(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117781
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ハンガー
(51)【国際特許分類】
A47G 25/36 20060101AFI20230817BHJP
A47G 25/38 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A47G25/36 B
A47G25/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020529
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 善行
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099AA01
3K099BA04
3K099BA23
3K099CA03
3K099CA49
3K099CA63
3K099CB24
3K099DA11
3K099EA05
(57)【要約】
【課題】プラスチックを用いないハンガーを提供する。
【解決手段】
衣服類を掛けるハンガー本体部と、支持体に掛けるためのフック部とを有し、
ハンガー本体部は、第一枠本体部と第二枠本体部とで構成され、フック部は、第一フック部形成片と第二フック部形成片とで構成され、第一枠本体部、第二枠本体部、第一フック部形成片及び第二フック部形成片は、一枚のシート材で構成され、第一枠本体部と第二枠本体部は、第一底部の底縁と第二底部の底縁とを共通の底側折り線として連接され、この底側折り線で折り返すことで、第一頂部と第二頂部とが突合せの対面位置となり、かつ、対面位置で、第一枠本体部と第二枠本体部とを繋ぐ差込片が差込部に差し込み可能となる、ハンガーにより解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服用のハンガーであって、
衣服類を掛けるハンガー本体部と、支持体に掛けるためのフック部とを有し、
ハンガー本体部は、第一枠本体部と第二枠本体部とで構成され、
フック部は、第一フック部形成片と第二フック部形成片とで構成され、
第一枠本体部、第二枠本体部、第一フック部形成片及び第二フック部形成片は、一枚のシート材で構成され、
第一枠本体部は、
第一頂部と、
第一頂部から左右斜外方向に延設する第一右肩部及び第一左肩部と、
第一右肩部と第一左肩部の下部同士を繋ぐ第一底部と、
第一頂部、第一右肩部、第一左肩部及び第一底部で囲まれる第一開口部と、
第一右肩部及び第一左肩部からそれぞれ第一肩部折り線を介して延出し、第一頂部側から第一底部側に向かって拡幅する第一肩部上部形成片と、
第一肩部上部形成片から差込片形成折り線を介して延出する差込片と、を有し、
第二枠本体部は、
第二頂部と、
第二頂部から左右斜外方向に延設する第二右肩部及び第二左肩部と、
第二右肩部と第二左肩部の下部同士を繋ぐ第二底部と、
第二頂部、第二右肩部、第二左肩部及び第二底部で囲まれる第二開口部と、
第二右肩部及び第二左肩部からそれぞれ第二肩部折り線を介して延出する第二肩部上部形成片と、
第二右肩部及び第二左肩部と第二肩部上部形成片との間にそれぞれあって差込片を差し込み可能な差込部と、を有し、
第一フック部形成片は、
第一フック部折り線を介して第一頂部の底側に連接し、第一フック部折り線で折り返さない状態において第一開口部内に位置し、かつ、第一フック部折り線で折り返すことで第一頂部の上方にフック部分を突出させ、
第二フック部形成片は、
第二フック部折り線を介して第二頂部の底側に連接し、第二フック部折り線で折り返さない状態において第二開口部内に位置し、かつ、第二フック部折り線で折り返すことで第二頂部の上方にフック部分を突出させ、
第一枠本体部と第二枠本体部は、第一底部の底縁と第二底部の底縁とを共通の底側折り線として連接され、この底側折り線で折り返すことで、第一頂部と第二頂部とが突合せの対面位置となり、
かつ、第一肩部折り線、第二肩部折り線及び差込片形成折り線を折ることで、対面位置において、差込片が差込部に差し込み可能となる、
ことを特徴とする、ハンガー。
【請求項2】
底側折り線、第一フック部折り線、第二フック部折り線、第一肩部折り線、第二肩部折り線及び差込片形成折り線が、ハーフスリットであり、かつ、同一面に形成されている、請求項1記載のハンガー。
【請求項3】
底側折り線に直交し、第一枠本体部の第一右肩部、第一枠本体部の底部、第二枠本体部の底部、第二枠本体部の第二右肩部を通る、第一折り畳み線と、
底側折り線に直交し、第一枠本体部の第一左肩部、第一枠本体部の底部、第二枠本体部の底部、第二枠本体部の第二左肩部を通る、第二折り畳み線と、を有し、
第一折り畳み線及び第二折り畳み線が、第一フック部形成片及び第二フック部形成片を挟む二位置に配されて、第一折り畳み線と第二折り畳み線で三つ折り可能とされ、
かつ、第一枠本体部の第一右肩部及び第二枠本体部の第二右肩部のそれぞれに配された、底側折り線に平行な一対の第三折り畳み線と、
第一枠本体部の第一左肩部及び第二枠本体部の第二左肩部のそれぞれに配された、底側折り線に平行な一対の第四折り畳み線と、を有し、
第三折り畳み線と第四折り畳み線の何れかがより頂部側に位置して、第一折り畳み線と第二折り畳み線で三つ折りされた形態から、さらに第三折り畳み線及び第四折り畳み線で三つ折り可能とされている、請求項1又は2記載のハンガー。
【請求項4】
第一フック部折り線、第二フック部折り線、第一肩部折り線、第二肩部折り線、差込片形成折り線、第一折り畳み線、第二折り畳み線、第三折り畳み線、第四折り畳み線が、ハーフスリットであり、かつ、同一面に形成されている、請求項3記載のハンガー。
【請求項5】
シート材が、パルプ繊維を抄紙した紙であり、その紙が、複数の紙層が積層されている多層紙である、請求項1~4の何れか1項に記載のハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
上着やズボン、下着等の衣服類を展示販売したり、クリーニング店や家庭にて衣服類を収容保管したりするため、硬質プラスチック製のハンガーが広く使用されている。また、ホテルや旅館等の宿泊施設においては、部屋備え付けのクローセット等に宿泊者等が利用するための硬質プラスチック製や木製のハンガーが備えられていることがある(下記、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
硬質プラスチック製のハンガーは、金型を作成して射出成形して形成することから、ハンガー自体に厚みがあったり、折り畳みや分解が難しい構造のものが多く、収納や運搬が行いにくいという問題があった。
【0004】
他方で、近年では、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題が注目され、環境保護の点等から脱プラスチック化が世界的に進んでいる。日本においても、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立し、例えば、特定の事業者に対して、使い捨てプラスチック製品の削減が義務化されることとなった。そして、この「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」では、「特定プラスチック使用製品」として、プラスチック製のハンガーが指定されており、ハンガーにおける脱プラスチック化の要望が高まっている。
