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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117845
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】操作制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230817BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230817BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08G1/09 H
F02D29/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020627
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 弘基
【テーマコード(参考)】
3G093
5H181
【Fターム(参考)】
3G093BA26
5H181AA01
5H181AA07
5H181AA15
5H181AA21
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】乗務員の業務効率を損なうことなく、ながら運転を防止可能な操作制御システムを提供する。
【解決手段】通信端末は、車載器から、車両の現在地、並びに、車両の走行状態又は作業状態の情報を含むビーコン情報を受信し(S11)、ビーコン情報に基づいて、通信端末に対する操作制御を行う(S18)。通信端末は、車両が走行中の場合は通信端末に対する操作を制限し(S19)、車両が荷待ち状態である場合は所定範囲で前記制限の解除を行う(S21)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載器と、前記車載器と通信可能に構成された通信端末と、を備える操作制御システムであって、
前記車載器は、前記車両の現在地、並びに、前記車両の走行状態及び作業状態の少なくともいずれか一方の情報を含む車載器情報を送信する送信部を有し、
前記通信端末は、
前記車載器情報を受信する受信部と、
前記車載器情報に基づいて、前記通信端末に対する操作制御を行う操作制御部と、を有し、
前記操作制御部は、前記車両が走行中の場合は前記通信端末に対する操作を制限し、前記車両が荷待ち状態である場合は所定範囲で前記制限の解除を行う、
操作制御システム。
【請求項2】
前記荷待ち状態は、前記車両の現在地が所定の場所であり、かつ前記車両の速度が規定値以下である状態を含む、
請求項1に記載の操作制御システム。
【請求項3】
前記荷待ち状態は、前記車両の現在地が所定の場所であり、かつ、前記作業状態が、待機中、荷積み中、荷卸し中、及び休憩中のいずれか一である状態を含む、
請求項1に記載の操作制御システム。
【請求項4】
前記車載器は、前記通信端末に対する操作制御を開始させるための信号を送信し、
前記通信端末は、
前記受信部が前記信号を受信し、
前記操作制御部は、受信した前記信号の電波強度が閾値以上か否かを判定し、前記電波強度が前記閾値を下回る場合に前記操作制御を行わず、前記電波強度が前記閾値以上である場合に、前記操作制御を行う、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の操作制御システム。
【請求項5】
前記制限は、前記通信端末のロックを含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の操作制御システム。
【請求項6】
少なくとも前記通信端末と通信可能に構成され、前記所定範囲を設定可能に構成された通信装置を備え、
前記操作制御部は、前記通信装置にて設定された前記所定範囲で、前記制限の解除を行う、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の操作制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が車両の運転中にスマートフォンや携帯電話等の通信端末を操作する、いわゆるながら運転は、正確な運転操作や的確な判断をできにくくし、安全運転の妨げとなるおそれがある。そこで、ながら運転による交通事故の発生等を抑制するための技術が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。特許文献1は、スマートフォン上の監視アプリが車両の運転中における携帯端末操作を検出して警報イベントを発生させる操作監視システムを開示している。特許文献2及び特許文献3は、車載装置が、車両の走行を検知すると、携帯端末のながら運転防止アプリに対し、携帯端末の少なくとも一部の利用機能の停止を指示するながら運転防止装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-26211号公報
