(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117852
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】エレベータ表示システム
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
B66B3/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020637
(22)【出願日】2022-02-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
(72)【発明者】
【氏名】濱口 萌子
【テーマコード(参考)】
3F303
【Fターム(参考)】
3F303DB12
3F303DC25
(57)【要約】
【課題】乗降口領域内に、乗場領域の利用者のみに視認される情報、および、乗りかご内の利用者のみに視認される情報を、視界を必要以上に遮ることなく表示可能なエレベータ表示システムを提供する。
【解決手段】エレベータ表示システム(1)は、(A)エレベータ(20)の乗場領域内に存在する第1利用者の視野範囲であって、エレベータ(20)の乗りかご(21)の乗降口領域内となる視野範囲に、視野角が乗場領域内である空中投影画像を表示する第1表示部(11)、および、(B)エレベータ(20)の乗りかご(21)内に存在する第2利用者の視野範囲であって、乗りかごの乗降口領域内となる視野範囲に、視野角が乗りかご(21)内である空中投影画像を表示する第2表示部(12)、の少なくともいずれか一方を備える空中投影表示部(10)と、空中投影表示部(10)における表示を制御する表示制御部(4)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)エレベータの乗場領域内に存在する第1利用者の視野範囲であって、前記エレベータの乗りかごの乗降口領域内となる視野範囲に、視野角が前記乗場領域内である空中投影画像を表示する第1表示部、および、(2)前記エレベータの前記乗りかご内に存在する第2利用者の視野範囲であって、前記乗りかごの前記乗降口領域内となる視野範囲に、視野角が前記乗りかご内である空中投影画像を表示する第2表示部、の少なくともいずれか一方を備える空中投影表示部と、
前記空中投影表示部における表示を制御する表示制御部と、を備えるエレベータ表示システム。
【請求項2】
前記第1表示部および前記第2表示部は、元画像表示装置の各位置から出射された光を、それぞれ対応する空間位置に集光させることによって前記空中投影画像を表示する表示装置である、請求項1に記載のエレベータ表示システム。
【請求項3】
前記空中投影表示部は、前記乗りかごに設けられている、請求項1または2に記載のエレベータ表示システム。
【請求項4】
前記空中投影表示部は、前記乗りかごにおいて、前記乗りかごの乗降口の側方に設けられるリターンパネル内および前記乗降口の上方に設けられるトランサム内の少なくともいずれかに設けられている、請求項3に記載のエレベータ表示システム。
【請求項5】
前記空中投影表示部は、前記乗りかご内の天井、側壁、および床面の少なくともいずれかの内部に設けられている、請求項3に記載のエレベータ表示システム。
【請求項6】
前記空中投影表示部は、前記乗場領域に設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載のエレベータ表示システム。
【請求項7】
前記空中投影表示部は、前記乗場領域における三方枠に設けられている、請求項6に記載のエレベータ表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの利用者が注目する乗降口にエレベータの運行状況等を映像として投影する技術が提案されている。例えば特許文献1には、利用者の乗りかごへの駆け込み行為を抑制することを目的として、エレベータドアが閉扉するときに、開いている乗降口に閉扉警告表示を行う構成が開示されている。この構成では、噴霧されたミストにレーザー光線によって所定の画像を投影することで閉扉警告表示が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成では、乗降口に噴霧されたミストに画像が投影されるので、乗りかご内の利用者は、乗場に対する視界が遮られることになる。よって、乗りかご内の利用者は乗場の様子を確認しにくくなる。また、投影された画像は、乗りかご内の利用者と乗場の利用者との両方に視認されることになる。よって、表示内容が乗りかご内の利用者に向けたものである場合、乗場の利用者がこれを視認して誤解が生じる可能性がある。また、逆に、表示内容が乗場の利用者に向けたものである場合、乗りかご内の利用者がこれを視認して誤解が生じる可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、乗降口領域内に、乗場領域の利用者のみに視認される情報、および、乗りかご内の利用者のみに視認される情報を、視界を必要以上に遮ることなく表示可能なエレベータ表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るエレベータ表示システムは、(1)エレベータの乗場領域内に存在する第1利用者の視野範囲であって、前記エレベータの乗りかごの乗降口領域内となる視野範囲に、視野角が前記乗場領域内である空中投影画像を表示する第1表示部、および、(2)前記エレベータの前記乗りかご内に存在する第2利用者の視野範囲であって、前記乗りかごの前記乗降口領域内となる視野範囲に、視野角が前記乗りかご内である空中投影画像を表示する第2表示部、の少なくともいずれか一方を備える空中投影表示部と、前記空中投影表示部における表示を制御する表示制御部と、を備えている。
【0007】
上記の構成によれば、例えば乗降時などに利用者が視認しやすい乗降口領域内に空中投影画像を表示することが可能となる。また、第1表示部によって表示される空中投影画像は、乗場領域内に存在する第1利用者から見て、乗りかごの乗降口領域内に表示される一方、乗りかご内の第2利用者からは視認することができない。よって、乗場領域内に存在する第1利用者に対してのみに、該第1利用者から見て乗降口領域内に所望の画像を提示することが可能となる。
【0008】