【0005】
ここで、ハンガーをプラスチックに代えて紙製とした技術が、例えば、下記特許文献3、特許文献4、特許文献5等に提案されている。
【0006】
特許文献3に開示されるハンガーは、フック部とハンガー部とを別体とすることで、シート状のパーツ毎に分解することができるようになっており、紙製としながらフック部及びハンガー部が一体成型されているプラスチック製のハンガーより収納及び運搬がしやすいものとなっている。
【0007】
特許文献4及び特許文献5に開示されるハンガーは、一枚のシート材を折り曲げ組み立てて立体的な形状となっており、使用時に衣類に皺や型崩れが発生しにくいものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6954700号
【特許文献2】特許第6694198号
【特許文献3】特開2011-182807号公報
【特許文献4】実用新案登録第3159829号
【特許文献5】特開2019-151364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3のハンガーは、使用時、運搬時に複数部材の組み立及び分解という煩雑な操作を要する。また、嵩張りの解消についても、フック部とハンガー部を別体とするとともに、一枚のシート状にするにとどまり、最も面積の大きいハンガー部自体は、一体成型のプラスチック製ハンガーと同程度で、十分にコンパクト化をできているとは言い難い。
【0010】
他方で、特許文献4及び特許文献5紙製等のシート材で構成されるハンガーは、組み立て前のシート材の状態での収納性、運搬性には優れるが、一度組み立てた後には、収納しやすく持ち運びに適した形態に戻しがたい。また、特許文献5のハンガーは、組み立て前のシート状体において一方面に谷折り部分と山折り部分とが存在し、折り筋等をシート材の両面から形成する必要があるため製造工程が煩雑となるという問題がある。
【0011】
すなわち、特許文献3~特許文献5に開示されるような従来の紙製のハンガーは、いずれも組み立て前の状態がシート状の薄い紙である点において、一体成型のプラスチック製ハンガーと比較して収納性及び運搬性に優れるにとどまっている。したがって、例えば、使用者が旅行の際に携帯するに適する携帯性を達成できるような、折り畳まれた高い省スペース化が実現されているものではない。
【0012】
ハンガーにおいては、スポーツ観戦時、キャンプ等のアウトドアレジャーの際、旅行や観光の際のバスや電車等の車内、オフィスや学校などの種々の場所及び場面において、使用することが想定されるが、必要時にハンガーが無いことが多々ある。このため、例えば、ハンドバック等に入るサイズにコンパクトに折りたためて携帯しやすく、さらに、簡単に組み立てることができるハンガーが求められる。
【0013】
そこで、本発明の主たる課題は、立体的な使用形態と携帯性に優れる折り畳み形態とを選択することができ、しかも、非プラスチック性のシート材から容易に製造することができるハンガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決した第一の手段は、
衣服用のハンガーであって、
衣服類を掛けるハンガー本体部と、支持体に掛けるためのフック部とを有し、
ハンガー本体部は、第一枠本体部と第二枠本体部とで構成され、
フック部は、第一フック部形成片と第二フック部形成片とで構成され、
第一枠本体部、第二枠本体部、第一フック部形成片及び第二フック部形成片は、一枚のシート材で構成され、
第一枠本体部は、
第一頂部と、
第一頂部から左右斜外方向に延設する第一右肩部及び第一左肩部と、
第一右肩部と第一左肩部の下部同士を繋ぐ第一底部と、
第一頂部、第一右肩部、第一左肩部及び第一底部で囲まれる第一開口部と、
第一右肩部及び第一左肩部からそれぞれ第一肩部折り線を介して延出し、第一頂部側から第一底部側に向かって拡幅する第一肩部上部形成片と、
第一肩部上部形成片から差込片形成折り線を介して延出する差込片と、を有し、
第二枠本体部は、
第二頂部と、
第二頂部から左右斜外方向に延設する第二右肩部及び第二左肩部と、
第二右肩部と第二左肩部の下部同士を繋ぐ第二底部と、
第二頂部、第二右肩部、第二左肩部及び第二底部で囲まれる第二開口部と、
第二右肩部及び第二左肩部からそれぞれ第二肩部折り線を介して延出する第二肩部上部形成片と、
第二右肩部及び第二左肩部と第二肩部上部形成片との間にそれぞれあって差込片を差し込み可能な差込部と、を有し、
第一フック部形成片は、
第一フック部折り線を介して第一頂部の底側に連接し、第一フック部折り線で折り返さない状態において第一開口部内に位置し、かつ、第一フック部折り線で折り返すことで第一頂部の上方にフック部分を突出させ、
第二フック部形成片は、
第二フック部折り線を介して第二頂部の底側に連接し、第二フック部折り線で折り返さない状態において第二開口部内に位置し、かつ、第二フック部折り線で折り返すことで第二頂部の上方にフック部分を突出させ、
第一枠本体部と第二枠本体部は、第一底部の底縁と第二底部の底縁とを共通の底側折り線として連接され、この底側折り線で折り返すことで、第一頂部と第二頂部とが突合せの対面位置となり、
かつ、第一肩部折り線、第二肩部折り線及び差込片形成折り線を折ることで、対面位置において、差込片が差込部に差し込み可能となる、
ことを特徴とする、ハンガーである。
【0015】
第二の手段は、
底側折り線、第一フック部折り線、第二フック部折り線、第一肩部折り線、第二肩部折り線及び差込片形成折り線が、ハーフスリットであり、かつ、同一面に形成されている、上記第一の手段に係るハンガーである。
【0016】
第三の手段は、
底側折り線に直交し、第一枠本体部の第一右肩部、第一枠本体部の底部、第二枠本体部の底部、第二枠本体部の第二右肩部を通る、第一折り畳み線と、
底側折り線に直交し、第一枠本体部の第一左肩部、第一枠本体部の底部、第二枠本体部の底部、第二枠本体部の第二左肩部を通る、第二折り畳み線と、を有し、
第一折り畳み線及び第二折り畳み線が、第一フック部形成片及び第二フック部形成片を挟む二位置に配されて、第一折り畳み線と第二折り畳み線で三つ折り可能とされ、
かつ、第一枠本体部の第一右肩部及び第二枠本体部の第二右肩部のそれぞれに配された、底側折り線に平行な一対の第三折り畳み線と、
第一枠本体部の第一左肩部及び第二枠本体部の第二左肩部のそれぞれに配された、底側折り線に平行な一対の第四折り畳み線と、を有し、
第三折り畳み線と第四折り畳み線の何れかがより頂部側に位置して、第一折り畳み線と第二折り畳み線で三つ折りされた形態から、さらに第三折り畳み線及び第四折り畳み線で三つ折り可能とされている、上記第一又は第二の手段に係るハンガーである。
【0017】
第四の手段は、
第一フック部折り線、第二フック部折り線、第一肩部折り線、第二肩部折り線、差込片形成折り線、第一折り畳み線、第二折り畳み線、第三折り畳み線、第四折り畳み線が、ハーフスリットであり、かつ、同一面に形成されている、上記第三の手段に係るハンガーである。
【0018】
第五の手段は、