【特許文献2】特開2021-89765号公報
【特許文献3】特開2021-16031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術は、警報を発生できるものの、走行中にすでに操作がなされた状態であるため、ながら運転の未然防止にはつながらない。一方、特許文献2及び特許文献3の技術によれば、アプリの利用によって、事前に管理者側で通信端末の利用制限を掛けることが可能であり、ながら運転を未然に防止し得る。しかし、特許文献2,3の技術によれば、走行中には携帯端末に強制的にホーム画面が表示されて利用機能が制限されるので、例えばトラックを運転する乗務員がスマートフォンを作業指示の閲覧等に利用する場合に、閲覧操作が中断され業務の妨げとなってしまう。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗務員の業務効率を損なうことなく、ながら運転を防止可能な操作制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る操作制御システムは、下記を特徴としている。
車両に搭載された車載器と、前記車載器と通信可能に構成された通信端末と、を備える操作制御システムであって、
前記車載器は、前記車両の現在地、並びに、前記車両の走行状態及び作業状態の少なくともいずれか一方の情報を含む車載器情報を送信する送信部を有し、
前記通信端末は、
前記車載器情報を受信する受信部と、
前記車載器情報に基づいて、前記通信端末に対する操作制御を行う操作制御部と、を有し、
前記操作制御部は、前記車両が走行中の場合は前記通信端末に対する操作を制限し、前記車両が荷待ち状態である場合は所定範囲で前記制限の解除を行う、
操作制御システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る操作制御システムによれば、乗務員の業務効率を損なうことなく、ながら運転を防止可能となる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態の操作制御システムの構成例を示す図である。
図2図2は、図1に示す車載器の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、図1に示す業務端末の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、業務端末の動作例を示すフローチャートである。
図5図5は、業務端末の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0011】
図1に示した操作制御システム1は、車載器10と、業務端末50と、管理者端末30とを備える。操作制御システム1は、車載器10が搭載された車両の状態、すなわち現在地及び走行状態又は作業状態に応じて、乗務員が利用する業務端末50が自ら、走行中の操作制限及び制限解除を含む操作制御を行う。業務端末50の操作制限範囲(操作制御の内容)を含む端末管理条件は、車両の運行を管理する管理者によって予め定められ、管理者端末30から車載器10及び業務端末50に対して設定されている。
【0012】
車載器10は、乗務員が運行するトラック等の業務用車両の各々に搭載した状態で使用される。車載器10は、例えばドライブレコーダや、ドライブレコーダの機能を有するデジタルタコグラフのように、車両の運行管理や乗務員の安全運転管理などに役立つ機能を提供するものである。
【0013】
業務端末50は、例えばトラック等の業務用車両を運転する乗務員が利用するスマートフォンである。業務端末としては、タブレット端末等、スマートフォン以外の携帯通信端末を利用できる。また、業務端末は、作業情報を入力可能に構成された専用端末でもよい。業務端末50は、乗務員個人の所有物であってもよいし、運行業務に際して乗務員が使用できるように乗務員に与える企業所有の端末であってもよい。
