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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118118
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】車両用トルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 45/00 20060101AFI20230817BHJP
   F16H 41/30 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
F16H45/00 C
F16H41/30 D
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020043
(22)【出願日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0019172
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】519225255
【氏名又は名称】ヴァレオ、カペック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VALEO KAPEC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ジェヤバラン、スブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ジュン-ピョ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カバーがエンジン側に作用する軸方向荷重を最小化するか無くしたトルクコンバータを提供する。
【解決手段】カバーの前方部中央にカバーハブが一体に結合して、軸方向に前記カバーハブと前記出力部材との間に環状のスラストワッシャーが介在される。前記出力部材は、第1循環オイル孔を備え、前記カバーハブは、第2循環オイル孔を備え、前記スラストワッシャーは、前記第1循環オイル孔及び第2循環オイル孔を連通するガイドスロットを備える。カバーハブの前面は、フロントカバーの後面と接合される。前記第2循環オイル孔は、軸方向のオイル孔と、そこに連結された半径方向のオイル孔とを備えるものの、前記半径方向のオイル孔の直径は、前記軸方向のオイル孔の直径よりもさらに大きいか、スロット状である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
exigua
前方からエンジンの回転力を入力されるカバー(10)と、前記カバー(10)の内部に配置されて、前記カバー(10)の後方部に連結されたトーラス(20)と、前記カバー(10)の内部に配置されて、前記カバー(10)の前方部に連結されたロックアップクラッチ(30)と、前記トーラス(20)と連結されて、前記ロックアップクラッチ(30)と連結され、後方へ変速機に回転力を伝達する出力部材(60)と、を含むトルクコンバータ(1)であって、
前記カバー(10)の前方部中央にカバーハブ(13)が一体に結合され、
前記出力部材(60)は、前記カバーハブ(13)の後方に配置され、
軸方向に前記カバーハブ(13)と前記出力部材(60)との間には、環状のスラストワッシャー(70)が介在され、
前記出力部材(60)は、前記出力部材(60)の後方のオイルが、前記出力部材(60)の前方に流れることを案内する、第1循環オイル孔(63)を備え、
前記カバーハブ(13)は、前記第1循環オイル孔(63)を介して前記出力部材(60)の前方に流れたオイルが流入する、第2循環オイル孔(135)を備え、
前記スラストワッシャー(70)は、前記第1循環オイル孔(63)及び第2循環オイル孔(135)を連通するガイドスロット(77)を備える、
トルクコンバータ。
【請求項2】
前記スラストワッシャー(70)は、
内輪(73);
前記内輪(73)よりも半径方向外側に離隔配置される外輪(71);及び
半径方向に延びて、前記内輪(73)と外輪(71)とを連結する連結部材(75);を含み、
前記ガイドスロット(77)は、前記内輪(73)と、外輪(71)と、連結部材(75)とによって規定される、
請求項1に記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
前記外輪(71)の内周面は、前記カバーハブ(13)の後方に露出する第2循環オイル孔(135)と、前記出力部材(60)の前方に露出する第1循環オイル孔(63)よりも、半径方向にさらに外側に配置され、
前記内輪(73)の外周面は、前記カバーハブ(13)の後方に露出する第2循環オイル孔(135)と、前記出力部材(60)の前方に露出する第1循環オイル孔(63)よりも、半径方向にさらに内側に配置される、
請求項2に記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
前記外輪(71)と内輪(73)は、前記カバーハブ(13)の後方に露出する第2循環オイル孔(135)と、前記出力部材(60)の前方に露出する第1循環オイル孔(63)を覆わない、
請求項2に記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
前記ガイドスロット(77)が円周方向に延びた長さは、前記連結部材(75)の円周方向の幅と同様であるか、それよりもさらに大きい、
請求項2に記載のトルクコンバータ。
【請求項6】
前記カバーハブ(13)の後面又は前記出力部材(60)の前面の少なくともいずれか一方には、軸方向に前記スラストワッシャー(70)の一部を収容する環状溝(131)が設けられ、
前記スラストワッシャー(70)は、前記環状溝(131)に収容されて、その軸が整列される、
請求項1に記載のトルクコンバータ。
【請求項7】
前記第2循環オイル孔(135)は、
前記カバーハブ(13)の後方から前方に延びる軸方向のオイル孔(1351);及び
前記軸方向のオイル孔(1351)の前方端部に連結されて、半径方向外側に延びる半径方向のオイル孔(1353);を備える、
請求項1に記載のトルクコンバータ。
【請求項8】
前記軸方向のオイル孔(1351)は、軸方向に揃う方向に延びるか、後方から前方に延びることにより、半径方向外側に傾斜した、
請求項7に記載のトルクコンバータ。
【請求項9】
前記半径方向のオイル孔(1353)の直径は、前記軸方向のオイル孔(1351)の直径に対応するか、それよりもさらに大きい、
請求項7に記載のトルクコンバータ。
【請求項10】
前記半径方向のオイル孔(1353)の周のうち一部は、前記カバーハブ(13)の前面に開放された、
請求項7に記載のトルクコンバータ。
【請求項11】
前記半径方向のオイル孔(1353)の周のうち、前記カバーハブ(13)の前面に開放された周部分に対応する中心角(A1)は、開放されていない周部分に対応する中心角(A2)よりもさらに小さい、
請求項10に記載のトルクコンバータ。
【請求項12】
前記半径方向のオイル孔(1353)の中心は、前記カバー(10)の前方部の後面から後方にオフセット配置された、
請求項10に記載のトルクコンバータ。