同様に、第2表示部によって表示される空中投影画像は、乗りかご内に存在する第2利用者から見て、乗りかごの乗降口領域内に表示される一方、乗場領域内の第1利用者からは視認することができない。よって、乗りかご内に存在する第2利用者に対してのみに、該第2利用者から見て乗降口領域内に所望の画像を提示することが可能となる。
【0009】
また、乗降口領域内において空中投影画像以外の領域には視界を妨げるような障害物は存在しないので、空中投影画像を視認できる利用者は、乗降口領域内の背後の状況を十分に視認することが可能となる。
【0010】
本発明の他の態様に係るエレベータ表示システムでは、前記第1表示部および前記第2表示部は、元画像表示装置の各位置から出射された光を、それぞれ対応する空間位置に集光させることによって前記空中投影画像を表示する表示装置であってもよい。
【0011】
上記の構成によれば、例えばミストなどのような、空中表示を実現するための媒体を空間に散布することなく、空中投影画像を表示することが可能となる。
【0012】
本発明の他の態様に係るエレベータ表示システムでは、前記空中投影表示部は、前記乗りかごに設けられていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、各階の乗場領域には空中投影表示部を設けない構成とすることも可能となる。この場合、乗りかごにのみ空中投影表示部を設ければよいので、設置コストを低減することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係るエレベータ表示システムでは、前記空中投影表示部は、前記乗りかごにおいて、前記乗りかごの乗降口の側方に設けられるリターンパネル内および前記乗降口の上方に設けられるトランサム内の少なくともいずれかに設けられていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、空中投影表示部がリターンパネル内およびトランサム内の少なくともいずれかに設けられるので、空中投影表示部を設けるための空間を別途設ける必要がなくなる。また、乗りかご内の空間を狭めることなく空中投影表示を実現することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係るエレベータ表示システムでは、前記空中投影表示部は、前記乗りかご内の天井、側壁、および床面の少なくともいずれかの内部に設けられていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、空中投影表示部が乗りかご内の天井、側壁、および床面の少なくともいずれかの内部に設けられるので、乗りかご内の空間を狭めることなく空中投影表示を実現することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係るエレベータ表示システムでは、前記乗場領域に設けられていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、乗りかごには空中投影表示部を設けない構成とすることも可能となる。この場合、乗りかご内の限られたスペースを削減することなく、また、乗りかごの改造などを必要とせずに、空中投影表示を実現することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係るエレベータ表示システムでは、前記空中投影表示部は、前記乗場領域における三方枠に設けられていてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、乗場領域における三方枠に空中投影表示部が設けられるので、空中投影表示部を大型化させることなく、乗降時などに利用者が視認しやすい乗降口領域内の上部近傍や側面近傍などに空中投影画像を表示することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、乗降口領域内に、乗場領域の利用者のみに視認される情報、および、乗りかご内の利用者のみに視認される情報を、視界を必要以上に遮ることなく表示可能なエレベータ表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態1に係るエレベータ表示システムが表示する空中投影画像の一例を示す図である。
【
図2】上記エレベータ表示システムを含むエレベータシステムの機能ブロック図である。
【
図3】上記エレベータ表示システムの第1表示部の一例を示す平面図である。
【
図5】上記第1表示部の第1空中投影画像の視野角を説明する図である。
【
図6】上記エレベータ表示システムの第2表示部の一例を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係るエレベータ表示システムの一例を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の実施形態3に係るエレベータ表示システムの一例を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の実施形態4に係るエレベータ表示システムの一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係るエレベータ表示システム1の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。なお、図面には、x軸、y軸およびz軸の互いに直交する座標系を適宜に記載した。この座標系において、乗りかご21の幅方向をx軸方向とし、x軸方向と直交する乗りかご21の高さをy軸方向とし、x軸方向およびy軸方向と直交する乗りかご21の奥行方向をz軸方向とする。また、y軸方向プラス側を上方向、マイナス側を下方向とする。
【0025】
<エレベータ表示システムの概要>
まず、本発明の実施形態1に係るエレベータ表示システム1の概要について説明する。本発明の実施形態1に係るエレベータ表示システム1は、エレベータ20を利用する利用者に向けて空中投影画像Gを空中に表示するシステムである。
【0026】
図1は、本発明の実施形態1に係るエレベータ表示システム1が表示する空中投影画像Gの一例を示す図であり、乗場領域40から乗りかご21を見た場合の空中投影画像Gの一例を示す。本実施形態に係るエレベータ表示システム1では、
図1に示すように、乗りかごの乗降時に必ず通る乗降口領域R1内に空中投影画像Gとしてメッセージ等を表示する。これにより、乗降時などに利用者がメッセージ等を視認しやすくすることができる。
