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特開2023-117951レンガ壁ユニット及びレンガ壁構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117951
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】レンガ壁ユニット及びレンガ壁構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20230817BHJP
   E04C 1/39 20060101ALI20230817BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
E04F13/08 102Z
E04C1/39 105
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020788
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 駿一
(72)【発明者】
【氏名】桑原 貴士
(72)【発明者】
【氏名】黒河 勝之
(72)【発明者】
【氏名】米村 久弥
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸蔵
(72)【発明者】
【氏名】山本 佑
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 治哉
(72)【発明者】
【氏名】江副 敏史
(72)【発明者】
【氏名】多喜 茂
(72)【発明者】
【氏名】土田 昌平
【テーマコード(参考)】
2E110
2E174
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110BA13
2E110CA08
2E110CC06
2E110DA06
2E110DA08
2E110DC12
2E110DC24
2E110DC36
2E110EA01
2E110GB02Y
2E110GB02Z
2E110GB28W
2E174AA05
2E174BA01
2E174BA02
2E174CA03
2E174DA07
2E174DA15
2E174DA33
2E174DA58
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】穴あきレンガを用いて施工しつつ、建設現場における施工作業を軽減できるレンガ壁ユニット及びレンガ壁構築方法を提供する。
【解決手段】レンガ壁ユニット20は、縦下地材32と複数の横下地材34とが直交して互いに連結された取付フレーム30と、複数の横下地材34の間に配置され、横下地材34に固定された鉄筋40と、鉄筋40が挿通された貫通孔を有し、横下地材34の間に積層されてレンガ壁BWを形成する複数のレンガブロックBと、建物における躯体の取付部へ載置され、取付フレーム30を上下させる調整機構50と、取付部へ取付フレーム30を固定する固定部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦下地材と複数の横下地材とが直交して互いに連結された取付フレームと、
前記複数の横下地材の間に配置され、前記横下地材に固定された鉄筋と、
前記鉄筋が挿通された貫通孔を有し、前記横下地材の間に積層されてレンガ壁を形成する複数のレンガブロックと、
建物における躯体の取付部へ載置され、前記取付フレームを上下させる調整機構と、
前記取付部へ前記取付フレームを固定する固定部材と、
を備えたレンガ壁ユニット。
【請求項2】
前記レンガ壁は、前記レンガブロックが配置されない間欠部を有し、
前記調整機構は、前記レンガ壁を正面視して前記間欠部の背面に配置されている、請求項1に記載のレンガ壁ユニット。
【請求項3】
前記鉄筋の上端及び下端の少なくとも一方は、前記取付フレームの面内方向に移動可能とされている、請求項1又は2に記載のレンガ壁ユニット。
【請求項4】
前記取付フレームは、前記躯体にピン接合可能とされている、請求項1~3の何れか1項に記載のレンガ壁ユニット。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のレンガ壁ユニットを吊上げ、前記躯体の取付部まで揚重する工程と、
前記取付部に前記調整機構を載置して、前記調整機構を用いて前記取付フレームを上下移動させて前記躯体に対する高さ位置を調整する工程と、
前記固定部材を用いて前記取付フレームを前記取付部へ固定する工程と、
を備えたレンガ壁構築方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンガ壁ユニット及びレンガ壁構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンガを用いて壁を形成する場合、一般的には、湿式工法で下から上に1段ずつ積み上げて施工する。このような施工方法によると、施工現場での作業時間が長い。また、壁が外壁である場合、雨天時の作業が困難である。
