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特開2023-118069物流シミュレータ装置、操業計画作成方法及び製鉄所の操業方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118069
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】物流シミュレータ装置、操業計画作成方法及び製鉄所の操業方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 63/00 20060101AFI20230817BHJP
   C21B 5/00 20060101ALI20230817BHJP
   G06Q 10/087 20230101ALI20230817BHJP
【FI】
B65G63/00 A
C21B5/00 301
G06Q10/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000732
(22)【出願日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2022020778
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】熊野 徹
(72)【発明者】
【氏名】迫田 卓
(72)【発明者】
【氏名】成合 孝一
【テーマコード(参考)】
4K012
5L049
【Fターム(参考)】
4K012BA07
5L049AA16
5L049CC51
(57)【要約】
【課題】実際的な操業計画の立案を可能にする物流シミュレータ装置、操業計画作成方法及び効率化を実現可能な製鉄所の操業方法が提供される。
【解決手段】物流シミュレータ装置は、材料を次工程に搬送する物流を模擬する物流シミュレータ装置であって、条件設定部(320)、在庫置き場への受入ジョブを生成する受入ジョブ生成部(303)、在庫置き場からの払出ジョブを生成する払出ジョブ生成部(304)、緊急払出ジョブを生成する緊急払出ジョブ生成部(306)、ジョブの実施順を決定するジョブ実施順決定部(307)、実施順に従ってジョブを実行するジョブ実行部(308)、停止対象の設備が実行中のジョブを停止する設備停止実行部(309)、在庫置き場及び次工程の在庫量の変動を記録する記録部(310)、終了条件を満たした場合に、シミュレーションを終了して結果を出力するシミュレーション終了部(203)を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を次工程に搬送する物流を模擬する物流シミュレータ装置であって、
設備レイアウト、入荷計画、在庫情報、在庫置き場計画、操業計画、設備停止計画、設備能力、搬送ライン及び前記材料の情報を取得し、シミュレーションのスタート日時、終了日時及び単位時間を設定する条件設定部と、
取得された前記入荷計画及び前記在庫置き場計画に従って、在庫置き場への受入ジョブを生成する受入ジョブ生成部と、
取得された前記在庫情報、前記操業計画及び前記在庫置き場計画に従って、前記在庫置き場からの払出ジョブを生成する払出ジョブ生成部と、
前記材料の情報を用いて、前記次工程の貯蓄在庫量の状況に応じて緊急性の高い払出ジョブである緊急払出ジョブを生成する緊急払出ジョブ生成部と、
前記受入ジョブ、前記払出ジョブ及び前記緊急払出ジョブの実施順を決定するジョブ実施順決定部と、
前記設備レイアウト、前記設備能力、前記搬送ラインの情報を用いて、前記実施順に従ってジョブを実行するジョブ実行部と、
前記設備停止計画に基づいて停止対象の設備が実行中のジョブを停止する設備停止実行部と、
実行されるジョブによる前記在庫置き場の在庫量の変動及び前記次工程の貯蓄在庫量の変動を記録する記録部と、
終了条件を満たした場合に、シミュレーションを終了してシミュレーション結果を出力するシミュレーション終了部と、を備える、物流シミュレータ装置。
【請求項2】
ジョブ実施順決定部は、前記緊急払出ジョブと競合する実施中の前記受入ジョブ及び前記払出ジョブを停止させて、前記緊急払出ジョブが優先されるように前記実施順を決定する、請求項1に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項3】