シート材が、パルプ繊維を抄紙した紙であり、その紙が、複数の紙層が積層されている多層紙である、上記第一~第四の手段に係るハンガーである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、立体的な使用形態と携帯性に優れる折り畳み形態とを選択することができ、しかも、非プラスチック性のシート材から容易に製造することができるハンガーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】本実施形態のハンガーの展開状態の側面図である。
【
図4】本実施形態のハンガーに係るフック部を折り返した図である。
【
図5】本実施形態のハンガーに係る底折り線を折り返し、第一枠本体部側から見た図である。
【
図6】本実施形態のハンガーに係る底折り線を折り返し、第二枠本体部側から見た図である。
【
図7】本実施形態のハンガーの構造及び組み立てを説明する第一の側面図である。
【
図8】本実施形態のハンガーの構造及び組み立てを説明する第二の側面図である。
【
図9】本実施形態のハンガーの構造及び組み立てを説明する第三の側面図である。
【
図10】本実施形態のハンガーの構造及び組み立て後の左側面図である。
【
図11】本実施形態のハンガーの構造及び組み立て後の正面図である。
【
図12】本実施形態のハンガーの構造及び組み立て後の左側面図である。
【
図13】本実施形態のハンガーの折り畳みを説明するための第一の図である。
【
図14】本実施形態のハンガーの折り畳みを説明するための第二の図である。
【
図15】本実施形態のハンガーの折り畳みを説明するための第三の図である。
【
図16】本実施形態のハンガーの折り畳みを説明するための第四の図である。
【
図17】本実施形態のハンガーの折り畳みを説明するための第五の図である。
【
図18】本実施形態のハンガーの折り畳み後の図である。
【
図19】本実施形態のハンガーの他の折り畳み後の図である。
【
図20】本実施形態のハンガーの他の折り畳み裏面側の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次いで、本発明の実施形態を
図1~
図21を参照しながら以下に詳述する。但し、本発明は、図示の形状やこの実施形態に限定されるわけではない。本発明の範囲において、各部の詳細な形状や位置を変更できることはいうまでもない。
【0022】
本実施形態に係るハンガー1は、衣服用のハンガーであり、
図1に示すように、使用形態において、衣服類を掛ける略三角形状のハンガー本体部2と、支持体に掛けるための鎌形のフック部分3Fを有するフック部3とを有している。
【0023】
ハンガー本体部2は、第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとが対面するようにして構成され、フック部3は、第一フック部形成片30Aと第二フック部形成片30Bとが対面するようにして構成され、全体として立体的な形状となっている。
【0024】
このハンガー1は、第一枠本体部20A、第二枠本体部20B、第一フック部形成片30A及び第二フック部形成片30Bの各部は、薄板状であって、特に
図2及び
図3に示すように一枚の撓み可能なシート状に展開される。
【0025】
この展開状態において、第一枠本体部20Aは、第一頂部21と、第一頂部21から左右斜外方向に延設する第一右肩部22R及び第一左肩部22Lと、第一右肩部22Rと第一左肩部22Lの下部同士を繋ぐ第一底部23と、第一頂部21、第一右肩部22R、第一左肩部22L及び第一底部23で囲まれる第一開口部24とを有し、第一枠本体部20A及び第一開口部24は、全体として略二等辺三角形状をなしている。
【0026】
第二枠本体部20Bは、第二頂部25と、第二頂部25から左右斜外方向に延設する第二右肩部26R及び第二左肩部26Lと、第二右肩部26Rと第二左肩部26Lの下部同士を繋ぐ第二底部27と、第二頂部25、第二右肩部26R、第二左肩部26L及び第二底部27で囲まれる第二開口部28とを有し、第二枠本体部20B及び第二開口部28は、全体として略二等辺三角形状をなしている。
【0027】
第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bは、第一底部23の底縁23Eと第二底部27の底縁27Eとを共通の一直線の底側折り線51として連接されて一体となっており、第一枠本体部20A又は第二枠本体部20Bを底側折り線51で折り返すと、第一頂部21と第二頂部25とが突合せの対面位置となるように構成されている。図示の形態は、特に好ましい形態として、底側折り線51に対して、第一頂部21と第二頂部25、第一右肩部22Rと第二右肩部26R、第一左肩部22Lと第二左肩部26L、第一底部23と第二底部27、第一開口部24と第二開口部28とが、線対称の位置あり、折り返しによって重なる形状となっている。
【0028】
他方で、本実施形態のハンガー1における第一フック部形成片30Aは、第一フック部折り線55を介して第一頂部21の底側に折り返し可能に連接し、
図2に示すように、第一フック部折り線55で折り返さない展開状態においては第一開口部24内に位置する。また、第一フック部折り線55で折り返すことで、
図1及び
図4に示すように、第一頂部21の上方に第一フック部分31Fが突出されるように構成されている。
【0029】
また、本実施形態のハンガー1における第二フック部形成片30Bは、第二フック部折り線56を介して第二頂部25の底側に折り返し可能に連接し、第二フック部折り線56で折り返さない展開状態において第二開口部28内に位置する。また、第二フック部折り線56で折り返すことで、
図1及び
図4に示すように、第二頂部25の上方に第二フック部分32Fが突出されるように構成されている。
【0030】
図示の形態では、第一フック部形成片30Aと第二フック部形成片30Bは、同形状となっており、底側折り線51に対して、線対称となっており、底側折り線51の折り返しによって対面し重なって、フック部3を形成する。但し、第一フック部形成片30Aと第二フック部形成片30Bは、同形状でなくてもよい。
【0031】
本実施形態のハンガー1では、
図2に示す展開状態から、
図4に示す第一フック部折り線55で第一フック部形成片30Aを折り返し、かつ、第二フック部折り線56で第二フック部形成片30Bを折り返した状態で、第一枠本体部20A又は第二枠本体部20Bを底側折り線51で折り返すと、
図1、
図5~
図7に示すように、第一頂部21より上方に第一フック部形成片30Aの第一フック部分31Fが突出し、第二頂部25より上方に第二フック部形成片30Bの第二フック部分32Fが突出した状態で、第一フック部形成片30Aと第二フック部形成片30Bとが重なり対面しシート材が二重となったフック部3が形成される。このとき、第一頂部21と第二頂部25との間に第一フック部形成片30A及び第二フック部形成片30Bの一部が位置するため第一頂部21と第二頂部25との間が厚みのある強度のある形状となり、さらに、第一頂部21と第二頂部25の上方にシート材が二重となった強度のあるフック部分3Fが形成される。
【0032】
