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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117782
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ハンガー
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/36 20060101AFI20230817BHJP
   A47G 25/38 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A47G25/36 B ZAB
A47G25/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020530
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 善行
(72)【発明者】
【氏名】橋口 隆昭
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099AA01
3K099BA04
3K099BA23
3K099CA03
3K099CA49
3K099CA63
3K099DA11
3K099EA05
(57)【要約】
【課題】プラスチックを用いないハンガーを提供する。
【解決手段】
衣服類を掛けるハンガー本体部と、支持体に掛けるためのフック部と、を有し、ハンガー本体部は、フック部が接続される頂部と、頂部から左右斜外方向に延設し肩先に向かって漸次拡幅する一対の肩部と、を有し、ハンガー本体部が、非プラスチック製のシート材で構成され、肩部が肩部第一折り線と肩部第二折り線が折り曲げられて、肩部正面部、肩部上面部及び肩部背面部を有する略コ字状に形成され、頂部は、連結部正面の底側縁に連接し、頂部第一折り線から頂部第六折り線までが折り曲げられて、頂部第一底面形成片が連結部正面部及び連結部背面部の底縁側を支持する頂部第一底面部とされ、頂部天面形成片がフック部が接続される接続孔を有する頂部天面部とされている、ハンガーにより解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服用のハンガーであって、
衣服類を掛けるハンガー本体部と、支持体に掛けるためのフック部と、を有し、
ハンガー本体部は、フック部が接続される頂部と、頂部から左右斜外方向に延設し肩先に向かって漸次拡幅する一対の肩部と、肩部同士を連結する連結部と、を有し、
ハンガー本体部が、シート材で構成され、
各肩部は、肩部正面形成片と、肩部第一折り線を介して肩部正面形成片に連接する肩部上部形成片と、肩部第二折り線を介して肩部上部形成片に連接する肩部背面形成片と、を有し、
肩部第一折り線、肩部第二折り線が折り曲げられて、肩部正面形成片を肩部正面部、肩部上部形成片を肩部上面部、肩部背面形成片を肩部背面部とする形状とされており、
連結部は、肩部正面形成片間にあって各肩部正面形成片に一体的に連接する連結部正面部と、各肩部背面形成片から延出する一対の連結部背面形成片と、各連結部背面形成片に形成され、連結部背面形成片同士を連結して連結部背面部とする係合部と、を有し、
肩部第一折り線、肩部第二折り線の折り曲げによって、連結部背面形成片に形成された係合部同士が近接位置とされているとともに、係合されて連結部正面部に対面する連結部背面部が形成されており、
頂部は、連結部正面部の底側縁に頂部第一折り線を介して連接する頂部第一底面形成片と、頂部第二折り線を介して頂部第一底面形成片に連接する頂部背面形成片と、頂部第三折り線を介して頂部背面形成片に連接する頂部天面形成片と、頂部天面形成片に形成されたフック部が接続される接続孔と、頂部第四折り線を介して頂部天面形成片に連接する頂部正面形成片と、頂部第五折り線を介して頂部正面形成片に連接する頂部第二底面形成片と、頂部第六折り線を介して頂部第二底面形成片に連接する頂部差込片と、頂部差込片が差し込まれる頂部差込部と、を有し、
頂部第一折り線、頂部第二折り線、頂部第三折り線、頂部第四折り線、頂部第五折り線及び頂部第六折り線が折り曲げられて、
頂部第一底面形成片が連結部正面部及び連結部背面部の底縁側を支持する頂部第一底面部とされ、頂部背面形成片が連結部背面部に重なる頂部背面部とされ、頂部天面形成片がフック部が接続される接続孔を有する頂部天面部とされ、頂部正面形成片が連結部正面部に重なる頂部正面部とされ、頂部第二底面形成片が頂部第一底面部に重なる頂部第二底面部とされた形状に形成されているとともに、頂部差込片が頂部差込部に対して差し込み可能とされているとともに、頂部差込片が頂部差込部に対して差し込まれている、
ことを特徴とするハンガー。
【請求項2】
接続孔は、円形孔部と円形孔部の外縁から延出する差込用拡径部とを有し、
フック部は、フック部本体片と抜け防止片とを有し、
フック部本体片及び抜け防止片は、シート材で構成され、
フック部本体片は、円形孔部の直径より幅広で差込用拡径部でのみ通過可能な幅の差込下部と、差込下部の上部に形成され、溝底が対向するように配された一対のガイド溝部と、ガイド溝部間でガイド溝部に直交する方向に形成された抜け防止片差込孔と、を有し、
抜け防止片は、円形孔部の直径より幅広の底縁を有し、
フック部本体片の差込下部が接続孔より頂部天面より下方に差し込まれているとともに、ガイド溝部に円形孔部の外縁部が嵌り、円形孔部の外縁部とガイド溝部とで案内されるようにして、フック部本体片が円形孔部の周縁方向に回動自在とされ、かつ、
抜け防止片差込孔に、抜け防止片の底縁が円形孔部上に位置するように差し込まれて、
フック部とハンガー本体部の頂部とが接続されている、
請求項1記載のハンガー。
【請求項3】
頂部は、
頂部第七折り線を介して頂部天面形成片に連接する頂部側面形成片と、
頂部第八折り線を介して頂部側面形成片に連接する肩部上部連接片と、
頂部第九折り線を介して頂部側面形成片に連接しかつ頂部第十折り線を介して頂部正面形成片に連接する頂部第二正面形成片と、
頂部第十一折り線を介して頂部側面形成片に連接しかつ頂部第十二折り線を介して頂部背面形成片に連接する頂部第二背面形成片と、を有し、
頂部第七折り線が山折りされ、頂部第八折り線が谷折され、頂部第九折り線、頂部第十一折り線が谷折され、頂部第十折り線、頂部第十二折り線が山折されて、
頂部側面形成片が頂面天面部から垂設する頂部側面部とされ、肩部上部連接片が頂部側面の底縁側から肩部上部に連なる肩部上部連接部とされ、頂部第二正面形成片が頂部正面部に重なり、頂部第二背面形成片が頂部背面部に重なり、かつ、肩部上部連接片、頂部側面形成片、頂部第二正面形成片及び頂部第二背面形成片の少なくとも一部が、連結部正面部と連結部背面部との間に位置されている、
請求項1又は2記載のハンガー。
【請求項4】
肩部は、
肩部上部形成片が、肩先端部が漸次幅狭になる形状をなし、
肩部正面形成片及び肩部背面形成片が、肩先端部が漸次拡幅する形状をなし、
肩部正面形成片から肩先第一折り線を介して延出する三角形の正面側肩先片と、
肩部背面形成片から肩先第二折り線を介して延出する三角形の背面側肩先片と、
正面側肩先片から先端折り線を介して延出する第一肩先底縁部形成片と、
背面側肩先片から先端折り線を介して延出する第二肩先底縁部形成片と、を有し、
正面側肩先片と背面側肩先片とが、肩部上部形成の先端から延存する中折折り線を介して連接し、
肩先第一折り線及び肩先第二折り線が山折りされ、中折り線が谷折りされて、正面側肩先片と背面側肩先片が中割り折りされ、
この中割り折りによって、第一肩先底縁部形成片と第二肩先底縁部形成片とが積層一体化が可能となるとともに、第一肩先底縁部形成片と第二肩先底縁部形成片との積層一体化され、この第一肩先底縁部形成片と第二肩先底縁部形成片との積層一体化によって肩部の肩先部の底側に肩先底縁部が形成され、
肩先先端に肩先第一折り線、肩先第二折り線及び肩先底縁部の縁が三角形をなす先端縁が形成されている、
請求項1~3の何れか1項に記載のハンガー。
【請求項5】
肩部は、
肩部上部形成片が、肩先端部が漸次幅広になる形状をなし、
肩部第三折り線を介して肩部背面形成片に連接する肩部底面形成片と、
肩部第四折り線を介して肩部底面形成片の肩先端側に連接する肩部立設面形成片と、を有し、
肩部第三折り線が折り曲げられて、肩部正面形成片を肩部正面部、肩部上部形成片を肩部上面部、肩部背面形成片を肩部背面部、肩部底面形成片を肩部底面部とする箱型形状に形成され、
かつ、肩部第四折り線が折り曲げられて、肩部底面部の肩先端側に肩部立設面が形成されているとともに、その肩部立設面の上縁部が、肩部上面部の底面側に位置して支持している、
請求項1~3の何れか1項に記載のハンガー。
【請求項6】
一対の肩部の各端部に連結され、
肩部間に架橋された吊り下げバーを有し、
この吊り下げバーは、
バー部形成折り曲げ線を介して連接する一対のバー部形成片を有し、
上部が波状縁に形成されている、バー部を有し、
波状縁は、