【請求項13】
前記半径方向のオイル孔(1353)の周のうち、前記カバーハブ(13)の前面に開放された周部分の幅(w)は、前記軸方向のオイル孔(1351)の直径に対応するか、それよりもさらに小さい、
請求項10に記載のトルクコンバータ。
【請求項14】
前記カバーハブ(13)の前面は、前記カバー(10)の前方部の後面と密着する、
請求項10に記載のトルクコンバータ。
【請求項15】
前記カバーハブ(13)の前面の半径方向内側の角部位は、前記カバー(10)に溶接される、
請求項14に記載のトルクコンバータ。
【請求項16】
前記軸方向のオイル孔(1351)は、周方向に沿って複数本が互いに隣接配置されてセットを構成し、
前記半径方向のオイル孔(1353)は、前記軸方向のオイル孔(1351)のセットと連通するように周方向に形成されたスロット状である、
請求項7に記載のトルクコンバータ。
【請求項17】
前記軸方向のオイル孔(1351)のセットは、複数本設けられて、
1つの半径方向のオイル孔(1353)は、前記軸方向のオイル孔(1351)の複数本のセットと連通する、
請求項16に記載のトルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用トルクコンバータに関し、より詳細には、カバーがエンジン側に作用する軸方向荷重を最小化するか無くしたトルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、トルクコンバータは、車両のエンジンとトランスミッションとの間に設置することができ、流体を用いてエンジンの駆動力をトランスミッションに伝達する。これらトルクコンバータは、自動変速機の構成要素であって、エンジンから駆動力を増倍して変速機に伝達する流体伝動機構と言える。
【0003】
トルクコンバータは、流体カップリングを介して回転入力を出力に伝達するトーラスを備える。前記トーラスは、イムペラと、タービンと、固定端に対してワンウェイクラッチを介して支持されるリアクターと、を含む。トルクコンバータは、流体(ATF;automatic transmission fluid)の力で動力を伝達することによりスリップ(Slip)が発生し、動力損失が発生するしかない構造である。
【0004】
これを補完して動力伝達効率を高めるために、トルクコンバータにはロックアップクラッチ(Lock-Up Clutch)を適用している。前記トルクコンバータは、流体カップリングを介して動力伝達損失を取り戻すために、入力と出力とを直接連結する。
【0005】
また、トルクコンバータは、かかる直結時、衝撃を緩和し得るねじりダンパ(Torsional Damper)構造をさらに備える。エンジンの入力は、トルクの揺らぎ(fluctuation)を備えることから、ロックアップクラッチを経る動力伝達系統には、このように、ねじりダンパ及び/又は振り子(pendulum)を設置したりもする。
【0006】
これらトルクコンバータに適用されるロックアップクラッチは、1枚の摩擦材が適用されたシングルフェイシング(Single-Facing)型と、2枚以上の摩擦材とクラッチパックとで構成されたマルチフェイシング(Multi-Facing)型とがある。
【0007】
通常、マルチフェイシング型の場合、クラッチパックは、ロックアップクラッチの循環圧力領域に位置している。
【0008】
図1を参照すると、トルクコンバータ1の出力部材60は、カバーハブ13の後方に配置され、出力部材60とカバーハブ13には、クラッチパック33を冷却するためオイルの流れを案内する第1循環オイル孔63と第2循環オイル孔135とが備えられる。ところが、前記カバーハブ13は、軸方向に前記出力部材60と離隔配置されており、前記カバーハブ13と出力部材60との間の空間を流れるオイルの圧力が、前記カバーハブ13の後面を前方に加圧するようになる。これによって、カバーハブ13とカバー10は、軸方向前方にスラスト荷重を受けるようになる。かかる現象は、エンジンとトルクコンバータ1との間に大きなスラスト荷重を引き起こし、カバー10の変形を引き起こす。これによって、より高強度の材質を用いてカバー10を製作するか、カバー10をより厚く製作して強度を確保するしかなく、これはカバー製作コストの増加及びトルクコンバータ1の重量増加に繋がる。
【0009】
また、図1に示したカバーハブ13の第2循環オイル孔135は、半径方向のオイル孔1353の流動断面積が軸方向のオイル孔1351よりも小さくて、オイルの流れが円滑でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出したものであって、トルクコンバータのカバーハブに軸方向前方に加えられるスラスト荷重を最小化するか無くして、ロックアップクラッチを確かに作動することができ、カバーの強度を高めるため材質の選択と設計が不要なトルクコンバータを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、カバーハブに設けられた循環オイル孔を介してオイルが円滑に流れるトルクコンバータを提供することを目的とする。
【0012】
本発明の技術的課題は、以上に言及した目的に制限されず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施形態によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用トルクコンバータは、前方からエンジンの回転力を入力されるカバーと、前記カバーの内部に配置されて、前記カバーの後方部に連結されたトーラスと、前記カバーの内部に配置されて、前記カバーの前方部に連結されたロックアップクラッチと、前記トーラスと連結されて、前記ロックアップクラッチと連結され、後方に変速機に回転力を伝達する出力部材と、を含む。
【0014】
前記カバーは、フロントカバーとリアカバーとを含むことができる。
【0015】
前記ロックアップクラッチは、前記フロントカバーに設置することができる。
【0016】
前記トーラスは、前記リアカバーに設置することができる。
【0017】
フロントカバーの中央には、カバーハブが一体に結合される。
【0018】
リアカバーの端部は、ポンプ入力端に連結されていてもよい。
【0019】
前記出力部材は、前記カバーハブの後方に配置されていてもよい。
【0020】
前記トーラスは、前記リアカバーに設置されるインペラと、前記インペラの前方に配置されるタービンと、前記インペラとタービンとの間に配置されるリアクターと、を含むことができる。
【0021】
前記タービンは、タービンプレートに設置することができる。前記タービンプレートは、前記出力部材に連結されていてもよい。
【0022】
前記リアクターは、ワンウェイクラッチを介して固定端に設置することができる。
【0023】
固定端は、軸方向に前記出力部材と前記リアカバーとの間に配置されていてもよい。
【0024】
前記リアカバーとリアクターとの間には、第1軸受けが介在し得、前記リアクターと出力部材との間には第2軸受けが介在し得る。
【0025】
前記ロックアップクラッチは、ねじりダンパを介して前記出力部材に連結されていてもよい。
【0026】
前記ねじりダンパは、第1ねじりダンパと第2ねじりダンパとが直列に連結された形態であってもよい。