前記記録部は、シミュレーションの実行中に、前記在庫置き場の在庫量の変動に基づく在庫トレンドと、前記次工程の貯蓄在庫量の変動に基づく貯蔵在庫トレンドを、表示部に表示させる、請求項1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項4】
前記緊急払出ジョブ生成部は、前記次工程の貯蓄在庫量の状況として、在庫量不足が生じるまでの猶予時間を用いる、請求項1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項5】
前記ジョブ実行部は、前記緊急払出ジョブ生成部で生成された第1緊急払出ジョブが新たに生成された第2緊急払出ジョブと競合する場合に、在庫量があらかじめ定められた猶予時間を満たすまで補充されたら前記第1緊急払出ジョブを停止又は破棄して、前記第2緊急払出ジョブを優先して実施する、請求項1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の物流シミュレータ装置から前記シミュレーション結果を取得することと、
前記シミュレーション結果からシミュレーションが異常終了したと判定する場合に、前記物流シミュレータ装置に、前記シミュレーション結果に基づいて修正した前記操業計画を取得させて、再びシミュレーションを実行させることと、を含む、操業計画作成方法。
【請求項7】
前記次工程は、高炉に装入される原料を配合する工程であって、
請求項6に記載の操業計画作成方法において、前記シミュレーション結果からシミュレーションが正常終了したと判定する場合の前記操業計画である最適化操業計画を取得することと、
前記最適化操業計画に基づいて前記原料を搬送することと、を含む、製鉄所の操業方法。
【請求項8】
前記緊急払出ジョブは、材料を細分化して保管する物流系統において、銘柄別の貯蓄在庫量を動的に変更するために生成される、請求項1又は2に記載の物流シミュレータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物流シミュレータ装置、操業計画作成方法及び製鉄所の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工材料などの搬送操業において、操業計画、設備能力などを入力とし、シミュレーションを実施した結果を操業へ反映することで効率化を図る技術の開発がなされている。
【0003】
例えば特許文献1に記載の操業計画作成装置では、互いに関係の深い原材料の配合計画と在庫置き場計画を交互に連携しながら立案し、計画が実行不可能な場合に入力データ又は配合計画を修正しながら再度計画を立案するサイクルを実施することで効率的な操業計画を作成している。また、例えば特許文献2に記載の石炭物流状況監視装置では、複数のサイロを経て燃焼炉に石炭を搬送する操業の物流状況を管理するために物流シミュレーションを実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6777040号公報
【特許文献2】特開2019-125363号公報
【特許文献3】特許第6679955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載の手法は主に長期の計画作成を対象としており、より短い単位時間で設備競合を判定する手法が求められていた。また、特許文献2に記載の手法は、使用する銘柄毎に優先度を設けて貯蔵サイロへの補充を実施している。実操業において優先度は状況により時々刻々と変わるため、あらゆる状況に柔軟に対応できる仕組みでないと現実とシミュレーションの乖離が大きくなる課題があった。また、特許文献3に記載の手法は、物流システムにおける加工材料の供給バランスを在庫量によって管理している。しかし、加工材料が複数個所に細分化して保管されているような物流系において、このような管理方法では加工材料の補充回数が過多となり非効率操業となる課題があった。また、加工材料の種類が多い場合など管理する項目が多い場合に、調整が困難となる場合があった。
【0006】
以上の問題を解決すべくなされた本開示の目的は、実際的な操業計画の立案を可能にする物流シミュレータ装置、操業計画作成方法及び効率化を実現可能な製鉄所の操業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一実施形態に係る物流シミュレータ装置は、
材料を次工程に搬送する物流を模擬する物流シミュレータ装置であって、
