1以下である場合、騒音レベル(M-S1)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。
【0063】
第1の構成例のように、速度騒音レベル(N2)を推定騒音レベルとして補償量を算出する場合、車両が走行中である路面の違いによって生じる騒音の変化が補償量に反映されない。これに対して、マイクレベルには、路面の違いによって変化する騒音の成分も含まれる。したがって、マイクレベルを推定騒音レベルとして用いた上で補償量を算出することにより、路面の違いによって生じる騒音の変化を補償量に反映させることができる。一方で、マイクレベルには、突発的な騒音が含まれる場合がある。突発的な騒音の例として、乗員がマイクに触れたときの音、乗員の急な大声、車両が段差を乗り越えたときの音などが挙げられる。このような突発的な騒音をそのまま含むマイクレベルを推定騒音レベルとして補償量を算出し、騒音追従型イコライザ12が、そのように算出された補償量を用いて音源レベルを調整すると、例えば音源レベルを不要に大きくしてしまうといった問題が生じる。そのため、第3の構成例では、上述した通り、マイクレベル制限部42を設け、上記(C2)に示すように、SN比が閾値Th1よりも大きい場合、制限マイクレベル(M2)を選択及び出力することにより、このような問題の発生を抑制している。
【0064】
なお、SN比算出部36は、音量音源レベル(S2)に代えて、音源レベル分析部32から出力される音源レベル(S1)を用いてSN比を算出してもよい。これにより、例えばCD音源のように録音レベルが小さな音源の場合でも、適切な音源レベル(S1)でSN比を算出できる。この場合、騒音レベル推定部18は、音量音源レベル算出部35から出力される音量音源レベル(S2)に基づいて、音源レベル分析部32から出力される音源レベル(S1)の上限及び下限を制限し、制限した音源レベルをSN比算出部36に出力してもよい。これにより、例えば、急激に音源レベル(S1)が変動する場合、あるいは、アナログの音源信号に不要なノイズが含まれている場合等であっても、安定的なSN比が得られる。
【0065】
<第4の構成例>
図5は、本実施の形態に係る騒音レベル推定部18の第4の構成例を示すブロック図である。
【0066】
第4の構成例に係る騒音レベル推定部18は、マイクレベル分析部31、音源レベル分析部32、音源除去部33、速度騒音レベル算出部34、音量音源レベル算出部35、SN比算出部36、出力選択部37、及び、騒音レベル制限部43を備える。
【0067】
マイクレベル分析部31、音源レベル分析部32、音源除去部33、速度騒音レベル算出部34、音量音源レベル算出部35、及び、SN比算出部36は、第1の構成例と同様の処理を行う。
【0068】
騒音レベル制限部43は、速度騒音レベル算出部34から出力される速度騒音レベル(N2)に基づいて、音源除去部33から出力される騒音レベル(M-S1)の上限及び下限を制限し、その制限した騒音レベルを制限騒音レベルとして出力する。例えば、騒音レベル制限部43は、次の(D1)~(D3)の処理を行う。
【0069】
(D1)騒音レベル制限部43は、騒音レベル(M-S1)が速度騒音レベル(N2)に所定値Max2を加算したレベルよりも大きい場合、速度騒音レベル(N2)に所定値Max2を加算したレベルを、制限騒音レベルとして出力する。
(D2)騒音レベル制限部43は、騒音レベル(M-S1)が速度騒音レベル(N2)から所定値Min2を減算したレベルよりも小さい場合、速度騒音レベル(N2)から所定値Min2を減算したレベルを、制限騒音レベルとして出力する。
(D3)騒音レベル制限部43は、騒音レベル(M-S1)が上記(D1)及び(D2)のいずれにも該当しない場合、騒音レベル(M-S1)をそのまま制限騒音レベルとして出力する。すなわち、騒音レベル制限部43は、騒音レベル(M-S1)が、速度騒音レベル(N2)に所定値Max2を加算したレベル以下、かつ、速度騒音レベル(N2)から所定値Min2を減算したレベル以上である場合、騒音レベル(M-S1)をそのまま制限騒音レベルとして出力する。
【0070】
なお、上記制限騒音レベルは、騒音レベルに関するレベルに含まれてよい。騒音レベルに関するレベル、及び、速度騒音レベルは、推定騒音レベル候補に含まれてよい。
【0071】
出力選択部37は、SN比算出部36から出力されたSN比に基づいて、騒音レベル制限部43から出力された制限騒音レベルと、速度騒音レベル算出部34から出力された速度騒音レベル(N2)とのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。例えば、出力選択部37は、次の(E1)~(E2)に示す選択を行う。
