(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117919
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】制動支援装置
(51)【国際特許分類】
B61L 23/14 20060101AFI20230817BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20230817BHJP
B61B 1/02 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B61L23/14 Z
B61L23/00 Z
B61B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020741
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】松原 達也
【テーマコード(参考)】
3D101
5H161
【Fターム(参考)】
3D101AA05
3D101AA24
3D101AB15
3D101AB17
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB06
5H161CC04
5H161DD20
5H161DD22
5H161EE07
5H161FF07
5H161GG03
5H161GG13
5H161MM02
5H161MM05
5H161MM15
5H161NN10
5H161NN12
5H161PP01
5H161PP12
5H161QQ03
(57)【要約】
【課題】別途距離を測定する装置を必要とせず、保守が容易である制動支援装置を提供すること。
【解決手段】制動支援装置200は、駅のプラットホームであるホーム10側に1つ以上設けられ、走行中の列車20の位置を検出する支障物センサ43と、支障物センサ43で検知した列車20の位置から停止目標位置SPまでの距離及び列車20の移動速度を算出し、停止目標位置SPに応じた制動速度を判定する制動判定装置201と、制動判定装置201の判定結果を通知する通知装置202と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅のプラットホーム側に1つ以上設けられ、走行中の列車の位置を検出する支障物センサと、
前記支障物センサで検知した前記列車の位置から停止目標位置までの距離及び前記列車の移動速度を算出し、前記停止目標位置に応じた制動速度を判定する制動判定装置と、
前記制動判定装置の判定結果を通知する通知装置と、
を備える、制動支援装置。
【請求項2】
前記制動判定装置は、前記列車の移動距離と前記列車の移動時間とから前記移動速度を算出し、前記移動速度と前記停止目標位置までの距離とから制動のための適正速度を判定する、請求項1に記載の制動支援装置。
【請求項3】
前記支障物センサは、既定の位置に複数個配置されている、請求項1及び2のいずれか一項に記載の制動支援装置。
【請求項4】
前記制動判定装置は、前記移動距離を前記支障物センサ間の距離から算出し、前記移動時間を各支障物センサの検出時間から算出する、請求項3に記載の制動支援装置。
【請求項5】
前記支障物センサは、ホームドアの筐体の軌道側に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の制動支援装置。
【請求項6】
前記通知装置は、前記駅の前記列車の運転士に視認可能な位置に設けられた表示装置である、請求項1~5のいずれか一項に記載の制動支援装置。
【請求項7】
前記通知装置に無線通信を介して前記判定結果を送信する通信装置をさらに備え、
前記通知装置は、前記列車に設けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の制動支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定位置に停止させる際の列車の制動を支援する制動支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
列車の定位置停止支援装置として、車両の定位置停止を制御するために、定位置停止装置(TASC)を用いるものがある(特許文献1)。特許文献1の装置は、地上子や車上子が必要であるため、設備投資が高額となることや、保守が煩雑であること等が問題となる。
【0003】
また、列車定位置停止支援システムとして、列車の定位置停止位置の近傍に設置され、列車までの距離を測定する距離センサと、列車の車種識別を行う車種情報処理部と、距離センサ及び車種情報処理部で得られた情報を基に列車の運転状況を確認するデータ処理部と、データ処理部で得られた上記運転状況を表示する表示部とを備えるものがある(特許文献2)。特許文献2のシステムは、レール終端部の突き当りに距離センサを別途設けており、列車の停止位置までの距離を知らせるのみであり、列車の速度調整支援に直接寄与しない。
【0004】
また、列車の定位置停止支援装置として、型式判別部にて判別された車両の型式に基づいて、停車予定位置情報記憶部を参照することにより、当該車両の型式に対応する停車予定位置情報を読み出すとともに、この停車予定位置情報で示される停車予定位置近傍の前後所定範囲内に車両が位置するとき、車両の現在位置と停車予定位置情報で示される停車予定位置との相対的位置関係を示す情報を生成し、これを車両の運転士に視覚を介して伝達するものがある。(特許文献3)。特許文献3の装置は、現在位置が停止許容範囲内外のいずれに存在するかを伝達するのみであり、列車の速度調整支援に直接寄与しない。
【0005】
また、自動列車運行システムとして、駅の停止位置に対する列車の相対距離情報を取得して相対距離の平均値である平均距離情報を出力する相対距離測定装置と、ブレーキ制御装置とを備えるものがある(特許文献4)。当該システムでは、ブレーキ制御装置が列車の速度情報及び位置情報、並びに平均位置情報から演算した指令値補正量に基づき減速度指令値を演算し、この減速度指令値に対応するブレーキ指令位置を生成することで列車の自動ブレーキ制御を行っている。特許文献4のシステムでは、速度情報及び位置情報については列車側で取得しており、また演算処理が複雑となっている。
【0006】
