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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118136
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】減速機構付モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020899
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時崎 哲平
(72)【発明者】
【氏名】小林 幹明
(72)【発明者】
【氏名】増渕 久実子
(72)【発明者】
【氏名】石関 翼
(72)【発明者】
【氏名】川島 義親
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】大きな外力が出力軸に付加された場合でも、ギヤ同士の噛み合いが外れることを抑制することが可能な減速機構付モータを提供する。
【解決手段】ギヤケース20におけるピニオンギヤ61のヘリカルギヤ62側とは反対側に、ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合いを保持するバックアップ部材70を設ける。これにより、大きな外力が出力軸に付加された場合でも、ギヤ同士の噛み合い(ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合い)が外れることを抑制することができる。よって、ピニオンギヤ61およびヘリカルギヤ62(減速機構60)の損傷を、長期に亘って防止することができ、ひいては減速機構付モータ10の長寿命化を図ることが可能となる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータ部と、
前記回転軸の回転を減速する減速機構部と、
を備えた減速機構付モータであって、
前記回転軸に一体回転可能に設けられる第1ギヤと、
前記第1ギヤに噛み合わされ、前記第1ギヤよりも低速で回転される第2ギヤと、
前記第2ギヤの回転中心に設けられる出力軸と、
前記第1ギヤおよび前記第2ギヤを回転自在に収容するギヤケースと、
を有し、
前記ギヤケースにおける前記第1ギヤの前記第2ギヤ側とは反対側に、前記第1ギヤと前記第2ギヤとの噛み合いを保持する噛合保持部材が設けられている、
減速機構付モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の減速機構付モータにおいて、
前記第1ギヤと前記噛合保持部材との間に隙間が設けられている、
減速機構付モータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の減速機構付モータにおいて、
前記ギヤケースは、
前記出力軸を支持する出力軸支持部と、
前記噛合保持部材を支持する噛合保持部材支持部と、
を備えている、
減速機構付モータ。
【請求項4】
請求項3に記載の減速機構付モータにおいて、
前記噛合保持部材および前記噛合保持部材支持部は、前記噛合保持部材の前記噛合保持部材支持部に対する位置決めを行うテーパ面をそれぞれ備えている、
減速機構付モータ。
【請求項5】
前記回転軸および前記出力軸が互いに平行に設けられ、
前記第1ギヤが1つの歯を有するピニオンギヤであり、
前記第2ギヤが前記1つの歯が噛み合わされる斜歯を備えるヘリカルギヤである、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の減速機構付モータ。
【請求項6】
前記噛合保持部材は、少なくとも前記ピニオンギヤの長手方向中央部に配置されている、
請求項5に記載の減速機構付モータ。
【請求項7】
請求項6に記載の減速機構付モータにおいて、
前記ピニオンギヤの長手方向における前記噛合保持部材の中央部に、前記噛合保持部材を前記ギヤケースに固定するための固定部が設けられている、
減速機構付モータ。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の減速機構付モータにおいて、
前記ピニオンギヤの長手方向における前記噛合保持部材の少なくともいずれか一方側に、前記ピニオンギヤと前記ヘリカルギヤとの間に塗布されたグリースの漏れを防止する第1グリース漏れ防止壁が設けられている、