【0027】
前記ロックアップクラッチは、クラッチパックを含むことができる。
【0028】
前記クラッチパックの一側は、前記フロントカバーに設置された入力ドラムと連結されていてもよい。
【0029】
前記クラッチパックの他側は、前記ねじりダンパに設置された出力ドラムと連結されていてもよい。
【0030】
前記入力ドラムは、前記クラッチパックの半径方向内側に配置されて、前記出力ドラムは、前記クラッチパックの半径方向外側に配置されていてもよい。
【0031】
前記クラッチパックを加圧するか加圧解除するピストンプレートは、前記クラッチパックの後方に配置されていてもよい。
【0032】
前記ピストンプレートの半径方向内側端部は、前記カバーハブの外周面にスライド移動可能に設置することができる。
【0033】
前記ピストンプレートの後方には、シリンダプレートを設けることができる。
【0034】
前記シリンダプレートの半径方向内側端部は、前記カバーハブに固定されていてもよい。
【0035】
前記ピストンプレートの半径方向外側端部は、前記シリンダプレートの半径方向外側端部にスライド移動可能に接することができる。
【0036】
前記ピストンプレートとシリンダプレートとの間の空間は、前記ピストンプレートを前記クラッチパックを加圧する方向に移動させるため流体(オイル)が満たされる作動チャンバを構成することができる。
【0037】
前記カバーハブには、前記作動チャンバにオイルを供給するためピストンオイル孔を設けることができる。
【0038】
前記ピストンオイル孔は、半径方向に延びる形態であってもよい。
【0039】
前記カバーハブの半径方向内側に供給されるオイルは、前記ピストンオイル孔を介して前記作動チャンバに供給することができる。
【0040】
前記出力部材の前方端部は、前記カバーハブの内周面よりも、半径方向内側における前記カバーハブの内周面と向い合うことができる。前記カバーハブの内周面と、これと半径方向に向い合う前記出力部材の外周面との間には、前記作動チャンバに供給されるオイルが出力部材とカバーハブとの間の空間を介して漏れることを防止するシールリング(seal ring)を設置することができる。
【0041】
前記ねじりダンパは、前記シリンダプレートと前記タービンプレートとの間の空間を介して、前記出力部材に連結されていてもよい。
【0042】
軸方向に前記カバーハブと前記出力部材との間には、環状のスラストワッシャーが介在される。
【0043】
前記スラストワッシャーは、前記カバーハブの後面に接して、前記出力部材の前面に接していてもよい。これによって、前記シールリングを省略することもできる。
【0044】
前記出力部材は、前記出力部材の後方のオイルが前記出力部材の前方に流れることを案内する、第1循環オイル孔を備える。
【0045】
前記カバーハブは、前記第1循環オイル孔を介して前記出力部材の前方に流れたオイルが流入する、第2循環オイル孔を備える。
【0046】
前記スラストワッシャーは、前記第1循環オイル孔及び第2循環オイル孔を連通するガイドスロットを備える。これによって、前記第1循環オイル孔を介して流動する流体は、他処に漏れることなく、前記第2循環オイル孔に供給される。
【0047】
前記スラストワッシャーは、内輪と、前記内輪よりも半径方向外側に離隔配置される外輪と、半径方向に延びて、前記内輪と外輪とを連結する連結部材と、を含むことができる。
【0048】
前記ガイドスロットは、前記内輪と、外輪と、連結部材とによって規定することができる。
【0049】
前記外輪と内輪は、前記カバーハブの後方に露出する第2循環オイル孔と、前記出力部材の前方に露出する第1循環オイル孔を覆わない。
【0050】
このため、前記外輪の内周面は、前記カバーハブの後方に露出する第2循環オイル孔と、前記出力部材の前方に露出する第1循環オイル孔よりも、半径方向にさらに外側に配置されて、前記内輪の外周面は、前記カバーハブの後方に露出する第2循環オイル孔と、前記出力部材の前方に露出する第1循環オイル孔よりも、半径方向にさらに内側に配置されていてもよい。
【0051】
前記ガイドスロットが円周方向に延びた長さは、前記連結部材の円周方向の幅と同様であるか、それよりもさらに大きくてもよい。前記スラストワッシャーは、前記カバーハブに組み立てられて、前記出力部材に対して相対的に回転することができる。場合によって、前記スラストワッシャーは、前記出力部材に組み立てられて、前記カバーハブに対して相対的に回転することができる。これによって、前記連結部材は、前記第1循環オイル孔及び/又は第2循環オイル孔を覆うことができる。前記連結部材の円周方向の幅は、オイルの流れに影響を及ぼし得、オイルが前記カバーハブに加えるスラスト荷重に影響を及ぼし得る。したがって、前記連結部材の幅は、スラストワッシャーの剛性確保のため許容される範囲内で、且つオイルの流れの円滑性を鑑みて最適化することが好ましい。
【0052】
前記カバーハブの後面又は前記出力部材の前面の少なくともいずれか一方には、軸方向に前記スラストワッシャーの一部を収容する環状溝を設けることができる。そして、前記スラストワッシャーは、前記環状溝に収容されて、その軸が整列されていてもよい。
【0053】
前記第1循環オイル孔は、軸方向に延びていてもよい。前記第1循環オイル孔は、軸方向前方に行くほど、半径方向外側に傾斜して延びていてもよい。すると、遠心力によってオイルの流れがさらに円滑に行われる。
【0054】
前記第2循環オイル孔は、前記カバーハブの後方から前方に延びる軸方向のオイル孔と、前記軸方向のオイル孔の前方端部に連結されて、半径方向外側に延びる半径方向のオイル孔とを備えることができる。
【0055】
前記第2循環オイル孔は、円周方向に前記ピストンオイル孔と重畳しない位置に設けられていてもよい。
【0056】
特に、前記軸方向のオイル孔は、円周方向に前記ピストンオイル孔と重畳しない位置に設けられていてもよい。
【0057】
前記軸方向のオイル孔は、軸方向に揃う方向に延びるか、後方から前方に延びることにより、半径方向外側に傾斜していてもよい。
【0058】
前記第1循環オイル孔が傾斜した形態であれば、前記軸方向のオイル孔が軸方向と平行に延びても、オイルの流れは円滑に行われる。
【0059】
一例において、前記半径方向のオイル孔の直径は、前記軸方向のオイル孔の直径に対応し得る。
【0060】
他の例において、前記半径方向のオイル孔の直径は、前記軸方向のオイル孔の直径よりもさらに大きくてもよい。これによって、半径方向のオイル孔におけるオイルの流れをさらに円滑にすることができる。
【0061】
一例において、前記半径方向のオイル孔の流動断面積は、前記軸方向のオイル孔の流動断面積よりも小さいか、それに対応し得る。
【0062】
他の例において、前記半径方向のオイル孔の流動断面積は、前記軸方向のオイル孔の流動断面積よりも大きくてもよい。これによって、半径方向のオイル孔におけるオイルの流れをさらに円滑にすることができる。
【0063】
前記半径方向のオイル孔の周のうち一部は、前記カバーハブの前面に開放し得る。これによって、半径方向のオイル孔の加工がさらに容易になり得る。
【0064】
前記半径方向のオイル孔の中心(C)は、前記カバーハブの前面よりも後方にオフセット配置されていてもよい。これによって、フロントカバーに作用するオイルの圧力を最小化することができる。