設備レイアウト、入荷計画、在庫情報、在庫置き場計画、操業計画、設備停止計画、設備能力、搬送ライン及び前記材料の情報を取得し、シミュレーションのスタート日時、終了日時及び単位時間を設定する条件設定部と、
取得された前記入荷計画及び前記在庫置き場計画に従って、在庫置き場への受入ジョブを生成する受入ジョブ生成部と、
取得された前記在庫情報、前記操業計画及び前記在庫置き場計画に従って、前記在庫置き場からの払出ジョブを生成する払出ジョブ生成部と、
前記材料の情報を用いて、前記次工程の貯蓄在庫量の状況に応じて緊急性の高い払出ジョブである緊急払出ジョブを生成する緊急払出ジョブ生成部と、
前記受入ジョブ、前記払出ジョブ及び前記緊急払出ジョブの実施順を決定するジョブ実施順決定部と、
前記設備レイアウト、前記設備能力、前記搬送ラインの情報を用いて、前記実施順に従ってジョブを実行するジョブ実行部と、
前記設備停止計画に基づいて停止対象の設備が実行中のジョブを停止する設備停止実行部と、
実行されるジョブによる前記在庫置き場の在庫量の変動及び前記次工程の貯蓄在庫量の変動を記録する記録部と、
終了条件を満たした場合に、シミュレーションを終了してシミュレーション結果を出力するシミュレーション終了部と、を備える。
【0008】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
ジョブ実施順決定部は、前記緊急払出ジョブと競合する実施中の前記受入ジョブ及び前記払出ジョブを停止させて、前記緊急払出ジョブが優先されるように前記実施順を決定する。
【0009】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記記録部は、シミュレーションの実行中に、前記在庫置き場の在庫量の変動に基づく在庫トレンドと、前記次工程の貯蓄在庫量の変動に基づく貯蔵在庫トレンドを、表示部に表示させる。
【0010】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記緊急払出ジョブ生成部は、前記次工程の貯蓄在庫量の状況として、在庫量不足が生じるまでの猶予時間を用いる。
【0011】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記ジョブ実行部は、前記緊急払出ジョブ生成部で生成された第1緊急払出ジョブが新たに生成された第2緊急払出ジョブと競合する場合に、在庫量があらかじめ定められた猶予時間を満たすまで補充されたら前記第1緊急払出ジョブを停止又は破棄して、前記第2緊急払出ジョブを優先して実施する。
【0012】
(6)本開示の一実施形態に係る操業計画作成方法は、
(1)から(5)のいずれかの物流シミュレータ装置から前記シミュレーション結果を取得することと、
前記シミュレーション結果からシミュレーションが異常終了したと判定する場合に、前記物流シミュレータ装置に、前記シミュレーション結果に基づいて修正した前記操業計画を取得させて、再びシミュレーションを実行させることと、を含む。
【0013】
(7)本開示の一実施形態に係る製鉄所の操業方法は、
前記次工程は、高炉に装入される原料を配合する工程であって、
(6)の操業計画作成方法において、前記シミュレーション結果からシミュレーションが正常終了したと判定する場合の前記操業計画である最適化操業計画を取得することと、
前記最適化操業計画に基づいて前記原料を搬送することと、を含む。
【0014】
(8)本開示の一実施形態として、(1)から(5)のいずれかにおいて、
前記緊急払出ジョブは、材料を細分化して保管する物流系統において、銘柄別の貯蓄在庫量を動的に変更するために生成される。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、実際的な操業計画の立案を可能にする物流シミュレータ装置、操業計画作成方法及び効率化を実現可能な製鉄所の操業方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、鉄鉱石とともに高炉に装入される原料炭の物流フローを示す概略図である。
図2図2は、上位システムとの関係を含む物流シミュレータ装置の概略構成を示す図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る物流シミュレータ装置の構成を示す図である。
図4図4は、受入ジョブ生成部によって生成されるジョブ(受入ジョブ)を例示する図である。
図5図5は、払出ジョブ生成部によって生成されるジョブ(払出ジョブ)を例示する図である。