バー部形成折り曲げ線の延在位置を挟んで山部と谷部とが交互に位置するように配され波型のスリットが、バー部形成折り曲げ線で折り曲げられることで、スリットの縁が立ちがって形成されたものであり、
各バー部形成片にバー部形成折り曲げ線に沿う方向に山部と谷部とが交互に位置し、且つ各バー部形成片の山部と谷部とが対面位置に形成されている、
請求項1~5の何れか1項に記載のハンガー。
【請求項7】
吊り下げバーは、バー部の位置を肩部の下方に位置させるための延長片を有している、請求項6記載のハンガー。
【請求項8】
吊り下げバーは、
延長片間に架橋される挟持バーを有し、
この挟持バーは、端部に設けられた一対の通孔に各延長片が遊嵌されて、延長片間で上下に移動可能とされており、かつ、バー部に重なる断面山形状を有し、バー部との間で衣類を挟持するように構成されている、
請求項7記載のハンガー。
【請求項9】
シート材が、パルプ繊維を抄紙した紙であり、その紙が、複数の紙層が積層されている多層紙である、請求項1~8の何れか1項に記載のハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
上着やズボン、下着等の衣服類を展示販売したり、クリーニング店や家庭にて衣服類を収容保管したりするため、硬質プラスチック製のハンガーが広く使用されている(下記、特許文献1、特許文献2参照)。また、ホテルや旅館等の宿泊施設においては、部屋備え付けのクローセット等に宿泊者等が利用するための硬質プラスチック製や木製のハンガーが備えられていることがある
【0003】
硬質プラスチック製のハンガーは、金型を作成して射出成形して形成することから、ハンガー自体に厚みがあったり、折り畳みや分解が難しい構造のものが多く、収納や運搬が行いにくいという問題がある。
【0004】
他方で、近年では、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題が注目され、環境保護の点等から脱プラスチック化が世界的に進んでいる。日本においても、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立し、例えば、特定の事業者に対して、使い捨てプラスチック製品の削減が義務化されることとなった。そして、この「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」では、「特定プラスチック使用製品」として、プラスチック製のハンガーが指定されており、ハンガーにおける脱プラスチック化の要望が高まっている。
【0005】
ここで、ハンガーをプラスチックに代えて紙製とした技術が、例えば、下記特許文献3、特許文献4等に提案されている。これらのハンガーは、射出成形されたプラスチック製のハンガーと異なり、一枚の薄いシート材を折り曲げ組み立てて形成されるため、シート状のまま輸送や保管することができ、収納性や運搬性において優れる。例えば、店舗等や宿泊施設にシート状のまま納品したり、シート状のままバックヤードに保管したり、必要時に組み立てて使用する使用態様を採ることができる。また、廃棄も容易に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6954700号
【特許文献2】特許第6694198号
【特許文献3】特開2011-182807号公報
【特許文献4】実用新案登録第3159829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3のハンガーは、ハンガー本体が薄板状であるため、肩当パッド部を形成可能にしているものの十分な厚み幅を有する立体的な形状ではないため、長時間の使用により衣類に皺や型崩れが発生するおそれがある。特に、コート、スーツ、ワンピース等の重衣料を掛ける用途には向いていない。また、ハンガー本体が薄板状であるため、特許文献2に開示される高級感のある立体的な木製ハンガーやプラスチック製ハンガーのような意匠性は有していない。
【0008】
特許文献4に開示されるハンガーは、衣類に皺や型崩れが発生し難いように肩部分が幅広に形成されるようになっているが、フック部と本体部とを接合するために接着剤を必用とする。また、厚みのある本体部の中央にフック部がなく、厚みのある本体部の一方側面に薄板状のフック部が接着さえた構造であるため、重衣料を掛けた際に接着部が剥がれるおそれがある。また、スラックスやパンツを掛けるためのバーを有しておらず、スーツを掛けるには向いていない。
【0009】
さらに、特許文献3及び特許文献3のハンガーは、いずれもフック部が本体部に固定されており、フック部が本体部に対して回転する構造ではないため使用時の操作性に劣る。
【0010】
そこで、本発明の主たる課題は、接着剤や粘着テープを使用することなくシート状から組み立てることができ、衣類に皺や型崩れが発生し難い立体的な形状で重衣料を掛けるに十分な強度とすることができ、さらに、フック部が回転する操作性に優れるハンガーを提供することにあり、さらには、スラックス等を掛けるバー部分をも有するハンガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した第一の手段は、
衣服用のハンガーであって、
衣服類を掛けるハンガー本体部と、支持体に掛けるためのフック部と、を有し、
ハンガー本体部は、フック部が接続される頂部と、頂部から左右斜外方向に延設し肩先に向かって漸次拡幅する一対の肩部と、肩部同士を連結する連結部と、を有し、
ハンガー本体部が、シート材で構成され、
各肩部は、肩部正面形成片と、肩部第一折り線を介して肩部正面形成片に連接する肩部上部形成片と、肩部第二折り線を介して肩部上部形成片に連接する肩部背面形成片と、を有し、
肩部第一折り線、肩部第二折り線が折り曲げられて、肩部正面形成片を肩部正面部、肩部上部形成片を肩部上面部、肩部背面形成片を肩部背面部とする形状とされており、
連結部は、肩部正面形成片間にあって各肩部正面形成片に一体的に連接する連結部正面部と、各肩部背面形成片から延出する一対の連結部背面形成片と、各連結部背面形成片に形成され、連結部背面形成片同士を連結して連結部背面部とする係合部と、を有し、
肩部第一折り線、肩部第二折り線の折り曲げによって、連結部背面形成片に形成された係合部同士が近接位置とされているとともに、係合されて連結部正面部に対面する連結部背面部が形成されており、
頂部は、連結部正面部の底側縁に頂部第一折り線を介して連接する頂部第一底面形成片と、頂部第二折り線を介して頂部第一底面形成片に連接する頂部背面形成片と、頂部第三折り線を介して頂部背面形成片に連接する頂部天面形成片と、頂部天面形成片に形成されたフック部が接続される接続孔と、頂部第四折り線を介して頂部天面形成片に連接する頂部正面形成片と、頂部第五折り線を介して頂部正面形成片に連接する頂部第二底面形成片と、頂部第六折り線を介して頂部第二底面形成片に連接する頂部差込片と、頂部差込差片が差し込まれる頂部差込部と、を有し、
頂部第一折り線、頂部第二折り線、頂部第三折り線、頂部第四折り線、頂部第五折り線及び頂部第六折り線が折り曲げられて、
頂部第一底面形成片が連結部正面部及び連結部背面部の底縁側を支持する頂部第一底面部とされ、頂部背面形成片が連結部背面部に重なる頂部背面部とされ、頂部天面形成片がフック部が接続される接続孔を有する頂部天面部とされ、頂部正面形成片が連結部正面部に重なる頂部正面部とされ、頂部第二底面形成片が頂部第一底面部に重なる頂部第二底面部とされた形状に形成されているとともに、頂部差込片が頂部差込部に対して差し込み可能とされているとともに、頂部差込差片が頂部差込部に対して差し込まれている、
ことを特徴とするハンガーである。
【0012】
第二の手段は、
接続孔は、円形孔部と円形孔部の外縁から延出する差込用拡径部とを有し、
フック部は、フック部本体片と抜け防止片とを有し、
フック部本体片及び抜け防止片は、シート材で構成され、
フック部本体片は、円形孔部の直径より幅広で差込用拡径部でのみ通過可能な幅の差込下部と、差込下部の上部に形成され、溝底が対向するように配された一対のガイド溝部と、ガイド溝部間でガイド溝部に直交する方向に形成された抜け防止片差込孔と、を有し、
抜け防止片は、円形孔部の直径より幅広の底縁を有し、
フック部本体片の差込下部が接続孔より頂部天面より下方に差し込まれているとともに、ガイド溝部に円形孔部の外縁部が嵌り、円形孔部の外縁部とガイド溝部とで案内されるようにして、フック部本体片が円形孔部の周縁方向に回動自在とされ、かつ、
抜け防止片差込孔に、抜け防止片の底縁が円形孔部上に位置するように差し込まれて、
フック部とハンガー本体部の頂部とが接続されている、
上記第一の手段に係るハンガーである。
【0013】
第三の手段は、
頂部は、
頂部第七折り線を介して頂部天面形成片に連接する頂部側面形成片と、
頂部第八折り線を介して頂部側面形成片に連接する肩部上部連接片と、
頂部第九折り線を介して頂部側面形成片に連接しかつ頂部第十折り線を介して頂部正面形成片に連接する頂部第二正面形成片と、
頂部第十一折り線を介して頂部側面形成片に連接しかつ頂部第十二折り線を介して頂部背面形成片に連接する頂部第二背面形成片と、を有し、
