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特開2023-118115駆動アセンブリおよびそれに関連する車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118115
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】駆動アセンブリおよびそれに関連する車両
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/108 20060101AFI20230817BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230817BHJP
   F16D 27/118 20060101ALI20230817BHJP
   F16D 27/112 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H02K7/108
B60L15/20 K
F16D27/118
F16D27/112 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023019967
(22)【出願日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】2201265
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】522034789
【氏名又は名称】アルストム・ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リッカルド・オルドリーニ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・デュボア
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・シェレール
【テーマコード(参考)】
5H125
5H607
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125BE05
5H125FF01
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE03
5H607EE10
5H607EE18
(57)【要約】
【課題】回転装置のシャフトを遠隔から連結解除でき、かつ優れた強度とコンパクトな外形寸法をもたらすシンプルな構造の駆動システムを提供する。
【解決手段】回転装置の駆動アセンブリは、ケーシングと、ケーシングに対して軸の周りに回転するシャフトと、を備える電気モータと、シャフトを回転装置に接続するようにアレンジされたトルク伝達システムであって、-前記回転装置を回転駆動するようにされたスリーブと、-シャフト上に固定して取り付けられた第1のプレートと、-スリーブに取り付けられた第2のプレートと、-第2のプレートの作動システムと、を備えるトルク伝達システムと、を備える。第2のプレートは、第1のプレートと第2のプレートとが軸の周りを一体で回転する係合位置と、第1のプレートと第2のプレートとが軸の周りを互いに自由に回転する係合解除位置と、の間で、軸と平行な方向に第1のプレートに対して並進可能に取り付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転装置の駆動アセンブリ(18)であって、
- ケーシング(24)と、前記ケーシング(24)に対して軸(A)の周りを回転するシャフト(28)と、を具備する電気モータ(20)と、
- 前記シャフト(28)を回転装置に接続するようにアレンジされたトルク伝達システム(22)であって、
- 前記シャフト(28)の周りに配置されて、前記回転装置を回転駆動するようにされたスリーブ(60)と、
- 前記シャフト(28)上に固定して取り付けられた第1のプレート(62)と、
- 前記スリーブ(60)に取り付けられた第2のプレート(64)と、
- 係合位置と係合解除位置との間での前記第2のプレートの作動システム(66)と、を具備するトルク伝達システム(22)と、
を備える駆動アセンブリ(18)において、
前記第2のプレート(64)が、前記第1のプレート(62)と前記第2のプレート(64)とが前記軸(A)の周りを一体で回転する係合位置と、前記第1のプレート(62)と前記第2のプレート(64)とが前記軸(A)の周りを互いに自由に回転する係合解除位置と、の間で、前記軸(A)とほぼ平行な方向に前記第1のプレート(62)に対して並進可能に取り付けられることを特徴とする、駆動アセンブリ(18)。
【請求項2】