また、列車停止位置算出システムとして、列車停止位置算出手段が、通信手段を使用して、信号発信手段に位置算出用信号を発信させてから信号検出手段で位置算出用信号が検出されるまでの遅延時間を計測するとともに、遅延時間に基づいて、信号発信手段及び信号検出手段間の距離を求めることでプラットホームの基準位置に対する列車の停止位置を算出するものがある(特許文献5)。特許文献5のシステムは、プラットホームと列車との間で信号検出を行っており、列車に別途距離検知のための装置として信号検出手段が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-061975号公報
【特許文献2】特開2015-105081号公報
【特許文献3】特開2015-229376号公報
【特許文献4】国際公開2016/035597号
【特許文献5】特開2007-276533号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、別途距離を測定する装置を必要とせず、保守が容易である制動支援装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る制動支援装置は、駅のプラットホーム側に1つ以上設けられ、走行中の列車の位置を検出する支障物センサと、支障物センサで検知した列車の位置から停止目標位置までの距離及び列車の移動速度を算出し、停止目標位置に応じた制動速度を判定する制動判定装置と、制動判定装置の判定結果を通知する通知装置と、を備える。ここで、支障物センサは、駅のプラットホームに設置された既存のセンサであり、列車の他に支障物を検知するものである。
【0010】
上記制動支援装置では、既存の支障物センサを利用することにより、別途距離センサを設置する必要がなく、また、列車の車両の改造が不要である。また、TASC装置の導入が不要であり、費用を抑えられ、かつ保守が容易である。
【0011】
本発明の具体的な側面では、上記制動支援装置において、制動判定装置は、列車の移動距離と列車の移動時間とから移動速度を算出し、移動速度と停止目標位置までの距離とから制動のための適正速度を判定する。この場合、列車の停止目標位置での停止を確実なものとすることができる。
【0012】
本発明の別の側面では、支障物センサは、既定の位置に複数個配置されている。この場合、検出値の選択や平均化のような信号処理によって、列車の移動速度を精度良く算出することができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、制動判定装置は、移動距離を支障物センサ間の距離から算出し、移動時間を各支障物センサの検出時間から算出する。この場合、既定の距離である支障物センサ間の距離を移動速度の算出に利用することにより、演算処理を簡単化することができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、支障物センサは、ホームドアの筐体の軌道側に設けられている。この場合、列車の検出を容易にすることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、通知装置は、駅の列車の運転士に視認可能な位置に設けられた表示装置である。この場合、駅に設置されている既存の表示器を利用することができる。また、例えば、ホームドアの筐体に直接設置するものとする場合、他の装置を介さずに判定結果を直接表示することができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、通知装置に無線通信を介して判定結果を送信する通信装置をさらに備え、通知装置は、列車に設けられる。この場合、判定結果を列車の運転士に直接知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】駅構内の1つのホームと当該ホームに入線した列車とを模式的に示し、管理システムの概要を説明する概念図である。
【
図2】(A)は、ホームと当該ホームに入線した列車とを模式的に示した平面図であり、(B)は、(A)の側面図である。
【
図3】支障物センサの検出領域を例示する概念図である。
【
図4】ホームに停止した列車の先頭車両における車上装置の内部構成を示すとともに、ホーム側における地上装置の内部構成を示す正面図である。
【
図5】制動支援装置及びその周辺の構成を説明するブロック図である。
【
図6】制動支援装置における列車の移動速度を算出するパラメータについて説明する図である。
【
図7】(A)は、停止目標位置から列車までの距離について説明する図であり、(B)は、列車の移動速度の算出について説明する図であり、(C)は、列車の残距離に対する適正速度のテーブルを示す図である。
【
図8】(A)~(C)は、通知装置の表示部における表示例を説明する図である。
【
図9】車両側ドア及びホーム側ドアを開放するまでの列車の制動支援の一例を説明するフローチャートである。
【
図10】第2実施形態の制動支援装置における列車の移動速度を算出するためのパラメータについて説明する図である。
【
図11】(A)は、第2実施形態での停止目標位置から列車までの距離について説明する図であり、(B)は、列車の移動速度の算出について説明する図である。
【
図12】第3実施形態の制動支援装置を組み込んだ管理システムを説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照して、本発明の第1実施形態に係る制動支援装置200を組み込んだ管理システム100の一例を説明する。
【0019】
管理システム100は、列車20や駅設備の状況を管理するためのものであり、列車20と、制動支援装置200と、ホームドア装置40と、信号機1と、表示装置3と、駅制御盤5と、管理者端末7とを含む。駅制御盤5によって、信号機1、表示装置3等の駅設備の動作が制御され、列車20やホームドア装置40の動作状態が監視される。駅制御盤5は、ネットワークNWを介して外部の中央制御装置300に接続されており、中央制御装置300によって動作状態の監視や管理が行われている。信号機1は、駅構内の出発線に設けられており、特定プラットホームであるホーム10を出発する列車20に対して、例えば停止、注意、進行等を現示する。表示装置3は、主に乗客を対象とする発車表のような表示器3aだけでなく、運転士や駅員に対して駅の状況等を含む各種情報を提供する表示器3b,3cを含む。なお、表示器3b,3cは、後述する制動支援装置200の通知装置202に対応する。管理者端末7は、ホームドア装置40、信号機1、及び表示装置3等を駅員等の管理者が監視及び制御するための端末である。駅構内のホーム10に入線した列車20は、ホーム10に沿って敷設された線路30上を図中A方向に進行し、最終的に定位置である停止目標位置SPに停止する。停止目標位置SPには、停止目標STが設置されている。