頂部第七折り線が山折りされ、頂部第八折り線が谷折され、頂部第九折り線、頂部第十一折り線が谷折され、頂部第十折り線、頂部第十二折り線が山折されて、
頂部側面形成片が頂面天面部から垂設する頂部側面部とされ、肩部上部連接片が頂部側面の底縁側から肩部上部に連なる肩部上部連接部とされ、頂部第二正面形成片が頂部正面部に重なり、頂部第二背面形成片が頂部背面部に重なり、かつ、肩部上部連接片、頂部側面形成片、頂部第二正面形成片及び頂部第二背面形成片の少なくとも一部が、連結部正面部と連結部背面部との間に位置されている、
上記第一又は第二手段に係るハンガーである。
【0014】
第四の手段は、
肩部は、
肩部上部形成片が、肩先端部が漸次幅狭になる形状をなし、
肩部正面形成片及び肩部背面形成片が、肩先端部が漸次拡幅する形状をなし、
肩部正面形成片から肩先第一折り線を介して延出する三角形の正面側肩先片と、
肩部背面形成片から肩先第二折り線を介して延出する三角形の背面側肩先片と、
正面側肩先片から先端折り線を介して延出する第一肩先底縁部形成片と、
背面側肩先片から先端折り線を介して延出する第二肩先底縁部形成片と、を有し、
正面側肩先片と背面側肩先片とが、肩部上部形成の先端から延存する中折折り線を介して連接し、
肩先第一折り線及び肩先第二折り線が山折りされ、中折り線が谷折りされて、正面側肩先片と背面側肩先片が中割り折りされ、
この中割り折りによって、第一肩先底縁部形成片と第二肩先底縁部形成片とが積層一体化が可能となるとともに、第一肩先底縁部形成片と第二肩先底縁部形成片との積層一体化され、この第一肩先底縁部形成片と第二肩先底縁部形成片との積層一体化によって肩部の肩先部の底側に肩先底縁部が形成され、
肩先先端に肩先第一折り線、肩先第二折り線及び肩先底縁部の縁が三角形をなす先端縁が形成されている、
上記第一~第三の手段に係るハンガーである。
【0015】
第五の手段は、
肩部は、
肩部上部形成片が、肩先端部が漸次幅広になる形状をなし、
肩部第三折り線を介して肩部背面形成片に連接する肩部底面形成片と、
肩部第四折り線を介して肩部底面形成片の肩先端側に連接する肩部立設面形成片と、を有し、
肩部第三折り線が折り曲げられて、肩部正面形成片を肩部正面部、肩部上部形成片を肩部上面部、肩部背面形成片を肩部背面部、肩部底面形成片を肩部底面部とする箱型形状に形成され、
かつ、肩部第四折り線が折り曲げられて、肩部底面部の肩先端側に肩部立設面が形成されているとともに、その肩部立設面の上縁部が、肩部上面部の底面側に位置して支持している、
上記第一~第三の手段に係るハンガーである。
【0016】
第六の手段は、
一対の肩部の各端部に連結され、
肩部間に架橋された吊り下げバーを有し、
この吊り下げバーは、
バー部形成折り曲げ線を介して連接する一対のバー部形成片と、
バー部形成折り曲げ線の延在位置を挟んで山部と谷部とが交互に位置するように配され波型のスリットと、を有し、
バー部形成折り曲げ線で折り曲げられて、折り曲げ線に沿う山部と谷部とが各バー部形成片に交互に位置する、波状縁が上部に形成されている、
上記第一~第五の手段に係るハンガーである。
【0017】
第七の手段は、
吊り下げバーは、バー部の位置を肩部の下方に位置させるための延長片を有している、上記第六の手段に係るハンガーである。
【0018】
第八の手段は、
吊り下げバーは、
延長片間に架橋される挟持バーを有し、
この挟持バーは、端部に設けられた一対の通孔に各延長片が遊嵌されて、延長片間で上下に移動可能とされており、かつ、バー部に重なる断面山形状を有し、バー部との間で衣類を挟持するように構成されている、
上記第七の手段に係るハンガーである。
【0019】
第九の手段は、
シート材が、パルプ繊維を抄紙した紙であり、その紙が、複数の紙層が積層されている多層紙である、上記第一~第八の手段に係るハンガーである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、接着剤や粘着テープを使用することなくシート状から組み立てることができ、衣類に皺や型崩れが発生し難い立体的な形状で重衣料を掛けるに十分な強度とすることができ、さらに、フック部が回転する操作性に優れるハンガー及び、さらにスラックス等を掛けるバー部分をも有するハンガーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のハンガーの斜視図である。
図2】本実施形態のハンガーのハンガー本体部の展開図である。
図3】本実施形態のハンガーの正面図である。
図4】本実施形態のハンガーの背面図である。
図5】本実施形態のハンガーの天面図である。
図6】本実施形態のハンガーの側面図である。
図7】本実施形態のハンガーの頂部の構造を示す断面図である。
図8】本実施形態のフック部の分解展開図である。
図9】本実施形態の吊り下げバーの展開図である。
図10】本実施形態のハンガーの他の形態のハンガー本体部の展開図である。
図11】本実施形態のハンガーの他の形態の組み立て後の形態を示す斜視図である。
図12図11のXII-XII断面矢視の模式図であり、本実施形態のハンガーの他の形態の肩部の構造を説明する図である。
図13】本実施形態の他の形態の吊り下げバーの分解展開図である。
図14】本実施形態の多層紙の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次いで、本発明の実施形態を図1図14を参照しながら以下に詳述する。但し、本発明は、図示の形状やこの実施形態に限定されるわけではない。本発明の範囲において、各部の詳細な形状や位置については、本発明の効果を妨げない範囲で変更可能である。また、本発明及び本明細書における「正面」、「背面」、「天」、「底」、「左」及び「右」の語は、観者の位置によって変わるものであり絶対的な位置を示す語ではない。本実施形態のハンガーでは、「正面」、「背面」は、使用時の正面及び背面と一致している必要はない。また、「第一」、「第二」等の語は、必ずしも操作の順を示す語ではない。
【0023】
本実施形態に係るハンガー1は、衣服用のハンガーであり、使用形態において、衣服類を掛けるハンガー本体部2と、支持体に掛けるための鎌形のフック部分3Fを有するフック部3とを有している。
【0024】
ハンガー本体部2は、フック部3が接続される頂部10と、頂部10から左右斜外方向に延設し肩先40Eに向かって漸次拡幅する一対の肩部40A(40B)と、肩部40A(40B)同士を連結する連結部60と、を有し、特に、肩部40A(40B)が幅広で全体として厚みのある立体的な形状となっている。
【0025】
このハンガー1は、ハンガー本体部2及びフック部3が、ともに薄板状の一枚のシート状で形成されている。
【0026】
ハンガー本体部2は、図2の展開状態にも示されるように、肩部40Aは、肩部正面形成片41と、肩部第一折り線51を介して肩部正面形成片41に連接する肩部上部形成片42と、肩部第二折り線52を介して肩部上部形成片42に連接する肩部背面形成片43と、とを有している。また、図1図9の形態の肩部40Aでは、特に、肩部正面形成片41と肩部背面形成片43のそれぞれから肩部第三折り線53を介して連接する肩部底面形成片44をも有している。
【0027】
この肩部40Aは、肩部第一折り線51、肩部第二折り線52が山折りに折り曲げられており、肩部正面形成片41と肩部上部形成片42と肩部背面形成片43が断面略コ字型に連接する形状となっており、肩部正面形成片41を肩部正面部41a、肩部上部形成片42を肩部上部42a、肩部背面形成片43を肩部背面部43aとする立体的な形状となっている。ここで、本実施形態のハンガー1では、肩部第一折り線51、肩部第二折り線52の折り曲げ角度は、同一である必要はなく、折り曲げ角度を変化させることで、正面側と背面側とで非対称な形状とすることができる。また、肩部第一折り線51と肩部第二折り線52の長さが同一である必要はない。何れかを短くすると短くした側に、肩部がせり出すように構成され、正面側と背面側とで非対称な形状とすることができる。例えば、図1図9に示す形態では、肩部第二折り線52が短くなっており、背面側に肩部40Aがせり出すように構成されている。このように、正面及び背面を区別させやすい形状となる。
【0028】
また、肩部40Aは、肩部正面形成片41、肩部上部形成片42及び肩部背面形成片43の少なくとも一つを頂部10側から肩先40Eに向かって漸次拡幅するように構成することで、天面視で幅広立体的な肩部40A(40B)が形成される。肩部正面形成片41、肩部上部形成片42及び肩部背面形成片43の具体的な形状は、必ずしも限定されないが、図1図9に示す実施形態では、肩部上部形成片42が、肩先40E側の端部が湾曲する縁が漸次近づいて、漸次幅狭になる形状となっており、肩部正面形成片41及び肩部背面形成片43が、肩先40E側の端部が漸次拡幅する形状となっている。肩部正面形成片41及び肩部背面形成片43の形状は同一である必要はなく、図1図10に示す実施形態では、肩部背面形成片43の肩先側が肩部正面形成片41の肩先側より広くなるように形成されている。このようにすると、正面側と背面側とで非対称な形状の肩先部を有する肩部40Aとなる。
【0029】