前記ケーシング(24)が、前記軸(A)とほぼ平行に延びる外周壁(34)と、前記外周壁(34)を閉じる少なくとも1つの第1の終端板(36)と、を備え、前記第1の終端板(36)は前記シャフト(28)の周りのほぼ円筒形の区画(40)を画定し、前記第1のプレート(62)、前記第2のプレート(64)および前記作動システム(66)が前記区画(40)の中に収められ、前記外周壁(34)が径方向に前記区画(40)全体を取り囲む、請求項1に記載の駆動アセンブリ(18)。
【請求項3】
前記作動システム(66)が、起動されたときに前記第2のプレート(64)を係合位置の方へ付勢することができる係合機構(102)を備える、請求項1に記載の駆動アセンブリ(18)。
【請求項4】
前記係合機構(102)が、外部からの制御操作によって起動されたときに、前記第2のプレート(64)を係合位置の方へ付勢することができる、請求項3に記載の駆動アセンブリ(18)。
【請求項5】
前記係合機構(102)が、起動されたときに電界および/または磁界を発生させるようにアレンジされたソレノイドを備え、前記電界および/または磁界が、前記第2のプレート(64)をその係合位置の方へ付勢する係合力を前記第2のプレート(64)に加える、請求項3に記載の駆動アセンブリ(18)。
【請求項6】
前記第1のプレート(62)と前記第2のプレート(64)とが、互いに対向する第1のクラッチ部材(92)および第2のクラッチ部材(98)であって、前記第2のプレート(64)が係合位置にあるときに互いに協働するようにアレンジされた第1のクラッチ部材(92)および第2のクラッチ部材(98)をそれぞれ備える、請求項1に記載の駆動アセンブリ(18)。
【請求項7】
前記第1のプレート(62)と前記第2のプレート(64)とが、前記第2のプレート(64)が係合位置にあるときに摩擦によって互いが協働するようにアレンジされた、請求項1に記載の駆動アセンブリ(18)。
【請求項8】
前記スリーブ(60)が、前記軸(A)の周りに配分された外スプライン(86)を具備する外面(84)を備え、前記第2のプレート(64)が、前記軸(A)と平行な方向に並進可能に前記外スプライン(86)に取り付けられる、請求項1に記載の駆動アセンブリ(18)。
【請求項9】
前記ケーシングに取り付けられたほぼ円筒形の保護カウルであって、前記区画の端部縁から前記軸(A)とほぼ平行に突き出た保護カウルを備える、請求項1に記載の駆動アセンブリ(18)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の駆動アセンブリ(18)と、回転装置と、を備え、前記スリーブが前記回転装置に固定された車両(10)。
【請求項11】
前記車両が鉄道車両である、請求項10に記載の車両(10)。
【請求項12】
前記回転装置が、車両の少なくとも1つの車輪を備え、前記駆動アセンブリが、有利には、前記スリーブを有する減速機を備える、請求項10に記載の車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
- ケーシングと、そのケーシングに対して軸の周りを回転するシャフトと、を具備する電気モータと、
- シャフトを回転装置に接続するようにアレンジされたトルク伝達システムであって、
- シャフトの周りに配置されて、回転装置を回転駆動するようにされたスリーブと、
- シャフト上に固定して取り付けられた第1のプレートと、
- スリーブに取り付けられた第2のプレートと、
- 係合位置と係合解除位置との間での第2のプレートの作動システムと、
を具備するトルク伝達システムと、
を備える回転装置の駆動アセンブリに関する。
【0002】
本発明は、そのようなアセンブリを少なくとも1つ備える車両、特に鉄道車両にも関する。
【背景技術】
【0003】
こうした駆動アセンブリは、電気モータによって与えられる駆動トルクで回転装置を回転駆動する目的で使用することが知られている。とりわけ、このような駆動アセンブリは、電動式または混合駆動式の車両、特に鉄道車両の車輪の駆動に使用されている。
【0004】
駆動トルクは、ケーシングに固定して取り付けられた固定子とシャフトに取り付けられた回転子との電磁的な相互作用によって発生する。広く知られるように、モータ内では電磁界が回転子の運動を引き起こし、そのトルクがシャフトによって伝達される。
【0005】
様々なタイプの電気モータのうち、永久磁石モータ、すなわち永久磁石同期機械は、急起動のための大きな過負荷電流に耐えることができる点、さらに非常にコンパクトであることにより、スペース的に大きな節約ができる点において有利である。
【0006】
しかし、永久磁石モータは、大きな慣性を有する回転装置を駆動する際には、その使用にリスクを生じることがある。実際、モータ内の電界の発生が停止された後でも、車両の慣性によって車輪の回転は維持され、そのためにシャフトは固定子内で回転駆動される。すると、モータは発電機として振る舞い、回転子と固定子との間の相互作用によってモータを損傷させかねない過電圧の原因を作る可能性がある。
【0007】
