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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117853
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20230817BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
F24C3/12 E
F24C3/12 R
H05B6/12 305
H05B6/12 312
H05B6/12 313
H05B6/12 334
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020638
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】水野 達彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
(72)【発明者】
【氏名】土橋 洋樹
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA55
3K151BA65
3K151CA24
3K151CA56
3K151CA61
3K151CA72
(57)【要約】
【課題】撮影部の設置時にマーカ情報に基づいて天板の位置を検出する場合に、その検出精度を高めるのに有利となり、しかもマーカを設定する上で天板のデザイン性を損ねたり、マーカ形状やマーカ位置においてデザイン面での制約が発生したりすることもない加熱調理器を提供する。
【解決手段】上方に載置された被調理物Fを加熱するコンロバーナ15a~15cを有する天板9と、天板9の外周縁部に配置される複数のマーカ13a~13dと、天板9から離れた位置に設置され、天板9を撮影するカメラ29と、カメラ29によって撮影された画像に含まれるマーカ13a~13dに関するマーカ情報を抽出するマーカ情報抽出部39と、マーカ情報に基づいてカメラ29の設置状態を判断するカメラ設置状態判断部33とを備える。マーカ13a~13dは、天板9に対して取り外し可能に設置されたマーカ表示部材130a~130dに一体的に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に載置された被調理物を加熱する加熱部を有する天板と、
前記天板の外周縁部に配置される複数のマーカと、
前記天板から離れた位置に設置され、前記天板を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像に含まれる前記マーカに関するマーカ情報を抽出するマーカ情報抽出部と、
前記マーカ情報に基づいて前記撮影部の設置状態を判断する撮影部設置状態判断部とを備え、
前記マーカは、前記天板に対して取り外し可能に設置されたマーカ表示部材に一体的に設けられていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記撮影部設置状態判断部は、前記マーカ情報に基づいて、所定の設定数の前記マーカがそれぞれ所定の設定位置に配置されているか否かを判断する請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記天板に設置された前記マーカを前記天板に対して垂直方向から見た前記マーカの平面形状が所定の正規形状から変形した変形形状であり、
設置状態が正常な前記撮影部によって撮影された画像に含まれる前記マーカ情報におけるマーカ形状が前記正規形状又は略正規形状である請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記天板に取り付けられた前記マーカ表示部材の上面は前記天板に対して傾斜する傾斜上面とされ、
前記マーカは前記正規形状として前記傾斜上面に表されている請求項3記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記天板に取り付けられた前記マーカ表示部材の上面は前記天板に対して平行な平行上面とされ、
前記マーカは前記変形形状として前記平行上面に表され、
前記正規形状が正円で、前記変形形状が楕円である請求項3記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の加熱調理器の一例が開示されている。この加熱調理器は、天板と、マーカと、撮影部と、マーカ情報抽出部と、撮影部設置状態判断部とを備えている。