ここで、図1図9に示す実施形態の肩部40Aは、好ましく、肩部正面形成片41から肩先第一折り線54を介して延出する三角形の正面側肩先片45と、肩部背面形成片43から肩先第二折り線55を介して延出する三角形の背面側肩先片46とを有しており、これらが肩部上部形成片42の先端から延在する中折り線56を介して連接されている。肩先第一折り線54及び肩先第二折り線55は、山折りされており、中折り線56が谷折りされており、これらの折によって、正面側肩先片45と背面側肩先片46とが、肩部正面形成片41と肩部背面形成片43との間に入り込むように近接され、中割り折りされている。
【0030】
さらに、図1図9に示す実施形態の肩部40Aは、好ましく、正面側肩先片45から先端折り線57を介して延出する第一肩先底縁部形成片47と、背面側肩先片46から先端折り線57を介して延出する第二肩先底縁部形成片48と、を有している。この第一肩先底縁部形成片47と第二肩先底縁部形成片48とは、先端折り線57を谷折りした状態又は谷折りしつつ、正面側肩先片45と背面側肩先片46とを肩部正面形成片41と肩部背面形成片43との間に入り込ませることで、重なり積層されるように配されており、この積層によって、肩部40Aの肩先40Eの底側に肩先底縁部47aを形成している。
なお、図示の形態では、第一肩先底縁部形成片47から延出する差込片47Aと、第二肩先底縁部形成片48と正面側肩先片46との間に形成されたスリット状の差込部48Bとを有しており、第一肩先底縁部形成片47と第二肩先底縁部形成片48とが積層された際に、差込片47Aが差込部48Bに差し込み可能となって、この差し込みによって第一肩先底縁部形成片47と第二肩先底縁部形成片48とが連結されるとともに積層一体化されている。
【0031】
この図1図9に示す実施形態の肩部40Aでは、好ましく、第一肩先底縁部形成片47と第二肩先底縁部形成片48との積層一体化によって、肩先40Eの底に肩先底縁部47aが形成されると、肩先第一折り線54、肩先第二折り線55及び肩先底縁部47aの縁47Eが三角形をなし、肩先40Eの端がトラス構造となる。さらに、図示の形態では、中折り線56とともに立体トラス構造となる。この形態では、特に、肩先40E近傍の強度が非常に向上するため、重衣料を掛けても肩部40Aの先端が垂れたり、曲がったりするおそれが各段に小さくなる。但し、本実施形態のハンガー1では、正面側肩先片45、背面側肩先片46、第一肩先底縁部形成片47及び第二肩先底縁部形成片48はなくともよい。これらの片が無くとも肩部40Aを形成することができる。
【0032】
他方で、本実施形態のハンガー1における連結部60は、肩部正面形成片41の間にあって各肩部正面形成片41に一体的に連接する連結部正面部61と、各肩部背面形成片43から延出する一対の連結部背面形成片62と、各連結部背面形成片62に形成され、連結部背面形成片62同士を連結して連結部背面部62aとする係合部63と、を有している。連結部正面部61は、限定されないが、折り線等を介さずに肩部正面形成片41と一体の領域を構成するようにするのが望ましい。
【0033】
そして、この本実施形態のハンガー1における連結部60は、肩部第一折り線51、肩部第二折り線52の折り曲げによって、連結部背面形成片62に形成された係合部63同士が近接位置となるように構成されており、各係合部63が係合されて連結部正面部61に対面する連結部背面部62aを形成している。図示の形態では、係合部63は、各連結部背面形成片62に形成された係合溝であり、この係合溝同士を掛け合わせることで簡易に連結されるようになっている。但し、係合部同士の係合は、これに限定されない。例えば、スリット状の差込部に差込片を差し込んで連結する方法で係合されていてもよい。但し、図示のように、係合溝同士を掛け合わせる形態とするのが望ましい。この係合形態は、引っ張り方向に強く連結されるため、重衣料を掛ける等した際に生ずる肩部背面形成片43同士が開こうとする力に対して強く連結できる。
【0034】
他方で、本実施形態のハンガー1における連結部60は、連結部背面形成片62に連結部折り線64を介して連接する連結部底面形成片65が設けられており、連結部折り線64が山折りされて、連結部底面形成片65が連結部底面部65aを形成している。このように連結部60に連結部底面部65aが形成されていると、連結部背面部62aと連結部正面部61との間が潰れ難くなるので望ましい。
【0035】
他方で、本実施形態のハンガー1における頂部10は、連結部正面部61の底側縁に頂部第一折り線21を介して連接する頂部第一底面形成片11と、頂部第二折り線22を介して頂部第一底面形成片11に連接する頂部背面形成片12と、頂部第三折り線23を介して頂部背面形成片12に連接する頂部天面形成片13と、頂部天面形成片13に形成されたフック部3が接続される接続孔14と、頂部第四折り線24を介して頂部天面形成片13に連接する頂部正面形成片15と、頂部第五折り線25を介して頂部正面形成片15に連接する頂部第二底面形成片16と、頂部第六折り線26を介して頂部第二底面形成片16に連接する頂部差込片17と、頂部差込片17が差し込まれる頂部差込部18と、を有している。
【0036】
本実施形態のハンガー1における頂部10は、連結部背面形成片62を係合して連結部背面部62aが形成された状態で、頂部第一折り線21、頂部第二折り線22、頂部第三折り線23、頂部第四折り線24、頂部第五折り線25及び頂部第六折り線26が山折りされて、連結部60を取り囲むように構成されている。すなわち、頂部第一折り線21、頂部第二折り線22、頂部第三折り線23、頂部第四折り線24、頂部第五折り線25及び頂部第六折り線26が山折りされて、頂部第一底面形成片11が連結部正面部61及び連結部背面部62aの底縁側を支持する頂部第一底面部11aとされ、頂部背面形成片12が連結部背面部62aに重なる頂部背面部12aとされ、頂部天面形成片13がフック部3が接続される接続孔14を有する頂部天面部13aとされ、頂部正面形成片15が連結部正面部61に重なる頂部正面部15aとされ、頂部第二底面形成片16が頂部第一底面部11aに重なる頂部第二底面部16aとされた形状に形成されているとともに、頂部差込片17が頂部差込部18に対して差し込み可能とされているとともに、頂部差込片17が頂部差込部18に対して差し込まれて形成されている。
【0037】
頂部差込片17及び頂部差込部18の位置や形状は、限定されない。図示の形態では、頂部差込部18が、頂部第一底面形成片11と頂部背面形成片12の間に位置するスリット孔となっており、このスリット孔である頂部差込部18に頂部差込片17を差し込むことで頂部10が構成されるようになっている。頂部背面形成片12は、連結部背面部62aに重なる位置にあるため、頂部差込部18がこの位置にあると頂部差込片17が、連結部背面形成片62の係合部分でもある連結部背面部62aに重なるように差し込まれるため、脆弱な係合部63がより補強されるので望ましい。
【0038】
本実施形態のハンガー1の頂部10は、好ましい形態として、頂部第七折り線27を介して頂部天面形成片13に連接する頂部側面形成片19と、頂部第八折り線28を介して頂部側面形成片19に連接する肩部上部連接片19Eと、頂部第九折り線29Aを介して頂部側面形成片19に連接しかつ頂部第十折り線29Bを介して頂部正面形成片15に連接する頂部第二正面形成片15Bと、頂部第十一折り線29Cを介して頂部側面形成片19に連接しかつ頂部第十二折り線29Dを介して頂部背面形成片12に連接する頂部第二背面形成片12Bと、を有している。
【0039】
そして、この頂部10は、頂部第七折り線27が山折りされ、頂部第八折り線28が谷折され、頂部第九折り線29A、頂部第十一折り線29Cが谷折され、頂部第十折り線29B、頂部第十二折り線29Dが山折されて、頂部側面形成片19が頂部天面部13aから垂下する頂部側面部19aとされ、肩部上部連接片19Eが頂部側面部19aの底縁側から肩部上部42aに連なる肩部上部連接部19eとされ、頂部第二正面形成片15Bが頂部正面部15aに重なり、頂部第二背面形成片12Bが頂部背面部12aに重なり、かつ、肩部上部連接片19E、頂部側面形成片19、頂部第二正面形成片15B及び頂部第二背面形成片12Bの少なくとも一部が、連結部正面部61と連結部背面部62aとの間に位置されている。
【0040】
この好ましい形態の頂部10では、頂部第二正面形成片15Bと頂部正面部15aが重なり、頂部第二背面形成片12Bが頂部背面部12aに重なっているため、頂部正面部15aと頂部背面部12aの一部が二重構造となり強度が高められている。さらに、頂部天面部13aから頂部側面部19aが垂設されているとともに、その頂部側面部19aと頂部第二正面形成片15Bと頂部第二背面形成片12Bの一部が、連結部正面部61と連結部背面部62aとの間に位置しているため、連結部正面部61と連結部背面部62aとの間が極めて潰れ難くなっている。また、頂部側面部19aの底縁側から肩部上部42aに連なる肩部上部連接部19eが形成されるため、特に肩部40Aと連結部60との接続位置における強度が高められている。特に頂部10は、フック部3が接続される部分であるため強度が高いのが望ましいため、このような好ましい形態の頂部10とするのがよい。
