(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118073
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】アップリンク通信の方法、無線アクセスネットワーク、RANシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 88/08 20090101AFI20230817BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20230817BHJP
H04W 24/06 20090101ALI20230817BHJP
【FI】
H04W88/08
H04W88/02 140
H04W24/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012428
(22)【出願日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】111105037
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】504025778
【氏名又は名称】明泰科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】柯子仲
(72)【発明者】
【氏名】饒硯喬
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】アップリンクスループットを最適化する方法を提供する。
【解決手段】該方法は、無線アクセスネットワーク(RAN)100によって実行されるアップリンク通信の方法であって、各ユーザ機器(UE)9に対して1つの無線ユニット(RU)3との接続を確立し、ホスト装置10は、UE9に接続するRU3を介してUE9のビームフォーミングアンテナ91を制御することにより、複数の位相遅延で各UE9とデータ伝送を行って、各位相遅延についてエラー率を計算し、最小エラー率を有する位相遅延を探し出し、最小エラー率を有する位相遅延を用いてUE9のビームフォーミングアンテナ91を設定し、これにより、UE9は該UE9に接続するRU3と空間的に独立した関係を形成し、空間的に独立した関係において、RU3はUE9からアップリンクデータを受信してホスト装置10に送信する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線アクセスネットワーク(RAN)により実行されるアップリンク通信の方法であって、前記RANは、ビームフォーミングアンテナを有する複数のユーザ機器(UE)と通信的接続し、前記RANは、前記UEとデータ交換するように用いられる複数の無線ユニット(RU)と、前記RUと通信するように用いられるホスト装置と、を含み、前記ホスト装置は、前記RUとそれぞれ接続するように構成される複数の高物理層を有する分散ユニット(DU)と、前記DUに接続し前記DUを管理するように構成される中央ユニット(CU)と、を含み、
前記方法は、
前記UEのそれぞれは、1つの前記RUとの接続を確立するステップと、
前記UEのそれぞれに対して、前記ホスト装置は、前記UEに接続する該1つの前記RUを介して前記UEの前記ビームフォーミングアンテナを制御することにより、複数の位相遅延で前記UEとのデータ伝送を行って、前記位相遅延のそれぞれに対してエラー率を計算するステップと、
前記ホスト装置は、前記UEのそれぞれに対して、最小エラー率を有する1つの前記位相遅延を探し出すステップと、
前記UEのそれぞれに対して、前記ホスト装置は、前記UEに接続する該1つの前記RUを介して前記UEを制御することにより、最小エラー率を有する該1つの前記位相遅延を用いて、前記UEの前記ビームフォーミングアンテナを設定することで、前記UE及び前記UEに接続する該1つの前記RUが、空間的に独立した関係を形成するステップと、
前記空間的に独立した関係において、該1つの前記RUは、前記UEからアップリンクデータを受信して、前記アップリンクデータを前記ホスト装置に送信するステップであって、
該1つの前記RUが、前記UEから前記アップリンクデータを受信して送信することと、
該1つの前記RUに接続する前記DUの前記高物理層の1つが、該1つの前記RUから前記アップリンクデータを受信し、受信した前記アップリンクデータにデコーディングを実行することと、
前記DUが、デコードされた前記アップリンクデータを前記CUに送信することと、を含むステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記UEのそれぞれにおいて、1つの前記RUとの接続を確立するステップは、
前記RU及び前記UEの間の接続を確立し、前記UEのそれぞれに対して、前記ホスト装置は、前記UEに接続する1つまたはそれ以上の前記RUを介してランダムアクセスチャネル(RACH)信号を受信するステップと、
