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特開2023-11777固体電解質物質を含むイオン伝導性バッテリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011777
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】固体電解質物質を含むイオン伝導性バッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20230117BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230117BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230117BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/058
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022173613
(22)【出願日】2022-10-28
(62)【分割の表示】P 2019110015の分割
【原出願日】2014-03-21
(31)【優先権主張番号】61/803,981
(32)【優先日】2013-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515263978
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ メリーランド、カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ワックスマン,エリック,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】フー,リャンビン
(72)【発明者】
【氏名】サンガドゥライ,ベンカタラマン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】固体電解質を有するイオン伝導性バッテリーを提供する。
【解決手段】イオン伝導性の固体電解質を有する固体イオン伝導性バッテリーである。固体電解質は、少なくとも1つの多孔性領域と高密度領域を有する。前記バッテリーは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはマグネシウム-イオン伝導性の固体バッテリーである。前記イオン伝導性の固体電解質は、例えば、リチウム-ガーネット物質である。前記固体イオン伝導性バッテリーは、カソードおよびアノードを含み、そのうちの少なくとも一つは、前記多孔性領域の一部に配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体イオン伝導性バッテリーであって、
a)カソード物質またはアノード物質;
b)複数の孔を有する多孔性領域、および高密度領域を含む固体電解質(SSE)物質、ここで、前記カソード物質またはアノード物質は、前記多孔性領域の少なくとも一部に配置され、前記高密度領域は前記カソード物質とアノード物質を含まない;および
c)前記カソード物質または前記アノード物質の少なくとも一部と接して配置された集電体
を含むバッテリー。
【請求項2】
前記SSE物質が、2つの前記多孔性領域、前記カソード物質、前記アノード物質を含み、前記カソード物質は、カソード側多孔性領域を形成する多孔性領域の一方の少なくとも一部に配置され、前記アノード物質は、アノード側多孔性領域を形成する他方の多孔性領域の少なくとも一部に配置され、前記カソード側領域と前記アノード側領域は、前記高密度領域の反対側に配置され、およびさらに、カソード側集電体とアノード側集電体を含む、請求項1に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項3】
前記カソード物質が、リチウム含有物質、ナトリウム含有カソード物質、またはマグネシウム含有カソード物質である、請求項1または2に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項4】
前記カソード物質が、伝導性カーボン物質を含み、前記カソード物質が、任意に、さらに有機のあるいはゲルのイオン伝導性電解質を含む、請求項1または2に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項5】
前記リチウム含有電極物質が、LiCoO、LiFePO、LiMMnから選択される、リチウム含有-イオン伝導性カソード物質であり、Mが、Fe、Co、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項6】
前記ナトリウム含有カソード物質は、Na、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2、Na(PO)、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO、およびNa2/3Fe1/2Mn1/2とグラフェンのコンポジットから選択される、ナトリウム含有-イオン伝導性カソード物質である、請求項3~5のいずれか1項に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項7】
前記マグネシウム含有カソード物質が、マグネシウム含有-イオン伝導性カソード物質であり、ドープされた酸化マンガンである、請求項3に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項8】
前記アノード物質は、リチウム含有アノード物質、ナトリウム含有アノード物質、またはマグネシウム含有アノード物質である、請求項3~7のいずれか1項に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項9】
前記リチウム含有アノード物質がリチウム金属である、請求項8に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項10】
前記ナトリウム含有アノード物質が、ナトリウム金属、または、NaおよびNa0.66Li0.22Ti0.78から選択されるイオン伝導性-ナトリウム含有アノード物質である、請求項8に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項11】
前記マグネシウム含有アノード物質がマグネシウム金属である、請求項8に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項12】
前記SSE物質が、リチウム含有SSE物質、ナトリウム含有SSE物質、またはマグネシウム含有SSE物質である、請求項3~11のいずれか1項に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項13】
前記リチウム含有SSE物質が、Li-ガーネットSSE物質である、請求項12に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項14】
前記Li-ガーネットSSE物質が、カチオンドープLiLa 12(MはNb、Zr、Ta、あるいはそれらの組み合わせ)、カチオンドープLiLaBaTa12、カチオンドープLiLaZr12、およびカチオンドープLiBaY 12であり、ここで、カチオン・ドーパントはバリウム、イットリウム、亜鉛、あるいはそれらの組み合わせである、請求項12に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項15】
前記Li-ガーネットSSE物質が、LiLaNb12、LiLaTa12、LiLaZr12、LiLaSrNb12、LiLaBaNb12、LiLaSrTa12、LiLaBaTa12、LiZr12、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiBaY 12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512、またはLi6.75BaLaTa1.75Zn0.2512である、請求項13に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項16】
前記集電体が、導電性金属または金属合金である、請求項12~15のいずれか1項に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項17】
前記SSE物質の高密度領域が、1μm~100μmの寸法を有し、及び/又は、前記カソード物質が配置されている前記SSE物質の多孔性領域が、20μm~200μmの寸法を有し、及び/又は、前記アノード物質が配置されている前記SSE物質の多孔性領域が、20μm~200μmの寸法を有する、請求項16に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項18】
