(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117882
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】機能性日用品の判定方法及び機能性日用品
(51)【国際特許分類】
A41D 31/04 20190101AFI20230817BHJP
【FI】
A41D31/04 G
A41D31/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020678
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】593094327
【氏名又は名称】ナクシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 勤
(72)【発明者】
【氏名】和泉 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】田渕 周作
(57)【要約】
【課題】機能性日用品が有する機能の有効性を容易かつ迅速に判定することができるようにすること。
【解決手段】所定の機能を有する機能性日用品に対して、洗濯をした回数に応じて変化が生じる表示部1を設け、表示部1の変化を確認することで、機能性日用品が有する機能の有効性を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を有する機能性日用品に対して、洗濯をした回数に応じて変化が生じる表示部を設け、前記表示部の変化を確認することで、前記機能性日用品が有する機能の有効性を判定する
ことを特徴とする機能性日用品が有する機能の有効性を判定する方法。
【請求項2】
特殊インキを用いて前記機能性日用品に前記表示部を印刷する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬化剤を添加せずに顔料インキ及び希釈溶剤を混合して前記特殊インキを生成する
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、マット剤を混合して前記特殊インキを生成する
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記表示部は、予め設定された洗濯の回数に応じて色落ちする部分を有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記表示部は、前記機能性日用品に取り付けられるタグに対して設けられる
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
所定の機能を有する機能性日用品であって、洗濯をした回数に応じて変化が生じる表示部を備え、前記表示部の変化を確認することで、前記機能性日用品が有する機能の有効性を判定できるように構成されている
ことを特徴とする機能性日用品。
【請求項8】
前記表示部は、特殊インキを用いて前記機能性日用品に印刷されている
ことを特徴とする請求項7に記載の機能性日用品。
【請求項9】
前記特殊インキは、硬化剤を添加せずに顔料インキ及び希釈溶剤を混合して生成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の機能性日用品。
【請求項10】
前記特殊インキは、さらに、マット剤を混合して生成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の機能性日用品。
【請求項11】
前記表示部は、予め設定された洗濯の回数に応じて色落ちする部分を有する
ことを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の機能性日用品。
【請求項12】
前記表示部は、前記機能性日用品に取り付けられるタグに対して設けられる
ことを特徴とする請求項7~11のいずれかに記載の機能性日用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性日用品が有する機能の有効性を判定する方法及び機能性日用品に関する。
【背景技術】
【0002】
人が身に付けたり接触したりする衣類、マスク、帽子、寝具、寝装品、その他の日用品は、天然繊維、合成繊維、不織布、シート等で構成されており、汚れ等が付着することから、定期的に洗濯をして汚れ等を洗い落としている。
【0003】
近年、これら日用品において、所定の機能を有する機能性日用品が知られており、例えば、吸湿によって発熱する繊維で構成された発熱性衣類、抗菌剤を含有する繊維で構成された抗菌性衣類、遠赤外線放射セラミックス粉を含有する繊維で織成された保温性衣類等がある(特許文献1~3等参照)。
【0004】
一方で、機能性日用品を洗濯する度に、機能性日用品が有する機能の有効性が減少して、所定の回数だけ洗濯すると、その機能がなくなることが知られている。しかし、使用者は機能性日用品の機能がなくなっていることに気が付かないことが多く、また、製造者は使用者に買い替えるタイミングを知らせたいという要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-12833号公報
【特許文献2】特開2002-242044号公報
【特許文献3】実開平7-40706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、機能性日用品が有する機能の有効性を容易かつ迅速に判定することができる機能性日用品の判定方法及び機能性日用品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る機能性日用品が有する機能の有効性を判定する方法は、所定の機能を有する機能性日用品に対して、洗濯をした回数に応じて変化が生じる表示部を設け、表示部の変化を確認することで、機能性日用品が有する機能の有効性を判定する。