【0020】
実施形態の管理システム100は、ホームドア装置40及び列車20を統括的に動作させる。実施形態の制動支援装置200は、列車20と連携するシステムであり、ホームドア装置40及び表示装置3の一部も制動支援装置200として機能する。制動支援装置200は、ホーム10に進入する列車20が停止目標位置SPに停止する際の制動を支援するものである。
【0021】
制動支援装置200は、支障物センサ43と、制動判定装置201と、通知装置202と、通信装置203とを備える。詳細は後述するが、本実施形態では、制動支援装置200のうち支障物センサ43、制動判定装置201、及び通信装置203は、ホームドア装置40内に設けられている。また、通知装置202は、上述したホーム10の表示装置3の一部である表示器3b,3cに対応し、また、後述する
図4に示す列車20の表示装置4である制動支援表示器4dに対応する。以下、ホームドア装置40の基本構成について説明した後、制動支援装置200の詳細について説明する。
【0022】
図2(A)及び2(B)は、ホーム10とそのホーム10に入線した列車20とを模式的に示した平面図及び側面図であり、併せて、そのホーム10に設置されるホームドア装置40を示している。ホーム10上には、ホーム10の縁10aに沿ってホームドア装置40が設置されている。
【0023】
ホームドア装置40は、可動式ホーム柵とも呼ばれ、列車20やホーム10の全長に対応する所定台数のホームドア要素41によって構成されている。これらのホームドア要素41は、列車20に面して一列に並べられている。各ホームドア要素41は、ホーム10の床に固定されたドア筐体部41aと、当該ドア筐体部41a内に収容され出し入れ自在に設けられた開閉自在なホーム側ドア41bとからなっている。全体としてのホームドア装置40は、複数のホーム側ドア41bを有するものとなっている。
図2(A)等の例では、各ホームドア要素41において、ホーム側ドア41bがドア筐体部41aの端部開口部から出て当該ホーム側ドア41bが乗降通路を閉じた状態にあり、これにより全体としてホーム10の縁10aに沿って延びる一連のホーム柵が形成されている。
【0024】
複数台のホームドア要素41の各々のドア筐体部41aの内部には、ホーム側ドア41bの収容部(戸袋構造部)、ホーム側ドア41bの進出及び後退動作(開閉動作)を行うドア駆動部、ホーム側ドア41bの移動動作を検出するドア検出部、ドア駆動部の動作を制御する制御基板(主装置51とも呼ぶ。)等が内蔵されている。複数台のホームドア要素41の各々の開閉動作は、同時に行われ、例えば、ホーム10に停車した列車20を構成する各車両20tの車両側ドア20aの開閉動作と連動するようにして行われる。
【0025】
ホームドア装置40には、ホームドア装置40を構成するホームドア要素41(具体的には、主装置51)間を連絡するケーブル45が設けられている。ケーブル45は、ホームドア要素41の同期した開閉動作を可能にするものであり、制御線45aのほか、電力線等を含んでいる。ここで、制御線45aは、各ホームドア要素41に設けたホーム側ドア41bの動作に関連する制御信号CSを伝送する。制御線45aは、相互通信を可能にする回線であり、例えばデジタル多重通信を可能にする通信ネットワークによって構成されるものとすることができるが、上位の装置と下位の装置との間を直接的に接続する通信回線であってもよい。
【0026】
ホームドア装置40は、複数のホームドア要素41のうち、先頭側のホームドア要素41Aの端部筐体42中において、ホームドア側制御装置50と、制動判定装置201と、通信装置203とを有する。ここで、既述のように、制動判定装置201と通信装置203とは、制動支援装置200を構成するものである。
【0027】
ホームドア側制御装置50は、ホームドア装置40を構成する全ホームドア要素41の動作を管理する。ホームドア側制御装置50は、ホームドア要素41の動作に関連する各種制御を行うホーム側ドア制御部としての主装置51を含む。また、主装置51は、一組のホームドア要素41ごとに設けられており、先頭側のホームドア要素41Aの主装置51と連動して個々のホームドア要素41の動作が可能となっている。先頭側のホームドア要素41Aと、最後尾側のホームドア要素41Bを含む他のホームドア要素41とは、制御線45aを介して通信可能になっており、その他のホームドア要素41との間で距離画像データ等の計測データのやりとりが可能になっている。ホームドア側制御装置50は、ネットワークNWを介して中央制御装置300に接続されており、ホームドア装置40の動作に関連する情報を中央制御装置300から受信するとともに、ホームドア装置40の状態等に関する情報を中央制御装置300に送信する。
【0028】
ホームドア装置40の左端すなわち先頭側にある端部筐体42において、その線路側側壁面42wには、2つの列車定位置検知部61,62が設けられている。2つの列車定位置検知部61,62は、列車20の進行方向に対応するA方向に所定距離だけ位置をずらした場所に配置されている。2つの列車定位置検知部61,62の間に設定された所定距離の範囲は、列車20が停止した時に、最終的に列車20の先端部が到達する適正位置又は定位置の範囲を示している。詳細は後述するが、制動支援装置200による制動支援により、列車20の先頭車両の先端部が、2つの列車定位置検知部61,62の間の所定距離範囲内の定位置領域に到達するように、列車20の停止制御が行われる。
【0029】
列車定位置検知部61,62は例えば発光素子であり、対向する正面箇所には反射板161が設置されている。2つの列車定位置検知部61,62の各々において、出射した光L1,L2について、反射板161からの反射光を受ける場合には列車20が検知されない状態を意味し、反射光を受けない場合には列車20が検知された状態を意味する。
【0030】
ホームドア装置40の筐体であるドア筐体部41aにおいて、軌道である線路30側には、支障物センサ43が1つ以上設けられている。具体的には、支障物センサ43は、各ホームドア要素41において、ホーム側ドア41bを挟む一対のドア筐体部41aのうち、列車20の進行方向に対して奥側のドア筐体部41aに設けられている。
【0031】
支障物センサ43は、ホームドア装置40と列車20又は線路30との間に支障物が存在するか否かを検知する。また、支障物センサ43は、走行中の列車20の位置も検出する。このように、支障物センサ43は、駅のホーム10に設置された既存のセンサであり、本来の用途である支障物の検知とは別に、走行中の列車20の距離測定が可能となっている。つまり、支障物センサ43は、制動支援装置200に組み込まれるとともに、他の目的でも使用する兼用センサとなっている。
