(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117840
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】液体容器
(51)【国際特許分類】
G21K 5/08 20060101AFI20230817BHJP
H05H 6/00 20060101ALI20230817BHJP
H05H 3/06 20060101ALN20230817BHJP
【FI】
G21K5/08 N
H05H6/00
H05H3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020621
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 優志
(72)【発明者】
【氏名】仙入 克也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 明啓
(72)【発明者】
【氏名】重岡 伸之
(72)【発明者】
【氏名】原 博史
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085BA17
2G085BE02
2G085DA03
2G085EA04
2G085EA07
(57)【要約】
【課題】液体金属をより効率よく流すことができる。
【解決手段】液体容器は、高エネルギーの荷電粒子線が照射される液体金属を収容する容器本体と、液体容器の内面と接し、液体金属の流れ方向に沿って配置され、液体金属の流れを整流する整流板と、容器本体の内面及び整流板に接した状態で保持され、液体金属中に微小気泡を形成する複数の微小気泡発生器と、容器本体及び整流板の少なくとも一方の壁部の内部に微小気泡発生器に接続されるように形成され、微小気泡発生器に供給される気体を流通させる内部流路とを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギーの荷電粒子線が照射される液体金属を収容する容器本体と、
前記液体容器の内面と接し、前記液体金属の流れ方向に沿って配置され、前記液体金属の流れを整流する整流板と、
前記容器本体の内面及び前記整流板に接した状態で保持され、前記液体金属中に微小気泡を形成する複数の微小気泡発生器と、
前記容器本体及び前記整流板の少なくとも一方の壁部の内部に前記微小気泡発生器に接続されるように形成され、前記微小気泡発生器に供給される気体を流通させる内部流路と
を備える液体容器。
【請求項2】
前記内部流路は、前記気体を流入させる流入口を前記壁部の表面に有する
請求項1に記載の液体容器。
【請求項3】
前記微小気泡発生器は、1つの前記整流板を挟んだ両側に配置され、
前記内部流路は、当該整流板から両側の前記微小気泡発生器に接続されるように形成される
請求項1又は請求項2に記載の液体容器。
【請求項4】
前記内部流路が形成される前記壁部と前記微小気泡発生器とが一部材で形成される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項5】
前記整流板は、1つの前記微小気泡発生器を挟んだ両側に配置され、
前記内部流路は、当該微小気泡発生器の両側の前記整流板の内部から前記微小気泡発生器に接続されるように形成され、
当該微小気泡発生器の両側の前記整流板に形成されるそれぞれの前記内部流路は、前記微小気泡発生器を介して接続される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項6】
前記内部流路は、前記容器本体の外部に設けられた不活性ガス供給装置に接続される
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の液体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
中性子線照射装置は、大強度の荷電粒子線(陽子ビーム)を水銀などの液体金属に照射して核破砕反応を引き起こすことで中性子を発生させる。発生した中性子は、研究に最適な中性子ビームに整えられ、物質の構造や動きを研究するために利用される。核破砕反応には、大量の発熱が伴い、その熱量を除去するため液体金属は、荷電粒子線の照射される領域で流動し続けていることが望ましい。このように液体金属を流動させるため、ターゲット(ターゲット容器)と呼ばれる装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ターゲット容器は、液体金属を流動させる液体容器があり、その外側は、液体金属が漏洩した場合も閉じ込められるように保護容器で覆われている。保護容器は、二重になっており、内側保護容器は、液体容器と内側保護容器との間で液体金属の漏洩を検知するヘリウムが流れ、外側保護容器は、内側保護容器と外側保護容器との間で陽子ビームによる発熱を除去するための冷却水が流れる。