【0014】
業務端末50は、一般的なアプリケーションソフトウェアの他に、端末管理用のアプリケーションソフトウェア(後述するアプリ53)を装備している。本実施形態においては、例えば車両の運行を管理している企業が各車両を運行する乗務員に対して、車両運行時の安全確保のために、アプリ53を予め業務端末50に組み込んだ状態で使用することを義務付けることとする。
【0015】
管理者端末30は、各車両を管理している企業の事務所内に設置され、企業内の運行管理者(以下、「管理者」ともいう。)により操作される。各乗務員の車両運行中の業務端末50の状態、管理対象の各車両の状態、及び各車両に搭載された車載器10の状態を、コンピュータの画面上に表示する機能を有している。
【0016】
図1に示した操作制御システム1においては、業務端末50と車載器10とはbluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を利用して通信可能である。業務端末50と管理者端末30とは、LTE(Long Term Evolution)等の広域無線通信、又は、無線LANを利用して通信可能である。
【0017】
車載器10は、近距離無線通信によって、車両と車載器10の状態を示す車載器情報をビーコン情報として定期的に送信する。車載器情報は、具体的には、車両の現在地、車速、乗務状態、及び画像認識結果等を含む。すなわち、車載器情報は、車両の現在地、並びに、車両の走行状態及び作業状態の少なくともいずれか一方の情報を含む。走行状態は、停止、走行、高速等の車両の状態である。尚、停止には、例えば時速5km以下等、一定速度以下の場合を含んでもよい。車載器10は、車速センサ等の各種センサから取得され、後述するストレージ12に記録されたセンサ値等に基づいて、走行状態を自動検知してもよいし、高速道路走行中であることを示す高速ボタン等のボタン押下の検知により走行状態を検知してもよい。作業状態は、出庫、入庫、荷待ち、荷積み、荷卸し、休憩、等の車載器10の状態である。車載器10は、作業状態を、出庫ボタン等のボタン押下の検知により検知する。待機は、荷積みや荷卸しのために、車両が例えば列に並んで待機していることを意味し、車両の停止中において、不定期で車両の一時的な移動が発生し得る状態である。
【0018】
乗務員に所持された業務端末50は、電源が入った車載器10に乗務員が近付いた際、車載器10から発せられるビーコン情報を受信する。業務端末50は、受信したビーコン情報の電波強度が強い場合、すなわち電波強度が閾値を越えた場合に、端末管理を開始する。業務端末50は、乗務員が車両から離れて、電波強度が閾値を下回った場合は、制御対象外として、端末管理を終了する。また、業務端末50は、乗務員が車両から離れており電波強度が閾値を下回っている間は、端末管理を開始しない。業務端末50は、乗務員が車両に乗っている間は端末管理を行い、乗務員が車両から離れた場合には端末管理を行わないので、例えば業務端末50が私物のスマートフォンである場合に、乗務員によるスマートフォンの個人的利用に支障を来すことがなく、有効である。
【0019】
業務端末50は、管理者によって予め設定された端末管理条件(操作制限範囲)と、車載器10から受信した、車載器情報を含むビーコン情報とから、業務端末50の操作制限及び制限解除を、アプリ53で自らコントロールする。管理者は、車両の現在地及び走行状態又は作業状態に応じて、どの範囲で業務端末50の操作を許可するか(操作を制限するか)を予め判断して設定しておけばよく、現場での業務端末50の操作許可判断は、業務端末50が自ら行う。よって、車両の走行中など業務端末50を操作してはならないタイミングを、管理者が意識することなく、業務端末50自身が、車載器情報を元にコントロールすることができる。尚、業務端末50は、利用制限に反する違反操作が行われたことを検知した場合、警報を発生させて、音声又は表示等により乗務員に報知してもよいし、違反操作イベント発生を管理者端末30に送信してもよい。
【0020】
<車載器10の構成>
図2に示すように、車載器10は、制御部(CPU)11、ストレージ12、電源部13、メモリ14、広域無線通信部15、無線LAN通信部16、近距離無線通信部17、GPS受信部18、及びディスプレイ19を備える。
【0021】