他方で、本実施形態のハンガー1の第一枠本体部20Aは、第一右肩部22R及び第一左肩部22Lからそれぞれ第一肩部折り線52を介して延出し、第一頂部21側から第一底部23側に向かって拡幅する第一肩部上部形成片41と、第一肩部上部形成片41から差込片形成折り線53を介して延出する差込片42と、を有している。図示の形態では、第一肩部上部形成片41は、頂部側が先細の略三角形状となっているが、必ずしも限定されない。略台形状としてもよい。また、第一肩部上部形成片41は、複数あってもよい。さらに、差込片42は、図示の形態では、先端が角丸の略長方形であるが、これに限定されない。先端先細に形成してもよい。また、図示の形態では、一つの第一肩部上部形成片41に一つの差込片42を形成した例であるが、一つの第一肩部上部形成片41に複数の差込片42を形成してもよい。
【0033】
第二枠本体部20Bは、第二右肩部26R及び第二左肩部26Lからそれぞれ第二肩部折り線54を介して延出する第二肩部上部形成片43と、第二右肩部26R及び第二左肩部26Lと第二肩部上部形成片43との間にそれぞれあって差込片42を差し込み可能な差込部44と、を有している。
【0034】
第二枠本体部20Bにおける第二肩部上部形成片43は、図示の形態では、第一肩部上部形成片41と同様に、第二頂部25側から第二底部27側に向かって拡幅する略三角形状となっているが、この形状に必ずしも限定されない。第二肩部上部形成片43は、少なくとも第二右肩部26R及び第二左肩部26Lとの間に差込部44を形成するための余剰代として機能すればよい。ただし、後述する組み立て時に第一肩部上部形成片41と平面視で重なる形状とし、好適には、第一肩部上部形成片41をやや小さくした相似形状とするのが望ましい。
【0035】
差込部44は、第一枠本体部20Aに形成された差込片42が差込可能な形状であればよく、好適には、差込片42の幅、すなわち、差込片42と第一肩部上部形成片41との接続長さである差込片形成折り線53の長さと同じに幅とするのがよい。差込片42を差込部44に根本まで差し込むことが可能となる。また、差込部44は、図示の形態ではシート材を貫通するスリットで形成されている。
図7及び
図8に示すように、第二肩部上部形成片43を折り返した際に、スリットが開いて、孔となる差込部44が形成されるようになっている。ただし、差込部44は、スリットに限定されず。打ち抜き、くり抜きによって細長形状の貫通孔としてもよい。また、図示の形態は、各肩部26R,26Lにつき、一つの差込部44を形成しているが、差込片42の数等に応じて、差込部44の数を複数にしてもよい。
【0036】
実施形態のハンガー1における差込片42及び差込部44は、
図9に示すように、第一枠本体部20A又は第二枠本体部20Bを底側折り線51で折り返し、第一頂部21と第二頂部25とが突合せの対面位置となるようにした状態で、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54及び差込片形成折り線53が折り曲げられていると、差込片42が差込部44に差し込み可能となるように構成される。
【0037】
図示の形態では、底側折り線51で第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bを折り返した際に、各肩部から延出する第一肩部上部形成片41と第二肩部上部形成片43とが近接対面する位置に形成されており、この近接対面する位置で、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54及び差込片形成折り線53が折り曲げられていると、差込片42が差込部44に差し込み可能となるように構成される。そして、差込片42を差込部44に差込むことで、
図10~
図12に示すように、第二肩部上部形成片43と第一肩部上部形成片41とが重なるとともに、第一右肩部22Rと第二右肩部26Rとの間、第一左肩部22Lと第二左肩部26Lとの間のそれぞれに、第一肩部上部形成片41が架橋され、底側折り線51で折り返して対面位置にある第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとが、第一右肩部22Rと第二右肩部26Rとの間、第一左肩部22Lと第二左肩部26Lのそれぞれで連結される。なお、第二肩部上部形成片43の形状は、この第一肩部上部形成片41が架橋された際に、第一肩部上部形成片41の範囲内で重なり可能な形状であればよい。なお、本実施形態のハンガー1では、この組み立てに際し、底側折り線51、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54及び差込片形成折り線53のいずれを先に折り曲げるかは限定されない。
【0038】
ここで、本実施形態のハンガー1では、第一肩部上部形成片41は、第一頂部21側から第一底部23側に向かって漸次拡幅する形状となっており、好ましい図示の形態では、略三角形状となっている。このため、差込片42を差込部44に差し込み、第一右肩部22Rと第二右肩部26Rとの間及び第一左肩部22Lと第二左肩部26Lとの間のそれぞれに、第一肩部上部形成片41が架橋されると、対面位置にある第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとは、第一右肩部22Rと第二右肩部26R及び第一左肩部22Lと第二左肩部26Lとの間が、頂部側から底側に向かって第一肩部上部形成片41の底側位置まで、離間距離が漸次広がる立体的形状に形成される。
【0039】
他方で、本実施形態のハンガー1では、第一右肩部22Rと第二右肩部26R及び第一左肩部22Lと第二左肩部26Lとの間が、頂部側から底側に向かって第一肩部上部形成片41の底側位置まで、離間距離が漸次広がる一方で、第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとは、底側折り線51で連接されているため、特に第一肩部上部形成片41の底側位置から底側折り線51までの長さが短い場合や第一肩部上部形成片41の底側の拡幅幅が広い場合には、組み立て時に、第一肩部上部形成片41の底側位置から底側折り線51の間において、第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとの離間距離が急激に短くなる。このため、例えば、特にシート材が、撓み難いコシの強い素材である場合に、組み立てしやすいように、第一肩部上部形成片41の底側位置又はその位置よりも底側折り線51に近い位置に、底側折り線51と平行な折り曲げを容易とする折り曲げ補助線57,58を形成するのが望ましい。好ましい図示の形態は、折り曲げ補助線57,58は、ハンガー1を携帯しやすいように折り畳むための後に詳述する第三折り畳み線57と第四折り畳み線58を兼ねている。ただし折り曲げ補助線57,58は、必ずしも必要なく、また、折り畳み線と兼ねる必要もない。折り曲げ補助線を設けた場合、折り曲げ補助線によってシート材の撓みが解消されるため、コシの強い素材であっても、組み立てが容易となる。
【0040】
本実施形態のハンガー1における底側折り線51、第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54、差込片形成折り線53及び折り曲げ補助線57,58は、シート材の折り曲げ折り返しや折り曲げを容易に行えるようにするための線であり、位置決めのための単なる印刷による線であってもよいが、好ましくは、折筋とも称される罫線、ミシン目、ハーフスリットである。特に、好ましくは、コシの強い素材であっても折り曲げを容易にできるハーフスリットである。ミシン目とする場合のカットタイ比、ハーフスリットとする場合のスリット深さは、シート材の厚みや強度によって変更すればよい。また、本実施形態のハンガーにおける第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54、差込片形成折り線53及び折り曲げ補助線57,58は、すべてが同種の線である必要はなく、例えば、底側折り線51をミシン目として、その他をハーフスリットとしてもよい。また、ミシン目とする場合のカットタイ比、ハーフスリットとする場合のスリット深さは同一でなくてもよい。