【0004】
ターゲット容器は、水銀などの液体金属を扱うため、液体金属が外部に漏れないような気密性に優れた液体容器を必要とする。また、各容器は、陽子ビーム入射時に瞬間的に生じる圧力および熱応力に耐え得ることを必要とする。このように、ターゲット容器は、多重に形成され、かつ漏洩を防ぎ、内圧に耐え得る構造を要することから、金属同士を溶接により接合して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体容器において、液体金属が流通する流通空間には、整流板が配置されている。液体容器には、流通空間の先端部付近で発生するキャビテーション損傷を抑制するため、液体金属中に微小気泡を注入する微小気泡発生器が設けられる。
【0007】
微小気泡発生器を配置する場合、当該微小気泡発生器に供給する気体の流路を確保する必要がある。液体容器の組み立てる際に干渉せず、液体金属の流れを阻害しないようにするため、液体容器内において適切な位置に気体の供給流路を配置することが求められる。
【0008】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、微小気泡発生器に気体を供給するための流路を適切な位置に配置することが可能な液体容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る液体容器は、高エネルギーの荷電粒子線が照射される液体金属を収容する容器本体と、前記液体容器の内面と接し、前記液体金属の流れ方向に沿って配置され、前記液体金属の流れを整流する整流板と、前記容器本体の内面及び前記整流板に接した状態で保持され、前記液体金属中に微小気泡を形成する複数の微小気泡発生器と、前記容器本体及び前記整流板の少なくとも一方の壁部の内部に前記微小気泡発生器に接続されるように形成され、前記微小気泡発生器に供給される気体を流通させる内部流路とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、微小気泡発生器に気体を供給するための流路を適切な位置に配置することが可能な液体容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る液体容器が適用される中性子線照射装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係る液体容器が適用される中性子線照射装置の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態に係る液体容器が適用されるターゲット容器の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係る液体容器の概略構成を示す上面図である。
【
図6】
図6は、
図5におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る液体容器の一部の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る液体容器の一部の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態に係る液体容器の一部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
以下の各実施形態においては、中性子線照射装置100が、機器または構造物のような検査対象物に中性子線Nを照射して、その検査対象物の内部を非破壊で検査する検査装置に適用される場合で説明する。中性子線照射装置100は、放射線療法に使用することもできる。中性子線照射装置100は、被照射体Sに中性子線Nを照射する。
【0014】
図1は、第1実施形態に係る液体容器が適用される中性子線照射装置の一例を示す模式図である。
図1に示すように、中性子線照射装置100は、荷電粒子を加速して荷電粒子線(例えば、陽子ビーム)Pを射出する加速装置102と、加速装置102から射出された荷電粒子線Pの照射状態を調整する調整装置103と、荷電粒子線Pの照射により中性子線Nを発生するターゲット105と、ターゲット105で発生した中性子線Nを減速する減速装置106と、減速装置106から射出された中性子線Nを平行化するコリメータ107と、を備えている。コリメータ107から射出された中性子線Nが被照射体Sに照射される。
【0015】
加速装置102は、円形加速器または直線加速器を含む。加速装置102は、荷電粒子(陽子、電子、または重粒子)を加速して、荷電粒子線(陽子線、電子線、または重粒子線)Pを生成して射出する。
【0016】
調整装置103は、複数の電磁石を含み、加速装置102から射出された荷電粒子線Pの照射状態を調整する。荷電粒子線Pの照射状態は、荷電粒子線Pの進行方向の調整および荷電粒子線Pの整形を含む。調整装置103は、荷電粒子線Pの発散を抑制し、荷電粒子線Pを集束させる。調整装置103は、加速装置102から射出された荷電粒子線Pを走査装置104に導く。
