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特開2023-118111リアルタイムでのアナログ電気生理学的信号からの電力線ノイズのフィルタリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118111
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】リアルタイムでのアナログ電気生理学的信号からの電力線ノイズのフィルタリング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/305 20210101AFI20230817BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20230817BHJP
   A61B 5/308 20210101ALI20230817BHJP
【FI】
A61B5/305
A61B5/367
A61B5/308
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023019817
(22)【出願日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】63/309,784
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/105,266
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・レビン
(72)【発明者】
【氏名】アミット・ヤリミ
(72)【発明者】
【氏名】ラミ・ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】アレク・ビレンスキー
(72)【発明者】
【氏名】エフゲニー・ボニャック
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ボッツァー
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】シュムエル・アウアーバッハ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127CC01
4C127EE05
4C127FF03
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】アナログ電位図及び心電図から電力線ノイズを除去すること。
【解決手段】電力線干渉(PLI)抑制方法は、PLIと重ね合わされた入力アナログ信号を受信することと、PLIの1つ又は2つ以上の高調波をリアルタイムでデジタル的に推定することと、含む。1つ又は2つ以上のデジタル的に推定された高調波に応答して、PLIのそれぞれの1つ又は2つ以上の高調波に整合する1つ又は2つ以上のアナログ高調波波形が出力される。入力アナログ信号及び1つ又は2つ以上のアナログ高調波波形が受信され、入力アナログ信号内の重ね合わされたPLIが、1つ又は2つ以上のアナログ高調波波形を使用して抑制される。抑制されたPLIを有する入力アナログ信号に対応するアナログ出力信号が出力される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図(ECG)線の電力線干渉(PLI)を抑制するためのデバイスであって、
マイクロプロセッサであって、
前記ECG線のECG信号をサンプリングすること、
前記ECG線のPLIを特徴付ける少なくとも1つのパラメータを検出すること、
前記検出することに基づいて、アナログPLIキャンセル信号を生成すること、
前記PLIキャンセル信号の位相を定義すること、及び
前記位相を有する前記PLIキャンセル信号をアナログPLIキャンセル信号に変換すること、を行うように構成された、マイクロプロセッサと、
差動増幅器であって、前記マイクロプロセッサから出力された前記PLIキャンセル信号と前記ECG信号との差を増幅して、前記差動増幅器の出力において、抑制されたPLIを有するECG信号を生成するように構成された差動増幅器と、を備える、デバイス。
【請求項2】
前記マイクロプロセッサによって課される時間遅延に起因する、前記PLIキャンセル信号と前記ECG線の前記同時ECG信号のPLIとの間の予想される位相シフトを補償するために、前記位相が定義される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
抑制されたPLIを有する前記ECG信号を前記ECG線にフィードバックするように構成されたフィードバックループを更に備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記マイクロプロセッサが、直接メモリアクセス(DMA)を含む12ビットマイクロプロセッサである、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記マイクロプロセッサが、FFTを行って、前記少なくとも1つのパラメータを検出するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのパラメータが、サンプリングされたECG信号のゲイン、周波数、及び位相を含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ECG線の近くのPLIを受信するように構成されたアンテナと、
前記アンテナからの出力に基づいて、前記ECG線の前記PLIの基本振動数及び少なくとも1つの高調波を推定するように構成されたPLI高調波推定器と、を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
電力線干渉(PLI)抑制システムであって、
予測PLI高調波推定器であって、
PLIと重ね合わされた入力アナログ心電図(ECG)信号を受信して、前記PLIの1つ又は2つ以上の高調波をリアルタイムで推定すること、及び
前記1つ又は2つ以上の推定高調波に応答して、前記PLIの前記それぞれの1つ又は2つ以上の高調波に整合する1つ又は2つ以上の高調波波形を出力すること、を行うように構成されている、予測PLI高調波推定器と、
PLIキャンセラであって、
前記入力アナログECG信号及び前記1つ又は2つ以上の高調波波形を受信すること、
前記1つ又は2つ以上の高調波波形を使用して、前記入力アナログECG信号内の前記重ね合わされたPLIを抑制すること、及び
前記抑制されたPLIを有する前記入力アナログECG信号に対応するアナログECG出力信号を出力すること、を行うように構成されている、PLIキャンセラと、を備える、PLI抑制システム。
【請求項9】
