(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011806
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】表示制御装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
B60K35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175583
(22)【出願日】2022-11-01
(62)【分割の表示】P 2018045538の分割
【原出願日】2018-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友二
(57)【要約】 (修正有)
【課題】様々な条件下において、移動体の運転者に対する運転支援情報を、当該移動体の運転者に視認しやすい適切な態様で表示領域内に表示することを可能とする表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の表示制御装置は、移動体の周囲の風景に重畳して表示領域に画像を表示させる表示制御部と、前記風景内において前記画像を重畳すべき位置である理想重畳位置を特定する位置特定部と、を含み、前記表示制御部は、前記理想重畳位置が前記風景内の前記表示領域に対応した領域である対応領域の外にある場合に、前記理想重畳位置に基づく前記対応領域内の位置に重畳して前記画像を表示させることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲の風景に重畳して表示領域に画像を表示させる表示制御部と、
前記風景内において前記画像を重畳すべき位置である理想重畳位置を特定する位置特定部と、を含み、
前記表示制御部は、前記理想重畳位置が前記風景内の前記表示領域に対応した領域である対応領域の外にある場合に、前記理想重畳位置に基づく前記対応領域内の位置に重畳して前記画像を表示させることを特徴とする表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置に関し、例えば、自動車等の移動体の運転者を支援する情報を表示可能な表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の運転支援装置として、フロントガラスやイメージコンバイナ等に情報を表示するヘッドアップディスプレイ(以下、単にHUDとも記載する)が用いられている。また、例えば、当該ヘッドアップディスプレイを用いて、表示対象物に画像を重畳させるような表示をする表示装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、ヘッドアップディスプレイを用いて、車両が進行すべき方向を示すアイコン画像を道路と重ねて表示する表示装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-11666号公報
【特許文献2】特開2017-76175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記した表示装置を用いて車両が進行すべき進路を示す進路アイコン画像を表示する場合、進路となる道路の曲率が大きい場合等、道路の形状によってはヘッドアップディスプレイの表示領域内にアイコン画像が収まりきらず適正な情報表示ができないことがあるという問題が一例として挙げられる。適正な情報表示ができない場合の例としては、表示すべき進路アイコン画像のうち表示領域に収まる車両前方に見て手前側の進路アイコン画像のみが表示されるため、進路がわかりづらい場合が挙げられる。
【0006】