前記イオン伝導性カソード物質、前記イオン伝導性アノード物質、前記SSE物質、および前記集電体が、セルを形成し、且つ、前記固体イオン伝導性バッテリーは、複数の前記セルを有し、前記セルの各隣接ペアはバイポーラ板によって分離されている、請求項16または17に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【請求項19】
電解質物質の高密度領域上に配置された電解質物質の多孔性領域を含む固体電解質(SSE)物質を有する、固体イオン伝導性バッテリーであって、前記SSE物質は、イオンが、バッテリーの充電及び/又は放電の間、前記SSE物質の多孔性領域内に拡散する、およびそこから拡散するように構成されている、バッテリー。
【請求項20】
前記SSE物質が、前記SSE物質の高密度領域の両側に配置された2つの多孔性領域を有する、請求項19に記載の固体イオン伝導性バッテリー。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2013年3月21日に提出された米国仮出願第61/803,981号に基づく優先権を主張し、その開示は、参照により本明細書に包含される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に固体電解質を含むイオン伝導性バッテリーに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオンバッテリー(LiB)は、他の全ての再充電可能なバッテリーと比較して最も高い体積および重量エネルギー密度を有し、それは、LiBを、携帯用電子機器から電気自動車(EV)に渡る幅広い用途の第一候補にしている。現在のLiBは、主に、LiCoOまたはLiFePO型の正極、Li伝導性有機電解質(例えば、エチレンカーボネート-ジエチルカーボネートに溶解されたLiPF)、およびLi金属あるいは黒鉛アノードを基礎とする。不運なことに、現在の技術水準のLiBに関し、以下の複数の技術的問題が存在する。可燃性の有機成分に起因する安全性;アノードおよびカソード電解質、界面(相間固体電解質-SEI[solid electrolyte interphase])における反応生成物の形成に起因する分解;および有機電解質の不十分な電気化学安定性による出力/エネルギー密度限界。ナトリウム、マグネシウム、および他のイオン伝導性電解質をベースとする他のバッテリーも、同様の問題を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
固体イオン伝導性バッテリーであって、(a)カソード物質またはアノード物質;(b)複数の孔を有する多孔性領域、および高密度(緻密)領域を含む固体電解質(SSE)物質、ここで、前記カソード物質またはアノード物質は、前記多孔性領域の少なくとも一部に配置され、前記高密度領域は前記カソード物質とアノード物質を含まない;(c)前記カソード物質または前記アノード物質の少なくとも一部と接して配置された集電体、を含むバッテリー。
【0005】
一実施形態では、前記SSE物質は、2つの多孔性領域を含み、前記バッテリーは、前記カソード物質とアノード物質を含み、前記カソード物質は、カソード側多孔性領域を形成する多孔性領域の一方の少なくとも一部に配置され、前記アノード物質は、アノード側多孔性領域を形成する他方の多孔性領域の少なくとも一部に配置され、前記カソード側領域と前記アノード側領域は、前記高密度領域の反対側に配置され、およびさらに、カソード側集電体とアノード側集電体を含む。
【0006】
一実施形態では、前記カソード物質はリチウム含有物質、ナトリウム含有カソード物質、またはマグネシウム含有カソード物質である。一実施形態では、前記カソード物質は、伝導性カーボン物質を含み、前記カソード物質は、任意に、さらに有機のあるいはゲルのイオン伝導性電解質を含む。一実施形態では、前記リチウム含有電極物質は、LiCoO、LiFePO、LiMMnから選択される、リチウム含有-イオン伝導性カソード物質であり、Mは、Fe、Co、およびそれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、前記ナトリウム含有カソード物質は、Na、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2、Na(PO)、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO、およびNa2/3Fe1/2Mn1/2とグラフェンのコンポジットから選択される、ナトリウム含有-イオン伝導性カソード物質である。一実施形態では、前記マグネシウム含有カソード物質は、マグネシウム含有-イオン伝導性カソード物質であり、ドープされた酸化マンガンである。
【0007】
一実施形態では、前記アノード物質は、リチウム含有アノード物質、ナトリウム含有アノード物質、またはマグネシウム含有アノード物質である。一実施形態では、前記リチウム含有アノード物質はリチウム金属である。一実施形態では、前記ナトリウム含有アノード物質は、ナトリウム金属、または、NaおよびNa0.66Li0.22Ti0.78から選択されるイオン伝導性-ナトリウム含有アノード物質である。一実施形態では、前記マグネシウム含有アノード物質はマグネシウム金属である。
【0008】
一実施形態では、前記SSE物質は、リチウム含有SSE物質、ナトリウム含有SSE物質、またはマグネシウム含有SSE物質である。一実施形態では、前記リチウム含有SSE物質は、Li-ガーネットSSE物質である。一実施形態では、前記Li-ガーネットSSE物質は、カチオンドープLiLa 12(MはNb、Zr、Ta、あるいはそれらの組み合わせ)、カチオンドープLiLaBaTa12、カチオンドープLiLaZr12、およびカチオンドープLiBaY 12であり、ここで、カチオン・ドーパントはバリウム、イットリウム、亜鉛、あるいはそれらの組み合わせである。一実施形態では、前記Li-ガーネットSSE物質は、LiLaNb12、LiLaTa12、LiLaZr12、LiLaSrNb12、LiLaBaNb12、LiLaSrTa12、LiLaBaTa12、LiZr12、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiBaY 12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512、またはLi6.75BaLaTa1.75Zn0.2512である。
【0009】
一実施形態では、前記集電体は、導電性の金属あるいは金属合金である。
【0010】
一実施形態では、前記SSE物質の高密度領域は、1μm~100μmの寸法を有し、及び/又は、前記カソード物質が配置されている前記SSE物質の多孔性領域は、20μm~200μmの寸法を有し、及び/又は、前記アノード物質が配置されている前記SSE物質の多孔性領域は、20μm~200μmの寸法を有する。
【0011】
一実施形態では、前記イオン伝導性カソード物質、前記イオン伝導性アノード物質、前記SSE物質、および前記集電体は、セルを形成し、且つ、前記固体イオン伝導性バッテリーは、複数の前記セルを有し、前記セルの各隣接ペアはバイポーラ板(bipolar plate)によって分離されている。
【0012】
電解質物質の高密度領域上に配置された電解質物質の多孔性領域を含む固体電解質(SSE)物質を有する、固体イオン伝導性バッテリーにおいて、前記SSE物質は、イオンが、バッテリーの充電及び/又は放電の間、前記SSE物質の多孔性領域内に拡散する、およびそこから拡散するように構成されている。一実施形態では、前記SSE物質は、前記SSE物質の高密度領域の両側(反対側)に配置された2つの多孔性領域を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下の図面は、説明のためだけに提供され、それゆえ、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0014】
図1図1は、ガーネット型の化合物のイオン伝導率vs拡散係数である:(1)LiLaTa12、(2)LiLaSb12、(3)LiLaNb12、(4)Li5.5BaLaTa11.75、(5)LiLaBaTaO12、(6)Li6.5BaLaTa12.25、(7)LiLaZr12、(8)Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12(900℃で焼結)、および(9)Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12(1100℃で焼結)。
【0015】
図2】ガーネット型の固体電解質(SSE)におけるLiイオン伝導の最適化の実施例:(a)と(b)はLi伝導の経路 (c)は伝導率に対するLiサイト占有率の影響
【0016】