前記ホスト装置は、前記RACH信号の信号強度に従って、前記UEに接続する該1つの前記RUを決定し、該1つの前記RUは前記UEとの接続を確立するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RU及び前記UEの間の接続を確立するステップは、前記RUのそれぞれが、複数の放送信号を低い送信電力から高い送信電力の順に発して、無線周波数信号カバー範囲を小から大まで生成することによって、小さい無線電周波数信号カバー範囲内に位置する前記UEのいずれかが、前記RUを検知し、前記RUとの接続を早期に確立するステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記UEのそれぞれに対して、前記ホスト装置が、複数の位相遅延で前記UEとのデータ伝送を行って、前記位相遅延のそれぞれに対してエラー率を計算するステップは、
前記UEのそれぞれに対して、前記ホスト装置は、前記UEに接続する該1つの前記RUを介して、前記UEの前記ビームフォーミングアンテナを制御し、複数の位相遅延においてユーザーデータグラムプロトコル(UDP)伝送を行うステップと、
前記ホスト装置は、受信したUDPパケットデータに対して、ブロックエラー率(BLER)を計算するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高物理層のそれぞれは、アップリンク通信のための、ランダムアクセスチャネル(RACH)と、物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)と、物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)と、を有し、
該1つの前記RUに接続する前記DUの前記高物理層の1つが該1つの前記RUから前記アップリンクデータを受信し受信した前記アップリンクデータにデコーディングを実行することは、前記PUSCHが、前記RUから前記アップリンクデータを受信し、前記アップリンクデータを運び、受信した前記アップリンクデータにデコーディングを実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の高物理層は、共通のランダムアクセスチャネル(RACH)と、共通の物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)と、を有し、前記高物理層のそれぞれは、それぞれの物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)を有し、
該1つの前記RUに接続する前記DUの前記高物理層の1つが該1つの前記RUから前記アップリンクデータを受信し受信した前記アップリンクデータにデコーディングを実行することは、
前記PUSCHが、前記RUから前記アップリンクデータを受信し、前記アップリンクデータを運び、受信した前記アップリンクデータにデコーディングを実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ビームフォーミングアンテナを有する複数のユーザ機器(UE)と通信的接続するように用いられる無線アクセスネットワーク(RAN)であって、前記RANは、
前記UEと接続するように用いられる複数の無線ユニット(RU)と、
前記RUと通信的に接続するように用いられるホスト装置と、を含み、
前記ホスト装置は、前記RUとそれぞれ接続するように構成される複数の高物理層を有する分散ユニット(DU)と、前記DUに接続し管理するように構成される中央ユニット(CU)と、を含み、
前記UEのそれぞれに対して、前記ホスト装置は、前記UEと接続する1つの前記RUを決定し、前記UEに接続する該1つの前記RUを介して前記UEを制御することにより、特定の位相遅延を用いて前記UEの前記ビームフォーミングアンテナを設定することで、前記UE及び前記UEに接続する該1つの前記RUは空間的に独立した関係を形成し、
前記特定の位相遅延は、前記ホスト装置によって、データ伝送の最小エラー率を計算して探し出すことによって、決定され、
前記RUのそれぞれは、前記RUに接続する前記UEからアップリンクデータを受信し、前記アップリンクデータを前記DUの前記高物理層のそれぞれの1つに送信し、前記高物理層のそれぞれの1つが前記アップリンクデータにデコーディングを実行し、前記DUはデコードされた前記アップリンクデータを前記CUに送信する、
RAN。
【請求項8】
前記ホスト装置は、前記UEから送信され且つ前記RUを介して中継されるランダムアクセスチャネル(RACH)信号を受信し、前記RACH信号の信号強度に従って前記UEのそれぞれと接続する該1つの前記RUを決定する、請求項7に記載のRAN。
【請求項9】
前記RUのそれぞれは、複数の放送信号を低い送信電力から高い送信電力の順に発して、無線周波数信号カバー範囲を小から大まで生成することによって、小さい無線電周波数信号カバー範囲内に位置する前記UEのいずれかが、前記RUを検知し、前記RUとの接続を早期に確立する、請求項7に記載のRAN。