そこで、モータへのトルクの戻りを防ぐために、シャフトと回転装置との間の連接/連接解除装置、すなわちクラッチをモータに装着することが望ましい。そのような装置は、とりわけ、シャフトと回転装置との間のトルクの伝達を遠隔から切ることができるものであり、それによって機械を守ることができる。
【0008】
しかし、そうした装置にはなお改善の余地がある。実際、クラッチ装置を追加することによって、駆動システム関連の外形寸法は増すようになる。さらに、遠隔で操作できるクラッチ装置はやや複雑で脆弱なものとなり、それが損傷すれば、駆動システムは動作不能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的の1つは、回転装置のシャフトを遠隔から連結解除できる駆動システムであって、優れた強度とコンパクトな外形寸法とをもたらすシンプルな構造の駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、上述のようなタイプの回転装置の駆動アセンブリであって、第2のプレートが、第1のプレートと第2のプレートとが軸の周りを一体で回転する係合位置と、第1のプレートと第2のプレートとが軸の周りを互いに自由に回転する係合解除位置と、の間で、軸とほぼ平行な方向に第1のプレートに対して並進可能に取り付けられた駆動アセンブリを対象とする。
【0011】
このような駆動アセンブリは、連結システムの統合を改善できるものであり、駆動システムの堅牢性およびコンパクトさを向上させる。
【0012】
詳細な実施形態によれば、本発明によるアセンブリは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、それぞれ単独で、または技術的に実現可能なあらゆる組合せで採り入れた形で有する。
- ケーシングは、軸とほぼ平行に延びる外周壁と、外周壁を閉じる少なくとも1つの第1の終端板と、を備え、第1の端板はシャフトの周りのほぼ円筒形の区画を画定し、第1のプレート、第2のプレートおよび作動システムがその区画の中に収められ、外周壁は径方向に区画全体を取り囲む。
- 作動システムは、起動されたとき、特に外部からの制御操作によって起動されたときに、第2のプレートを係合位置の方へ付勢することができる係合機構を備える。
- 係合機構は、起動されたときに電界および/または磁界を発生させるようにアレンジされたソレノイドを備え、その電界および/または磁界は、第2のプレートをその係合位置の方へ付勢する係合力を第2のプレートに加える。
- 第1のプレートと第2のプレートとは、互いに対向する第1のクラッチ部材および第2のクラッチ部材であって、第2のプレートが係合位置にあるときに互いに協働するようにアレンジされた第1のクラッチ部材および第2のクラッチ部材をそれぞれ備える。
- 第1のプレートと第2のプレートとは、第2のプレートが係合位置にあるときに摩擦によって互いが協働するようにアレンジされる。
- スリーブは、軸の周りに配分された外スプラインを具備する外面を備え、第2のプレートは、軸と平行な方向に並進可能にその外スプラインに取り付けられる。
- 駆動アセンブリは、ケーシングに取り付けられたほぼ円筒形の保護カウルであって、区画の端部縁から軸とほぼ平行に突き出た保護カウルを備える。
【0013】
別の態様では、本発明は、上述のタイプの駆動アセンブリと、回転装置と、を備え、スリーブが回転装置に固定された車両、特に鉄道車両もその対象とする。
【0014】
具体的な実施形態によれば、本発明による車両は、次のような特徴を有する。
- 回転装置は、車両の少なくとも1つの車輪を備え、駆動アセンブリは、有利にはスリーブを有する減速機を備える。
【0015】
本発明については、添付の図面を参照しながら非限定的な例としてのみ示す以下の説明を読むことによってよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による駆動アセンブリを含んだ鉄道車両の概略部分図である。
図2図1の駆動アセンブリが連結状態にあるときの概略部分断面図である。
図3図1および図2の駆動アセンブリが連結解除状態にあるときの概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1では、車両10は部分的に示されている。車両10は、たとえば鉄道車両であり、特に中速もしくは高速列車タイプ、または路面電車もしくは地下鉄のような都心もしくは都心-近郊線車両である。
【0018】
以下の説明は、図面中に示した長手方向X、横断方向Yおよび上下方向Zを基準として行う。長手方向Xは、通常走行時の車両の前進方向に沿って延びる。上下方向Zは、長手方向Xと直交し、車両の高さに沿って延びる。横断方向Yは、長手方向Xおよび上下方向Zと直交し、車両の幅に沿って延びる。
【0019】
「ほぼ平行」、「ほぼ沿って」および「ほぼ垂直」という表現は、10°以下、好ましくは5°未満の角度誤差で「平行」、「沿って」および「垂直」であることをいう。
【0020】