前記予測PLI高調波推定器が、前記PLIの少なくとも1つの以前のサイクルに基づいて、前記PLIの所与のサイクルの前記1つ又は2つ以上の高調波を推定するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
電力線干渉(PLI)抑制システムであって、
PLI高調波推定器であって、
PLIと重ね合わされた入力アナログECG信号を受信し、かつ前記PLIの1つ又は2つ以上の高調波をリアルタイムで推定すること、及び
前記1つ又は2つ以上の推定高調波に応答して、前記PLIの前記それぞれの1つ又は2つ以上の高調波に整合する1つ又は2つ以上の高調波波形を出力すること、を行うように構成されている、PLI高調波推定器と、
PLIキャンセラであって、フィードバックループを有し、
前記入力アナログ信号及び前記1つ又は2つ以上の高調波波形を受信すること、
前記フィードバックループを使用して、前記1つ又は2つ以上の高調波波形を使用して、前記入力アナログ信号内の前記重ね合わされたPLIを抑制すること、及び
前記抑制されたPLIを有する前記入力アナログ信号に対応するアナログ出力信号を出力すること、を行うように構成されている、PLIキャンセラと、を備える、PLI抑制システム。
【請求項11】
心電図(ECG)線の電力線干渉(PLI)を抑制するための方法であって、
前記ECG線のECG信号をサンプリングすることと、
前記ECG線のPLIを特徴付ける少なくとも1つのパラメータを検出することと、
前記検出することに基づいて、アナログPLIキャンセル信号を生成することと、
前記PLIキャンセル信号の位相を定義することと、
前記位相を有する前記PLIキャンセル信号をアナログPLIキャンセル信号に変換することと、
前記アナログPLIキャンセル信号と前記ECG信号との間の差を増幅して、抑制されたPLIを有するECG信号を生成することと、
抑制されたPLIを有する前記ECG信号をECGレコーダに方向付けることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記マイクロプロセッサによって課される時間遅延に起因する、前記PLIキャンセル信号と前記ECG線の前記同時ECG信号のPLIとの間の予想される位相シフトを補償するために、前記位相が定義される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記時間遅延が、予測される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抑制されたPLIを有する前記ECG信号を、フィードバックループにおいて、前記ECG線にフィードバックすることを更に含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記時間遅延が、較正に基づいて計算される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプリングすること、前記検出すること、前記生成すること、及び前記変換することが、マイクロプロセッサによって実行される、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロプロセッサが、直接メモリアクセス(DMA)を含む12ビットマイクロプロセッサである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのパラメータが、ゲイン、周波数、及び位相を含む群から選択され、前記少なくとも1つのパラメータを検出することが、高速フーリエ変換(FFT)に基づいている、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記PLI及び前記ECG線のPLIの少なくとも1つの高調波の基本振動数が判定される、干渉基準信号を受信することを含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記干渉基準信号が、前記ECG線の近くに位置決めされたアンテナから受信される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、電気生理学的信号の処理に関し、具体的には、アナログ電位図及び心電図からの電力線ノイズの除去に関する。
【背景技術】
【0002】
心電図(electrocardiograms、ECG)から電力線干渉(power line interference、PLI)を除去するためのいくつかの技術が、特許文献において提案された。例えば、米国特許第7,894,885号は、対象の心電図(ECG)信号を監視するための方法を説明しており、その方法は、少なくとも第1のECG電極から平均信号をデジタルサンプリングすることと、平均干渉周波数を判定することと、少なくとも第2のECG電極から未処理のECG信号をデジタルサンプリング及びバッファリングすることと、を含む。本方法は、未処理のECG信号をフィルタリングして、残差信号を生成することと、残差信号に基づいて、平均干渉周波数における主干渉信号の第1の振幅及び第1の位相偏移、並びに平均干渉周波数におけるそれぞれの倍数において1つ又は2つ以上の高調波干渉信号の第2の振幅及び第2の位相偏移を計算することと、未処理のECG信号から主干渉信号及び1つ又は2つ以上の高調波干渉信号をデジタル減算して、クリーンなECG信号を生成及び出力することと、を更に含む。
【0003】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と一緒に読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の一実施例による、スタンドアロンのレコーダであって、電力線干渉(PLI)ハイブリッドフィルタを介してインターフェースされている、レコーダを備えた、カテーテルベースの電気生理学的(electrophysiological、EP)検知、信号分析、及びアブレーションシステムの概略描写例解図である。
図2】本開示の一実施例による、アナログECG信号からPLIをリアルタイムで除去するための回路の概略ブロック図である。
図3】本開示の別の一実施例による、アナログECG信号からPLIをリアルタイムで除去するための回路の概略ブロック図である。
図4】本開示の一実施例による、図2及び図3の回路のうちの1つを使用して、アナログEP信号からPLIを除去するための方法を概略的に例解するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
概説
心臓診断は、例えば、心臓の催不整脈性組織を識別するために、本明細書ではどちらもECG信号と称される体表面電位図及び心内電位図などの、電気生理学的(EP)データの取得を含み得る。
【0006】
典型的には、EP処置中に、ECG信号は、医療スタッフが検査するために、マルチチャネルECGレコーダにおいてリアルタイムで取得及び表示される。ペーシングのタイミングは、レコーダによって取得されるリアルタイム信号に基づいている。レコーダは、EPマッピングカテーテルなどのカテーテルの1つ又は2つ以上の電極によって取得された心臓内ECG信号を更に表示することができる。
