IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-X線厚さ計 図1
  • 特開-X線厚さ計 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117780
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】X線厚さ計
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/02 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
G01B15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020527
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】合屋 義教
【テーマコード(参考)】
2F067
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067BB01
2F067EE06
2F067HH04
2F067JJ03
2F067RR24
(57)【要約】
【課題】使用寿命を延ばすことができるX線厚さ計を提供すること。
【解決手段】X線厚さ計は、X線発生器と、X線発生器から発生し、被測定板を透過したX線を検出する検出器と、予め取得された被測定板の材質ごとの検出信号と被測定板の厚さとの関係を表す検量線テーブルを格納した記憶装置と、測定時における検出信号を検量線テーブルに基づいて被測定板の厚さに換算する演算部と、X線発生器の劣化情報に基づいて、X線発生器の管電圧を、測定板厚範囲によって設定された第1管電圧から、第1管電圧よりも低い第2管電圧に低下させる判定を行う判定部と、を備える。検量線テーブルは、第1管電圧における検量線テーブルと、第2管電圧における検量線テーブルとを含む。判定部が第2管電圧に低下させる判定を行うと、X線発生器は第2管電圧で動作される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生器と、
前記X線発生器から発生し、被測定板を透過したX線を検出する検出器と、
予め取得された前記被測定板の材質ごとの前記検出信号と前記被測定板の厚さとの関係を表す検量線テーブルを格納した記憶装置と、
測定時における前記検出信号を前記検量線テーブルに基づいて前記被測定板の厚さに換算する演算部と、
前記X線発生器の劣化情報に基づいて、前記X線発生器の管電圧を、測定板厚範囲によって設定された第1管電圧から、前記第1管電圧よりも低い第2管電圧に低下させる判定を行う判定部と、
を備え、
前記検量線テーブルは、前記第1管電圧における検量線テーブルと、前記第2管電圧における検量線テーブルとを含み、
前記判定部が前記第2管電圧に低下させる判定を行うと、前記X線発生器は前記第2管電圧で動作されるX線厚さ計。
【請求項2】
前記劣化情報は、前記X線発生器の管電圧または管電流のスパイク成分である請求項1に記載のX線厚さ計。
【請求項3】
前記劣化情報は、前記検出信号の変化である請求項1に記載のX線厚さ計。
【請求項4】
前記劣化情報は、前記検出信号の統計ノイズである請求項1に記載のX線厚さ計。
【請求項5】
前記演算部は、前記被測定板の成分比率に応じて前記検量線テーブルを補正する請求項1~4のいずれか1つに記載のX線厚さ計。
【請求項6】
前記判定部が前記第2管電圧に低下させる判定を行うと、前記演算部からの切り替え指令により、前記X線発生器の管電圧が前記第1管電圧から前記第2管電圧に切り替えられる請求項1~5のいずれか1つに記載のX線厚さ計。
【請求項7】
前記判定部が前記第2管電圧に低下させる判定を行うと、外部機器からの切り替え指令により、前記X線発生器の管電圧が前記第1管電圧から前記第2管電圧に切り替えられる請求項1~5のいずれか1つに記載のX線厚さ計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、X線厚さ計に関する。
【背景技術】
【0002】
X線厚さ計は、被測定板を透過するX線の透過線量(透過したX線の減衰量)が、被測定板の厚さに応じて変化することを利用して、被測定板の厚さを測定する。従来、測定対象の板厚範囲に応じてX線発生器へ印加する管電圧を切り替えることは行われており、薄物から厚物まで広範囲の測定エリアをカバーできる。X線発生器には測定精度を確保するために高い管電圧が求められる。また、例えば鉄鋼の圧延ラインにおいては、圧延ラインの稼働中は高い管電圧で連続使用されることから、X線発生器が劣化しやすい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-141943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、使用寿命を延ばすことができるX線厚さ計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、X線厚さ計は、X線発生器と、前記X線発生器から発生し、被測定板を透過したX線を検出する検出器と、予め取得された前記被測定板の材質ごとの前記検出信号と前記被測定板の厚さとの関係を表す検量線テーブルを格納した記憶装置と、測定時における前記検出信号を前記検量線テーブルに基づいて前記被測定板の厚さに換算する演算部と、前記X線発生器の劣化情報に基づいて、前記X線発生器の管電圧を、測定板厚範囲によって設定された第1管電圧から、前記第1管電圧よりも低い第2管電圧に低下させる判定を行う判定部と、を備える。前記検量線テーブルは、前記第1管電圧における検量線テーブルと、前記第2管電圧における検量線テーブルとを含む。前記判定部が前記第2管電圧に低下させる判定を行うと、前記X線発生器は前記第2管電圧で動作される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態のX線厚さ計の構成を示す図である。