【0003】
そこで、下記特許文献1には、コンクリートの基盤に複数のレンガを貼設したレンガパネルを、建造物の外壁に乾式工法で取付ける方法が示されている。この方法によれば、壁の施工現場でレンガを一段ずつ積み上げる必要がなく、また、乾式工法であるため天候の影響を受けにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-80457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のレンガパネルでは、レンガは、コンクリートの付着力によって保持されているため、付着力によって保持できる程度の重量とする必要がある。このため、使用できるレンガは、厚みが薄いレンガに限定される。すなわち、一般的に組積造に用いられる穴あきレンガを用いて壁を形成することが難しい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、穴あきレンガを用いて施工しつつ、建設現場における施工作業を軽減できるレンガ壁ユニット及びレンガ壁構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のレンガ壁ユニットは、縦下地材と複数の横下地材とが直交して互いに連結された取付フレームと、前記複数の横下地材の間に配置され、前記横下地材に固定された鉄筋と、前記鉄筋が挿通された貫通孔を有し、前記横下地材の間に積層されてレンガ壁を形成する複数のレンガブロックと、建物における躯体の取付部へ載置され、前記取付フレームを上下させる調整機構と、前記取付部へ前記取付フレームを固定する固定部材と、を備える。
【0008】
請求項1のレンガ壁ユニットでは、縦下地材と横下地材とが直交して連結されて取付フレームが形成されている。そして、取付フレームの横下地材の間には、複数のレンガブロックが積層されてレンガ壁が形成されている。横下地材の間には鉄筋が配置され、この鉄筋はレンガブロックの貫通孔へ挿入されている。これにより、レンガ壁は横下地材間に保持される。
【0009】
このレンガ壁ユニットを躯体に取付ける際には、レンガ壁ユニットを吊上げ、調整機構を躯体の取付部へ載置する。そして、調整機構を用いて取付フレームを上下させて取付フレームの位置を調整し、レンガ壁ユニットの姿勢を調整する。また、固定部材を用いて取付フレームを躯体の取付部へ固定する。
【0010】
以上のように、請求項1のレンガ壁ユニットを使用することで、建設現場でレンガを一段ずつ積み上げる必要がない。また、乾式工法であるため、建設現場における施工作業を軽減できる。
【0011】
請求項2のレンガ壁ユニットは、請求項1に記載のレンガ壁ユニットにおいて、前記レンガ壁は、前記レンガブロックが配置されない間欠部を有し、前記調整機構は、前記レンガ壁を正面視して前記間欠部の背面に配置されている。
【0012】
請求項2のレンガ壁ユニットでは、レンガ壁に、レンガブロックが配置されない間欠部が形成され、この間欠部の背面に調整機構が配置されている。このため、この間欠部を作業口として、レンガ壁ユニットの位置調整作業を、レンガ壁の正面から実施できる。これにより、レンガ壁の背面や側面から作業する場合と比較して、施工し易い。
【0013】
請求項3のレンガ壁ユニットは、請求項1又は2に記載のレンガ壁ユニットにおいて、前記鉄筋の上端及び下端の少なくとも一方は、前記取付フレームの面内方向に移動可能とされている。
【0014】
請求項3のレンガ壁ユニットでは、鉄筋の上端及び下端の少なくとも一方が取付フレームの面内方向に移動可能とされている。このため、例えば地震時に上下の横下地材が横方向に変位した場合、その変位を吸収できる。これにより、レンガブロックの損傷を抑制できる。
【0015】
請求項4のレンガ壁ユニットは、請求項1~3の何れか1項に記載のレンガ壁ユニットにおいて、前記取付フレームは、前記躯体にピン接合可能とされている。
【0016】
請求項4のレンガ壁ユニットでは、取付フレームが、躯体にピン接合可能とされている。これにより、例えば地震時に躯体が横方向に変位した場合、レンガ壁ユニットが躯体に対して相対的に変位して変位を吸収できる。これにより、レンガ壁ユニットの損傷を抑制できる。
【0017】
請求項5のレンガ壁構築方法は、請求項1~4の何れか1項に記載のレンガ壁ユニットを吊上げ、前記躯体の取付部まで揚重する工程と、前記取付部に前記調整機構を載置し、前記調整機構を用いて前記取付フレームを上下移動させて前記躯体に対する高さ位置を調整する工程と、前記固定部材を用いて前記取付フレームを前記取付部へ固定する工程と、を備える。
【0018】
請求項5のレンガ壁構築方法に用いられるレンガ壁ユニットは、縦下地材と横下地材とが直交して連結されて取付フレームが形成されている。そして、取付フレームの横下地材の間には、複数のレンガブロックが積層されてレンガ壁が形成されている。横下地材の間には鉄筋が配置され、この鉄筋はレンガブロックの貫通孔へ挿入されている。これにより、レンガ壁は横下地材間に保持される。
【0019】