【0007】
典型的には、ペーシング信号のタイミングは、記録されたECG信号と同期され、かつT波に対して定義された遅延で開始されて、心室頻拍及び細動が開始するのを回避する。したがって、正確なペーシングを容易にするために、ペーシング器具は、リアルタイムで正確にT波を検出しなければならない。
【0008】
T波を識別する際の課題の1つは、電力線干渉(PLI)である。T波は、PLIに特に敏感であり、しばしば、適切な接地、遮蔽、及び増幅器設計にもかかわらず、歪みが生じる。PLIを除去するためのデジタル方法が知られている。しかしながら、デジタルドメインにおけるPLIの除去は、時間遅延を生じさせ、これは、所望の同期したペーシングを不正確に(例えば、T波に対してわずかな遅延時間に)し得る。
【0009】
したがって、解決策を必要とする特に挑戦的なタスクは、PLIをリアルタイムで除去することである。PLIのリアルタイムでの除去はまた、概して、捕捉されたECG信号を検査するのに有用であり得る。
【0010】
以下に説明される本開示のいくつかの実施例は、(例えば、EP信号がデジタル化される前に)アナログEP信号から少なくともPLIの有意な部分をリアルタイムで除去するための技術を提供する。任意選択的に、これは、T波をリアルタイムで識別するのを支援し得る。開示されるフィルタは、PLIの推定はデジタル的に行われるが、そのキャンセル(例えば、元のEP信号からの減算)はアナログなので「ハイブリッド」と称される。
【0011】
ハイブリッド技術は、PLI基本高調波(例えば、50Hz)並びにより高次の高調波を検出するように設計された回路を使用して、ECG信号をサンプリングする。一実施例では、マイクロプロセッサは、入来信号から任意のPLI成分(例えば50Hz又は60Hz成分)及びそのより高次の高調波をデジタル的に抽出するように調整される。
【0012】
この実施例では、ノイズ信号は、連続的なPLIサイクルの間で(例えば、50HzのPLIの場合、20ミリ秒ごとに)推定される。回路は、デジタル的に生成された(予測された)ノイズ信号をアナログ信号に変換して、それを元のアナログECGから加え、アナログ信号からのPLIのキャンセルを提供する予測位相シフト、例えば、180°位相シフトに、デジタル処理と関連付けられた予測遅延を加算して、PLIを検出する。
【0013】
いくつかの例示的な実施形態では、このPLI除去技術は、位相偏移を調整してPLI抑制を改善するためにフィードバックを使用する。すなわち、開示されるフィードバック技術は、フィードバックループを有する回路を使用して、PLI抑制を経時的に改善する。この解決策では、最初のいくつかの心周期は、依然としてノイズが多くなり得るが、その後、処理回路がリアルタイムで十分な抑制を達成する。
【0014】
別の実施例では、PLI除去技術は、予測方法を使用して、ほぼゼロの遅延時間又は時間ジッタ(例えば、どちらも0.1ミリ秒未満)で、ECGからPLIの大きさをリアルタイムで低減する。この予測技術は、PLIのパラメータの変化が、心周期の持続期間と比較して緩やかに生じるものとしている。したがって、1つ又は2つ以上の比較的最近のサイクルを、PLIのパラメータ、例えばPLIのエネルギー、位相、及び/又は周波数を推定するために使用することができる。回路によって生成されたPLI干渉除去信号の必要とされる位相シフト(例えば、下で説明されるように、較正によって補正された位相)が予測される。位相整合した除去信号は、リアルタイムアナログECG信号に加えられて、PLIを減算して、低減されたPLIを有する上述した記録機器に出力される。
【0015】
いくつかの実施例は、PLIフィルタを提供し、PLIフィルタは、(a)PLI高調波推定器であって、(i)PLIと重ね合わされた未処理の入力アナログECG信号を受信して、PLIの1つ又は2つ以上の高調波をリアルタイムで推定すること、及び(ii)推定に応答して、PLIのそれぞれの1つ又は2つ以上の高調波に整合する1つ又は2つ以上の高調波波形を出力すること、を行うように構成された、PLI高調波推定器と、(b)PLIキャンセラ(差動増幅器又は信号合成器など)であって、(i)1つの入力として入力アナログECG信号を受信し、別の入力として1つ又は2つ以上の高調波波形を受信して、入力信号からの重ね合わされたPLIを抑制する(例えば、除去する)こと、及び(ii)PLIから除去された入力信号である、それぞれのアナログECG信号を出力すること、を行うように構成された、PLIキャンセラ、と、を備える。
【0016】
50/60Hz及びその高調波ノイズが、上記の実施例のうちのいずれによっても完全に解消されない場合であっても、リアルタイムで達成されたPLI抑制のレベルが有意であり得る。
【0017】
システムの説明
図1は、スタンドアロン型レコーダ35を備えた、カテーテルベースの電気生理学的(EP)検知、信号解析、及びアブレーションシステム20の概略描写例解図である。レコーダ35は、典型的には、医師がアナログECG信号(心臓内及び体表面の両方)を見るために使用される。レコーダ35は、本開示の一実施例による、ハイブリッド電力線干渉(PLI)フィルタ55を介してインターフェースされている。システム20は、例えば、患者インターフェースユニット(patient interface unit、PIU)24、例えば、Biosense-Webster社製のCARTO(登録商標)3システムを含み得る。PIU24に接続されたECGのリードは、更なる処理のためにサンプリングされて、更に、未処理のECG信号をリアルタイムで表示するためのレコーダ35に方向付けられる。明確にするために、電力ケーブル、ソケット、及びインレットなどの要素は、図1から省略されている。
【0018】
見られるように、システム20は、医師30によって患者28の心臓26にナビゲートされるシャフト22を有するカテーテル21を含む。描画された例では、医師30は、カテーテルの近位端の近くのマニピュレータ32を使用してシャフト22を操作しながら、シース23を通してシャフト22を挿入する。
【0019】
挿入図25及び挿入図45に示されるように、カテーテル21のシャフト22の遠位端は、例えば電極対M1-M2を備える双極ペーシングアセンブリ40によるペーシングに使用され得る、嵌合された電極である。カテーテル21の近位端は、PIU24に、及び例えばPIU24を介してレコーダ35に接続される。
【0020】