また、例えば、画像によって指し示すべき対象物の運転者から見た位置が表示領域外にある際に対象物について簡易表示をするようにした場合、対象物の位置が表示領域内と外との間で遷移すると、標準表示と簡易表示とが頻繁に切り替わり視認が困難となり得るという問題が一例として挙げられる。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、例えば、様々な条件下において、移動体の運転者に対する運転支援情報を、当該移動体の運転者に視認しやすい適切な態様で表示領域内に表示することを可能とする表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、移動体の周囲の風景に重畳して表示領域に画像を表示させる表示制御部と、前記風景内において前記画像を重畳すべき位置である理想重畳位置を特定する位置特定部と、を含み、前記表示制御部は、前記理想重畳位置が前記風景内の前記表示領域に対応した領域である対応領域の外にある場合に、前記理想重畳位置に基づく前記対応領域内の位置に重畳して前記画像を表示させることを特徴とする表示制御装置である。
【0009】
また、請求項6に記載の発明は、移動体の周囲の風景に重畳して表示領域に前記移動体の進路を指示する進路指示画像を表示させる表示制御部と、前記風景内において前記画像を重畳すべき位置である理想重畳位置を特定する位置特定部と、を有し、前記表示制御部は、前記移動体の速度及び前記移動体の進路の曲率に基づいた値が閾値以上の場合には、前記表示領域内の前記移動体の進路に基づいた所定の位置に前記画像を表示することを特徴とする表示制御装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1である表示制御装置を搭載した自動車の運転席部分の斜視図である。
【
図3】本発明の実施例1である表示制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】表示画像を重畳可能な領域及び表示画像の重畳位置の一例を示す図である。
【
図5】案内画像表示時のフロントガラス越しに見た風景及びフロントガラス上の表示領域を示す図である。
【
図6】進路となる道路が曲線である場合の表示画像の重畳位置の一例を示す図である。
【
図7】案内画像表示時のフロントガラス越しに見た風景及びフロントガラス上の表示領域を示す図である。
【
図8】本発明の実施例1である表示制御装置の表示制御フローのフロー図である。
【
図9】進路となる道路が曲線である場合の表示画像の重畳位置の一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例2である表示制御装置の表示制御フローのフロー図である。
【
図11】進路となる道路が曲線である場合の表示画像の重畳位置の一例を示す図である。
【
図12】案内画像表示時のフロントガラス越しに見た風景及びフロントガラス上の表示領域を示す図である。
【
図13】画像表示時のフロントガラス越しに見た風景及びフロントガラス上の表示領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明する。しかし、これらを適宜改変し、組み合わせてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。また、以下の説明において、画像とは動画及び静止画を含むものとして説明する。
【実施例0012】
以下に、本発明の実施例1である表示制御装置10について、添付の図面を参照して説明する。実施例1おいては、表示制御装置10を移動体の一例としての自動車Mに搭載する際を例に説明する。
【0013】
図1は、表示制御装置10が取り付けられた移動体としての自動車Mの運転席部分を自動車Mの内部から見た斜視図である。
図1では、取り付け例として、自動車Mの前席のダッシュボードDBのセンターコンソール付近に表示制御装置10が取り付けられている場合を示す。
【0014】
GPS受信機11は、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号(GPS信号)を受信する装置である。GPS受信機11は、例えば、ダッシュボードDB上に配されている。なお、GPS受信機11は、GPS信号が受信できればどこに配されていてもよい。GPS受信機11は、表示制御装置10と通信可能に接続されており、受信したGPS信号を表示制御装置10に送信することが可能である。
【0015】
投影装置13は、フロントガラス投影型のヘッドアップディスプレイを構成する装置である。投影装置13は、ダッシュボードDB内に設けられ、開口部13Aを介してフロントガラスFGに投影光を照射することでフロントガラスFGに画像または映像を投影可能である。