図3図3は、固体リチウムバッテリー(SSLiB)の一実施例の概略図であって、固体電解質(SSE)層に構造的なサポートを提供するための、(Li金属充填)アノードおよび(グラフェンと混合されたLiMMn[M=Fe、Co])カソード内に、目的に応じたナノ/ミクロ構造の骨格(スキャホールド)として広がる薄い(~10μm)ガーネットSSE層、および、分極を減じるのための高表面積と連続的なイオン輸送経路を示す。多目的の~40μmのAl集電体(アノード側に、~200ÅのCuを備える)は、強度および熱並びに電気の伝導を提供する。~170μmの反復ユニットが、所望のバッテリーパック電圧と強度を提供するために、直列にスタックされる(300Vパックは、1cm厚未満となりうる)。高多孔質のSSE骨格は、セル・インピーダンスを有意に低下させる大きな界面面積を作り出す。
【0017】
図4】(a)は、Li-ガーネットの実施例のイオン伝導率である。(b)は、Li6.75LaBaTa1.75Zn0.2512の実施例のPXRDである。
【0018】
図5図5は、LiFePO4カソード(20%カーボンブラック)、高密度SSE、Li浸潤SSE骨格、およびAl集電体を有する、SSEバッテリーの実施例の電気化学的インピーダンス分光法(ESI)である。追加的な低周波インターセプトがないことは、電解質界面が、Liイオンに対し可逆的であることを示す。
【0019】
図6図6は、温度の関数としてガーネット型のLi6.75LaBaTa1. 75Zn0.2512の形成を示すPXRD、SEMイメージおよび伝導率であり、焼結温度が密度、粒径、伝導率をコントロールできることを示す。
【0020】
図7図7は、多層セラミック加工の例を示す:(a)テープキャストサポート;(b)二峰性にインテグレートされたアノード機能層(BI-AFL)を有する層状の多孔性アノードサポート上の、薄い電解質;(c)BI-AFLの拡大図であって、従来のセラミック加工を用いて界面インピーダンスを低下するために、ナノスケール特性をインテグレートする能力を示す。
【0021】
図8】多孔性の骨格(アノードおよびカソード物質が充填される)を有するSSEの一実施例の、(a)断面図、(b)平面図。(c)は、Li金属浸潤後のSSE骨格の断面図。(d)は、Li金属-高密度SSE界面の断面図。画像は、SSEのLi湿潤が優れていたことを実証する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、固体電解質を有するイオン伝導性バッテリーを提供する。例えば、前記バッテリーは、リチウムイオン-固体電解質バッテリー、ナトリウムイオン-固体電解質バッテリー、マグネシウムイオン-固体電解質バッテリーである。リチウムイオン(Li)-バッテリーは、例えば、携帯用電子機器および電気自動車で使用されており、ナトリウムイオン(Na)-バッテリーは、例えば、太陽光および風等の間欠的な再生可能エネルギー展開を可能にする電気グリッド貯蔵のために使用され、マグネシウムイオン(Mg2+)-バッテリーは、Mg2+が各イオンの2倍の荷電を帯びているため、LiおよびNaより高い性能を有すると予測されている。
【0023】
固体バッテリーは、従前のバッテリーを超える利点を有する。例えば、固体電解質は、不燃性であって高い安全性を有し、より大きなエネルギー密度のための高圧電極を可能にするより高い安定性をも提供する。バッテリー設計(図3)は、薄い電解質層とより大きい電解質/電極-界面積を可能にし、これらは両方とも、より低い抵抗とそれゆえより大きな出力およびエネルギー密度をもたらすというさらなる利点を提供する。さらに、前記構造は、充電と放電サイクルの間のイオン・インターカレーションからの機械的ストレス、および相間固体電解質(SEI)層の形成を削減し、それゆえ、現在のバッテリー技術の寿命を制限している容量低下メカニズムを取り除く。
【0024】
前記固体バッテリーは、カソード物質、アノード物質、およびイオン伝導性固体電解質物質を含む。前記固体電解質物質は、高密度領域(例えば、一つの層)および一または二の多孔性領域(層)を有する。前記多孔性領域(単数または複数)は、前記高密度領域の一面側に配置されても、高密度領域の反対側(両側)に配置されてもよい。前記高密度領域および多孔性領域(単数または複数)は、同じ固体電解質物質から作られる。前記バッテリーは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはマグネシウムイオン等のイオンを伝導する。
【0025】
前記カソードは、前記イオン伝導性の固体電解質物質の多孔性領域と電気的に接続されたカソード物質を含む。例えば、前記カソード物質は、インターカレーション等のメカニズムによってイオンを貯蔵する、あるいは二次相を形成するためにイオンと反応するイオン伝導性の物質である(例えば、空気あるいは硫化物電極)。適切なカソード物質の例は、当該分野において既知である。
【0026】
前記カソード物質は、存在する場合、前記イオン伝導性の固体電解質物質の多孔性領域の表面の少なくとも一部(例えば、細孔の一つの孔表面)に配置されている。前記カソード物質は、存在する場合、前記イオン伝導性の固体電解質物質の一つの多孔性領域あるいは複数の多孔性領域の一つの、一以上の孔(例えば、大多数の孔)を少なくとも部分的に満たす。一実施形態では、前記カソード物質は、前記イオン伝導性の固体電解質物質の多孔性領域の複数の孔の少なくとも一部の中に浸潤している。
【0027】
一実施形態では、前記カソード物質は、イオン伝導性SSE物質の多孔性領域のカソード側の孔表面の少なくとも一部に配置されており、イオン伝導性SSE物質の多孔性領域のカソード側は、アノード物質が配置されているイオン伝導性SSE物質の多孔性領域のアノード側と対向している。
【0028】
一実施形態では、前記カソード物質はリチウムイオン伝導性物質である。例えば、前記リチウムイオン伝導性カソード物質は、LiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3等のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC、LiNiMnCo、x+y+z=1)、LiMn等のリチウム酸化マンガン(LMO)、LiNi0.5Mn1.5、LiFePO等のリン酸鉄リチウム(LFP)、LiMnPO、およびLiCoPO、およびLiMMn(MはFe、Co、およびそれらの組み合わせから選択される)である。一実施形態では、前記イオン伝導性カソード物質はLiMMn等の高エネルギーイオン伝導性カソード物質であり、ここで、MはFe、Co、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0029】
一実施形態では、前記カソード物質はナトリウムイオン伝導性物質である。例えば、前記ナトリウムイオン伝導性カソード物質は、Na、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/22、Na(PO)、NaMn1/3Co1/3Ni1/3POおよび、Na2/3Fe1/2Mn1/2-グラフェン-コンポジット等の、それらのコンポジット物質(例えば、カーボンブラックとのコンポジット)である。
【0030】
一実施形態では、前記カソード物質はマグネシウムイオン伝導性物質である。例えば、前記マグネシウムイオン伝導性カソード物質はドープ酸化マンガン(例えば、MgMnOO)である。
【0031】
一実施形態では、前記カソード物質は有機スルフィドまたはポリスルフィドである。有機スルフィドの例には、カルビン・ポリスルフィドおよび共重合化硫黄が含まれる。
【0032】
一実施形態では、前記カソード物質は空気極である。空気極に適切な物質の例には、メッシュ(例えば、PVDFバインダー等のポリマーバインダー)に結合した高表面積カーボン粒子(例えば、導電性カーボンブラックであるSuper P)および触媒粒子(例えば、α-MnOナノロッド)等の、空気カソードを有する固体リチウムイオンバッテリーで使用されるものが含まれる。
【0033】
イオン伝導性カソード物質の一部として、導電性物質を使用することが望ましい。一実施形態では、イオン伝導性カソード物質は導電性カーボン物質(例えば、グラフェンまたはカーボンブラック)も含み、且つ、イオン伝導性カソード物質は、任意に、さらに有機あるいはゲルのイオン伝導性電解質を含む。前記導電性物質は、前記イオン伝導性カソード物質から分離していても良い。例えば、導電性物質(例えば、グラフェン)は、前記イオン伝導性のSSE電解質物質の多孔性領域の表面(例えば、孔表面)の少なくとも一部に配置され、前記イオン伝導性カソード物質は、前記導電性物質(例えば、グラフェン)の少なくとも一部と接して配置されている。
【0034】
前記アノードは、前記イオン伝導性SSE物質の多孔性領域と電気的に接触したアノード物質を含む。例えば、前記アノード物質は、前記固体電解質に伝導される金属形態のイオン(例えば、リチウムイオンバッテリーのための金属リチウム)あるいは、前記伝導性イオンをインターカレートする化合物(例えば、リチウムイオンバッテリーのための炭化リチウム、LiC)である。好適なアノード物質の例は、当該分野で既知である。