PIU24は、体表面ECGパッチ49から、及び/又はカテーテル21の遠位端に装着された電極(例えば、M1、M2)から、PLIと重ね合わされたECG波形を受信する。典型的には、パッチ49は、患者28の胸部及び脚の周りの皮膚に取り付けられる。PIU24は、ケーブル39を通るワイヤによってパッチ49に接続されて、ECGパッチ49から信号を受信する。PIU24は、ケーブル22を通るワイヤによってカテーテル21に接続されて、カテーテル21の遠位端で電極から信号を受信する。レコーダ35は、カテーテル、EPマッピングカテーテルなどのカテーテル、例えば任意選択的にマッピング又は他の専用のマッピングカテーテル(図示せず)にも使用されるカテーテル21の電極から、PLIと重ね合わせた信号を受信し得る。
【0021】
レコーダ35は、記録されたECG信号と同期するペーシング信号を生成するために使用される。代替的に、レコーダ35と通信するスタンドアロン型ペースメーカーが、ペーシング信号を生成し得る。一実施例として、T波の識別は、T波中のペーシングの回避を提供する。T波は、典型的には、PLIに敏感であり、適切な識別は、レコーダ35に表示されるECG信号からPLIの少なくとも一部を除去することによって改善され得る。いくつかの例示的な実施形態では、ハイブリッドフィルタ55は、レコーダ35に提供されるECG信号に遅延を課すことなく、PLIの少なくとも一部分を除去するように構成されている。
【0022】
いくつかの例示的な実施形態によれば、ハイブリッドPLIフィルタ55は、線59に一体化されて、アナログ信号をレコーダ35の入力に方向付ける前に、未処理のECGのPLIを低減するように構成されている。
【0023】
ハイブリッドPLIフィルタ55は、ECG信号がレコーダ35に入力される前にアナログECG信号からPLIを除去する、少なくとも1つのタイプの開示されるPLI除去回路(図2及び図3に示される)を収容する。
【0024】
コンソール24内の信号からPLIを含むコヒーレント信号を除去するための技術は、米国特許第7,894,885号に説明されており、当該特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
1つ又は2つ以上の追加的なカテーテル(図示せず)が心臓26に挿入されて、EPマッピング及び/又はアブレーションを行い得る。この目的のために、ECG信号は、1つ又は2つ以上の追加的なカテーテルに配置された電極から取得され得(かかる信号は、本開示では、「心臓内ECG信号」とも呼ばれる)、PIU24及びレコーダ35によって受信され得る。かかるECG信号はまた、ハイブリッドフィルタ55によってフィルタリングされるPLIであり得る。加えて、非マッピング信号(例えば、温度及び接触圧力の示度)がカテーテルから受信され得る。
【0026】
PIU24は、例えば汎用コンピュータであり得るプロセッサ41とインターフェースし得、様々な信号を受信するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路38を備える。プロセッサ41は、これらの信号に含まれる情報を使用して、電気生理学的マップ31及びECGトレース44を構築し、これらをディスプレイ27上に提示する。ディスプレイ27でのECGトレース44の表示は、典型的には、レコーダ35に示されるECGトレースに対して遅延する。
【0027】
EPマッピング処置中に、カテーテルの場所は、それらが患者の心臓26内にある間、追跡することができる。かかる追跡は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,456,182号に説明されている、Biosense-Webster社製のActive Current Location(ACL)システムを使用して実行され得る。
【0028】
したがって、プロセッサ41は、ECGなどの、カテーテルから受信した任意の所与の信号を、信号が取得された場所と関連付け得る。プロセッサ41は、これらの信号に含まれる情報を使用して、ディスプレイ上に示すようにローカルアクティベーション時間(local activation time、LAT)マップなどのEPマップを構築する。アブレーションを行うために、マッピング/アブレーションカテーテル(図示せず)の電極は、生成器47に接続され(例えば、切り替えられ)得る。
【0029】
様々な実施例では、開示されるハイブリッドPLIフィルタ55の異なる要素は、1つ若しくは2つ以上の別個の構成要素、1つ若しくは2つ以上の特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit、ASIC)、及び/又は1つ若しくは2つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field-Programmable Gate Array、FPGA)を使用するなどの、好適なハードウェアを使用して実装され得る。開示されるハイブリッドPLIフィルタの機能のいくつか、例えば、そのプロセッサのいくつか又は全ての機能が、1つ又は2つ以上の汎用プロセッサに実装され得、プロセッサは、本明細書に説明された機能を実施するようにソフトウェアにプログラムされる。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを通じて、若しくはホストから、電子的形態でプロセッサにダウンロードされ得るか、又はソフトウェアは、代替的若しくは追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの非一時的な有形媒体に提供及び/若しくは記憶され得る。具体的には、ハイブリッドPLIフィルタ55は、下で更に説明するように、図2及び図3に含まれる、本明細書に開示される専用のアルゴリズムを実行し、当該アルゴリズムは、フィルタ55が、開示されたステップを実行することを可能にする。
【0030】
アナログECG信号からのPLIのリアルタイムでの除去
図2は、本開示の一実施例による、アナログECG信号303からPLIをリアルタイムで除去するための回路200の概略ブロック図である。回路200は、ECG信号をサンプリングして、1~5周期、例えば、PLI基本高調波の1周期、の時間遅延(例えば、50Hz信号の場合、20ミリ秒の遅延)を有するPLI信号を推定し、その推定を適用して、PLIをリアルタイムで除去するように構成されている。PLI信号は この期間にわたって、例えば、100ミリ秒にわたって、有意に変化しないものとする。
【0031】
見られるように、2アームのレイアウトでは、入力ECG信号(中央のグラフ挿入図325にも見られる)は、増幅器304及び(+)差動増幅器316に並列して送給される。ECG信号303は、例えば50Hz又は60Hzの正弦波及びその高調波(100Hz、150Hzなど)によって、PLIと本質的に重ね合わされる。
【0032】
更に見られるように、(-)差動増幅器316には、位相補正干渉信号333(下部のグラフ挿入図325にも見られる)が送給される。この信号は、基本高調波(例えば、50Hz~500Hzの振幅の結合)を含む、PLIの最高10個の高調波の線形結合である。差動振幅増幅器316は、(LPF318による低域通過フィルタ処理後に)入力ECG信号303から干渉信号333を減算して、PLIフィルタリングされた信号350を生成する。PLIを除去した信号350は、上部のグラフ挿入図325にも示されている。