【0008】
好ましくは、特殊インキを用いて機能性日用品に表示部を印刷する。
【0009】
また、硬化剤を添加せずに顔料インキ及び希釈溶剤を混合して特殊インキを生成することが望ましい。
【0010】
さらに、マット剤を混合して特殊インキを生成してもよい。
【0011】
また、好ましくは、表示部は、予め設定された洗濯の回数に応じて色落ちする部分を有する。
【0012】
表示部は、機能性日用品に取り付けられるタグに対して設けられてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る機能性日用品は、所定の機能を有する機能性日用品であって、洗濯をした回数に応じて変化が生じる表示部を備え、表示部の変化を確認することで、機能性日用品が有する機能の有効性を判定することができるように構成されている。
【0014】
好ましくは、表示部は、特殊インキを用いて機能性日用品に印刷されている。
【0015】
また、特殊インキは、硬化剤を添加せずに顔料インキ及び希釈溶剤を混合して生成されていることが望ましい。
【0016】
特殊インキは、さらに、マット剤を混合して生成されていてもよい。
【0017】
また、好ましくは、表示部は、予め設定された洗濯の回数に応じて色落ちする部分を有する。
【0018】
表示部は、機能性日用品に取り付けられるタグに対して設けられてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る機能性日用品の有効性を判定する方法及び機能性日用品は、機能性日用品が有する機能の有効性を容易かつ迅速に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の表示部であって、(A)は下印刷部を示す図、(B)は上印刷部を示す図、(C)は表示部が変化する状態を示す図である。
【
図2】第2実施形態の表示部であって、(A)は表示部を示す図、(B)は表示部を拡大して示す図、(C)は表示部が変化する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明に係る機能性日用品が有する機能の有効性を判定する方法及び機能性日用品の実施形態を説明する。
【0022】
衣類、マスク、帽子、寝具、寝装品、その他の日用品であって、所定の機能を有する機能性日用品に対して、表示部を設ける。日用品とは、使用者が身に付けたり接触したりするものであって、汚れ等を落とすために定期的に洗濯するものである。そのため、日用品は、例えば、洗濯できる天然繊維、合成繊維、不織布、シート等で構成されている。
【0023】
また、機能性日用品とは、使用者に対して所定の機能を奏することが可能な日用品であって、例えば、吸湿によって発熱する繊維で構成された発熱性衣類、抗菌剤を含有する繊維で構成された抗菌性衣類、遠赤外線放射セラミックス粉を含有する繊維で織成された保温性衣類等である。
【0024】
表示部は、例えば、特殊インキを用いてパッド印刷によって機能性日用品に設けられる。表示部は、機能性日用品の生地に直接印刷してもよい。また、機能性日用品の生地に直接印刷すると、日用品の量産性が低下する場合があるので、衣類等に取り付けられてアイロン禁止等を示す取り扱い絵表示タグ、素材の種類を示す品質表示タグ、PL法に基づく注意書きを示すPLタグ等のタグに表示部を印刷することで、機能性日用品とタグとを別々に製造してもよい。即ち、表示部が印刷される被印刷体は、機能性日用品の生地や、機能性日用品のタグ等となる。
【0025】
特殊インキは、硬化剤が添加されていないインキ(アクリル、ウレタン、シリコン塗料等)で構成されている。特殊インキは、本実施形態では、2液混合型の印刷用インキにおいて、硬化剤を顔料インキに混合せずに顔料インキのみが用いられる。即ち、2液混合型の印刷用インキでは、通常、硬化が促進して顔料インキが被印刷体に強く定着するように、硬化剤を顔料インキに混合するが、特殊インキでは、顔料インキのみ用いることで、被印刷体に対する顔料インキの定着力を弱くしている。
【0026】
また、被印刷体に印刷しやすくしたり仕上がりを調整したりするために、特殊インキは、顔料インキに希釈溶剤(エーテル系溶剤等)が添加されている。
【0027】
一般的な印刷用インキでは硬化剤を混合していることから、顔料インキは被印刷体に強く定着して、複数回洗濯しても表示部は色落ち等の変化が生じないが、本実施形態の特殊インキでは硬化剤を混合しないので、所定の回数だけ洗濯すると、表示部は色落ち等の変化が生じるようになっている。
【0028】
また、被印刷体に対するインキの定着力を調整して、所定の回数の洗濯で表示部が色落ち等の変化を起こすために、特殊インキは、マット剤(白色マット剤:シリカ粒子、黒色マット剤:アクリル粒子等)を混合していてもよい。マット剤がインキと被印刷体との架橋反応を阻害する異物として作用するようにして、被印刷体に対するインキの定着力を調整することができる。
【0029】
本実施形態では、白色、黒色、灰色のそれぞれについて、印刷される被印刷体の種類や、機能性日用品によって設定される所定の洗濯回数等に応じて、5種類(No.1~No.5)の特殊インキが準備されている。即ち、洗濯によって機能性日用品が有する機能の有効性がなくなる洗濯回数が、機能性日用品ごとに予め設定されている。
【0030】
白色の特殊インキの場合、例えば、下記表1のとおり、顔料インキ、希釈溶剤、マット剤が配合されている。
【0031】
【0032】
黒色の特殊インキの場合、例えば、下記表2のとおり、顔料インキ、希釈溶剤、マット剤が配合されている。
【0033】
【0034】
灰色の特殊インキの場合、例えば、下記表3のとおり、顔料インキ、希釈溶剤、マット剤が配合されている。
【0035】
【0036】
[第1実施形態]
図1に基づいて、第1実施形態における表示部を説明する。
【0037】
先ず、