【0041】
ここで、本実施形態のハンガー1の構造は、特徴的に、底側折り線51、第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54、差込片形成折り線53及び折り曲げ補助線57,58での各部の折り曲げ方向をすべて同一方向にすることができる。具体的には、図示の形態では、
図2に示す展開状態から組み立てるにあたって、各折り線はすべて山折り線となっており、折り曲げ方向が同一方向となっている。つまり、底側折り線51では、第一枠本体部20A又は第二枠本体部20Bが紙面の奥側方向に折り返され、第一フック部折り線55で、第一フック部形成片30Aが、紙面の奥側方向に折り返され、第二フック部折り線56で、第二フック部形成片30Bが、紙面の奥側方向に折り返され、第一肩部折り線52で、第一肩部上部形成片41が紙面の奥側方向に折り返され、第二肩部折り線54で、第二肩部上部形成片43が紙面の奥側方向に折り返され、差込片形成折り線53で、差込片42が紙面の奥側方向に折り返される。折り曲げ補助線57,58を形成した場合も同様に、折り曲げ補助線57,58で分断される各領域のいずれかが、紙面の奥側方向に折り曲げられるようになっている。
【0042】
したがって、本実施形態のハンガー1においては、底側折り線51、第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54及び差込片形成折り線53、さらに折り曲げ補助線57を、ハーフスリットとして、同一面に形成するのが望ましい。ハーフスリットは、折り曲げ時にスリット側が開くようになるため、強度のあるハンガーにしやすい厚みがあって撓むもののコシの強い素材であっても直線的な折り曲げを容易にでき、組み立てしやすく強度のあるハンガーとしやすい。さらに、同一面にハーフスリットを形成することができる場合、紙面の双方からカットする製造方法に比して製造が極めて容易となる。
【0043】
さらに、本実施形態のハンガー1は、特に好ましい形態として、特に
図2に示されるように、底側折り線51に直交し、第一枠本体部20Aの第一右肩部22R、第一枠本体部20Aの第一底部23、第二枠本体部20Bの第二底部27、第二枠本体部20Bの第二右肩部26Rを一直線上に通る、第一折り畳み線59を有し、さらに、底側折り線51に直交し、第一枠本体部20Aの第一左肩部22L、第一枠本体部20Aの第一底部23、第二枠本体部20Bの第二底部27、第二枠本体部20Bの第二左肩部26Lを一直線上に通る、第二折り畳み線60と、を有している。図示の形態では、第一折り畳み線59及び第二折り畳み線60は、第一肩部上部形成片41、第二肩部上部形成片43を通るように配されているが、このようにしてもよい。ただし、第一肩部上部形成片41、第二肩部上部形成片43を通らないように配することもできる。これは、第一肩部上部形成片41、第二肩部上部形成片43の位置及び形状によって選択される。
【0044】
また、この第一折り畳み線59及び第二折り畳み線60は、第一フック部形成片30A及び第二フック部形成片30Bを挟む二位置に配されている。したがって、第一フック部形成片30A及び第二フック部形成片30Bに関係なく、展開状態における底側折り線51の延在方向を幅方向として、第一折り畳み線59でその第一折り畳み線59より幅方向外側領域2Rを折り返すことができる。また、第二折り畳み線60でその第二折り畳み線60より幅方向外側領域2Lを折り返すことができる。第一折り畳み線59と第二折り畳み線60との間の距離は限定されないが、第一折り畳み線59及び第二折り畳み線60との間の距離と、第一折り畳み線59及び第二折り畳み線60から幅方向外側端までの距離を、全幅の1/3程度とし、やや第一折り畳み線59及び第二折り畳み線60との間の距離を広く構成すると、最もコンパトに三つ折りされるようになる。
【0045】
さらに、本実施形態のハンガー1は、第一枠本体部20Aの第一右肩部22R及び第二枠本体部20Bの第二右肩部26Rにそれぞれ配された、底側折り線51に平行な一対の第三折り畳み線57と、第一枠本体部20Aの第一左肩部22L及び第二枠本体部20Bの第二左肩部26Lにそれぞれ配された、底側折り線51に平行な一対の第四折り畳み線58と、を有している。また、第三折り畳み線57は、第一折り畳み線59よりも、第一右肩部22Rと第一底部23との接続位置に近い位置と第二右肩部26Rと第二底部27との接続位置に近い位置とに配されている。同様に、第四折り畳み線58は、第二折り畳み線60よりも、第一左肩部22Lと第一底部23との接続位置に近い位置と第二左肩部26Lと第二底部27との接続位置に近い位置とに配されている。なお、一対の第三折り畳み線57の各線の底側折り線51からの距離は必ずしも等距離である必要はないが、等距離とするのが望ましい。一対の第四折り畳み線58の各線の底側折り線51からの距離についても同様で、必ずしも等距離である必要はないが、等距離とするのが望ましい。また、図示の形態では、第三折り畳み線57及び第四折り畳み線58は、折り曲げ補助線を兼ねている。
【0046】
この第三折り畳み線57と第四折り畳み線58は、何れかがより頂部21,25側に位置しており、第一折り畳み線59と第二折り畳み線60で三つ折りされた形態から、さらに第三折り畳み線57及び第四折り畳み線58で三つ折り可能とする。
【0047】
この第三折り畳み線57及び第四折り畳み線58での三つ折りについて、図示の形態で具体的に説明する。
図2、
図4に展開状態を示すように、図示の形態のハンガー1は、第一枠本体部20Aの第一左肩部22L及び第二枠本体部20Bの第二左肩部26Lのそれぞれに配されている第四折り畳み線58が、第三折り畳み線57の位置よりも頂部21,25側に位置している。この図示の形態では、まず、
図4に示すように、第一頂部21より上方に第一フック部形成片30Aの第一フック部分31Fが突出し、第二頂部25より上方に第二フック部形成片30Bの第二フック部分32Fが突出した状態とする、この状態で、
図13に示すように、第一折り畳み線59でその第一折り畳み線59より幅方向外側の領域2Rを紙面の奥側方向に折り返し、その後、
図14に示すように、第二折り畳み線60でその第二折り畳み線60より幅方向外側の領域2Lを紙面の奥側方向に折り返して、第一折り畳み線59より幅方向外側の領域2Rに重ねて三つ折り形態とする。このとき、第四折り畳み線58がある第二折り畳み線60より幅方向外側の領域2Lがより紙面奥側に位置するようになる。次いで、この状態において、