【0033】
上で説明したPLIフィルタ処理は、アナログ信号で行われる。この目的のために、A/D回路308及びD/A回路332は、デジタルプロセッサ315が、PLI干渉をデジタル的に特徴付け、それに応答して、アナログ信号333に変換される補正デジタル信号330を出力することを可能にする。要素308、315、及び332は、以下、集合的に「予測PLI高調波推定器」と呼ばれる。
【0034】
上述したように、PLI除去回路200は、予測方法を使用して、ごくわずかな時間遅延を伴って、ECGからPLIをリアルタイムで除去する。PLIは、デジタルプロセッサ315によってPLIを計算する期間にわたって有意に変化しないと予測される。本技術は、PLIのパラメータの変化が緩やかに生じるものとしている。したがって、1つの前のサイクルは、良好なノイズ推定である。単一のサイクル(例えば、20ミリ秒)のリアルタイム性能を達成するために、回路200は、1つの干渉サイクルが除去される前に、1つの干渉サイクル(例えば、50Hzで20ミリ秒)を取得して、デジタル化する。これは、次のサイクル515のために推定されて、そのサイクル中にECG信号510からPLI高調波を除去するのに使用されるために、四角505においてサンプリングされた信号として挿入図325に示されている。
【0035】
デジタル補正信号をデジタル的に推定及び生成するために、プロセッサ215は、以下の構成要素を含む。
1.少なくとも1つのPLIサイクル(例えば、20ミリ秒で、1kHzの回路によってサンプリングされて200個のデジタルサンプルを生成する)のデジタルサンプルの形態で記憶する、バッファ310。
2.デジタル信号をフィルタリングして、ECG高調波のみが計算されることを確実にする、コムフィルタ312(FIRフィルタ)。LPF(コムフィルタ312)は、750Hzを超える周波数をフィルタ除去する。
3.約50Hz(50Hz~500Hz)基準の10個の高調波の振幅を計算する、アーチファクト検出モジュール322(FFTアルゴリズム)。
4.電力線の実際の周波数(例えば、49.975Hz)を測定する、周波数測定モジュール378。
5.上で測定した実際の電力線周波数の高調波を有する、sin/cos信号波形生成器。
6.各周波数において生成された推論波形の高調波波形に推定振幅を乗算する、乗算器。
7.下で説明される較正に基づいて、ノイズ高調波が完全に減算されることを確実にする、位相補正(例えば、固定)モジュール345。
【0036】
検討した位相は、入力データ(ノイズを有するECG)とプロセッサ315(ノイズのみの正弦波)の出力との間の遅延に起因するもの、すなわち、FFT演算によって生じたものである。一般に、入力と出力との間の遅延は、FFTを計算するために何個のECGチャネルをプロセッサが使用するかに依存する。
【0037】
この遅延は、較正中に一定かつ測定可能であり、(システムにおいて何個のチャネルが必要であるかに依存する)遅延の測定後に、回路には一定の遅延値が設定される。
【0038】
更に、図2に見られるように、いくつかの例示的な実施形態では、回路334は、周囲環境内のPLIを検出するように構成されたアンテナ335を含む。アンテナ335からの出力は、汎用干渉基準信号を提供し得る。この基準信号を使用して、干渉信号、例えばPLI並びに他の干渉信号、の周波数がより正確に検出され得る。かかる場合、周波数測定モジュール378は、誘導干渉の周波数を検出して、検出された周波数に位相固定干渉を生成し、それにより、図2のハイブリッドPLIフィルタは、これらをECG波形から(又はEGM信号から)除去することができる。誘導的な及び/又は静電容量的な電気的干渉は、ペーシング、感知、及びアブレーションシステム20の構成要素から生成され得る。誘導的な及び/又は静電容量的な電気的干渉は、カテーテル室に見出される他のデバイスによって、並びにPLIから生成され得る。
【0039】
上述したように、示された実施例では、任意のかかる干渉は、アンテナ335を備える回路334によって検出される。上述したように、周波数測定モジュール378は、単に回路334のみによって、又は電力網からの(例えば、有線及び無線基準信号を合計することによる)基準信号とともに送給され得る。
【0040】
PLI高調波推定器(例えば、アーチファクト検出モジュール322を備える回路)は、アンテナを使用して、取得した干渉信号を受信し、干渉信号の1つ又は2つ以上の高調波をリアルタイムで推定し、その推定に応答して、干渉信号のそれぞれの1つ又は2つ以上の高調波に整合する1つ又は2つ以上の高調波波形を出力するように更に構成されている。差動増幅器316は、入力アナログ信号及び1つ又は2つ以上の高調波波形を受信し、1つ又は2つ以上の高調波波形を使用して、入力アナログ信号内の重ね合わされた干渉信号を抑制して、抑制干渉信号を有する入力アナログ信号(例えば、フィルタリングされたECG350)に対応するアナログ出力信号を出力する。
【0041】
図3は、本開示の別の実施例による、アナログECG信号202からの電力線干渉(PLI)をリアルタイムで除去するための回路300の概略ブロック図である。見られるように、ECG信号は、典型的には、PLIと、例えば、50Hz又は60Hzの信号と重ね合わされる。いくつかの例示的な実施形態では、回路300は、増幅器204と、帯域通過フィルタ206と、マイクロプロセッサ222と、フィードバックループ220と、差動増幅器216と、を含む。いくつかの実施例によれば、回路300において、マイクロプロセッサ222は、ECG202に対して逆(180°位相シフト)の推定PLI信号を生成し、差動増幅器216は、その信号をECG202から減算する。いくつかの例示的な実施形態では、次いで、回路300からの出力が増幅器218によって増幅され、レコーダ35に表示される。任意選択的に、及び好ましくは、増幅器218は、レコーダ35に組み込まれる。
【0042】
いくつかの実施例によれば、マイクロプロセッサ222は、ECG202を粗にサンプリングして、PLIを検出する。いくつかの例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ222は、任意選択的に、及び好ましくは既製品である、12ビットプロセッサである。他のサイズ決定されたマイクロプロセッサ(例えば、16ビットマイクロプロセッサ)も想到される。いくつかの例示的な実施形態では、マイクロプロセッサ222は、直接メモリアクセス(Direct Memory Access、DMA)210と、FFTモジュール214(又はFFT機能)と、sin/cos生成器224と、を含む。
【0043】