【0003】
天板は、上方に載置された被調理物を加熱する加熱部を有する。天板の上面には複数のマーカが設けられている。撮影部は、天板から離れた位置に設置され、天板を撮影する。マーカ情報抽出部は、撮影部によって撮影された画像に含まれるマーカ情報を抽出する。撮影部設置状態判断部は、マーカ情報が規定の状態で画像の規定の範囲内に含まれていない場合に、撮影部の設置状態が異常であると判断する。
【0004】
この加熱調理器は、撮影部によって天板を撮影して、被調理物の調理状況を監視する。また、この加熱調理器は、撮影部の設置時や被調理物の調理中に、撮影部の設置状態が異常であるか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-192355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、撮影部の設置時には、天板に対する位置と撮影方向が正しくなるように撮影部を設置する必要があり、そのためにはマーカ情報に基づいて天板の位置を正確に検出する必要がある。この点、マーカ情報における複数のマーカ位置からそれらを検出する場合、各マーカ同士の間隔が広い方がその検出精度を高めるのに有利となる。
【0007】
しかし、上記従来の加熱調理器では、3つのリング状のマーカが加熱部としての3つの加熱コイル内にそれぞれ配置されているので、各マーカ同士の間隔が比較的狭くなっている。このため、このマーカ情報からは、天板の位置を正確に検出し難い。
【0008】
また、上記従来の加熱調理器では、3つのリング状のマーカが天板上に印刷されている。天板上にマーカを印刷する場合、天板のデザイン性を損ねるおそれがあり、また、マーカ形状やマーカ位置においてデザイン面での制約が発生する。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、撮影部の設置時にマーカ情報に基づいて天板の位置を検出する場合に、その検出精度を高めるのに有利となり、しかもマーカを設定する上で天板のデザイン性を損ねたり、マーカ形状やマーカ位置においてデザイン面での制約が発生したりすることもない加熱調理器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加熱調理器は、上方に載置された被調理物を加熱する加熱部を有する天板と、
前記天板の外周縁部に配置される複数のマーカと、
前記天板から離れた位置に設置され、前記天板を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像に含まれる前記マーカに関するマーカ情報を抽出するマーカ情報抽出部と、
前記マーカ情報に基づいて前記撮影部の設置状態を判断する撮影部設置状態判断部とを備え、
前記マーカは、前記天板に対して取り外し可能に設置されたマーカ表示部材に一体的に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の加熱調理器では、各マーカが天板の外周縁部に配置されているので、天板の中央領域等に各マーカが配置される場合と比較して、各マーカ同士の間隔が広い。このため、撮影部設置状態判断部がマーカ情報から例えば天板の位置を検出する場合に、その検出精度を高めるのに有利となる。
【0012】
また、マーカは、天板に対して取り外し可能に設置されたマーカ表示部材に一体的に設けられている。このため、マーカの不要時には、マーカ表示部材とともにマーカを天板から取り外すことができる。よって、マーカが天板のデザイン性を損ねたり、マーカ形状やマーカ位置においてデザイン面での制約が発生したりすることもない。
【0013】
したがって、本発明の加熱調理器では、撮影部の設置時にマーカ情報に基づいて天板の位置を検出する場合に、その検出精度を高めるのに有利となり、しかもマーカを設定する上で天板のデザイン性を損ねたり、マーカ形状やマーカ位置においてデザイン面での制約が発生したりすることもない。
【0014】
撮影部設置状態判断部は、マーカ情報に基づいて、所定の設定数のマーカがそれぞれ所定の設定位置に配置されているか否かを判断することが好ましい。
【0015】