【0032】
図3に示すように、支障物センサ43は、MEMSスキャナを有するレーザ送受信用の光学系、測距計測部、及び制御部を備え、ホーム10又は線路30の判別領域AR内に進入してきた列車20その他の物体の立体形状を検出する。具体的には、支障物センサ43は、二次元スキャナ、レーザ投光部、レーザ受光部、測距計測部、及び制御部を備える。測距計測部は、対象物で反射されたレーザ光の受光タイミングを検出し、これとレーザ投光部での投光タイミングとから、投光から受光までの時間差を計測する。制御部には、測距計測部で得た投光から受光までの時間差から対象物までの距離Dtを算出する距離値算出回路が設けられている。また、制御部は、二次元スキャナの動作を監視しており、レーザ光の投光方向と関連づけて対象物までの距離Dtを決定する。具体的には、二次元スキャナにより走査した検出範囲に対応して走査角に対応する各画素における距離値を取得する。距離値を伴う画素は、支障物センサ43から対象物への方位情報を有しており、この方位情報は、レーザ光の投光方向に相当する。このようにしてして得たレーザ光の投光方向と対象物までの距離Dt(物体距離)とを含む距離画像データは、制御部に接続された外部機器(具体的には、主装置51又は制動判定装置201)に出力される。
【0033】
支障物センサ43は、1つおきのドア筐体部41aの既定の位置に1つずつ配置され、検出部であるレーザ受信用の光学系が線路30側に向くように設けられている。支障物センサ43は、既定の位置に複数個配置されることとなる。すなわち、隣接する支障物センサ43間の距離ΔLは一定又は既定となっている。支障物センサ43は、ホーム側ドア41bから線路30側に所定範囲を扇状に広がる検出領域DRを有する。支障物センサ43の検出領域DRが線路30、延いては判別領域ARを含むことにより、走行中の列車20までの測距が可能となっている。支障物センサ43の検出範囲は、例えば5m程度となっている。
【0034】
図2(A)等に示すように、列車20は、通常複数の車両20tを含み、先頭車両の前端、つまり第1端E1には、前運転台20fが設けられ、最後尾車両の後端、つまり第2端E2には、後運転台20rが設けられている。列車20の第1端E1又は前運転台20fは、第1車両側制御装置21を含み、列車20の第2端E2又は後運転台20rは、第2車両側制御装置22を含む。
【0035】
図4に示すように、ホームドア要素41Aに組み込まれたホームドア側制御装置50は、主装置51と車両定位置検知装置56とを有する。ホームドア要素41Aの主装置51は、既定の制御プログラムを実行するコンピュータであり、
図2(A)に示す中央制御装置300の管理下で動作し、ホームドア装置40全体の統括的な動作を可能にする。ホームドア要素41Aは、他のホームドア要素41と同様にホーム側ドア41bの開閉機構を有し、主装置51は、ホーム側ドア41bの開閉動作を行わせる制御基板を有する。また、主装置51は、他のホームドア要素41から支障物の検出情報を受信し、近接しつつある列車20の先端までの距離計測値を出力する。
【0036】
車両定位置検知装置56は、前述した2つの列車定位置検知部61,62が出力する検知信号を入力し2つの当該検知信号の組合せに基づいてホーム10に入線した列車20の停止位置の結果を判別する。車両定位置検知装置56と列車定位置検知部61,62とを合わせて、列車20の停止目標位置SPでの停止を検出する定位置停止検出装置156と呼ぶ。車両定位置検知装置56は、定位置停止の判別信号を主装置51に与える。主装置51は、車両定位置検知装置56又は定位置停止検出装置156から与えられる定位置停止の判別信号を、近距離無線通信機(不図示)を介して列車20の第1車両側制御装置21に設けた通信部(不図示)に送信する。
【0037】
通信装置203は、走行中の列車20に対して通信を可能にするものである。通信装置203は、アンテナ2aと通信回路2bと制御部2cとを有し、これらのうち、アンテナ2aと通信回路2bとによって、固定通信部2が構成される。固定通信部2は、中距離無線通信機である。アンテナ2aは、中距離無線アンテナであり、通信回路2bに接続されている。制御部2cは、アンテナ2aを介して中距離無線の電波による送受信を行うために、通信回路2bに対して送受信動作に係る信号又は指令の送受を行う。以上において、中距離無線は、例えばUHF帯無線等の相対的に広い領域での通信が可能なように設定している。なお、中距離無線としては、UHF帯無線以外に、HF帯無線、VHF帯無線、マイクロ波帯無線等を用いることができる。
【0038】
第1車両側制御装置21は、列車20の走行に関連する各種制御を行う走行制御部である車両側主装置79と、車両側主装置79に接続され走行中に通信可能な移動通信部71とを有する。なお、
図2(A)に示す第2車両側制御装置22は、第1車両側制御装置21と同様の構成となっており、説明を省略する。
【0039】
第1車両側制御装置21において、移動通信部71は、車上伝送装置であり、ホームドア装置40の先頭側のホームドア要素41Aに組み込まれた制動支援装置200の通信装置203と通信可能な状態となっている。
【0040】
第1車両側制御装置21は、列車20側の無線通信機74として、移動通信部71と、車上伝送制御ユニット78とを備える。無線通信機74は、制動支援装置200の列車20側の通信装置203に対応する。移動通信部71は、アンテナ71aと通信回路71bとを有する。アンテナ71aは、中距離無線アンテナであり、通信回路71bに接続されている。車上伝送制御ユニット78は、制御部78aと通信インターフェース部78bとを有する。制御部78aは、移動通信部71に接続され、移動通信部71と信号(指令、データ)の送受を行う。制御部78aは、通信インターフェース部78bを介して、列車20に元々装備されていた車両側主装置79と接続されている。この車両側主装置79は、移動通信部71で通信可能に接続されることになる。制御部78aは、移動通信部71のアンテナ71aを介して中距離無線の電波による送受信を行うために、通信回路71bに対して送受信動作に係る信号又は指令の送受を行う。
【0041】