【0016】
投影装置13は、表示制御装置10と通信可能に接続されており、表示制御装置10の制御に基づいてフロントガラスFGの運転席付近の領域である表示領域ARに投影光を照射し、フロントガラスFGの表示領域ARにおいて画面表示を行うことが可能である。以下の説明において、表示領域ARの幅方向と垂直な中心線を中心線AX(図中一点鎖線)として説明する。
【0017】
図2は、投影装置13の構成を示す図である。投影装置13は、ダッシュボードDB内に収まるように設けられている。なお、
図2においては、ダッシュボードDBの断面のみにハッチングを行い、光学部材及びフロントガラスFGのハッチングは省略している。また、
図2おいては、ドライバの視点を視点EYとして説明する。
【0018】
光源21は、例えば、出射光ELによる走査が可能である光源である。光源21は、例えば、レーザ光源及び当該レーザ光源から出射した光を方向可変に反射するMEMSミラーからなる走査装置であってもよい。光源21は、表示制御装置10からの制御信号に応じて、光を出射する。例えば、表示制御装置10は、フロントガラスFGに投影されるべき画像を生成し、光源21に当該画像のデータである画像データを送信する。光源21は、当該画像データに基づいて当該画像を含む出射光ELを出射する。尚、光源21は走査装置でなくてもよい。例えば、光源21は投射レンズを用いた方式(LCOS(Liquid crystal on silicon)方式,液晶プロジェクタ方式やDMD方式)等であってもよい。
【0019】
スクリーン23は、出射光ELの光路上に設けられている板状の部材である。スクリーン23は、光源21と対向している一方の面で出射光ELを受光し、当該出射光ELを散乱・拡散して他方の面から当該出射光ELに応じた画像を表示するための投影光SLを出射するマイクロレンズ等を有する透過型のスクリーンである。尚、スクリーン23はマイクロレンズに代えてLCDパネルを用いたものであってもよい。
【0020】
スクリーン23は、例えば、マイクロレンズに代えて、またはこれに加えて出射光ELを散乱するホログラフィックディフューザまたは拡散板を含んでいてもよい。スクリーン23は、表示制御装置10からの制御信号に応じて駆動するスライド機構(図示せず)によって出射光ELの光路に沿って矢印の方向にスライド可能である。なお、図面の簡略化のため、スクリーン23において散乱され、スクリーン23から出射される投影光SL1は1本の直線で示す。
【0021】
第1の折返しミラー25は、投影光SLが到達する位置に配されている反射部材である。第1の折返しミラー25は、その表面において投影光SLを反射可能に形成されている部材である。具体的には、例えば、折返しミラー23は、合成樹脂やガラス材料からなる基材の表面に蒸着等の手段により反射膜が形成された部材である。
【0022】
第2の折返しミラー27は、第1の折返しミラー25によって反射された投影光SLが到達する位置に配されている反射部材である。第2の折返しミラー27は、その表面において投影光SLを反射可能に形成されている部材である。具体的には、例えば、折返しミラー27は、合成樹脂やガラス材料からなる基材の表面に蒸着等の手段により反射膜が形成された部材である。
【0023】
凹面鏡29は、第2の折返しミラー27によって反射された投影光SLが到達する位置に配されている反射部材である。凹面鏡29は、第2の折返しミラー27に対向している面に凹面29Aを有している。凹面29Aに到達した投影光SLは、凹面29Aによって反射され、ダッシュボードDBに形成されている開口13Aを通過して上方に出射される。
【0024】
開口部13Aから上方に出射した投影光SLは、フロントガラスFGに到達する。フロントガラスFGに到達した投影光SLは、フロントガラスFGにおいて反射される。フロントガラスFGによって反射された投影光SLは、フロントガラスFGの前方の位置に、ドライバの視点EYから視認可能な虚像VDを形成する。
【0025】
虚像VDの位置は、スクリーン23をスライドさせることによって、視点EYから見て手前及び奥に図中矢印に沿った方向に移動させることが可能である。
【0026】