【0065】
前記半径方向のオイル孔の周のうち、前記カバーハブの前面に開放された周部分の幅は、前記半径方向のオイル孔の直径よりも小さくてもよい。これによって、フロントカバーに作用するオイルの圧力を最小化することができる。
【0066】
前記半径方向のオイル孔の周のうち、前記カバーハブの前面に開放された周部分に対応する中心角(A1)は、開放されていない周部分に対応する中心角(A2)よりもさらに小さくすることができる。これによって、フロントカバーに作用するオイルの圧力を最小化することができる。
【0067】
前記半径方向のオイル孔の周のうち、前記カバーハブの前面に開放された周部分の幅は、前記軸方向のオイル孔の直径よりも小さくてもよい。これによって、フロントカバーに作用するオイルの圧力を最小化することができる。
【0068】
前記カバーハブの前面は、前記カバーの前方部の後面に密着し得る。
【0069】
前記カバーハブの前面の半径方向内側の角部位は、前記カバーに溶接されていてもよい。
【0070】
前記溶接は、レーザ溶接であってもよい。
【0071】
前記溶接は、MIG溶接(metal inert gas welding)であってもよい。
【0072】
前記軸方向のオイル孔は、周方向に沿って複数本が互いに隣接配置されて、セットを構成することができる。
【0073】
前記半径方向のオイル孔は、前記軸方向のオイル孔のセットと連通するように、周方向に形成されたスロット状であってもよい。
【0074】
前記軸方向のオイル孔のセットは、複数本設けられて、1つの半径方向のオイル孔は、前記軸方向のオイル孔の複数本のセットと連通することができる。もちろん、かかる構造によれば、前記半径方向のオイル孔とピストンオイル孔とは、軸方向に互いに重畳しない位置に配置されていてもよい。
【0075】
前記スロットは、円周方向に沿って360度形成されていてもよい。もちろん、かかる構造によれば、前記半径方向のオイル孔とピストンオイル孔とは、軸方向に互いに重畳しない位置に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0076】
本発明によれば、カバーハブと出力部材との間のギャップ部分にスラストワッシャーを置いて、カバーハブの後方に存在するオイルの圧力が、カバーハブを前方に加圧する領域を最小化することができる。これによって、カバーハブとカバーの変形を防止して、ロックアップクラッチの非正常的な作動を防止することができる。
【0077】
本発明によれば、カバーハブに設けられた循環オイル孔を介して流れるオイルの流れを円滑にすることができながらも、軸方向のオイル孔から半径方向のオイル孔に流入するオイルが、流動方向を転換して、前方にカバーに加える圧力を相殺し、カバーの変形を防止することができる。
【0078】
本発明によれば、スラストワッシャーと循環オイル孔を介して、循環オイルがカバーハブとカバーに加えるスラスト圧力を減少させることができ、カバーの強度を高めるため材質の選択と設計が不要である。したがって、製作コストを節減して、トルクコンバータの自重を減らすことができる。
【0079】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明するとともに記述する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】車両用トルクコンバータを概略的に示した断面図である。
図2】実施形態の車両用トルクコンバータを概略的に示した断面図である。
図3図2のトルクコンバータのカバーハブを前方から視た斜視図である。
図4図2のトルクコンバータのスラストワッシャーの斜視図である。
図5図2のトルクコンバータの出力部材の斜視図である。
図6図2のトルクコンバータのカバーハブにスラストワッシャーがマウントされた状態を示した後方斜視図である。
図7】実施形態の車両用トルクコンバータのカバーハブとフロントカバーとの連結部位を半径方向に視た展開図である。
図8】変形例の車両用トルクコンバータのカバーハブとフロントカバーとの連結部位を半径方向に視た展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下では、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して詳説する。
【0082】
本発明は、以下で開示の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更を加えることができ、相異する様々な形態に具現することができる。但し、本実施形態は、本発明の開示を完全にして、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。したがって、本発明は、以下で開示の実施形態に限定されるものではなく、いずれか実施形態の構成と他の実施形態の構成とを互いに置換するか付加することはもちろん、本発明の技術思想と範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むと理解しなければならない。
【0083】
添付の図面は、本明細書で開示の実施形態を理解しやすくするためのものであり、添付の図面によって本明細書で開示の技的思想が制限されないし、本発明の思想及び技術の範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むと理解しなければならない。図面における構成要素は、理解の便宜などを考慮して、大きさや厚さが誇張して大きく或いは小さく表現されていてもよいものの、これにより本発明の保護範囲が制限的に解釈されてはならない。
【0084】
本明細書で使った用語は、単に特定の具現例や実施形態を説明するために使われるものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。そして、単数の表現は、文脈上白らかに他に意味しない限り、複数の表現を含む。明細書における「含む、~なる」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものである。すなわち、明細書における「~含む、~なる」などの用語は、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品、又はこれらの組み合わせなどの存在又は付加可能性を予め排除するものではないと理解しなければならない。
【0085】
第1、第2などのように、序数を含む用語は、様々な構成要素を説明するために使うことができるものの、上記構成要素は、上記用語によって限定されない。上記用語は、一構成要素を他の構成要素から区別する目的に使われるだけである。
【0086】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるか「接続されて」いると言及されている場合は、その他の構成要素に直接に連結されているか又は接続されていてもよいものの、その間に他の構成要素が存在し得ると理解しなければならない。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるか「直接接続されて」いると言及されている場合は、その間に他の構成要素が存在しないと理解しなければならない。