撮影部設置状態判断部は、例えばマーカ情報におけるマーカ数が所定の設定数に一致し、かつ、マーカ情報における各マーカ位置がそれぞれ所定の設定位置に一致すれば、天板に所定の設定数のマーカがそれぞれ所定の設定位置に配置されていると判断する。この場合、撮影部設置状態判断部は、撮影部の設置状態が正常であると判断し得る。
【0016】
一方、撮影部設置状態判断部は、所定の設定数のマーカが所定の設定位置に配置されてはいないと判断した場合は、マーカ異常設置状態であるか、あるいは撮影部異常設置状態であると判断し得る。
【0017】
天板に配置されたマーカを天板に対して垂直方向から見たマーカの平面形状が所定の正規形状から変形した変形形状であり、設置状態が正常な撮影部によって撮影された画像に含まれるマーカ情報におけるマーカ形状が正規形状又は略正規形状であることが好ましい。
【0018】
この場合、マーカ情報におけるマーカ形状が正規形状又は略正規形状であるため、マーカ形状が変形形状である場合と比べて、画像解析が容易となり、解析時間の短縮化に有利となる。
【0019】
天板に取り付けられたマーカ表示部材の上面は天板に対して傾斜する傾斜上面とされ、マーカは傾斜上面に表されていることが好ましい。
【0020】
この場合、マーカは正規形状又は略正規形状で傾斜上面に表せばよいので、マーカ表示が容易となる。
【0021】
天板に取り付けられたマーカ表示部材の上面は天板に対して平行な平行上面とされ、マーカは変形形状として平行上面に表され、正規形状が正円で、変形形状が楕円であることが好ましい。
【0022】
この場合、正円又は略正円を画像解析すればよいので、その解析が容易となり、解析時間の短縮化に有利となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の加熱調理器では、撮影部の設置時にマーカ情報に基づいて天板の位置を検出する場合に、その検出精度を高めるのに有利となり、しかもマーカを設定する上で天板のデザイン性を損ねたり、マーカ形状やマーカ位置においてデザイン面での制約が発生したりすることもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施例1の加熱調理器の斜視図である。
図2図2は、実施例1の加熱調理器の一部を模式的に示す側面図である。
図3図3は、実施例1の加熱調理器のブロック構成図である。
図4図4は、実施例1の加熱調理器に係り、天板を真上から撮影した画像の模式図である。
図5図5は、実施例1の加熱調理器に係り、各マーカの平面形状を説明する平面図である。
図6図6は、実施例1の加熱調理器に係り、正常設置状態のカメラで天板の後方から撮影した画像の模式図である。
図7図7は、実施例1の加熱調理器に係り、カメラ位置等の補正処理を示すフローチャートである。
図8図8は、実施例1の加熱調理器に係り、カメラ位置等の補正処理の初期設定開始時における報知部の画面表示である。
図9図9は、実施例1の加熱調理器に係り、マーカ異常設置状態の一例を示す撮影画像の模式図である。
図10図10は、実施例1の加熱調理器に係り、マーカ異常設置状態であることを報知する異常報知の一例を示す画面表示である。
図11図11は、実施例1の加熱調理器に係り、カメラ異常設置状態の一例を示す撮影画像の模式図である。
図12図12は、実施例1の加熱調理器に係り、カメラ異常設置状態であることを報知する異常報知の他の例を示す画面表示である。
図13図13は、実施例2の加熱調理器の一部を模式的に示す側面図である。
図14図14は、実施例2の加熱調理器に係り、手前側のマーカ及びマーカ表示部材を天板の真上から撮影した画像の模式図である。
図15図15は、実施例2の加熱調理器に係り、奥側のマーカ及びマーカ表示部材を天板の真上から撮影した画像の模式図である。
図16図16は、実施例2の加熱調理器に係り、手前側又は奥側のマーカ及びマーカ表示部材を正常設置状態のカメラで天板の後方から撮影した画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施例1及び実施例2を図面を参照しつつ説明する。
【0026】
(実施例1)
実施例1の加熱調理器1は、図1に示すように、キッチンの壁3に沿う調理台5に一体的に組み込まれたビルトイン型のガスコンロである。
【0027】
本実施例では、加熱調理器1に対向して立って加熱調理器1を利用しようとするユーザ側を加熱調理器1の手前側又は前側と規定し、壁3側を加熱調理器1の奥側又は後側と規定する。加熱調理器1の左右は、加熱調理器1を利用しようとするユーザが加熱調理器1に向かった場合の左を加熱調理器1の左と規定する。