図6図6は、緊急払出ジョブ生成部によって生成されるジョブ(緊急払出ジョブ)を例示する図である。
図7図7は、ジョブ実施順決定部によって決定される実施順を例示する図である。
図8図8は、受入ラインを例示する図である。
図9図9は、払出ラインを例示する図である。
図10図10は、ラインの競合表を例示する図である。
図11図11は、設備停止計画を例示する図である。
図12図12は、在庫量などの表示例を示す図である。
図13図13は、アラートの表示例を示す図である。
図14図14は、緊急払出ジョブの生成条件で在庫量を用いる場合を例示する図である。
図15図15は、緊急払出ジョブの生成条件で在庫不足までの猶予時間を用いる場合を例示する図である。
図16図16は、図15の例で材料毎に在庫不足までの猶予時間をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る物流シミュレータ装置、操業計画作成方法及び製鉄所の操業方法が説明される。
【0018】
本実施形態に係る物流シミュレータ装置は材料を次工程に搬送する物流を模擬する。物流シミュレータ装置が対象とする物流は限定されないが、本実施形態において、製鉄所の操業の一部として行われる、貯炭ヤード102(図1参照)における原料炭の物流の例が説明される。鉄鋼業では酸化鉄である鉄鉱石をコークスとともに高炉に装入して還元し、その後精錬して鋼を作る。高炉内での円滑な還元反応促進及びトラブル回避のため、製造するコークスにはある程度の強度と品位が必要で、多数の異なる原料炭を配合する必要がある。図1は原料炭の物流フローを示す。
【0019】
原料炭はバース101から貯炭ヤード102に受け入れられ、銘柄毎に山状に保管される。貯炭ヤード102は在庫置き場の一例である。受け入れられた原料炭は、次工程であるべディングヤード103及び配合槽104に払い出されて、所定の品位となるように配合される。べディングヤード103では、2組ずつのベッドと呼ばれる山状に銘柄を重ね合わせることで配合する。ベッドの片方が積み付け中の時は他方がコークス炉105に向けて切出し中であり、切出しが完了する前に積み付け中のベッドを完成させ、切り替えることで連続的なコークス炉105への切出しを実現している。配合槽104は、1槽で400t程度の原料炭を貯蔵可能な槽を多数備える。多数の槽に様々な銘柄を補充し、切出しながら出側のベルトコンベア上で配合することができる(図1の断面イメージ参照)。原料炭物流操業では、下工程のコークス炉105の生産を止めないことが最優先であるため、貯炭ヤード102から次工程への払出操業の合間にバース101から貯炭ヤード102への受入操業が随時実施される。本実施形態に係る物流シミュレータ装置は、バース101から貯炭ヤード102に受け入れられてべディングヤード103及び配合槽104に払い出されるまでの原料炭の物流を対象とする。ここで、本実施形態において、べディングヤード103及び配合槽104が混在する原料炭の物流ラインが対象とされるが、べディングヤード103又は配合槽104だけを含む物流ラインであってよい。配合槽104を用いる場合には、1回の原料炭の搬送量が比較的少なく、多数のジョブが発生して競合が比較的生じやすいため、操業の優先度が時々刻々と変わりやすい。そのため、配合槽104を含む物流ラインにおいて、本実施形態に係る物流シミュレータ装置は好適に適用される。
【0020】
図2は、上位システムとの関係を含む物流シミュレータ装置の概略構成を示す図である。物流シミュレータ装置は、初期設定部201と、シミュレーション実行部202と、シミュレーション終了部203と、を備える。上位システムは、各プロセスのデータ出力部204と、プロセスコンピュータ205と、ビジネスコンピュータ206と、を備える。物流シミュレータ装置の初期設定部201は、シミュレーションに必要なデータ、初期パラメータ等の準備を行う。シミュレーション実行部202はシミュレーションを実行する。シミュレーション終了部203は、シミュレーション結果をプロセスコンピュータ205へ送信する。シミュレーションに必要なデータは、ビジネスコンピュータ206及び各プロセスのデータ出力部204より取得されて、プロセスコンピュータ205を介して、初期設定部201へ送られる。
【0021】