投影光SLはスクリーン23からの光である。よって、虚像VDは、光源21から出射された光によってスクリーン23に投影された画像に応じた虚像となる。虚像VDは、フロントガラスFGから十分に遠方に形成することによって風景と重ねて立体的に表示することが可能なAR(拡張現実:Augmented Reality)表示を形成する。
【0027】
なお、このように、フロントガラスFGを介して虚像VDを形成する場合、凹面鏡29は、拡大鏡としての機能を有する。すなわち、凹面鏡29は、スクリーン23からの投影光SLに含まれる画像が拡大されるように、投影光SLを開口部13Aに向けて反射する。そして、当該反射された投影光SLがフロントガラスFGに達する。
【0028】
なお、凹面鏡29の凹面29Aは、フロントガラスFGに達した投影光SLによって形成される虚像VDが、視点EYからみて適切な大きさに見えるように形成される。
【0029】
[システムの構成]
図3に表示制御装置10の構成を示す。例えば、表示制御装置10は、システムバス31を介して、大容量記憶装置33と、制御部35と、センサ入力部37と、出力部39とが協働する装置である。
【0030】
大容量記憶装置33は、例えば、ハードディスク装置、SSD(solid state drive)、フラッシュメモリ等により構成されており、オペレーティングシステムや、端末用のソフトウェア等の各種プログラムを記憶する。
【0031】
なお、各種プログラムは、例えば、他のサーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、記録媒体に記録されて各種ドライブ装置を介して読み込まれるようにしてもよい。すなわち、大容量記憶装置33に記憶される各種プログラム(後述する表示制御装置10における処理を実行するためのプログラムを含む)は、ネットワークを介して伝送可能であるし、また、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録して譲渡することが可能である。
【0032】
大容量記憶装置33には、地図情報データベース(地図情報DB)33Aが構築されている。地図情報データベース33Aは、道路地図を含む地図情報を保持している。当該地図情報には、道路の曲率等道路の形状に関する情報も含まれている。また、当該地図情報には、自動車Mの運転に資する情報である運転支援情報に関する情報が含まれ得る。当該運転支援情報に関する情報としては、例えば、道路上の事故多発地点等、運転に注意が必要な地点に関する情報が挙げられる。
【0033】
制御部35は、CPU(Central Processing Unit)35A、ROM(Read Only Memory)35B、RAM(Random Access Memory)35C等により構成され、コンピュータとして機能する。そして、CPU35Aが、ROM35Bや大容量記憶装置33に記憶された各種プログラムを読み出し実行することにより各種機能を実現する。
【0034】
制御部35は、上述した投影装置13によって表示される画像を生成することが可能である。また、制御部35は、大容量記憶装置33内に構築されている地図情報データベース33Aに含まれている情報に基づいて、自動車Mの経路案内を実行可能であってもよい。すなわち、制御部35は、カーナビゲーションとしての機能を発揮しうる。例えば、制御部35は、経路案内処理を実行し、当該経路案内に必要な情報に関する画像を生成し、投影装置13に当該画像を表示させるための制御命令を発することが可能である。
【0035】
センサ入力部37は、表示制御装置10とGPS受信機13とを通信可能に接続するインタフェース部である。また、センサ入力部37は、表示制御装置10と自動車Mの進行方位を検出する方位センサOS及び自動車Mの加速度を検出する加速度センサASとを通信可能に接続するインタフェース部である。例えば、方位センサOS及び加速度センサASは、自動車Mに搭載されている。なお、方位センサOS及び加速度センサASは、表示制御装置10に含まれていてもよい。
【0036】
制御部35は、投影装置13に表示させる画像の生成及び当該生成した画像の表示位置を決定するにあたり、地図情報データベース33Aの情報、並びに方位センサOS及び加速度センサASから得られる情報を用いることが可能である。
【0037】
