(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117844
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
H01L21/52 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020626
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 智
(72)【発明者】
【氏名】神谷 真行
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA02
5F047AB09
5F047BA01
5F047BC35
5F047CA02
(57)【要約】
【課題】本明細書は、はんだ層の縁の近傍における半導体素子の表層内の応力を抑える技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する半導体装置(2、102)は、主面(20a)を有している半導体素子(20)と、主面に対向する対向面(30a、130a)を有している金属ブロック(30、130)と、主面と対向面を接合しているはんだ層(40、140)を備える。はんだ層の縁においてはんだ層の表面と半導体素子の主面とのなす角度(Th)が45度以下である。一例の半導体装置では、金属ブロックの対向面と連続する側面(30b)のうち、対向面と前記側面との境界から所定幅(W)の第1領域(31)の濡れ性が、第1領域に隣接する第2領域(32)の濡れ性よりも高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面(20a)を有している半導体素子(20)と、
前記主面に対向する対向面(30a、130a)を有している金属ブロック(30、130)と、
前記主面と前記対向面を接合しているはんだ層(40、140)と、
を備えており、
前記はんだ層の縁において前記はんだ層の表面(41、141)と前記主面とのなす角度(Th)が45度以下である、半導体装置。
【請求項2】
前記金属ブロックの前記対向面と連続する側面(30b)のうち、前記対向面と前記側面との境界から所定幅(W)の第1領域(31)の濡れ性が、前記第1領域に隣接する第2領域(32)の濡れ性よりも高い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2領域に金属酸化膜(34)が形成されている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記対向面の縁(130d)に沿って一周している所定幅(W)の周辺領域(132)の濡れ性が前記周辺領域に囲まれている中央領域(131)の濡れ性よりも低い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記周辺領域に金属酸化膜(134)が形成されている、請求項4に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体素子と金属ブロックがはんだ層を介して接合されている半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に開示された半導体装置は次の構造を有している。半導体装置は、両方の主面のそれぞれに電極を有している半導体素子と、一対の金属板と、金属ブロックを備える。半導体素子と金属ブロックは一対の金属板に挟まれている。半導体素子の一方の主面が一方の金属板に接合されており、他方の主面は金属ブロックの一面に接合されている。金属ブロックの他方の面が一対の金属板の他方に接合されている。一対の金属板は放熱板と半導体装置の主端子を兼ねており、半導体素子の一方の主面の電極は一対の電極の一方と導通している。半導体素子の他方の主面の電極は金属ブロックを介して一対の金属板の他方と導通している。半導体素子の主面と金属ブロックは、はんだ層で接合されている。金属ブロックと金属板も、はんだ層で接合されている。一対の金属板の間で半導体素子と金属ブロックは樹脂パッケージに封止されている。
【0003】
特許文献1に開示されている半導体装置は次の特徴を有している。金属ブロックの側面は、金属板の側に位置する第1範囲と、第1範囲よりも半導体素子側に位置する第2範囲を有している。第1範囲は、第2範囲よりもはんだ濡れ性が高く、はんだ層に接触しており、第2範囲は、第1範囲よりも表面粗さが大きく、樹脂パッケージに接触している。金属板と金属ブロックをはんだで接合する際、溶融したはんだは、濡れ性の高い第1範囲に広がるが、濡れ性の低い第2範囲には広がらない。金属板に接しているはんだは、金属ブロックの側面にまで広がり、はんだ層における電流密度を下げることができる。一方、第2範囲では金属ブロックが樹脂パッケージと接し、金属ブロックと樹脂パッケージがしかりと接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-188163号公報