図3は、本開示の一実施形態に係る物流シミュレータ装置の構成を示す図である。また、図3における矢印は処理の流れを示す。物流シミュレータ装置の初期設定部201は、条件設定部320と、受入ジョブ生成部303と、払出ジョブ生成部304と、を備える。本実施形態において、条件設定部320は、入力情報取得部301と、シミュレーション時間設定部302と、を含んで構成される。物流シミュレータ装置のシミュレーション実行部202は、切出実行部305と、緊急払出ジョブ生成部306と、ジョブ実施順決定部307と、ジョブ実行部308と、設備停止実行部309と、記録部310と、を備える。ここで、ジョブ(job)は操業における作業を意味し、タスクと言い換えることも可能である。本実施形態において、ジョブは、後述する受入ジョブ、払出ジョブ及び緊急払出ジョブを含む。
【0022】
入力情報取得部301は、シミュレーションに必要な設備レイアウト、入荷計画、在庫情報、在庫置き場計画、操業計画、設備停止計画、設備能力、搬送ライン及び材料の情報を取得する。
【0023】
シミュレーション時間設定部302は、シミュレーションのスタート日時、終了日時及び単位時間を設定する。単位時間は、シミュレーションにおけるステップ時間である。
【0024】
受入ジョブ生成部303は、入力情報取得部301で取得された入荷計画と在庫置き場計画に従って、バース101と貯炭ヤード102のペアを持った受入ジョブを生成する。
【0025】
払出ジョブ生成部304は、入力情報取得部301で取得される在庫情報、操業計画及び在庫置き場計画に従って、べディングヤード103への払出ジョブを生成する。
【0026】
切出実行部305は、入力情報取得部301で取得した操業計画に従って、コークス炉105へ、べディングヤード103の在庫と配合槽104の在庫を単位時間当たりの切出し量だけ切出す。
【0027】
緊急払出ジョブ生成部306は、在庫置き場の下工程(次工程)の貯蓄在庫量の状況に応じて緊急払出ジョブを生成する。緊急払出ジョブは緊急性の高い払出ジョブである。本実施形態において、在庫置き場は貯炭ヤード102が対応する。次工程は、べディングヤード103及び配合槽104における配合の工程が対応する。緊急払出ジョブ生成部306は、あらかじめ定められた閾値を下回った銘柄及び配合槽104等に対して、切出しを確実に実行するのに必要な在庫量を保持するため、緊急払出ジョブを生成する。つまり、緊急払出ジョブは、材料を細分化して保管する物流系統において、銘柄別の貯蓄在庫量を動的に変更するために生成されてよい。緊急払出ジョブ生成部306は、銘柄別の貯蓄在庫量の状況に応じて緊急払出ジョブを生成する場合に、材料の情報を用いてよい。
【0028】
ジョブ実施順決定部307は、受入ジョブ、払出ジョブ及び緊急払出ジョブの実施順を決定する。詳細に述べると、ジョブ実施順決定部307は、受入ジョブ生成部303と払出ジョブ生成部304で生成されたジョブを実施順に並べた実施順リストに、緊急払出ジョブ生成部306で生成された緊急払出ジョブを割込みで加える処理を実施する。換言すると、ジョブ実施順決定部307は、緊急払出ジョブと競合する実施中の受入ジョブ及び払出ジョブを停止させて、緊急払出ジョブが優先されるように実施順を決定する。
【0029】
ジョブ実行部308は、設備能力の情報などを用いて、ジョブ実施順決定部307で作成された実施順リストに従ってジョブを実行する。
【0030】
設備停止実行部309は、設備停止計画に基づいて停止対象の設備を停止させて(不使用として)、停止対象の設備が実行中のジョブを停止する。
【0031】
記録部310は、在庫量の変動などの履歴と結果を記録する。詳細に述べると、記録部310は、実行されるジョブによる在庫置き場(貯炭ヤード102)の在庫量の変動及び次工程(べディングヤード103及び配合槽104)の貯蓄在庫量の変動を記録する。記録部310は、次工程の貯蓄在庫量の変動に基づく貯蔵在庫トレンドを表示部に出力してよい。ここで、トレンドは傾向変動である。表示部は例えば各種のディスプレイである。さらに、記録部310は、在庫量があらかじめ設定した閾値を下回った場合にアラートを出力し、記録してよい。
【0032】
シミュレーション終了部203は、あらかじめ定められたシミュレーションの終了条件を満たしているかを確認し、終了条件を満たした場合に、シミュレーションを終了してシミュレーション結果を出力する。終了条件を満たしていなければ、単位時間を1だけ進めて、切出実行部305の処理に戻ってシミュレーションが継続されてよい。
【0033】