減速機構付モータ。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の減速機構付モータにおいて、
前記ヘリカルギヤの回転方向における前記噛合保持部材の少なくともいずれか一方側に、前記ピニオンギヤと前記ヘリカルギヤとの間に塗布されたグリースの漏れを防止する第2グリース漏れ防止壁が設けられている、
減速機構付モータ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の減速機構付モータにおいて、
前記ギヤケースは、当該ギヤケースに対して前記第2ギヤが傾斜することを抑制する傾斜抑制部を備えている、
減速機構付モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を有するモータ部と、回転軸の回転を減速する減速機構部と、を備えた減速機構付モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されるワイパ装置やパワーウィンドウ装置等の駆動源には、小型でありながら大きな出力が可能な減速機構付モータが採用されている。このような車載用の減速機構付モータが、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された減速機構付モータは、ピニオンギヤを有するブラシレスモータと、ピニオンギヤの回転を減速して出力する出力軸を有するヘリカルギヤと、を備えている。ピニオンギヤおよびヘリカルギヤは減速機構を形成し、互いに噛み合わされている。また、ピニオンギヤの軸線および出力軸の軸線は、互いに平行となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-018035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された技術では、ギヤケースの内部におけるピニオンギヤのヘリカルギヤ側とは反対側に、比較的大きな空間が形成されている。当該空間は、ピニオンギヤを回転自在に支持する第1ボールベアリングを、ギヤケースの内部の所定箇所に組み込むために必要なものである。
【0006】
そして、ピニオンギヤのヘリカルギヤ側とは反対側に空間が存在するため、例えば、大きな外力が出力軸に付加されると、ヘリカルギヤを介してピニオンギヤに大きな負荷が掛かり、ピニオンギヤがヘリカルギヤから離れるように湾曲する虞があった。ピニオンギヤが湾曲すると、ヘリカルギヤに対するピニオンギヤの噛み合いが外れてしまう。
【0007】
本発明の目的は、大きな外力が出力軸に付加された場合でも、ギヤ同士の噛み合いが外れることを抑制することが可能な減速機構付モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、回転軸を有するモータ部と、前記回転軸の回転を減速する減速機構部と、を備えた減速機構付モータであって、前記回転軸に一体回転可能に設けられる第1ギヤと、前記第1ギヤに噛み合わされ、前記第1ギヤよりも低速で回転される第2ギヤと、前記第2ギヤの回転中心に設けられる出力軸と、前記第1ギヤおよび前記第2ギヤを回転自在に収容するギヤケースと、を有し、前記ギヤケースにおける前記第1ギヤの前記第2ギヤ側とは反対側に、前記第1ギヤと前記第2ギヤとの噛み合いを保持する噛合保持部材が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ギヤケースにおける第1ギヤの第2ギヤ側とは反対側に、第1ギヤと第2ギヤとの噛み合いを保持する噛合保持部材が設けられているので、大きな外力が出力軸に付加された場合でも、ギヤ同士の噛み合いが外れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】減速機構付モータの内部構造を説明する断面図である。
図2】ギヤケースの内側を示す斜視図である。
図3】軸受ホルダのヘリカルギヤ側を示す斜視図である。
図4】部品間の隙間を説明する図1の破線円A部の拡大図である。
図5】軸受ホルダ,ヘリカルギヤおよびギヤケースを示す分解斜視図である。
図6】出力軸,ヘリカルギヤ,ピニオンギヤ,ロータおよびバックアップ部材を示す斜視図である。
図7】バックアップ部材の一対の囲い壁部側を示す斜視図である。
図8】バックアップ部材の本体固定部側を示す斜視図である。
図9】ギヤケースおよびバックアップ部材を示す図1のB-B線に沿う断面図である。
