(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117923
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】焼却灰の処理方法及び焼却灰の処理装置、並びに製鋼原料
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20230817BHJP
B07B 1/22 20060101ALI20230817BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B09B5/00 N ZAB
B07B1/22 Z
C22B1/00 601
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020745
(22)【出願日】2022-02-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】522058888
【氏名又は名称】株式会社潮来工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 善啓
【テーマコード(参考)】
4D004
4D021
4K001
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004BA05
4D004CA08
4D004CB50
4D004DA03
4D004DA20
4D021AA15
4D021AB02
4D021AC01
4D021CA11
4D021EA10
4K001AA02
4K001AA09
4K001AA10
4K001BA22
4K001CA02
(57)【要約】
【課題】 本発明は、従来技術に比べ低コスト及び/又は効率的に焼却灰を処理することができる新規な焼却灰の処理方法及び新規な処理装置を提供することを課題とする。また、製鋼原料を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明によれば、金属屑含有焼却灰の処理方法であって、工程(a):第一トロンメルにより前記金属屑含有焼却灰から金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、及び工程(b):第二トロンメルにより前記第一処理焼却灰から金属屑Bを篩い分け、最終焼却灰を得る工程、を含む前記処理方法が提供される。また、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメル、及び6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える第二トロンメルを備える焼却灰処理装置が提供される。さらに、金属屑含有焼却灰から取り出された製鋼原料が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属屑含有焼却灰から金属屑を篩い分けることにより焼却灰中の金属屑含有量を低減するための、焼却灰の処理方法であって、
工程(a):第一トロンメルにより前記金属屑含有焼却灰から金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、及び
工程(b):第二トロンメルにより前記第一処理焼却灰から金属屑Bを篩い分け、最終焼却灰を得る工程、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
を含む、前記処理方法。
【請求項2】
工程(c):金属屑A及び金属屑Bを合わせて製鋼原料を得る工程、をさらに含む請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記第一トロンメルが8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記第二トロンメルが6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
焼却灰の処理効率が2.0~5.5t/hである、請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
金属屑含有焼却灰から金属屑Aと第一処理焼却灰とを篩い分けるための、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメル、及び
前記第一処理焼却灰から金属屑Bと最終焼却灰とを篩い分けるための、6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える第二トロンメル、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
を備える、焼却灰処理装置。
【請求項7】
焼却灰の処理効率が2.0~5.5t/hである、請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