【請求項10】
前記UEのそれぞれに対して、前記ホスト装置は、前記UEに接続する該1つの前記RUを介して、前記UEの前記ビームフォーミングアンテナを制御し、複数の位相遅延においてユーザーデータグラムプロトコル(UDP)伝送を行って、受信したUDPパケットデータに対してブロックエラー率(BLER)を計算し、最小BLERを有する1つの位相遅延を用いて前記UEの前記ビームフォーミングアンテナを設定する、請求項7に記載のRAN。
【請求項11】
前記高物理層のそれぞれは、アップリンク通信のための、ランダムアクセスチャネル(RACH)と、物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)と、物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)と、を含み、
前記PUSCHは、前記RUから前記アップリンクデータを受信し、前記アップリンクデータを運び、受信した前記アップリンクデータにデコーディングを実行するように構成される、請求項7に記載のRAN。
【請求項12】
前記複数の高物理層は、共通のランダムアクセスチャネル(RACH)と、共通の物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)と、を有し、前記高物理層のそれぞれは、それぞれの物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)を有し、
前記PUSCHは、前記RUから前記アップリンクデータを受信し、前記アップリンクデータを運び、受信した前記アップリンクデータにデコーディングを実行するように構成される、請求項7に記載のRAN。
【請求項13】
請求項7から請求項12のいずれかに記載のRANと、ビームフォーミングアンテナを有する複数のユーザ機器(UE)と、を含む、
無線アクセスネットワーク(RAN)システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスネットワーク、並びに関連するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートファクトリー(インテリジェントマニュファクチャリング)とは、一般に、製造時やテスト時にリアルタイムの情報を得て、得た情報を利用して、モニタリング、分析、さらには異常判定や故障予測などの人工知能の応用を行う製造工場のことを指す。
【0003】
上記のプロセスでは、リアルタイムの情報は、一般にユーザ機器(UE:user equipment)と呼ばれるカメラ、センサーなどの複数の機器を介して収集され、無線アクセスネットワーク(RAN)によりコアネットワーク(CN:core network)に送信される。
【0004】
図1を参照すると、オープンRAN(O-RAN)の電気通信アーキテクチャーの場合、5G基地局は、中央ユニット(CU:central unit)と、分散ユニット(DU:distributed unit)と、無線ユニット(RU:radio unit)と、に分かれる。RUは、電波を介してUEと通信するように、低物理層(low physical layer、low-PHY層)と無線周波数信号の送信に関連するハードウェアとを含む。DUは、無線リンク制御(RLC)、媒体アクセス制御(MAC)、及び高物理層(high physical layer、high-PHY層)を担当し、イーサネット(登録商標)のeCPRI(evolved Common Public Radio Interface)を介してRUとデータ伝送を行う。CUは、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)及び無線リソース制御(RRC)を担当する。CUは、例えば5GFAPI(Femto Application Platform Interface)を介してDUに接続しDUを管理するように構成され、次世代インターフェースを介してCNとデータを送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、UEとRUとの間の接続を確立する方法は、UEの電源が入った時に送信の電力レベルを最高にプリセットし、RUを確実にスキャンして接続できるようにすることである。しかしながら、このようにすると、UEは最も近いRUだけではなく、送信信号が到達できる他のRUとも通信的に接続する。このような状況下では、UEが最も近いRUから信号を受信する際は他のRUによって干渉され、UEがアップリンク信号を送信する際も他のRUによって干渉される。アップリンクを例とすると、UEが信号を送信する際に干渉がある場合において、バンドの利用効率は影響を受け、さらに、送信信号の電力を干渉信号より強くなるように調整する必要があるため、UEの望まない電力消費が発生する。
【0007】