【0041】
他方で、本実施形態のハンガー1は、フック部3は、フック部分3Fを有するフック部上部3Tと、接続孔14に差し込まれる差込下部3Uとを有しており、差込下部3Uが、頂部天面部13aに形成された接続孔14に差し込まれて、ハンガー本体部2に対して回動自在に接続されている。フック部3とハンガー本体部2との接続方法は限定されない。図示の形態は、好ましい形態として、フック部3の回動のスムーズさ、組み立て易さ、接続強度及び接続孔14からのフック部3の抜けが防止されている特徴的な特有の構造となっている。
【0042】
すなわち、この本実施形態のハンガー1では、接続孔14が、円形孔部14Aと円形孔部14Aの外縁から延出する差込用拡径部14Bとを有し、フック部3が、フック部本体片30と抜け防止片35とを有している。フック部本体片30と抜け防止片35は、薄板状であり、一枚のシート材で形成されている。フック部本体片30と抜け防止片35は、図8(A)に示すように、シート材をフック部本体片30、抜け防止片35の形状にカットした単層構造の形態のほか、図8(B)に示すように、フック部本体片30と抜け防止片35の形状をなす部分を折り線Pを介して線対称に形成し、折り線Pを折り返すことで二重積層構造としてもよい。この場合、各部の強度がより高まる。
【0043】
フック部本体片30は、円形孔部14Aの直径より幅広で差込用拡径部14Bでのみ通過可能な幅の差込下部3Uと、差込下部3Uの上部に形成され、溝底が対向するように配された一対のガイド溝部31と、ガイド溝部間でガイド溝部31に直交する方向に形成された細長の抜け防止片差込孔32と、を有している。
【0044】
フック部本体片30は、頂部10に対して、フック部本体片30の差込下部3Uが接続孔14より頂部天面部13aより下方に差し込まれているとともに、ガイド溝部31に円形孔部14Aの外縁部14eが嵌り、頂部天面部13a上にフック部上部3Tが立設された状態で、円形孔部14Aの外縁部14eとガイド溝部31とで案内されるようにして、フック部本体片30が円形孔部14Aの周縁方向に回動自在に接続されている。フック部本体片30は、差込用拡径部14Bを通して頂部天面部13aより下方に差込下部3Uが挿入されることが可能で、ガイド溝部31と円形孔部14Aの外縁部14eが一致した位置でフック部本体片30を円形孔部14Aの円周方向に回転させることで、ガイド溝部31が、円形孔部14Aの外縁部14eに嵌るようになっている。
【0045】
円形孔部14Aの外縁から延出する差込用拡径部14Bは、フック部本体片30の厚みと同程度又はやや幅広に形成される。図示の形態では、特に好ましい形態として、差込用拡径部14Bが、打ち抜きではなく略コ字型のスリットで形成されており、舌片14bが形成されるようになっている。この形態では、差込下部3Uの挿入後にこの舌片14bが、返しとなってフック部本体片30の抜けがより効果的に防止される。
【0046】
抜け防止片35は、円形孔部14Aの直径より幅広の底縁35Eを有しており、フック部本体片30の抜け防止片差込孔32に差し込まれることで、頂部天面部13a上に立設されている。この形態では、フック部本体片30と抜け防止片35とは、特に図5に示されるように、天面視で十字に配されて、頂部天面部13aに立設されるようになるため、接続位置において、特にフック部本体片30が円形孔部14Aの縁近傍で折れることが好適に防止されるとともに、フック部3が回転しやすくなる。
【0047】
図示の形態の抜け防止片35は、好ましい形状として、上部に溝部36を有しており、フック部本体片30に形成された抜け防止片差込孔32の上部と、相欠き構造をなしている。このため、抜け防止片35は、抜け防止片差込孔32に差し込んだ後、差し込み位置から抜け防止片35の溝部36の底と、抜け防止片差込孔32の上縁とが当たる位置まで、上方にスライド移動可能に構成されている。そして、図示の好ましい形態では、抜け防止片35が上方にスライド移動された位置において、抜け防止片35の底縁35Eが、フック部本体片30のガイド溝部31より上方に位置するように構成されており、フック部本体片30と抜け防止片35とを組んだ状態で、フック部本体片30を接続孔14に挿入可能となっている。さらにフック部3と頂部天面部13aとが接続された状態で、相欠き構造が外れず抜け防止片35の底縁35Eが接続孔14の上に位置するようになっており、接続状態おいて、抜け防止片35が、抜け防止片差込孔32から抜けないようにもなっている。このように、図示の形態は、接続孔14上にフック部本体片30と抜け防止片35とが、天面視で十字状に立設されるため、フック部3の回動がスムーズとなり、フック部3が折れ難い。さらに、接着剤等を必用せず容易に組み立てることができ、さらに接続強度及び接続孔14からのフック部3の抜けが効果的に防止されている。
【0048】
なお、図8(A)に示す、補強片38を頂部天面部13aとの間に介在させると、よりフック部の抜けが防止されるとともに、頂部天面部13aは実質的に二重構造となり、接続部分が補強される。この補強片38は、接続孔14と同じ形状に円形孔部と差込用拡径部を有しており、接続孔14と差込用拡径部14Bと補強片38の差込用拡径部14Cを一致させた状態でフック部3の差込下部3Uを挿入できるようになっている。挿入後に、接続孔14と差込用拡径部14Bと補強片の差込用拡径部14Cの位置がずれることで、フック部3がより抜け難くなるように構成される。
【0049】
他方で、本実施形態のハンガー1では、好ましい形態として、スラックスやパンツ等を掛けることができるように、一対の肩部40Aの各端部に連結され、肩部40A間に架橋されている吊り下げバー70を有している。この吊り下げバー70も一枚のシート材から組み立てられている。この吊り下げバー70は、図1図3及び図4に示されるように、特徴的に、上部が波状縁70Eとなっているバー部71を有している。
【0050】
バー部71は、バー部形成折り曲げ線72を介して連接する細長形状の一対のバー部形成片75を、バー部形成折り曲げ線72で折り曲げて、断面V字状の細長の棒状をなしている。このバー部71の波状縁70Eは、図9に折り曲げ前の展開状態を示すように、特徴的に、バー部形成折り曲げ線72の延在位置を挟んで山部73と谷部74とが交互に位置するように配され波型のスリット70Sが、バー部形成折り曲げ線72で折り曲げられることで、スリット70Sの縁が立ちがって形成されたものとなっている。したがって、波状縁70Eは、各バー部形成片75にバー部形成折り曲げ線72に沿う方向に山部と谷部とが交互に位置しているとともに、折り曲げられた各バー部形成片75の山部と谷部とが対面位置となっている。なお、一対のバー部形成片75の間の折り曲げの角度は限定されない。バー部形成片75の間の角度を大きくすると幅広で山谷の高低が小さい形状となり、バー部形成片75の間の角度を小さくすると幅狭で山谷が大きい形状となる。これらは、適宜に調整すればよい。また、山部73と谷部74の高さ、深さも限定されない。適宜に設計することができる。さらに、図示の形態では、波状縁70Eとなっている部分が、二か所に形成されているが、波状縁70Eの長さや数は限定されない。適宜に設計することができる。このバー部71は、シート材を折り曲げだけるだけで簡易に波状縁を構成でき、さらに、厚みのある立体形状とすることができる。また、山部と谷部とが各片に交互に位置するため、パンツ等の衣類を掛けた際にずり落ちることが効果的に防止される。さらに、折り曲げられた各バー部形成片75の山部73と谷部74とが対面位置となる、特徴的な意匠を有するものとなっている。
【0051】
本実施形態のハンガー1では、吊り下げバー70と肩部40Aとの接続形態は限定さない。図1~9に示される形態では、各バー部形成片75の両端に突出する接続用の差込片77が形成されているとともに、肩部40Aの各端部の下部に接続用の差込孔78が形成されており、差込片77を差込孔78に差し込むことで接着剤等を使用せず、接続されるようになっている。特に、図1図9に示す形態では、好ましい形態として、肩部40Aの先端の立体トラスとなっている正面側肩先片45と背面側肩先片46のそれぞれに形成された差込孔78に差込片77が差込まれて接続されるようになっており、吊り下げバーの下方への引っ張りに対する強度が高いものとなっている。
【0052】
次いで、本実施形態のハンガー1であって、図1図9に示す形態と肩部が異なる他の形態を図10図13を参照して説明する。この実施形態に係るハンガー1は、肩部40Bに加えて吊り下げバー70の構造も異なっている。但し、吊り下げバー70については、図1図9の形態で説明される吊り下げバーとしてもよい。また、この図11図13に示す実施形態の吊り下げバーを、図1~9に示す実施形態の吊り下げバーとすることもできる。なお、連結部60、頂部10、フック部3及びフック部3と頂部10の連結等の肩部の構造及び吊り下げバー以外の構成は、先に説明した図1図9の実施形態と同様である。
【0053】