「ほぼ同じ」という表現は、公称値に対して10%以下、好ましくは5%以下の誤差で「同じ」であることをいう。
【0021】
車両10は、たとえば少なくとも1つのボギー台車14に取り付けられた少なくとも1つの車体12を備える。
【0022】
ボギー台車14は、車軸17に取り付けられた車輪16を支える車台15を備える。たとえば、各々のボギー台車14は、車軸17によって回転するように接続された2つずつの車輪をそれぞれ支える2つの車軸17を備える。
【0023】
変形形態(図示せず)では、ボギー台車14は、それぞれ1つの車輪16をもつ独立した4つの車軸17であって、それによって車輪16が互いに独立して回転する、車軸17を備える。
【0024】
車軸17および車軸17によって支えられた各々の車輪16は、横断方向Yに沿って延びる回転軸の周りに回転する装置を形成する。
【0025】
車両10は、前記回転装置の駆動アセンブリ18を少なくとも1つ備え、その駆動アセンブリ18は、電気モータ20と、電気モータ20から車軸17へのトルク伝達システム22と、を備える。
【0026】
電気モータ20およびトルク伝達システム22は、たとえばボギー台車14の車台15に取り付けられる。
【0027】
変形形態では、電気モータ20は、直接車体12に取り付けられるか、または吊下げる形で車台15に取り付けられる。その場合、周知のように、トルク伝達システム22は、電気モータ20と車軸17との間の横動遊間を補償するように構成される。
【0028】
駆動アセンブリ18は、駆動トルクを発生させ、それを回転装置に伝達して回転させることができる。
【0029】
たとえば、駆動トルクの伝達は、鉄道車両10を動かすように車輪16を駆動するために行われる。
【0030】
さらに、駆動アセンブリ18は、駆動アセンブリ18から回転装置に向かう方向にも、回転装置から駆動アセンブリ18に戻る方向にも、制御操作を受けてトルク伝達を遮断するように構成される。
【0031】
電気モータ20は、電気エネルギーを供給されたときに駆動トルクを発生させることができる。
【0032】
電気モータ20は、とりわけ永久磁石モータである。図2および図3により詳しく示した電気モータ20は、内部スペース26を画定する保護ケーシング24と、軸Aに沿って延びるシャフト28であって、軸Aの周りをケーシング24に対して回転するように取り付けられたシャフト28と、を備える。
【0033】
図示した例では、軸Aは、横断方向Yにほぼ沿って、車軸17と平行に延びている。
【0034】
変形形態(図示せず)では、軸Aは、長手方向Xにほぼ沿って延び、駆動システム18は、軸Aとほぼ直交する回転装置に駆動トルクを伝達することができる歯車アセンブリを備える。
【0035】
電気モータ20はまた、ケーシング24に固定して取り付けられた固定子30と、シャフト28に取り付けられた回転子32とを、いずれも内部スペース26内に配置された形で備え、回転子32は従来と同様、固定子30と向かい合わせにアレンジされる。
【0036】
ケーシング24は、たとえば金属製の外枠であり、回転子32および固定子30の機械的保護を果たすとともに、内部スペース26を外部から隔離して、たとえば埃の侵入を防ぐ。
【0037】
ケーシング24は、軸Aを中心としてほぼ円筒形のシェルを形成する外周壁34と、その外周壁34を軸Aに関してケーシング24の両側で閉じる第1の終端板36および第2の終端板38と、を備える。
【0038】
外周壁34は、軸Aとほぼ平行に延び、たとえば鋼製である。外周壁34は、径方向の締付けによって固定子30を所定の位置に保持する。
【0039】
ケーシング24は、図2および図3に示すように、シャフト28の周りに延びるほぼ円筒形の区画40を画定する。区画40は、とりわけ第1の端板36において画定され、軸A方向に沿ってケーシング24の外に向かって開く。
【0040】
より詳細には、第1の端板36は、ケーシング24の一方の端部で外周壁34を閉ざし、さらにその第1の端板36は、外周壁34に固定された外ディスク42と、内ディスク44と、外ディスク42を内ディスク44につなぐ内部円筒壁46と、を備える。内ディスク44は、外ディスク42に対して軸A沿いに内部スペース26方向にオフセットしている。
【0041】
内ディスク44と内部円筒壁46とは、両者の間に、ほぼ円筒形の区画40を軸Aの周りに画定する。
【0042】
内部円筒壁46は、外周壁34と同軸で延びるが、直径は外周壁34よりも小さく、外周壁34が区画40を径方向に囲い込んで機械的な保護を与える。
【0043】
有利には、内部円筒壁46は、外ディスク42と面一をなし、円筒形の区画40が外ディスク42に対して開口して、全体が外周壁34に取り囲まれる。
【0044】
有利には、外ディスク42は、シャフト28の端部にほぼ対向して延びる。
【0045】
第1の端板36はさらに、内ころがり軸受48を備えており、その軸受48にシャフト28が取り付けられる。内ころがり軸受48は、内フランジ50によって内ディスク44に固定される。
【0046】