金属屑含有焼却灰から取り出された製鋼原料であって、50~90重量%の金属成分を含む、前記製鋼原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰の処理方法及び焼却灰の処理装置、並びに製鋼原料に関する。より具体的には、従来技術に比べ低コスト及び/又は効率的に金属屑を含む焼却灰(金属屑含有焼却灰と称する)を処理することができる新規な焼却灰の処理方法及びその処理装置に関する。また、当該処理方法及び処理装置により得られる製鋼原料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家庭から排出される可燃ごみ等の一般廃棄物の増加に伴う、一般廃棄物の処理が問題となっている。例えば、国内の年間のごみ総排出量は、約42,000万トンに及ぶ。一般廃棄物の多くは、ごみ焼却施設において焼却処理されているが、この際に生じる焼却灰については埋立処理されている。
【0003】
近年、埋立処理される焼却灰を減らすため、セメント原料への再利用や焼却灰の溶融固化が行われている。しかし、一般廃棄物の焼却灰には空き缶等を由来とする金属屑が含まれているため、溶融固化の際、焼却灰中に含まれる金属屑の除去が課題となる。例えば、特許文献1には、焼却灰から貴金属を回収する方法及び回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような処理方法においては、処理装置自体の導入や複数の工程を行う必要があることから、コスト及び/又は処理効率の観点から課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、従来技術に比べ低コスト及び/又は効率的に焼却灰を処理することができる新規な焼却灰の処理方法及び新規な処理装置を提供することを目的とする。また、当該処理方法及び処理装置により得られる製鋼原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来用いられることがなかった装置を用いて焼却灰を篩い分けることにより、低コストかつ効率的に焼却灰中の金属屑を取り出すことができる可能性を見出し、さらに研究を重ねた結果、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも以下の各発明に関する:
[1]
金属屑含有焼却灰から金属屑を篩い分けることにより焼却灰中の金属屑含有量を低減するための、焼却灰の処理方法であって、
工程(a):第一トロンメルにより前記金属屑含有焼却灰から金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、及び
工程(b):第二トロンメルにより前記第一処理焼却灰から金属屑Bを篩い分け、最終焼却灰を得る工程、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
を含む、前記処理方法。
[2]
工程(c):金属屑A及び金属屑Bを合わせて製鋼原料を得る工程、をさらに含む[1]に記載の処理方法。
[3]
前記第一トロンメルが8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える、[1]又は[2]に記載の処理方法。
[4]
前記第二トロンメルが6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える、[1]~[3]のいずれかに記載の処理方法。
[5]
焼却灰の処理効率が2.0~5.5t/hである、[1]~[4]のいずれかに記載の処理方法。
[6]
金属屑含有焼却灰から金属屑Aと第一処理焼却灰とを篩い分けるための、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメル、及び
前記第一処理焼却灰から金属屑Bと最終焼却灰とを篩い分けるための、6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える第二トロンメル、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
を備える、焼却灰処理装置。
[7]
焼却灰の処理効率が2.0~5.5t/hである、[6]に記載の処理装置。
[8]
金属屑含有焼却灰から取り出された製鋼原料であって、50~90重量%の金属成分を含む、前記製鋼原料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の処理方法及び処理装置によれば、従来用いられていた処理装置より簡便な装置を用いることができ、低コストで金属屑含有焼却灰を処理することができる。また、本発明の処理方法においては、金属屑含有焼却灰の処理に必要となる工程が従来の方法に比べ少ないため、短時間で効率的に金属屑含有焼却灰を処理することができる。
さらに、本発明の処理方法によれば、製鋼原料を従来の方法より高い効率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の処理方法の一態様を示すフロー図である。
【