【0087】
ある構成要素が他の構成要素の「上部にある」か「下部にある」と言及されている場合は、その他の構成要素の真上に配置されているだけでなく、その間に他の構成要素が存在し得ると理解しなければならない。
【0088】
他に定義しない限り、技術的や科学的な用語を含み、ここで使われるあらゆる用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同様の意味を有する。一般に使われる、辞書に定義されているのと同様の用語は、関連技術の文脈上に有する意味と一致する意味を有すると解釈すべきであり、本出願で白らかに定義しない限り、理想的であるか、過度に形式的な意味に解釈されない。
【0089】
実施形態のトルクコンバータは、軸を基準に対称を成すため、作図の便宜上、軸を基準に半分だけ示す。また、説明の便宜上、トルクコンバータの回転中心を成す軸の長さ方向に沿う方向を軸方向とする。すなわち、前後方向又は軸方向は、回転軸に揃う方向であって、前方(先方)は、動力源であるいずれか方向、例えば、エンジンの方に向かう方向を意味し、後方(裏側)は、他の一方向、例えば、変速機の方に向かう方向を意味する。したがって、前面(表面)とは、その表面が前方を視る面を意味し、後面(裏面)とは、その表面が後方を視る面を意味する。
【0090】
半径方向又は放射方向とは、前記回転軸と垂直な平面上で前記回転軸の中心を通る直線に沿って前記中心に近くなる方向、又は前記中心から遠くなる方向を意味する。前記中心から半径方向に遠くなる方向を遠心方向とし、前記中心に近くなる方向を求心方向とする。
【0091】
周方向又は円周方向とは、前記回転軸の周りを囲む方向を意味する。外周とは外側周、内周とは内側周を意味する。したがって、外周面は、前記回転軸を背く方向の面であり、内周面は、前記回転軸を視る方向の面を意味する。
【0092】
周方向側面とは、その面の法線が周方向に向かう面を意味する。
【0093】
以下では、本発明の実施形態による車両用トルクコンバータについて説明することとする。
【0094】
図2を参照すると、本発明の実施形態によるトルクコンバータ1は、内部に流体(オイル)が満たされるカバー10を含む。前記カバー10は、前方からエンジンの入力を受けて回転することができる。
【0095】
前記カバー10は、前方に配置されたカバーハブ13と、前記カバーハブ13から半径方向外側に延びて、後方に延びるフロントカバー11と、前記フロントカバー11の後方端部に連結されるリアカバー15と、を含む。前記リアカバー15は、前記フロントカバーから後方に延びて、半径方向内側に延びる。
【0096】
前記リアカバー15の半径方向内側端部には、後方に延びるポンプ入力端151が備えられる。したがって、前方にあるエンジン(不図示)の回転力を受けて回転するカバー10の回転力は、後方にあるオイルポンプ(不図示)に伝達され、これによって、前記カバーの内部に変速機オイルが供給される。
【0097】
前記リアカバー15の前方にはトーラス20が連結される。前記トーラス20は、インペラ21と、タービン23と、これらの間に配置されるリアクター25と、を含む。
【0098】
前記インペラ21は、前記リアカバーの内面(前面)に固定される。前記タービン23は、前記インペラ21の前方においてインペラ21と向い合うように配置される。前記リアクター25は、前記インペラ21とタービン23の半径方向内側部の間に配置される。前記リアクター25は、ワンウェイクラッチ27を介して固定端29に回転可能に支持される。
【0099】
前記固定端29は、前記ポンプ入力端151よりも前方に、且つ半径方向内側に配置される。前記リアクター25とポンプ入力端151との間には、第1軸受けB1が介在されて、これらの間の相対的な回転を支持する。
【0100】
前記タービン23を支持するタービンプレート231は、前記タービン23から半径方向内側に延びて、出力部材60に連結される。前記出力部材60は、後述するねじりダンパ50と連結されて、ダンパハブの機能を果たしたりもする。前記出力部材60は、半径方向に延びるフランジ61を備えて、前記タービンプレート231と後述するねじりダンパ50は、前記フランジ61のリベット孔611(図5参照)にリベットして、一体に固定される。
【0101】
前記出力部材60は、前記固定端29よりも前方に、且つ半径方向内側に配置される。前記固定端29と出力部材60との間には第2軸受け(B2)が介在されて、これらの間の相対的な回転を支持する。
【0102】
また、前記出力部材60は、前記カバーハブ13よりも後方に、且つ半径方向内側に配置される。すなわち、前記トルクコンバータ1は、その回転中心に沿って前方から後方にカバーハブ13、出力部材(ダンパハブ)60、固定端29、及びポンプ入力端151を順に備えることができる。
【0103】
前記リアカバー15と前記リアクター25との間の空間、且つ前記リアクター25と前記出力部材60との間の空間は、前記トーラス20の流体カップリングの冷却のため流体(オイル)が循環する通路を提供することができる。
【0104】
前記フロントカバー11の内面(後面)には、前記ロックアップクラッチ30が設置される。実施形態では、前記ロックアップクラッチ30として、多板クラッチ構造のクラッチパック33が適用された形態を例示する。
【0105】
前記ロックアップクラッチ30は、前記フロントカバー11に一体に連結されて、後方に延びる入力ドラム31と、前記入力ドラム31の半径方向外側に連結されるクラッチパック33と、前記クラッチパック33の半径方向外側に連結される出力ドラム35と、前記クラッチパック33の後方において前記クラッチパック33を加圧するか加圧解除するピストンプレート41と、を含む。
【0106】
前記出力ドラム35は、ねじりダンパ50を介して前記出力部材60に連結される。
【0107】
前記ねじりダンパ50は、第1ねじりダンパ51と第2ねじりダンパ52とが直列に連結された形態である。前記ねじりダンパ50は、軸方向に前記ピストンプレート41の後方に配置されて、前記タービンプレート231の前方に配置される。
【0108】
軸方向に前記ピストンプレート41と前記ねじりダンパ50との間には、シリンダプレート43が配置される。前記ねじりダンパ50は、前記シリンダプレート43と前記タービンプレート231との間の空間を介して、前記出力部材60に連結されていてもよい。
【0109】
前記シリンダプレート43の半径方向内側端部は、前記カバーハブ13の外周面に固定されていてもよい。前記シリンダプレート43の半径方向外側端部は、前記ピストンプレート41の半径方向外側端部に接することができる。
【0110】
前記ピストンプレート41の半径方向外側端部は、軸方向に延びて、その内周面は、前記シリンダプレート43の外周面とスライド可能に接する。前記ピストンプレート41の半径方向内側端部は、前記カバーハブ13の外周面とスライド可能に接する。これによって、前記ピストンプレート41は、前記カバーハブ13とシリンダプレート43に対して、軸方向にスライド移動可能である。
【0111】
前記ピストンプレート41とシリンダプレート43との間の空間は、作動チャンバ45を構成する。前記作動チャンバ45の内部に満たされた流体の圧力と外部の圧力との差異だけ、前記ピストンプレート41は、クラッチパック33を加圧するようになる。