【0035】
前記アノード物質は、存在する場合は、前記イオン伝導性SSE物質の多孔性領域の表面の少なくとも一部(例えば、細孔の一つの孔表面)に配置されている。前記アノード物質は、存在する場合は、イオン伝導性のSSE電解質物質の多孔性領域の一以上の孔(例えば、大多数の孔)を少なくとも部分的に満たす。一実施形態では、前記アノード物質は、イオン伝導性の固体電解質物質の多孔性領域の複数の孔の少なくとも一部の中に浸潤している。
【0036】
一実施形態では、前記アノード物質は、イオン伝導性のSSE電解質物質のアノード側の多孔性領域の孔表面の少なくとも一部に配置されており、イオン伝導性の固体電解質物質の前記アノード側は、多孔性イオン伝導性のSSEのカソード側(そこにカソード物質が配置されている)と対向している。
【0037】
一実施形態では、前記アノード物質はリチウム含有物質である。例えば、前記アノード物質はリチウム金属、またはLiTi12等のチタン酸リチウム(LTO)等のイオン伝導性リチウム含有アノード物質である。
【0038】
一実施形態では、前記アノード物質は、ナトリウム含有物質である。例えば、前記アノード物質はナトリウム金属、またはNaおよびNa0.66Li0.22Ti0.78等のイオン伝導性-ナトリウム含有アノード物質である。
【0039】
一実施形態では、前記アノード物質は、マグネシウム含有物質である。例えば、前記アノード物質はマグネシウム金属である。
【0040】
一実施形態では、前記アノード物質は、グラファイト、硬質炭素、多孔性中空炭素球並びにチューブ、およびスズ並びにその合金、スズ/カーボン、スズ/コバルト合金、あるいはシリコン/カーボン等の伝導性物質である。
【0041】
前記イオン伝導性の固体電解質物質は、高密度領域(例えば、高密度層)および1つあるいは2つの多孔性領域(例えば、多孔性の層)を有する。前記高密度領域の空隙率は、前記多孔性領域(単数または複数)の空隙率より小さい。一実施形態では、前記高密度領域は多孔質ではない。前記カソード物質及び/又はアノード物質は、イオン伝導性の固体電解質物質の個別の(分離した)カソード物質含有領域及び/又は個別のアノード物質含有領域を形成するSSE物質の多孔性領域に配置される。例えば、前記イオン伝導性の固体電解質物質のこれらの領域はそれぞれ、独立して、20μm~200μm(その間の全ての整数のミクロン値および範囲を含む)の寸法(例えば、物質の最長寸法に垂直な厚み)を有する。
【0042】
本明細書に記載された高密度領域および多孔性領域は、個別の(分離した)高密度層および個別の多孔質層であってもよい。したがって、一実施形態では、前記イオン伝導性の固体電解質物質は、1つの高密度層および1つまたは2つの多孔質層を有する。
【0043】
前記イオン伝導性の固体電解質物質は、アノードとカソードの間でイオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはマグネシウムイオン)を伝導する。前記イオン伝導性の固体電解質物質は、ピンホール欠陥を有さない。バッテリーまたはバッテリー・セルのためのイオン伝導性の固体電解質物質は、同じイオン伝導性の固体電解質物質からなる一以上の多孔性領域(例えば、多孔質層)(前記多孔性領域/層は、本明細書において、骨格構造とも呼ばれる)によってサポートされている一つの高密度領域(例えば、一つの高密度層)を有する。
【0044】
一実施形態では、前記イオン伝導性の固体電解質は、一つの高密度領域(例えば、高密度層)と二つの多孔性領域(例えば、多孔質層)を有し、前記多孔性領域は、前記高密度領域の両側に配置され、カソード物質は、前記多孔性領域の一方に配置され、アノード物質は他方の多孔性領域に配置されている。
【0045】
一実施形態では、前記イオン伝導性の固体電解質は、一つの高密度領域(例えば、高密度層)と一つの多孔性領域(例えば、多孔質層)を有し、前記多孔性領域は、前記高密度領域の片側に配置されており、カソード物質とアノード物質のどちらかが、前記多孔性領域に配置されている。カソード物質が多孔性領域に配置されている場合、従来型のバッテリーアノード(例えば、従来型の固体バッテリーアノード)が既知の方法により前記高密度領域の反対側に形成される。アノード物質が多孔性領域に配置されている場合、従来型のバッテリーカソード(例えば、従来型の固体バッテリーカソード)が前記高密度領域の反対側に形成される。
【0046】
前記イオン伝導性の固体電解質物質の前記多孔性領域(例えば、多孔質層)は、多孔質構造を有する。前記多孔質構造は、ミクロ構造的特徴(例えば、ミクロ細孔性)及び/又はナノ構造的特徴(例えば、ナノ細孔性)を有する。例えば、各多孔性領域は、独立して、10%~90%の空隙率(その間の全ての整数%値および範囲を含む)を有する。別の例では、各多孔性領域は、独立して、30%~70%の空隙率(その間の全ての整数%値および範囲を含む)を有する。2つの多孔性領域が存在する場合、2つの層の空隙率は同じであっても異なっていてもよい。個々の領域の空隙率は、例えば、後のスクリーンプリントまたは湿潤ステップにおける加工ステップに適応させるために(例えば、より高い空隙率は電極物質(例えば、電荷貯蔵物質)(例えば、カソード))をより充填しやすい)、および所望の電極物質容量(すなわち、どの程度の導電性物質(例えば、Li、Na、Mg)が、電極物質に貯蔵されるか)を達成するために、選択されることができる。前記多孔性領域(例えば、層)は、高密度層の厚みを減らし、それによりその抵抗を減らすことができるように、前記高密度層に構造的なサポートを提供する。前記多孔質層はまた、前記高密度相(固体電解質)のイオン伝導を前記電極層中に拡張し、電極を通じたイオン伝導および電極/電解質界面での電荷移動反応に起因する界面抵抗の両方の観点から電極抵抗を減少させ、後者はより大きな電極/電解質-界面積を有することによって改善される。
【0047】
一実施形態では、前記固体イオン伝導性電解質物質は、固体電解質リチウム含有物質である。例えば、前記固体電解質リチウム含有物質は、リチウム-ガーネットSSE物質である。
【0048】
一実施形態では、前記固体イオン伝導性電解質物質は、カチオンドープLiLaM’12、カチオンドープLiLaBaTa12、カチオンドープLiLaZr12、およびカチオンドープLiBaYM’12を含むLi-ガーネットSSE物質である。前記カチオン・ドーパントは、バリウム、イットリウム、亜鉛、あるいはそれらの組み合わせであり、M’は、Nb、Zr、Ta、あるいはそれらの組み合わせである。
【0049】
一実施形態では、前記Li-ガーネットSSE物質は、LiLaNb12、LiLaTa12、LiLaZr12、LiLaSrNb12、LiLaBaNb12、LiLaSrTa12、LiLaBaTa12、LiZr12、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiBaY 12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512、またはLi6.75BaLaTa1.75Zn0.2512を含む。
【0050】
一実施形態では、前記固体イオン伝導性電解質物質は、ナトリウム含有固体電解質物質である。例えば、ナトリウム含有固体電解質は、NaZrSiPO12(NASICON)またはβ-アルミナである。
【0051】
一実施形態では、前記固体イオン伝導性電解質物質は、固体電解質マグネシウム含有物質である。例えば、前記マグネシウムイオン伝導性電解質物質はMgZr24である。
【0052】
前記イオン伝導性固体電解質物質は、カソード物質とアノード物質を含まない高密度領域を有する。例えば、この領域は、1μm~100μm(その間の全ての整数のミクロン値および範囲を含む)寸法(例えば、物質の最長寸法に垂直な厚み)を有する。別の例では、この領域は5μm~40μmの寸法を有する。
【0053】
一実施形態では、前記固体バッテリーは、リチウム含有カソード物質及び/又はリチウム含有アノード物質、およびリチウム含有イオン伝導性固体電解質物質を含む。一実施形態では、前記固体バッテリーは、ナトリウム含有カソード物質及び/又はナトリウム含有アノード物質、およびナトリウム含有イオン伝導性固体電解質物質を含む。一実施形態では、前記固体バッテリーは、マグネシウム含有カソード物質及び/又はマグネシウム含有アノード物質、およびマグネシウム含有イオン伝導性固体電解質物質を含む。
【0054】
前記固体イオン伝導性電解質物質は、イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはマグネシウムイオン)が、バッテリーの充電及び/又は放電中に前記固体イオン伝導性電解質物質の多孔性領域(例えば、多孔質層)の中に拡散およびそこから拡散するように構成されている。一実施形態では、前記固体イオン伝導性バッテリーは、イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはマグネシウムイオン)が、バッテリーの充電及び/又は放電中に固体イオン伝導性電解質物質の多孔性領域(単数または複数)の中に拡散およびそこから拡散するように構成された、1つまたは2つの多孔性領域(例えば、多孔質層)を有する固体イオン伝導性電解質物質を含む。