【0027】
また、空中投影画像Gを乗場領域40内の利用者のみに示したい場合や、空中投影画像Gを乗りかご内の利用者に示したい場合がある。そこで、エレベータ表示システム1は、空中投影画像Gを視認できる領域(空中投影画像の視野角)を利用することで、(1)乗りかご21内の利用者のみが視認できる空中投影画像G、および(2)乗場領域40内の利用者のみが視認できる空中投影画像Gを、それぞれ表示できるように創意工夫したものである。
【0028】
<エレベータシステム>
図2は、本発明の実施形態1に係るエレベータ表示システム1を含むエレベータシステム100の機能ブロック図である。
図3は、エレベータ表示システム1の第1表示部11の一例を示す平面図である。
図2に示すように、エレベータシステム100は、エレベータ表示システム1と、エレベータ20と、エレベータ制御装置30と、を備えている。
【0029】
<エレベータ>
図2および
図3に示すように、エレベータ20は乗りかご21を備え、乗りかご21はドア22(戸)を有している。また、
図3に示すように、エレベータ20は、停止階において乗場領域40を有している。乗場領域40は、乗りかご21に乗車する予定の利用者が待機する領域である。
【0030】
乗場領域40には、乗場領域40が位置する階に乗りかご21が停止した際に開閉されるドア41と、ドア41の三方枠42と、が備えられている。
図3では、乗場領域40が位置する階に乗りかご21が停止し、ドア22およびドア41が開放された状態を示している。
【0031】
エレベータ制御装置30は、エレベータ20を制御する。エレベータ制御装置30は制御部31を備えている。制御部31はエレベータ制御装置30の各部を統括的に制御する。制御部31の機能は、メモリ(図示無)に記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することで実現されてよい。制御部31は、エレベータ情報取得部32と、通信制御部33と、運行制御部34と、を備えている。
【0032】
エレベータ情報取得部32は、乗りかご21の運行情報を取得する。乗りかご21の運行情報は、乗りかご21の現在位置階情報、現在運転方向情報および停止予定階情報等を含む。
【0033】
通信制御部33は、エレベータ表示システム1とエレベータ制御装置30との通信を制御する。具体的には、通信制御部33は、乗りかご21の運行情報を、エレベータ表示システム1の情報取得部3に送信する。
【0034】
運行制御部34は、例えば、エレベータ20の利用者が乗場領域40で押下した乗りかご21の呼び釦および乗りかご21内で押下した降車希望階の階数に基づき、乗りかご21を当該利用者の乗車階から降車希望階まで運行させる。
【0035】
なお、図示にはないが、エレベータシステム100は、エレベータ20が複数備えられていてもよい。また、エレベータ制御装置30は複数のエレベータ20に対して個々に備えられていてもよく、複数のエレベータ20に対して全体を統括するエレベータ制御装置30が設置されていてもよい。
【0036】
<エレベータ表示システム>
エレベータ表示システム1は、乗場領域40内に存在する利用者である第1利用者U1および乗りかご21内に存在する利用者である第2利用者U2それぞれに向けた空中投影画像Gを、第1利用者U1および第2利用者U2それぞれのみが視認できるよう表示する。エレベータ表示システム1は、表示システム制御部2と、メモリ5と、空中投影表示部10と、を備えている。
【0037】
表示システム制御部2は、エレベータ表示システム1の各部を統括的に制御する。表示システム制御部2の機能は、メモリ5に記憶されたプログラムをCPUが実行することで実現されてよい。表示システム制御部2の詳細については後述する。
【0038】
メモリ5は、表示システム制御部2が実行する各種のプログラム、およびプログラムによって使用されるデータを格納する。また、メモリ5は、空中投影画像情報を格納する。空中投影画像情報について詳しくは後述する。
【0039】
(表示システム制御部)
表示システム制御部2は、情報取得部3と、表示制御部4と、を備えている。情報取得部3は、エレベータ制御装置30から乗りかご21の運行情報を取得する。
【0040】
表示制御部4は、空中投影表示部10における表示を制御する。具体的には、表示制御部4は、情報取得部3が取得した乗りかご21の運行情報に基づき、メモリ5に格納されている空中投影画像情報を参照し、空中投影画像G(第1空中投影画像G1および第2空中投影画像G2)を表示する制御を行う。第1空中投影画像G1および第2空中投影画像G2について、詳しくは後述する。
【0041】
(空中投影表示部)
空中投影表示部10は、第1表示部11と、第2表示部12と、の少なくともいずれか一方を備えている。第1表示部11および第2表示部12は、それぞれ複数設けられていてもよい。
【0042】
(第1表示部)
図2および
図3に基づき第1表示部11について説明する。第1表示部11は、エレベータ20の乗場領域40内に存在する第1利用者U1の視野範囲であって、エレベータ20の乗りかご21の乗降口領域R1内となる視野範囲S1に、視野角θ1が乗場領域40内である第1空中投影画像G1(空中投影画像)を表示する。
【0043】
第1表示部11は、光の反射を利用して画像(映像)を空中に表示する。第1表示部11は、元画像表示装置111と、光学素子112と、を備えている。
【0044】
元画像表示装置111は表示面111aを有し、第1空中投影画像G1として表示したい画像を表示面111aに表示する。表示制御部4は、元画像表示装置111の表示面111aの表示を制御することで、第1空中投影画像G1の表示を制御する。
【0045】
元画像表示装置111は、画像または映像を表示面111aに表示できるものであれば特に限定されず、例えば、液晶ディスプレイを用いることができる。元画像表示装置111は、乗りかご21において乗降口Pの側方に設けられているリターンパネル23内に、表示面111aを乗降口領域R1に向けて設置されている。
【0046】
ここでリターンパネル23は、乗りかご21の幅方向(x軸方向)と略平行な板状の部材と、乗りかご21の奥行方向(z軸方向)と略平行な板状の部材で形成され、乗りかご21において乗降口Pのx軸方向における乗りかご21の角部T1を囲う。リターンパネル23の乗りかご21の幅方向と略平行な面には、例えば、乗りかご21が現在位置する階を表示する現在階表示部や、押下することで乗りかご21の停止階を指定する停止階押し釦等が設けられている。押下された停止階押し釦の階数はエレベータ制御装置30に送信され、エレベータ制御装置30から停止予定階情報として表示システム制御部2に送信される。