【特許文献2】特開2020-17600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らの検討によると、はんだが金属ブロックの側面にも接合し、はんだ層の縁から金属ブロックの側面にかけてはんだ層の厚みが急激に大きくなると、熱サイクル(半導体素子の駆動と停止の繰り返しによる熱サイクル)によって半導体素子の表層の応力が高くなる傾向を見出した。本明細書は、半導体素子と金属ブロックがはんだ層で接合されている半導体装置に関し、はんだ層の縁の近傍における半導体素子表層内の応力を抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(2、102)は、主面(20a)を有している半導体素子(20)と、主面に対向する対向面(30a、130a)を有している金属ブロック(30、130)と、主面と対向面を接合しているはんだ層(40、140)を備える。発明者らの検討によると、はんだ層の縁においてはんだ層の表面(41、141)と主面のなす角度(縁角Th)が45度以下であると、半導体素子の表層の応力が抑えられることがわかった。すなわち、本明細書が開示する半導体装置では、はんだ層の縁においてはんだ層の表面と半導体素子の主面とのなす角度が45度以下である。
【0007】
本明細書が開示する半導体装置の一態様では、はんだ層(40)は、金属ブロック(30)の側面(30b)の一部まで接合していてよい。その場合、金属ブロックの対向面と連続する側面のうち、対向面と側面との境界から所定幅の第1領域(31)の濡れ性が、第1領域に隣接する第2領域(32)の濡れ性よりも高い。金属ブロックと半導体素子を接合する際、溶融したはんだは、濡れ性の高い第1領域には広がるが、濡れ性の低い第2領域には広がらない。第1領域の幅を適切に調整することで、はんだ層の縁から金属ブロックの側面へとつながるはんだ層表面の角度(はんだ層の表面と主面とがなす角度)を45度以下に調整することができる。
【0008】
本明細書が開示する半導体装置の別の態様では、はんだ層(140)は、金属ブロック(130)の対向面(130b)だけに広がっていてもよい。その場合、対向面の縁(130d)に沿って一周している所定幅の周辺領域(132)の濡れ性が周辺領域に囲まれている中央領域(131)の濡れ性よりも低い。溶融したはんだは周辺領域には広がらない。はんだ層の表面は、はんだ層の縁と、周辺領域と中央領域の境界の間に広がる。周辺領域の幅を適切に調整することで、はんだ層の縁から金属ブロックの対向面へとつながるはんだ層表面の角度を45度以下に調整することができる。
【0009】
第1領域あるいは中央領域にニッケル膜を形成することで、それらの領域の濡れ性を高めることができる。一方、第2領域あるいは、周辺領域に金属酸化膜を形成することで、それらの領域の濡れ性を低くすることができる。
【0010】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】半導体素子と金属ブロックの接合体の平面図である(第1実施例)。
【
図5】半導体素子と金属ブロックの接合体の平面図である(第2実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施例)
図1に、第1実施例の半導体装置2の斜視図を示す。
図1のII-II線に沿ってカットした半導体装置2の断面を
図2に示す。半導体装置2は、半導体素子20と金属ブロック30が樹脂パッケージ10に封止されたデバイスである(
図2参照)。
図1では、半導体素子20と金属ブロック30は樹脂パッケージ10に封止されているので見えない。
【0013】
半導体素子20はIGBTやMOSFETなどのいわゆるパワー素子である。半導体素子20の一方の主面20aには第1主電極と制御電極が配置されており、他方の主面20bには第2主電極が配置されている。第1主電極と第2主電極は、ソース電極とドレイン電極、あるいは、コレクタ電極とエミッタ電極である。制御電極は、ゲート電極またはベース電極と、温度センサやセンスエミッタの電極である。
図2では、主面上に形成されている第1主電極と第2主電極と制御電極の図示は省略した。
【0014】
半導体素子20と金属ブロック30は、一対の金属板14、15に挟まれている。半導体素子20と金属ブロック30は、一対の金属板14、15の間で樹脂パッケージ10に封止されている。金属板14、15のそれぞれの一面が樹脂パッケージ10から露出している。金属板14の縁には主端子11がつながっており、金属板15の縁には主端子12がつながっている。主端子11、12の一部は樹脂パッケージ10から外へ延びている。