出力部39は、投影装置13と通信可能に接続されている。制御部35は、出力部39を介して、投影装置13に映像または画像信号を送信して投影装置13を制御することで、投影装置13を用いてフロントガラスFGに映像または画像を表示させることが可能である。
【0038】
[表示制御]
以下、表示制御装置10の表示制御について説明する。表示制御装置10は、投影装置13によってフロントガラスFGの表示領域ARに表示すべき画像がある場合に、当該画像を表示させる制御命令を投影装置13に送信する。以下、一例として、進路を示す進路案内表示を投影装置13に表示させる場合について説明する。
【0039】
図4は、直線道路を走行している際の自動車Mを上方から見た上面図である。
図4において、自動車Mが走行すべき進路となる道路または車線を車線Rとし、車線Rの中心線を中心線CX(図中一点鎖線)としている。また、
図4においては、理想的な進路案内表示としての3つの理想画像(図中くさび形の図形)AI1、AI2、AI3(以下、まとめて単に表示画像AIとも称する)が示されている。進路指示画像としての3つの理想画像AI1、AI2、AI3は、中心線CXに沿って車線Rの路面に沿うかまたは貼り付いた位置でありかつ自動車Mとの距離が互いに異なる位置である位置(X
1,Y
1,Z
1)、(X
2,Y
2,Z
2)、(X
3,Y
3,Z
3)に重畳されるべきとして示されている。
【0040】
以下の説明においては、自動車Mは、表示領域ARの中心線AXが車線Rの中心線CXに沿って移動するように走行しているとして説明を行う。また、以下の説明においては、自動車Mの幅方向をX方向、自動車Mの進行方向をY方向、自動車Mの上下方向または地面と垂直な方向をZ方向とした座標に基づいて説明する。また、フロントガラスFGの前端の中心線CXと重なる点を点O(X0,Y0,Z0)として説明する。
【0041】
また、表示領域ARに表示される画像を重畳可能な自動車Mの周囲の風景内の領域として、点Oから自動車Mの前方を見てθwの角度範囲にある領域(図中二点鎖線に挟まれた領域)を対応領域としての重畳可能領域SRとして示している。重畳可能領域SRは、視点EYから表示領域ARを介して臨むことができる風景内の領域ともいえる。すなわち、表示領域ARに表示した画像は、重畳可能領域SR内の風景領域に重畳することが可能である。
【0042】
例えば、理想画像AI1、AI2、AI3は、それぞれ、自動車Mが2秒後、2.5秒後、2.75秒後に到達する領域に位置するのが好ましい。
図4においては、理想画像AI1、AI2、AI3がこの順に、中心線CXに沿った自動車Mからの距離がだんだん大きくなるように配されている。理想重畳位置としての理想画像AIの各々の位置は、進路である車線Rの中心線CXに沿っておりかつ自動車Mの速度に応じて決まる。従って、理想画像AIの各々位置は、自動車Mの速度及び進路の曲率によって特定され得る。
【0043】
図5は、
図4の状況において、運転者の視点EY(
図2参照)からフロントガラスFGを介して見た自動車Mの前景の概略図を示している。
図5においては、表示領域ARの幅方向をx方向、高さ方向をy方向として説明する。
【0044】
また、実際に表示領域ARに表示されている画像を表示画像DI1、DI2、DI3(以下、まとめて単に表示画像DIとも称する)として示している。
図5において、表示画像DI1、DI2、DI3は、それぞれ理想画像AI1、AI2、AI3に対応しており、それぞれ
図4中の理想画像AI1、AI2、AI3の位置に重畳されるように表示されている。すなわち、風景内の理想画像AIのそれぞれが配されている位置に重畳されるように表示されている。
【0045】
表示画像DI1、DI2、DI3を表示する場合には、理想画像AI1、AI2、AI3の座標を、
図4における上面視座標系(以下、地図座標系)の座標から、表示領域ARに表示する際の表示座標系の座標を算出する。
【0046】
この座標変換について、以下に説明する。ここでは、地図座標系のX座標及びY座標からの表示座標系のx座標の算出のみについて例示的に説明する。また、地図座標系の原点を点O(
図4参照)とし表示領域ARの幅方向と垂直な中心線AX(図中、中心線CXと重なっている二点鎖線の太線で示す)を表示座標系のx座標の原点とする。地図座標系におけるX座標及びY座標をそれぞれxmap、ymapとし、表示座標系のx座標をxdispとし、xdotを表示領域ARにおけるx方向の表示領域ARの幅とし、Δθw=2・tan(θw/2)とすると、xdispは以下の式によって求まる