【0055】
当業者は、前記多孔性の、固体イオン伝導性電解質物質を処理/形成するために、多数の処理方法(高温固体反応プロセス、共沈プロセス、水熱プロセス、ゾルゲルプロセス等)が知られていることを理解するであろう。
【0056】
前記物質は、固体混合技術によって、体系的に合成することができる。例えば、出発物質の混合物は、有機溶媒(例えば、エタノールまたはメタノール)中で混合されてもよく、出発物質の混合物は前記有機溶媒を飛ばすために乾燥される。出発物質の混合物は、ボールミルにかけられてもよい、ボールミル後の混合物は、か焼されてもよい。例えば、前記ボールミル後の混合物は、500℃と2000℃の間の温度(その間の全ての整数の℃値および範囲を含む)にて、少なくとも30分~少なくとも50時間か焼される。か焼された混合物は、必要な粒度分布を達成するために、安定化ジルコニアあるいはアルミナあるいは当業者に既知の他の媒体等の媒体を用いて粉砕されてもよい。か焼された混合物は、焼結されてもよい。例えば、か焼された混合物は、500℃と2000℃の間の温度(その間の全ての整数の℃値および範囲を含む)にて、少なくとも30分~少なくとも50時間焼結される。必要な粒度分布を達成するために、か焼された混合物は、振動ミリング、摩擦ミリング、ジェットミリング、ボールミリング、あるいは当業者に既知の別の技術等の技術を使用し、安定化ジルコニア、アルミナ、あるいは当業者に既知の別の媒体等の媒体を使用して、粉砕されてもよい。
【0057】
当業者は、多数の従来型の製作加工方法が、グリーンフォーム(未焼結状態)の上述したもの等のイオン伝導性SSE物質を加工するために知られていることを理解するであろう。そのような方法には、テープキャスティング、カレンダリング、エンボス加工、パンチング、レーザー切断、溶剤結合、ラミネーション、ヒート・ラミネーション、押出し、共押出し、遠心キャスティング、スリップ・キャスティング、ゲル・キャスティング、ダイ・キャスティング、プレス、静水圧プレス成型、熱間等方圧加圧法、一軸加圧成形、およびゾルゲル法が含まれるが、これらに限定されない。その結果得られたグリーンフォーム物質は、その後、イオン伝導性SSE物質の個々の成分の消失を最小化するための、空気あるいはコントロールされた雰囲気における従来型の熱処理のような当業者に既知の技術を使用して、イオン伝導性SSE物質を形成するために焼結されてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ダイプレス(任意に、その後に静水圧プレス成型)によって、グリーンフォームのイオン伝導性SSE物質を作ることが有利である。他の実施形態では、テープキャスティング、パンチング、レーザー切断、溶剤結合、ヒート・ラミネーション、または当業者に既知の他の技術等の技術を組み合わせて使用して、グリーンフォームのマルチチャネル・デバイスとしてイオン伝導性SSE物質を作ることが有利である。
【0058】
標準X線回析分析技術が、焼成セラミック膜中の固体ナトリウム電解質の結晶構造および相純度を同定するために行われても良い。
【0059】
前記固体バッテリー(例えば、リチウムイオン固体電解質バッテリー、ナトリウムイオン固体電解質バッテリー、またはマグネシウムイオン固体電解質バッテリー)は、集電体(単数または複数)を含む。前記バッテリーは、多孔性の固体電解質物質のカソード側に配置されたカソード側(第一)集電体と、多孔性の固体電解質物質のアノード側に配置されたアノード側(第二)集電体を有する。前記集電体は、金属(例えば、アルミニウム、銅、またはチタン)または金属合金(アルミニウム合金、銅合金、またはチタン合金)からそれぞれ独立して作られる。
【0060】
前記固体バッテリー(例えば、リチウムイオン固体電解質バッテリー、ナトリウムイオン固体電解質バッテリー、またはマグネシウムイオン固体電解質バッテリー)は、様々なさらなる構成要素(バイポーラ板、外装、ワイヤを連結するための電気接点/リード等)を含んでもよい。一実施形態では、前記バッテリーはさらに、バイポーラ板を含む。一実施形態では、前記バッテリーは、さらにバイポーラ板および外装、ワイヤを連結するための電気接点/リードを含む。一実施形態では、バッテリーセルの反復ユニットは、バイポーラ板によって分離されている。
【0061】
前記カソード物質(存在する場合)、前記アノード物質(存在する場合)、前記SSE物質、前記カソード側(第一)集電体(存在する場合)、および前記アノード側(第二)集電体(存在する場合)が、一つのセルを形成してもよい。この場合、前記固体イオン伝導性バッテリーは、一以上のバイポーラ板によって分離された複数のセルを有する。前記バッテリー中のセルの数は、当該バッテリーの性能要件(例えば、電圧出力)によって決定され、製作上の制約によってのみ制限される。例えば、前記固体イオン伝導性バッテリーは、1~500のセル(その間の全ての整数値のセルおよび範囲を含む)を含む。
【0062】
一実施形態では、前記イオン伝導性固体バッテリーまたはバッテリーセルは、一つの平面状のカソード及び/又はアノード-電解質界面を有するか、平面状のカソード及び/又はアノード-電解質界面を有さない。一実施形態では、前記バッテリーまたはバッテリーセルは、相間固体電解質(SEI)を示さない。
【0063】
以下の実施例は、本開示を説明するために存在する。それらはいかなる方法による限定も意図しない。
【実施例0064】
以下は、本開示の固体リチウムイオンバッテリーおよびその製造を説明する実施例である。
【0065】
従来型のバッテリーの可燃性有機電解質は、たとえば、10-3Scm-1以上の室温におけるイオン伝導率、および最大で6Vの電気化学的安定性を示す不燃性セラミック系固体電解質(SSE)で置き換えることができる。これは、さらに出力/エネルギー密度を増加させるために、典型的なLiCoOカソードを、より高電圧のカソード物質に置き換えることを可能にする。さらに、金属の集電体を有する平面状のスタック構造中のこれらのセラミック電解質の統合は、バッテリー強度を提供するであろう。
【0066】
本質的に安全で、頑強で、低コストで、高エネルギー密度である全固体Liイオンバッテリー(SSLiB)-目的に応じたミクロ/ナノ構造内に、高伝導率ガーネット型の固体Liイオン電解質と高電圧カソードを組み込むことによって作ることができる-は、低コストサポート薄膜セラミック技術によって作られた。このようなバッテリーは電気自動車で使用できる。
【0067】
例えば、~10-3Scm-1の室温(RT)伝導率(有機電解質と同等)を有するLi-ガーネット固体電解質(SSE)が使用できる。これは、Li-副格子の不規則性を増加させることによって、~10-2Scm-1まで増加させることができる。高安定ガーネットSSEは、LiMMn(M=Fe、Co)高電圧(~6V)カソードとLi金属アノードを、安定性または可燃性に関する懸念なしで使用することを可能にする。
【0068】
既知の製作技術が、わずか~0.01Ωcm-2の面積比抵抗(ASR)をもたらす、電極担持薄膜(~10μm)SSEを形成するために使用できる。スケーラブル(scaleable)な多層セラミック製作技術の使用は、乾燥室または真空装置を必要とせずに、製造コストを劇的に減らすことができる。
【0069】
さらに、目的に応じたミクロ/ナノ構造の電極サポート(骨格)は、界面積を増加させ、平面構造の固体リチウムイオンバッテリー(SSLiB)に特有の高インピーダンスを克服し、結果的にわずか5.02mVのC/3 IRドロップをもたらす。さらに、細孔充填によるLi-アノードとLiMMnカソード骨格の充電/放電は、一般的な電極で見られる機械的サイクリング疲労なしで、放電能力の高深度を提供する。
【0070】
~170μm/反復ユニットにて、300Vのバッテリーパックは、わずか1cm厚未満となる。Alバイポーラ板に起因する高強度を有するこの形状因子は、フレーム・エレメント間の相乗的配置を可能にし、有効重量および容積を減少する。SSLiBの合理的な設計、標的SSE伝導率、高電圧カソード、および高容量電極に基づき、予期される有効比エネルギーは、構造的バイポーラ板を含んで、C/3で~600Wh/kgである。バイポーラ板が強度を提供し、温度コントロールは必須ではないので、これは本質的に外装缶を除いて完全なバッテリーパック仕様である。対応有効エネルギー密度は1810Wh/Lである。
【0071】
全ての製造工程は、乾燥室、真空蒸着、またはグローブ・ボックスを必要とすることなく、環境大気中で従来のセラミック加工装置を用いて行うことができ、製造コストを劇的に低下させる。
【0072】