さらに、スマートファクトリーの5Gビジネスネットワーク(ローカル5Gネットワークやプライベート5Gネットワーク)のスペクトルを取得するコストは、専用スペクトルまたは共用スペクトルであるかに関わらず、かなり高額になる。従って、信号干渉なしにスペクトル利用率を高めることは、業界が関連技術を導入する際の大きな課題となっている。
【0008】
従って、本発明の目的は、従来技術の欠点を少なくとも1つ軽減することができるアップリンク通信の方法、RAN、及びRANシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、アップリンク通信の方法は無線アクセスネットワーク(RAN)により実行される。RANは、ビームフォーミングアンテナを有する複数のユーザ機器(UE)と通信的接続する。RANは、UEとデータ交換するように用いられる複数の無線ユニット(RU)と、RUと通信するように用いられるホスト装置と、を含む。ホスト装置は、RUとそれぞれ接続するように構成される複数の高物理層を有する分散ユニット(DU)と、DUに接続しDUを管理するように構成される中央ユニット(CU)と、を含む。該方法は以下のステップを含む。
【0010】
1つのステップにおいて、UEのそれぞれは、1つのRUとの接続を確立する。
【0011】
他のステップにおいて、UEのそれぞれに対して、ホスト装置は、UEに接続する1つのRUを介してUEのビームフォーミングアンテナを制御することにより、複数の位相遅延でUEとのデータ伝送を行って、位相遅延のそれぞれに対してエラー率を計算する。
【0012】
もう1つのステップにおいて、ホスト装置は、UEのそれぞれに対して、最小エラー率を有する1つの位相遅延を探し出す。
【0013】
さらにもう1つのステップにおいて、UEのそれぞれに対して、ホスト装置は、UEに接続する該1つのRUを介してUEを制御することにより、最小エラー率を有する該1つの位相遅延を用いて、UEのビームフォーミングアンテナを設定することで、UE及びUEに接続する該1つのRUは、空間的に独立した関係を形成し、該空間的に独立した関係において、該1つのRUは、UEからアップリンクデータを受信して、アップリンクデータをホスト装置に送信し、RUがUEからのアップリンクデータを受信して送信すると、RUに接続するDUの高物理層の1つは、該アップリンクデータを受信し、受信したアップリンクデータにデコーディングを実行し、DUは、デコードされたアップリンクデータをCUに送信する。
【0014】
本発明によれば、RANはビームフォーミングアンテナを有する複数のUEに通信的接続するように用いられる。RANは、UEと接続するように用いられる複数のRUと、RUと通信的接続するホスト装置と、を含む。ホスト装置は、RUとそれぞれ接続するように構成される複数の高物理層を有するDUと、DUに接続しDUを管理するように構成されるCUと、を含む。
【0015】
UEのそれぞれに対して、ホスト装置は、UEと接続する1つのRUを決定し、UEに接続する1つのRUを介してUEを制御することにより、特定の位相遅延を用いてUEのビームフォーミングアンテナを設定し、これによって、UE及びUEに接続する該1つのRUは空間的に独立した関係を形成する。
【0016】
特定の位相遅延は、ホスト装置によって、データ伝送の最小エラー率を計算して探し出すことによって、決定される。
【0017】
RUのそれぞれは、接続するUEからアップリンクデータを受信し、アップリンクデータをDUの高物理層のそれぞれの1つに送信し、高物理層のそれぞれの1つは、アップリンクデータにデコーディングを実行し、DUは、デコードされたアップリンクデータをCUに送信する。
【0018】
本発明によれば、RANシステムは、前述のRANと、ビームフォーミングアンテナを有する複数のUEと、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の利点は、UEのビームフォーミングアンテナの信号送信方向がデジタル的に制御されることができ、UE及びRUが空間的に独立した関係を形成することにより、固定されたバンド幅においてのアップリンクスループットを最適化し、スペクトルの利用率を向上する。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明において明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来の無線アクセスネットワークの電気通信アーキテクチャーが示されているブロック図である。
【
図2】本発明の無線アクセスネットワークシステムの一実施形態のアーキテクチャーが示されているブロック図である。
【
図3】本発明に係る無線アクセスネットワークのアップリンクの方法の一実施形態のステップが示されているフローチャートである。
【
図4】本発明に係る無線アクセスネットワークのアップリンクの方法の一実施形態のステップが示されているフローチャートである。
【