【0017】
本実施形態において、中性子線照射装置100は、荷電粒子線Pを走査する走査装置104を備える。走査装置104は、荷電粒子線Pを走査し、ターゲット105に対する荷電粒子線Pの照射位置を調整する。また、走査装置104は、ターゲット105に照射される荷電粒子線Pを整形する。なお、走査装置104は無くてもよい。
【0018】
加速装置102から射出され、調整装置103および走査装置104を通過した荷電粒子線Pは、ターゲット105に照射される。ターゲット105は、荷電粒子線Pの照射により、中性子線Nを発生する。ターゲット105を、中性子線発生部材、と称してもよい。ターゲット105は、例えばベリリウム(Be)、リチウム(Li)、またはそれらを含む化合物で形成された液体を含む。ターゲット105については後述する。
【0019】
減速装置106は、ターゲット105で発生した中性子線Nを減速する。減速装置106は、中性子線Nの進路において、ターゲット105と被照射体Sとの間に配置される。ターゲット105は、高エネルギーの高速中性子を発生する。減速装置106は、高速中性子のエネルギーを低減して、低速で低エネルギーの中性子(熱中性子または熱外中性子)を生成する。
【0020】
コリメータ107は、減速装置106から射出された中性子線Nを平行化する。コリメータ107により平行化され、そのコリメータ107から射出された中性子線Nが被照射体Sに照射される。
【0021】
次にターゲット105について説明する。
図2は、本実施形態に係る液体容器が適用される中性子線照射装置の一例を示す模式図である。
図2では、
図1のターゲット105に関係する部分を詳細に示している。
図2に示すようにターゲット105は、ターゲット容器2と、液体金属供給部3と、を備えている。
【0022】
ターゲット容器2は、気密・液密に形成された容器であって、その内部には液体金属L(本実施形態では水銀)が流通している。加速装置102で生成された荷電粒子線Pがターゲット容器2内の液体金属原子(水銀原子)に衝突することで核破砕反応を生じる。ターゲットとして液体金属Lを用いることで、液体金属L自体が冷却材としての役割を果たすため、より大強度の荷電粒子線Pを照射することが可能となり、より高い中性子発生効率を得られる。
【0023】
液体金属供給部3は、ターゲット容器2に接続され、ターゲット容器2に液体金属Lを供給する。液体金属供給部3は、液体金属Lを貯留するタンク4と、タンク4内の液体金属Lをターゲット容器2内に供給する供給流路5と、供給流路5を通じて液体金属Lをターゲット容器2内に圧送するポンプ6と、ターゲット容器2から排出された液体金属Lを回収する回収流路7と、を有する。
【0024】
ターゲット容器2の詳細な構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る液体容器が適用されるターゲット容器の模式的に示す斜視図である。
図4は、本開示の実施形態に係る液体容器の概略構成を示す上面図である。
図4は、一部の構成について内部を切り開いた状態で示している。
【0025】
図2および
図3に示すように、本実施形態に係るターゲット容器2は、平面視で略長方形状の外観を呈している。以降の説明において、ターゲット容器2の長辺が延びる方向を長軸方向と呼び、ターゲット容器2の短辺が延びる方向(長軸方向に平面視で直交する方向)を短軸方向と呼ぶ。さらに、ターゲット容器2の上下方向であって長軸方向および短軸方向に直交する高さ方向を厚さ方向と呼ぶ。さらに、ターゲット容器2の短軸方向および厚さ方向に沿って、長軸方向の周り方向を周方向(長軸方向に直行する断面(例えば、
図6参照)における各容器の外周に沿う方向)と呼ぶ。また、ターゲット容器2の長軸方向において、荷電粒子線Pが照射される側を先端側と呼び、先端側の反対側となり液体金属Lが供給および排出される側を後端側と呼ぶ。即ち、ターゲット容器2は、照射される荷電粒子線Pに長軸方向の先端側を向けて配置されている。
【0026】
ターゲット容器2は、
図3に示すように、三重構造の容器である。具体的に、ターゲット容器2は、液体金属Lが流通する液体容器20と、液体容器20を外側から覆う内側保護容器22と、内側保護容器22をさらに外側から覆う外側保護容器23と、を有する。ターゲット容器2は、ステンレス鋼などの固体金属により形成される。なお、
図3においては、ターゲット容器2の各容器21,22,23の肉厚を省略して線にて示している。
【0027】