【0047】
リターンパネル23は、乗りかご12の床面から天井面まで延伸している。これにより、リターンパネル23内には空間が形成されている。リターンパネル23は、乗りかご21の乗降口Pの両側に配置されている。元画像表示装置111は、乗りかご21の乗降口Pの両側に設けられている各々のリターンパネル23内に設置されている。
【0048】
光学素子112は、元画像表示装置111が表示している画像と同じ画像を空中に結像し、第1空中投影画像G1を空中に表示する。
図4は、第1表示部11の構造を説明する図である。
図4に示すように、光学素子112は、光学素子112内に元画像表示装置111から放たれる光を、特殊な構造の透光部材を通過させることで、光学素子112の元画像表示装置111とは反対側の所定の空間位置に集光させ、元画像表示装置111が表示している画像と同じ画像を所定の空間位置に結像させる。言い換えると、第1表示部11は、元画像表示装置111の各位置から出射された光を、光学素子112を介して、それぞれ対応する空間位置に集光させることによって乗場領域40内の空中に第1空中投影画像G1を表示する表示装置である。これにより、第1表示部11は、例えばミストなどのような、空中表示を実現するための媒体を空間に散布することなく、第1空中投影画像G1を空中に表示することができる。
【0049】
光学素子112は、乗りかご21の奥行方向(z軸方向)に沿って設置されているリターンパネル23の鉛直面23aの開口部(図示無)に設置されている。
【0050】
元画像表示装置111は光学素子112(鉛直面23a)に対して斜めに配置され、光学素子112と元画像表示装置111の表示面111aとの成す角θ3は、例えば、0°より大きく90°以下である。これにより、第1空中投影画像G1を乗降口領域R1内に表示することができる。θ3を90°以下とすることで、第1表示部11をリターンパネル23内に設置することができる。光学素子112の材質は特に限定されず、例えば、ガラスまたは樹脂であってもよい。
【0051】
このように、第1表示部11が乗りかご21に設けられていることで、各階の乗場領域40には空中投影表示部10を設けない構成とすることも可能となる。この場合、乗りかご21にのみ空中投影表示部10を設ければよいので、設置コストを低減することができる。また、第1表示部11をリターンパネル23内に設けることで、空中投影表示部10を設けるための空間を乗りかご21に別途設ける必要がなく、乗りかご21内の空間を狭めることなく空中投影表示を実現することができる。
【0052】
(第1空中投影画像)
図5は、第1表示部11の第1空中投影画像G1の視野角θ1を説明する図である。
図5に示すように、第1空中投影画像G1は視野角θ1を有する。すなわち、第1空中投影画像G1は視野角θ1の範囲でのみ視認可能となる。視野角θ1は例えば30°~60°程度である。光学素子112の大きさ、角度、元画像表示装置111から光学素子112までの距離等を調整することで、第1空中投影画像G1の大きさ、視野角θ1、光学素子112の面と第1空中投影画像G1の視野角中心との角度θ2を変更することができる。
【0053】
第1空中投影画像G1の大きさは特に限定されず、例えば、乗降口Pの上端から下端としてもよい(
図1参照)。これにより、表示が大きくなるので、乗降口Pから離れた第1利用者U1も視認しやすくなる。また、第1空中投影画像G1は、目の高さ付近のみに表示されてもよい。これにより、小さい画像であっても第1利用者U1が乗降の際に確実に第1空中投影画像G1を視認することができる。
【0054】
第1表示部11により表示される第1空中投影画像G1の視野角θ1は、乗場領域40内である。これにより、第1空中投影画像G1は、乗場領域40内に存在する第1利用者U1のみが視認でき、乗りかご21内に存在する第2利用者U2は視認することができない。そのため、第1利用者U1のみに示した情報を第2利用者U2が見てしてしまうことにより生じる誤認識を防ぐことができる。
【0055】
また、第1空中投影画像G1は、エレベータ20の乗場領域40内に存在する第1利用者U1の視野範囲であって、エレベータ20の乗りかご21の乗降口領域R1内となる視野範囲S1に表示される。これにより、第1空中投影画像G1は、乗降口領域R1内に表示されるので、乗車時などに第1利用者U1が視認しやすくなる。
【0056】
さらに、乗降口領域R1には第1空中投影画像G1以外の領域には視界を妨げるような障害物は存在しないので、第1利用者U1は乗降口領域R1内の背後の状況を十分に視認することが可能となる。
【0057】
なお、第1表示部11の構成は上記に限らない。例えば、第1表示部11は、さらにビームスプリッターを備えていてもよい。この場合、第1表示部11は、元画像表示装置111の各位置から出射された光を、ビームスプリッターおよび光学素子112を介して、それぞれ対応する空間位置に集光させることによって乗場領域40内の空中に第1空中投影画像G1を表示する。後述する第2表示部12においても同様である。
【0058】
(第1表示部の設置個所)
上述では第1表示部11がリターンパネル23内に設置される構成について記載したが、第1表示部11の設置個所はリターンパネル23内に限らない。第1表示部11は、乗場領域40における乗降口Pの両側に位置する三方枠42(
図3参照)内に設けられていてもよい。
【0059】
ここで三方枠42は、ドア41を収容し、ドア41の開閉を補助するものであり、乗場領域40において、乗降口Pの両側の辺および上辺に沿って形成される枠である。三方枠42は、側部三方枠421と、上部三方枠422と、を有する(
図1参照)。側部三方枠421は、略直方体であり、乗りかご21の乗降口Pの両側の外側に位置し、上記両側の辺に沿って延伸している。上部三方枠422は、略直方体であり、乗降口Pの上辺の外側に位置し、上記上辺に沿って延伸する。側部三方枠421の上部は上部三方枠422によりつながれている。
【0060】
第1表示部11が、乗降口Pの両側に位置する三方枠42(側部三方枠421)に設けられていることにより、ドア41が閉鎖していても、第1表示部11は第1利用者U1に向けて第1空中投影画像G1を表示することができる。