以下、図面を参照しながら、受入ジョブの生成以降の処理について詳細な説明が行われる。受入ジョブ生成部303で生成される受入ジョブは、図4のようなリストで保持される。本ジョブは入力情報取得部301で取得される入荷計画と在庫置き場計画に従って生成される。図4及び以降の図で示すように、受入元、受入先及び受入区画は、数字を用いた識別子を使って区別されている。
【0034】
個々のジョブで荷役する受入量は、例えば船の積載量を銘柄毎に荷役期間の計画日数で按分した量とするのがよい。一つの船に複数の銘柄がある場合は、交互に受け入れるようなジョブ順とするのがよい。また、船毎のジョブの開始可能日時は船が到着して荷役可能となった日時から始める。日按分した場合は開始可能時間を一日ずつ遅らせてよい。
【0035】
払出ジョブ生成部304で生成される払出ジョブは、図5のようなリストで保持される。本ジョブは入力情報取得部301で取得される操業計画と在庫置き場計画に従って生成される。図4及び以降の図で示すように、払出元、払出先及び払出区画は、数字を用いた識別子を使って区別されている。
【0036】
払出ジョブは、べディングヤード103へ向けての払い出しであるが、上記の通りべディングヤード103では2つのパイル対を相互に切替ながら操業しており、パイル計画と呼ばれる計画に従ってパイルの切替日までの銘柄毎の積み付け量が決められている。個々のジョブで払い出す払出量は、例えばパイル切替サイクル日数で按分した量とし、銘柄を変えながら順番に払い出すようなジョブ順とするのがよい。このとき、ジョブの開始可能日時をパイル切替日から始めて1日ずつ遅らせて、ジョブの期限日時は次のパイル切替予定日とするのがよい。
【0037】
緊急払出ジョブ生成部306で生成される緊急払出ジョブは、図6のような情報を保持している。本ジョブの払出元は、例えば該当銘柄を保持しているヤードを検索し、直ちに払出を実行できるような払出元を選ぶようにするのが良い。本ジョブは、例えば配合槽104の銘柄単位で在庫量について、それぞれを単位時間当たりの切出し量で割った際に在庫量不足が生じるまでの猶予時間を計算し、その猶予時間があらかじめ定められた閾値を下回った際に生成されてよい。また、本ジョブの払出量は、該当銘柄について、満槽となるまでの量が補充されるように定められてよい。この例のように、緊急払出ジョブ生成部306は、次工程の貯蓄在庫量の状況を把握するために、在庫量不足が生じるまでの猶予時間を用いてよい。ここで、猶予時間の判定で用いられる閾値は一例として2時間であってよい。
【0038】
ジョブ実施順決定部307は、図7のように受入ジョブ生成部303、払出ジョブ生成部304で生成されたジョブを開始可能日時順に並べ、緊急払出ジョブ生成部306で生成された緊急払出ジョブを割込みで最上位にリストアップした実施順リストを作成する。実施したジョブはリストより削除される。図7において、実施の項目は、ジョブについて「1」が終了済みであることを、「2」が実施中であることを、「3」が停止中であることを示す。緊急の項目は、「1」が緊急払出ジョブであることを示す。トリガの項目の「1」は、実行トリガがオンであること、すなわち、ジョブについて実行可能であることを示す。ここで、作業区画の項目は、受入区画及び払出区画に対応する。
【0039】
ジョブ実行部308は、設備能力の情報を用いて、ジョブ実施順決定部307で作成された実施順リストの通りに実行する。シミュレーション時刻が進んで当初の在庫置き場計画とシミュレーション内の在庫置き場状況に乖離が発生し、払出元の在庫が無い場合は貯炭ヤード102内の別のヤード置き場から検索する。同様に指定された作業区画がいっぱいで受け入れられない場合は貯炭ヤード102内の別のヤード置き場の置き場所に受け入れる。基本的に、実施順リストの上から順にジョブが実行されるが、設備競合等で実行できないジョブは待機したまま飛ばして次に実行可能なジョブが実行されてよい。また、緊急払出ジョブがある場合に、緊急払出ジョブで用いられる設備を占有中のジョブは直ちに停止されて、緊急払出ジョブが実行される。緊急払出ジョブ(第1緊急払出ジョブと呼ぶ)を実施中に、第1緊急払出ジョブで用いられる設備を使用する新たな緊急払出ジョブ(第2緊急払出ジョブと呼ぶ)が発生したとき、第1緊急払出ジョブで補充する補充先があらかじめ定められたレベルまで補充されるまで第2緊急払出ジョブは待機する。第1緊急払出ジョブで補充する補充先がそのレベルまで補充されたら、第1緊急払出ジョブは停止又は破棄されて、直ちに第2緊急払出ジョブが実施される。ここで、レベルとは、在庫量不足が生じるまでの猶予時間に基づいて定められる在庫量などであってよい。