車両側主装置79は、車上装置として、列車20の各部の動作を統括に制御するものであり、加速用の駆動装置、減速用のブレーキ装置等の走行機構77を遠隔的に動作させる。図示の状態(入線する状態)では、車両側主装置79は、運転士用として動作する。車両側主装置79には、通信部79aと操作インターフェース79bとが付随して設けられている。通信部79aは、不図示の列車運行管理システム又は指令所との間で通信を可能にし、操作インターフェース79bは、力行ハンドル、ブレーキハンドル、計器類、表示器、モニタ画面、無線通話機等で構成される。また、本実施形態では、操作インターフェース79bは、制動支援装置200の通知装置202である表示装置4として、制動支援表示器4dを有する。制動支援表示器4dは、移動通信部71を介して制動判定装置201と通信可能に接続されている。
【0042】
また、車両側主装置79には、列車20の現在速度を検出する車速検出部76aと、線路30側に設けた地上子31aとの間で通信を行って線路30上の列車20の位置を検出する車上子76bとが付随して設けられている。車上子76bと地上子31aとの連携により、例えば駅間や駅に設置された特定の区間又は位置を把握する。これにより、速度の積算を加味して停止目標位置SPまでの距離を計算し、制動に利用することができる。なお、地上子31aの代わりに軌道回路を用いることができる。
【0043】
車両側主装置79は、運転士等の指示に基づいて列車20の各部を動作させ、列車20の適切な速度での走行や適切なタイミングでの停止を可能にするとともに、緊急時の自動列車停止機能を有する。車両側主装置79は、車速検出部76aを利用した積算距離と車上子76bを利用した構成とによって、列車20の現在の走行位置及び走行速度を把握している。
【0044】
列車20の現在の走行位置の取得方法については、上記のように車速検出部76aを利用するものに限らず、レーダその他の測距装置を用いた計測に際してドップラー効果(GPS信号の場合を含む)を利用した速度値等に基づくものとしてもよい。その他、RFIDを利用した位置検出、みちびきその他の衛星測位による位置検出も可能である。また、車速検出部76aは、タコジェネレータのように車軸等に付随するものに限らず、上記GPS信号のドップラー効果を利用した計測、みちびきその他の衛星測位による位置検出による速度計測等、様々な動作原理の各種速度センサを用いて構成することができる。
【0045】
なお、実施形態において、ホーム10に入線した列車20における停止目標位置SPまでの制動支援は、制動支援装置200による実測値に基づくものを主体としている。そのため、上述の車上子76bと地上子31aとの連携によって得られる距離の計算値は駅における制動支援にとって補助的なものであり、この計算値を駅における制動支援に利用しなくてもよい。実施形態の駅における制動支援は、地上子31a等によって得られる距離の計算値に基づいて制動制御を行うことを妨げるものではない。
【0046】
制動支援装置200は、走行中の列車20に対して、固定通信部2及び移動通信部71を介して前運転台20fの車両側主装置79との間でデータ通信等が可能である。これにより、制動判定装置201の判定結果が列車20側の通知装置202である表示装置4に表示され、又は判定結果に基づく制動指令が送信され、前運転台20fを操作する運転士の指示又は指令、又は車両側主装置79によって、列車20が停止目標位置SPに停止するように、列車20の走行速度を制御することができる。
【0047】
図2(A)及び
図4において、線路30を挟んでホームドア装置40の反対側にあるホームドア装置140については説明を省略した。ホームドア装置140は、ホームドア装置40と同様の構造を有する。ただし、ホームドア装置140は、列車20の入線に対応するホームに設置されるものではなく、時刻表等に基づいて、予め列車20との間で通信を行わないように設定されている。
【0048】
以下、
図5を参照しつつ、制動支援装置200の詳細について説明する。
図5は、制動支援装置200及びその周辺の構成を説明するブロック図である。
【0049】
制動支援装置200は、支障物センサ43と、制動判定装置201と、通知装置202と、通信装置203と、主制御装置204とを備える。制動支援装置200は、ネットワークNWを介して中央制御装置300、駅制御盤5、及び管理者端末7等に接続している。
【0050】
制動判定装置201は、演算装置201aと、記憶装置201bと、センサ処理装置201cと、判定装置201dと、インターフェース201eとを有する。
【0051】
演算装置201aは、具体的には、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶装置201bに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、制動判定装置201の各部を制御する。演算装置201aは、バス201gを介して、記憶装置201b、センサ処理装置201c、判定装置201d、及びインターフェース201eとの間で相互にデータの伝送が可能になっている。
【0052】
記憶装置201bは、演算装置201aに読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する。記憶装置201bには、適正速度データベースDB1、センサ処理データベースDB2等が保管されている。適正速度データベースDB1は、列車20の位置から停止目標位置SPまでの距離、つまり残距離に対する適正速度が記憶されている。適正速度は、残距離に対する上限速度の関係に基づく速度曲線で表すことができ、後述する制動速度判定の際に用いるデータの速度パターンとして、所定位置での速度に基づく想定的な速度パターンや、ホーム10の入口に入線した際の速度に基づく現実的な速度パターン等が挙げられる。センサ処理データベースDB2は、支障物センサ43のID、各支障物センサ43から停止目標位置SPまでの距離、隣接する支障物センサ43間の距離、支障物センサ43又はセンサ処理装置201cからの距離情報データや元のデータに解析処理を施したもの等が記憶されている。つまり、記憶装置201bには、センサ処理データベースDB2として、支障物センサ43から取得した検出データ、具体的には、各支障物センサ43と列車20との間の距離、当該距離検出時の時間等の計測値を支障物センサ43のIDに紐づけて記憶されている。
【0053】
センサ処理装置201cは、支障物センサ43で検出した検出データを取得する。支障物センサ43は、検出データとして距離画像データ、すなわち三次元のフレーム画像を生成し、センサ処理装置201cは、フレーム画像に対して所定以上のサイズを有する対象(オブジェクト)の抽出を可能にする各種処理を行う。このような処理は、センサ処理装置201cの代わりに支障物センサ43が行ってもよい。
【0054】
センサ処理装置201cは、支障物センサ43からフレーム画像単位で測距データを受け取り、