図1(A)に示すように、四角形の内側に模様部10(本実施形態では2本の矢印)が表示された形状からなる下印刷部1aを被印刷体に印刷する。模様部10は、その周囲をインキで印刷することで形成されており、模様部10自体には印刷されておらず、被印刷体で表示されている(所謂「白抜き」)。そして、下印刷部1aは、硬化剤が添加されている一般的な印刷用インキで形成されている。
【0038】
次に、
図1(B)に示すように、四角形の上印刷部1bを下印刷部1aの上に重ねて印刷する。なお、上印刷部1bは、少なくとも、下印刷部1aの模様部10に重なって、模様部10を隠すようになっている。そして、上印刷部1bは、硬化剤が添加されていない特殊インキで形成されている。
【0039】
これによって、
図1(C)に示すように、四角形に塗りつぶされた表示部1が形成される。表示部1は、下印刷部1aに上印刷部1bが重なって形成されているので、模様部10が塗りつぶされた四角形で形成されている。
【0040】
洗濯前においては、四角形に塗りつぶされた表示部1であるが、洗濯する度に、上印刷部1bが色落ちしていき、模様部10が表示されるようになる。そして、予め設定された所定回数だけ洗濯すると(例えば、30回洗濯すると機能性日用品が有する機能の有効性がなくなる場合、所定回数は30回)、模様部10が鮮明に表示されるので、使用者は、機能性日用品が有する機能の有効性がなくなったと判定することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図2に基づいて、第2実施形態における表示部を説明する。
【0042】
図2(A)に示すように、四角形のエリアに複数の点11で形成された第1エリア1cと、四角形のエリアに複数の点12で形成された第2エリア1dと、四角形のエリアに複数の点13で形成された第3エリア1eとからなる表示部1を被印刷体に印刷する。
【0043】
図2(B)に示すように、各点11,12,13は大きさが異なっており、点11の直径φ1、点12の直径φ2、点13の直径φ3の順に大きくなっている(φ1<φ2<φ3)。また、各点11,12,13の間隔も異なっており、点13の間隔L3、点12の間隔L2、点11の間隔L1の順に大きくなっている(L3<L2<L1)。
【0044】
そして、洗濯する度に、各点11,12,13が色落ちする。そのため、
図2(C)に示すように、洗濯すると、各点11,12,13の直径φが小さく間隔Lが大きい順に、先ず、第1エリア1cの点11が消えて、次に、第2エリア1dの点12が消えていき、予め設定された所定回数だけ洗濯すると、第3エリア1eの点13が薄くなるので、使用者は、機能性日用品が有する機能の有効性がなくなったと判定することができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されない。例えば、以下のように変更することもできる。
・顔料インキ、希釈溶剤、マット剤は、上記実施形態に例示された原料に限定されないことはいうまでもない。
・また、顔料インキ、希釈溶剤、マット剤は、上記実施形態に例示された配合率に限定されないことはいうまでもない。
・表示部1は、硬化剤が添加されていない特殊インキによって四角形に塗りつぶされたものであって、予め設定された所定回数だけ洗濯すると、表示部1の全体が色落ちするようになっていてもよい。
【0046】
本発明の効果について説明する。
【0047】
本発明では、所定の機能を有する機能性日用品に対して、洗濯をした回数に応じて変化が生じる表示部1を設け、表示部1の変化を確認することで、機能性日用品が有する機能の有効性を判定する。
【0048】
機能性日用品を洗濯する度に、機能性日用品の機能の有効性が減少して、所定の回数だけ洗濯すると、その機能がなくなってしてしまうが、本発明によって、洗濯をした回数に応じて表示部1が変化するので、表示部1の変化を確認することで、機能性日用品が有する機能の有効性を容易かつ迅速に判定することができる。それによって、使用者は機能性日用品の機能がなくなっていることに気が付くので、使用者に買い替えるタイミングを知らせることができる。
【0049】
好ましくは、特殊インキを用いて機能性日用品に表示部を印刷する。
【0050】
これによって、特殊インキを用いて機能性日用品に表示部1を印刷することで、機能性日用品の生地やタグ等に対して迅速かつ容易に設けることができる。
【0051】
また、硬化剤を添加せずに顔料インキ及び希釈溶剤を混合して特殊インキを生成することが望ましい。
【0052】
よって、一般的な印刷用インキでは硬化剤を混合していることから、顔料インキは被印刷体に強く定着して、通常の洗濯では表示部は色落ち等の変化が生じないが、本発明では、特殊インキは硬化剤が添加されていないので、所定の回数だけ洗濯すると、表示部は色落ち等の変化が生じるようにすることができる。これによって、使用者は機能性日用品の機能がなくなっていることに気が付くので、使用者に対して買い替えるタイミングを知らせることができる。
【0053】
さらに、マット剤を混合して特殊インキを生成してもよい。
【0054】
これによって、マット剤をインクと被印刷体との架橋反応を阻害する異物として作用させて、被印刷体に対するインキの定着力を調整することができる。
【0055】
また、好ましくは、表示部1は、予め設定された洗濯の回数に応じて色落ちする部分を有する。
【0056】
例えば、表示部1の色落ちする部分を目立つ模様等にすることで、模様の色落ちによって、使用者は機能性日用品の機能がなくなっていることにすぐに気が付くので、使用者に対して買い替えるタイミングを迅速に知らせることができる。
【0057】
表示部1は、機能性日用品に取り付けられるタグに対して設けられてもよい。
【0058】
従って、機能性日用品の生地に直接印刷すると、日用品の量産性が低下する場合があるので、機能性日用品に取り付けられるタグに表示部を印刷して、機能性日用品とタグとを別々に製造することで、日用品の量産性が低下しないようにすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 表示部