図10】グリースの移動状態を説明する図1の破線円A部の拡大図である。
図11】ヘリカルギヤおよびバックアップ部材の位置関係を説明する図1のC矢視図である。
図12】実施の形態2(軸受ホルダ)を説明する斜視図である。
図13】実施の形態3(バックアップ部材)を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は減速機構付モータの内部構造を説明する断面図を、図2はギヤケースの内側を示す斜視図を、図3は軸受ホルダのヘリカルギヤ側を示す斜視図を、図4は部品間の隙間を説明する図1の破線円A部の拡大図を、図5は軸受ホルダ,ヘリカルギヤおよびギヤケースを示す分解斜視図を、図6は出力軸,ヘリカルギヤ,ピニオンギヤ,ロータおよびバックアップ部材を示す斜視図を、図7はバックアップ部材の一対の囲い壁部側を示す斜視図を、図8はバックアップ部材の本体固定部側を示す斜視図を、図9はギヤケースおよびバックアップ部材を示す図1のB-B線に沿う断面図を、図10はグリースの移動状態を説明する図1の破線円A部の拡大図を、図11はヘリカルギヤおよびバックアップ部材の位置関係を説明する図1のC矢視図をそれぞれ示している。
【0013】
[減速機構付モータの概要]
図1に示される減速機構付モータ10は、例えば、自動車等の車両に搭載されるワイパ装置の駆動源に用いられるものである。具体的には、減速機構付モータ10は、車両のフロントガラス(図示せず)の前方側に配置され、かつフロントガラス上に揺動自在に設けられたワイパ部材(図示せず)を、下反転位置と上反転位置との間の所定の払拭範囲で揺動させるものである。
【0014】
減速機構付モータ10は、その外郭を形成するハウジング11を備えている。ハウジング11の内部には、ブラシレスモータ50および減速機構60が回転自在に収容されている。なお、ブラシレスモータ50は、本発明におけるモータ部に相当し、減速機構60は、本発明における減速機構部に相当する。
【0015】
また、ハウジング11の内部には、ロータ52およびヘリカルギヤ62の回転状態を検出するのに用いられる第1センサ基板12および第2センサ基板13がそれぞれ収容されている。そして、ハウジング11は、アルミダイキャスト製のギヤケース20と、鋼板をプレス加工してなるカバー部材30と、を備えている。
【0016】
[ギヤケース]
図1および図2に示されるように、ギヤケース20は、溶融されたアルミニウム材料を射出成形することで、略お椀型形状に形成されている。具体的には、ギヤケース20は、底壁部21と、その周囲に一体に設けられた側壁部22と、軸受ホルダ40(図3参照)が装着される軸受ホルダ装着部23と、を備えている。
【0017】
底壁部21の略中央部には、出力軸63を回転自在に支持する筒状のボス部21aが設けられている。ボス部21aは、本発明における出力軸支持部に相当し、当該ボス部21aの径方向外側には、略三角形形状に形成された複数の補強リブ21bが設けられている。これらの補強リブ21bは、ボス部21aの底壁部21に対する固定強度を高めるものであり、ボス部21aの周方向に等間隔となるように、例えば8個配置されている。
【0018】
ボス部21aの径方向内側には、所謂「メタル」と呼ばれる筒状の軸受部材14が装着されている。これにより出力軸63は、ボス部21aに対してがたつくことなくスムーズに回転可能となっている。なお、ボス部21aの先端側(図1の上側)で、かつ径方向内側には、ゴム等の弾性材料からなるOリング15が装着されている。これにより、出力軸63と軸受部材14との間に、雨水や埃等が進入することが阻止される。
【0019】
ここで、出力軸63の長手方向中央部には、止め輪16が固定されている。止め輪16は、ボス部21aの先端部に引っ掛けられている。これにより、ヘリカルギヤ62と止め輪16との間にボス部21aが挟まれて、出力軸63はボス部21aに対して抜け止めされた状態となっている。よって、出力軸63のボス部21aに対するがたつきが抑えられ、ひいては減速機構付モータ10の静粛性が確保される。
【0020】
底壁部21のボス部21aから偏心した位置には、軸受部材収容部21cが設けられている。軸受部材収容部21cは、有底筒状に形成され、かつ底壁部21からギヤケース20の外側(図1の上側)に向けて突出されている。そして、軸受部材収容部21cの内部には、ピニオンギヤ61の先端側を回動自在に支持する第1ボールベアリングBR1が収容されている。