【0072】
(E1)出力選択部37は、SN比が所定の閾値Th2以下である場合、制限騒音レベルを選択し、推定騒音レベルとして出力する。
(E2)出力選択部37は、SN比が所定の閾値Th2よりも大きい場合、速度騒音レベル(N2)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。
【0073】
図6は、第4の構成例を有する騒音レベル推定部18が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0074】
騒音レベル推定部18は、次の(式1)により、速度騒音レベル(N2)を算出する(S101)。
N2=Nv0+(A(v-v0)) …(式1)
ここで、v0は、基準速度を示す。vは、現在の車両の速度を示す。Nv0は、基準速度v0のときの基準速度騒音レベルを示す。Aは、単位速度あたりの速度騒音レベルの変化量を示す。
【0075】
騒音レベル推定部18は、次の(式2)により、音量音源レベル(S2)を算出する(S102)。
S2=S0+vol …(式2)
ここで、volは、現在の音量を示す。S0は、音量volが0のときのマイクの位置における音源レベルを示す。
【0076】
騒音レベル推定部18は、次の(式3)により、音量音源レベル(S2)と速度騒音レベル(N2)とのSN比を算出する(S103)。
(SN比)=S2-N2 …(式3)
ここで、本実施形態においてS2およびN2は常用対数を用いた単位によって示されるものとして説明している。そのため、上の式に示す減算を行うことによりSN比が算出される。S2およびN2が常用対数を用いずに示される場合には、S2とN2の除算を行うことによりSN比が算出される。
【0077】
騒音レベル推定部18は、SN比>閾値Th2であるか否かを判定する(S104)。
【0078】
SN比>閾値Th2である場合(S104:YES)、騒音レベル推定部18は、速度騒音レベル(N2)を推定騒音レベルとして出力する(S105)。そして、騒音レベル推定部18は、本処理を終了する。
【0079】
SN比≦閾値Th2である場合(S104:NO)、騒音レベル推定部18は、次の(式4)により、騒音レベルNsubを算出する(S106)。なお、Nsubは、上記の騒音レベル(M-S1)に相当する。
Nsub=10log10{10(M/10)-10(S1/10)} …(式4)
ここで、Mは、マイクレベルを示す。S1は、音源レベルを示す。
【0080】
騒音レベル推定部18は、Nsub>(N2+Max2)であるか否かを判定する(S107)。
【0081】
Nsub>(N2+Max2)である場合(S107:YES)、騒音レベル推定部18は、制限騒音レベル(N2+Max2)を推定騒音レベルとして出力する(S108)。そして、騒音レベル推定部18は、本処理を終了する。
【0082】
Nsub≦(N2+Max2)である場合(S107:NO)、騒音レベル推定部18は、Nsub<(N2-Min2)であるか否かを判定する(S109)。
【0083】
Nsub<(N2-Min2)である場合(S109:YES)、騒音レベル推定部18は、制限騒音レベル(N2-Min2)を推定騒音レベルとして出力する(S110)。そして、騒音レベル推定部18は、本処理を終了する。
【0084】
Nsub≧(N2-Min2)である場合(S109:NO)、騒音レベル推定部18は、制限騒音レベル(この場合は騒音レベル(Nsub))を推定騒音レベルとして出力する(S111)。つまり、騒音レベル制限部43によって制限されないそのままの騒音レベル(Nsub)を、推定騒音レベルとして出力する。そして、騒音レベル推定部18は、本処理を終了する。
【0085】
次に、図7A図7B図7C図7Dを参照して、音源レベルと騒音レベルとのSN比に対する、実際に測定された騒音レベルと推定騒音レベルとの誤差について説明する。
【0086】
図7Aは、マイクレベルを推定騒音レベルとして算出したSN比を横軸としたグラフである。図7Bは、音源除去部33から出力される騒音レベルを推定騒音レベルとして算出したSN比を横軸としたグラフである。図7Cは、SN比が閾値Th2以下である場合には、マイクレベルを推定騒音レベルとし、SN比が閾値Th2よりも大きい場合には、速度騒音レベルを推定騒音レベルとして算出したSN比を横軸としたグラフである。図7Dは、SN比が閾値Th2以下である場合には、音源除去部33から出力される騒音レベルを推定騒音レベルとし、SN比が閾値Th2よりも大きい場合には、速度騒音レベルを推定騒音レベルとして算出したSN比を横軸としたグラフである。図7A図7B図7C図7Dのグラフにおいて、横軸はSN比[dB]を表し、縦軸は実際に測定された騒音レベルと推定騒音レベルとの誤差[dB]を表す。