【0061】
また、第1表示部11を乗場領域40に設置することで、乗りかご21には空中投影表示部10を設けない構成とすることも可能となる。この場合、乗りかご21内の限られたスペースを削減することなく、乗りかご21の改造などを必要とせずに、空中投影表示を実現することができる。
【0062】
さらに、乗場領域40における側部三方枠421に空中投影表示部10が設けられるので、空中投影表示部10を大型化させることなく、乗降時などに乗りかご20の利用者が視認しやすい乗降口領域R1内の側面近傍に空中投影画像Gを表示することが可能となる。
【0063】
また、第1表示部11は例えばリターンパネル23内および側部三方枠421内の両方にあってもよい。これにより、第1利用者U1に表示できる情報量を増やすことができる。
【0064】
さらに、乗りかご21が片側に開くドアを有する場合等、リターンパネル23が乗降口Pの片側にしかない場合、第1表示部11は、乗りかご21の側壁26の内部に設置されていてもよい。
【0065】
(第1空中投影画像の表示例)
上述したように、表示制御部4は、情報取得部3が取得した乗りかご21の運行情報に基づき、メモリ5に格納されている空中投影画像情報を参照し、空中投影画像情報を第1空中投影画像G1として空中に表示する。空中投影画像情報は、例えば、空中投影画像G(第1空中投影画像G1および第2空中投影画像G2)として表示する文字、イラストを含む情報である。
【0066】
第1空中投影画像G1として表示する情報は、予め設定されていてもよく、表示制御部4により適宜選択されて表示されるものであってもよい。第1空中投影画像G1として適切な表示を行うことで、例えば、スムーズな乗車を促すことができる。以下、第1空中投影画像G1の表示例について説明する。
【0067】
例えば、乗りかご21が乗場領域40を有する階以外を運行中の場合、情報取得部3が取得した乗りかご21の運行情報により、表示制御部4は、乗りかご21の行先予定階または進行方向を第1空中投影画像G1として表示してもよい。その場合、表示制御部4は、行先予定階の表示として、行先予定階を数字で表示し、進行方向の表示として、上下の矢印または「上(下)に参ります」等の文字を表示してもよい。
【0068】
また、乗りかご21が乗場領域40を有する階に停止する場合、表示制御部4は、戸開閉注意の喚起または乗車注意の喚起に関する情報を第1空中投影画像G1として表示してもよい。その場合、表示制御部4は、戸開閉注意の喚起の表示として、「閉まる(開く)ドアにご注意ください」等の文字や注意を促すイラスト等、または「あと○○秒で扉が閉まります」等の文字を表示してもよい。また、表示制御部4は、乗車注意の喚起の表示として、「足元にご注意ください」(戸開状態であり、乗場領域40の床面と乗りかご21の床面に段差がある場合)、「奥に詰めてお乗りください」等の文字、または立ち位置を示すイラスト等を表示してもよい。
【0069】
また、情報取得部3が乗りかご21の運行情報として乗場領域40を有する階の降車客の有無を取得し、降車客の有無に関する情報を表示してもよい。その場合、表示制御部4は、降車客の有無の表示として、「降りる方をお通しください」(降車客がいる場合)等の文字を表示してもよい。
【0070】
さらに、情報取得部3が乗りかご21の運行情報として乗りかご21の乗車人数を取得し、表示制御部4が当該運行情報に基づいて混雑具合または乗車可能人数を算出し、かご内情報として算出結果を第1空中投影画像G1として表示してもよい。具体的には、混雑具合の表示として、「混雑しています」等の文字または混雑具合を示すイラスト等を表示し、乗車可能人数の表示として、「あと○○人乗車できます」、「次のエレベータをお待ちください」等の文字を表示してもよい。
【0071】
(第2表示部)
図6はエレベータ表示システム1の第2表示部12の一例を示す平面図である。
図2および
図6に基づき第2表示部12について説明する。
【0072】
第2表示部12は、エレベータ20の乗りかご21内に存在する第2利用者U2の視野範囲であって、乗りかご21の乗降口領域R1内となる視野範囲S2に、視野角θ4が乗りかご21内である第2空中投影画像G2(空中投影画像)を表示する。
【0073】
第2表示部12は、第1表示部11と同様の構成を有し、光の反射を利用して画像(映像を含む)を空中に表示する。第2表示部12は、元画像表示装置121と、光学素子122と、を備え、それぞれ第1表示部11の元画像表示装置111と、光学素子112に対応する機能を有する。
【0074】
元画像表示装置121は表示面121aを有し、第2空中投影画像G2として表示したい画像を表示面121aに表示する。表示制御部4は、元画像表示装置121の表示面121aの表示を制御することで、第2空中投影画像G2の表示を制御する。
【0075】
元画像表示装置121は、乗場領域40における側部三方枠421内に、表示面121aを乗降口領域R1に向けて設置されている。元画像表示装置121は、乗降口Pの両側に設けられている側部三方枠421の各々に設置されている。
【0076】
光学素子122は、元画像表示装置121が表示している画像と同じ画像を空中に結像し、第2空中投影画像G2を空中に表示する。光学素子122は、光学素子122内に元画像表示装置121から放たれる光を、特殊な構造の透光部材を通過させることで、光学素子122の元画像表示装置121とは反対側の所定の空間位置に集光させ、元画像表示装置121が表示している画像と同じ画像を所定の空間位置に結像させる。言い換えると、第2表示部12は、元画像表示装置121の各位置から出射された光を、それぞれ対応する空間位置に集光させることによって乗場領域40内の空中に第2空中投影画像G2を表示する表示装置である。
【0077】
光学素子122は、側部三方枠421内において、乗りかご21の奥行方向(z軸方向)に沿って設置されている鉛直面421aの開口部(図示無)に設置されている。
【0078】
元画像表示装置121は光学素子122(鉛直面421a)に対して斜めに配置され、光学素子122と元画像表示装置121の表示面121aとの成す角θ5は、例えば、0°より大きく90°以下である。これにより、第2空中投影画像G2を乗降口領域R1内に表示することができる。
【0079】
このように、第2表示部12が側部三方枠421に設けられていることで、第1表示部11が側部三方枠421に設けられている場合と同様の効果を奏することができる。