制御部11は、内部メモリに予め組み込まれているプログラムを実行することにより、車載器10に必要とされる機能を実現するための処理を行う。例えば、特定のイベントが発生した場合に、車両に設置された車載カメラが撮影した映像の画像データを一定時間だけ取得して記録するドライブレコーダの制御を制御部11が実行する。また、管理者端末30で設定され例えば内部メモリに記憶された端末管理条件に従って、特定の車載器情報をビーコン情報として定期的に送信するための制御を制御部11が実行する。
【0022】
ストレージ12には、車両に設置された車速センサ等のセンサ値、車載カメラにより撮影された映像データ等の、車載器10が外部入力ポートを介して収集した各種情報が蓄積される。ストレージ12は、映像データに対する画像認識結果や、後述するGPS受信部18が取得した車両の現在地等の情報も、時刻情報に対応付けて蓄積している。すなわち、ストレージ12は、車載器情報を記憶している。ストレージ12は、制御部11が実行可能なプログラムや、制御上必要になる各種定数データ、テーブルなどを予め保持していてもよい。
【0023】
電源部13は、車両側から供給される電源電力に基づいて安定した電源電力を生成し、生成した電源電力を、制御部11を含む車載器10内の各回路に対して供給する。
【0024】
メモリ14は、制御部11が処理中に生成するデータなどを一時的に保持するために利用される。
【0025】
広域無線通信部15は、例えば移動体通信事業者が提供する携帯電話等の広域無線通信サービスの基地局との間で、LTE(Long Term Evolution)等の広域無線通信を行い、車載器10が必要とする無線通信回線を確保するための機能を有している。
【0026】
無線LAN通信部16は、車載器10と管理者端末30との間で行われるデータ通信を中継するアクセスポイントとの間で、無線LAN(Local Area Network)による通信を行うための機能を有している。
【0027】
近距離無線通信部17は、bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を行い、定期的にビーコン情報を発信するための機能を有し、例えば数メートル等の範囲に位置する業務端末50と通信可能である。ビーコン情報は、車載器情報を含む。
【0028】
GPS受信部18は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信し、複数の受信信号に基づいて、車両の現在地を表す位置情報、及び時刻情報を取得できる。
【0029】
ディスプレイ19は、車載器10の操作に必要な文字などの可視情報や、ながら運転を防止するための操作制限に関する注意喚起の情報などを、乗務員が視認できるように表示するために利用できる。
【0030】
<業務端末50の構成>
業務端末50は、制御部51、ストレージ52、アプリ(アプリケーション)53、電源部54、メモリ55、無線LAN通信部56、ディスプレイ57、タッチスクリーン58、近距離無線通信部59、及び広域無線通信部60を備える。業務端末50は、各機能部が基板上に搭載されたSOC(System On Chip)で構成される。
【0031】
制御部51は、予め組み込まれているプログラムを実行することにより、業務端末50に必要とされる機能を実現するための処理を行う。例えば、後述するように、ストレージ52に格納されたアプリ53と協働して、タッチスクリーン58に対する乗務員による操作を検出したり、タッチスクリーン58に対する操作制限を行う。タッチスクリーン58に対する操作制限は、例えばディスプレイ57を消灯する、ロック画面を表示する等、タッチスクリーン58に対する操作入力を不可にすることにより行う。また、タッチスクリーン58に対する操作制限の解除も、制御部51がアプリ53と協働して行う。
【0032】
ストレージ52は、乗務員によるながら運転、すなわち業務端末50を操作しながら車両を運転することを防止するためのアプリ53を格納している。アプリ53は、ながら運転防止用の専用アプリであってもよいし、運転者管理アプリに、ながら運転防止機能を組み込んだアプリであってもよい。ストレージ52には、車載器10から受信した車載器情報が蓄積されている。ストレージ52は、制御部51が実行可能なプログラムや、制御上必要になる各種定数データ、テーブルなどを予め保持していてもよい。
【0033】
電源部54は、制御部51を含む業務端末50内の各回路に対して、所定の電源電力を供給する。
【0034】
メモリ55は、制御部51が処理中に生成するデータなどを一時的に保持するために利用される。