【0015】
金属板15に半導体素子20の主面20bが接合している。主面20bには第2主電極が露出しており、第2主電極は金属板15を介して主端子12と導通している。半導体素子20の主面20aに金属ブロック30の一面(対向面30a)が接合しており、金属ブロック30の別の面(反対面30e)が金属板14に接合している。主面20aには第1主電極が露出しており、第1主電極は金属ブロック30と金属板14を介して主端子11と導通している。金属板14、15は、半導体素子20の端子と放熱板を兼ねている。
【0016】
先に述べたように、主面20aには複数の制御電極も露出している。樹脂パッケージ10から複数の制御端子13が延びている。制御端子13の一部は樹脂パッケージ10に埋設されており、制御端子13と制御電極は樹脂パッケージ10の中でボンディングワイヤ19によって接続されている。
【0017】
金属板15と半導体素子20の主面20bははんだ層43で接合されている。半導体素子20の主面20aと金属ブロック30の対向面30aがはんだ層40で接合されている。金属ブロック30の反対面30eと金属板14がはんだ層44で接合されている。
【0018】
図2の上側の図の矩形破線の範囲を拡大した図を
図2の下側に描いてある。図を見易くするため、
図2の下側の拡大図では、全ての部品について、断面を表すハッチングは省略した。
【0019】
図2の下側の図は、半導体素子20の主面20aと金属ブロック30の対向面30aを接合するはんだ層40の縁40aの近傍の拡大図である。はんだ層40の縁40aとは、半導体素子20と金属ブロック30の接合体を平面視したときのはんだ層40の輪郭を意味する。
図3に、半導体素子20と金属ブロック30の接合体の平面図を示す。なお、平面視において半導体素子20の面積が金属ブロック30の面積よりも大きい。すなわち、主面20aの面積が金属ブロック30の対向面30aの面積よりも大きい。
図3の平面視において、はんだ層40の縁40aは、金属ブロック30の輪郭と半導体素子20の輪郭の間に位置する。
【0020】
図2に戻ってはんだ層40の説明を続ける。はんだ層40は、縁40aからはんだ層40の中心に向かって厚みが徐々に大きくなっている。はんだ層40の縁40aの近傍において、半導体素子20の主面20aとはんだ層の表面41がなす角度Thを、以下では、便宜上、縁角Thと称する。
【0021】
なお、半導体素子20の素子層21の表面にはアルミニウムとシリコンの合金(この合金を以下では電極と称する)の層(電極22)が形成されており、その上にニッケル層23と樹脂層24が形成されている。素子層21とは、トランジスタなどの半導体素子としての機能(ゲート電極など)を実現する層である。樹脂層24は、ポリイミドあるいはポリアミドの層である。電極22は、素子層21の保護の役割を担う。また、電極22は、ニッケル層23及び樹脂層24を素子層21に接着し易くする役割も担う。素子層21、電極22、ニッケル層23および樹脂層24を含んで半導体素子20と称する。主面20aとは、ニッケル層23および樹脂層24の表面に相当する。
【0022】
発明者らは、縁角Thが大きいと、縁40aの近傍において半導体素子20の表層内におおきな応力が発生することを見出した。はんだ層40の縁角Thが大きいと、半導体素子20の表層(特に、電極22)に高い応力が生じ、熱サイクルが加わると、縁40aの近傍において電極22に亀裂が生じるおそれがある。なお、熱サイクルとは、半導体素子の駆動と停止の繰り返しによる温度変化を意味する。
【0023】
発明者らは、縁角Thを45度以下に抑えると、半導体素子20の表層(特に電極22)に生じる応力を抑えることができることを見出した。縁角Thはゼロにはできないので、縁角Thは10度以上が好ましい。結局、縁角Thは45度以下10度以上が好ましい。
【0024】
以下では、縁角Thを所望の範囲に制御することのできる構造を説明する。ニッケル層23は、はんだに対して親和性が高く、ニッケル層23のはんだに対する濡れ性は高い。樹脂層24は、はんだに対して親和性が低く、樹脂層24に対するはんだの濡れ性は低い。それゆえ、半導体素子20と金属ブロック30の間で溶融したはんだは、ニッケル層23の表面に沿って広がるが、樹脂層24の表面には広がらない。それゆえ、半導体素子20の主面20aにおいて、ニッケル層23と樹脂層24の境界20cに、はんだ層40の縁40aが形成される。
【0025】
一方、金属ブロック30の対向面30a(主面20aと対向する面)と、側面30bの一部にもニッケル層33が形成される。ニッケル層33は、側面30bと対向面30aの境界30dから幅Wの範囲に形成される。側面30bにおいてニッケル層33が形成される範囲を第1領域31と称する。また、側面30bにおいて第1領域31に隣接する領域を第2領域32と称する。より詳しくは、第2領域32は、金属ブロック30の側面30bにおいて、半導体素子20よりも遠い側で第1領域31に隣接している。第1領域31と第2領域32は、それぞれ、金属ブロック30の側面30bを一巡している。