そして、請求項5のレンガ壁構築方法においては、レンガ壁ユニットを吊上げ、調整機構を躯体の取付部へ載置する。そして、調整機構を用いて取付フレームを上下移動させて取付フレームの位置を調整し、レンガ壁ユニットの姿勢を調整する。また、固定部材を用いて取付フレームを躯体の取付部へ固定することにより、レンガ壁ユニットが躯体に固定される。
【0020】
以上のように、請求項5のレンガ壁構築方法では、建設現場でレンガを一段ずつ積み上げる必要がなく、また、乾式工法であるため、建設現場における施工作業を軽減できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、穴あきレンガを用いて施工しつつ、建設現場における施工作業を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットを示す立面図であり、(B)はレンガブロックを示す斜視図である。
図2】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットのレンガ壁を省略した立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図であり(C)は(A)のC-C線矢視図である。
図3】本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットにおける鉄筋の固定構造を示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットが固定される建物を示す立面図である。
図5】本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットを建物の取付位置に配置した状態を示す立面図である。
図6】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットにおける調整機構を示す分解立面図であり、(B)は(A)のB-B線矢視図である。
図7】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットにおける調整機構を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線矢視図である。
図8】本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットを建物の取付位置に配置した状態を示す立面図である。
図9】本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットを上下方向に連結している状態を示す立面図である。
図10】本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットにおける弾性シール材の配置を示す立面図である。
図11】本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニットにおける弾性シール材の配置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態に係るレンガ壁ユニット及びレンガ壁構築方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0024】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0025】
<レンガ壁ユニット>
図1(A)には、本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニット20が示されている。レンガ壁ユニット20は、レンガブロックBを積層してユニット化した構造体であり、建物の外壁材又は内壁材として用いられる。レンガ壁ユニット20は、このレンガブロックBと、取付フレーム30と、鉄筋40と、調整機構50と、を備えている。
【0026】
(レンガブロック)
図1(B)に示すように、レンガブロックBには複数の貫通孔BHが形成されている。レンガブロックBは、この貫通孔BHが上下方向に沿う状態で使用される。貫通孔BHには、鉄筋40が挿通された状態でモルタルMなどの湿式硬化剤が充填される。
【0027】
なお、レンガブロックBとしては、粘土や泥を焼成させたものの他、日干しレンガや、樹脂を用いて形成されたものを用いてもよい。
【0028】
図1(A)に示すように、レンガブロックBは、後述する横下地材34A及び34Bの間に積層して配置され、また、横下地材34B及び34Cの間に積層して配置されている。さらに、レンガブロックBは、横下地材34Aの上方にも単層にて配置されている。これにより、レンガブロックBは、レンガ壁BWを形成する。
【0029】
ここで、レンガ壁BWには、レンガブロックBが配置されない間欠部Vを有している。レンガ壁BWを正面視して、この間欠部Vの背面には、後述する縦下地材32の貫通孔32Hが配置される。また、後述する調整機構50も配置される。
【0030】
(取付フレーム)