【0080】
(第2空中投影画像)
第2空中投影画像G2は視野角θ4を有する。すなわち、第2空中投影画像G2は視野角θ4の範囲でのみ視認可能となる。視野角θ4は例えば30°~60°程度である。光学素子122の大きさ、角度、元画像表示装置121からの光学素子122までの距離等を調整することで、第2空中投影画像G2の大きさ等を変更することができる。
【0081】
第2空中投影画像G2の大きさは特に限定されず、例えば、乗降口Pの上端から下端としてもよい(
図1参照)。これにより、表示が大きくなるので、乗降口Pから離れた第2利用者U2も視認しやすくなる。また、第2空中投影画像G2は、目の高さ付近のみに表示されてもよい。これにより、小さい画像であっても第2利用者U2が乗降の際に確実に第2空中投影画像G2を視認することができる。
【0082】
第2表示部12により表示される第2空中投影画像G2の視野角θ4は、乗りかご21内である。これにより、第2空中投影画像G2は、乗りかご21内に存在する第2利用者U2のみが視認でき、乗場領域40内に存在する第1利用者U1は視認することができない。そのため、第2利用者U2のみに示した情報を第1利用者U1が見てしてしまうことにより生じる誤認識を防ぐことができる。
【0083】
また、第2空中投影画像G2は、エレベータ20の乗りかご21に存在する第2利用者U2の視野範囲であって、エレベータ20の乗場領域40の乗降口領域R1内となる視野範囲S2に表示される。これにより、第2空中投影画像G2は、乗降口領域R1内に表示されるので、乗車時などに第2利用者U2が視認しやすくなる。
【0084】
さらに、乗降口領域R1には第2空中投影画像G2以外の領域には視界を妨げるような障害物は存在しないので、第2利用者U2は乗降口領域R1内の背後の状況を十分に視認することが可能となる。
【0085】
(第2表示部の設置個所)
上述では第2表示部12が側部三方枠421内に設置される構成について記載したが、第2表示部12の設置個所は側部三方枠421内に限らない。第2表示部12は、乗りかご21においてリターンパネル23(
図3参照)内に設けられていてもよい。
【0086】
これにより、ドア22が閉鎖していても、第2表示部12は第2利用者U2に向けて第2空中投影画像G2を表示することができる。また、第1表示部11がリターンパネル23内に設けられている場合と同様の効果を奏することができる。
【0087】
また、第2表示部12は例えばリターンパネル23内および三方枠42内の両方にあってもよい。これにより、第2利用者U2に表示できる情報量を増やすことができる。
【0088】
さらに、第1表示部11および第2表示部12は、乗降口Pの両側にそれぞれ設ける必要はなく、例えば、リターンパネル23の一方側に第1表示部11、他方側に第2表示部12を設けてもよく、側部三方枠421の一方側に第1表示部11、他方側に第2表示部12を設けてもよい。これにより、設置コストおよび設置領域を削減することができる。
【0089】
(第2空中投影画像G2の表示例)
上述したように、表示制御部4は、情報取得部3が取得した乗りかご21の運行情報に基づき、メモリ5に格納されている空中投影画像情報を参照し、空中投影画像情報を第2空中投影画像G2として空中に表示する。第2空中投影画像G2として表示する情報は、予め設定されていてもよく、表示制御部4により適宜選択されて表示されるものであってもよい。第2空中投影画像G2として適切な表示を行うことで、例えばスムーズな降車を促すことができる。以下、第2空中投影画像G2の表示例について説明する。
【0090】
例えば、情報取得部3が取得した乗りかご21の運行情報により、表示制御部4は、行先予定階または進行方向を第2空中投影画像G2として表示してもよい。その場合、表示制御部4は、行先予定階の表示として、「次は○○階に停まります」等の文字または行先予定階の数字を表示してもよい。また、表示制御部4は、進行方向の表示として、上下の矢印または「上(下)に参ります」等の文字を表示してもよい。
【0091】
また、乗りかご21が停止する場合、表示制御部4は、戸開閉注意の喚起、降車注意の喚起、または、停止階に関する情報を第2空中投影画像G2として表示してもよい。その場合、表示制御部4は、戸開閉注意の喚起の表示として、「閉まる(開く)ドアにご注意ください」等の文字や注意を促すイラスト等、または「あと○○秒で扉が閉まります」等の文字を表示してもよい。また、表示制御部4は、降車注意の喚起の表示として、「足元にご注意ください」(戸開状態であり、乗場領域40の床面と乗りかご21の床面に段差がある場合)等の文字を表示してもよい。
【0092】
また、表示制御部4は、第2空中投影画像G2として「○○階です」、「レディスフロアです」(商業施設)等の文字、地図や矢印指示、または、トイレの方向などをピクトグラムにより停止階の情報を表示してもよい。
【0093】
さらに、情報取得部3が乗りかご21の運行情報として乗りかご21が停止する階における乗車客の有無を取得し、乗車客の有無に関する情報を第2空中投影画像G2として表示してもよい。その場合、表示制御部4は、乗車客の有無の表示として、「乗車する人がいます」、「車いすで乗車する人がいます」(乗場領域40で車いす用の釦が押下された場合)または「奥に詰めてください」等の文字を表示してもよい。
【0094】
(効果)
上述したように、本実施形態に係るエレベータ表示システム1は、空中投影表示部10と、空中投影表示部10における表示を制御する表示制御部4と、を備えている。空中投影表示部10は、第1表示部11および第2表示部12の少なくともいずれか一方を備えている。第1表示部11は、エレベータ20の乗場領域40内に存在する第1利用者U1の視野範囲であって、エレベータ20の乗りかご21の乗降口領域R1内となる視野範囲に、視野角θ1が乗降口領域R1内である第1空中投影画像G1を表示する。第2表示部12は、エレベータ20の乗りかご21内に存在する第2利用者U2の視野範囲であって、乗りかご21の乗降口領域R1内となる視野範囲に、視野角θ4が乗りかご21内である第2空中投影画像G2を表示する。
【0095】
これにより、第1表示部11によって表示される第1空中投影画像G1は、乗場領域40内に存在する第1利用者U1から見て、乗りかご21の乗降口領域R1内に表示される一方、乗りかご21内の第2利用者U2からは視認することができない。よって、乗場領域40内に存在する第1利用者U1に対してのみに、該第1利用者U1から見て乗降口領域R1内に所望の画像を提示することが可能となる。