図2】本発明の処理方法に用いるトロンメルのメッシュの一部の構造を示す模式図である。(a)は15mmメッシュ(線径6mm、篩目15mmの平織状メッシュ)の構造を示す。(b)は7mmメッシュ(線径4mm、篩目7mmの平織状メッシュ)の構造を示す。なお、本図はトロンメルのメッシュの構造を示す模式図であるため、図中の各部材の寸法同士の比率のうち、実際の比率を反映していない部分がある。
【
図3】(a)は本発明の一実施形態における処理装置の一部を示す写真である。(b)は本発明の一実施形態における処理装置を用いた焼却灰の処理の様子を示す写真である。(c)は本発明の一実施形態における処理装置に用いられるトロンメルに装着する前のメッシュの写真である。左側の写真(平置きした状態の写真)に示されるメッシュに相当する、やや先細り形状のメッシュの4枚を1セットとし、筒状に一体化して構成することにより、右側の写真(一体化した後の、斜め上方からの写真)に示されるトロンメルが形成される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<焼却灰処理方法>
本発明の焼却灰処理方法は、金属屑含有焼却灰から金属屑を篩い分けることにより焼却灰中の金属屑含有量を低減するための、焼却灰の処理方法であって、
工程(a):第一トロンメルにより前記金属屑含有焼却灰から金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、及び
工程(b):第二トロンメルにより前記第一処理焼却灰から金属屑Bを篩い分け、最終焼却灰を得る工程、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
を含む、前記処理方法である。
すなわち、本発明の処理方法によれば、焼却灰を処理対象として、異なる篩目のメッシュを有する、少なくとも2以上のトロンメルを用いて、工程(a)及び工程(b)を経て、最終的に金属屑A及びB、並びに金属屑含有量の小さい焼却灰を得ることができる。
【0012】
本発明の焼却灰処理方法について、以下にさらに詳細に説明する。同発明の工程の概要は、
図1のフローに示されるとおりである。
本明細書において、工程(a)にて得られる焼却灰を「第一処理焼却灰」と、工程(b)にて得られる焼却灰を「最終焼却灰」と称する。また、工程(a)にて得られる金属屑を「金属屑A」と、工程(b)にて得られる金属屑を「金属屑B」と称する。
本明細書において示される数値範囲は、特段の記載がない限り、その両端の上限及び下限の数値を含むものとする。
【0013】
●工程(a)
工程(a)は、金属屑含有焼却灰から第一トロンメルにより金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程である。すなわち、工程(a)は少なくとも、金属屑含有焼却灰を第一トロンメルに投入すること、第一トロンメルを回転させることで金属屑含有焼却灰から第一処理焼却灰と金属屑Aとを篩い分けること、及び第一トロンメル中から得られた金属屑Aを取り出すことのいずれかを含む工程である。
【0014】
トロンメル
本発明の処理方法においてはトロンメルを用いて、金属屑含有焼却灰中の金属屑と焼却灰とを篩い分けることができる。従来、トロンメルは砂利、砕石等を篩い分けするために用いられていたところ、トロンメルによって焼却灰等の軽く細かい粒子を篩い分ける場合、金属屑含有焼却灰中の粒子がトロンメルの回転によって意図しない範囲にまで飛散して拡散するおそれがあるため、トロンメルを用いて金属屑含有焼却灰を処理することはなされていなかった。
本発明の処理方法においては、少なくとも第一トロンメル及び第二トロンメルの2以上のトロンメルを用いることにより、金属屑含有焼却灰中の粒子の拡散を抑えつつ、金属屑と焼却灰とを篩い分けることを可能にした。
本発明の処理方法において用いられるトロンメルの例及び該トロンメルに用いられる部材であるメッシュの例は、
図3に示すとおりである。
【0015】
本発明の処理方法において、トロンメルの種類及び形状に特に制限はなく、例えば据え置き型や油圧ショベルのアタッチメント型であってよい。また、円形ドラム式や六角ドラム式であってよく、跳ね上げ羽根を有していてもよい。トロンメル自体の大きさに特に制限はないが、設備導入の場所及び/又はコスト等の観点並びに一般的に処理すべき焼却灰の量の観点から、トロンメルの容積は1,000~3,000L程度が好ましい。
【0016】
トロンメルに備え付けられるメッシュの篩目は、金属屑を分離し得る形状であれば特に限定されない。前記篩目としては、略矩形、多角形、略円形等が挙げられる。特に略矩形は好ましい。前記メッシュは金属屑を分離し得る構造であれば特に限定されない。前記メッシュとしては平織状メッシュ、綾織状メッシュ、パンチングメタル等が挙げられる。特に平織状メッシュは好ましい(
図2)。
【0017】
本発明の処理方法において、前記メッシュの篩目は、工程(a)で用いられるトロンメルと工程(b)で用いられるトロンメルとで異なる。本明細書において、篩目の大きさを示す場合、略矩形又は多角形の篩目1辺の大きさにより示してよく、また、略円形の篩目の直径により示してよい。
【0018】
(1)第一トロンメル