図3に示す判別領域AR内にある距離計測点、すなわちオブジェクトを抽出する。支障物センサ43によって計測される1回分の測距データは、1フレーム分の距離画像データとなっている。1フレーム分の距離画像データは、支障物センサ43からのレーザ光の投光方向を示す画素位置と、その画素位置における物体距離とを含む。判別領域AR内にある距離計測点の有無は、画素位置と、その画素位置における物体距離とを用いて判断する。距離計測点の抽出には、時系列的に連続する複数フレームの距離画像データにおいて、対象又は距離計測点が略同位置に検出されることを条件とするノイズ除去処理である連続フレーム処理を行っている。また、センサ処理装置201cは、連続フレーム処理を行った距離画像データの画素に対して収縮処理及び膨張処理等の輪郭修正処理を行う。センサ処理装置201cは、ノイズ除去処理及び輪郭修正処理を行った距離画像データに対して座標変換処理を行い、距離画像データに対して例えば判別領域ARを基準とする三次元座標系における位置情報に座標変換し、記憶装置201bのセンサ処理データベースDB2に記憶する。距離画像データを座標変換した位置情報も距離画像データと呼ぶものとする。
【0055】
また、センサ処理装置201cは、判別領域AR内で反射が検出された複数の座標位置に対してラベリングを行う。ラベリングは、センサ処理装置201cで得た1フレーム分の距離画像データから得た一群の座標位置に対して行われる。1フレームから検出された座標位置が所定距離以下に近接する場合、これらに共通のラベルを付してグループ化する。ラベリングは、所定距離以下に近接する一群のデータを、対象物の判定に利用できる空間の占有に関する情報として扱う。以下では、ラベリングによってまとまった、判別領域ARを基準とする一群のデータ(複数の座標位置からなるデータ群)を空間占有情報とも呼び、この空間占有情報は、判別領域ARに存在する特定の形状要素又は特定の立体形状を表すものとなっている。このラベリングに関する情報(例えばラベル番号)は、検出された座標位置と関連づけてフレームごとに記憶装置201bのセンサ処理データベースDB2に記憶される。また、センサ処理装置201cは、ラベリング後のデータ群(空間占有情報)に対して形状要素に関する仕分けを行う。ラベリング等が行われたデータ群は、輪郭的な広がりを有するものとなっている。つまり、データ群から輪郭的な要素又はパラメータを抽出することにより、ラベリング等が行われたデータ群が示す対象(オブジェクト)を判定することができる。具体的には、ラベリング等が行われたデータ群が線路30を横切る水平方向に関して横幅の広いものであれば、列車20であると言える。センサ処理装置201cは、支障物センサ43のIDに紐づけて、列車20に対応する位置情報をフレーム情報とともに記憶装置201bのセンサ処理データベースDB2に記憶する。
【0056】
本実施形態では、センサ処理装置201cは、例えば、各支障物センサ43において、列車20が支障物センサ43から
図6に示す所定の距離Dtの位置に到達した際にパルスを発生する構成となっている。センサ処理装置201cは、上述の列車20に相当する空間占有情報が判別領域ARの所定ゾーンに含まれる場合、列車20が所定の距離Dtに到達したと判断する。センサ処理装置201cは、各支障物センサ43のIDとパルス発生時間とを紐づけた検出情報を判定装置201dに送信する。
【0057】
判定装置201dは、
図6に示す支障物センサ43で検知した列車20の位置から停止目標位置SPまでの距離Dl及び列車20の移動速度ΔVを算出し、その停止目標位置SPに応じた制動速度を判定する。支障物センサ43は、既定の位置に複数個配置されているため、センサの検出値の選択や平均化のような信号処理によって、列車20の移動速度ΔVを精度良く算出することができる。
【0058】
判定装置201dは、列車20の移動距離ΔDと列車20の移動時間ΔTとから移動速度ΔVを算出し、移動速度ΔVと列車20から停止目標位置SPまでの距離Dlとから制動のための適正速度を判定する。これにより、列車20の停止目標位置SPでの停止を確実なものとすることができる。
【0059】
判定装置201dは、移動距離ΔDを支障物センサ43間の距離ΔLから算出し、移動時間ΔTを各支障物センサ43の検出時間から算出する。既定の距離である支障物センサ43間の距離を移動速度ΔVの算出に利用することにより、演算処理を簡単化することができる。
【0060】
判定装置201dは、センサ処理装置201cから、列車20が支障物センサ43から距離Dtの位置に到達した際のパルス発生時間の検出情報を得る。支障物センサ43間の距離は列車20の移動距離ΔDに対応し、パルス発生の時間差は列車20の移動時間ΔTに対応する。例えば、
図6の例では、隣接する支障物センサ43間の距離ΔLが列車20の移動距離ΔDとなり、隣接する支障物センサ43でのパルス発生の時間差が列車20の移動距離ΔDにおける移動時間ΔTとなる。列車20の移動速度ΔVは、移動距離ΔDを移動時間ΔTで除算して得られるものであり、実質的に支障物センサ43間の距離ΔLをパルス発生時間の時間差で除算して得ることができる。なお、適正速度の判定に用いる停止目標位置SPから列車20までの残距離Dlは、予め記憶装置201bのセンサ処理データベースDB2に記憶されており、判定の際に記憶装置201bから適宜読み出される。
【0061】
図7(A)に、上述の残距離Dlのデータを示す。ここで、支障物センサ43から列車20までの距離Dtは、一定又は既定の値となっている。
図7(A)では、停止目標位置SPに近いホーム10の先端側の近くに位置する第nの支障物センサ43-n、及び第mの支障物センサ43-m(m=n+1)のデータも示しているが、主にホーム10の後端側又は中間に位置する支障物センサ43の残距離Dl(Dl1,Dl2,…)に基づいて後述する適正速度判定を行うため、列車20の制動支援の際には先端側の残距離Dl(Dm,Dn,…)を用いなくてもよい。すなわち、停止目標位置SPでの停止が確実となる所定の残距離まで制動支援を行えば、列車20が停止目標位置SPに停止するまで制動支援を行わなくてもよい。
【0062】
図7(B)に、上述の移動速度ΔVの算出結果を示す。移動速度ΔVは、例えば、隣接する支障物センサ43のうち列車20の進行方向の奥側の支障物センサ43に対応する残距離Dlに紐づけられた速度情報となっている。
【0063】