【0028】
加熱調理器1は、コンロ本体7と、天板9と、カメラモジュール11と、4個のマーカ13a~13dとを備えている。
【0029】
加熱調理器1は、いわゆる3口コンロである。天板9はコンロ本体7の上面を覆う。天板9には、3個のコンロバーナ15a、15b、15cが二等辺三角形の各頂点の位置に配置されている。すなわち、天板9の前側の左位置にコンロバーナ15aが配置され、天板9の前側の右位置にコンロバーナ15bが配置され、天板9の後側の中央位置にコンロバーナ15cが配置されている。コンロバーナ15cは、天板9の左右方向の幅の中心に位置している。これらのコンロバーナ15a~15cは、燃料ガスの燃焼により、上方に載置された被調理物Fを加熱する加熱部である。
【0030】
コンロ本体7の内部にはグリル17が設けられ、コンロ本体7の前面には、各コンロバーナ15a~15c及びグリル17の火力等を操作するための操作部19が設けられている。
【0031】
天板9の前側中央位置には、液晶表示装置よりなる報知部21が設けられている。報知部21は、後述する第1制御装置23の第1通信制御部27からの信号を受信して、後述する第2制御装置31のカメラ設置状態判断部33の判断結果等の情報を表示する。
【0032】
天板9の外周縁部には、4つのマーカ表示部材130a、130b、130c、130dが配置されている。各マーカ表示部材130a~130dは、天板9の4隅にそれぞれ配置されている。すなわち、天板9の前端の左端にマーカ表示部材130aが配置され、天板9の前端の右端にマーカ表示部材130bが配置され、天板9の後端の左端にマーカ表示部材130cが配置され、天板9の後端の右端にマーカ表示部材130dが配置されている。
【0033】
天板9の上面には、天板9の外周端縁を囲む枠部9aが立設されている。各マーカ表示部材130a~130dは、枠部9aの交差する2辺の内側に当接することで位置決めされつつ天板9上に載置されている。すなわち、各マーカ表示部材130a~130dは、天板9に対して取り外し可能に設置されている。
【0034】
各マーカ表示部材130a~130dは、外形状が矩形状をなし、一定厚さを有する板状の樹脂成形体よりなる。すなわち、各マーカ表示部材130a~130dにおいては、天板9に載置された状態で、マーカ表示部材130a~130dの上面は天板9に対して平行な平行上面131a~131dとされている。そして、この平行上面131a~131dにマーカ13a~13dがそれぞれ印刷表示されている。
【0035】
図4及び図5に示すように、マーカ13a~13dの楕円形は、正規形状としての正円からの変形形状である。すなわち、天板9に設置された各マーカ表示部材130a~130dを天板9に対して垂直方向の真上から見た各マーカ13a~13dの平面形状は、正規形状としての正円からそれぞれが所定量変形した変形形状としての楕円形をなしている。このため、天板9を真上から撮影した画像の模式図を図4に示すように、この画像に含まれるマーカ情報としての各マーカ13a~13dは、正規形状としての正円から所定量変形した変形形状としての楕円形をなしている。
【0036】
天板9の前端に配置されたマーカ13a及び13bの楕円形と、天板9の後端に配置されたマーカ13c及び13dの楕円形とは、正円からの変形量が異なる。マーカ13c及び13dの楕円形の方が、マーカ13a及び13bの楕円形よりも、長軸の長さが長く正円からの変形量が大きい。また、マーカ13a及び13bの楕円形における長軸の天板9の前端の長辺に対する傾き角度θ1は45度であり、マーカ13c及び13dの楕円形における長軸の天板9の前端の長辺に対する傾き角度θ2は30度とされている。
【0037】
そして、正常設置状態にある後述するカメラ29で天板9の後方から撮影した画像の模式図を図6に示すように、設置状態が正常なカメラ29によって撮影された画像に含まれるマーカ情報としての各マーカ13a~13dは、正規形状としての正円又は略正規形状としての略正円をなしている。
【0038】
図3に示すように、コンロ本体7の内部には第1制御装置23が設けられている。第1制御装置23は、コンロ制御部25及び第1通信制御部27を有している。第1通信制御部27は、後述する第2制御装置31の第2通信制御部35とBluetooth(登録商標)等の無線通信により接続されており、第2通信制御部35からの信号を受信してその信号を報知部21等に送信する。コンロ制御部25は、操作部19や第1通信制御部27からの信号等に基づいて、コンロバーナ15a~15cの火力を調整する。