いくつかの実施例によれば、マイクロプロセッサ222のアナログ-デジタル変換器208は、入力ECG信号をサンプリングする。任意選択的に、入力は、12ビットでサンプリングされる。いくつかの例示的な実施形態では、FFTモジュール214は、FFTを行って、PLIのパラメータ、例えば、サンプリングされたPLIのゲイン、周波数、及び位相を検出する。いくつかの例示的な実施形態では、sin/cos生成器224は、検出された周波数及びゲインを有するsin/cos信号を生成する。任意選択的に、生成されたゲイン及び周波数は、予め定義された変調に基づいて、検出されたゲイン及び周波数に対して変調され得る。いくつかの実施例によれば、生成された信号の位相は、線226内のECG202に対して逆(180°位相シフト)になるように定義され、それにより、差動増幅器216でのこの生成されたPLI信号の追加は、ECG202からのPLIの減算を提供する。任意選択的に、位相は、サンプリングされた信号の検出された位相に予め定義された補正に加算して、マイクロプロセス222によって課される遅延を補償することに基づいている。任意選択的に、遅延は、20ミリ秒である。定義された位相シフトを有する生成されたPLIは、デジタル-アナログ変換器212によってアナログ信号へ逆に変換され、それにより、そのアナログ信号は、差動増幅器216を使用して、ECG202から減算され得る。
【0044】
いくつかの例示的な実施形態では、計算時間によって生じる任意の遅延を補償するための予め定義された補正は、マイクロプロセッサ222のメモリに記憶され得る。
【0045】
いくつかの実施例によれば、フィードバックループ220は、回路300からの出力をマイクロプロセッサ222へ逆に方向付けて、PLIの検出を累進的に改善する。
【0046】
任意選択的に、フィードバック220は、回路300の位相及び周波数の整合を(例えば、心臓の最高数サイクルの時間内で)累進的に改善する。開示される回路は、改善されたPLI抑制が達成されるまで、補正波形の位相を(試行錯誤モードで)段階的に調整するものとみなすことができる。
【0047】
上述したように、この解決策では、最初のいくつかの心周期は、依然としてノイズが多くなり得るが、その後、処理回路がリアルタイムで十分なPLI抑制を達成する。低コストの12ビットマイクロプロセッサ222によって提供されるリアルタイムのPLI減算は、いくらか「粗」であるが、それでも、PLIがアナログECG信号から、ECG信号250の解析を更に容易にするレベルまで低減される(例えば、少なくとも1桁低減される)。いくつかの例示的な実施形態では、PLIノイズを低減することは、T波発生の識別を改善する。
【0048】
差動増幅器216からの出力は、増幅器218によって増幅され、レコーダ35に表示される。いくつかの例示的な実施形態では、ECGをレコーダに表示する前にPLIを抑制することは、T波発生時間を検出し、それに応答して、カテーテル21を心臓26に注入するペーシング信号を生成する能力を改善する。
【0049】
市販のマイクロプロセッサであり得るPLIマイクロプロセッサ222の除去を提供することは、以下のいくつかのサブ回路を含む。
(a)いくらか粗であるが、ECG信号の十分に正確なサンプリングを提供する、A/D12ビットサンプリングステージ208。
(b)サンプリングされた信号は、直接メモリアクセス(DMA)コントローラ210タイプであり得るデータ点取得部210に集約される。
(c)バッファステージ210は、FFTステージ214の形態の50Hz(又は60Hz)の信号振幅検出器が、PLIの振幅を抽出すること、及び推定PLI振幅を高調波sin/cosine波生成器224に出力することを可能にする。デジタル高調波信号は、差動増幅器216に方向付けられた線226のアナログECG信号のPLIを抑制するために、位相シフトを有するように定義される。
(d)正しい振幅フォーマットを有するそれぞれのアナログ50Hz信号を差動増幅器216に出力する、D/A12ビット変換ステージ212。
【0050】
提示を明確にするために、図2のPLI除去回路200及び図3のPLI除去回路300は、簡略化されている。例えば、回路200及び回路300への電力供給は、図から省略されている。
【0051】
アナログEP信号からのPLIをリアルタイムで除去する方法
図4は、本開示の一実施例による、図2の回路200及び図3の回路300のうちの1つを使用して、アナログEP信号からPLIを除去するための方法を概略的に例解するフローチャートである。本プロセスは、カテーテル21及びケーブル39の近位端をレコーダ35に接続することによって、カテーテル電極及び表面電極49をECGレコーダ35に接続することから始まる(ステップ402)。
【0052】
ハイブリッドPLIのフィルタ処理設定ステップ404において、図2の予測ハイブリッドPLIフィルタ又は図3のフィードバックハイブリッドPLIフィルタのうちの1つが、レコーダ35と、カテーテル電極及び表面電極49のうちの少なくとも1つと、の間に結合される。ステップ404は、典型的には、前のステップ402とともに生じ得ることに留意されたい。
【0053】
アナログECG取得ステップ406において、医師が、図1に示されるように、EPマッピングセッションの中にアナログECG信号を取得する。これらのアナログ信号は、PLIを含むと想像される。
【0054】
PLI抑制ステップ408において、図2の予測ハイブリッドPLIフィルタ又は図3のPLIのフィードバックハイブリッドPLIフィルタのいずれかが上で説明したように適用されて、アナログECG信号のPLIを抑制する。
【0055】
PLIを除去したアナログECG信号が増幅され410、レコーダ35に表示される(ステップ412)。
【0056】
図4のフローチャートは、提示を明確にするために簡略化されている。例えば、医師がディスプレイ上でPLIを除去したEP波形を見るなどの、追加のステップが行われ得る。
【0057】
本明細書に説明される実施例は、主として心臓のEPペーシング及びマッピング対処するものであるが、本明細書に説明される方法及びシステムはまた、筋電図及び脳波計測などの他の用途で使用することもできる。
【0058】
したがって、上に説明される実施例は、例として挙げたものであり、本開示は、本明細書の上記で具体的に図示及び説明されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上に説明されている様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの双方、並びに前述の説明を一読すると当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び変更例を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0059】