【0087】
マイクレベルをそのまま推定騒音レベルとした場合、図7Aのグラフが示すように、SN比が大きくなるにつれて、実際に測定された騒音レベルと推定騒音レベルとの誤差が大きくなる。これは、SN比が大きくなるにつれて、マイクレベルにおける音源の成分が占める割合が大きくなるためである。
【0088】
音源除去部33から出力される騒音レベルをそのまま推定騒音レベルとした場合、図7Bのグラフが示すように、0dB以下のSN比では誤差がほとんどないが、0dB以上のSN比では、SN比が大きくなるにつれて誤差が大きくなる。これは、SN比が大きくなるにつれて、上述したように、音源信号と騒音信号との間に単純なエネルギー加算が成立しなくなるためである。
【0089】
SN比が閾値Th2以下である場合には、マイクレベルを推定騒音レベルとし、SN比が閾値Th2よりも大きい場合には、速度騒音レベルを推定騒音レベルとした場合、図7Cのグラフが示すように、図7A及び図7Bと比較して、例えばSN比が10dBよりも大きい範囲では誤差が小さくなる。しかし、SN比が10dB付近において、誤差がやや大きい。
【0090】
これに対して、第4の構成例のように、SN比が閾値Th2以下である場合には、音源除去部33から出力される騒音レベルを推定騒音レベルとし、SN比が閾値Th2よりも大きい場合には、速度騒音レベルを推定騒音レベルとした場合、図7Dのグラフが示すように、図7Cと比較して、SN比が10dB付近である場合においても誤差が十分に小さくなる。すなわち、騒音レベル推定部18は、図5に示す第4の構成例を採ることより、図7Dに示すように、広い範囲におけるSN比において、実際に測定された騒音レベルに対して誤差の小さい推定騒音レベルを出力することができる。
【0091】
次に、図8A図8B図8Cを参照して、騒音レベル制限部43を設けたことによる効果を説明する。図8Aは、マイクに突発的な騒音が入力されない場合における、推定騒音レベルの時間変化を示すグラフである。図8Bは、騒音レベル制限部43が設けられず、マイクに突発的な騒音が入力された場合における、推定騒音レベルの時間変化を示すグラフである。図8Cは、騒音レベル制限部43が設けられ、マイクに突発的な騒音が入力された場合における、推定騒音レベルの時間変化を示すグラフである。図8A図8B図8Cのグラフにおいて、横軸は時間[秒]を表し、縦軸は推定騒音レベル[dB]を表す。
【0092】
騒音レベル制限部43が設けられない場合、図8Bのグラフに示すように、マイクに入力された突発的な騒音がそのまま推定騒音レベルとして出力される。この場合、補償量算出部20が、この突発的な騒音に由来する成分も参照して補償量を算出することにより、騒音追従型イコライザ12が、その補償量に基づいて音源レベルを不要に大きくしてしまうおそれがある。
【0093】
これに対して、騒音レベル制限部43を設けることにより、図8Cのグラフに示すように、マイクに入力された突発的な騒音は騒音レベル制限部43によって制限される。したがって、推定騒音レベルに突発的な騒音の成分が含まれることが抑制される。これにより、補償量算出部20は、適切な補償量を算出できるため、騒音追従型イコライザ12が、音源レベルを不要に大きくしてしまうことを抑制できる。
【0094】
<第5の構成例>
図9は、本実施の形態に係る騒音レベル推定部18の第5の構成例を示すブロック図である。
【0095】
第5の構成例に係る騒音レベル推定部18は、マイクレベル分析部31、音源レベル分析部32、音源除去部33、速度騒音レベル算出部34、音量音源レベル算出部35、SN比算出部36、出力選択部37、マイクレベル制限部42、及び、騒音レベル制限部43を備える。
【0096】
マイクレベル分析部31、音源レベル分析部32、音源除去部33、速度騒音レベル算出部34、音量音源レベル算出部35、及び、SN比算出部36は、第1の構成例と同様の処理を行う。
【0097】
マイクレベル制限部42は、速度騒音レベル(N2)に基づいて、マイクレベル分析部31から出力されるマイクレベル(M)の上限及び下限を制限し、制限したマイクレベルを制限マイクレベルとして出力する。例えば、マイクレベル制限部42は、第3の構成例に示す(B1)~(B3)の処理により、マイクレベルを制限する。