【0035】
無線LAN通信部56は、業務端末50と管理者端末30との間で行われるデータ通信を中継するアクセスポイントとの間で、無線LAN(Local Area Network)による通信を行うための機能を有している。
【0036】
ディスプレイ57は、業務端末50の操作に必要な文字などの可視情報や、ながら運転を防止するための操作制限に関する注意喚起の情報などを、乗務員が視認できるように表示するために利用できる。
【0037】
タッチスクリーン58は、例えばディスプレイ57に重畳されて配置され、乗務員による操作の入力を受付可能に構成される。業務端末50の操作制限には、画面ロックが含まれる。画面ロックとは、ディスプレイ57に、処理内容を視認不能とする所定の画像が表示され、タッチスクリーン58における操作入力ができない状態を意味する。
【0038】
近距離無線通信部59は、bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を行い、例えば数メートル等の範囲に位置する車載器10との通信可能を可能とする機能を有する。近距離無線通信部59は、車載器10から定期的に送信される、車載器情報を含むビーコン情報を受信する。受信したビーコン情報の電波強度は、制御部51によって、閾値以上か否かが判定される。
【0039】
広域無線通信部60は、例えば移動体通信事業者が提供する携帯電話等の広域無線通信サービスの基地局との間で、LTE(Long Term Evolution)等の広域無線通信を行い、業務端末50が必要とする無線通信回線を確保するための機能を有している。
【0040】
<動作例>
図4及び図5を参照して、アプリ53の動作例を説明する。本実施形態ではアプリ53が業務端末50上に常駐し、図4及び図5に示す端末管理動作を常時繰り返し実行する場合を想定している。
【0041】
アプリ53が起動し、車載器10から、車載器情報を含むビーコン情報を受信する(S11)と、受信した電波の強度が閾値以上か否かを判定する(S12)。アプリ53は、受信した電波の強度が閾値以上でない場合(S12でNo)はS11に戻り、ビーコン情報の受信を待機する。
【0042】
アプリ53は、電波強度が閾値以上の場合(S12でYes)、S13に進み、乗務開始が実行されたか否か、すなわち、受信した車載器情報に、乗務開始ボタンの押下が含まれるか否かを判定する。乗務開始が実行された場合、アプリ53は、業務端末50の管理を開始する(S14)。アプリ53は、受信したビーコン情報を監視し(S15)、電波強度が閾値以上か否かを判定し(S16)、閾値以上の場合、車両が走行状態にあるか否かを判定する(S17)。アプリ53は、車両が走行状態にない場合(S17でNo)はS15の処理に戻り、車両が走行状態にある場合(S17でYes)、車載器10の状態が管理者の指定する操作許可状態にあるか否かを判定する(S18)。操作許可状態は、一例として、車両の現在地が指定のエリア内であり、かつ、車載器10の状態である作業状態が、待機中、荷積み中、荷卸し中、及び休憩中のいずれか一である。
【0043】
アプリ53は、車載器10の状態が操作許可状態でない場合(S18でNoの場合)、業務端末50に対する操作制限(操作抑制)を実行する(S19)。尚、操作制限の実行と共に、乗務員への警報発生及び管理者端末30へのイベント送信のいずれか一方を行ってもよい。アプリ53は、車両が走行状態にあるか否かを判定し(S20)、走行状態にある、すなわち、車速が一定以上である場合(S20でYes)、S18の処理にもどり、操作許可状態にあるか否かを判定する。一方、車両が走行状態にない場合、すなわち車両が停止中である場合(S20でNo)、アプリ53は、管理者が指定する許可範囲で操作制限を解除する(S21)。一方、S16において、電波強度が閾値以上でない場合(S16でNo)、アプリ53は、S21の処理に進み、管理者が指定する許可範囲で操作制限を解除する。
【0044】
一方、S18において、車載器10の状態が操作許可状態にある場合(S18でNoの場合)、アプリ53は、車両の速度が閾値(規定値)以下か否かを判定し(S23)、閾値以下でなければ(S23でNo)、業務端末50の操作制限を実行し、業務端末50の機能を抑制する(S19)。車両の速度が閾値以下の場合(S23でYes)、アプリ53は、S21の処理に進み、業務端末50の操作制限を解除する。
【0045】