【0047】
【0048】
表示領域ARのx方向の解像度がxdotであるので、|xdisp|>1/2xdotの場合には、画像が表示領域ARからはみ出すこととなる。
【0049】
本実施例の表示制御装置10は、このように、理想画像AI1、AI2、AI3の位置に表示画像DI1、DI2、DI3を重畳させるための表示位置が表示領域ARの外にはみ出てしまう場合、表示画像DI1、DI2、DI3の表示位置を表示領域ARに収まるように補正する。
【0050】
図6は、走行中にカーブに差し掛かった自動車Mを上方から見た上面図である。
図6は、理想画像AI1、AI2、AI3の位置が重畳可能領域SRの外側にある場合を示している。所定の速度以上の速度で所定の曲率以上のカーブを走行する場合、
図6のように理想画像AI1、AI2、AI3が重畳可能領域SRの外側に位置してしまう場合が発生する。
【0051】
図7は、
図6の状況において、運転者の視点EY(
図2参照)からフロントガラスFGを介して見た自動車Mの前景の概略図を示している。上述したように、理想画像AI1、AI2、AI3が重畳可能領域SR外にあるので、理想画像AI1、AI2、AI3の位置に重畳して表示画像DI1、DI2、DI3を表示しようとすると、表示領域ARに収まらない表示になってしまう。すなわち、この場合、表示画像DIを理想画像AIの位置に重畳して表示することができない。
【0052】
このような場合、本実施例においては、表示画像DIが表示領域AR内に収まるように、表示画像DIの位置を補正する。表示画像DIの位置の補正は、理想画像AIによって決まる表示画像DIの表示領域ARからのはみ出し量を計算し、当該はみ出し量に基づいて行う。
【0053】
例えば、表示画像の表示範囲の中でx座標において最もはみ出している部分のx座標位置をxdisp_maxとすると、表示座標系のx方向のはみ出し量SVは、以下の式によって算出可能である
【0054】
【0055】
ここで、SV≦0の場合、補正を行わずとも表示画像DIは表示領域AR内に収まるので、表示画像DIの位置の補正は必要ない。SV>0の場合、表示画像DIは位置の補正を行わなければ表示領域ARからはみ出てしまう。
【0056】
表示画像DIの位置の補正するための補正値は、xdisp_max<0の際にはSVとなり、xdisp_max>0の際には-SVとなる。従って、補正後の表示画像DIの位置をxdisp_shiftとすると、 xdisp_shift=xdisp-SV(xdisp >0)、xdisp_shift=xdisp+SV(xdisp<0)となる。
【0057】
上述したように、表示領域ARに表示した画像は、重畳可能領域SR内の風景領域に重畳することが可能である。従って、上記補正を行った表示画像DIは、理想画像AIの重畳されるべき位置から算出された表示位置に補正を加えた表示画像DIの、表示領域ARにおける実際の表示位置によって決まる重畳可能領域SR内の位置に重畳して表示されたこととなる。
【0058】
[表示制御フロー]
以下、本実施例の表示制御装置10の画像表示制御のための制御フローについて説明する。
【0059】
図8は、制御フローの一例としての表示制御フローF1を示している。表示制御フローF1は、例えば、表示制御装置10の電源が入ると繰り返し実行される。例えば、表示制御フローF1は、自動車Mのアクセサリー電源(以下、ACC電源という)がオンになると繰り返し実行される。
【0060】
表示制御フローF1が開始されると、制御部35は、まず、表示する画像が有るか否かを判定する(ステップS1)。この判定は、例えば、経路案内がなされており案内に画像が提供されているか否か、または自動車Mの前方の注意喚起のための画像が提供されているか否かによってなされてもよい。
【0061】
ステップS1において、表示する画像があると判定される(ステップS1:YES)と、制御部35は、表示する画像の重畳位置を特定する(ステップS2)。この重畳位置は、自動車Mの周囲の風景において画像を重畳すべき位置である。例えば、重畳位置は、上記した説明における理想画像AIの位置である。ステップS2において、制御部35は、位置特定部として機能する。ステップS1において、表示する画像がないと判定される(ステップS1:NO)と、その後フローは終了する。