【0096】
同様に、第2表示部12によって表示される第2空中投影画像G2は、乗りかご21内に存在する第2利用者U2から見て、乗りかご21の乗降口領域R1内に表示される一方、乗場領域40内の第1利用者U1からは視認することができない。よって、乗りかご21内に存在する第2利用者U2に対してのみに、該第2利用者U2から見て乗降口領域R1内に所望の画像を提示することが可能となる。そのため、例えば、第1空中投影画像G1と第2空中投影画像G2とで異なる表示をしても、表示の対象者となる利用者のみが視認できるので、表示の対象者ではない利用者が視認してしまうことにより生じる誤認識を防ぐことができる。
【0097】
また、例えば乗降時などに利用者(第1利用者U1および第2利用者U2)が視認しやすい乗降口領域R1内に空中投影画像G(第1空中投影画像G1および第2空中投影画像G2)を表示することが可能となる。さらに、空中投影画像G以外の領域には視界を妨げるような障害物は存在しないので、空中投影画像Gを視認できる利用者は、乗降口領域R1内の背後の状況を十分に視認することが可能となる。また、空中投影画像Gは表示の対象者のみが視認できるので、表示の対象者ではない利用者の視界の邪魔になることを抑制することができる。
【0098】
その結果、乗降口領域R1内に、乗場領域40の第1利用者U1のみに視認される情報、および、乗りかご21内の第2利用者U2のみに視認される情報を、視界を必要以上に遮ることなく表示可能なエレベータ表示システムを提供することができる。
【0099】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るエレベータ表示システム1Aを含むエレベータシステム101について、
図7に基づき以下に説明する。
図7は、本発明の実施形態2に係るエレベータ表示システム1Aの一例を示す縦断面図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0100】
エレベータシステム101は、エレベータ表示システム1に替えてエレベータ表示システム1Aを備えている。エレベータ表示システム1Aはエレベータ表示システム1と比較して、第1表示部11が乗りかご21内の天井24の内部に設置されていることが異なり、その他の構成は同じである。これにより、乗降口領域R1内の上部近傍への第1空中投影画像G1を表示することができる。
【0101】
図7に示すように、エレベータ表示システム1Aにおいて、第1表示部11は、乗りかご21内の天井24の内部に設置されている。
【0102】
第1表示部11の元画像表示装置111は、表示面111aを乗りかご21内に向けて天井24内に設置されている。元画像表示装置111は天井24に対して斜めに配置され、表示面111aと天井24との成す角度θ6は、例えば0°より大きく90°以下である。第1表示部11の光学素子112は、天井24の開口部(図示無)に設置されている。元画像表示装置111および光学素子112の設置角度は、第1空中投影画像G1を乗降口領域R1内に表示するように調整され、天井24は光学素子112の傾きにあわせて傾斜している。
【0103】
また、エレベータ表示システム1Aでは、乗りかご21内の天井24の内部に複数の第1表示部11が設置され、複数の第1表示部11は、それぞれ異なる視野角を有する第1空中投影画像G1を表示してもよい。複数の第1表示部11は、元画像表示装置111や光学素子112の設置角度を調整することで、それぞれ異なる視野角を有する第1空中投影画像G1を表示する。
【0104】
例えば、乗りかご21内の天井24の内部に2つの第1表示部11が設置され、(A)一方の第1表示部11は、視野角が乗場領域40における乗降口領域R1近傍を含み、乗降口領域R1から離れた領域を含まない第1空中投影画像G1を表示し、(B)他方の第1表示部11は、視野角が乗場領域40における乗降口領域R1近傍を含まず、乗降口領域R1から離れた領域を含む第1空中投影画像G1を表示してもよい。この場合、例えば、上記(A)の第1空中投影画像G1には「ドア開閉注意」と表示し、上記(B)第1空中投影画像G1には、混雑具合に関する表示を行ってもよい。
【0105】
これにより、例えば、乗場領域40において乗降口領域R1の近傍に位置する第1利用者U1と、乗降口領域R1から離れた領域に位置する第1利用者U1に対して異なる情報を視認させることができる。
【0106】
第1表示部11は、乗りかご21の天井24内ではなく、乗場領域40の天井内または上部三方枠422に設置されていてもよい。これにより、ドア41が閉鎖していても第1利用者U1に向けて乗降口領域R1内の上部近傍へ第1空中投影画像G1を表示することができる。なお、天井24内に設置される第1表示部11の各部材の大きさは
図7に限らず、適宜変更することができ、他の実施形態においても同様である。
【0107】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係るエレベータ表示システム1Bを含むエレベータシステム102について、
図8に基づき以下に説明する。
図8は、本発明の実施形態3に係るエレベータ表示システム1Bの一例を示す縦断面図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0108】
エレベータシステム102は、エレベータ表示システム1に替えてエレベータ表示システム1Bを備えている。エレベータ表示システム1Bはエレベータ表示システム1と比較して、第2表示部12が乗場領域40の上部三方枠422の内部に設置されていることが異なり、その他の構成は同じである。これにより、乗降口領域R1内の上部近傍への第2空中投影画像G2を表示することができる。
【0109】
図8に示すように、エレベータ表示システム1Bにおいて、第2表示部12は、乗場領域40における上部三方枠422に設けられている。第2表示部12の元画像表示装置121は、上部三方枠422の内部において、表示面121aを光学素子122側に向けて設置されている。第2表示部12の光学素子122は、上部三方枠422の底面42aの開口部(図示無)に設置されている。
【0110】
元画像表示装置121は光学素子122に対して斜めに配置され、光学素子122と元画像表示装置121の表示面121aとの成す角θ8は、例えば、0°より大きく90°以下である。これにより、第2空中投影画像G2を乗降口領域R1内の上部近傍に表示することができる。