アプリ53は、S21の処理後、業務終了ボタンが押下された場合は、業務終了を検知し(S22)、一連の処理を終了する。一方、アプリ53は、業務終了を検知しない場合には、S11の処理に戻って、一連の処理を繰り返す。
【0046】
尚、S18の処理に代えて、車載器10の状態を個別に業務端末50に送信せず、代わりに、車載器10における画像認識で業務端末50を検知した後、車載器10の状態を鑑みて業務端末50に対する操作可否のコマンドを送信してもよい。
【0047】
本実施形態において、業務端末50のアプリ53は、例えば、車両が取引先倉庫で荷積み中である場合、すなわち、車両の現在地が目的地の敷地内であり、かつ、車速が閾値以下である場合に、荷積み中、すなわち荷待ちであると判定する。または、アプリ53は、例えば、車両の現在地が目的地の敷地内であり、かつ、作業状態が、待機中、荷積み中、荷卸し中、及び休憩中のいずれか一である場合に、荷待ちと判定する。尚、車載器10は、好ましくは、車速が閾値以下の場合にのみ、「休憩」、「荷待ち」ボタンを押下可能であり、閾値を越える車速で走行中の場合にはこれらのボタンは押下不能に構成されることで、安全性が担保される。
【0048】
車速が閾値以下の場合には、車両が完全に停止している場合と、車両が低速で移動する場合とを含む。荷待ち状態においては、目的地の敷地内において列に並び、不定期で車両を移動させる場合がある。この移動は、通常、移動時間が短い、一時的な移動である。仮に、車両の移動中に完全に操作を制限し、一切の操作を受け付けないとすると、このような移動中に、乗務員が業務端末50を参照して作業指示を確認したい場合に閲覧操作ができない。また、運行管理者から音声通話の着信中に応答する意思を示せない等、業務に支障を来す場合がある。そこで、車載器は、荷待ち状態における移動中にも、停車中と同程度の操作制限解除を行う。この制限解除によって、乗務員は、業務上必要な指示情報を閲覧するための操作や、運行管理者からの着信に応答の意思を示すことができるので、業務効率の低下を防止できる。
【0049】
以下、他の端末管理条件の例を挙げる。例えば、車両が走行状態で道路区分が高速であった場合、アプリ53は、緊急電話以外の全操作を禁止、あるいは業務端末50をロックした状態にすることができる。この状態において、走行状態が一定時間、停止状態が継続した場合、アプリ53は、業務端末50を操作可能な状態と判定し、全機能を開放する。尚、アプリ53は、停止状態の継続を検知する代わりに、「休憩」ボタンの押下を検知して、全機能を開放してもよい。別の例として、荷積み先の敷地内において、待機状態で車両を不定期に移動させる必要がある状態であった場合には、一時的な走行に対してはアプリ53側での操作制限を変えることなく業務端末50を操作可能な状態に保持する、等の制御も可能である。この場合であっても、アプリ53は、車両の速度を監視し、一定速度(規定値)以上での走行中は、業務端末50の操作は危険を伴うため、業務端末50をロックして、操作不能とする。
【0050】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0051】
上記実施形態では、業務端末50に対する操作制御を開始させるための信号として、車載器10が定期的に発信する、車載器情報を含むビーコン情報を用いたが、このビーコン情報に代えて専用の信号を用いてもよい。この場合、業務端末50は、まず専用の信号を受信することで、業務端末50に対する操作制御を開始し、操作制御の開始後に、車載器情報を含むビーコン情報を定期的に受信してもよい。
【0052】
上記実施形態において、車載器10の画像認識機能により、乗務員の業務端末50の操作を、操作すべきでないタイミングで検知した場合に、この検知結果をもとに、車載器10が、車載器情報を元に、操作制限又は制限解除するコマンドを業務端末50に送信して、業務端末50の操作制御を行ってもよい。この場合、車載器10から常時ビーコン情報を発信する必要がないので、通信すべき情報量を低減できる。
【0053】
ここで、上述した本発明に係る操作制御システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
【0054】
[1] 車両に搭載された車載器(10)と、前記車載器と通信可能に構成された通信端末(業務端末50)と、を備える操作制御システム(1)であって、
前記車載器は、前記車両の現在地、並びに、前記車両の走行状態及び作業状態の少なくともいずれか一方の情報を含む車載器情報を送信する送信部(近距離無線通信部17)を有し、