【0062】
ステップS2の終了後、制御部35は、ステップS2において特定された重畳位置に基づいて、投影装置13によってフロントガラスFGに画像を表示させる際の表示位置を算出する(ステップS3)。この表示位置の算出は、例えば、上記した地図座標系から表示座標系への座標の変換である。
【0063】
ステップS3の実行後、制御部35は、算出された表示位置が表示領域AR内に収まるか否かを判定する(ステップS4)。当該判定は、上記したはみ出し量SVの計算によってなされてもよい。
【0064】
ステップS4において、表示位置が表示領域AR内に収まると判定される(ステップS4:YES)と、制御部35は、ステップS3において算出された表示位置に画像を表示する(ステップS5)。
【0065】
ステップS4において、表示位置が表示領域AR内に収まらないと判定される(ステップS4:NO)と、制御部35は表示位置の補正を行う(ステップS6)。この表示位置の補正は、例えば、上記したはみ出し量SVに基づいた補正である。ステップS6の終了後、制御部35は、ステップS6において補正された表示位置に画像を表示する(ステップS5)。ステップS5が終了すると、その後フローは終了する。ステップS3乃至S6において、制御部35は、表示制御部として機能する。
【0066】
本実施例の表示制御装置によれば、例えば、進路となる道路の曲率が大きく、進路となる道路が表示領域外にある場合である等、案内の対象となる地点が、表示領域外にある場合であっても、限られた表示領域に収まる適切な表示を行うことが可能である。すなわち、本実施例の表示制御装置によれば、道路環境に応じて画像の表示位置、言い換えれば風景内における画像の重畳位置を調整することで、適切な表示制御が可能である。
以下に、本発明の実施例2の表示制御装置10について説明する。なお、実施例2の表示制御装置10は、実施例1の表示制御装置10と同様の構成と有しており、表示画像DIの表示位置についての処理が実施例1の表示制御装置10と異なる。
本実施例においてはこのような場合、表示画像DIが表示領域AR内に収まるように、修正理想画像CI1、CI2、CI3(以下、単にまとめて修正理想画像CIとも称する)を生成する。例えば、修正理想画像CIの位置は、画像が重畳可能領域SR内に収まるように理想画像のX座標を変更した位置である。図中では、修正理想画像CI1、CI2、CI3がそれぞれ、(XC1,Y1,Z1)、(XC2,Y2,Z2)、(XC3,Y3,Z3)に重畳されるべきとして示されている。
上記したように、画像を重畳すべき位置が重畳可能領域SR内であれば、表示画像DIは、表示領域AR内に収まる。従って、修正理想画像CIに対応する表示画像DIの表示位置は、表示領域AR内に収まる位置となる。
上記した表示画像DIを表示する処理は、理想画像AIを重畳すべき位置が、表示領域ARに対応した領域である重畳可能領域SRの外にある場合に、当該理想画像AIを重畳すべき位置に基づいて定まる重畳可能領域SR内の位置に重畳して画像を表示させる処理であるといえる。
表示制御フローF2が開始されると、制御部35は、まず、表示する画像が有るか否かを判定する(ステップS1)。この判定は、例えば、経路案内がなされており案内に画像が提供されているか否か、または自動車Mの前方の注意喚起のための画像が提供されているか否かによってなされてもよい。S1において、表示する画像がないと判定すると、その後フローは終了する。
ステップS1において、表示する画像があると判定される(ステップS1:YES)と、制御部35は、重畳可能領域SRを特定する(ステップS2)。この重畳可能領域SRは、表示領域ARに基づいて決まる角度θwに基づいて算出され得る。
ステップS2の実行後、制御部35は、表示する画像の理想重畳位置を特定する(ステップS3)。この理想重畳位置は、自動車Mの周囲の風景において画像を重畳すべき位置である。例えば、理想重畳位置は、上記した説明における理想画像AIの位置である。ステップS3において、制御部35は、位置特定部として機能する。