【0112】
前記カバーハブ13にはピストンオイル孔137が設けられて、前記作動チャンバ45は、前記ピストンオイル孔137と連通する。前記ピストンオイル孔137は、リング状のカバーハブ13の内周面から外周面まで半径方向に延びる。図3を参照すると、実施形態では、2個ずつのピストンオイル孔137が、3ヶ所に形成された構造を例示する。
【0113】
前記カバーハブ13の内周面の少なくとも一部の領域は、前記出力部材60の外周面と向い合って離隔配置される。前記カバーハブ13の内周面に開口されたピストンオイル孔137は、前記出力部材60の外周面と向い合う。
【0114】
前記カバーハブ13の外周面に開口されたピストンオイル孔137は、軸方向に前記カバーハブ13の内周面に向い合う空間のオイルは、前記ピストンオイル孔137を介して半径方向外側に流動して、前記作動チャンバ45に満たされる。
【0115】
前記出力部材60の前方領域は、前記カバーハブ13の内周面と向い合う。前記カバーハブ13の内周面に開口したピストンオイル孔137よりも後方において、前記カバーハブ13の内周面と前記出力部材60の外周面との間には、シールリング65が設置されていてもよい、前記シールリング65は、前記作動チャンバ45に供給されるオイルが、出力部材60とカバーハブ13との間の空間を介して漏れることを防止する。
【0116】
軸方向に前記カバーハブ13と前記出力部材60との間には、環状のスラストワッシャー70が介在される。
【0117】
前記スラストワッシャー70は、前記カバーハブ13の後面に接して、前記出力部材60の前面に接することができる。これによって、前記スラストワッシャー70は、前記カバーハブ13と前記出力部材60との間の空間を介して、半径方向に流れるオイルの流れを防ぐか阻止することができる。前記スラストワッシャー70は、前記カバーハブ13と前記出力部材60との間で、スラスト軸受けの機能を果たす。
【0118】
図4を参照すると、前記スラストワッシャー70は、平板の円形リング状である。前記スラストワッシャー70には、円周方向にガイドスロット77が形成される。実施形態では、スラストワッシャー70の円周方向に沿って、3個のガイドスロット77が均等に配置された形態を例示する。
【0119】
ガイドスロット77の半径方向外側には外輪71が設けられて、半径方向内側には内輪が設けられる。周方向に、隣合う2個のガイドスロット77の間には連結部材75が設けられる。前記連結部材75は、半径方向に延びて、前記内輪73と外輪71とを連結する形態であってもよい。
【0120】
前記連結部材75は、場合によって、前記第1循環オイル孔63及び/又は第2循環オイル孔135を覆うことができる。かかる観点から考察すると、前記ガイドスロット77が周方向に占める長さは、長ければ長いほど好ましく、前記連結部材75が周方向に占める幅は、小さければ小さいほど好ましい。前記連結部材75の厚さは、前記スラストワッシャー70に求められる最小限の剛性を確保できる程で設定することができる。
【0121】
一方、前記連結部材75の周方向の幅が小さければ小さいほど、オイルの流れの経路に対してカバーハブ13の後面が露出する面積は、増加する。これは、油圧がカバーハブ13を前方に加圧して、スラスト荷重を増加させる原因になり得る。したがって、前記連結部材75の周方向の幅は、オイルの流れの円滑性を確保しながらも、オイルがカバーハブ13の後面に加えるスラスト荷重を鑑みて、最適な値に設定することができる。
【0122】
前記外輪71の外周面は、円形を構成して、前記内輪73の内周面も円形を構成する。これによって、前記スラストワッシャー70は、前記カバーハブ13に対して相対的に回転することができ、前記出力部材60に対しても相対的に回転することができる。
【0123】
前記外輪71の外周面が、前記カバーハブ13又は/及び前記出力部材60に接して(接するか)、前記内輪73の内周面が、前記カバーハブ13又は/及び前記出力部材60に接することで、前記スラストワッシャー70は、前記カバーハブ13又は/及び前記出力部材60に対して中心を整列することができる。
【0124】
前記カバーハブ13の後面又は前記出力部材60の前面の少なくともいずれか一方には、軸方向に前記スラストワッシャー70の一部を収容する環状溝を設けることができる。そして、前記スラストワッシャー70は、前記環状溝に収容されて、その軸を整列することができる。具体的に、前記外輪71の外周面は、前記カバーハブ13の環状溝131の外周壁1313に接して、前記内輪73の内周面は、前記環状溝131の内周壁1311に接する。
【0125】
図6を参照すると、実施形態では、前記カバーハブ13の後面に、前方に陷沒した環状溝131が形成されて、軸方向に前記スラストワッシャー70の一部が前記環状溝131に収容されることを例示する。
【0126】
図2図5を参照すると、前記出力部材60は、前記出力部材60の後方のオイルが、前記出力部材60の前方に流れることを案内する、第1循環オイル孔63を備える。
【0127】
第1循環オイル孔63は、後方から前方に延びることにより、半径方向外側に傾斜した形態であってもよい。前記第1循環オイル孔63は、前記出力部材60の周方向に沿って等間隔で複数本設けられていてもよい。実施形態では、12個の第1循環オイル孔63が30度間隔で配置された構造を例示する。
【0128】
前記出力部材60は、早く回転するため、前記出力部材60の後方において、前記第1循環オイル孔63に流入したオイルは、遠心力によって前方へより円滑に流動し得る。
【0129】
前記第1循環オイル孔63の前方端部は、前記ガイドスロット77に開放される。
【0130】
前記外輪71と内輪73は、前記第1循環オイル孔63を覆わない。すなわち、前記外輪71の内周面は、前記第1循環オイル孔63の前方開口部よりも半径方向にさらに外側に配置されて、前記内輪73の外周面は、前記第1循環オイル孔63の前方開口部よりも半径方向にさらに内側に配置される。これによって、前記第1循環オイル孔63を介して、前記出力部材60の後方から前方に移動するオイルの流れは、妨げられない。
【0131】
但し、出力部材60とスラストワッシャー70との相対的な回転によって、連結部材75が第1循環オイル孔63の一部分をしばらく覆うことはできるものの、前述したように、前記連結部材75の周方向の幅は、許容される範囲内で最適な寸法を有するため、オイルの流れを妨げることが最小化する。
【0132】
前記外輪71と内輪73は、出力部材60とカバーハブ13との間の空間を介して、オイルが半径方向に流れることを防ぐ。したがって、前記第1循環オイル孔63を介して前記ガイドスロット77に流入したオイルは、半径方向に流出しない。
【0133】
先の実施形態では、スラストワッシャー70が外輪71と、内輪73と、これらを連結する連結部材75とで構成されて、1つの部品として用いられることを例示した。
【0134】
しかし、前記スラストワッシャー70における連結部材75を省略して、前記外輪71と内輪73をそれぞれ別の部品として共に用いて、スラストワッシャー70を具現することもできることは勿論である。連結部材75を省略しても、前記外輪71と内輪73も、前記カバーハブ13の後面の一定領域をカバーするため、オイルの流れの経路に対してカバーハブ13の後面が露出する面積を減らす。これによって、油圧によってカバーハブ13が前方に加圧されるスラスト荷重を減少させることができる。