【0021】
側壁部22の軸受ホルダ装着部23寄りの部分には、バックアップ部材収容部22aが設けられている。バックアップ部材収容部22aは、本発明における噛合保持部材支持部に相当し、軸受部材収容部21cの近傍に配置されている。バックアップ部材収容部22aの内部には、バックアップ部材70が収容されている。ここで、バックアップ部材70は、バックアップ部材収容部22aに支持されており、ピニオンギヤ61の周囲を覆うように設けられている。そして、バックアップ部材70は、出力軸63に大きな外力が付加されたときに、ピニオンギヤ61が湾曲するのを抑える機能を有するものである。
【0022】
また、バックアップ部材収容部22aには、単一のねじ穴22bが設けられている。ねじ穴22bは、ピニオンギヤ61およびヘリカルギヤ62の径方向(図1の左右方向)に向けて開口している。そして、ねじ穴22bには、バックアップ部材70をバックアップ部材収容部22aに固定するための固定ねじSC1が挿通されている。これにより、バックアップ部材70は、バックアップ部材収容部22aの内部にがたつくことなく固定される。これによっても、減速機構付モータ10の静粛性が確保される。
【0023】
図2および図9に示されるように、バックアップ部材収容部22aの内部には、一対のケース側傾斜面22cが設けられている。これらのケース側傾斜面22cは、ピニオンギヤ61およびヘリカルギヤ62(図1参照)の軸方向と交差する方向に互いに対向している。一対のケース側傾斜面22cは、バックアップ部材収容部22aに対するバックアップ部材70(図7および図8参照)の差し込み方向先端側に配置されている。つまり、一対のケース側傾斜面22cは、ギヤケース20の底壁部21寄りの部分に配置されている。
【0024】
そして、一対のケース側傾斜面22cには、バックアップ部材70に設けられた一対のバックアップ部材側傾斜面71b(図7ないし図9参照)が突き合わせられる。これにより、図9の矢印M1に示されるように、バックアップ部材70をバックアップ部材収容部22aに装着する際に、一対のバックアップ部材側傾斜面71bが、一対のケース側傾斜面22cに突き当てられて、バックアップ部材70はバックアップ部材収容部22aの規定位置に配置(センタリング)される。
【0025】
すなわち、一対のケース側傾斜面22cおよび一対のバックアップ部材側傾斜面71bは、バックアップ部材70をバックアップ部材収容部22aに対して、正規の位置に位置決めをする機能を有している。よって、その後の固定ねじSC1の締結作業(図9の矢印M2参照)を容易に行うことが可能となっている。なお、一対のケース側傾斜面22cおよび一対のバックアップ部材側傾斜面71bは、それぞれ本発明におけるテーパ面に相当する。
【0026】
図1および図2に示されるように、底壁部21の内側、つまり底壁部21の補強リブ21b側とは反対側には、略環状に形成された第1バックアップ凸部21dが設けられている。第1バックアップ凸部21dは、断面が略半円形状に形成され、ギヤケース20の内側(図1の下側)に向けて所定の高さで突出されている。第1バックアップ凸部21dは、出力軸63に大きな外力が付加されたときに、ヘリカルギヤ62が傾斜することを抑制する機能を有するものである。なお、第1バックアップ凸部21dは、本発明における傾斜抑制部に相当する。
【0027】
また、図2に示されるように、軸受ホルダ装着部23には、軸受ホルダ位置決め凹部23aが設けられている。軸受ホルダ位置決め凹部23aは、バックアップ部材収容部22aの周囲を囲うようにして設けられ、バックアップ部材収容部22aに向けて窪んでいる。そして、軸受ホルダ位置決め凹部23aには、軸受ホルダ40に設けられた位置決め凸部41a(図3参照)が嵌合するようになっている。
【0028】
これにより、軸受ホルダ40を、軸受ホルダ装着部23に対する正規の位置に、精度良く装着可能となっている。したがって、その後の締結ねじSC2(図1参照)を用いた軸受ホルダ40の軸受ホルダ装着部23への固定を容易にでき、かつ軸受ホルダ40に保持される第2ボールベアリングBR2と、軸受部材収容部21cに収容された第1ボールベアリングBR1とを、精度良く同軸上に配置することが可能となっている。よって、製品毎にピニオンギヤ61の回転抵抗がばらつくことが抑えられる。
【0029】
[軸受ホルダ]