【0026】
第2領域32には、金属酸化膜34が形成されている。金属酸化膜34は、例えば銅で作られている金属ブロック30の表面にレーザを照射することで形成される。金属酸化膜34は、はんだとの親和性が低く、はんだに対する濡れ性が低い。一方、先に述べたように、ニッケル層は、はんだとの親和性が高く、はんだに対する濡れ性が高い。半導体素子20と金属ブロック30の間で溶融したはんだは、ニッケル層33の表面に沿って広がるが、金属酸化膜34の表面には広がらない。それゆえ、金属ブロック30の側面30bにおいて、ニッケル層33と金属酸化膜34の境界30cに、はんだ層40の縁40bが形成される。はんだ層40の表面41は、主面20aにおけるニッケル層23と樹脂層24の境界20c(縁40a)から、側面30bにおけるニッケル層33と金属酸化膜34の境界30c(縁40b)に広がる(
図2の下側の図を参照)。
【0027】
金属ブロック30の側面30bと、ニッケル層23と樹脂層24の境界20c(縁40a)までの水平距離を距離Laで表し、金属ブロック30と半導体素子20の間の距離を距離Lbで表すと、第1領域31の幅Wと縁角Thは、
図2の下に示した数式関係を満たす。この数式関係を用いて距離La、Lb、幅Wを適切に定めることで、縁角Thを10度以上45度以下の範囲に調整することができる。
【0028】
第1実施例の半導体装置2に関する留意点を述べる。ニッケル層23、33は、はんだに対する濡れ性を高めるために設けられる。樹脂層24、金属酸化膜34は、はんだに対する濡れ性を下げるために設けられる(樹脂層24は、半導体素子20と樹脂パッケージ10との接合性を高める役割も果たす)。それゆえ、第1実施例の半導体装置2の特徴は、次の通り表現することもできる。
【0029】
半導体装置2は、主面20aを有している半導体素子20と、主面20aに対向する対向面30aを有している金属ブロック30と、主面20aと対向面30aを接合しているはんだ層40を備える。なお、主面20aの面積は対向面30aの面積よりも大きい。はんだ層40の縁40aにおいて、はんだ層40の表面41と主面20aとのなす角度(縁角Th)が10度以上45度以下である。
【0030】
金属ブロック30の対向面30aと連続する側面30bのうち、第1領域31のはんだに対する濡れ性が、第2領域32のはんだに対する濡れ性よりも高い。第1領域31は、対向面30aと側面30bとの境界から幅Wの範囲である。第2領域32は、半導体素子20より遠い側で第1領域31に隣接する範囲である。第1領域31の濡れ性を高くするには、典型的には、ニッケルや金の層を第1領域31に形成すればよい。第2領域32の濡れ性を低くするには、典型的には、第2領域32の表面に金属酸化膜を形成すればよい。
図2の下側に示した数式の関係を用いて、縁角Thを10度以上45度以下に調整することができる。
【0031】
(第2実施例)
図4、
図5を参照して第2実施例の半導体装置102を説明する。
図4は、
図3に対応する図であり、半導体素子20と金属ブロック130の接合体の断面の一部を拡大した図である。第1実施例の半導体装置2と同様に、半導体素子20と金属ブロック130の接合体は樹脂パッケージ10に封止されている。
図4では、図を見易くするため、樹脂パッケージ10を含めた全ての部品について、断面を表すハッチングは省略してある。
【0032】
半導体素子20は、第1実施例の場合と同じである。すなわち、素子層21の上に電極22が形成されており、その上にニッケル層23と樹脂層24が形成されている。半導体素子20には、素子層21、電極22、ニッケル層23、樹脂層24が含まれる。
【0033】
半導体素子20と金属ブロック130は、はんだ層140で接合されている。第2実施例の半導体装置102では、はんだ層140は、金属ブロック130の対向面130aだけに接合しており、金属ブロック130の側面には、はんだは付着していない。
【0034】
第2実施例の半導体装置102においても、はんだ層140は、主面20aにおける縁140aからはんだ層140の中心に向かって厚みが徐々に大きくなっている。縁140aにおいて、はんだ層140の表面141と主面20aとのなす角度(縁角Th)が10度以上45度以下である。縁角Thをそのような範囲に限定することで、縁140aの近傍において半導体素子20の表層(特に電極22)に生じる応力を抑えることができる。
【0035】
縁角Thを所望の範囲に制御することのできる構造を説明する。