工程(a)で使用される第一トロンメルに用いられるメッシュの篩目は、金属屑含有焼却灰と金属屑との篩い分けを行える篩目であれば限定されない。例えば一実施形態において、第一トロンメルに用いられるメッシュは、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える。好ましくは、第一トロンメルは9mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える。より好ましくは、第一トロンメルは9mm~16mmの篩目を有するメッシュを備える。メッシュの篩目が8mm以上であることで、金属屑含有焼却灰と金属屑Aとを短時間で効率的に篩い分けることができる。また、メッシュの篩目が17mm以下であることで、工程(a)で篩い分けられる焼却灰中における金属屑Aの残存を低減し、その後の工程(b)の処理効率が減少することを防ぐことができる。
【0019】
前記メッシュは平織状メッシュであることは好ましい。前記平織状メッシュは、線径3~7mmの金属線からなるメッシュであることは好ましい。前記平織状メッシュは、線径4~7mmの金属線からなるメッシュであることはより好ましい(
図2)。前記金属線としては、通常メッシュとして用いるものであれば特に制限はないが、鋼線、鉄線、及びタングステン線等が挙げられる。
【0020】
前記メッシュの空隙率(空間率。トロンメルの表面積に対する、篩目の面積の割合)は、特に制限はないが、25~80%であることは好ましい。前記空隙率は20~75%であることはより好ましく、20~70%であることは特に好ましい。空隙率が大きくなるほど、焼却灰の篩い分けにかかる時間が短くなり、処理効率は高まる。一方、空隙率を小さくすることは、相対的に細かい金属屑Aを、より確実に残存させる手段になりえる。
【0021】
第一トロンメルの回転速度は、金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得ることができる回転速度であれば限定されないところ、10~20回転/分とすることは好ましい。
第一トロンメルの回転速度は、金属屑含有焼却灰を第一トロンメルに収容後、第一トロンメルの回転を開始し、前記回転速度に達した後、前記回転速度を工程(a)の終了まで維持してもよく、第一トロンメル中に残る金属屑含有焼却灰の量に応じて前記回転速度を調整してもよい。また、第一トロンメルの回転速度は、金属屑含有焼却灰から篩い分けられる対象である金属屑Aにおける鉄成分の割合や、第一トロンメルを駆動(回転)させる時間を考慮して調整してもよい。
第一トロンメルの回転速度を10回転/分以上とすることで、効率的に第一処理焼却灰と金属屑Aとを篩い分けることができる。第一トロンメルの回転速度を20回転/分以下とすることで、篩い分けられた焼却灰の意図しない拡散を防ぐことができる。
【0022】
工程(a)においては、一度に全ての金属屑含有焼却灰をトロンメルに投入し一括で篩い分けしてもよく、工程(a)による篩い分けを複数回行うことで金属屑含有焼却灰を分割して篩い分けしてもよい。通常、家庭ごみの収集及び焼却処理により生じる焼却灰の量を考慮すると、工程(a)による篩い分けを複数回行うことは好ましい。
第一トロンメルに投入される金属屑含有焼却灰の量として、第一トロンメルの容積の15~40%程度であることは好ましい。第一トロンメルに投入される金属屑含有焼却灰を第一トロンメルの容積の15%以上とすることで工程(a)を行う回数を減らすことにより、本発明の処理方法全体の処理効率を高めることができる。また、第一トロンメルに投入される金属屑含有焼却灰を第一トロンメルの容積の40%以下とすることで、篩い分ける効率の向上により工程(a)の処理時間を短くすることができ、第一処理焼却灰と金属屑Aとを一層効率的に篩い分けることができる。
【0023】
工程(a)の処理効率は、例えば1時間当たりに処理された前記金属屑含有焼却灰の重量で表される。この場合、工程(a)の処理効率は2.5t/h以上であることは好ましい。工程(a)の処理効率は4.0t/h以上であることはより好ましい。
なお、工程(a)に相当する工程を実施したのちに、金属屑Aが得られない場合、すなわち、篩目が大きすぎて想定される量の金属屑が残存しない場合や篩目が小さすぎて焼却灰と金属屑との分離が十分になされない場合には、それぞれ、篩目がより小さいメッシュを具備するトロンメル及び篩目がより大きいメッシュを具備するトロンメルを用いることにより、所望の効果を奏する工程(a)を行ってよい。
【0024】
●工程(b)
工程(b)は、工程(a)で得られた第一処理焼却灰から第二トロンメルにより金属屑Bと最終焼却灰とを篩い分ける工程である。すなわち、工程(b)は少なくとも、第一処理焼却灰を第二トロンメルに投入すること、第二トロンメルを回転させることで最終焼却灰と金属屑Bとを篩い分けること、及び第二トロンメル中から得られた金属屑Bを取り出すことのいずれかを含む工程である。
【0025】
(2)第二トロンメル