図1および図3に示されるように、軸受ホルダ装着部23に装着される軸受ホルダ40は、第1センサ基板12と、ピニオンギヤ61の基端側を回動自在に支持する第2ボールベアリングBR2と、を保持している。軸受ホルダ40は、ホルダ本体41およびサブホルダ42からなり、両者を突き合わせて形成されている。そして、ホルダ本体41とサブホルダ42との間に、第2ボールベアリングBR2が配置されている。
【0030】
なお、ホルダ本体41およびサブホルダ42は、いずれもアルミダイキャスト製であり、ギヤケース20(軸受ホルダ装着部23)に対してがたつくことなく強固に固定可能となっている。また、図3においては、軸受ホルダ40を形成するホルダ本体41のみを示している。
【0031】
図3に示されるように、ホルダ本体41のヘリカルギヤ62側には、軸受ホルダ位置決め凹部23a(図2参照)に嵌合され、かつ略C字形状に形成された位置決め凸部41aと、略円弧形状に形成された一対の第2バックアップ凸部41bとが設けられている。なお、位置決め凸部41aの突出高さの方が、一対の第2バックアップ凸部41bの突出高さよりも高くなっている。
【0032】
そして、軸受ホルダ40(ホルダ本体41)をギヤケース20(軸受ホルダ装着部23)に装着した状態で、一対の第2バックアップ凸部41bは、ギヤケース20に設けられた第1バックアップ凸部21dに対して、出力軸63の軸方向から対向するようになっている(図1参照)。すなわち、一対の第2バックアップ凸部41bにおいても、出力軸63に大きな外力が付加されたときに、ヘリカルギヤ62が傾斜するのを抑える機能を有している。なお、一対の第2バックアップ凸部41bにおいても、断面が略半円形状に形成されている。ここで、一対の第2バックアップ凸部41bは、本発明における傾斜抑制部に相当する。
【0033】
ホルダ本体41の外周縁部には、合計3つのねじ穴41cが設けられている。これらのねじ穴41cには、図1に示されるように、カバー部材30および軸受ホルダ40をギヤケース20に固定するための締結ねじSC2が挿通される。ただし、図1においては、1つの締結ねじSC2のみが示されている。
【0034】
また、ホルダ本体41の略中央部には、ピニオンギヤ61が非接触の状態で挿通される挿通孔41dが設けられている。なお、一対の第2バックアップ凸部41bの長さ寸法は任意であり、図3の実線で示されるような短い長さ寸法に限らず、同図の破線矢印のように長い長さ寸法に設定することも可能である。
【0035】
[カバー部材]
図1に示されるように、ハウジング11を形成するカバー部材30は、略平板状に形成された基板保持部31と、略有底筒状に形成されたモータ収容部32と、を備えている。基板保持部31は、カバー部材30をギヤケース20に装着した状態で、出力軸63の軸方向においてヘリカルギヤ62と対向している。そして、基板保持部31の内側には、ベース部材BSを介して第2センサ基板13が固定されている。
【0036】
また、基板保持部31には、車両側の外部コネクタCNが接続されるコネクタ接続部CCが挿通される挿通穴31aが形成されている。ここで、コネクタ接続部CCは、ベース部材BSに導電部材(図示せず)を介して固定され、第1センサ基板12,第2センサ基板13およびブラシレスモータ50に電気的に接続されている。これにより、外部コネクタCNに接続される車載コントローラ(図示せず)は、第1,第2センサ基板12,13からの検出信号に応じて、ブラシレスモータ50を精度良く駆動可能となっている。
【0037】
ここで、第1センサ基板12には、3つのホールセンサ12a(図示では1つのみ示す)が実装されており、これらのホールセンサ12aは、それぞれU相,V相,W相に対応している。そして、3つのホールセンサ12aは、それぞれピニオンギヤ61の軸方向において、ロータ52に設けられた永久磁石MGと対向している。なお、車載コントローラは、3つのホールセンサ12aの検出信号からブラシレスモータ50(ピニオンギヤ61)の回転状態(回転速度や回転方向等)を把握し、これに基づいてブラシレスモータ50の回転状態を精度良く制御する。
【0038】
一方、第2センサ基板13には、単一のMRセンサ13aが実装されており、当該MRセンサ13aは、出力軸63の軸方向においてヘリカルギヤ62の回転中心に固定されたセンサマグネットSMと対向している。そして、車載コントローラは、MRセンサ13aの検出信号から出力軸63の回転状態(回転位置等)を把握し、これに基づいてワイパ部材(図示せず)のフロントガラス(図示せず)に対する払拭位置を精度良く制御する。