図15に示すように、紙面手前側方向、つまり、第四折り畳み線58が外方、第三折り畳み線57が内方となるようにして、第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部21側に位置する部分2Xを折り返す。なお、この折り畳みは、第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部25側に位置する部分2Yを先に折り返してもよい。この折り畳みに際しては、より紙面の奥側方向に第四折り畳み線58が形成されている第二折り畳み線60より幅方向外側の領域2Lが、第三折り畳み線57が形成されている第一折り畳み線59より幅方向外側の領域2Rを被覆し巻き込むように折り畳まれるため、第四折り畳み線58と第三折り畳み線57とが底側折り線51から等距離になく、第四折り畳み線58が第三折り畳み線57よりも頂部21,25側に位置していることで、折り返しの際にシート材が撓みやすく、また、第四折り畳み線58と第三折り畳み線57との間に隙間Z1,Z2が形成されてスムーズに折り返すことができるようになる。
【0048】
第四折り畳み線58が外方、第三折り畳み線57が内方となるようにして、第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部21側に位置する部分2Xを折り返したら、
図16に示すように、第一フック部折り線55で折り返されていた第一フック部30Aを基に戻すように折り戻す。なお、この第一フック部30Aの折り戻しは、第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部21側に位置する部分2Xを折り返す前に行ってもよい。
【0049】
第一フック部30の折り戻しの後、
図17に示すように、第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部25側に位置する部分2Yを紙面手前側方向、つまり、第四折り畳み線58が外方、第三折り畳み線57が内方となるようにして、折り返す。なお、上記のとおり、部分Xと部分Yはいずれを先に折り返してもよい。
【0050】
第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部25側に位置する部分2Yを折り返したら、
図18に示すように、第二フック部折り線56で折り返されていた第二フック部30Bを基に戻すように折り戻す。なお、この第二フック部30Bの折り戻しは、第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部25側に位置する部分2Yを折り返す前に行ってもよい。
【0051】
かくして第一折り畳み線から第四折り畳み線を折り畳むと、
図18に示すように、領域2R、領域2L、部分X、部分Yが折り畳まれ、極めてコンパクトで携帯性に優れる形状に折りたたまれる。
【0052】
なお、第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部21側に位置する部分2Xよりも、第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部25側に位置する部分2Yを先に紙面手前側方向に折り返す形態では、
図19に示す形状となる。いずれの場合でも、コンパクトに折り畳まれる。なお、
図19に示す折り畳み形態における、背面側の形状を
図20に示す。
【0053】
なお、説明の図示の形態では、第一折り畳み線59より幅方向外側の領域2Rを先に紙面の奥側方向に折り返し、その後に、第二折り畳み線60より幅方向外側の領域2Lを紙面の奥側方向に折り返して、第二折り畳み線60より幅方向外側の領域2Lがより紙面奥側に位置するようにするとともに手前側に折り返したため、第四折り畳み線58が、より頂部21,25側に位置する形態となっているが、先に第二折り畳み線60より幅方向外側の領域2Lを紙面の奥側方向に折り返し、その後に第一折り畳み線59より幅方向外側の領域2Rを紙面の奥側方向に折り返し、第一折り畳み線59より幅方向外側の領域2Rがより紙面の奥側方向に位置する折り畳み形態とするならば、第三折り畳み線57が第四折り畳み線58よりも頂部21,25側に位置するように配すればよい。すなわち、第三折り畳み線57と第四折り畳み線58の何れを頂部21,25側に位置させるかは第一折り畳み線59及び第二折り畳み線60の折り畳み順による。
【0054】
本実施形態のハンガー1では、底側折り線51、第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54、差込片形成折り線53に加えて、さらに、第一折り畳み線59、第二折り畳み線60、第三折り畳み線57、第四折り畳み線58での各部の折り曲げ方向をすべて同一方向とすることができる。例えば、
図2に示す展開状態から上記説明の折り畳みを行うにあたって、第一折り畳み線59、第二折り畳み線60、第三折り畳み線57、第四折り畳み線58も他の折り線と同様にすべて山折りとなっている。
【0055】
したがって、本実施形態のハンガーにおいては、底側折り線51、第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54、差込片形成折り線53に加えて、さらに、第一折り畳み線59、第二折り畳み線60、第三折り畳み線57、第四折り畳み線58もハーフスリットとして、同一面に形成することができ、この用意するのが望ましい。同一面にハーフスリットを形成するだけでよいため、紙面の双方からカットする製造方法に比して製造が容易にとなる。
【0056】
ここで、本実施形態のハンガー1における各折り線をハーフスリットとする場合、スリット深さは限定されないが、好ましくは、スリット間における引張強度が150N以上、好ましくは、170N以上とするのが望ましい。組み立て時や使用時、さらに折り畳み時に、ハーフスリット位置で意図せず破断するおそれが各段に小さくなる。なお、この引張強度は、JIS P 8113に準拠し、大きさを幅15mm×長さ180mmの長方形とし、長さの半分の90mmの位置にハーフスリットを形成した試料を用いて測定した値であり、また、測定は、引張速度を20mm/minとしロードセル容量を1KNとする。
【0057】
以上の構造の本実施形態のハンガー1は、特に、第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bの各肩部間に第一肩部上部形成片41が架橋された立体的な使用形態となる。また、第一折り畳み線29、第二折り畳み線60、第三折り畳み線57及び第四折り畳み線58で折り畳むことができ、携帯性に優れるコンパクトな折り畳み形態とすることができる。しかも、展開状態が紙のような一枚のシート材となるため、非プラスチック性のシート材から製造することができる。さらに、展開状態から各部の折り曲げ方向を同一方向とすることができ、ハーフスリットや罫線を一方面のみから形成して容易に製造することができる。なお、図示の形態における説明は、
図2に示す展開状態、つまり第一枠本体部20Aの第一頂部21が紙面上方、第二枠本体部20Bの第二頂部25が紙面下方となる位置関係において左右を説明した。第一右肩部22R、第一左肩部22L、第二右肩部26R及び第二左肩部26Lにおける左右は、展開状態のハンガー1と観者の位置によって変わる便宜的なものであることは言うまでもない。
【0058】