工程(b)で使用される第二トロンメルは、第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する。例えば、第二トロンメルは6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備えるが、かかる篩目に限定されるものではない。第二トロンメルは、好ましくは、6mm~12mmの篩目を有するメッシュを備え、より好ましくは6mm~11mmの篩目を有するメッシュを備える。メッシュの篩目が6mm以上であることで、第一処理焼却灰と金属屑Bとを効率的に篩い分けることができ、メッシュの篩目が13mm以下であることで、工程(b)で篩い分けられる焼却灰中に金属屑Bが多く残存することを防ぎ、金属屑Bを十分に取り出すことができる。
【0026】
前記メッシュは平織状メッシュであることは好ましい。前記平織状メッシュは、線径3~6mmの金属線からなるメッシュであることは好ましい(
図2)。前記金属線としては、通常メッシュとして用いるものであれば特に制限はないが、鋼線、鉄線、及びタングステン線等が挙げられる。
【0027】
前記メッシュの空隙率(空間率)は、特に制限はないが、20~70%であることは好ましい。空隙率が大きくなるほど、焼却灰の篩い分けにかかる時間が短くなり、処理効率は高まる。一方、空隙率を小さくすることは、相対的に細かい金属屑Bを、より確実に残存させる手段になり得る。
【0028】
第二トロンメルの回転速度は、第一処理焼却灰から金属屑Bを篩い分けることができる回転速度であれば限定されないところ、10~20回転/分とすることが好ましい。
第二トロンメルの回転速度は、第一処理焼却灰を第二トロンメルに収容後、第二トロンメルの回転を開始し、前記回転速度に達した後、前記回転速度を工程(b)の終了まで維持してもよく、第二トロンメル中に残る第一処理焼却灰の量に応じて前記回転速度を調整してもよい。また、第二トロンメルの回転速度は、第一処理焼却灰から篩い分けられる対象である金属屑Bにおける鉄成分の割合や、第二トロンメルを駆動(回転)させる時間を考慮して調整してもよい。
第二トロンメルの回転速度を10回転/分以上とすることで、効率的に最終焼却灰と金属屑Bとを篩い分けることができる。第二トロンメルの回転速度を20回転/分以下とすることで、篩い分けられた焼却灰の意図しない拡散をことができる。
【0029】
工程(b)は、一度に全ての第一処理焼却灰をトロンメルに投入し一括で篩い分けしてもよく、工程(b)による篩い分けを複数回行うことで第一処理焼却灰を分割して篩い分けしてもよい。また、工程(b)による篩い分けを複数回行うことで、一旦工程(b)により篩い分けられた焼却灰を対象として、再度工程(b)より篩い分けを行ってよい。通常、家庭ごみの収集及び焼却処理により生じる焼却灰の量を考慮すると、工程(b)による篩い分けを複数回行うことは好ましい。工程(b)による篩い分けを複数回行う場合、工程(b)における2回目の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュは、工程(b)における最初の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュより小さくすることは好ましい。例えば、工程(b)における最初の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュを約10mm~約15mmとし、工程(b)における2回目の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュを約7mmとすることができる。
第二トロンメルに投入される第一処理焼却灰は第二トロンメルの容積の15~40%程度であることが好ましい。第二トロンメルに投入される第一処理焼却灰が第二トロンメルの容積の15%以上とすることで工程(b)を行う回数を減らすことにより本発明の処理方法全体の処理効率を高めることができる。また、第二トロンメルに投入される第一処理焼却灰が第二トロンメルの容積の40%以下とすることで篩い分ける効率の向上により工程(b)の処理時間を短くすることができ、効率的に最終焼却灰と金属屑Bとを篩い分けることができる。
【0030】
工程(b)の処理効率は、例えば、1時間当たりに処理された前記第一処理焼却灰の重量で表してよい。この場合、工程(b)の処理効率は4.0t/h以上であることは好ましい。工程(b)の処理効率は4.5t/h以上であることはより好ましい。
【0031】
●工程(c)
本発明の処理方法は、工程(c)をさらに含んでもよい。工程(c)は金属屑A及び金属屑Bを合わせて製鋼原料を得る工程である。当該製鋼原料は、例えば50~90重量%の金属成分を含み、好ましくは70~90重量%の金属成分を含む。
当該製鋼原料は、より鉄純度の高い製鋼原料と混合して製鋼工程に付してよく、より低コストな製鋼に寄与し得る。当該より鉄純度の高い製鋼原料としては、炭素鋼スクラップ及び銑スクラップが挙げられる。
【0032】
工程(c)においては、全第一処理焼却灰を工程(b)にて処理した後に、得られた金属屑A及び金属屑Bを一括して合わせることにより、製鋼原料を得てよい。あるいは、工程(c)においては、工程(b)を複数回行う場合には、工程(b)を1回行うごとに得られた金属屑Bを金属屑Aに加えることにより、金属屑Aと金属屑Bとを合わせて製鋼原料を得てもよい。