【0039】
図1及び図2に示すように、カメラモジュール11は、天板9から上方かつ後方に離れた位置の壁3に設置されている。カメラモジュール11は、天板9の左右方向の幅内に位置している。壁3には、カメラモジュール11より上方に、図示しないレンジフードが設置されている。カメラモジュール11は、このレンジフード内や天井に設けてもよい。
【0040】
カメラモジュール11は、図示しない取り付け部材により壁3に対する取付位置が微調整可能とされている。また、カメラモジュール11は、後述するカメラ29の撮影方向も微調整可能とされている。
【0041】
カメラモジュール11は、カメラ29及び第2制御装置31を有している。カメラ29は第2制御装置31に接続されている。カメラ29は、天板9の左右方向の幅の中心に位置している。カメラ29は撮影部に相当し、天板9の全体を撮影可能である。カメラ29としてはデジタル式のCCDカメラ等を採用することができる。カメラ29は、動画撮影可能なビデオカメラ等であってもよい。
【0042】
第2制御装置31は、カメラ設置状態判断部33と、第2通信制御部35とを有している。カメラ設置状態判断部33は、さらに画像処理部37及びマーカ情報抽出部39を有している。カメラ設置状態判断部33は、撮影部設置状態判断部に相当する。
【0043】
画像処理部37は、カメラ29が撮影した画像を取得し、グレースケール化、エッジ抽出及び二値化等により、取得した画像をエッジ処理する。
【0044】
マーカ情報抽出部39は、画像処理部37でエッジ処理された画像に含まれるマーカ情報を抽出する。具体的には、マーカ情報抽出部39は、エッジ処理画像に対してハフ変換を行ってマーカ候補を抽出し、マーカ抽出値が所定値Mv以上であれば、円の一致度が高いと判断でき、マーカとして確定する。
【0045】
カメラ設置状態判断部33は、マーカ情報抽出部39で得られたマーカ情報に基づいて、所定の設定数のマーカがそれぞれ所定の設定位置に配置されているか否かを判断する。これにより、カメラ設置状態判断部33は、各マーカ表示部材130a~130dの設置状態が異常であるか否かを判断するとともに、カメラ29の設置状態が異常であるか否かを判断する。
【0046】
すなわち、カメラ設置状態判断部33は、マーカ情報におけるマーカ数が所定の設定数に一致し、かつ、マーカ情報における各マーカ位置がそれぞれ所定の設定位置に一致すれば、天板9に所定の設定数のマーカがそれぞれ所定の設定位置に配置されていると判断する。この場合、カメラ設置状態判断部33は、マーカ13a~13d及びカメラ29の設置状態が正常であると判断する。
【0047】
一方、カメラ設置状態判断部33は、所定の設定数のマーカが所定の設定位置に配置されてはいないと判断した場合は、マーカ異常設置状態であるか、あるいはカメラ異常設置状態であると判断する。例えば、天板9上のマーカ数が足りない場合や、天板9上に所定の設定数のマーカはあるが、各マーカ相互の位置関係が所定の設定位置関係でない場合は、マーカ異常設置状態と判断される。また例えば、天板9上に所定の設定数のマーカがあり、かつ、各マーカ相互の位置関係が所定の設定位置関係であるが、各マーカがそれぞれ所定の設定位置に配置されてはいない場合、すなわち所定の設定数の各マーカが正常な位置関係にあり、その正常位置関係を保ちつつ全体的に傾いたり、上下又は左右方向等にずれたりしている場合は、カメラ29の撮影方向等がずれたカメラ異常設置状態と判断される。
【0048】
第2通信制御部35は、カメラ設置状態判断部33で判断された情報を含む信号を第1制御装置23の第1通信制御部27に送信する。
【0049】
上記のように構成された加熱調理器1をキッチンに最初に設置する場合、作業者は、コンロ本体7及び天板9を調理台5に組み付けるとともに、カメラモジュール11を壁3に仮設置する。このときカメラ29を正常に設置するためのカメラ位置等の補正処理の一例について、図7図12を参照して説明する。なお、カメラ位置等の補正処理は、加熱調理器1をキッチンに最初に設置する際の他、故障等によりカメラモジュール11を壁3に再設置する際に行われる。
【0050】
コンロ本体7又はカメラモジュール11に設けられた図示しない設定スイッチにより初期設定モードが開始されると、図8に示すように、第1制御装置23の第1通信制御部27からの信号により、報知部21に「天板の4隅にマーカを置いてください」と表示される。作業者は、これに従い、天板9の4隅にマーカ表示部材130a~130dを載置する。