図5】本発明に係る無線アクセスネットワークのアップリンクの方法の一実施形態のステップが示されているフローチャートである。
【
図6】高物理層の構造が示されるブロック図である。
【
図7】高物理層の構造が示されるブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を詳細に説明する前に、以下の説明において、類似な構成要素は同一の参照数字で示されることに留意されたい。本明細書に開示される技術は、ワイヤレスネットワークにおけるデータ伝送に関するものである。ワイヤレスネットワークは、例えば、第5世代(5G)ワイヤレスシステム技術又は規格、或いは、その逸脱、前の世代(3GPP(登録商標)、LTE(登録商標)、LTE-A、WiMAX-A、及び4Gを含む)、後の世代などの異なるバージョンのワイヤレスシステム技術又は規格に従う。
【0023】
本実施形態において、ワイヤレスネットワークは、例として5Gネットワークシステムにオープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)の電気通信アーキテクチャーを採用することによって示され、且つ、スマートファクトリーに適用される。いくつかの実施形態において、ワイヤレスネットワークは、他のネットワークシステム又は電気通信アーキテクチャーを、追加的または代替的に使用してもよい。本発明は、これらの例に限定されない。
【0024】
図2を参照すると、本発明の無線アクセスネットワークシステムの一実施形態は、無線アクセスネットワーク(RAN)100と、ビームフォーミングアンテナ91を有する複数のユーザ機器(UE)9と、を含む。RAN100は、中央ユニット(CU)1と、分散ユニット(DU)2と、複数の無線ユニット(RU)3と、を含む。
【0025】
本実施形態において、CU1及びDU2は、スマートファクトリーのローカルエンド又はリモートエンドに配置可能なホスト装置10に統合される。CU1は、Packet Data Convergence Protocolを担当するPDCP層11と、無線リソース制御を担当するRRC層12と、を含む。CU1は、例えば5GFAPIを介して、DU2に接続し管理するように構成され、次世代インターフェースを介してコアネットワーク(CN)200とデータ伝送を行う。DU2は、無線リンク制御を担当するRLC層21と、媒体アクセス制御を担当するMAC層22と、複数の高物理層(high-PHY層)23と、を有する。DU2とRU3との間のデータ伝送は、イーサネットのeCPRIを介して行う。
【0026】
RU3は、スマートファクトリーにおいて互いに間隔を置いて配置され、例えば、各部屋に1つずつ又は各フロアに1つずつ配置されてもよいが、これらに限定されない。本実施形態において、RU3のそれぞれは、DU2のhigh-PHY層23と接続するように用いられる低物理層(low-PHY層)31と、無線周波数(RF)モジュール32と、電波を介してUE9と接続するように用いられるアンテナ33と、を含む。なお、いくつかの実施形態において、RU3は種類が異なってもよく、low-PHY層31とRFモジュール32とアンテナ33との搭載数は本明細書に開示されるものに限定されない。
【0027】
本実施形態において、UE9は、センサーを有する無線通信装置であり、スマートファクトリーにおける1つまたはそれ以上のマシン上にまたはその(それらの)近くに配置される。例えば、各UE9は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ノート型コンピュータ、ウェブカメラ、監視カメラ、赤外線感知器、圧力センサーなどであってもよい。本実施形態においては、UE9のすべてが、RU3と通信的接続するように用いられるビームフォーミングアンテナ91を有する。
【0028】
図3から
図5を参照すると、無線アクセスネットワーク100のアップリンク通信の方法の一実施形態は以下のステップを有する。スマートファクトリーにおけるUE9の電源が入った時に、
図3に示されているように、ステップS31からステップS36が実行され、UE9とRU3との間の接続を確立する。UE9のそれぞれが1つのRU3との接続を確立すると、
図4に示されているように、ステップS41からステップS49が実行され、UE9と該UE9に接続する該1つのRU3との間に空間的に独立した関係を形成する。UE9のそれぞれが該UE9に接続する単一のRU3と空間的に独立した関係を形成すると、
図5に示されているように、ステップS51からステップS55が実行され、アップリンクデータを送信する。
【0029】