【0033】
本発明の処理方法における焼却灰の処理効率は、例えば、1時間当たりに処理される前記金属屑含有焼却灰の重量で表してよい。すなわち、処理前の金属屑含有焼却灰を処理するのに工程(a)及び工程(b)で要する時間から、焼却灰の処理効率を求めることができる。この場合、前記処理効率は、2.0t/h以上であることは好ましい。前記処理効率の上限に制限はないところ、本発明の一態様において、5.5t/h程度であってよい。
【0034】
本発明の処理対象である焼却灰は、家庭ごみ等の一般廃棄物をごみ焼却施設で焼却処理することで得られる。当該焼却灰中には家庭から排出される空き缶等に由来する金属屑が含まれ得る。前記金属屑が焼却灰に含まれている場合、焼却灰を溶融する際に、前記金属屑に通電することで溶融炉(電気炉抵抗式)の機能が低下してしまうため、溶融固化処理をすることが困難となる。したがって、前記金属屑を除去する必要がある。
【0035】
前記金属屑含有焼却灰は、事前に磁選機等を用いて、含まれている鉄屑等の金属屑の一部を取り除いていてもよい。磁選機を用いて鉄屑等の金属屑を取り除くことで、処理すべき金属屑含有焼却灰を減らすことができるため、その後に本発明の処理方法に供することで、より短時間で金属屑含有焼却灰を処理することができる。
【0036】
本発明の処理方法において、工程(b)を経て、最終的に金属屑含有量の小さい焼却灰(最終焼却灰)を得ることができる。最終焼却灰は金属屑含有量が小さいため、溶融固化を行い、路盤材等に利用することができる。
【0037】
金属屑
本発明の処理方法により篩い分けられる金属屑は、製鋼原料として再利用することができる。当該金属屑は家庭から排出される空き缶等に由来する。本発明の処理方法により篩い分けられる金属屑は、鉄、銅、アルミニウム等を含む金属屑が挙げられる。前記金属屑は少なくとも鉄屑を含む金属屑であることは好ましい。前記金属屑は50~90重量%の金属成分を含み、好ましくは70~90重量%の金属成分を含む。当該金属成分としては、鉄成分を含むものは好ましく、鉄成分であることはより好ましい。
【0038】
本発明の処理方法により篩い分けられる金属屑には、工程(a)で得られる金属屑A及び工程(b)で得られる金属屑Bがある。金属屑Aは金属屑含有焼却灰中に30~50重量%含まれ得る。金属屑Bは金属屑含有焼却灰中に10~40重量%含まれ得る。金属屑A及び金属屑Bの大きさは、工程(a)及び工程(b)で用いられるトロンメルに備え付けられたメッシュの篩目により異なるが、一態様において、金属屑Aは15mm大以上であってよく、10mm大以上であってよい。また、一態様において、金属屑Bは10mm大以上であってよく、7mm大以上であってよい。
【0039】
金属屑A及び金属屑Bを合わせることにより、製鋼原料を得ることができる。当該製鋼原料は、30~90重量%の金属成分を含み、好ましくは60~90重量%の金属成分を含む。当該金属成分としては、鉄成分を含むものは好ましく、鉄成分であることはより好ましい。
当該製鋼原料が鉄成分を含む場合、鉄純度は限定されないところ、鉄純度として50~90%は好ましい。鉄成分を含む当該製鋼原料は、より鉄純度の高い製鋼原料と混合することができる。当該より鉄純度の高い製鋼原料としては、炭素鋼スクラップ及び銑スクラップが挙げられる。
【0040】
<焼却灰処理装置>
本発明により、金属屑含有焼却灰から金属屑Aと第一処理焼却灰とを篩い分けるための、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメル、及び前記第一処理焼却灰から金属屑Bと最終焼却灰とを篩い分けるための、6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える第二トロンメル、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、を備える、焼却灰処理装置(焼却灰処理システム)が与えられる。
【0041】
本発明の焼却灰処理装置は、前述の第一トロンメル及び第二トロンメル備えるものであれば、その他の構成は限定されない。
【0042】
本発明の処理装置において、トロンメルの種類及び形状に特に制限はなく、例えば据え置き型や油圧ショベルのアタッチメント型であってよい。また、円形ドラム式や六角ドラム式であってよく、跳ね上げ羽根を有していてもよい。トロンメル自体の大きさに特に制限はないが、設備導入の場所及び/又はコスト等の観点並びに一般的に処理すべき焼却灰の量の観点から、トロンメルの容積は1,000~3,000L程度が好ましい。
【0043】
トロンメルに備え付けられるメッシュの篩目は、金属屑を分離し得る形状であれば特に限定されない。前記篩目としては、略矩形、多角形、略円形等が挙げられる。特に略矩形は好ましい。前記メッシュは金属屑を分離し得る構造であれば特に限定されない。前記メッシュとしては平織状メッシュ、綾織状メッシュ、パンチングメタル等が挙げられる。特に平織状メッシュは好ましい。
【0044】
トロンメルが備える前記メッシュは、平織状メッシュであることは好ましい(