【0135】
また、前記外輪71の外周面は、前記カバーハブ13の環状溝131の外周壁1313に接して、その位置が規制され、前記内輪73の内周面は、前記環状溝131の内周壁1311に接して、その位置が規制されるため、連結部材75なしに、内輪73と外輪71とが独立部品として用いられても、スラストワッシャー70の組み立てが可能である。
【0136】
このように、スラストワッシャー70を外輪71と内輪73の2ピースで適用する場合、半径方向に前記外輪71と内輪73との間の空間によって、1つの環状のガイドスロットを具現することができる。
【0137】
前記カバーハブ13は、前記第1循環オイル孔63を介して、前記出力部材60の前方に流れたオイルが流入する第2循環オイル孔135を備える。前記第2循環オイル孔135は、前記ピストンオイル孔137に会わないように形成される。このため、前記ピストンオイル孔137と前記第2循環オイル孔135は、周方向における互いに異なる位置に形成される。
【0138】
前記第2循環オイル孔135は、前記カバーハブ13の後面に設けられた後方開口部を備える。前記第2循環オイル孔135の後方開口部は、前記ガイドスロット77と向い合う。
【0139】
前記外輪71と内輪73は、前記第2循環オイル孔135を覆わない。すなわち、前記外輪71の内周面は、前記第2循環オイル孔135の後方開口部よりも半径方向にさらに外側に配置されて、前記内輪73の外周面は、前記第2循環オイル孔135の後方開口部よりも半径方向にさらに内側に配置される。これによって、前記ガイドスロット77にあるオイルが、前記第2循環オイル孔135に流入することを妨げない。
【0140】
但し、カバーハブ13とスラストワッシャー70との相対的な回転によって、連結部材75が第2循環オイル孔135の一部分をしばらく覆うことはできるものの、前述したように、前記連結部材75の周方向の幅は、許容される範囲内で最適な寸法を有するため、オイルの流れを妨げることが最小化する。
【0141】
結果として、前記スラストワッシャー70は、前記第1循環オイル孔63及び第2循環オイル孔135を連通する。前記スラストワッシャー70は、前記第1循環オイル孔63を介して流動する流体が他処に漏れることなく、前記第2循環オイル孔135に流入するようにする。
【0142】
前記第1循環オイル孔63は、軸方向に延びていてもよい。前記第1循環オイル孔63は、軸方向の前方に行くほど、半径方向外側に傾斜して延びていてもよい。すると、遠心力によってオイルの流れがさらに円滑に行われる。
【0143】
前記第2循環オイル孔135は、前記カバーハブ13の後方から前方に延びる軸方向のオイル孔1351と、前記軸方向のオイル孔1351の前方端部に連結されて、半径方向外側に延びる半径方向のオイル孔1353とを備えることができる。
【0144】
前記第2循環オイル孔135は、カバーハブ13の円周方向に、前記ピストンオイル孔137と重畳しない位置に設けられる。ピストンオイル孔137は、作動チャンバ45にオイルを供給するために、軸方向に前記ピストンプレート41よりも後方に設けられる反面、前記半径方向のオイル孔1353は、前記ピストンプレート41の前方空間にオイルを供給するために、軸方向に前記ピストンプレート41よりも前方に配置されていてもよい。したがって、前記第2循環オイル孔135において、前記半径方向のオイル孔1353は、ピストンオイル孔137を避けて形成することが容易である。
【0145】
これに反して、前記軸方向のオイル孔1351は、軸方向に延びなければならないため、前記ピストンオイル孔137と異なる円周方向の位置に形成されるようにする。
【0146】
前記軸方向のオイル孔1351は、トルクコンバータの軸方向に揃う方向に延びるか、後方から前方に延びることにより、半径方向外側に傾斜していてもよい。図示の実施形態では、軸方向のオイル孔1351が平行に形成され、3個の軸方向のオイル孔1351が1セットを構成して、3セットが120度間隔で配置された構造を例示する。このような位置は、2個のピストンオイル孔137が1セットを構成して、3セットが120度間隔で配置された構造と、60度オフセットされている位置である。
【0147】
本発明によれば、カバーハブ13と出力部材60との間に介在したスラストワッシャー70は、第1循環オイル孔63から流出したオイルをいずれも第2循環オイル孔135に流入するように案内する。したがって、第1循環オイル孔63における遠心力によって発生するオイルの流れの圧力は、第2循環オイル孔135にそのまま伝達される。したがって、前記第1循環オイル孔63が傾斜した形態であれば、軸方向と平行に延びた軸方向のオイル孔1351においても、オイルの流れが円滑に行われる。
【0148】
実施形態によれば、前記カバーハブ13の前面は、前記フロントカバー11の後面に接して、前記カバーハブ13の前面下端部の角部位が、前記フロントカバー11とレーザ溶接又はMIG溶接(metal inert gas welding)などの方式で溶接されていてもよい。
【0149】
前記フロントカバー11とカバーハブ13の溶接は、カバーハブ13にピストンオイル孔137と第2循環オイル孔135を加工した後に行われる。
【0150】
前記軸方向のオイル孔1351は、軸方向と平行であるため、加工が容易である。また、カバーハブ13の前面は、フロントカバー11の後面と密着固定されるため、前記軸方向のオイル孔1351を、前記カバーハブ13の前面まで貫通する形態に加工しても構わない。これによって、軸方向のオイル孔1351の加工がさらに容易である。
【0151】
図3図6及び図7の(a)及び(b)を参照すると、前記半径方向のオイル孔1353の流動断面積は、前記軸方向のオイル孔1351の流動断面積よりも小さくてもよい。
【0152】
前記半径方向のオイル孔1353の直径は、前記軸方向のオイル孔1351の直径に対応し得る。
【0153】
図3図6及び図7の(c)を参照すると、前記半径方向のオイル孔1353の流動断面積は、前記軸方向のオイル孔1351の流動断面積よりも大きくてもよい。
【0154】
前記半径方向のオイル孔1353の直径は、前記軸方向のオイル孔1351の直径よりもさらに大きくてもよい。これによって、半径方向のオイル孔1353の流動断面積をさらに大きくすることができ、オイルの流れをさらに円滑にすることができる。
【0155】
また、半径方向のオイル孔1353の直径は、軸方向のオイル孔1351の直径よりもさらに大きいため、軸方向のオイル孔1351と半径方向のオイル孔1353のドリル加工が、中心軸が互いに交差せず、若干外れていても、軸方向のオイル孔1351の直径は、半径方向のオイル孔1353の直径の内部に依然として含まれ得、第2循環オイル孔135の加工誤差許容範囲が大きくなり得る。
【0156】
図3図6及び図7を参照すると、前記半径方向のオイル孔1353の周のうち一部は、前記カバーハブ13の前方に開放された形態であってもよい。これは、軸方向のオイル孔1351と半径方向のオイル孔1353の加工過程で、これら加工位置の整列がさらに容易になる。