液体容器20は、容器本体21と、ビームダンプ26と、整流板27と、を有する。容器本体21は、液密性・気密性を有し、内部の流通空間Vfに液体金属Lが流通する。容器本体21は、長軸方向における後端側に、上述した液体金属供給部3の供給流路5に繋がる供給口24と、回収流路7に繋がる回収口25と、が形成されている。供給口24および回収口25は、短軸方向の各端寄りに配置されて間隔を空けて設けられ、本実施形態では互いに同じく後端側に向かって開口して形成されている。
【0028】
ビームダンプ26は、容器本体21の流通空間Vf内において後端側に設けられている。ビームダンプ26は中実の部材であり、先端側から容器本体21に入射した荷電粒子線Pが後端側へ漏洩することを抑制するものである。ビームダンプ26は、供給口24と回収口25との間で先端側に向かって延び、その先端側の端部から容器本体21の先端側の端部までの距離を、一例として1m程度空けて配置されている。このビームダンプ26は、容器本体21に対して一体に形成されることが望ましいが、別の部材として設けることも可能である。
【0029】
整流板27は、流通空間Vf内に液体金属Lの流れを案内する、つまり、液体金属Lの流れを整流する。整流板27は、供給口24および回収口25の短軸方向の内側でビームダンプ26を挟むように一対設けられている。一対の整流板27は、後端側から先端側の途中に至り長軸方向に延在し、厚さ方向で容器本体21の上下の内壁に当接して配置されていることで、ビームダンプ26を間において供給口24側と回収口25側とを仕切るように設けられている。また、一対の整流板27は、長軸方向で先端側に向かうに従って互いに漸次接近するように形成されている。なお、
図3では、他の構成との関係で、一対の整流板27として、供給口24側と回収口25側とに、1つずつの整流板27を示しているが、本実施形態の液体容器20は、
図4に示すように、供給口24側の流路を複数の整流板27で形成し、排出口25側の流路を複数の整流板27で形成している。それぞれの整流板27は、短軸方向の位置、長軸方向の位置が異なる。
【0030】
上述したターゲット容器2において、容器本体21は、荷電粒子線Pが照射される先端側に、液体金属Lを流通する狭隘流路が形成されている。狭隘流路は、短軸方向の両側が開口し、短軸方向の一側からの先端側を経て短軸方向の他側に到り、流通空間Vf内に通じている。従って、流通空間Vf内の液体金属Lは、狭隘流路の一側の開口部から他側の開口部に流動し、流速が上がる。
【0031】
液体容器20は、供給口24から供給された液体金属Lが、供給口24側の整流板27により案内されて、先端側に向かい、先端の狭隘流路に流入する。液体容器20は、狭隘流路を通過した液体金属Lが、排出口25側の整流板27により案内されて、排出口25から排出される。液体容器20は、このように、液体金属Lが所定の方向に流れ、荷電粒子線Pが照射される先端の狭隘流路に液体金属Lが流れる状態とする。
【0032】
内側保護容器22は、容器本体21を外側から覆っている。内側保護容器22は、万が一容器本体21から液体金属Lが漏洩した場合でも閉じ込めることができるように、液密性・気密性を有して形成されている。内側保護容器22は、その内面と容器本体21の外面との間に第一空間V1を有するように形成されている。第一空間V1は、不活性ガス(例えば、ヘリウム)が封入される。そして、ターゲット容器2の使用中に不活性ガスの圧力(分圧)を監視することで、不活性ガスの分圧に変化が生じた場合(例えば分圧が低下した場合)に容器本体21から液体金属Lの一部が漏洩していると判断することができる。
【0033】
外側保護容器23は、内側保護容器22を外側から覆っている。外側保護容器23は、液密性・気密性を有して形成されている。外側保護容器23は、その内面と内側保護容器22の外面との間に第二空間V2を有するように形成されている。第二空間V2は、内側保護容器22と外側保護容器23自体で生じる核発熱を冷却するための冷却水が流通する。
【0034】
液体容器20には、微小気泡発生器28が設けられる。微小気泡発生器28は、狭隘流路の付近で発生するキャビテーション損傷を抑制するため、液体金属Lに微小気泡を注入する。微小気泡発生器28は、例えばヘリウムなどの不活性ガスが供給され、当該供給された不活性ガスを用いて微小気泡を液体金属L内に形成する。微小気泡発生器28は、容器本体21及び整流板27に接した状態で保持される。本実施形態において、微小気泡発生器28は、例えば溶接により容器本体21の内面及び整流板27に接合される。微小気泡発生器28は、例えば複数の翼部品28aと、当該翼部品28aを支持するフレーム28bとを有する。翼部品28aは、例えば微小なスクリュー状に形成される。フレーム28bには、流路28cが設けられる。流路28cは、内部流路29の流出口29bから流出する不活性ガスが流通して翼部品28aに供給される。
【0035】
液体容器20には、微小気泡発生器28に不活性ガスを供給するための供給管50が設けられる。供給管50は、整流板27に設けられる内部流路29に接続される。
図5は、
図4の要部を拡大して示す図である。
図6は、