実施例1:心電図(ECG)線(22、39)の電力線干渉(PLI)を抑制するための方法であって、ECG線のECG信号をサンプリングすることと、ECG線のPLIを特徴付ける少なくとも1つのパラメータを検出することと、当該検出することに基づいて、アナログPLIキャンセル信号を生成することと、当該PLIキャンセル信号の位相を定義することと、当該位相を有する当該PLIキャンセル信号をアナログPLIキャンセル信号(230、333)に変換することと、当該アナログPLIキャンセル信号と当該ECG信号(226、303)との差を増幅して、抑制されたPLIを有するECG信号(250)を生成することと、抑制されたPLIを有する当該ECG信号をECGレコーダに方向付けることと、を含む、方法。
実施例2:当該マイクロプロセッサによって課される時間遅延に起因する、当該PLIキャンセル信号とECG線の当該同時ECG信号のPLIとの間の予想される位相シフトを補償するために、当該位相が定義される、実施例1に記載の方法。
実施例3:当該時間遅延が、予測される、実施例2に記載の方法。
実施例4:抑制されたPLIを有するECG信号を、フィードバックループ(220)において、ECG線にフィードバックすることを更に含む、実施例1~3のいずれか1つに記載の方法。
実施例5:当該時間遅延が、較正に基づいて計算される、実施例1又は2のいずれか1つに記載の方法。
実施例6:当該サンプリング、当該検出、当該生成、及び当該変換が、マイクロプロセッサ(222)によって実行される、実施例1~5のいずれか1つに記載の方法。
実施例7:当該マイクロプロセッサ(222)が、直接メモリアクセス(DMA)(210)を含む12ビットマイクロプロセッサである、実施例6に記載の方法。
実施例8:当該少なくとも1つのパラメータが、ゲイン、周波数、及び位相を含む群から選択され、当該少なくとも1つのパラメータを検出することが、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation、FFT)に基づいている、実施例1~7のいずれか1つに記載の方法。
実施例9:当該PLI及びECG線のPLIの少なくとも1つの高調波の基本振動数が判定される、干渉基準信号を受信することを含む、実施例1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施例10:当該干渉基準信号が、ECG線の近くに位置決めされたアンテナ(335)から受信される、実施例9に記載の方法。
実施例11:心電図(ECG)線の電力線干渉(PLI)を抑制するためのデバイスであって、マイクロプロセッサ(222)であって、ECG線(22、39)のECG信号(202)をサンプリングすること、ECG線のPLIを特徴付ける少なくとも1つのパラメータを検出すること、当該検出することに基づいて、アナログPLIキャンセル信号を生成すること、当該PLIキャンセル信号の位相を定義すること、及び当該位相を有する当該PLIキャンセル信号をアナログPLIキャンセル信号(230)に変換すること、を行うように構成された、マイクロプロセッサと、当該マイクロプロセッサから出力された当該PLIキャンセル信号と当該ECG信号との差を増幅して、差動増幅器(216)の出力において、抑制されたPLIを有するECG信号(250)を生成するように構成された当該差動増幅器と、を備える、デバイス。
実施例12:当該マイクロプロセッサ(222)によって課される時間遅延に起因する、当該PLIキャンセル信号とECG線の当該同時ECG信号のPLIとの間の予想される位相シフトを補償するために、当該位相が定義される、実施例11に記載の方法。
実施例13:抑制されたPLIを有する当該ECG信号(250)をECG線にフィードバックするように構成されたフィードバックループ(220)を更に備える、実施例12に記載のデバイス。
実施例14:当該マイクロプロセッサ(222)が、直接メモリアクセス(DMA)(210)を含む12ビットマイクロプロセッサである、実施例11~13のいずれか1つに記載のデバイス。
実施例15:当該マイクロプロセッサ(222)が、FFTを行って、当該少なくとも1つのパラメータを検出するように構成されている、実施例11~14のいずれか1つに記載のデバイス。
実施例16:当該少なくとも1つのパラメータが、サンプリングされたECG信号のゲイン、周波数、及び位相を含む、実施例15に記載のデバイス。
実施例17:ECG線の近くのPLIを受信するように構成されたアンテナと、当該アンテナからの出力に基づいて、ECG線の当該PLIの基本振動数及び少なくとも1つの高調波を推定するように構成されたPLI高調波推定器と、を更に備える、実施例11~16のいずれか1つに記載のデバイス。
実施例18:電力線干渉(PLI)抑制システムであって、予測PLI高調波推定器(308、315、及び332)であって、PLIと重ね合わされた入力アナログ心電図(ECG)信号(303)を受信して、PLIの1つ又は2つ以上の高調波をリアルタイムで推定すること、及び1つ又は2つ以上の推定高調波に応答して、PLI(350)のそれぞれの1つ又は2つ以上の高調波に整合する1つ又は2つ以上の高調波波形を出力すること、を行うように構成されている、予測PLI高調波推定器と、PLIキャンセラ(200)であって、入力アナログECG信号及び1つ又は2つ以上の高調波波形を受信すること、1つ又は2つ以上の高調波波形を使用して、入力アナログECG信号内の重ね合わされたPLIを抑制すること、及び抑制されたPLIを有する入力アナログECG信号に対応するアナログECG出力信号(350)を出力すること、を行うように構成されている、PLIキャンセラと、を備える、PLI抑制システム。
実施例19:予測PLI高調波推定器(308、315、及び332)が、PLIの少なくとも1つの以前のサイクルに基づいて、PLIの所与のサイクルの1つ又は2つ以上の高調波を推定するように構成されている、実施例18に記載のシステム。
実施例20:電力線干渉(PLI)抑制システムであって、PLI高調波推定器(308、315、及び332)であって、PLIと重ね合わされた入力アナログECG信号(303)を受信して、PLIの1つ又は2つ以上の高調波をリアルタイムで推定すること、及び1つ又は2つ以上の推定高調波に応答して、PLIのそれぞれの1つ又は2つ以上の高調波に整合する1つ又は2つ以上の高調波波形を出力すること、を行うように構成されている、PLI高調波推定器と、PLIキャンセラ(200)であって、フィードバックループを有し、入力アナログ信号及び1つ又は2つ以上の高調波波形を受信すること、フィードバックループを使用して、1つ又は2つ以上の高調波波形を使用して、入力アナログ信号内の重ね合わされたPLIを抑制すること、及び抑制されたPLIを有する入力アナログ信号に対応するアナログ出力信号を出力すること、を行うように構成されている、PLIキャンセラと、を備える、PLI抑制システム。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) 心電図(ECG)線の電力線干渉(PLI)を抑制するための方法であって、