この図10図13に示す実施形態のハンガーの肩部40Bは、肩部上部形成片42が、図1図9に示す実施形態の肩部40Aと異なり、肩先40Eに向かって漸次幅広になる形状となっている。また、この肩部40Bは、肩部正面形成片41、肩部第一折り線51を介して肩部正面形成片41に連接する肩部上部形成片42及び肩部第二折り線52を介して肩部上部形成片42に連接する肩部背面形成片43に加えて、肩部第三折り線53を介して肩部背面形成片43に連接する肩部底面形成片44と、肩部第四折り線59を介して肩部底面形成片44の肩先40E側の端に連接する肩部立設面形成片49と、を有している。
【0054】
この肩部40Bは、肩部第一折り線51及び肩部第二折り線52に加えて、肩部第三折り線53が折り曲げられて、肩部正面形成片41を肩部正面部41a、肩部上部形成片42を肩部上部42a、肩部背面形成片43を肩部背面部43a、肩部底面形成片44を肩部底面部44aとする箱型形状に形成されている。さらに、肩部第四折り線59が折り曲げられて、肩部底面部44aの肩先側の端に肩部立設面部49aが形成されており、その肩部立設面部49aの上縁49Eが、肩部上部42aの底面側に位置して支持している。
【0055】
この肩部40Bにおいては、この箱型構造が強固になるように特に、肩部底面部44aと肩部正面部41aとが接続されているのが望ましい。図示の形態では、好ましい形態として、肩部40Bは、さらに肩部第五折り線155を介して肩部底面形成片44に連接する肩部差込部形成片145と、肩部第六折り線156を介して肩部正面形成片41に連接する肩部差込片146と、肩部底面形成片44と肩部差込部形成片145との間に形成された肩部差込片146が差し込まれる肩部差込部147とを有しており、肩部第五折り線155及び肩部第六折り線156が折り曲げられて、肩部差込片146が肩部差込部147に差し込まれて、接着剤等を使用せずに、肩部底面部44aと肩部正面部41aとが接続され強固な箱型構造を構成している。
【0056】
この図10図13に示す実施形態のハンガー1の肩部40Bの構造は、肩部上部形成片42の肩先40E側の縁部を、肩部正面部41a及び肩部背面部43aの肩先40E側の縁よりもより肩先側に延在させることができ、肩部上部42aの縁部の形状を自由に形成することができ、意匠性を高めることができる。図示の形態では、縁が湾曲縁となっており、柔らかで高級感を感じやすい意匠としている。また、図示の形態では、好ましい形態として、肩部正面形成片41で構成される肩部正面部41aと肩部背面形成片43で構成される肩部背面部43aとの間の肩部上部形成片42で構成される肩部上部42aが正面側から背面側に向かって天面側が凸となる湾曲面をなすようになっている。また、図示の形態では、この肩部上部42aの湾曲面を構成しやすいように、頂部10側から肩先40E側に向かって並設された複数の折り線42Sが形成されている。また、これらの折り線42Sは、頂部10側から肩先40E側に向かって、各々が離間するように配されており、頂部10側から肩先40E側に向かって末広がりの形状を高級感のある意匠性を呈するようになっている。
【0057】
この図10図13に示す実施形態のハンガー1の肩部40Bは、好ましい形態として、肩部正面形成片41と肩部背面形成片43の形状が異なっており、特に、肩部正面形成片41で構成される肩部正面部41aと肩部背面形成片43で構成される肩部背面部43aの幅(高さ)が異なる形状となっている。このため、肩部上部形成片42で構成される肩部上部42aが、背面側から正面側に向かってやや下り傾斜するように構成され、ハンガー1の背面側と衣類の背側を一致させるようにして衣類を掛けると、肩部が衣類の肩のラインに沿いやすく、衣類の皺等の発生がより効果的に防止されるようになっている。
【0058】
他方で、この図10図13に示す実施形態のハンガー1では、吊り下げバー70が、バー部71の位置を肩部40Bから離間した下方に位置させるための延長片79を有している。この吊り下げバー70は、一枚のシート材から組み立てられ、その展開状態では、図13に示すように、バー部形成折り曲げ線72を介して連接する細長状の一対のバー部形成片75と、バー部形成折り曲げ線72の延在位置を挟んで山部と谷部とが交互に位置するように配され波型のスリット70Sと、を有している。この延長片79を有する吊り下げバー70では、さらに、一方のバー部形成片75の端部から一体的に延出する延長片第一形成部79Aと、折り線79Sを介してその一方のバー部形成片75の端部に連接し、この折り線79Sで第一延長片形成部と線対称な形状の第二延長片形成部79Bとを有し、前記折り線79Sで第二延長片形成部79Bを延長片第一形成部79Aに折り重ねることで、延長片79が形成されるように構成されている。バー部71の構成は、図1図9に示す実施形態のハンガーと同様の構成で、上部に波状縁70Eが形成されている。この吊り下げバー70は、図示のように一対の延長片79の下端部間にバー部が架橋された正面視で略コ字をなす。
【0059】
この延長片79を有する吊り下げバー70においても、肩部40Bとの接続形態は限定さない。図示の形態では、肩部40Bの肩部底面形成片44に差込孔79Xが形成されており、肩部底面部44aとされた際に、肩部40Bの底面側に差込孔79Xが位置するようになっており、さらに、延長片79の先端がかぎ型の係止片部79Yを形成するように構成されており、この係止片部79Yを差込孔79Xに差し込み係止することで、接続されるようになっている。
【0060】
さらに、この図10図13に示す実施形態のハンガー1の吊り下げバー70は、特に好ましい形態として、バー部71との間に衣類を挟持する、挟持バー80を有している。この挟持バー80も、一枚のシート材で構成され、折り線81を介して連接する細長の一対の挟持バー形成片82と、一対の挟持バー形成片82の各端部において挟持バー形成片間に位置する一対の通孔83を有している。挟持バー形成片82は、概ねバー部形成片と同程度の大きさとされ、折り線81を介して、上面凸の断面V字型に形成されている。挟持バー形成片82の間の角度は限定されないが、バー部71に重なるように形成される。
【0061】
他方で、挟持バー80の通孔83は、延長片79が遊嵌される程度の大きさとなっており、各通孔83に延長片79が遊嵌されて、挟持バー80が延長片79間で上下に移動可能に架橋されている。よって、この吊り下げバー70では、吊り下げバー70のバー部71にパンツ等の衣類を掛け、挟持バー80をバー部71に重ねるようにすると、バー部71との間で衣類が挟持され、衣類の脱落がより効果的に防止される。
【0062】
ここで、本実施形態のハンガー1における各折り線については、シート材の折り曲げ折り返しや折り曲げを容易に行えるようにするための線であり、位置決めのための単なる印刷による線であってもよいが、好ましくは、折筋とも称される罫線、ミシン目、ハーフスリットである。また、すべてが同種の線である必要はなく、例えば、肩部を形成する肩部第一折り線、肩部第二折り線等は折り筋として、バー部を形成する波型スリットに折り線をハーフスリットとするなど、必要な強度や折り曲げに必要な応力を考慮して適宜に配することができる。また、ミシン目とする場合のカットタイ比、ハーフスリットとする場合のスリット深さも同一にする必要はない。
【0063】
なお、本実施形態のハンガー1における折り線をハーフスリットとする場合、スリット深さは限定されないが、好ましくは、スリット間における引張強度が150N以上、好ましくは、170N以上とするのが望ましい。組み立て時や使用時、さらに折り畳み時に、ハーフスリット位置で意図せず破断するおそれが各段に小さくなる。なお、この引張強度は、JIS P 8113に準拠し、大きさを幅15mm×長さ180mmの長方形とし、長さの半分の90mmの位置にハーフスリットを形成した試料を用いて測定した値であり、また、測定は、引張速度を20mm/minとしロードセル容量を1KNとする。
【0064】
以上の本実施形態のハンガーは、各部がいずれも一枚のシート材の折り曲げと、片の係合や差し込みのみで、接着剤や粘着テープ等を用いずに、組み立てることが可能となっている。また、肩部上部形成片42を幅広に形成でき、さらに、肩部正面形成片41及び肩部背面形成片43により形成される肩部正面部41a及び肩部背面部43aとで幅広立体的な肩部40A,40Bを形成することができ、衣類を掛けた際に皺や型崩れが発生し難い立体的な形状とすることができる。さらに、肩部40A,40Bの構成に加えて、頂部10を構成する各片が連結部60を取り囲んで被覆するように構成され、特に好ましい形態では、頂部側面部19aが形成されて、特に重衣料を掛けるに十分な強度とすることができる。さらに、フック部3が回転する操作性に優れ、そのフック部3が抜け難く、ハンガー本体部2と強固に接続することができる。さらに、パンツやスラックス等を掛けるためのバー部71をも有することができるようになっている。そして、各部を構成するシート材を、パルプ繊維を抄紙した紙とすることができ、脱プラスチックを達成できる。
【0065】