【0039】
モータ収容部32は、カバー部材30をギヤケース20に装着した状態で、ギヤケース20側とは反対側(図1の下側)に突出されている。また、モータ収容部32は、カバー部材30をギヤケース20に装着した状態で、ギヤケース20の軸受部材収容部21cと対向している。そして、モータ収容部32の内部には、ブラシレスモータ50が収容されている。
【0040】
さらに、モータ収容部32の略中央部には、軸孔32aが設けられ、当該軸孔32aの部分には、軸受部材BRが設けられている。そして、軸受部材BRは、ブラシレスモータ50の回転軸53の長手方向基端側(図1の下側)を回転自在に支持している。このように、ピニオンギヤ61を含む回転軸53は、合計3つの軸受(第1,第2ボールベアリングBR1,BR2および軸受部材BR)によって、回転自在に支持されている。
【0041】
[ブラシレスモータ]
モータ収容部32に収容されるブラシレスモータ50は、略筒状に形成されたステータコア(固定子)51を備えている。当該ステータコア51は、モータ収容部32の内部において、軸受ホルダ40のサブホルダ42に対して回り止めされた状態(詳細図示せず)で強固に固定されている。
【0042】
ステータコア51は、複数の薄い鋼板(磁性体)を積層して形成され、その径方向外側には複数のティース(図示せず)が放射状に設けられている。そして、これらのティースには、U相,V相,W相に対応したコイル51aが、それぞれ集中巻により所定の巻き数で巻装されている。
【0043】
そして、車載コントローラにより、U相,V相,W相のコイル51aに対して所定のタイミングで交互に駆動電流を供給することで、ステータコア51の径方向外側に設けられたロータ(回転子)52が、所定の回転方向に所定の駆動トルクで回転される。つまり、本実施の形態に係るブラシレスモータ50は、アウターローター型のブラシレスモータを採用している。
【0044】
ステータコア51の径方向外側には、微小隙間(エアギャップ)を介してロータ52が回転自在に設けられている。図1および図6に示されるように、ロータ52は、ピニオンギヤ61が一体に設けられた回転軸53を回転させるものであり、鋼板(磁性体)をプレス加工等することで、断面が略U字形状に形成されたロータ本体54を備えている。そして、ロータ本体54の径方向内側には、略瓦状に形成された複数の永久磁石MGが固定されている。また、ロータ本体54の回転中心には、ピニオンギヤ61が一体に設けられた回転軸53が、圧入等により強固に固定されている。
【0045】
[減速機構]
ハウジング11(ギヤケース20)の内部に回転自在に収容される減速機構60は、図1および図6に示されるように、回転軸53に一体に設けられたピニオンギヤ(第1ギヤ)61と、当該ピニオンギヤ61に噛み合わされ、ピニオンギヤ61よりも低速で回転されるヘリカルギヤ(第2ギヤ)62と、を備えている。ここで、ピニオンギヤ61の軸線およびヘリカルギヤ62の軸線は互いに平行となっている。つまり、回転軸53と出力軸63とは、互いに平行となっている。これにより、減速機構60では、互いの軸線が交差するウォームおよびウォームホイールを備えたウォーム減速機よりも、その体格をよりコンパクトにすることが可能となっている。
【0046】
また、ピニオンギヤ61は減速機構付モータ10の回転軸53側(入口側)に配置され、ヘリカルギヤ62は減速機構付モータ10の出力軸63側(出口側)に配置されている。すなわち、減速機構60は、歯数が少ないピニオンギヤ61の高速回転を、歯数が多いヘリカルギヤ62の低速回転に減速するようになっている。よって、ヘリカルギヤ62は、ピニオンギヤ61よりも低速で回転される。
【0047】
ピニオンギヤ61を含む回転軸53は金属製であり、ピニオンギヤ61は、図1および図7に示されるような形状となっている。具体的には、ピニオンギヤ61の周囲には、螺旋状歯(歯)61aが一体に設けられ、当該螺旋状歯61aの軸方向長さは、ヘリカルギヤ62の軸方向長さよりも若干長い長さ寸法となっている。これにより螺旋状歯61aは、ヘリカルギヤ62に確実に噛み合わせられる。
【0048】
螺旋状歯61aは、ピニオンギヤ61の軸方向に螺旋状に連続して延びており、ピニオンギヤ61には、1つの螺旋状歯61aのみが設けられている。すなわち、ピニオンギヤ61の歯数は「1」となっている。そして、螺旋状歯61aは、その断面形状が円形となるように形成され、ヘリカルギヤ62の噛合凹部62dに入り込む(噛み合う)ようになっている。