SEIを含まない全ての固体バッテリーあるいは現在の技術水準のLiバッテリーに固有の他の性能低下メカニズムにとって、インスタント・バッテリーのカレンダー寿命は、10年を超えると予期され、サイクル寿命は5000サイクルを超えると予期される。
【0073】
固体Li-ガーネット電解質(SSE)は、~10-3Scm-1の室温(RT)伝導率(有機電解質と同等)および高電圧(~6V)カソードおよびリチウム金属アノード(可燃性の懸念なし)に対する安定性を含む、SSLiB独自の特性を有する。
【0074】
SSE酸化物粉末の使用は、乾燥室または真空装置を必要とせずに、電極担持薄膜(~10μm)SSEを形成するための低コストのスケーラブル多層セラミック製作技術の使用を可能にし、同様に、設計されたミクロ/ナノ構造電極サポートは、界面積を劇的に増加させる。後者は、平面構造SSLiB特有の高界面インピーダンスを克服し、一般的な電極で見られる機械的サイクリング疲労なしで放電能力の高深度を提供し、且つSEI層形成を避ける。
【0075】
SSEの骨格/電解質/骨格構造は、機械的な強度も提供し、それは、平面状セル間の構造的な金属相互接続(バイポーラ板)の組み込みを可能にし、強度、重量、熱均一性、および形状因子を改善する。結果として得られた強度および形状因子は、バッテリーパックが耐荷重性となる可能性をもたらす。
【0076】
高Li伝導および高電圧安定なガーネット型の固体電解質は、LiLaTa12、LiLaBaTa12およびLiLaZr12中のTaおよびZrに特定のカチオンをドープすることによって作ることができ、RT伝導率を~10-3から10-2Scm-1に拡大する。望ましい伝導率、イオン輸率、および元素Liに対して最大で6Vまでの電気化学的安定性を有する組成物を見つけ出すことができる。
【0077】
電極担持薄膜SSEは製造できる。サブミクロンのSSE粉末およびそのSSEインク/ペースト製剤を作ることができる。テープキャスティング、コロイド沈着、および焼結条件は、多孔性の骨格(足場)に高密度薄膜(~10μm)ガーネットSSEを形成するために発展されることができる。
【0078】
カソードとアノードは組み込まれることができる。電極-SSE界面構造およびSSE表面は、標的とする電極組成に対する界面インピーダンスを最小化するために最適化することができる。高電圧カソードインクは、SSE骨格中に組み込まれた高電圧カソードとLi金属アノードを有するSSLiBを製造するために調製されることができる。前記SSLiBの電気化学性能は、CV、エネルギー/出力密度およびサイクリング性能を含む測定によって決定することができる。
【0079】
Al/Cuバイポーラ板を有する積層(stacked)多セルSSLiBを構築することができる。積層多セルSSLiBの層厚みと面積の関数として、エネルギー/出力密度、サイクル寿命、および機械的強度が、決定できる。
【0080】
Li-充填ガーネットSSE
Li-ガーネットSSEの伝導率は、ガーネット構造中のLi含量(スタッフィング)を増加させるためのドーピングで改善することができる。Li-充填ガーネットは、SSEに対して、以下を含む望ましい物理的および化学的特性を示す:
・立方体形状のLiLaZr12のためのRTバルク伝導率(~10-3S/cm)
・高電圧カソード(最大6V)のための高い電気化学的安定性、現在の有機電解質より約2V高く、より一般的なLiPONより約1V高い。
・元素および溶融Liアノードとの接触における優れた化学安定性(最大400℃)
・Li+輸率は、最大値である1.00に近く、これはバッテリーサイクル効率にとって重要であり、一方、典型的なポリマー電解質はわずか~0.35である。
・幅広い作動温度能力、温度の増加に伴い増加する電気伝導率(300℃で0.1Scm-1に達し、0℃未満で認識可能な伝導率を維持する)。これに対して、ポリマー電解質は高温で可燃性である。
・空気中で酸化物粉末を単に混合して合成でき、そのためバルク合成へのスケールアップが容易である。
【0081】
ガーネットSSEのLi伝導率はさらに増加させることができる。ガーネットのLiイオン伝導率は、結晶構造中のLiの濃度と高い相関性を有する。図1は、様々なLi-充填ガーネットについて、Li伝導率と拡散係数の間の関係を示す。その伝導率は、Li含量につれて増加し、例えば、立方体状のLi-相(LiLaZr12)は、5×10-4S/cmのRT伝導率を示す。しかしながら、伝導率は、焼結温度を含む合成コンディションにも依存する。組成および合成方法の影響は、骨格担持SSE層に関し、~10-3S/cmの最小RT伝導率を達成するために決定されることができる。Li副格子の不規則性を増加するためのドーピングを通じて、RT伝導率を~10-2S/cmに増加できると予測される。ガーネット構造のイオン伝導は、金属-酸素八面体周辺で生じ、四面体vs八面体サイトにおけるLiイオンのサイト占有率は、Liイオン伝導率を直接コントロールする(図2)。例えば、LiLaTa12では、約80%のLiイオンが四面体サイトを占め、わずか20%が八面体サイトを占める。八面体サイトのLi濃度の増加と四面体側の占有率の減少は、イオン伝導率に一桁の増加をもたらすことが示された(図2b)。元素リチウムとの接触において化学的に安定であり、Laと等原子価である、より小さい半径の金属イオン(例えば、Y3+)は、イオン伝導率を増加するために、新しい一連のガーネット(LiBaY12、Li6.4Zr1.6Ta0.612、LiZr12、およびその固溶体)を開発するためにドープされることができる。Y形成のエンタルピー(-1932kJ/mol)は、Laのそれ(-1794kJ/mol)より低く、それゆえ、LaへのYのドーピングは、Y-O結合強度を増加させ、Li-O結合を弱めるであろう。このように、弱いリチウムと酸素の相互作用エネルギーに起因して、Liの移動度は増加する。さらに、Yは、そのより小さいイオン半径に起因して、金属酸素八面体周囲のイオン伝導のよりスムーズな経路を提供すると予期される(図2a)。
【0082】
別のアプローチでは、LiBaY12のM5+サイトをM2+カチオン(たとえば、Zn2+、ひずんだ金属-酸素八面体を形成するために知られている3dカチオン)で置き換えることができる。ZnOは、前記構造中の移動性Liイオンの濃度をさらに増加させ、且つ最終焼結温度を低下させる両方の役割を果たすと考えられる。各M2+は、荷電平衡のため3つのLiを追加し、これらのイオンはガーネット構造中の空のLiサイトを占有する。このように、さらなるLi伝導の増加は、結晶構造、Li-サイト占有率をコントロールし、および、伝導経路活性エネルギーを最小化するために、ガーネット組成物を改変することによって得ることができる。
【0083】
Li-ガーネットのセラミック粉末特性のため、SSLiBは、従来の製造技術を使用して作ることができる。これは、コストとパフォーマンスの両方に関して多大な利点を有する。全ての製造工程は、従来のセラミック加工装置を使用して、環境大気中で、乾燥室、真空蒸着、またはグローブ・ボックスを必要とせず行うことができ、製造コストを劇的に減少させる。
【0084】
これまで研究されたSSLiBは、それらの低表面積、平面状の電極/電解質-界面(例えば、LiPON系SSLiB)のため、高い界面インピーダンスに悩まされている。低い面積比抵抗(ASR)のカソードおよびアノードは、電解質/電極-界面積を増加し、電解質/電極-平面状界面から電気化学的に活性な領域をさらに拡張するために、電子およびイオン伝導相を組み込むことによって達成できる。電解質/電極-界面のナノ/ミクロ構造の改変(例えば、粉末のコロイド沈着または塩溶液含浸による)は、総合的なセル面積比抵抗(ASR)を減少させることができ、その結果、同一の組成および層厚のセルと比べて、出力密度の増加をもたらすと考えられる。これらの同じ進展は、SSLiB界面インピーダンスを減らすために応用することができる。SSLiBは、既知の製造技によって作られ、低コスト、高スピードのスケーラブル多層セラミック加工が、目的に応じたナノ/ミクロ構造電極骨格上に、サポートされる薄膜(~10μm)SSEを作るために利用される。~50および70μmの目的に応じた空隙率(ナノ/ミクロ機構)を有するSSEガーネットサポート層(骨格)は、テープキャスト、それに続く~10μmの高密度ガーネットSSE層のコロイド沈着および焼結によって得られる。その結果得られたピンホールの無いSSE層は、サポート層のため機械的に頑強であり、低い面積比抵抗ASR(例えば、わずか~0.01Ωcm-2)を有すると考えられる。LiMMnは、多孔性カソード骨格内にスクリーン印刷され、最初のLi金属が、多孔性アノード骨格内に含浸される(図3)。例えば、Li(Co,Fe)Mn高電圧カソードは、湿式化学法を使用してナノサイズの粉末の形で調製される。ナノサイズの電極粉末は、グラフェンまたはカーボンブラック等の導電材料および高分子バインダーとNMP溶媒中で混合されることができる。カソード、導電性添加剤またはバインダーの典型的な質量比は、重量で85%:10%:5%である。スラリーの粘度は、多孔性SSE骨格を満たすために最適化され、その中に湿潤され、乾燥されることができる。Liナノ粒子のLi金属フラッシングは、前記多孔性アノード骨格に浸潤されてもよく、あるいは前記Liは、乾燥室処理を回避するできるように、カソード組成物から十分に提供されてもよい。