【0098】
騒音レベル制限部43は、速度騒音レベル(N2)に基づいて、音源除去部33から出力される騒音レベル(M-S1)の上限及び下限を制限し、制限した騒音レベルを制限騒音レベルとして出力する。例えば、騒音レベル制限部43は、第4の構成例に示す(D1)~(D3)の処理により、騒音レベルを制限する。
【0099】
出力選択部37は、SN比算出部36から出力されるSN比に基づいて、マイクレベル制限部42から出力される制限マイクレベルと、騒音レベル制限部43から出力される制限騒音レベルと、速度騒音レベル算出部34から出力される速度騒音レベルとのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。例えば、出力選択部37は、次の(F1)~(F3)に示す選択を行う。
【0100】
(F1)出力選択部37は、SN比が所定の閾値Th0よりも小さい場合、制限マイクレベルを選択し、推定騒音レベルとして出力する。
(F2)出力選択部37は、SN比が所定の閾値Th1よりも大きい場合、速度騒音レベル(N2)を選択し、推定騒音レベルとして出力する。なお、閾値Th1は閾値Th0よりも大きい。
(F3)出力選択部37は、SN比が上記(F1)及び(F2)のいずれにも該当しない場合、制限騒音レベルを選択し、推定騒音レベルとして出力する。すなわち、出力選択部37は、SN比が、閾値Th0以上であり、かつ、閾値Th1以下である場合、制限騒音レベルを選択し、推定騒音レベルとして出力する。
【0101】
なお、上記制限マイクレベルは、マイクレベルに関するレベルに含まれてよい。上記制限騒音レベルは、騒音レベルに関するレベルに含まれてよい。マイクレベルに関するレベル、騒音レベルに関するレベル、及び、速度騒音レベルは、推定騒音レベル候補に含まれてよい。
【0102】
マイクレベル制限部42を設けることにより、マイクに入力された突発的な騒音はマイクレベル制限部42によって制限される。よって、制限マイクレベルに突発的な騒音の成分が含まれることが抑制される。これにより、マイクレベルに突発的な騒音が含まれる場合であっても、制限マイクレベルが推定騒音レベルとして出力されるので、補償量算出部20は、適切な補償量を算出できる。
【0103】
また、騒音レベル制限部43を設けることにより、第4の構成例の場合と同様に、マイクレベルに突発的な騒音が含まれる場合であっても、制限騒音レベルが推定騒音レベルとして出力されるので、補償量算出部20は、適切な補償量を算出できる。
【0104】
したがって、第5の構成例によれば、騒音追従型イコライザ12が、音源レベルを不要に大きくしてしまうことを抑制できる。
【0105】
図10は、第5の構成例を有する騒音レベル推定部18が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0106】
騒音レベル推定部18は、次の(式1)により、速度騒音レベル(N2)を算出する(S201)。
N2=Nv0+(A(v-v0)) …(式1)
【0107】
騒音レベル推定部18は、次の(式2)により、音量音源レベル(S2)を算出する(S202)。
S2=S0+vol …(式2)
【0108】
騒音レベル推定部18は、次の(式3)により、音量音源レベル(S2)と速度騒音レベル(N2)とのSN比を算出する(S203)。
(SN比)=S2-N2 …(式3)
【0109】
騒音レベル推定部18は、SN比<閾値Th0であるか否かを判定する(S204)。
【0110】
SN比≧閾値Th0である場合(S204:NO)、騒音レベル推定部18は、サブ処理を実行し(S300)、本処理を終了する。なお、サブ処理の詳細については後述する(図11参照)。
【0111】
SN比<閾値Th0である場合(S204:YES)、騒音レベル推定部18は、M>(N2+Max1)であるか否かを判定する(S205)。
【0112】
M>(N2+Max1)である場合(S205:YES)、騒音レベル推定部18は、制限マイクレベル(N2+Max1)を推定騒音レベルとして出力する(S206)。つまり、騒音レベル推定部18は、マイクレベル制限部42によって上限(N2+Max1)に制限された制限マイクレベルを、騒音推定レベルとして出力する。そして、騒音レベル推定部18は、本処理を終了する。
【0113】
M≧(N2+Max1)である場合(S205:NO)、騒音レベル推定部18は、M<(N2-Min1)であるか否かを判定する(S207)。
【0114】