ステップS31において、RU3のそれぞれは、例えばホスト装置10によって、起動され、低い送信電力(Tx power)で放送信号を発して、これによって、小さい無線周波数信号カバー範囲を生成する。電源が入れられたUE9のいずれかが小さい無線周波数信号カバー範囲の1つにある場合、UE9は該小さい無線周波数信号カバー範囲を生成したRU3を検知することができ、UE9とRU3との間の接続を確立することができる(ステップS32)。そして、RU3のそれぞれは、再びホスト装置10によって起動され、より高い送信電力で放送信号を発して、より大きい無線周波数信号カバー範囲を生成する。元々RU3のいずれをも検出できなかったUE9のそれぞれは、その時点で、より大きい無線周波数信号カバー範囲の1つに位置する可能性があり、従って、UE9とUE9が位置するより高い無線周波数信号カバー範囲に対応するRU3との間の接続を確立することができる。このメカニズムに従って、UE9は、UE9により近い範囲内にあるRU3との接続を他のRU3より早く確立する。言い換えれば、このステップにおいて、RU3のそれぞれは、複数の放送信号を低い送信電力から高い送信電力の順に発して、無線周波数信号カバー範囲を小から大まで生成することによって、小さい無線電周波数信号カバー範囲内に位置するUE9のいずれかが、RU3を検知し、該RU3との接続を早期に確立する。
【0030】
ステップS33において、1つ以上のRU3と接続する任意のUE9について、UE9は、該UE9に接続するRU3を介して、チャネル要求を実行するために、RAN100のホスト装置10へのランダムアクセスチャネル(RACH)信号の送信を開始し、RU3のそれぞれはRACH信号を受信しDU2に送信する(ステップS34)。
【0031】
ステップS35において、DU2は、UE9から、該UE9に接続する対応のRU3を介して、RACH信号を受信する。UE9のそれぞれに対して、DU2のMAC層22は、RACH信号の信号強度に基づいて、UE9と接続するRU3のうちUE9が接続するべきである1つを決定し、決定されたRU3とUE9との間の接続を確立するようにコマンドを下す。これによって、UE9は、1つのRU3のみとの接続を維持し、該1つのRU3を介して送信したRACH信号の強度が最も強いと判明する(ステップS36)。詳しく説明すると、前述のステップS31からステップS34の間、UE9のそれぞれは1つ以上のRU3との接続を一時的に確立し、ステップS35及びステップS36の後、UE9のそれぞれについて単独のRU3との接続が確認される。なお、各UE9は1つのRU3のみに接続するが、各RU3は1つ以上のUE9に接続することができる。
【0032】
図2及び
図4を参照すると、ステップS41において、ホスト装置10のDU2のMAC層22は、UE9に、該UE9に接続するRU3を介して、制御信号を送信し(ステップS42)、複数の位相遅延でそれぞれユーザーデータグラムプロトコル(UDP)伝送を行うように、UE9のビームフォーミングアンテナ91をトリガする。本実施形態において、UE9のそれぞれは、制御信号を受信し、位相遅延をデジタル的に調整し、複数の位相遅延でUDPパケットデータをストリーミングする(ステップS43)。
【0033】
UDPパケットデータは、RU3を介してDU2に送信され(ステップS44)、DU2は、受信したUDPパケットデータに対してブロックエラー率(BLER)の計算を行い(ステップS45)、すなわち、送信ブロックの総数に対するエラーブロック(連続ビット)の割合を計算する。詳しく説明すると、複数のブロックが、位相遅延のそれぞれで、各UE9によってDU2に送信され、各ブロックに対して、ブロックに従って計算された巡回冗長検査(CRC:cyclic redundancy check)コードが該ブロックに付加される。DU2は、ブロックを受信した後、受信したブロックに基づいて同じ方法でCRCコードを計算し、UE9から受信したCRCコードと比較する。2つのCRCコードが同一である場合、このブロックは正しく送信されたものであり、そうでない場合、この送信にエラーが発生したことが記録される。ステップS45において、DU2は、位相遅延のそれぞれで、各UE9のブロックの総数に対してエラーが発生したブロックの割合を計算する。
【0034】
ステップS46において、UE9のそれぞれに対して、次に、DU2のMAC層22は、該UE9の複数の位相遅延におけるそれぞれのBLERを比較し、最小BLERを有する位相遅延を探し出し、最小BLERを有する位相遅延に従ってUE9に制御信号を発する(ステップS47)。制御信号は、RU3を介して、最小BLERを有する位相遅延を用いてビームフォーミングアンテナ91を設定するようにUE9に命令する(ステップS48及びステップS49)。従って、UE9それぞれのビームフォーミングアンテナ91は、該UE9が該UE9に接続するRU3と空間的に独立した関係を形成するようにデジタル的に(位相遅延により)調整され、特定の方向へ電波を送信することができる。
【0035】
図2及び
図5を参照すると、ステップS51において、UE9のそれぞれは、空間的に独立した関係において、該UE9に接続するRU3にアップリンクデータを送信する。
【0036】
ステップS52において、RU3は、空間的に独立した関係において、アップリンクデータを受信して転送する。
【0037】