有利には、内フランジ50は、シャフト28に取り付けられた内シールリング52の迷路様凸凹と協働する相補的な迷路様凸凹を有しており、それによって内ラビリンスシール54を形成する。
【0047】
第2の端板38は、たとえばほぼ平面のディスクの形をなし、シャフト28の他端を受けるころがり軸受(図示せず)を支える。
【0048】
トルク伝達システム22は、シャフト28を回転装置に接続するようにアレンジされ、それによってシャフト28の駆動トルクを回転装置に伝達する。
【0049】
さらに、伝達システム22は、制御操作を受けると、図2に示す連結状態となって、伝達システム22がトルクをシャフト28から旋回装置へ、および回転装置からシャフト28へと伝達するように、また、図3に示す連結解除状態となって、伝達システム22が駆動トルクを一切伝達しないように構成される。
【0050】
トルク伝達システム22は、シャフト28の周りに配置されたスリーブ60であって、回転装置を駆動するようにアレンジされたスリーブ60と、シャフト28に固定して取り付けられた第1のプレート62と、スリーブ60に取り付けられた第2のプレート64と、作動システム66と、を備える。
【0051】
スリーブ60は、円筒形の第1の部分68と、円筒形の第2の部分70と、第1の部分68を第2の部分70につなぐ接続ディスク72と、を備える。
【0052】
スリーブ60の第1の部分68は、シャフト28の端部を径方向に取り囲み、シャフト28に向かい合う内面74と、その反対側の外面76と、を備える。
【0053】
第1の部分68は、スリーブ60とシャフト28との間、特に内面74とシャフト28との間に配置された外ころがり軸受78上を軸Aの周りにシャフト28に対して回転するように取り付けられる。
【0054】
外ころがり軸受78は、スリーブ60の第1の部分68の内面74の肩部と、シャフト28の肩部およびシャフト28に固定された端部フランジ80のそれぞれとの間の所定の位置に締付けによって保持される。
【0055】
第1の部分68の外面76は、第1のプレート62および第2のプレート64に対して摺動可能に径方向に接する。第2のプレート64は、外面76に対して摺動して、軸Aと平行な方向に並進する。
【0056】
第2の部分70の内面82および外面84は、第1の部分68の内面74および外面76よりも軸Aから離れている。
【0057】
第2の部分70の外面84は、外スプライン86を有しており、その外スプライン86上に第2のプレート64が取り付けられる。そのため、第2のプレート64は、スリーブ60に対して軸Aに沿って並進可能であるが、軸Aの周りの回転ではスリーブ60と一体をなす。
【0058】
第1のプレート62は、軸Aと直交する第1のディスク88と、シャフト28を径方向に取り囲む内縁90と、第1のクラッチ部材92と、を備える。
【0059】
第2のプレート64は、軸Aと直交する第2のディスク94と、スリーブ60を径方向に取り囲む外縁96と、第2のクラッチ部材98と、を備える。
【0060】
第2のプレート64は、図2に示された係合位置であって、第1のプレート62と第2のプレート64とが軸Aの周りを互いに回転駆動し合う係合位置と、図3に示された係合解除位置であって、第1のプレート62と第2のプレート64とが軸Aの周りを互いに自由に回転する係合解除位置と、の間を、第1のプレート62に対してA軸と平行な方向に並進可能である。
【0061】
第1のディスク88と第2のディスク94とは、軸A方向に沿って互いに向い合せに延び、それぞれ第1のクラッチ部材92と第2のクラッチ部材98とを備えている。
【0062】
内縁90は、シャフト28と一体の内スプライン100に取り付けられており、それによって第1のプレート62は軸Aの周りをシャフト28と一体で回転する。
【0063】
外縁96は、外スプライン86に取り付けられており、それによって第2のプレート64は軸Aの周りをスリーブ60と一体で回転する。
【0064】
第1のクラッチ部材92と第2のクラッチ部材98とは互いに向い合せに延びて、図2に示すように、第2のプレート64がその係合位置にあるときに協働するようにアレンジされ、第1のプレート62と第2のプレート64とが連結状態のときには一体で回転する。
【0065】
そのため、連結状態では、軸Aの周りの回転トルクは、シャフト28からスリーブ60に、またその逆に伝達される。
【0066】
図3に示す連結解除状態では、第1のクラッチ部材92と第2のクラッチ部材98とは、軸Aの方向に沿って互いが離れ、第1のプレート62と第2のプレート64とは、軸Aの周りに互いが一体で回転することはなくなる。
【0067】
第1のクラッチ部材92と第2のクラッチ部材98とは、たとえば互いに相補的な歯形をもつクラウンギアである。
【0068】
変形形態では、第1のクラッチ部材92と第2のクラッチ部材98とは摩擦ディスクであり、クラッチ接合は摩擦だけによって行われる。
【0069】