M<(N2-Min1)である場合(S207:YES)、騒音レベル推定部18は、制限マイクレベル(N2-Min1)を推定騒音レベルとして出力する(S208)。つまり、騒音レベル推定部18は、マイクレベル制限部42によって下限(N2-Min1)に制限された制限マイクレベルを、推定騒音レベルとして出力する。そして、騒音レベル推定部18は、本処理を終了する。
【0115】
M≧(N2-Min1)である場合(S207:NO)、騒音レベル推定部18は、制限マイクレベル(この場合はマイクレベル(M))を推定騒音レベルとして出力する(S209)。つまり、騒音レベル推定部18は、マイクレベル制限部42によって制限されないそのままのマイクレベル(M)を、推定騒音レベルとして出力する。そして、騒音レベル推定部18は、本処理を終了する。
【0116】
図11は、図10に示すサブ処理(S300)の一例を示すフローチャートである。
【0117】
騒音レベル推定部18は、SN比>閾値Th1であるか否かを判定する(S301)。
【0118】
SN比>閾値Th1である場合(S301:YES)、騒音レベル推定部18は、速度騒音レベル(N2)を推定騒音レベルとして出力する(S302)。そして、騒音レベル推定部18は、図10のステップS300以降の処理に戻る。
【0119】
SN比≦閾値Th1である場合(S301:NO)、騒音レベル推定部18は、次の(式4)により、騒音レベルNsubを算出する(S303)。
Nsub=10log10{10(M/10)-10(S1/10)} …(式4)
【0120】
騒音レベル推定部18は、Nsub>(N2+Max2)であるか否かを判定する(S304)。
【0121】
Nsub>(N2+Max2)である場合(S304:YES)、騒音レベル推定部18は、制限騒音レベル(N2+Max2)を推定騒音レベルとして出力する(S305)。つまり、騒音レベル推定部18は、騒音レベル制限部43によって上限(N2+Max2)に制限された制限騒音レベルを、推定騒音レベルとして出力する。そして、騒音レベル推定部18は、図10のステップS300以降の処理に戻る。
【0122】
Nsub≦(N2+Max2)である場合(S304:NO)、騒音レベル推定部18は、Nsub<(N2-Min2)であるか否かを判定する(S306)。
【0123】
Nsub<(N2-Min2)である場合(S306:YES)、騒音レベル推定部18は、制限騒音レベル(N2-Min2)を推定騒音レベルとして出力する(S308)。つまり、騒音レベル推定部18は、騒音レベル制限部43によって下限(N2-Min2)に制限された制限騒音レベルを、推定騒音レベルとして出力する。そして、騒音レベル推定部18は、図10のステップS300以降の処理に戻る。
【0124】
Nsub≧(N2-Min2)である場合(S306:NO)、騒音レベル推定部18は、制限騒音レベル(この場合は騒音レベル(Nsub))を推定騒音レベルとして出力する(S308)。つまり、騒音レベル推定部18は、騒音レベル制限部43によって制限されないそのままの騒音レベルを、推定騒音レベルとして出力する。そして、騒音レベル推定部18は、図10のステップS300以降の処理に戻る。
【0125】
(本開示のまとめ)
本開示の内容は、以下の付記のように表現できる。
【0126】
<付記1>
本開示の車両に搭載される音響処理装置10は、音源除去部33と、速度騒音レベル算出部34と、音量音源レベル算出部35と、SN比算出部36と、出力選択部37とを備える。
音源除去部33は、マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力する。マイクレベルは、前記車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示す。音源レベルは、前記車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す。
速度騒音レベル算出部34は、車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する。
音量音源レベル算出部35は、所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する。
SN比算出部36は、音量音源レベルと速度騒音レベルとの比であるSN比を出力する。
出力選択部37は、SN比に基づいて、騒音レベルに関するレベル、及び、速度騒音レベルを含む推定騒音レベル候補のうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。