ステップS53において、DU2のRU3に対応するhigh-PHY層23の1つは、RU3からアップリンクデータを受信しデコーディングを実行する。なお、本実施形態のDU2は、RU3とそれぞれ接続する複数のhigh-PHY層23を備え、各high-PHY層23は、アップリンクデータを個別にデコードし、デコードされたアップリンクデータを同一のMAC層22及びRLC層21に送信することができ、これにより、複数のホスト装置10を必要とせずに高効率処理を実現する。
【0038】
より具体的には、
図6を参照し、各high-PHY層23は、アップリンク通信のための、RACH(random access channel、ランダムアクセスチャネル)231と、PUCCH(physical uplink control channel、物理アップリンク制御チャネル)232と、PUSCH(physical uplink shared channel、物理アップリンク共有チャネル)233と、を有する。RACH231は、アップリンク同期を実現し、RRC接続リクエストなどのメッセージからリソースを得るように用いられる。PUCCH232は、チャネル状態情報(CSI:channel state information)レポートと共にアップリンク制御情報(UCI:uplink control information)、スケジューリングリクエスト(SR)などを運ぶように用いられる。PUSCH233は、RU3からアップリンクデータを受信し、アップリンクデータを運び、デコーディングを実行し、デコードされたアップリンクデータを同一のMAC層22とRLC層21とに送信するように用いられる。
【0039】
high-PHY層23の実施は、
図6に示されるアーキテクチャーに限定されないことに留意されたい。
図7を参照すると、他の実施形態においては、high-PHY層23は、結合アーキテクチャで実施される。すなわち、これらのhigh-PHY層23は、共通のRACH231と、共通のPUCCH232と、を有し、各high-PHY層23は、それぞれのPUSCH233を有する。例えば、第1のhigh-PHY層23aは第1のPUSCH233aを有し、第2のhigh-PHY層23bは第2のPUSCH233bを有する、というように、それぞれのPUSCHを有する。ステップS54において、DU2は、デコードされたアップリンクデータをCU1に送信する。
【0040】
ステップS55において、CU1は、デコードされたアップリンクデータをCN200に送信する。
【0041】
上記のように、各UE9及び該UE9に接続するRU3が空間的に独立した関係を形成すると、他のRU3からの信号干渉を大幅に低減することができる。各UE9は、該UE9に接続するRU3のみにアップリンクデータを送信するため、他のRU3と干渉しない。この場合、RU3の数に関わらず、ホスト装置10のDU2のMAC層22は、信号干渉を気にすることなく、RU3を制御し、RU3がそれぞれ接続するUE9から同時にアップリンクデータを受信することができ、アップリンクスループットはRU3の数の増加と比例的に増加することができ、これによって、同じバンド幅においてアップリンクスループットを最適化するという目的を達成することができる。
【0042】
上記の説明では、説明の目的のために、実施形態の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細が述べられた。しかしながら、当業者であれば、一又はそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一実施形態」「一つの実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本明細書において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、又はこれらの説明に組み込まれているが、これは本明細書を合理化させるためのもので、本発明の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一又はそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本発明の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0043】
以上、本発明の実施形態および変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【符号の説明】
【0044】
100 無線アクセスネットワーク(RAN)
10 ホスト装置
1 中央ユニット(CU)
11 PDCP層
12 RRC層
2 分散ユニット(DU)
21 RLC層
22 MAC層
23 高物理層(high-PHY層)
3 無線ユニット(RU)
31 低物理層(low-PHY層)
32 RFモジュール
33 アンテナ
9 ユーザ機器(UE)
91 ビームフォーミングアンテナ
200 コアネットワーク(CN)
S31~S36 ステップ
S41~S49 ステップ
S51~S55 ステップ