ステップS3の終了後、制御部35は、ステップS3において特定された理想重畳位置が重畳可能領域SR内に収まっているか否かを判定する(ステップS4)。この判定は、理想重畳画像の座標位置が重畳可能領域SR内に有るか否かに基づいてなされてもよい。
上述のように、理想画像AIの位置は、自動車Mの速度及び進路である車線Rの曲率によって決まり得る。従って、理想重畳位置が重畳可能領域SRに収まっているか否かの判定は、自動車Mの速度及び車線Rの曲率によって判定されてもよい。
具体的には例えば、自動車Mの速度及び車線Rの曲率によって定まる値が閾値以上である場合には、理想重畳位置が重畳可能領域SRに収まっていないと判定されてもよい。
ステップS4において、理想重畳位置が重畳可能領域SR内に収まっていると判定される(ステップS4:YES)と、理想画像AIに対応する表示画像DIを、投影装置13によってフロントガラスFGに表示させる際の表示位置を算出する(ステップS5)。この表示位置の算出は、例えば、理想画像AIの座標を地図座標系から表示座標系へ変換する上記した処理によって行われる。
ステップS4において、理想重畳位置が重畳可能領域SRに収まっていないと判定される(ステップS4:NO)と、ステップS3において特定された理想重畳位置に基づいて、実際に画像を重畳する位置である実際重畳位置を算出する(ステップS6)。例えば、この実際重畳位置の算出処理は、上記した説明における修正理想画像CIの生成によってなされてもよい。
ステップS6の終了後、制御部35は、修正理想画像CIに対応する表示画像DIを、投影装置13によってフロントガラスFGに表示させる際の表示位置を算出する(ステップS5)。この表示位置の算出は、例えば、上修正理想画像CIの座標を地図座標系から表示座標系へ変換する上記した処理によって行われる。
ステップS5の終了後、制御部35は、理想画像AIまたは修正理想画像C1に対応する表示画像DIを、理想画像AIまたは修正理想画像CIに基づいて算出された表示位置に表示する(ステップS7)。ステップS7が終了すると、その後フローは終了する。ステップS4乃至S7において、制御部35は、表示制御部として機能する。
本実施例の表示制御装置によれば、例えば、進路となる道路の曲率が大きく、進路となる道路が表示領域外にある場合である等、案内の対象となる地点が、表示領域外にある場合であっても、限られた表示領域に収まる適切な表示を行うことが可能である。すなわち、本実施例の表示制御装置によれば、道路環境に応じて画像の表示位置、言い換えれば風景内における画像の重畳位置を調整することで、適切な表示制御が可能である。
上記実施例2においては、理想画像AIのX座標位置のみを変えた修正理想画像CIを生成するとした。しかし、修正理想画像CIは、重畳可能領域SR内に収まる限り、理想画像AIのX座標位置のみならずY座標位置及びZ座標位置を変えたものであってもよい。
そこで、修正理想画像として、風景内において進路上の中心線CX上にありかつ重畳可能領域SR内に位置する修正理想画像CAI1、CAI2、CAI3(以下、単にまとめて修正理想画像CAIとも称する)を生成することとしてもよい。また、修正理想画像CAI1,CAI2、CAI3のY座標位置を、理想画像AI及び修正理想画像CIよりも手前の位置に設定してもよい。
すなわち、表示画像DIを、修正理想画像CIを用いた場合よりも風景内の奥行き方向において手前の位置に重畳し、表示画像D1を手前に浮き出る様に表示させてもよい。この表示画像DIの奥行きの制御は、スクリーン23を移動させることでなされてもよい。また、修正理想画像が中心線CXの上方、すなわち車線R2の路面の上方の空中に位置するようにZ座標位置を設定し、表示画像D1を中心線CXの上方の空間に重畳してもよい。
また、表示画像DIの位置を変更すると共に、表示画像DIの各々の相対位置を変更してもよい。例えば、複数の画像を含む理想画像AIの位置が重畳可能領域に収まっている場合と、理想画像AIの少なくともいずれかの画像の位置が重畳可能領域外にある場合とで、表示画像を重畳する位置の相対的な位置関係を変化させることとしてもよい。
上記実施例においては、自動車Mに表示制御装置10が搭載される例を説明した。しかし、表示制御装置10は、他の様々な移動体、例えば、船舶、航空機、自動二輪、モノレール、リニアモーターカー等に応用可能である。