これにより、音響処理装置10は、SN比が変化した場合でも、車内で実際に測定した騒音レベルとの誤差の小さい推定騒音レベルを出力できる。よって、音響処理装置10は、当該推定騒音レベルを用いて補償量を算出し、その補償量を用いて音源レベルを調整することにより、聴感上適正な音量及び音質にて音響を出力することができる。
【0127】
<付記2>
付記1に記載の音響処理装置10において、出力選択部37は、SN比が第1の閾値よりも大きい場合、速度騒音レベルを選択する。
これにより、音響処理装置10は、SN比が、第1の閾値よりも大きい場合と、第1の閾値以下の場合とで、それぞれ、車内で実際に測定した騒音レベルとの誤差がより小さい推定騒音レベルを出力できる。
【0128】
<付記3>
付記1又は2に記載の音響処理装置10は、速度騒音レベルに基づいて騒音レベルを制限する騒音レベル制限部43をさらに備える。出力選択部37における騒音レベルに関するレベルは、騒音レベル制限部43によって制限された騒音レベルである。
これにより、突発的な騒音が推定騒音レベルに含まれることが抑制される。よって、音響処理装置10は、補償量を用いて音源レベルを調整する際に、不要に音源レベルを調整してしまうことを抑制できる。
【0129】
<付記4>
付記1に記載の音響処理装置10において、推定騒音レベル候補は、マイクレベルに関するレベルをさらに含み、出力選択部37は、SN比に基づいて、マイクレベルに関するレベル、騒音レベルに関するレベル、及び、速度騒音レベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。
これにより、音響処理装置10は、SN比が変化した場合でも、車内で実際に測定した騒音レベルとの誤差の小さい推定騒音レベルを出力できる。
【0130】
<付記5>
付記4に記載の音響処理装置10において、出力選択部37は、SN比が第1の閾値よりも小さい場合、マイクレベルに関するレベルを選択し、SN比が第1の閾値よりも大きい第2の閾値よりも大きい場合、速度騒音レベルを選択し、SN比が第1の閾値以上であり、かつ、第2の閾値以下である場合、騒音レベルに関するレベルを選択する。
これにより、SN比が、第1の閾値よりも小さい場合と、第2の閾値よりも大きい場合と、それ以外の場合とで、それぞれ、車内で実際に測定した騒音レベルとの誤差がより小さい推定騒音レベルを出力できる。
【0131】
<付記6>
付記4又は5に記載の音響処理装置10は、速度騒音レベルに基づいてマイクレベルを制限するマイクレベル制限部42をさらに備える。出力選択部37におけるマイクレベルに関するレベルは、マイクレベル制限部42によって制限されたマイクレベルである。
これにより、突発的な騒音が推定騒音レベルに含まれることが抑制される。よって、音響処理装置10は、補償量を用いて音源レベルを調整する際に、不要に音源レベルを調整してしまうことを抑制できる。
【0132】
<付記7>
付記4から6のいずれか1項に記載の音響処理装置10は、速度騒音レベルに基づいて騒音レベルを制限する騒音レベル制限部43をさらに備える。出力選択部37における騒音レベルに関するレベルは、騒音レベル制限部43によって制限された騒音レベルである。
これにより、突発的な騒音が推定騒音レベルに含まれることが抑制される。よって、音響処理装置10は、補償量を用いて音源レベルを調整する際に、不要に音源レベルを調整してしまうことを抑制できる。
【0133】
<付記8>
本開示の車両に搭載される音響処理装置10は、音源除去部33と、速度騒音レベル算出部34と、音量音源レベル算出部35と、マイクレベル制限部42と、SN比算出部36と、出力選択部37とを備える。
音源除去部33は、マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力する。マイクレベルは、車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示す。音源レベルは、車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す。
速度騒音レベル算出部34は、車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する。
音量音源レベル算出部35は、所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する。