図2)。前記平織状メッシュは、線径3~7mmの金属線からなるメッシュであることは好ましい。前記金属線としては、通常メッシュとして用いるものであれば特に制限はないが、鋼線、鉄線、及びタングステン線等が挙げられる。
【0045】
前記メッシュの空隙率(空間率)は、特に制限はないが、20~80%であることは好ましい。前記空隙率は20~75%であることはより好ましく、20~70%であることは特に好ましい。空隙率が大きくなるほど、焼却灰の篩い分けにかかる時間が短くなり、処理効率は高まる。一方、空隙率を小さくすることは、相対的に細かい金属屑を、より確実に残存させる手段になりえる。
【0046】
本発明の焼却灰処理装置は、従来の焼却灰処理装置に比べ、小型であってよい。そのため、従来の焼却灰処理装置では、装置の設置に必要な場所及びコストを縮小することができる。また、本発明の焼却灰処理装置は、第一トロンメル及び第二トロンメルのみから構成されていてもよいため、必要に応じて金属屑含有焼却灰の集積地へ適宜移動することができる。
【0047】
本発明の処理装置の焼却灰の処理効率は、2.0~5.5t/hであることが好ましい。
【0048】
<製鋼原料>
本発明の処理方法により、金属屑含有焼却灰から取り出された製鋼原料であって、30~90重量%の金属成分を含む、前記製鋼原料も提供される。
【0049】
本発明の製鋼原料は、前述の金属屑A及び金属屑Bを合わせることで得られる。前記製鋼原料は50~90重量%の金属成分を含み、好ましくは70~90重量%の金属成分を含む。当該金属成分としては、鉄成分であることは好ましい。当該製鋼原料が鉄成分を含む場合、鉄純度は限定されないところ、鉄純度として50~90%は好ましい。
本発明の製鋼原料を用いる場合、より鉄純度の高い製鋼原料と混合して用いることができる。当該より鉄純度の高い製鋼原料としては、炭素鋼スクラップ及び銑スクラップが挙げられる。
【0050】
また、前記製鋼原料中の鉄成分の割合を増やすため、鉄以外の成分を含むごみ等を前記製鋼原料から除去してもよい。前記ごみとしては、銅線を含むモーター等が挙げられる。前記除去方法は、特に制限はなく、通常用いられる方法により行われてよい。
【0051】
本発明の処理方法及び処理装置によれば、従来技術に比べ、低コスト及び/又は高効率で金属屑含有焼却灰を処理することができる。また、本発明の処理方法又は処理装置により篩い分けられた金属屑は、製鋼原料として再利用可能であり、本発明の処理方法又は処理装置により篩い分けられた最終焼却灰は、金属成分の含有量が小さいため、溶融固化後に路盤材等に利用可能である。したがって、本発明は近年増加する一般廃棄物の処理問題といった環境問題の解決に貢献し得る。
【実施例0052】
以下の実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
各評価又は測定中の実施例及び比較例において、以下の平織状メッシュ(オカダアイヨン株式会社製)を備えるトロンメルを用いた。メッシュには金属線として鋼線(SS材)を用いた。メッシュの縦線間の距離と横線間の距離は同じ距離とした。
25mmメッシュ
線径6mm、篩目25mmの平織状メッシュ
15mmメッシュ
線径6mm、篩目15mmの平織状メッシュ
10mmメッシュ
線径5mm、篩目10mmの平織状メッシュ
7mmメッシュ
線径4mm、篩目7mmの平織状メッシュ
使用したトロンメルの大きさは内径1,200mm、長さ1,300mm(容積:約1,500L)であった。
【0054】
1.メッシュ篩い分け評価
1-1.工程(a)評価
金属屑含有焼却灰をトロンメル内に投入し、トロンメルを回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。篩い分けが完了した後、トロンメル内に残る残留物とトロンメル外に篩い分けられた焼却灰とを目視により観察し、トロンメルに装着されたメッシュについて、工程(a)の適否を判断した。
【0055】
1-2.工程(b)評価
前記工程(a)評価においてトロンメル外に篩い分けられた焼却灰を、トロンメル内に投入し、トロンメルを回転させてさらに篩い分けた。篩い分けが完了した後、トロンメル内に残る残留物とトロンメル外に篩い分けられた焼却灰とを目視により観察し、トロンメルに装着されたメッシュについて、工程(b)の適否を判断した。
【0056】
●試験例1
工程(a):トロンメルに15mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に15mm大以上の金属屑が確認された(比較例1)。
工程(b):次いで、トロンメルに7mmメッシュを装着した。トロンメル内に上記15mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に7mm大以上の金属屑が確認された。目視によりトロンメル外のメッシュを通過した焼却灰を確認した。前記焼却灰中には金属屑が含まれていなかった(実施例1)。
【0057】
●試験例2
工程(a):トロンメルに15mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に15mm大以上の金属屑が確認された(比較例2)。