図2(A)には、レンガブロックBを省略した状態のレンガ壁ユニット20が示されている。この図に示すように、取付フレーム30は、複数の縦下地材32と複数の横下地材34とが直交して配置され、かつ、互いに連結されて形成されている。
【0031】
具体的には、3本の横下地材34(横下地材34A、34B及び34C)が、それぞれ横方向(水平方向)に沿って配置されている。これらの横下地材34A、34B及び34Cは、上下方向に沿って間隔を空けて配置されている。
【0032】
横下地材34A、34B及び34Cはアングル材を用いて形成されており、図2(B)に示すように、最も上方に配置された横下地材34Aは、横断面視にて、上下方向に沿う辺が横方向に沿う辺の一端部から下向きに突出するように配置されている。一方、横下地材34B及び34Cは、横断面視にて、上下方向に沿う辺が横方向に沿う辺の一端部から上向きに突出するように配置されている。
【0033】
また、図2(A)に示すように、2本の縦下地材32が、それぞれ上下方向(鉛直方向)に沿って配置されている。これらの縦下地材32は、横方向に間隔を空けて配置されている。また、2本の縦下地材32は、それぞれ横下地材34A、34B及び34Cの両端部に配置されている。
【0034】
それぞれの縦下地材32は、アングル材を用いて形成されており、図2(C)に示すように、平断面視にて、横下地材34に沿う辺が、横下地材34の延設方向と直交する方向に沿う辺の一端部から外向きに突出するように配置されている。「外向き」とは、横下地材34において、近い側の端部に向いていることを示す。
【0035】
なお、図2(A)に示すように、縦下地材32において、横下地材34Aの上方及び横下地材34Bの下方に配置される部分には、ボルト挿通用の貫通孔32Hが形成されている。
【0036】
横下地材34A、34B及び34C及び2本の縦下地材32は、以上のように配置された状態で、それぞれ溶接して固定されている。
【0037】
(鉄筋)
鉄筋40は、横下地材34の間に配置され、横下地材34に固定されている。具体的には、横下地材34A及び34Bの間に複数の鉄筋40Uが配置されている。これらの鉄筋40Uの上端部は、上側の横下地材34Aに固定され、鉄筋40Uの下端部は、横下地材34Aと下側に隣り合う横下地材34Bに固定されている。
【0038】
同様に、横下地材34B及び34Cの間に複数の鉄筋40Dが配置されている。これらの鉄筋40Dの上端部は、上側の横下地材34Bに固定され、鉄筋40Dの下端部は、横下地材34Bと下側に隣り合う横下地材34Cに固定されている。
【0039】
また、本実施形態においては、鉄筋40として鉄筋40Tを含んでいる。鉄筋40Tは、下端部が横下地材34Aに固定され、上端部が自由端とされた鉄筋である。
【0040】
図1(A)に示したレンガブロックBにおける貫通孔BHの何れかには、鉄筋40U、40D、40Tの何れかが挿通されている。具体的には、横下地材34A及び34Bの間に配置されたレンガブロックBの貫通孔BHには、鉄筋40Uが挿通されている。また、横下地材34B及び34Cの間に配置されたレンガブロックBの貫通孔BHには、鉄筋40Dが挿通されている。さらに、横下地材34Aの上方に配置されたレンガブロックBの貫通孔BHには、鉄筋40Tが挿通されている。なお、鉄筋40Tの上端部は、レンガブロックBの貫通孔BHの内部に配置される。
【0041】
図3に示すように、鉄筋40Dの上端部は、横下地材34Bに形成された貫通孔34BHに挿通され、ナットN1を用いて固定される。貫通孔34BHは、横下地材34Bの延設方向に沿う長孔とされている。このため、鉄筋40Dの上端部は、ナットN1を捩じ込んだ後においても、取付フレーム30の面内方向であって、横下地材34Bの延設方向に沿って移動可能とされている。
【0042】
鉄筋40Dの上端部、ナットN1及び貫通孔34BHは、緩衝材CNで被覆される。これにより、レンガブロックBの貫通孔BHに充填されるモルタルM(図1(B)参照)が、貫通孔34BHにも充填されることが抑制される。
【0043】
なお、本実施形態において、鉄筋40Dの下端部は、横下地材34Cに対して移動できないように固定されている。但し、本発明の実施形態はこれに限らず、鉄筋40Dの下端部も、上端部と同様の構成によって横下地材34Cに対して移動可能としてもよい。また、鉄筋40Dの下端部を横下地材34Cに対して移動可能とする場合は、上端部を、横下地材34Bに対して移動できないように固定してもよい。さらに、鉄筋40Dの上端部及び下端部の双方を、それぞれ横下地材34B及び34Cに固定してもよい。
【0044】
以上の構成は、鉄筋40Uの上端部と横下地材34Aとの固定構造及び鉄筋40Uの下端部と横下地材34Bとの固定構造にも適用することができる。
【0045】
なお、本実施形態においてレンガ壁ユニット20を形成する方法の一例としては、以下の手順が挙げられる。まず、工場などにおいて、2本の縦下地材32に横下地材34Cを固定する。そして、横下地材34A及び34Bが固定されていない状態で、横下地材34Cに鉄筋40Dの下端部を固定して、この鉄筋40Dを通してレンガブロックBを積み上げる。さらに、貫通孔BHにモルタルM(図1(B)参照)を充填する。