マイクレベル制限部42は、速度騒音レベルに基づいて制限されたマイクレベルである、制限マイクレベルを出力する。
SN比算出部36は、音量音源レベルと制限マイクレベルとの比であるSN比を出力する。
出力選択部37は、SN比に基づいて、マイクレベル、騒音レベル、及び、制限マイクレベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。
これにより、音響処理装置10は、SN比が変化した場合でも、車内で実際に測定した騒音レベルとの誤差の小さい推定騒音レベルを出力できる。よって、音響処理装置10は、当該推定騒音レベルを用いて補償量を算出し、その補償量を用いて音源レベルを調整することにより、聴感上適正な音量及び音質にて音響を出力することができる。
【0134】
<付記9>
本開示の車両に搭載される音響処理装置10は、音源除去部33と、速度騒音レベル算出部34と、音量音源レベル算出部35と、SN比算出部36と、出力選択部37とを備える。
音源除去部33は、車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号から、適応フィルタを用いて音源信号を減算した、騒音信号を出力する。音源信号は、車内に設けられたスピーカから出力される。
速度騒音レベル算出部34は、車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する。
音量音源レベル算出部35は、所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する。
SN比算出部36は、音量音源レベルと速度騒音レベルとの比であるSN比を出力する。
出力選択部37は、SN比に基づいて、マイク信号の周波数特性を示すマイクレベル、騒音信号の周波数特性を示す騒音レベル、及び、速度騒音レベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。
これにより、音響処理装置10は、SN比が変化した場合でも、車内で実際に測定した騒音レベルとの誤差の小さい推定騒音レベルを出力できる。よって、音響処理装置10は、当該推定騒音レベルを用いて補償量を算出し、その補償量を用いて音源レベルを調整することにより、聴感上適正な音量及び音質にて音響を出力することができる。
【0135】
<付記10>
本開示の車両に搭載される装置による音響処理方法は、以下の処理1から処理5を含む。
処理1では、マイクレベルから、音源レベルを減算した騒音レベルを出力する。マイクレベルは、車両の車内に設けられたマイクが集音したマイク信号の周波数特性を示す。音源レベルは、車内に設けられたスピーカから出力される音源信号の周波数特性を示す。
処理2では、車両の速度に基づく騒音の周波数特性を示す速度騒音レベルを出力する。
処理3では、所定の音源信号の音量に基づく周波数特性を示す音量音源レベルを出力する。
処理4では、音量音源レベルと速度騒音レベルとの比であるSN比を出力する。
処理5では、SN比に基づいて、騒音レベルに関するレベル、及び、速度騒音レベルのうちのいずれか1つを選択し、推定騒音レベルとして出力する。
この音響処理方法により、SN比が変化した場合でも、車内で実際に測定した騒音レベルとの誤差の小さい推定騒音レベルを出力できる。よって、この音響処理方法を適用した装置は、当該推定騒音レベルを用いて補償量を算出し、その補償量を用いて音源レベルを調整することにより、聴感上適正な音量及び音質にて音響を出力することができる。
【0136】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本開示の技術は、車両に搭載される音響装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0138】
10 音響処理装置
11 音源信号入力部
12 騒音追従型イコライザ
13 音量増幅部
14 スピーカ
15 マイク信号入力部
16 速度入力部
17 音量入力部
18 騒音レベル推定部
19 音源レベル分析部
20 補償量算出部
31 マイクレベル分析部
32 音源レベル分析部
33 音源除去部
34 速度騒音レベル算出部
35 音量音源レベル算出部
36 SN比算出部
37 出力選択部
38 減算処理部
39 騒音レベル分析部
40 適応フィルタ部
41 LMSアルゴリズム部
42 マイクレベル制限部
43 騒音レベル制限部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11