【0051】
図7に示すように、初期設定モードが開始されると、カメラモジュール11のカメラ29が天板9を撮影する(ステップS1)。撮影された画像は、カメラ29から第2制御装置31のカメラ設置状態判断部33に送られる。カメラ設置状態判断部33では、画像処理部37が送られた画像を所定のエッジ処理し、エッジ処理した画像をマーカ情報抽出部39に送る。
【0052】
マーカ情報抽出部39は、エッジ処理された画像に含まれるマーカ候補を抽出する(ステップS2)。すなわち、画像からマーカ抽出値が大きい順にマーカ候補を抽出する。そして、マーカ抽出値が所定値Mv以上であるか否かを判断する。マーカ抽出値が所定値Mv以上である場合は、そのマーカ候補がマーカとして確定される。このマーカ確定の処理が繰り返され、マーカ確定個数が所定の設定数Mnに一致するか否かが判断される(ステップS3)。
【0053】
例えば、撮影画像の模式図を図9に示すように、天板9の後端の左端にマーカ表示部材130cが設置されておらず、撮影画像中に本来あるべきマーカ13cがない場合は、ステップS3でマーカ確定個数が3個と判断され、マーカ不足と判断される。また例えば、ステップS3でマーカ確定個数が5個と判断された場合は、例えばマーカとして誤認識されてしまう異物が天板9上に存在すると判断され得る。これらのマーカ異常設置状態の場合、第2通信制御部35及び第1通信制御部27を介して報知部21に異常報知1としての情報が送信される(ステップS4)。図10に示すように、報知部21では、異常報知1として「マーカを認識できませんでした。マーカを置き直してください。天板にマーカ以外を置かないでください。」と表示される。
【0054】
ステップS3で、マーカ確定個数が所定の設定数Mnに一致する場合は、マーカ位置が解析され(ステップS5)、マーカ位置が正しいか否かが判断される(ステップS6)。なお、マーカ位置は、例えば隣り合うマーカ同士を結ぶ線の傾きをそれぞれ調べることで判断することができる。
【0055】
例えば、ステップ3で確定された4個のマーカの全てが所定の設定位置にあれば、マーカ正常設置状態で、かつカメラ正常設置状態と判断され、この場合、カメラ設置状態判断部33は、カメラ29の設置状態が正常であると判断し、初期設定モードが終了する。
【0056】
一方、例えば、天板9が傾いた撮影画像の模式図を図11に示すように、所定の設定数である4個のマーカ13a~13dであるが、各マーカのいずれかが所定の設定位置に配置されてはいない場合は、マーカ正常設置状態で、かつカメラ異常設置状態と判断され得る。
【0057】
この場合、第2通信制御部35及び第1通信制御部27を介して報知部21に異常報知2としての情報が送信される(ステップS7)。図12に示すように、報知部21では、異常報知2として「カメラの傾きを検出しました。カメラを設置し直してください。」と表示される。そして、カメラ設置状態判断部33は、カメラ29の設置状態が異常であると判断し、初期設定モードが異常終了する。
【0058】
この加熱調理器1では、各マーカ13a~13dが天板9の外周縁部に配置されているので、天板9の中央領域等に各マーカ13a~13dが配置される場合と比較して、各マーカ13a~13d同士の間隔が広い。このため、カメラ設置状態判断部33がマーカ情報から例えば天板9の位置を検出する場合に、その検出精度を高めるのに有利となる。
【0059】
また、天板9の外周縁部に各マーカ13a~13dが配置されているので、マーカによく似た形状の異物がマーカの近くに存在する可能性が低い。このため、マーカの誤認識を防ぐのに有利となる。
【0060】
また、マーカ13a~13dは、天板9に対して取り外し可能に設置されたマーカ表示部材130a~130dと一体的に設けられている。このため、マーカ13a~13dの不要時には、マーカ表示部材130a~130dとともにマーカ13a~13dを天板9から取り外すことができる。よって、マーカ13a~13dが天板9のデザイン性を損ねたり、マーカ形状やマーカ位置においてデザイン面での制約が発生したりすることもない。
【0061】
したがって、この加熱調理器1では、カメラモジュール11の設置時にマーカ情報に基づいて天板9の位置を検出する場合に、その検出精度を高めるのに有利となり、しかもマーカ13a~13dを設定する上で天板9のデザイン性を損ねたり、マーカ形状やマーカ位置においてデザイン面での制約が発生したりすることもない。