ジョブを実行する際の受入ライン、払出ラインは、それぞれ図8図9のように定められており、実行されるジョブに対して、実行可能なラインからランダムに選ばれる。ここで、受入ライン、払出ラインは、それぞれ受入ジョブ、緊急払出ジョブを含む払出ジョブで利用される物流ラインである。受入ラインは、受入元、受入先及び使用機器の組み合わせで定められる。また、払出ラインは、払出元、払出先及び使用機器の組み合わせで定められる。受入ライン及び払出ラインは、数字を用いた識別子を使って区別される。ここで、図10に示すように、ラインの競合を示す競合表があらかじめ定められてよい。ジョブ実行部308は、入力情報取得部301で取得される設備レイアウトと搬送ラインの情報から、競合表をあらかじめ作成してよい。図10において、「1」で示されるラインの組み合わせは競合が生じる。
【0040】
設備停止実行部309は、入力情報取得部301で取得される図11のような設備停止計画に従って停止対象の設備を停止し、停止対象の設備が実施中のジョブを停止する。設備停止実行部309が実行する停止処理によって、例えばメンテナンスなどによる現実に起こり得る設備の不使用状態が反映されて、さらに実際的な物流を模擬するシミュレーションが可能になる。
【0041】
記録部310は、上位システムから得られる貯炭ヤード102の在庫量、べディングヤード103のパイル在庫量、配合槽104の在庫量を逐次記録し、例えば図12のようにこれらを同一画面に表示させることができる。このとき、記録部310は、在庫量だけではなく、移動機SRの作業履歴を表示してよい。また、記録部310は、あらかじめ設定された閾値を下回って在庫量不足が生じ得る場合に、又は、現在の操業計画では在庫量が保てないような状況が発生した場合に、アラートを記録するとともに、図13のように表示させてよい。
【0042】
シミュレーション終了部203では、あらかじめ設定した終了条件に達するとシミュレーションを終了する。終了条件は、例えばシミュレーション時間設定部302で設定したシミュレータ終了日時に達したとき、各払出ジョブが期限日時までに終了しなかったとき、配合槽104で在庫量が不足したとき、を含んでよい。シミュレーションを終了するときに、記録部310で記録されたシミュレーション結果が出力される。シミュレーション結果は、正常終了か異常終了かを示すフラグ、受入ジョブ実績、払出ジョブ実績などを含んでよい。ここで、正常終了は、在庫量の不足などを生じずに材料を搬送してシミュレーションが終了したことである。一方、異常終了は、例えば在庫量の不足の発生、終了日時で終了しなかった払出ジョブがあったなどの異常を伴って、シミュレーションが終了したことである。また、ジョブ実績は、期限日時までに終了できたジョブを意味する。
【0043】
上記のように、シミュレーションが終了するまで、記録部310は図12のような在庫トレンドの情報などを出力することができる。例えばシミュレーションが異常終了した場合であっても、上位システムにおいて、在庫トレンドの情報などを見ながらアラートの内容を確認し、操業計画、在庫置き場計画などの入力データを修正することができる。修正した入力データを用いた再度のシミュレーションでは、良好な結果となることが期待される。また、物流シミュレータ装置は、良好な結果が得られた場合(シミュレーションが正常終了した場合)における操業計画を、関連するシミュレーションデータと共に、プロセスコンピュータ205を通じて上位システムに送信することもできる。
【0044】
図14図16を参照して、緊急払出ジョブの生成条件が在庫量である場合と在庫不足までの猶予時間である場合とを比較して説明する。図14図16におけるA、B及びCは材料の種類を示している。また、図14図16の横軸の「時間」は単位時間である。1単位時間は、例えば1時間であってよいが、これに限定されない。各銘柄は緊急払出ジョブで補充され、全ての銘柄が1単位時間で完全に補充される前提としている。また、補充は1単位時間で1か所のみにできるとする。材料A及び材料Cはそれぞれ1単位時間に5%消費される。材料Bは1単位時間に10%消費される。図14では在庫量が60%になることを条件として補充している。図15では在庫不足までの猶予時間が6単位時間になることを条件として補充している。ただし、補充のタイミングが重複する場合に、重複を避けるようにいずれかの材料について1単位時間前に補充する。例えば図14の24単位時間において、材料Aは重複を避けるために、在庫量が60%になる1単位時間前に補充されている。