図5におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
【0036】
図5及び
図6に示すように、内部流路29は、容器本体21及び整流板27の少なくとも一方の壁部の内部に設けられる。内部流路29は、整流板27に露出した流入口29aを有する。流入口29aには、上記した供給管50が接続される。
【0037】
内部流路29は、流入口29aから整流板27に沿って当該整流板27の内部を先端側に延びるように形成される。内部流路29は、整流板27のうち微小気泡発生器28に接合される部分に流出口29bが形成される。本実施形態では、内部流路29が流入口29aから2つの微小気泡発生器28に向けて分岐して形成され、各微小気泡発生器28に対応する流出口29bを介して微小気泡発生器28に接続される。
【0038】
供給管50から供給される不活性ガスは、流入口29aから内部流路29に流入し、内部流路29に沿ってそれぞれの流出口29bに流れ、流出口29bから微小気泡発生器28に流出する。微小気泡発生器28では、各流出口29bから流出する不活性ガスを用いて液体金属Lに微小気泡を注入する。
【0039】
なお、内部流路29は、整流板27の内部に沿って形成される構成に限定されない。
図7及び
図8は、内部流路29の他の例を示す図である。
図7に示すように、内部流路29は、整流板27を厚さ方向に貫通するように形成されてもよい。また、内部流路29は、整流板27の厚さ方向を貫通せず、溝状に形成されてもよい。
【0040】
以下、液体容器20の製造方法について説明する。容器本体21の分割体30を作成する。分割体30と整流板27とは一体加工で作成することができる。なお、分割体30の内部に整流板27を接地し、溶接により固定してもよい。なお、整流板27には、予め内部流路29を形成しておき、供給管50を接続させる。次に、容器本体21及び整流板27に保持させるように微小気泡発生器28を溶接により固定する。次に、分割体30と分割体30とを突合せ、開先の位置を溶接する。溶接としては、裏波溶接を行うことができる各種溶接を用いることができ、例えば、電子ビーム溶接を用いることができる。液体容器20は、分割体30同士を溶接することで、開先に溶接線32を形成する。各分割体30同士を接続することで、液体容器20を製造する。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る液体容器20は、高エネルギーの荷電粒子線が照射される液体金属Lを収容する容器本体21と、液体容器20の内面と接し、液体金属Lの流れ方向に沿って配置され、液体金属Lの流れを整流する整流板27と、容器本体21の内面及び整流板27に接した状態で保持され、液体金属L中に微小気泡を形成する複数の微小気泡発生器28と、容器本体21及び整流板27の少なくとも一方の壁部の内部に微小気泡発生器28に接続されるように形成され、微小気泡発生器28に供給される不活性ガスを流通させる内部流路29とを備える。
【0042】
したがって、容器本体21及び整流板27の少なくとも一方の壁部の内部に内部流路29が形成され、内部流路29を介して複数の微小気泡発生器28に不活性ガスを供給することができる。これにより、液体容器の組み立てる際に干渉せず、液体金属の流れを阻害しないように、微小気泡発生器28に気体を供給するための流路を適切な位置に配置することができる。
【0043】
本実施形態に係る液体容器20において、内部流路29は、不活性ガスを流入させる流入口29aを壁部である整流板27の表面に有する。したがって、不活性ガスの供給源である供給管50を微小気泡発生器28から離れた位置に配置することができる。このため、液体容器20の内部構造が複雑化することを回避できる。
【0044】
本実施形態に係る液体容器20において、微小気泡発生器28は、1つの整流板27を挟んだ両側に配置され、内部流路29は、当該整流板27から両側の微小気泡発生器28に接続されるように形成される。したがって、不活性ガスの供給源である供給管50の数を抑えることができる。このため、液体容器20の内部構造が複雑化することを回避できる。
【0045】
図9は、第2実施形態に係る液体容器120の一部の構成を示す図である。
図9に示すように、液体容器120は、容器本体21の一部と、内部流路29を有する整流板27の一部と、微小気泡発生器28とが一部材として一体的に形成された分割体130を有する。この分割体130は、例えば削り出し等の加工により容器本体21の一部と、整流板27の一部と、微小気泡発生器28とが一部材として一体的に形成される。
【0046】
このように、液体容器120は、内部流路29が形成される整流板27と微小気泡発生器28とが一部材で形成される。整流板27と微小気泡発生器28とを別体で形成して溶接で接合する場合、溶接線が微小気泡発生器28の翼部品に対する熱の影響を低減させるため、溶接線を微小気泡発生器28の翼部品から離すように設計する必要がある。一方、微小気泡発生器28と整流板27とを一部材で形成することにより、整流板27と微小気泡発生器28との間に溶接線が無いため、設計の自由度が高まる。