作動システム66は、第2のプレート64を係合位置に移動させることができる係合機構102と、第2のプレート64を係合解除位置に移動させることができる戻し機構104と、を備える。
【0070】
係合機構102は、起動されたとき、特に外部からの制御操作によって起動されたときに、第2のプレート64を係合位置の方へ付勢することができる。
【0071】
係合機構102は、たとえば、そこに電流が流れたときに電界および/または磁界を発生させることができる電磁装置、特にソレノイドである。そのため、電界および/または磁界は、第2のプレート64に係合力を及ぼし、第2のプレート64をその係合位置に移動させる。
【0072】
係合機構102は、内フランジ50に固定された支持部106であって、係合機構102を受け入れる環状の切込みを画定する支持部106によって支えられる。
【0073】
有利には、係合機構102の支持部106は、内ころがり軸受48に対する衝止部108を形成し、内ころがり軸受48は、内フランジ50と支持部106との間で軸方向に保持される。
【0074】
有利には、支持部106と第1のプレート62とは、外ラビリンスシール110を形成する相補的な迷路様凸凹を画定する。
【0075】
戻し機構104は、第2のプレート64をその係合解除位置の方へ付勢することができる。
【0076】
戻し機構104は、たとえば第2のプレート64に対してA軸とほぼ平行な向きに戻し力を常時加えて、第2のプレート64をその係合解除位置の方へ移動させるようにアレンジされる。
【0077】
その際、戻り力は、係合力が加えられたときの係合力の値よりも低い平常値をもち、係合機構102が起動されたときには第2のプレート64全体が係合位置の方へ付勢され、係合機構102が起動されていないときにはその係合解除位置の方へ全体が付勢される。
【0078】
戻し機構104はとりわけ、一端がスリーブ60に固定されたねじ110と、第2のプレート64とねじ110の頭との間に圧縮されたばね112であって、軸Aとほぼ平行な向きに機械力を発揮するようにアレンジされて、第2のプレート64をスリーブ60の方へ付勢するばね112と、を備える。
【0079】
第1のプレート62、第2のプレート64および作動システム66は、区画40内に収められる。
【0080】
つまり、第1のプレート62、第2のプレート64および作動システム66は、すべてが区画40の円筒形スペースの中に含まれ、軸A方向に沿って第1の端板36よりも出ることはない。
【0081】
軸Aに沿ってシャフト28沿いに互いに対して並進可能なプレート62、64を使用する伝達システム22は、従来の装置と比べてコンパクトさと堅牢性において優位性をもつ。
【0082】
さらに、プレート62、64および作動システム66を区画40内に組み込むことにより、それらに関連したケーシング24外のボリュームを減らし、外部の衝撃からそれらを保護することができる。
【0083】
同様に、内ころがり軸受48(または複数あるうちのその各々)および外ころがり軸受78(または複数あるうちのその各々)は区画40内に収められるため、システムのボリュームも衝撃に対する脆弱さも一段と抑えることができる。
【0084】
有利には、駆動アセンブリ18は、軸Aの周りのほぼ円筒形の保護カウル114であって、ケーシング24に取り付けられた保護カウル114も備える。カウル114は、区画40の端部縁116から軸Aとほぼ平行に突出して、プレート62、64および作動システム66の保護をさらに改善する。
【0085】
以上のように、説明したトルク伝達システム22は、回転装置とシャフト28との連結および連結解除を逆転可能に、かつ遠隔操作で行えるようにするものであり、なおかつコンパクト化と堅牢性の向上とをもたらす。
【符号の説明】
【0086】
10 車両
12 車体
14 ボギー台車
15 車台
16 車輪
17 車軸
18 駆動アセンブリ
20 電気モータ
22 トルク伝達システム
24 ケーシング
26 内部スペース
28 シャフト
30 固定子
32 回転子
34 外周壁
36 第1の端板
38 第2の端板
40 区画
42 外ディスク
44 内ディスク
46 円筒壁
48 内ころがり軸受
50 内フランジ
52 内シールリング
54 内ラビリンスシール
60 スリーブ
62 第1のプレート
64 第2のプレート
66 作動システム
68 第1の部分
70 第2の部分
72 接続ディスク
74 内面
76 外面
78 外ころがり軸受
80 端部フランジ
82 内面
84 外面
86 外スプライン
88 第1のディスク
90 内縁
92 第1のクラッチ部材
94 第2のディスク
96 外縁
98 第2のクラッチ部材
100 内スプライン
102 係合機構
104 戻し機構
106 衝止部
110 外ラビリンスシール、ねじ
112 ばね
114 保護カウル
A 軸
X 長手方向
Y 横断方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
【外国語明細書】