ここで、さらに本実施形態のハンガー1に、特に好適なシート材について説明する。本実施形態のシート材は、脱プラスチックの観点から、パルプ繊維を抄紙した紙であるのが望ましい。具体的には、段ボール紙、コートボール紙、複数の紙層が積層されている多層紙が例示できる。もちろんプラスチックを含む合成繊維を含まない天然素材由来の繊維のみから構成される紙であるのがより望ましい。好適には、パルプ繊維のみからなる紙が望ましい。また、特に好ましい紙は、三以上の紙層を有する多層紙である。
図21に示すように、多層紙80は、複数の紙層81,82が積層されているため各層の特性を変えることができ、強度を有しつつ折り曲げやすくできる。例えば、耐水性や耐摩耗性に優れるものの硬いが折れ易い傾向の一対の表層81に柔軟な中層82を組み合わせることで、強靭性や耐久性に優れるようになり、強度を有しつつ折り曲げたり組み立てやすくすることができる。また、各折り線をハーフスリットとした際に表層を含む複数層が完全に切断されないようにすることができ、各折り線における破断の恐れが格段に小さくなる、なお、多層紙80は、多層抄きによって製造することができる。また、多層紙80は、市販されているものであってよく、例えば、大日製紙株式会社製のエリプラペーパー等が例示できる。
【0059】
シート材を紙とする場合、その紙の坪量は、好ましくは400g/m2以上、より好ましくは430g/m2以上、特に好ましくは460g/m2以上である。この坪量の紙であれば、各部の折り曲げによる組み立てをしやすく、しかも十分な剛性及び強度をハンガーとしやすい。坪量の上限値は限定されないが、抄造時にカレンダーロール等で折れジワが発生しやすくなるおそれがあり、この点からは上限値については、1400g/m2が好ましく、1240g/m2がより好ましい。また、シート材を紙とする場合の紙厚は、500μm以上1,400μm以下が好ましく、より好ましくは550μm以上1,350μm以下である。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量測定方法」に準拠して測定した値であり、紙厚は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0060】
シート材を紙とする場合、その紙の構成パルプ繊維は、必ずしも限定されないが、好ましい構成パルプ繊維は、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ及び、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等広葉樹クラフトパルプである。その他のパルプとして、古紙パルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを適宜組合せて使用されていれもよい。強度を発現させやすいことから、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが90~100質量%であるのが望ましい。この場合、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプの配合割合は、5:95~30:70であるのが望ましい。漂清潔感及び硬質感のある意匠性を有するハンガーとするならば、白パルプであり白色度が高い、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを用いることが特に好ましい。
【0061】
シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8113(2006)に準拠して測定された縦方向及び横方向の引張強度が、ともに20kN/m以上、好ましくは25kN/m以上であるのが望ましい。この引張強度を有していれば、折り畳みや組み立てに適し、また、十分な強度のハンガーとしやすい。
【0062】
また、シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8125(2000)に準拠して測定されたテーバー剛度が縦方向で120mN・m以上であり、横方向で40mN・m以上であるのが望ましい。この範囲でであれば、ハンガーとして十分な剛性及び強度とすることができ、また、折り畳みや組み立てやすい。
【0063】
さらに、シート材を紙とする場合その紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18-1:2000に準拠して測定されるZ軸強度が400kN/m2以上、好ましくは450kN/m2以上であるのが望ましい。トムソン加工等の打ち抜き、カッティングプロッター等のカッティングによって展開状態のハンガーを製造しやすい。
【0064】
シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8147 ISO水平法による静摩擦係数が、0.25~0.65であるのが望ましい。衣服類をかけた際に適度な摩擦があって滑り落ち難く、また、生地を傷め難い適度な表面性となる。なお、本測定法は、シート材の裏面同士、表面同士で各3回の測定を行い、裏面同士、表面同士の3回目の測定値がいずれも上記範囲であるのが望ましい。ISO水平法は,最初の滑りの静摩擦係数、3回目の滑りの静摩擦係数又は3回目の滑りの動摩擦係数の少なくとも一つを測定すればよく、最初の静摩擦係数よりも3回目の静摩擦係数が小さくなる傾向にあり、また、3回目の静摩擦係数の方がばらつきは小さくなる。
【0065】
シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8151に準拠するPPS(パーカープリントサーフラフネス)が、表面及び裏面ともに好ましくは3~8μm、より好ましくは4~7μmであるのがよい。衣服類をかけた際に滑り落ち難く、また、生地を傷め難い適度な表面性となる。
【0066】
シート材を紙とする場合、その紙は、MMDの値が、表面及び裏面ともに好ましくは10~25である。衣服類をかけた際に滑り落ち難く、また、生地を傷め難い適度な表面性となる。MMDの測定は、摩擦感テスター(KES-SE、カトーテック社製)及びその相当機を用いて測定する。なお、摩擦子は、標準付属の直径0.5mmのピアノ線を20本隣接させて構成された、長さ及び幅がともに10mmの接触面を有するものを用いる。
【0067】
シート材を本実施形態に係るハンガー1に特に好ましい多層紙80とする場合、その層数は、限定されないものの、五~九層とし、中層82の層数を三層以上、特に五層とするのがよい。特に
図21に示す形態は、三層の中層82を有するものとなっている。中層82の総数が三層以上であると、多層紙80の強靭性や耐久性がより発現しやすいとされている。中層82の総数の上限としては、層間強度を維持する観点から、七層以下であることが好ましい。また、三層~七層は、円網多筒式抄き合わせ抄紙機を使用する場合における層間強度を維持しながら操業を行いやすい。
【0068】
なお、シート材を多層紙80とする場合、表層81及び中層82の坪量は、上記のシート材を紙とする場合の全体の坪量の範囲で調整することができ、特に限定されないが、好ましくは、表層81の坪量としては、1層あたり55.0g/m2以上150.0g/m2以下、特には60~145g/m2が好ましい。また、中層82全体の坪量としては、490g/m2以上750g/m2以下、特には495g/m2以上740g/m2以下が好ましい。さらに、多層紙80は、多層紙80全体の坪量に対する一対の表層81,81の合計の坪量の割合が、15.0%以上33.0%以下のものであるのが好ましい。一対の表層81の剛直性が高く、中層82の柔軟性が優れるようになる。よって、折り線位置で折り曲げやすく、折り線以外の位置で折れ曲がり難くなり、強度と組み立て易さに優れるハンガーとしやすい。