【0047】
図10は、第3実施形態に係る液体容器220の一部の構成を示す図である。
図10に示すように、液体容器220は、短軸方向に整流板27が間隔を空けて複数(例えば、4つ)配置され、各整流板27の間に微小気泡発生器28が設けられた構成を有する。以下、4つの整流板27を区別する場合、
図10の上側から下側にかけて整流板71、72、73、74と表記する。また、3つの微小気泡発生器28を区別する場合、
図10の上側から下側にかけて整流板81、82、83と表記する。
【0048】
4つの整流板27のうち、2つの整流板72、73には、内部流路29が形成される。以下、整流板72に形成される内部流路29を内部流路92と表記し、整流板73に形成される内部流路29を内部流路93と表記する。内部流路92は、整流板72の表面に流入口92aを有する。内部流路92は、この流入口92aから整流板72に沿って長軸方向に延び、当該整流板72に対して
図10の短軸方向の両側に配置される微小気泡発生器81、82に向けて分岐される。
【0049】
内部流路92のうち、
図10の上側に分岐する分岐部分は、流出口92bを介して微小気泡発生器81の流路81bに接続される。
【0050】
内部流路92のうち、
図10の下側に分岐する分岐部分は、流出口92cを介して微小気泡発生器82の流路82cに接続される。微小気泡発生器82の流路82cは、一端が内部流路92に接続され、他端が整流板73に形成される内部流路93に接続される。整流板72、73は、1つの微小気泡発生器82を挟んだ両側に配置される。内部流路92、93は、当該微小気泡発生器82の両側の整流板72、73の内部から微小気泡発生器82に接続されるように形成される。微小気泡発生器82の両側の整流板72、73に形成されるそれぞれの内部流路92、93は、微小気泡発生器を介して互いに接続される。
【0051】
内部流路93は、
図10の上側の端部に流入口93cを有する。流入口93cは、微小気泡発生器82の流路82cに接続される。また、内部流路93は、
図10の下側の端部に流出口93dを有する。流出口93dは、微小気泡発生器83の流路83dに接続される。内部流路93により、微小気泡発生器83に不活性ガスが供給される。
【0052】
このように、液体容器220において、整流板27は、1つの微小気泡発生器28を挟んだ両側に配置され、内部流路29は、当該微小気泡発生器28の両側の整流板27の内部から微小気泡発生器28に接続されるように形成され、当該微小気泡発生器28の両側の整流板27に形成されるそれぞれの内部流路29は、微小気泡発生器28を介して接続される。この構成により、多数の微小気泡発生器28を液体容器220内に効率的に配置することが可能となる。
【0053】
図11は、第4実施形態に係る液体容器320の一部の構成を示す図である。
図11に示すように、液体容器320は、壁部である容器本体21の外壁21Wに内部流路29が形成された構成である。内部流路29は、外壁21Wの外面に流入口29aを有する。したがって、内部流路29は、容器本体21の外部に接続されている。具体的には、内部流路29は、容器本体21の外部に設けられた供給管50を介して不活性ガス供給装置51に接続されている。
【0054】
このように、液体容器320において、内部流路29は、容器本体21の外部に設けられた不活性ガス供給装置51に接続される。したがって、流入口29aに不活性ガス供給装置を接続することで、容器本体21の外部から内部流路29を介して内部の微小気泡発生器28に不活性ガスを供給することができる。
【0055】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0056】
2 ターゲット容器
3 液体金属供給部
4 タンク
5 供給流路
6 ポンプ
7 回収流路
20,120,220,320 液体容器
21 容器本体
21W 外壁
22 内側保護容器
23 外側保護容器
24 供給口
25 回収口,排出口
26 ビームダンプ
27,71,72,73,74,81,82,83 整流板
28,81,82 微小気泡発生器
28a 翼部品
28b フレーム
28c 流路
29,92,93 内部流路
29a,92a 流入口
29b,92b,92c 流出口
30,130 分割体
32 溶接線
50 供給管
51 不活性ガス供給装置
81b,82c 流路
92d,92e 分岐部分
100 中性子線照射装置
102 加速装置
103 調整装置
104 走査装置
105 ターゲット
106 減速装置
107 コリメータ
L 液体金属
N 中性子線
P 荷電粒子線
S 被照射体
V1 第一空間
V2 第二空間
Vf 流通空間