【0157】
図7の(a)と対比して、図7の(b)を考察すると、半径方向のオイル孔1353の中心は、前記フロントカバー11から後方にオフセットして配置されていてもよい。言い換えれば、前記半径方向のオイル孔1353の周のうち、前記カバーハブ13の前面に開放された周部分に対応する中心角(A1)は、開放されていない周部分に対応する中心角(A2)よりもさらに小さい。
【0158】
すると、前記半径方向のオイル孔1353の周のうち、前記カバーハブ13の前面に開放された周部分の幅(w)は、前記半径方向のオイル孔1353の直径よりも小くなり得る。したがって、前記半径方向のオイル孔1353に存在するオイルの圧力が、前記フロントカバー11に加える影響を減らすことができる。
【0159】
図7の(b)を参照すると、半径方向のオイル孔1353の直径は、前記軸方向のオイル孔1351の直径に対応するが、前記半径方向のオイル孔1353の流動断面積は、前記軸方向のオイル孔1351の流動断面積よりも少しだけ小さい。したがって、軸方向のオイル孔1351と対比して半径方向のオイル孔1353の流動断面積の縮小を最小化しながらも、前記半径方向のオイル孔1353に存在するオイルの圧力が、前記フロントカバー11に加える影響を減らすことができる。
【0160】
図7の(c)を参照すると、前記半径方向のオイル孔1353の直径を、前記軸方向のオイル孔1351の直径よりもさらに大きくしながらも、前記半径方向のオイル孔1353の中心を、前記フロントカバー11から後方にオフセット配置して、前記半径方向のオイル孔1353の周のうち、前記カバーハブ13の前面に開放された周部分の幅(w)を縮小することができる。
【0161】
これによって、半径方向のオイル孔1353の流動断面積を、軸方向のオイル孔1351の流動断面積よりも大きくしながらも、前記半径方向のオイル孔1353の周のうち、前記カバーハブ13の前面に開放された周部分の幅(w)を、前記軸方向のオイル孔1351の直径と同様であるか、それよりもさらに小さくすることが可能である。すると、オイルの流れをさらに円滑にしながらも、前記半径方向のオイル孔1353に存在するオイルの圧力が、前記フロントカバー11に加える影響を減らすことができる。
【0162】
前記軸方向のオイル孔1351は、周方向に沿って複数本(実施形態では、3個)が互いに隣接配置されて、1セットを構成することができる。
【0163】
図8の(a)と(b)を参照すると、半径方向のオイル孔1353に対する変形例であって、前記半径方向のオイル孔1353は、前記軸方向のオイル孔のセットと連通するように周方向に形成された1つのスロット状であってもよい。図8の(a)では、1つの半径方向のオイル孔1353が、軸方向のオイル孔1351の1セットと連通するように形成された構造を例示する。図8の(b)では、1つの半径方向のオイル孔1353が、軸方向のオイル孔1351の2セットと連通するように形成された構造を例示する。
【0164】
示してはいないものの、カバーハブ13に前記軸方向のオイル孔1351のセットが複数本設けられて、1つの半径方向のオイル孔1353が前記軸方向のオイル孔1351の複数本のセット全部と連通することもできる。これは、前記半径方向のオイル孔1353が円周方向に沿って360度に全体形成されたスロット状であってもよい。
【0165】
以下では、本発明によるトルクコンバータの作動について説明する。
【0166】
車両の初期駆動時、ロックアップクラッチ30が解除した状態で、エンジンの回転力がカバー10に伝達される。すると、カバー10のポンプ入力端151がポンプを可動して、カバー10の内部にオイルが供給される。オイルは、変速機から出力部材60と固定端29との間の空間に供給される。すると、出力部材60と固定端29との間に供給されたオイルの一部は、遠心力によって、ワンウェイクラッチ27と第2軸受けを浸しつつ、トーラス20の方に流動し、その他は、第1循環オイル孔63に流入する。
【0167】
第1循環オイル孔63に流入したオイルは、出力部材60とカバーハブ13との間の空間に流出して、前記スラストワッシャー70にガイドされ、いずれもカバーハブ13の第2循環オイル孔135に流入する。このように、第2循環オイル孔135に流入した流体は、軸方向のオイル孔1351と半径方向のオイル孔1353を介して、ピストンプレート41の前方空間に供給される。
【0168】
ピストンプレート41の前方に供給されたオイルの圧力は、クラッチパック33から遠くなるように、ピストンプレート41を後方に押す作用を行い、なお、クラッチパック33とねじりダンパ50が設けられた空間を通ってトーラス20に供給される。そして、前記オイルは、ポンプ入力端151と固定端29との間の空間を介して変速機の方に戻る。
【0169】
この過程で、カバー10の回転力は、トーラス20に満たされたオイルによってトルクが増倍し、出力部材60を介して変速機に伝達される。
【0170】
タービン23の回転速度が、インペラ21の回転速度に近くなると、出力部材60よりも半径方向内側に設けられた流路を介してオイルが供給され、これらオイルは、カバーハブ13のピストンオイル孔137を介して作動チャンバ45に供給されて、ピストンプレート41を前方に移動させる。前記ピストンプレート41は、クラッチパック33を加圧して、ロックアップクラッチを作動させる。すると、エンジンの回転力は、ロックアップクラッチ30とねじりダンパ50を経て、振動が吸収されて、出力部材60に直接伝達され、そのような回転力は、変速機に伝達される。
【0171】
以上のように、本発明について例示の図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書で開示の実施形態と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で通常の技術者によって様々な変形が行われることは自らかである。なお、本発明の実施形態を前述しつつ、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
【符号の説明】
【0172】
71 トルクコンバータ
10 カバー
11 フロントカバー
13 カバーハブ
131 環状溝
1311 内周壁
1313 外周壁
133 接合面
135 第2循環オイル孔
1351 軸方向のオイル孔
1353 半径方向のオイル孔
137 ピストンオイル孔
15 リアカバー
151 ポンプ入力端
20 トーラス
21 インペラ
23 タービン
231 タービンプレート
25 リアクター
27 ワンウェイクラッチ
29 固定端
30 ロックアップクラッチ
31 入力ドラム
33 クラッチパック
35 出力ドラム
41 ピストンプレート
43 シリンダプレート
45 作動チャンバ
50 ねじりダンパ
51 第1ねじりダンパ
52 第2ねじりダンパ
60 ダンパハブ(出力部材)
61 フランジ
611 リベット孔
63 第1循環オイル孔
65 シールリング
B1 第1軸受け
B2 第2軸受け
70 スラストワッシャー
71 外輪
73 内輪
75 連結部材
77 ガイドスロット
We 溶接部位
A1、A2 中心角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8