前記ECG線のECG信号をサンプリングすることと、
前記ECG線のPLIを特徴付ける少なくとも1つのパラメータを検出することと、
前記検出することに基づいて、アナログPLIキャンセル信号を生成することと、
前記PLIキャンセル信号の位相を定義することと、
前記位相を有する前記PLIキャンセル信号をアナログPLIキャンセル信号に変換することと、
前記アナログPLIキャンセル信号と前記ECG信号との間の差を増幅して、抑制されたPLIを有するECG信号を生成することと、
抑制されたPLIを有する前記ECG信号をECGレコーダに方向付けることと、を含む、方法。
(2) 前記マイクロプロセッサによって課される時間遅延に起因する、前記PLIキャンセル信号と前記ECG線の前記同時ECG信号のPLIとの間の予想される位相シフトを補償するために、前記位相が定義される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記時間遅延が、予測される、実施態様2に記載の方法。
(4) 抑制されたPLIを有する前記ECG信号を、フィードバックループにおいて、前記ECG線にフィードバックすることを更に含む、実施態様1~3のいずれかに記載の方法。
(5) 前記時間遅延が、較正に基づいて計算される、実施態様1又は2に記載の方法。
【0061】
(6) 前記サンプリングすること、前記検出すること、前記生成すること、及び前記変換することが、マイクロプロセッサによって実行される、実施態様1~5のいずれかに記載の方法。
(7) 前記マイクロプロセッサが、直接メモリアクセス(DMA)を含む12ビットマイクロプロセッサである、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記少なくとも1つのパラメータが、ゲイン、周波数、及び位相を含む群から選択され、前記少なくとも1つのパラメータを検出することが、高速フーリエ変換(FFT)に基づいている、実施態様1~7のいずれかに記載の方法。
(9) 前記PLI及び前記ECG線のPLIの少なくとも1つの高調波の基本振動数が判定される、干渉基準信号を受信することを含む、実施態様1~8のいずれかに記載の方法。
(10) 前記干渉基準信号が、前記ECG線の近くに位置決めされたアンテナから受信される、実施態様9に記載の方法。
【0062】
(11) 心電図(ECG)線の電力線干渉(PLI)を抑制するためのデバイスであって、
マイクロプロセッサであって、
前記ECG線のECG信号をサンプリングすること、
前記ECG線のPLIを特徴付ける少なくとも1つのパラメータを検出すること、
前記検出することに基づいて、アナログPLIキャンセル信号を生成すること、
前記PLIキャンセル信号の位相を定義すること、及び
前記位相を有する前記PLIキャンセル信号をアナログPLIキャンセル信号に変換すること、を行うように構成された、マイクロプロセッサと、
差動増幅器であって、前記マイクロプロセッサから出力された前記PLIキャンセル信号と前記ECG信号との差を増幅して、前記差動増幅器の出力において、抑制されたPLIを有するECG信号を生成するように構成された差動増幅器と、を備える、デバイス。
(12) 前記マイクロプロセッサによって課される時間遅延に起因する、前記PLIキャンセル信号と前記ECG線の前記同時ECG信号のPLIとの間の予想される位相シフトを補償するために、前記位相が定義される、実施態様11に記載のデバイス。
(13) 抑制されたPLIを有する前記ECG信号を前記ECG線にフィードバックするように構成されたフィードバックループを更に備える、実施態様12に記載のデバイス。
(14) 前記マイクロプロセッサが、直接メモリアクセス(DMA)を含む12ビットマイクロプロセッサである、実施態様11~13のいずれかに記載のデバイス。
(15) 前記マイクロプロセッサが、FFTを行って、前記少なくとも1つのパラメータを検出するように構成されている、実施態様11~14のいずれかに記載のデバイス。
【0063】
(16) 前記少なくとも1つのパラメータが、サンプリングされたECG信号のゲイン、周波数、及び位相を含む、実施態様15に記載のデバイス。
(17) 前記ECG線の近くのPLIを受信するように構成されたアンテナと、
前記アンテナからの出力に基づいて、前記ECG線の前記PLIの基本振動数及び少なくとも1つの高調波を推定するように構成されたPLI高調波推定器と、を更に備える、実施態様11~16のいずれかに記載のデバイス。
(18) 電力線干渉(PLI)抑制システムであって、
予測PLI高調波推定器であって、
PLIと重ね合わされた入力アナログ心電図(ECG)信号を受信して、前記PLIの1つ又は2つ以上の高調波をリアルタイムで推定すること、及び
前記1つ又は2つ以上の推定高調波に応答して、前記PLIの前記それぞれの1つ又は2つ以上の高調波に整合する1つ又は2つ以上の高調波波形を出力すること、を行うように構成されている、予測PLI高調波推定器と、
PLIキャンセラであって、
前記入力アナログECG信号及び前記1つ又は2つ以上の高調波波形を受信すること、
前記1つ又は2つ以上の高調波波形を使用して、前記入力アナログECG信号内の前記重ね合わされたPLIを抑制すること、及び
前記抑制されたPLIを有する前記入力アナログECG信号に対応するアナログECG出力信号を出力すること、を行うように構成されている、PLIキャンセラと、を備える、PLI抑制システム。
(19) 前記予測PLI高調波推定器が、前記PLIの少なくとも1つの以前のサイクルに基づいて、前記PLIの所与のサイクルの前記1つ又は2つ以上の高調波を推定するように構成されている、実施態様18に記載のシステム。
(20) 電力線干渉(PLI)抑制システムであって、
PLI高調波推定器であって、
PLIと重ね合わされた入力アナログECG信号を受信し、かつ前記PLIの1つ又は2つ以上の高調波をリアルタイムで推定すること、及び
前記1つ又は2つ以上の推定高調波に応答して、前記PLIの前記それぞれの1つ又は2つ以上の高調波に整合する1つ又は2つ以上の高調波波形を出力すること、を行うように構成されている、PLI高調波推定器と、
PLIキャンセラであって、フィードバックループを有し、
前記入力アナログ信号及び前記1つ又は2つ以上の高調波波形を受信すること、
前記フィードバックループを使用して、前記1つ又は2つ以上の高調波波形を使用して、前記入力アナログ信号内の前記重ね合わされたPLIを抑制すること、及び
前記抑制されたPLIを有する前記入力アナログ信号に対応するアナログ出力信号を出力すること、を行うように構成されている、PLIキャンセラと、を備える、PLI抑制システム。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】