【0046】
次に、鉄筋40Dの上端部を、横下地材34Bの貫通孔34BHに挿通し、この状態で横下地材34Bを縦下地材32に固定する。なお、この際、横下地材34Bには、予め鉄筋40Uの下端部を固定しておくことが好ましい。さらにナットN1を用いて、鉄筋40Dの上端部を横下地材34Bに固定する。
【0047】
次に、同様に、鉄筋40Dを通してレンガブロックBを積み上げ、貫通孔BHにモルタルM(図1(B)参照)を充填し、横下地材34Aを縦下地材32に固定する。そして、ナットN1を用いて、鉄筋40Uの上端部を、横下地材34Aに固定する。この際、横下地材34Aには、予め鉄筋40Tの下端部を固定しておくことが好ましい。そして、鉄筋40Tに、レンガブロックBを挿通する。
【0048】
(調整機構)
調整機構50は、図1に二点鎖線の囲みで示す位置、すなわち2本の縦下地材32におけるそれぞれの上端部に形成されている。この構成については後述する。
【0049】
<建物>
上述したレンガ壁ユニット20は、図4に示す建物10の躯体である柱12に固定される。柱12はH形鋼や角型鋼管で形成された鉄骨柱とされ、レンガ壁ユニット20が取付けられる面に、下地材14が溶接によって固定されている。下地材14は鉄骨製のチャンネル材であり、軸方向の端面が柱12に溶接されている。
【0050】
下地材14はそれぞれの柱12毎に、横方向に高さを揃えて2本並べて配置されている。また、これら2本の下地材14の上方には、調整部材16が架け渡されて溶接されている。調整部材16は鋼製のアングル材とされている。調整部材16の軸方向の両端部には、上下方向に長い長孔16Hが形成されている。2本の下地材14及び調整部材16を1つの単位とする構成を、本明細書においては、取付部18と称す。
【0051】
取付部18において、2本の下地材14は、調整部材16の延設方向が水平面に平行になるように、柱12に固定されている。この水平方向の墨出し精度を確保する観点や、取付部18の上下方向の間隔精度を確保する観点から、調整部材16は、工場において下地材14に固定することが好ましい。
【0052】
一方、調整部材16は、この調整部材16に固定されるレンガ壁ユニット20の面精度を確保する観点から、レンガ壁ユニット20を柱12に固定する施工現場において、柱12の建て方後に、溶接することが好ましい。
【0053】
また、図4には、二点鎖線でレンガ壁ユニット20の外形の概略が示されている。この二点鎖線で示すように、1つのレンガ壁ユニット20は、2本の柱に跨って配置される。また、1つのレンガ壁ユニット20は、上下方向に隣り合う2箇所の取付部18に跨って配置される。すなわち、1つのレンガ壁ユニット20は、2本の柱に跨る4つの取付部18に固定される。
【0054】
また、それぞれの取付部18には、横方向に隣り合う2つのレンガ壁ユニット20が固定される。
【0055】
<建物とレンガ壁ユニットの取付構造>
図5には、建物10にレンガ壁ユニット20を固定する際の、それぞれの位置関係を示した状態が示されている。この図においては、建物10とレンガ壁ユニット20との位置関係を把握し易いように、レンガブロックB及び鉄筋40の図示は省略されている。
【0056】
この図に示すように、レンガ壁ユニット20は、縦下地材32が、調整部材16の端部と重なるように配置される。さらに、図6(A)には図5に二点鎖線で示した領域Eの拡大図が示されているが、この図にも示されるように、レンガ壁ユニット20は、縦下地材32に形成された貫通孔32Hが、調整部材16の長孔16Hの前方に位置するように配置される。
【0057】
ここで、図6(B)に示されるように、縦下地材32の上端部には、プレート32Pが溶接されている。プレート32Pには貫通孔が形成され、上方からボルトB3が挿通される。ボルトB3には、プレート32Pの下方からナットN3が捩じ込まれる。
【0058】
これにより、図7(B)に示されるように、ナットN3の捩じ込み量に応じて、調整部材16に対するプレート32Pの高さHが決まる。すなわち、建物10に対するレンガ壁ユニット20の高さ方向の位置が位置決めされる。なお、ナットN4は、ナットN3の捩じ込み量を調整後、ボルトB3をプレート32Pに固定するためのナットである。これらのプレート32P、ボルトB3、ナットN3及びN4は、上述した調整機構50を形成している。なお、取付構造を明確にするため、図6、7においてレンガブロックBの図示は省略されている。
【0059】
また、建物10に対するレンガ壁ユニット20の高さ方向の位置が位置決めされた状態で、ボルトB2及びナットN2を用いて、縦下地材32と調整部材16とを固定する。縦下地材32と調整部材16との間には、スペーサSを配置して、縦下地材32と調整部材16の距離(換言すると、レンガ壁BWの面外方向における位置、図1参照)を位置決めする。これにより、建物10にレンガ壁ユニット20が固定される。これらのボルトB2、ナットN2及びスペーサSは、本発明における固定部材である。
【0060】
なお、これらの調整機構50及びボルトB2、ナットN2及びスペーサSによる固定部材は、建物10に対して、レンガ壁ユニット20をピン接合する。