【0111】
第2表示部12は、第2利用者U2が、乗降口領域R1内の上部に第2空中投影画像G2を視認することができるような位置に配置される。
【0112】
また、第2表示部12は、上部三方枠422内だけでなく、乗りかご21の乗降口Pの上方に設けられるトランサム25内に設置されていてもよい。これにより、ドア41が閉鎖していても第2利用者U2に向けて乗降口領域R1内の上部近傍へ第2空中投影画像G2を表示することができる。
【0113】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係るエレベータ表示システム1Cを含むエレベータシステム103について、
図9に基づき以下に説明する。
図9は、本発明の実施形態4に係るエレベータ表示システム1Cの一例を示す縦断面図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0114】
エレベータシステム103は、エレベータ表示システム1に替えてエレベータ表示システム1Cを備えている。エレベータ表示システム1Cはエレベータ表示システム1と比較して、第1表示部11が乗りかご21内の床面211の内部に設置されていることが異なり、その他の構成は同じである。これにより、乗降口領域R1内の下部近傍への第1空中投影画像G1を表示することができる。
【0115】
図9に示すように、エレベータ表示システム1Cにおいて、第1表示部11は、乗りかご21内の床面211内部に設置されている。より詳しくは、第1表示部11は複数の元画像表示装置111を有し、元画像表示装置111は床面211の内部において、表示面111aを乗りかご21内に向けて設置されている。元画像表示装置111は床面211に対して斜めに配置され、表示面111aと床面211との成す角度θ9は、例えば0°より大きく90°以下である。第1表示部11の光学素子112は、床面211の開口部(図示無)に設置されている。複数の元画像表示装置111に対して1つの光学素子112が設置されていてもよく、1つの元画像表示装置111に対して1つの光学素子112が設置されていてもよい。なお、床面211の内部に設置される第1表示部11は複数に限らず、1つであってもよい。
【0116】
複数の元画像表示装置111を乗りかご21の床面211全体に配置することで、乗降口領域R1内の下部近傍だけでなく、乗りかご21の床面211の所望の箇所に、所望の第1空中投影画像G1を表示することができ、例えば、第1利用者U1の乗車位置等を的確に示すことができる。
【0117】
また、第1表示部11は、乗りかご21の床面211の内部だけでなく、乗場領域40の床面401の内部に設置されていてもよい。これにより、ドア41が閉鎖していても乗降口領域R1内の下部近傍への第1空中投影画像G1を表示することができる。
【0118】
また、第2表示部12が乗場領域40の床面401の内部に設置されていてもよい。これにより、乗降口領域R1内の下部近傍への第2空中投影画像G2を表示することができる。さらに、第2表示部12が乗りかご21内の床面211の内部に設置されていてもよい。これにより、ドア41が閉鎖していても乗降口領域R1内の下部近傍への第2空中投影画像G2を表示することができる。
【0119】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
1、1A、1B、1C エレベータ表示システム
4 表示制御部
10 空中投影表示部
11 第1表示部
12 第2表示部
20 エレベータ
21 乗りかご
23 リターンパネル
24 天井
25 トランサム
26 側壁
40 乗場領域
42 三方枠
111、121 元画像表示装置
112、122 光学素子
211、401 床面
G 空中投影画像
G1 第1空中投影画像(空中投影画像)
G2 第2空中投影画像(空中投影画像)
R1 乗降口領域
S1、S2 視野範囲
U1 第1利用者
U2 第2利用者
θ1、θ4 視野角
【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)エレベータの乗場領域内に存在する第1利用者の視野範囲であって、前記エレベータの乗りかごの乗降口領域内となる視野範囲に、視野角が前記乗場領域内である空中投影画像を表示する第1表示部、および、(2)前記エレベータの前記乗りかご内に存在する第2利用者の視野範囲であって、前記乗りかごの前記乗降口領域内となる視野範囲に、視野角が前記乗りかご内である空中投影画像を表示する第2表示部、の少なくともいずれか一方を備える空中投影表示部と、
前記空中投影表示部における表示を制御する表示制御部と、を備え、
前記空中投影画像は戸開状態で前記乗降口領域内に表示され、
前記第1表示部が表示する空中投影画像の視野角は、前記第1利用者から見て前記乗りかごの前記乗降口領域内に表示される一方、前記第2利用者からは視認することができないように設定され、
前記第2表示部が表示する空中投影画像の視野角は前記第2利用者から見て前記乗りかごの前記乗降口領域内に表示される一方、前記乗場領域内の前記第1利用者からは視認することができないように設定される、
エレベータ表示システム。
【請求項2】
前記第1表示部および前記第2表示部は、元画像表示装置の各位置から出射された光を、それぞれ対応する空間位置に集光させることによって前記空中投影画像を表示する表示装置である、請求項1に記載のエレベータ表示システム。
【請求項3】
前記空中投影表示部は、前記乗りかごに設けられている、請求項1または2に記載のエレベータ表示システム。
【請求項4】
前記空中投影表示部は、前記乗りかごにおいて、前記乗りかごの乗降口の側方に設けられるリターンパネル内および前記乗降口の上方に設けられるトランサム内の少なくともいずれかに設けられている、請求項3に記載のエレベータ表示システム。
【請求項5】
前記空中投影表示部は、前記乗りかご内の天井、側壁、および床面の少なくともいずれかの内部に設けられている、請求項3に記載のエレベータ表示システム。
【請求項6】
前記空中投影表示部は、前記乗場領域に設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載のエレベータ表示システム。
【請求項7】
前記空中投影表示部は、前記乗場領域における三方枠に設けられている、請求項6に記載のエレベータ表示システム。