【0062】
特に、この加熱調理器1では、設置状態が正常なカメラ29によって撮影された画像に含まれるマーカ情報におけるマーカ形状が正規形状としての正円となるように、マーカ13a~13dの形状が正円からそれぞれ所定量変形した楕円形とされている。このため、撮影画像から抽出されるマーカ情報におけるマーカ13a~13dの形状が正円又は略正円となるので、その画像解析が容易となり、解析時間の短縮化が可能になる。
【0063】
(実施例2)
実施例2の加熱調理器1では、マーカ13a~13d及びマーカ表示部材130a~130dの構成が変更されている。
【0064】
天板9の手前側に設置されるマーカ表示部材130a及び130bを天板9の真上から撮影した画像の模式図を図14に示し、天板9の奥側に設置されるマーカ表示部材130c及び130dを天板9の真上から撮影した画像の模式図を図15に示す。また、マーカ表示部材130a~130dを正常設置状態のカメラ29で天板9の後方から撮影した画像の模式図を図16に示す。
【0065】
図13図14及び図16に示すように、天板9の前端の左端に設置されるマーカ表示部材130aの上面は傾斜上面132aとされており、この傾斜上面132aに正規形状としての正円のマーカ13aが印刷表示されている。マーカ表示部材130aの傾斜上面132aにおける傾斜方向及び傾斜角度は、設置状態が正常なカメラ29によって撮影された画像に含まれるマーカ情報におけるマーカ13aの形状が正円又は略正円となるように設定されている。すなわち、傾斜上面132aに対する法線上にカメラ29が位置する。
【0066】
同様に、天板9の前端の右端に設置されるマーカ表示部材130bの上面は傾斜上面132bとされており、この傾斜上面132bに正規形状としての正円のマーカ13bが印刷表示されている。マーカ表示部材130bの傾斜上面132bにおける傾斜方向及び傾斜角度は、設置状態が正常なカメラ29によって撮影された画像に含まれるマーカ情報におけるマーカ13bの形状が正円又は略正円となるように設定されている。すなわち、傾斜上面132bに対する法線上にカメラ29が位置する。
【0067】
図14に示すように、天板9に設置されたマーカ表示部材130a又は130bを真上から見ると、そのマーカ13a又は13bの形状は正円から大きな所定の変形量で変形した楕円形となる。図16に示すように、設置状態が正常なカメラ29によって撮影された画像に含まれるマーカ情報としての各マーカ13a又は13bは、正規形状としての正円又は略正規形状としての略正円となる。
【0068】
また、図13図15及び図16に示すように、天板9の後端の左端に設置されるマーカ表示部材130cの上面は傾斜上面132cとされており、この傾斜上面132cに正規形状としての正円のマーカ13cが印刷表示されている。マーカ表示部材130cの傾斜上面132cにおける傾斜方向及び傾斜角度は、設置状態が正常なカメラ29によって撮影された画像に含まれるマーカ情報におけるマーカ13cの形状が正円又は略正円となるように設定されている。すなわち、傾斜上面132cに対する法線上にカメラ29が位置する。
【0069】
同様に、天板9の後端の右端に設置されるマーカ表示部材130dの上面は傾斜上面132dとされており、この傾斜上面132dに正規形状としての正円のマーカ13dが印刷表示されている。マーカ表示部材130dの傾斜上面132dにおける傾斜方向及び傾斜角度は、設置状態が正常なカメラ29によって撮影された画像に含まれるマーカ情報におけるマーカ13dの形状が正円又は略正円となるように設定されている。すなわち、傾斜上面132dに対する法線上にカメラ29が位置する。
【0070】
図15に示すように、天板9に設置されたマーカ表示部材130c又は130dを真上から見ると、そのマーカ13c又は13dの形状は正円から小さな所定の変形量で変形した楕円形となる。図16に示すように、設置状態が正常なカメラ29によって撮影された画像に含まれるマーカ情報としての各マーカ13c又は13dは、正規形状としての正円又は略正規形状としての略正円となる。
【0071】
この加熱調理器1では、マーカ表示部材130a~130dの傾斜上面132a~132dに、正規形状としての正円のマーカ13a~13dを表示すればよいので、マーカ13a~13dの表示が容易となり、マーカ13a~13dを容易に形成することが可能になる。