前記通信端末は、
前記車載器情報を受信する受信部(近距離無線通信部59)と、
前記車載器情報に基づいて、前記通信端末に対する操作制御を行う操作制御部(制御部51、アプリケーション53、S14)と、を有し、
前記操作制御部は、前記車両が走行中の場合は前記通信端末に対する操作を制限し(S19)、前記車両が荷待ち状態である場合は所定範囲で前記制限の解除を行う(S21)、
操作制御システム。
【0055】
上記[1]の構成の操作制御システムによれば、車両の状態(現在地、及び走行状態又は作業状態)により、乗務員が利用する通信端末等の操作制御を行うので、走行中の操作等の未然防止が可能となる。また、荷待ち状態である場合には、所定範囲で制限を解除するので、例えば、荷待ち状態において不定期で車両を移動させる時に、閲覧操作が中断されないため、利便性が損なわれず、業務効率の低下を防止できる。
【0056】
[2] 前記荷待ち状態は、前記車両の現在地が所定の場所であり、かつ前記車両の速度が規定値以下である状態を含む、
上記[1]に記載の操作制御システム。
【0057】
上記[2]の構成の操作制御システムによれば、車両が例えば倉庫敷地内で、停車している場合や、低速で移動する場合には、操作制限を解除して、業務必要な範囲での通信端末の使用を可能にできる。
【0058】
[3] 前記荷待ち状態は、前記車両の現在地が所定の場所であり、かつ、前記作業状態が、待機中、荷積み中、荷卸し中、及び休憩中のいずれか一である状態を含む、
上記[1]に記載の操作制御システム。
【0059】
上記[3]の構成の操作制御システムによれば、例えば、車両が倉庫敷地内で、荷積みのための待機列に並んでいる場合には、操作制限を解除して、業務必要な範囲での通信端末の使用を可能にできる。
【0060】
[4] 前記車載器は、前記通信端末に対する操作制御を開始させるための信号を送信し、
前記通信端末は、
前記受信部(近距離無線通信部59)が前記信号を受信し(S11)、
前記操作制御部は、受信した前記信号の電波強度が閾値以上か否かを判定し(S12)、前記電波強度が前記閾値を下回る場合に前記操作制御を行わず、前記電波強度が前記閾値以上である場合に、前記操作制御を行う(S14)、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の操作制御システム。
【0061】
上記[4]の構成の操作制御システムによれば、電波強度が閾値を下回った場合、乗務員が車両から離れた、又は、離れていると考えられ、通信端末の管理が不要であるため、操作制御を終了するか、又は、行わない。よって、私物のスマートフォンを業務用通信端末として使用する場合等に、有効である。
【0062】
[5] 前記制限は、前記通信端末のロックを含む、
上記[1]から[4]のいずれかに記載の操作制御システム。
【0063】
上記[5]の構成の操作制御システムによれば、車両の走行中には通信端末がロックされ、乗務員による操作ができなくなるため、通信端末を操作しながら運転する、ながら運転を防止できる。
【0064】
[6] 少なくとも前記通信端末と通信可能に構成され、前記所定範囲を設定可能に構成された通信装置(管理者端末30)を備え、
前記操作制御部は、前記通信装置にて設定された前記所定範囲で、前記制限の解除を行う、
上記[1]から[5]のいずれかに記載の操作制御システム。
【0065】
上記[6]の構成の操作制御システムによれば、管理者が、車載器の状態から、どの程度通信端末の操作を許可するかを判断して設定しておくことで、現場での端末の操作許可判断は車載器の情報を元に自動的に行われる。よって、管理者が各車両の状態を意識した端末の管理を実施しようとする際に、操作許可判断を業務端末が担うことで、車両の状態別のきめ細かい操作制御管理が可能となる。また、管理者の業務負荷を軽減可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 操作制御システム
10 車載器
11 制御部
12 ストレージ
13 電源部
14 メモリ
15 広域無線通信部
16 無線LAN通信部
17 近距離無線通信部
18 GPS受信部
19 ディスプレイ
30 管理者端末
50 業務端末
51 制御部
52 ストレージ
53 アプリ
54 電源部
55 メモリ
56 無線LAN通信部
57 ディスプレイ
58 タッチスクリーン
59 近距離無線通信部
60 広域無線通信部
図1
図2
図3
図4
図5