図5に、半導体素子20と金属ブロック130の接合体の平面図を示す。主面20aの一部にニッケル層23が形成されており、ニッケル層23を囲むように樹脂層24が形成されている。
図5においてニッケル層23と樹脂層24は金属ブロック130に隠れているので、破線で描いてある。
【0036】
金属ブロック130の対向面130aは、その縁130dに沿って一周している幅Wの周辺領域132と、周辺領域132に囲まれている中央領域131に分けられる。中央領域131にはニッケル層133が形成されており、周辺領域132には金属酸化膜134が形成されている。金属ブロック130の中央領域131は、半導体素子20の主面20aのニッケル層23に対向している。
図5において中央領域131(ニッケル層133)と周辺領域132(金属酸化膜134)は金属ブロック130の下側の面に位置するので破線で描いてある。
図5にも、周辺領域132の幅Wを図示してある。
【0037】
図5の平面視においては、ニッケル層23と樹脂層24の境界20cは、後述する縁140a(主面20aにおけるはんだ層140の縁140a)にも相当する。また、中央領域131(ニッケル層133)と周辺領域132(金属酸化膜134)の境界130cは、後述する縁140b(対向面130aにおけるはんだ層140の縁140b)にも相当する。
【0038】
先に述べたように、ニッケル層23、133ははんだに対して濡れ性が高く、樹脂層24と金属酸化膜134ははんだに対して濡れ性が低い。第1実施例の場合と同様に、金属ブロック130と半導体素子20の間で溶融したはんだは、ニッケル層23、133に沿って広がり、樹脂層24の表面、金属酸化膜134の表面には広がらない。それゆえ、主面20aにおいては、ニッケル層23と樹脂層24の境界20cに、はんだ層140の縁140aが位置し、対向面130aにおいては、ニッケル層133と金属酸化膜134の境界130cに、はんだ層140の縁140bが形成される。縁140aと縁140bの間にはんだ層140の表面141が広がる。
【0039】
平面視(
図5)において半導体素子20の主面20aの中心と金属ブロック130の対向面130aの中心が一致するように金属ブロック130が配置された場合、はんだ層140の縁角Thを所望の角度に制御するには次の数式関係が利用される。
図4に示すように、主面20a上のニッケル層23の幅を距離Lcで表し、金属ブロック130の幅を距離Ldで表し、金属ブロック130と半導体素子20の間の距離を距離Lbで表すと、周辺領域132の幅Wと縁角Thは、
図4の下に示した数式関係を満足する。この数式関係を用いて距離Lb、Lc、Ld、幅Wを適切に定めることで、縁角Thを10度以上45度以下の範囲に調整することができる。
【0040】
第1実施例の場合と同様に、第2実施例の半導体装置102においても、ニッケル層23、133は、はんだに対する濡れ性を高めるために設けられる。樹脂層24、金属酸化膜134は、はんだに対する濡れ性を下げるために設けられる。それゆえ、第2実施例の半導体装置102の特徴は、次の通り表現することもできる。
【0041】
半導体装置102は、主面20aを有している半導体素子20と、主面20aに対向する対向面130aを有している金属ブロック130と、主面20aと対向面130aを接合しているはんだ層140を備える。なお、主面20aの面積は対向面130aの面積よりも大きい。主面20aにおけるはんだ層140の縁140aにおいて、はんだ層140の表面141と主面20aとのなす角度(縁角Th)が10度以上45度以下である。
【0042】
金属ブロック130の対向面130aには、その縁130dに沿って一周している幅Wの周辺領域132の濡れ性が、周辺領域132に囲まれている中央領域131の濡れ性よりも低い。中央領域131の濡れ性を高くするには、典型的には、ニッケル層133や金層を中央領域131に形成すればよい。周辺領域132の濡れ性を低くするには、典型的には、周辺領域132の表面に金属酸化膜を形成すればよい。
図4の下側に示した数式の関係を用いて、縁角Thを10度以上45度以下に調整することができる。
【0043】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
2、102:半導体装置 10:樹脂パッケージ 11、12:主端子 13:制御端子 14、15:金属板 19:ボンディングワイヤ 20:半導体素子 20a、20B:主面 20c、130c:境界 21:素子層 22:電極 23:ニッケル層 24:樹脂層 30、130:金属ブロック 30a、130a:対向面 30b:側面 30c:反対面 31:第1領域 32:第2領域 33、133:ニッケル層 34、134:金属酸化膜 40、43、44、140:はんだ層 40a、40b、130d、140a、140b:縁 41、141:表面 131:中央領域 132:周辺領域