図2】(a)は第1管電圧における検量線テーブルの一例を示す図であり、(b)は第2管電圧における検量線テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
図1に示すように、実施形態のX線厚さ計は、X線発生器1と、検出器2と、演算部3と、記憶装置4と、判定部5とを備える。図1において各構成をつなぐ線は、各構成を接続する信号線を表す。信号線は、有線でも無線でもよい。
【0009】
X線発生器1は、X線管(乾球)内の放電によりX線を発生する。X線発生器1からのX線は、被測定板10に照射される。被測定板10は、例えば、鉄やアルミニウムなどを主成分する金属板である。
【0010】
検出器2は、X線発生器1から発生し、被測定板10を透過したX線を検出する。検出器2は、検出したX線量に応じた検出信号を演算部3に出力する。検出信号は、例えば、電流である。
【0011】
記憶装置4には、検量線テーブルが格納されている。検量線テーブルは、予め取得された被測定板10の材質ごとの検出器2の検出信号と被測定板10の厚さとの関係を表す。記憶装置4として、例えば、磁気ディスク、半導体メモリを用いることができる。
【0012】
演算部3は、厚さ測定時において検出器2からの検出信号の入力を受け、検出器2からの検出信号を、記憶装置4から読み出した検量線テーブルに基づいて、被測定板10の厚さに換算する。また、演算部3は、X線発生器1の動作を制御する。
【0013】
また、実施形態のX線厚さ計は、校正装置6を備える。校正装置6は、厚さが判明している複数の基準板を内蔵している。校正時にはそれらを単独でまたは組み合わせてX線ビーム中に挿入する。そして、基準板を透過したX線の透過線量を検出器2で検出し、この検出信号と、基準板の既知の厚さとから検量線テーブルを修正することで、高い測定精度を維持できる。
【0014】
通常、X線発生器1は、測定板厚範囲によって設定された第1管電圧で動作される。図2(a)は、第1管電圧における検量線テーブルの一例を示す。この例では、測定板厚範囲は、10mm以上30mm以下である。測定板厚範囲が変わると第1管電圧も変わる。測定板厚範囲が厚くなると、X線発生器1の第1管電圧を高くする。
【0015】
判定部5は、X線発生器1の劣化情報に基づいて、X線発生器1のX線管に印加する管電圧を、第1管電圧から、第1管電圧よりも低い第2管電圧に低下させる判定を行う。図2(b)は、第2管電圧における検量線テーブルの一例を示す。図2(b)の検量線テーブルにおける被測定板10の材質及び測定板厚範囲の設定は、図2(a)の検量線テーブルと同じ設定であり、管電圧の設定が異なる。すなわち、検量線テーブルは、被測定板10の材質及び測定板厚範囲が同じものについて、第1管電圧における検量線テーブルと、第2管電圧における検量線テーブルとを有する。
【0016】
例えば、圧延ラインは、定期検査やロール替えなどのとき以外は24時間稼働が続けられる。圧延ラインの稼働中にX線発生器1の劣化によりX線厚さ計が停止すると、X線厚さ計の交換のために圧延ラインを停止させなければならない。これは生産効率の低下をまねく。
【0017】
本実施形態によれば、判定部5は、X線発生器1の劣化情報を取得し、X線発生器1の使用寿命の予測精度を向上させる予兆診断を行う。X線発生器1の劣化情報は、X線発生器1の管電圧または管電流のスパイク成分である。判定部5が直接X線発生器1の管電圧または管電流を監視する。または、X線発生器1の動作を制御する演算部3から、X線発生器1の管電圧または管電流のデータを判定部5が受ける。
【0018】
また、X線発生器1の劣化情報は、検出器2の検出信号の変化や、検出信号の統計ノイズである。例えば、判定部5は、演算部3から検出器2の検出信号のデータを受ける。また、X線発生器1の劣化情報として、X線発生器1の通電時間を用いることができる。
【0019】
判定部5が、X線発生器1の劣化情報に基づいて、第2管電圧に低下させる判定を行うと、例えば、演算部3からの切り替え指令により、X線発生器1の管電圧が第1管電圧から第2管電圧に切り替えられ、X線発生器1は第2管電圧で動作される。X線発生器1の管電圧を低下させて被測定板10の厚さ測定を継続することで、高い管電圧のままで使用するよりもX線発生器1の負荷を減らし、定期検査時など圧延ラインの次の停止タイミングまでX線発生器1の使用寿命を延ばすことができる。圧延ラインの稼働中に突然X線発生器1が停止しにくくなる。
【0020】
また、被測定板10の成分比率(例えば、純鉄に対するマンガンやマグネシウムの比率)が既知の場合には、演算部3は、被測定板10の成分比率に応じて、第1管電圧及び第2管電圧のそれぞれについての検量線テーブルを補正することができる。
【0021】
また、判定部5の判定結果を、X線厚さ計に内蔵されない外部機器に送信し、その外部機器からの切り替え指令により、X線発生器1の管電圧を第1管電圧から第2管電圧に切り替えてもよい。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0023】
1…X線発生器、2…検出器、3…演算部、4…記憶装置、5…判定部、6…校正装置、10…被測定板
図1
図2