【0061】
<レンガ壁構築方法>
建物10にレンガ壁BWを構築するには、図1(A)に示すレンガ壁ユニット20を、クレーン等を用いて吊上げて、図8に示すように、建物10の躯体である柱12に設けられた4か所の取付部18の前方まで揚重する。上下方向に隣り合って配置されるレンガ壁ユニット20同士は、図9に示すように、連結部材32Jを用いて縦下地材32同士を連結することにより、互いに固定される。
【0062】
次に、図7に示すように、取付部18における調整部材16に、調整機構50におけるボルトB3を載置する。そして、ナットN3の捩じ込み量を調整して、取付フレーム30における縦下地材32を上下移動させて、柱12に対する高さ位置を調整する。この際、図8に示す両側の縦下地材32の双方の位置を調整する。
【0063】
次に、固定部材であるボルトB2、ナットN2及びスペーサSを用いて、縦下地材32と調整部材16とを固定する。
【0064】
以上の作業を繰り返すことで、建物10にレンガ壁ユニット20が順次固定され、建物10にレンガ壁BWが構築される。間欠部Vには、任意のタイミングで、レンガブロックBが配置される。
【0065】
また、図10及び図11に示すように、横下地材34を挟んで配置されるレンガブロックBの間は、弾性シール材WSによってシールされる。同様に、横方向に隣り合うレンガ壁ユニット20におけるそれぞれのレンガブロックBの間も、弾性シール材WSによってシールされる。図10においては、間欠部Vの周囲にも弾性シール材WSが示されているが、この部分における弾性シール材WSは、間欠部VにレンガブロックBが配置された後に施工される。
【0066】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニット20では、図2に示すように、縦下地材32と横下地材34とが直交して連結されて取付フレーム30が形成されている。そして、取付フレーム30の横下地材34の間には、図1に示すように、複数のレンガブロックBが積層されてレンガ壁BWが形成されている。
【0067】
横下地材34の間には鉄筋40が配置され、この鉄筋40は、図1(B)に示すレンガブロックBの貫通孔BHへ挿入されている。これにより、レンガ壁BWは横下地材34間に保持される。また、貫通孔BHにはモルタルMが充填されているので、レンガブロックBのレンガ壁ユニット20に対する動きが抑制される。
【0068】
このレンガ壁ユニット20を躯体である柱12に取付ける際には、上述したように、レンガ壁ユニット20を吊上げ、図7に示すように、調整機構50におけるボルトB3を柱12の取付部18へ載置する。そして、調整機構50を用いて取付フレーム30を上下させて取付フレーム30の位置を調整し、レンガ壁ユニット20の姿勢を調整する。また、固定部材であるボルトB2、ナットN2及びスペーサSを用いて、取付フレーム30を取付部18へ固定する。
【0069】
以上のように、本実施形態におけるレンガ壁ユニット20を使用することで、建設現場でレンガブロックBを一段ずつ積み上げる必要がない。また、乾式工法であるため、建設現場における施工作業を軽減できる。
【0070】
また、本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニット20では、図1に示すように、レンガ壁BWに、レンガブロックBが配置されない間欠部Vが形成され、この間欠部Vの背面に調整機構50が配置されている。このため、この間欠部Vを作業口として、レンガ壁ユニット20の位置調整作業及び固定作業を、レンガ壁BWの正面から実施できる。これにより、レンガ壁BWの背面や側面から作業する場合と比較して、施工し易い。
【0071】
また、本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニット20では、図3に示すように、鉄筋40の上端及び下端の少なくとも一方(図3に示した例では上端)が取付フレーム30の面内方向に移動可能とされている。このため、例えば地震時に上下の横下地材34が横方向に変位した場合、その変位を吸収できる。これにより、レンガブロックBの損傷を抑制できる。
【0072】
また、本発明の実施形態に係るレンガ壁ユニット20では、取付フレーム30が、柱12にピン接合されている。これにより、例えば地震時に柱12が横方向に変位した場合、レンガ壁ユニット20が柱12に対して相対的に変位して変位を吸収できる。これにより、レンガ壁ユニット20の損傷を抑制できる。
【符号の説明】
【0073】
10 建物
12 柱(躯体)
18 取付部
20 レンガ壁ユニット
30 取付フレーム
32 縦下地材
34 横下地材
34A 横下地材
34B 横下地材
34C 横下地材
40 鉄筋
40U 鉄筋
40D 鉄筋
40T 鉄筋
50 調整機構
B レンガブロック
BH レンガ壁
V 間欠部
B2 ボルト(固定部材)
N2 ナット(固定部材)
S スペーサ(固定部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11