【0069】
シート材を多層紙80とする場合、その多層紙80における各層のパルプ繊維の配合は、表層81は針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)が0/100以上15/85以下であるのが好ましい。また、この配合の表層81ととともに、中層82は、針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)を15/85以上35/65以下であるのが好ましい。剛直で高密度化しやすい広葉樹クラフトパルプが多く含有され、表層が高密度で剛直な特性となるとともに、中層が表層よりも柔軟性に富む針葉樹クラフトパルプを多く含有するため、組み立て時の各折り線での折り曲げや繰り返しの折り畳みを行っても強度が低下しがたいハンガーとなりやすい。
【0070】
また、シート材を多層紙80とする場合、その多層紙80は、製紙用添加剤としてサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加されているのが望ましい。所望の強度に調整しやすい。なお、多層紙80には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲でその他の各種添加剤を含有させることができる。例えば、ポリビニルアルコールやワックス等を塗布することができる。
【0071】
サイズ剤としては、スチレン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤、ロジンサイズ剤、変性ロジンエマルジョンサイズ剤などが挙げられる。これらの中でもロジンサイズ剤及び変性ロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。ロジンサイズ剤は、特に限定されない。ロジン系の物質は、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類をフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸あるいはその無水物で変性した強化ロジンや、ロジン類をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコールを反応させて得られるロジンエステルを挙げることができる。また、ロジンサイズ剤には、これらの単独またはその混合物をエマルジョン化したもの、単独でエマルジョン化した後に混合したものも含まれる。さらに、エマルジョン化したものに、サイズ発現性をより向上させるために各種ポリマーを添加したものも含まれる。
【0072】
紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリル樹脂系、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂など公知の種々のものを使用できる。これらの中でも、両性紙力増強剤を使用することが好ましい。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドとアニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物等が挙げられる。特に両性ポリアクリルアミドは、自己定着機能を有しているため、紙間強度を向上させるべく増添したとしても、カチオン過多になることがなく、変性ロジンエマルジョンサイズ剤とともに含むことでこれを安定的に定着させることができる。
【0073】
サイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。なお、「kg/t」はパルプ1tあたりの質量(kg)を示す。サイズ剤の添加量をこの範囲とすると、耐水性が高まるため、湿った衣服類やタオルがかけられても十分な強度を保持しやすい。
【0074】
また、シート材を多層紙80とする場合、その多層紙80は、表層81及び中層82の各層に製紙用添加剤として上記のサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加することが好ましい。この場合、表層81のサイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、中層82のサイズ剤の添加量としては、固形分で2.0kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、各層の紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。この範囲とするとで、ハンガーに適した多層紙の層間強度などの各種紙力としやすい。
【0075】
さらに、本実施形態に係るハンガーは、シロキサン化合物が含有されているのが望ましい。シロキサン化合物が含有されていると、シロキサン結合によって剛度、強度、耐水性が高まる。シロキサン化合物は、シロキサン結合を有するものであれば、必ずしも限定されないが、ハンガー1は、人体に接する衣類を掛けるため、生体に対して毒性が無いか、低いものが望ましい。また、シロキサン化合物は、組み立て後のハンガーにシロキサン化合物を塗工する態様のほか、組み立て前のシート材や、素材としてのシート材に対して、適宜のアルコキシシラン溶液やアルコキシシラン溶液加工品を含侵させた後、加温や加熱して含有させてもよい。このようにすると、シロキサン化合物が、パルプ繊維自体に結合したり、パルプ繊維をコーティングしたりする態様で含有されるようになるため望ましい。
【0076】
さらに、本実施形態に係るハンガーは、摩擦係数や表面粗さや折り畳み適性を過度に変化させず、ハンガーの機能及び本発明の効果を妨げない範囲で、表面保護剤や抗菌剤、抗ウィルス剤を塗布したり、含浸させたりしても良い。
【符号の説明】
【0077】
1…ハンガー、2…ハンガー本体部、2R…第一折り畳み線より幅方向外側領域、2L…第二折り畳み線より幅方向外側領域、2X,2Y…第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部21,25側に位置する部分、
3…フック部、3F…フック部分、
20A…第一枠本体部、21…第一頂部、22R…第一右肩部、22L…第一左肩部、23…第一底部、23E…第一底部の底縁、24…第一開口部、
20B…第二枠本体部、25…第二頂部、26R…第二右肩部、26L…第二左肩部、
27…第二底部、27E…第二底部の底縁、28…第二開口部、
30A…第一フック部形成片、31F…第一フック部分、30B…第二フック部形成片、32F…第二フック部分、
41…第一肩部上部形成片、42…差込片、43…第二肩部上部形成片、44…差込部、
51…底側折り線、52…第一肩部折り線、53…差込片形成折り線、54…第二肩部折り線、55…第一フック部折り線、56…第二フック部折り線、57…折り曲げ補助線(第三折り畳み線)、58…折り曲げ補助線(第四折り畳み線)、59…第一折り畳み線、60…第二折り畳み線、
80…多層紙、81…表層、82…中層。