ここで、さらに本実施形態のハンガー1に、特に好適なシート材について説明する。本実施形態のシート材は、上記のとおり脱プラスチックの観点から、パルプ繊維を抄紙した紙であるのが望ましい。具体的には、段ボール紙、コートボール紙、複数の紙層が積層されている多層紙が例示できる。もちろんプラスチックを含む合成繊維を含まない天然素材由来の繊維のみから構成される紙であるのがより望ましい。好適には、パルプ繊維のみからなる紙が望ましい。また、特に好ましい紙は、三以上の紙層を有する多層紙である。図14に示すように、多層紙90は、複数の紙層91,92が積層されているため各層の特性を変えることができ、強度を有しつつ折り曲げやすくできる。例えば、耐水性や耐摩耗性に優れるものの硬いが折れ易い傾向の一対の表層91に柔軟な中層92を組み合わせることで、強靭性や耐久性に優れるようになり、強度を有しつつ折り曲げたり組み立てやすくすることができる。また、各折り線をハーフスリットとした際に表層を含む複数層が完全に切断されないようにすることができ、各折り線における破断の恐れが格段に小さくなる、なお、多層紙90は、多層抄きによって製造することができる。また、多層紙90は、市販されているものであってよく、例えば、大日製紙株式会社製のエリプラペーパー等が例示できる。
【0066】
シート材を紙とする場合、その紙の坪量は、好ましくは400g/m2以上、より好ましくは430g/m2以上、特に好ましくは460g/m2以上である。この坪量の紙であれば、各部の折り曲げによる組み立てをしやすく、しかも十分な剛性及び強度をハンガーとしやすい。坪量の上限値は限定されないが、抄造時にカレンダーロール等で折れジワが発生しやすくなるおそれがあり、この点からは上限値については、1400g/m2が好ましく、1240g/m2がより好ましい。また、シート材を紙とする場合の紙厚は、500μm以上1,400μm以下が好ましく、より好ましくは550μm以上1,350μm以下である。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量測定方法」に準拠して測定した値であり、紙厚は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0067】
シート材を紙とする場合、その紙の構成パルプ繊維は、必ずしも限定されないが、好ましい構成パルプ繊維は、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ及び、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等広葉樹クラフトパルプである。その他のパルプとして、古紙パルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを適宜組合せて使用されていれもよい。強度を発現させやすいことから、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが90~100質量%であるのが望ましい。この場合、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプの配合割合は、5:95~30:70であるのが望ましい。漂清潔感及び硬質感のある意匠性を有するハンガーとするならば、白パルプであり白色度が高い、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを用いることが特に好ましい。
【0068】
シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8113(2006)に準拠して測定された縦方向及び横方向の引張強度が、ともに20kN/m以上、好ましくは25kN/m以上であるのが望ましい。この引張強度を有していれば、折り畳みや組み立てに適し、また、十分な強度のハンガーとしやすい。
【0069】
また、シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8125(2000)に準拠して測定されたテーバー剛度が縦方向で120mN・m以上であり、横方向で40mN・m以上であるのが望ましい。この範囲であれば、ハンガーとして十分な剛性及び強度とすることができ、また、折り畳みや組み立てやすい。
【0070】
さらに、シート材を紙とする場合その紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18-1:2000に準拠して測定されるZ軸強度が400kN/m2以上、好ましくは450kN/m2以上であるのが望ましい。トムソン加工等の打ち抜き、カッティングプロッター等のカッティングによって展開状態のハンガーを製造しやすい。
【0071】
シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8147 ISO水平法による静摩擦係数が、0.25~0.65であるのが望ましい。衣服類をかけた際に適度な摩擦があって滑り落ち難く、また、生地を傷め難い適度な表面性となる。なお、本測定法は、シート材の裏面同士、表面同士で各3回の測定を行い、裏面同士、表面同士の3回目の測定値がいずれも上記範囲であるのが望ましい。ISO水平法は,最初の滑りの静摩擦係数、3回目の滑りの静摩擦係数又は3回目の滑りの動摩擦係数の少なくとも一つを測定すればよく、最初の静摩擦係数よりも3回目の静摩擦係数が小さくなる傾向にあり、また、3回目の静摩擦係数の方がばらつきは小さくなる。
【0072】
シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8151に準拠するPPS(パーカープリントサーフラフネス)が、表面及び裏面ともに好ましくは3~8μm、より好ましくは4~7μmであるのがよい。衣服類をかけた際に滑り落ち難く、また、生地を傷め難い適度な表面性となる。
【0073】
シート材を紙とする場合、その紙は、MMDの値が、表面及び裏面ともに好ましくは10~25である。衣服類をかけた際に滑り落ち難く、また、生地を傷め難い適度な表面性となる。MMDの測定は、摩擦感テスター(KES-SE、カトーテック社製)及びその相当機を用いて測定する。なお、摩擦子は、標準付属の直径0.5mmのピアノ線を20本隣接させて構成された、長さ及び幅がともに10mmの接触面を有するものを用いる。
【0074】
シート材を本実施形態に係るハンガー1に特に好ましい多層紙90とする場合、その層数は、限定されないものの、五~九層とし、中層92の層数を三層以上、特に五層とするのがよい。特に図14に示す形態は、三層の中層92を有するものとなっている。中層92の総数が三層以上であると、多層紙90の強靭性や耐久性がより発現しやすいとされている。中層92の総数の上限としては、層間強度を維持する観点から、七層以下であることが好ましい。また、三層~七層は、円網多筒式抄き合わせ抄紙機を使用する場合における層間強度を維持しながら操業を行いやすい。
【0075】
なお、シート材を多層紙90とする場合、表層91及び中層92の坪量は、上記のシート材を紙とする場合の全体の坪量の範囲で調整することができ、特に限定されないが、好ましくは、表層91の坪量としては、1層あたり55.0g/m2以上150.0g/m2以下、特には60~145g/m2が好ましい。また、中層92全体の坪量としては、490g/m2以上750g/m2以下、特には495g/m2以上740g/m2以下が好ましい。さらに、多層紙90は、多層紙90全体の坪量に対する一対の表層91,91の合計の坪量の割合が、15.0%以上33.0%以下のものであるのが好ましい。一対の表層91の剛直性が高く、中層92の柔軟性が優れるようになる。よって、折り線位置で折り曲げやすく、折り線以外の位置で折れ曲がり難くなり、強度と組み立て易さに優れるハンガーとしやすい。
【0076】
シート材を多層紙90とする場合、その多層紙90における各層のパルプ繊維の配合は、表層91は針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)が0/100以上15/85以下であるのが好ましい。また、この配合の表層91ととともに、中層92は、針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)を15/85以上35/65以下であるのが好ましい。剛直で高密度化しやすい広葉樹クラフトパルプが多く含有され、表層が高密度で剛直な特性となるとともに、中層が表層よりも柔軟性に富む針葉樹クラフトパルプを多く含有するため、組み立て時の各折り線での折り曲げや繰り返しの折り畳みを行っても強度が低下しがたいハンガーとなりやすい。
【0077】
また、シート材を多層紙90とする場合、その多層紙90は、製紙用添加剤としてサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加されているのが望ましい。所望の強度に調整しやすい。なお、多層紙90には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲でその他の各種添加剤を含有させることができる。例えば、ポリビニルアルコールやワックス等を塗布することができる。