工程(b):次いで、トロンメルに10mmメッシュを装着した。トロンメル内に上記15mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に10mm大以上の金属屑が確認された。目視によりトロンメル外のメッシュを通過した焼却灰を確認した。前記焼却灰中の金属屑含有量は低減されていた(実施例2)。
【0058】
●試験例3
工程(a):トロンメルに15mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に15mm大以上の金属屑が確認された(比較例3)。
工程(b):次いで、トロンメルに10mmメッシュを装着した。トロンメル内に上記15mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止めた。さらに、トロンメルに7mmメッシュを装着したトロンメル内に、上記10mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けることにより、実施例1と同様に、金属屑が含まれない焼却灰が得られた(実施例3)。
【0059】
●実施例4
工程(a):トロンメルに10mmメッシュを装着する。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。6分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した(比較例4)。
工程(b):次いで、トロンメルに7mmメッシュを装着した。トロンメル内に上記10mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に7mm大以上の金属屑が確認され、目視によりトロンメル外のメッシュを通過した焼却灰が確認された。前記焼却灰中には金属屑は含まれていなかった(実施例4)。
【0060】
●参考試験例1
トロンメルに25mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。3分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物及び篩い分けられた焼却灰を目視により観察した。前記金属屑含有焼却灰はメッシュを通過し、トロンメル内にはほとんど金属屑は残らなかった。すなわち、金属屑Aに相当する金属屑は得られなかった。金属屑Aに相当する金属屑が得られなかったため、工程(b)に相当するさらなる篩分け工程は実施できなかった。
【0061】
●参考試験例2
工程(a):トロンメルに7mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。10分経過後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰がトロンメル内からなくならないため、トロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に金属屑及び焼却灰が確認された。メッシュが目詰まりを起こし、篩い分けが困難な状態となっていた。すなわち、金属屑含有焼却灰に対する篩分け処理自体を実施することができず、処理前の金属屑含有焼却灰がほぼそのまま残った。
【0062】
試験例1~4(実施例1~4及び比較例1~4)の結果をまとめると以下のとおりである:
【表1】
これらの結果から、本発明の処理方法においては、金属屑含有焼却灰を処理して、焼却灰と金属屑とを簡便に分離し、製鋼原料を得ることができることが明らかになった。また、本発明の処理装置により、焼却灰と金属屑とを簡便に分離し、製鋼原料を得ることができることも明らかになった。
【0063】
2.処理効率測定
工程(a)、工程(b)、及び全工程に要する時間(作業時間)を以下のように測定した。
工程(a):15mmメッシュ又は10mmメッシュを備えたトロンメルを用いて、焼却灰を篩い分けるのに要する時間(作業時間)を計測した。
工程(b):7mmメッシュを備えたトロンメルを用いて、上記工程(a)で篩い分けられた焼却灰をさらに篩い分けるのに要する時間(作業時間)を計測した。
全工程:上記工程(a)及び工程(b)に要した時間を合算し求めた。
工程(a)に15mmメッシュを用いた場合の結果を表1に示す。工程(a)に10mmメッシュを用いた場合の結果を表2に示す。
【0064】
【0065】
表1及び表2に示すように、本発明の処理方法及び処理装置によれば、2.0t/h以上の処理効率で、金属屑含有焼却灰を処理し、製鋼原料を得ることができることが確認された。かかる処理効率は、従来技術を上回るものである。
本発明によれば、従来用いられていた処理装置より簡便な装置を用いることができ、低コストで金属屑含有焼却灰を処理することができるばかりでなく、製鋼原料を従来の方法より高い効率で得ることができる。また、本発明により処理された焼却灰は金属屑含有量が低減されており、溶融固化後に路盤材等に活用できる。
したがって、本発明は、廃棄物処理産業、製鋼原料製造産業、及び土木事業産業、ならびにこれらに関連する産業の発展に寄与するところ大である。