判定装置201dは、算出された移動速度ΔVが残距離Dlにおいて適正速度であるか否かを判定する。判定装置201dは、記憶装置201bの適正速度データベースDB1から、該当する残距離Dl(Dl1,Dl2,…)に対応する適正速度Vsのデータを読み出す。既述のように、制動速度判定の際に用いるデータの速度パターンとして、所定位置での速度に基づく想定的な速度パターンや、ホーム10の入口に入線した際の速度に基づく現実的な速度パターン等があるが、いずれの速度パターンを参照してもよい。
図7(C)は、適正速度Vsのデータがテーブルである場合を示す。判定装置201dは、移動速度ΔVと適正速度Vsとを比較して、移動速度ΔVが適正速度Vs以下である場合には、適正であると判定する。一方、移動速度ΔVが適正速度Vsより速い場合には、適正速度超過であると判定する。なお、移動速度ΔVが適正速度Vsよりも所定以上遅く、列車20の停車予定時刻に影響する場合には、速度不足であると判定してもよい。
【0064】
インターフェース201eは、通信線を経由して、制動判定装置201を駅制御盤5、管理者端末7、中央制御装置300、通信装置203等に対して通信可能に接続する。演算装置201aは、インターフェース201eを介して、判定装置201dの判定結果を通知装置202である表示装置3,4に送信する。演算装置201aは、インターフェース201eを介して、駅制御盤5や管理者端末7等との間で動作データを送受信する。
【0065】
通知装置202は、制動判定装置201の判定結果を通知する。既述のように、通知装置202は、駅の列車20の運転士に視認可能な位置に設けられた表示装置3である。表示装置3は、例えば、
図1に示す速度表示標等の表示器3b,3cである。表示装置3には、制動判定装置201の判定結果を表示する表示部ISが設けられている。例えば、
図8(A)に例示すように、表示部ISは、判定結果に応じて、例えば列車20の現在位置から換算した停止目標位置SPに停止するための適正速度を表示する。また、
図8(B)に例示すように、列車20の現在の速度が適正速度である場合には、「適正速度範囲内」等の表示をしたり、
図8(C)に例示すように、列車20の現在の速度が適正速度を超えている場合には「適正速度超過」等の警告表示をしたりする。
【0066】
また、
図3等に示すように、通知装置202は、列車20に設けられた表示装置4である。表示装置4にも、制動判定装置201の判定結果を表示する表示部ISが設けられている。通知装置202には、通信装置203によって無線通信を介して判定結果が送信される。これにより、判定結果を列車20の運転士に直接知らせることができる。
【0067】
主制御装置204は、支障物センサ43、制動判定装置201、通知装置202、通信装置203の動作を管理しており、中央制御装置300や列車20と連携している。
【0068】
以下、
図9を参照して、ホーム10に入線した列車20がホーム側ドア41b及び車両側ドア20aを開放するまでについて説明する。最初の段階で、
図1等に示すように列車20はホーム10の1つの番線に入線し、予め定められた適切な位置である停止目標位置SPに向けて減速する。この段階で、列車20の各車両側ドア20aと、ホームドア装置40のホーム側ドア41bとは閉じた状態にある。
【0069】
主制御装置204は、支障物センサ43の計測結果を利用して、ホーム10に入線する列車20を検出する(ステップS11)。この際、制動支援装置200と列車20の前端側の車両側主装置79とは、通信装置203を介して、入線したホーム10の番号、列車20のID等といった入線情報を交換することができる。列車20の車両編成によって、停止目標位置SPが異なる場合があるため、制動支援装置200は、上記の入線情報も加味して以降の処理を行う。
【0070】
列車20を検出した場合(ステップS11のYes)、主制御装置204は、センサ処理装置201cとして、支障物センサ43から得た距離画像データに基づいてセンサ検出値の処理を行う(ステップS12)。例えば、センサ処理装置201cでの処理によって、列車20が支障物センサ43から距離Dtの位置に到達したパルス発生時間等を得ることができる。
【0071】
次に、主制御装置204は、判定装置201dとして、ステップS12で得たセンサ処理装置201cの処理結果から列車20の移動速度ΔVを算出する(ステップS13)。
【0072】
次に、主制御装置204は、判定装置201dとして、列車20の所定位置に対して算出した移動速度ΔVが停止目標位置SPに停止する際に適切な速度であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0073】
主制御装置204は、通知装置202として、ステップS14の判定結果に応じた表示を表示部ISに表示する(ステップS15)。
【0074】
通知装置202に表示された判定結果又は判定結果の出力データに基づき、運転士は列車20の制動を行う(ステップS16)。
【0075】
次に、ホームドア装置40のホームドア側制御装置50は、車両定位置検知装置56として、列車20が停止目標位置SPに停止したか否かを判定する(ステップS17)。なお、ステップS12~S16の処理は、列車20が停止目標位置SPに停止するまで適宜繰り返され(ステップS17のNo)、ステップS15での表示部ISへの制動支援のための情報表示は随時更新される。
【0076】
列車20が停止目標位置SPに停止した場合(ステップS17でYes)、ホームドア側制御装置50は、車掌又は運転士の指令に基づきホーム側ドア41bを開放する(ステップS18)。
【0077】
その後、列車20の前方側の車両側主装置79又は後端側の車両側主装置は、車掌又は運転士の指令に基づき車両側ドア20aを開放する(ステップS19)。
【0078】
以上で説明した実施形態の制動支援装置200では、既存の支障物センサ43を利用することにより、別途距離センサを設置する必要がなく、また、列車20の車両20tの改造が不要である。また、TASC装置の導入が不要であり、費用を抑えられ、かつ保守が容易である。
【0079】
〔第2実施形態〕
以下、
図10を参照して、第2実施形態に係る制動支援装置200について一例を説明する。
図10は、第2実施形態の制動支援装置200における列車20の移動速度ΔVを算出するパラメータについて説明する図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0080】