【0085】
この構造のもう一つの主要な利点は、充電/放電サイクルが、カーボンアノード粉末/繊維をインターカレートおよび拡張するよりむしろ、SSE骨格の孔の充填/空隙化を伴うであろうということである(図3参照)。結果として、充電と放電状態の間の電極寸法に変化はないであろう。これは、サイクル疲労と放電深度の制限の両方を取り除くと考えられ、前者はより長いサイクル寿命を可能にし、後者はより大きいバッテリー実容量を可能にする。
【0086】
さらに、バッテリーを構造単位として積み重ねることを可能にする、総合的なセル寸法に変化はない。軽量の、~40ミクロン厚のAlプレートは、集電体として役立つだけでなく、機械的強度も提供する。~20nmのCuは、Liとの電気化学的互換性のため、アノード側に電着されてもよい。バイポーラ集電体プレートは、スラリーが完全に乾燥される前に適用されることができ、バイポーラ集電体と電極物質間の電気接点を改善するためにプレスされることができる。
【0087】
有機電解質を有する現在のLiBと比較して、本質的に安全な固体化学を有するSSLiBは、非エネルギー密度を増加させ、そのセルレベルのコストを減少させるだけでなく、要求の多いパッケージレベルやシステムレベルにおける工学的要求を回避すると考えられる。技術水準と比べて、セルおよびシステムレベル両方における高い比エネルギー密度は、以下によって達成することができる:
・ガーネットSSEの安定な電気化学的電位窓は、高いセル電圧(~6V)をもたらす高電圧カソードを可能にする。
・多孔性のSSE骨格は、高い比容量のLi-金属アノードの使用を可能にする。
・多孔性の三次元ネットワーク化SSE骨格は、電極物質に、より小さい電荷移動抵抗での容積充填を可能にし、活性電極物質の質量%を増加させる。
・バイポーラ板は、~40μmAlプレート上の、~200ÅCuの電気めっきによって作られる。Cuに対してAlの密度が3倍小さいことを考えると、得られるプレートは、従来のバッテリーで使用されている~10μmのAlおよびCu箔の合計と同じ重量を有する。しかしながら、3倍の強度を有する(Cuに対してAlの強度対重量比が~9倍高いため)。
・所望のバッテリーパック電圧を得るために、反復ユニット(SSLiB/バイポーラ板)はその後、直列にスタックされる(例えば、300Vのバッテリーパックのための50個の6VのSSLiBは、1cm厚未満となるであろう)。
・熱暴走の懸念がないため、熱および電気制御/管理システムは、必要ない。
・提案された本質的に安全なSSLiBは、機械的な保護の必要性も劇的に減少させる。
【0088】
エネルギー密度は、1cm面積に標準化した素子構造の構成要素の厚みから計算される(図4)(表1のデータ参照)。推定されるSSE骨格空隙率は、カソードで70%、アノードで30%である。荷電/容量は、アノードとカソードのために、次のようにバランスを保つ:mLi×CLi=mLMFO×CLMFO(LFMOは、LiFeMnを表す)。それゆえ、全質量(カソード-骨格/SSE/骨格およびバイポーラ板)は、cm面積あたり50.92mgになると計算される。乾燥室の必要性を回避するために、カソード中の全てのLiで充電されるセルを製造することが我々の目的である。したがって、アノード-骨格には、エネルギー密度の計算のためのLi金属はない。
【表1】
対応する総エネルギーは、Etot=C×V=5.13mAh×6V=30.78mWhである。総容積は、1cm面積に対し1.7×10-5Lである。それゆえ、構造的バイポーラ板を含む理論的有効比エネルギーは、~603.29Wh/kgである。以下に計算されるように、C/3での過電圧は、セル電圧と比べて無視でき、理論に近いこのレートでのエネルギー密度につながる。バイポーラ板が強度を提供し、且つ温度制御は必要ないため、これが外部缶を除いた必須のフルバッテリーパックの仕様である(これに対して、技術水準のLiBは、セルレベルからパックレベルにかけてエネルギー密度の~40%の減少を有する)。完全なバッテリーパックの対応有効エネルギー密度は、~1810Wh/Lである。
【0089】
望ましいレート特性は、SSLiBでは、三次元(3D)ネットワーク化骨格構造のため、有機電解質ベースのものと同等であり、伝統的な平面状固体バッテリーよりはるかに良いと考えられる。この理由には、以下が含まれる:
・多孔性SSE骨格は、拡大された3D電極-電解質界面、表面接触面積の劇的な増加および電荷移動インピーダンスの減少を提供する。
・連続的なLi伝導経路を提供するための、電極骨格における10-3~10-2S/cmの伝導率を有するSSEの使用。
・連続的な電子伝導経路を提供するための、電極孔における高アスペクト比(横寸法vs厚み)のグラフェンの使用。
【0090】
レート特性を計算するために、図3に示されているSSLiBの過電圧が、電解質インピーダンス(ZSSE)および電極-電解質-界面インピーダンス(Zinterface)を含めて見積もられた。
【0091】
多孔性SSE骨格は、以下によって、より小さい界面インピーダンスを達成する:1/Zinterface=S*Gs、ここでSは多孔性SSEに近い界面積であり、Gsは特定のエリアあたりの界面コンダクタンスである。前記界面インピーダンスは、前記多孔性SSEが大きな電極-電解質界面積をもたらすため、小さくなると予想される。全SSE構造を通じたイオン輸送インピーダンスは:ZSSE=Zカソード-骨格+Z高密度-SSE+Zアノード骨格;且つZ=(ρL)/(A*(1-ε))、ここでρ=100Ωcm、Lは厚み(図3)、Aは1cm、εは空隙率(カソード骨格で70%、アノード骨格で50%、高密度SSE層で0%)である。それゆえ、Zカソード-骨格=2.3Ohm/cm、Z高密度-SSE=0.01Ohm/cm、およびZアノード-骨格=1Ohm/cm;結果としてZtotal=3.31Ohm/cmとなる。C/3では、電流密度=1.71mA/cmおよび電圧降下は5.02mV/cmであり、6Vセル電圧と比較して無視できる。
【0092】
望ましいサイクリング性能は、以下の利点に起因すると考えられる:
・3D多孔質構造の充填に起因する、インターカレートおよびデ・インターカレートLiに関連する構造的課題がない。
・3D多孔性SSE構造による優れた機械的および電気化学的な電解質-電極界面安定性。
・電解質を消費し、セル・インピーダンスを増加させる現在の技術水準のLiB特有のSEI形成がない。
・高密度のセラミックSSEのためLi樹状突起形成(Liアノードを有するLiBにとって問題である)がない。
それゆえ、カレンダー寿命は、容易に10年を超えるはずであり、サイクル寿命は容易に5000サイクルを超えるはずである。
【0093】
前記SSLiBは、バッテリー材料および構造における進歩である。それは、バッテリー性能における必須の変換変化および乗り物の電化を促進するコストを提供できる。結果として、それは、乗り物のエネルギー効率を改良し、エネルギー関連の排出を減らし、且つ、エネルギー輸入を減らすことができる。
【0094】
図4は、Li6.75BaLaTa1.75Zn0.2512を含む、Liガーネットの伝導率を示す。この組成物の低い活性化エネルギーは、同様の置換がLiLaZr12で行われる場合、~10-2Scm-1のRT伝導率を達成するために経路を与えると考えられる。
【0095】
ガーネットSSEは、セラミック粉末として合成できるので(LiPONと異なり)、高速の、スケーラブル多層セラミック製作技術が、目的に応じたナノ/ミクロ-構造の電極骨格上にサポートされる薄膜(~10μm)SSEを製造するために使用することができる(図3)。50および70μmの目的に応じた空隙率(ナノ/ミクロ特性)SSEサポート層のテープキャスティング、それに続く~10μmの高密度SSE層のコロイド沈着および焼結が使用できる。その結果得られたピンホールの無いSSE層は、サポート層に起因して機械的に頑強であり、わずか~0.01Ωcm-2の低い面積比抵抗ASRを有する。
【0096】
前記~6.0ボルトのカソード組成物(LiMMn、M=Fe、Co)が合成された。これらは、イオンおよび電子の伝導をそれぞれ増加させ、且つ、界面インピーダンスを減少させるために、SSE骨格およびグラフェンと併用されることができる。LiMMnは、多孔性のカソード骨格内にスクリーン印刷されることができ、Li-金属は多孔性のアノード骨格に含浸されることができる。
【0097】
図5は、Liが浸潤した多孔性骨格アノード、それがサポートしている薄い高密度SSE層、およびスクリーン印刷されたLiFePOカソードを使用してテストされた固体LiセルのEIS結果を示す。その高周波インターセプトは、前記高密度SSEインピーダンスに対応し、低周波インターセプトは、全セル・インピーダンスに対応する。
【0098】