【0078】
サイズ剤としては、スチレン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤、ロジンサイズ剤、変性ロジンエマルジョンサイズ剤などが挙げられる。これらの中でもロジンサイズ剤及び変性ロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。ロジンサイズ剤は、特に限定されない。ロジン系の物質は、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類をフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸あるいはその無水物で変性した強化ロジンや、ロジン類をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコールを反応させて得られるロジンエステルを挙げることができる。また、ロジンサイズ剤には、これらの単独またはその混合物をエマルジョン化したもの、単独でエマルジョン化した後に混合したものも含まれる。さらに、エマルジョン化したものに、サイズ発現性をより向上させるために各種ポリマーを添加したものも含まれる。
【0079】
紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリル樹脂系、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂など公知の種々のものを使用できる。これらの中でも、両性紙力増強剤を使用することが好ましい。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドとアニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物等が挙げられる。特に両性ポリアクリルアミドは、自己定着機能を有しているため、紙間強度を向上させるべく増添したとしても、カチオン過多になることがなく、変性ロジンエマルジョンサイズ剤とともに含むことでこれを安定的に定着させることができる。
【0080】
サイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。なお、「kg/t」はパルプ1tあたりの質量(kg)を示す。サイズ剤の添加量をこの範囲とすると、耐水性が高まるため、湿った衣服類やタオルがかけられても十分な強度を保持しやすい。
【0081】
また、シート材を多層紙90とする場合、その多層紙90は、表層91及び中層92の各層に製紙用添加剤として上記のサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加することが好ましい。この場合、表層91のサイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、中層92のサイズ剤の添加量としては、固形分で2.0kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、各層の紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。この範囲とするとで、ハンガーに適した多層紙の層間強度などの各種紙力としやすい。
【0082】
さらに、本実施形態に係るハンガーは、シロキサン化合物が含有されているのが望ましい。シロキサン化合物が含有されていると、シロキサン結合によって剛度、強度、耐水性が高まる。シロキサン化合物は、シロキサン結合を有するものであれば、必ずしも限定されないが、ハンガー1は、人体に接する衣類を掛けるため、生体に対して毒性が無いか、低いものが望ましい。また、シロキサン化合物は、組み立て後のハンガーにシロキサン化合物を塗工する態様のほか、組み立て前のシート材や、素材としてのシート材に対して、適宜のアルコキシシラン溶液やアルコキシシラン溶液加工品を含侵させた後、加温や加熱して含有させてもよい。このようにすると、シロキサン化合物が、パルプ繊維自体に結合したり、パルプ繊維をコーティングしたりする態様で含有されるようになるため望ましい。
【0083】
さらに、本実施形態に係るハンガーは、摩擦係数や表面粗さや折り畳み適性を過度に変化させず、ハンガーの機能及び本発明の効果を妨げない範囲で、表面保護剤や抗菌剤、抗ウィルス剤を塗布したり、含浸させたりしても良い。
【実施例0084】
本発明に係るハンガー(実施例)を作製し、強度試験を行った。
作成した実施例に係るハンガーは、図2に示す展開図を接着剤等を使用せずに組み立てたものであり、図1図10に示す肩部40Aと吊り下げバーとを有する形態とした。このハンガーの大きさは、肩先間の長さが415mm、肩部の最大幅が75mm、頂部正面部と頂部背面部との間が30mmの立体的な形状とした。フック部は、フック部本体片及び抜け防止片を、図8(B)に示す二重構造のものとし、頂部に対して回動自在に接続した。
【0085】
また、実施例のハンガーは、フック部及びハンガー本体部を、多層紙(大日製紙株式会社製のエリプラペーパー475g/m2)で作成し、吊り下げバーを多層紙(大日製紙株式会社製のエリプラペーパー885g/m2)で作成した。
【0086】
試験は、この実施例に係るハンガーに、ウール製の紳士用スーツ(ジャケット539g、パンツ346g)を掛け、金属製の針金製の係止バーに10日間吊り下げて、肩部の曲がりや破損等がないかを目視にて確認した。なお、ジャケットは、ハンガー本体部に、パンツは吊り下げバーのバー部にそれぞれ掛けた。
【0087】
試験の結果10日間では、作成のハンガーに、折れ、曲がり等は確認されなかった。さらに、10日目にジャケットの左右前ポケットに、市販のペットボトル飲料(1本、900mL、967g)を一本ずつ(合計2本)入れてさらに荷重を加えて、ハンガーの形状を目視にて確認したが、ハンガーに折れ、曲がり等は確認されなかった。
【0088】
以上の試験より、本発明に係る構造のハンガーは、一枚のシート材から組み立てることができ、衣類に皺や型崩れが発生し難い立体的な形状で重衣料を掛けるに十分な強度とすることができ、さらに、フック部が回転する操作性に優れ、さらにスラックス等を掛けるバー部分をも有する実用的なハンガーとすることができることが示された。
【符号の説明】
【0089】
1…ハンガー、2…ハンガー本体部、3…フック部、3F…フック部分、3T…フック部上部、3U…差込下部、30…フック部本体片、31…ガイド溝部、32…抜け防止片差込孔、35…抜け防止片、35E…底縁、36…溝部、P…折り線、38…補強片、
14…接続孔、14A…円形孔部、14e…外縁部、14B,14C…差込用拡径部、14b…舌片、
10…頂部、11…頂部第一底面形成片、11a…頂部第一底面部、12…頂部背面形成片、12a…頂部背面部、12B…頂部第二背面形成片、13…頂部天面形成片、13a…頂部天面部、15…頂部正面形成片、15a…頂部正面部、15B…頂部第二正面形成片、16…頂部第二底面形成片、16a…頂部第二底面部、17…頂部差込片、18…頂部差込差部、19…頂部側面形成片、19a…頂部側面部、19E…肩部上部連接片、
19e…肩部上部連接部、21…頂部第一折り線、22…頂部第二折り線、23…頂部第三折り線、24…頂部第四折り線、25…頂部第五折り線、26…頂部第六折り線、27…頂部第七折り線、28…頂部第八折り線、29A…頂部第九折り線、29B…頂部第十折り線、29C…頂部第十一折り線、29D…頂部第十二折り線、
40A,40B…肩部、40E…肩先、41…肩部正面形成片、41a…肩部正面部、
42…肩部上部形成片、42a…肩部上部、42S…折り線、43…肩部背面形成片、43a…肩部背面部、44…肩部底面形成片、44a…肩部底面部、45…正面側肩先片、46…背面側肩先片、47…第一肩先底縁部形成片、48…第二肩先底縁部形成片、47a…肩先底縁部、47A…差込部、48B…差込部、47E…肩先底縁部の縁、49…肩部立設面形成片、49a…肩部立設面、49E…肩部立設面の上縁、145…肩部差込部形成片、146…肩部差込片、147…肩部差込部、
51…肩部第一折り線、52…肩部第二折り線、53…肩部第三折り線、54…肩先第一折り線、55…肩先第二折り線、56…中折り線、57…先端折り線、59…肩部第四折り線、155…肩部第五折り線、156…肩部第六折り線、
60…連結部、61…正面連結部、62…連結部背面形成片、62a…背面連結部、63…係合部、64…連結部折り線、65…連結部底面形成片、65a…連結部底面部、
70…吊り下げバー、71…バー部、70E…波状縁、72…バー部形成折り曲げ線、73…山部、74…谷部、75…バー部形成片、70S…スリット、77…差込片、78…差込孔、79…延長片、79A…延長片第一形成部、79B…延長片第二形成部、79S…折り線、79X…差込孔、79Y…係止片部、
80…挟持バー、81…折り線、82…挟持バー形成片、83…通孔、
90…多層紙、91…表層、92…中層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14