【0072】
その他の構成及び作用効果は実施例1と同様である。
【0073】
以上において、本発明を実施例1及び2に即して説明したが、本発明は上記実施例1及び2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0074】
実施例1及び2では、4個のマーカ13a~13dを天板9の四隅に配置したが、本発明はこれに限定されない。例えば、4個のマーカ13a~13dを天板9の一方の長辺の両端でない2か所と他方の長辺の両端でない2か所とに配置したり、3個のマーカを一方の長辺の両端の2か所と他方の長辺の中央の1か所との3か所に配置したり、2個のマーカを一方の短辺の中央の1か所と他方の短辺の中央の1か所との2か所に配置したりしてもよい。
【0075】
実施例1及び2では、天板9の上面に立設された枠部9aの交差する2辺に各マーカ表示部材130a~130dを内接させることで、各マーカ表示部材130a~130dの位置決めを行っているが、本発明はこれに限定されない。例えば、各マーカ表示部材130a~130dの交差する2辺の側面から下向きに延びるL形の垂壁部を設け、その垂壁部を枠部9aの交差する2辺に外接させることで、各マーカ表示部材130a~130dの位置決めを行ってもよい。また、天板9から枠部9aを無くして、天板9の外周端部の上面を平坦状とし、各マーカ表示部材130aの下面に設けたL形の垂壁部を天板9の交差する2辺の側面に外接させることで、各マーカ表示部材130a~130dの位置決めを行ってもよい。
【0076】
実施例1及び2では、マーカ表示部材130a~130dにマーカ13a~13dを印刷により表示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、マーカ表示部材130a~130dの上面に凹凸形状を付与することでマーカ13a~13dを突出又は陥没させて、立体的な表示によりマーカ13a~13dを構成してもよい。
【0077】
実施例1及び2では、樹脂成形体によりマーカ表示部材130a~130dを構成したが、本発明はこれに限定されず、樹脂成形体の代わりにラベルシール等を採用してもよい。
【0078】
実施例1及び2では、各マーカ13a~13dをそれぞれマーカ表示部材130a~130dに表示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、帯板状等のマーカ表示部材のそれぞれの所定位置に印刷等により複数のマーカを表示してもよい。
【0079】
実施例1及び2では、マーカ13a~13dの正規形状として正円を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、星形や多角形が正規形状となるようにマーカ13a~13dを表示してもよい。また、形状の他に、文字、模様や色彩等によりマーカを表示してもよい。
【0080】
実施例1及び2では、報知部21として天板9の前側の中央位置に配置した液晶表示装置を採用したが、例えば、コンロ本体7の前面部に液晶表示装置等を設置してもよいし、あるいは加熱調理器が内蔵するスピーカ等を利用して音声出力により種々の情報を報知してもよい。また、無線通信を利用して、作業者が携帯するスマートフォンやタブレット型パソコン等の携帯端末機器に種々の情報を報知してもよい。
【0081】
実施例1及び2では、加熱部がコンロバーナ15a~15cであるガスコンロに本発明を適用したが、IHコンロ等の電気コンロに本発明を適用してもよい。この場合、例えば1枚のシート状のマーカ表示部材の所定位置に印刷等により複数のマーカを表示してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、例えば、住宅の台所や施設の厨房設備等に利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…加熱調理器
9…天板
11…カメラモジュール
13a~13d…マーカ
130a~130d…マーカ表示部材
131a~131d…平行上面
132a~132d…傾斜上面
15a~15c…コンロバーナ(加熱部)
29…カメラ(撮影部)
33…カメラ設置状態判断部(撮影部設置状態判断部)
39…マーカ情報抽出部
F…被調理物
図1
図2
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