在庫量で閾値を設定した図14の例では、40単位時間が経過するまでに17回の補充が行われる。猶予時間に基づく閾値を設定した図15の例では、40単位時間が経過するまでに12回の補充で済んでいる。図14の例では、消費速度が遅い材料A及び材料Cの補充が、喫緊ではない状態で行われており、非効率操業が行われていると言える。ここで、在庫量で閾値を設定した場合においても、材料毎に閾値を調整すれば効率的な操業が可能になるが、材料の種類など管理する項目が増えると、個別に調整すべき閾値の数が増えるという課題がある。これに対して、在庫不足までの猶予時間で緊急払出ジョブを生成する場合にはロジックが汎用的(一律に適用することが可能)である。ここで、図16は、図15の例で、材料毎に在庫不足までの猶予時間をプロットしたものである。
【0045】
例えば物流シミュレータ装置からシミュレーション結果を取得することと、シミュレーション結果からシミュレーションが異常終了したと判定する場合に、物流シミュレータ装置に、シミュレーション結果に基づいて修正した操業計画を取得させて、再びシミュレーションを実行させることと、を含む、操業計画作成方法が実行されてよい。例えば操業計画作成方法は上位システムで行われてよい。また、操業計画作成方法において、シミュレーション結果からシミュレーションが正常終了したと判定する場合の操業計画である最適化操業計画を取得することと、最適化操業計画に基づいて原料を搬送することと、を含む、製鉄所の操業方法が実行されてよい。ここで、搬送される原料は、次工程において配合され、高炉に装入される原料であって、本実施形態の原料炭も含まれるが、原料炭に限定されるものでない。例えば鉄鉱石についても各種銘柄があり、銘柄毎の鉄鉱石が山状に保管されて管理され、適切に配合されて使用される。したがって、原料炭、鉄鉱石など、配合される原料の任意の1つについて、本実施形態の考え方を適用することができる。具体的に述べると、例えば上記の実施形態に係る物流シミュレータ装置は、物流の対象を鉄鉱石としても、同様に操業計画作成方法を実行可能であり、作成された操業計画を用いて製鉄所の操業方法が実行され得る。さらに、配合される原料は副原料も含むものであり、このような副原料についても本実施形態の考え方が適用できる。
【0046】
上記の操業計画作成方法が実行される場合に、例えば貯炭ヤード102における原料炭の物流の例では、原料炭の在庫量の調整が最適化される。従来、配合槽104において原料炭の在庫量が不足すると、コークス炉105の生産を止めることにつながるため、予防的に配合槽104への原料炭の補充が早いタイミングで行われ、結果として、過度の補充による作業効率の低下が生じていた。操業計画作成方法及びこれを用いる製鉄所の操業方法によって原料炭の貯蓄在庫量の調整が最適化されるため、過度の補充による作業効率の低下の問題は生じず、効率化を実現できる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る物流シミュレータ装置、操業計画作成方法は、優先度が状況により時々刻々と変わる実際の操業状況に対応するように、緊急払出ジョブを生成してシミュレーションを実行するため、実際的な操業計画の立案を可能にする。また、このようなシミュレーションが正常終了した場合における操業計画に従って行われる製鉄所の操業方法は、在庫不足に対して予防的に行われる原料炭などの材料の過度の補充を不要にできるため、効率化を実現可能である。
【0048】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
101 バース
102 貯炭ヤード
103 ベディングヤード
104 配合槽
105 コークス炉
201 初期設定部
202 シミュレーション実行部
203 シミュレーション終了部
204 各プロセスのデータ出力部
205 プロセスコンピュータ
206 ビジネスコンピュータ
301 入力情報取得部
302 シミュレーション時間設定部
303 受入ジョブ生成部
304 払出ジョブ生成部
305 切出実行部
306 緊急払出ジョブ生成部
307 ジョブ実施順決定部
308 ジョブ実行部
309 設備停止実行部
310 記録部
320 条件設定部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
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図16