バイポーラ板は、~200ÅのCuを~40μmのAlの上に電気めっきすることによって作られた。Cuに対して3倍低いAlの密度により、得られたプレートは、従来型のバッテリーで使用されている~10μmのAlとCuの箔の合計と同じ重さを有する。しかしながら、三倍の強度を有する(Cuに対してAlの強度-重量比が~9倍高いため)。強度の増加は、重量および体積エネルギー密度またはコストに対して無視できる影響を有するAlプレートの厚みを単に増加させることによって達成できる。前記反復ユニット(SSLiB/バイポーラ板)は、所望のバッテリーパック電圧を得るために、連続して積み重ねることができる(例えば、300Vのバッテリーパックのための50個の6V-SSLiBは1cm厚未満となる)。
【0099】
性能およびコストの観点では:
図3に示されるSSLiBのエネルギー密度は、6Vのセルで~600Wh/kgである。LiFeMnカソードの電圧は、5.5VvsLiである。このカソードを使用すると、550Wh/kgのエネルギー密度が達成できる。
・表3のエネルギー密度の計算は、熱暴走および機械的損失の保護のためのパッキングを含んでいない(これはSSLiBでは必要ではないため)。20%のパッケージングが含まれたとしても、総エネルギー密度はなお500Wh/kgである。
・C/3での~5mVの電圧降下は、10-2S/cmのイオン伝導率を有するSSEに基づいている(高密度SSE層を伴う多孔性SSE骨格と対応する小さな界面電荷移動抵抗を使用する)。5×10-4S/cmのイオン伝導率では、C/3レートでの電圧降下はわずか~0.1Vであり、これは6Vのセル電圧より著しく少ない。
・SSLiBの材料費は、高SSLiBエネルギー密度およびそれによる同量のエネルギーを達成するための材料の減少のため、わずか50ドル/KWhである。非物質的な製造コストは、乾燥室の必要がないことから、我々のSSLiBのほうが、現在の技術水準のLiBより低いと考えられる。
【0100】
前記SSE物質は、固体および湿式化学法を使用して合成することができる。例えば、相(phase)純物質を得るために、対応する金属酸化物または塩は、固体あるいは液体の前駆物質として混合され、乾燥され、合成された粉末は、空気中で700~1200℃でか焼されることができる。相純度は、粉末X線回析(PXRD、D8、ブルカー社、Cukα)によって、合成方法およびか焼温度の関数として決定することができる。構造はリートベルト法によって決定できる。構造精密化データを使用して、金属-酸素結合長およびLi-O結合距離は、伝導率についてのガーネット構造中のドーパントの役割を決定するために推定されることができる。インサイツ(In-situ)PXRDは、温度の関数として、ガーネット-SSEとLi(Fe,Co)Mn高電圧カソードの間の何らかの化学反応性を同定するために行われることができる。Liイオン伝導率は、電気化学的インピーダンス分光法(EIS-Solartron 1260)およびDC(Solartron Potentiostat 1287)四点法によって決定できる。電気伝導率は、LiブロッキングAu電極および可逆的元素Li電極の両方を使用して調べることができる。ブロッキング電極が、電子伝導に関する情報を提供する一方(輸率測定)、Li可逆電極測定は、電解質のイオン伝導率に加えて、SSE/電極界面インピーダンスについての情報を提供する。Liおよび他の金属イオンの濃度は、イオン伝導率へのLi含量の役割を理解するために、誘導結合プラズマ(ICP)および電子エネルギー損失分光法(EELS)を使用して測定できる。ガーネット構造の3つの異なる結晶学的位置におけるLiの実際の量およびその分布は、伝導率を改善するために重要である可能性があり、移動性Liイオンの濃度は、10-2S/cmのRT伝導率値に達するために最適化される。
【0101】
低密度Li-ガーネットサンプルの焼結は、伝導率における多数の文献的多様性の原因となる(例えば、図6に示されるように)。高密度SSEを得るための第一の問題は、サブミクロン(又はナノスケール)粉末から始まっている。ナノスケールの粉末から始めることによって、十分に高密度の電解質を得るのに必要な焼結温度は低下できると考えられる。ナノスケールの電解質と電極粉末は、共沈法、リバース-ストライク(reverse-strike)共沈法、およびグリシン-ナイトレート(glycine-nitrate)法、および他の湿式合成法を使用して作ることができる。これらの方法は、所望のLi-ガーネット組成物を作るため、およびサブミクロンのSSE粉末を得るために使用することができる。このサブミクロンのSSE粉末は、その後、所望の粘度と固形分を達成するために、適切なバインダーと溶媒と共に混合することによってインク/ペーストを形成する際に使用されることができる。多孔性SSE骨格(例えば、図9b)上の高密度薄膜(~10μm)ガーネットSSEは、テープキャスティング(図7a)、コロイド沈着、および焼結によって形成することができる。記載した方法は、界面分極(例えば、図7c)を最小化するために、ナノ寸法の電極/電解質-界面積を造るために使用することができる。図3に示される対称の骨格/SSE/骨格構造は、骨格/SSE層に、加熱ラミネーションプレスを使用して、グリーン状態(焼結前)のもう一つの骨格層を積層することによって構成できる。
【0102】
カソードとアノードの組み込み
ナノサイズ(~100nm)のカソード物質、LiMMn(M=Fe、Co)は合成できる。6Vまで安定なSSEを用いると、300mAh/gの比容量(specific capacity)が見込まれる。カソード物質のスラリーは、10%(重量)のカーボンブラックと5%(重量)のフッ化ポリビニリデン(PVDF)高分子バインダーを含むN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液中で、ナノ粒子を分散させることによって調製できる。このバッテリー・スラリーは、ドロップ・キャスティングによって、多孔性のSSE骨格のカソード側に塗布することができる。溶媒を乾燥させ、電極-電解質界面接触を増加させるために、カソード物質付きのSSEは、100℃で2時間加熱される。さらなる熱処理が、界面を最適化するために必要とされるかもしれない。スラリーの粘度は、所望の充填を達成するために、固形分とバインダー/溶媒濃度を修正することによってコントロールされる。カソード粒子径は、SSEへの細孔充填をコントロールするために変更されてもよい。一例では、全ての移動性Liがカソードに由来する(アノードSSE骨格は、セル中で電子伝導を[開始]するために、溶液処理によって、黒鉛材料からなる薄層で被覆されてもよい)。別の例では、Li金属の薄層が、アノードSSE骨格の内側に浸潤され、形状に沿って被覆されてもよい。Li金属箔または市販のナノ粒子のマイルドな加熱(~400℃)が、Liを溶かし浸潤させるために使用できる。Li金属とSSE間の優れた濡れ性は、重要であり、SSE骨格の表面を改質することによって得られた(図8)。アノード側のSSEの細孔を高伝導性の黒鉛材料で充てんするために、グラフェン分散液が既知の方法で調製された。例えば、グラフェンと混合溶媒間の表面エネルギーを合わせることによって、1mg/mLのグラフェン・フレークを水/IPA溶媒中に分散させることができる。ドロップ・コーティングは、多孔性のSSEアノード骨格の内側に~10nm厚の伝導性グラフェンを沈着させるために使用できる。骨格の細孔の充填に成功した後は、金属集電体を用いてセルを完成させることができる。Al箔をカソードのために使用し、Cu箔をアノードのために使用することができる。バイポーラ金属は、セルのスタッキングとインテグレーションのために使用できる。電極と集電体の間の電気接点を改良するために、薄いグラフェン層が適用されてもよい。完成したデバイスは、層と層の間の電気接点をさらに改良するために10分間100℃まで加熱されてもよい。SSLiBの電気化学的な性能は、サイクリックボルタンメトリー、様々なレートでの定電流充電-放電、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)、およびC/3でのサイクリング・パフォーマンスによって評価できる。EISは、デバイス・インピーダンスへの様々な寄与を調査するため、およびLi-金属電極を有する対称セルのEISを比較することによってカソードとSSEの間の界面インピーダンスを明らかにするために、広い周波数範囲(1MHz~0.1mHz)で使用することができる。SSE、電極、SSE-電解質界面、および集電体-電極界面の関数として、各セルのエネルギー密度、出力密度、レート依存性、およびサイクリング・パフォーマンスが決定できる。
【0103】
Al/Cuバイポーラ板を有するマルチセル(直列で2~3セル)SSLiBが、製造できる。エネルギー/出力密度および機械的強度は、層厚と面積の関数として決定できる。
図1
図2a-b】
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書およびそれに添付した図面に記載された固体イオン伝導性バッテリーまたは固体イオン伝導性バッテリーを製造する方法。
【外国語明細書】