本実施形態では、同期的に繰り返される所定のタイミングにおける各支障物センサ43から列車20までの距離Dtを算出し、この距離Dtに停止目標位置SPから支障物センサ43までの距離Dsを加算することにより、停止目標位置SPから列車20までの残距離Dlを算出する。この場合、例えば、隣接する支障物センサ43に対応する検出値からそれぞれ算出した残距離Dlと、残距離Dlの検出タイミングとから列車20の移動速度ΔVを算出する。具体的には、第1のタイミングにおいて、第1の支障物センサ43-1及び第2の支障物センサ43-2で検出した列車20までの距離Dt11,Dt21に、センサ43-1,43-2の停止目標位置SPまでの距離Ds11,Ds21をそれぞれ加算して残距離Dl1を算出する。また、第2のタイミングにおいて、第2の支障物センサ43-2及び第3の支障物センサ43-3で検出した列車20までの距離Dt22,Dt32に、センサ43-2,43-3の停止目標位置SPまでの距離Ds22,Ds32をそれぞれ加算して残距離Dl2を算出する。
図11(A)に、上述の残距離Dlの算出結果の一例を示す。なお、所定のタイミングにおいて、1つの支障物センサ43でのみ列車20を検出した場合、該当の支障物センサ43の検出値から残距離Dlを算出する。
【0081】
図11(B)に、列車20の移動速度ΔVの算出結果を示す。移動速度ΔVは、残距離Dlの算出結果と列車20の移動時間ΔTとから算出する。具体的には、第2のタイミングの残距離Dl2と第1のタイミングの残距離Dl1との差が、移動時間ΔTにおける列車20の移動距離ΔDとなる。移動時間ΔTは、残距離Dlを算出する際に用いた検出値の検出タイミングから算出する。具体的には、残距離Dl1を算出した第1のタイミングと残距離Dl2を算出した第2のタイミングとから算出する。移動時間ΔTは、第1のタイミングから第2のタイミングまでの検出時間であり、距離画像データのフレーム数に依存する。以上で算出した移動距離ΔDを移動時間ΔTで徐算することにより、列車20の移動速度ΔVを得る。移動速度ΔVは、直近の検出タイミングに対応する残距離Dlに紐づけられた速度情報となっている。
【0082】
〔第3実施形態〕
以下、
図12を参照して、第3実施形態に係る制動支援装置200について一例を説明する。
図12は、第3実施形態における制動支援装置200を組み込んだ管理システム100の概要を説明する概念図である。第3実施形態において、第1実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0083】
図12に示すように、通知装置202である表示装置3として、表示器3eは、ホームドア装置40のドア筐体部41aの上部に設けられている。これにより、制動判定装置201から直接表示データを送ることができる。
【0084】
〔その他〕
この発明は、上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0085】
以上では、列車20が複数両の編成であるとしたが、列車20が単一車両であってもよく、この場合、単一車両の前端と後端とにおいて、車両側制御装置を設けることができる。また、列車20の一端や他端とは、厳密な端部に限らず、列車20又は車両20tにおいて中央寄りの箇所を含む。
【0086】
以上では、ホーム10及び列車20に通知装置202を設けたが、ホーム10及び列車20のいずれか一方に通知装置202を設けてもよい。列車20側に通知装置202を設けない場合、通信装置203を省略することができる。
【0087】
以上では、運転士が通知装置202の表示を視認して列車20の主要な制動を行ったが、列車20の車上装置である車両側主装置79によって自動的又は補助的に制動制御を行ってもよい。
【0088】
以上では、支障物センサ43を列車20の進行方向に対して停止目標位置SPより前の位置に設けたが、後ろの位置にも追加して設けてもよい。この場合、列車20が停止目標位置SPに停止するまで制動支援を行うことができる。
【0089】
制動支援装置200の制動判定装置201における列車20の移動速度ΔVの算出方法は、適宜変更することができる。例えば、所定の位置に到達する列車20に対して、1つ又は3つ以上の支障物センサ43の検出データを用いて移動速度ΔVを算出してもよい。また、速度算出に利用するための支障物センサ43を適宜選択することができる。
【0090】
支障物センサ43の検出領域DRは、センサの性能等によって適宜変更することができる。また、支障物センサ43は、MEMSスキャナを含むセンサに限らず、また、三次元センサ及び二次元センサのいずれのセンサも用いることができる。
【0091】
制動支援装置200に組み込まれる支障物センサ43は、ホームドア装置40に設けられる支障物センサ43に限らず、ホーム10上に柵を設けずに、ポールにセンサを取り付ける等して設置される既知のセンサであってもよい。また、支障物センサ43は、ホーム10の上方に設置される既知のセンサであってもよい。
【0092】
列車定位置検知部61,62は、例えば距離画像を計測するようなセンサに置き換えることができるが、光を用いるものに限らず、様々な原理で動作するセンサを用いることができる。
【0093】
制御線45aは、有線のケーブル等に限らず、無線の回線を間に挟んだものであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…信号機、2…固定通信部、2a…アンテナ、2b…通信回路、2c…制御部、3,4…表示装置、3a,3b,3c,3e…表示器、4d…制動支援表示器、5…駅制御盤、7…管理者端末、10…ホーム、20…列車、20a…車両側ドア、20f…前運転台、20r…後運転台、20t…車両、21,22…車両側制御装置、30…線路、31a…地上子、40…ホームドア装置、41,41A,41B…ホームドア要素、41a…ドア筐体部、41b…ホーム側ドア、42…端部筐体、42w…線路側側壁面、43…支障物センサ、45…ケーブル、45a…制御線、50…ホームドア側制御装置、51…主装置、56…車両定位置検知装置、61,62…列車定位置検知部、71…移動通信部、71a…アンテナ、71b…通信回路、74…無線通信機、76a…車速検出部、76b…車上子、77…走行機構、78…車上伝送制御ユニット、78a…制御部、78b…通信インターフェース部、79…車両側主装置、79a…通信部、79b…操作インターフェース、100…管理システム、140…ホームドア装置、156…定位置停止検出装置、161…反射板、200…制動支援装置、201…制動判定装置、201a…演算装置、201b…記憶装置、201c…センサ処理装置、201d…判定装置、201e…インターフェース、202…通知装置、203…通信装置、204…主制御装置、300…中央制御装置、DB1…適正速度データベース、DB2…センサ処理データベース、DR…検出領域、IS…表示部、NW…ネットワーク、SP…停止目標位置、ST…停止目標