【0049】
減速機構60を形成するヘリカルギヤ62はプラスチック製であり、図1および図6に示されるような形状となっている。具体的には、ヘリカルギヤ62は、略円盤状に形成されたギヤ本体62aを備えており、当該ギヤ本体62aの回転中心に、出力軸63の基端側が圧入等により強固に固定されている。これにより、出力軸63は、ヘリカルギヤ62とともに回転される。また、ギヤ本体62aの回転中心でかつ第2センサ基板13側(図1の下側)には、センサマグネットSMが固定されている。
【0050】
ギヤ本体62aの径方向外側には、略筒状に形成されたギヤ形成部62bが設けられている。ギヤ形成部62bには、その周方向に並ぶようにして、複数の斜歯62cが設けられている。これらの斜歯62cは、ピニオンギヤ61の軸方向に対して所定角度で傾斜しており、これにより、螺旋状歯61aの回転に伴いヘリカルギヤ62は回転される。具体的には、隣り合う斜歯62c同士の間に噛合凹部62dが設けられ、当該噛合凹部62dに螺旋状歯61aが入り込んで噛み合わされている。なお、噛合凹部62dにおいても、その断面形状が円形となるように形成されている。
【0051】
ギヤ形成部62bの軸方向両側には、第1面SF1および第2面SF2がそれぞれ設けられている。そして、図1および図5に示されるように、第1面SF1は、ギヤケース20の底壁部21側に配置され、第2面SF2は、軸受ホルダ40側に配置されている。また、出力軸63の軸方向において、第1面SF1は、第1バックアップ凸部21dと対向しており、第2面SF2は、一対の第2バックアップ凸部41bと対向している。これにより、出力軸63に大きな外力が付加されたときに、ヘリカルギヤ62が傾斜することが抑えられる。
【0052】
なお、図4に示されるように、出力軸63に大きな外力が付加されていない場合において、第1面SF1と第1バックアップ凸部21dとの間には、微小隙間δS1が形成されている。一方、出力軸63に大きな外力が付加されていない場合において、第2面SF2と一対の第2バックアップ凸部41bとの間には、微小隙間δS2が形成されている(δS1≒δS2)。これにより、出力軸63に大きな外力が付加されない減速機構付モータの「通常動作時」には、ヘリカルギヤ62はギヤケース20および軸受ホルダ40の双方に対して非接触の状態となり、スムーズな回転を可能としている。
【0053】
これに対し、出力軸63に大きな外力が付加される減速機構付モータの「過負荷動作時」には、斜歯62cが傾斜していることに起因して、ヘリカルギヤ62は、出力軸63の軸線に対して傾斜しようとする。すると、ヘリカルギヤ62の回転方向に応じて、第1面SF1が第1バックアップ凸部21dに接触(図5の破線矢印参照)し、第2面SF2が一対の第2バックアップ凸部41bに接触(図5の破線矢印参照)する。これにより、ヘリカルギヤ62が第1,第2バックアップ凸部21d,41bにより支持(バックアップ)されて、ヘリカルギヤ62がそれ以上傾斜することが抑えられる。したがって、ヘリカルギヤ62とピニオンギヤ61との噛み合い状態が悪化することが抑えられ、プラスチック製のヘリカルギヤ62が、金属製のピニオンギヤ61により抉られて損傷すること等が防止される。
【0054】
ここで、ヘリカルギヤ62に設けられる斜歯62c(噛合凹部62d)の数は「40」となっている。すなわち、本実施の形態では、ピニオンギヤ61およびヘリカルギヤ62からなる減速機構60の減速比は「40」となっている。
【0055】
[バックアップ部材]
図1図4図6ないし図8に示されるように、ギヤケース20のバックアップ部材収容部22aに収容されるバックアップ部材70は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで略直方体形状に形成されている。バックアップ部材70は、ギヤケース20に固定される固定本体部71と、当該固定本体部71に一体に設けられ、固定本体部71とともにピニオンギヤ61の周囲を囲う一対の囲い壁部72と、これらの囲い壁部72の長手方向一側(図7および図8の右側)に一体に設けられ、略環状に形成された環状壁部73と、を備えている。
【0056】
固定本体部71には、雌ねじ部71aが設けられている。雌ねじ部71aは、本発明における固定部に相当し、ピニオンギヤ61の長手方向におけるバックアップ部材70の中央部に設けられている。また、雌ねじ部71aは、固定本体部71のピニオンギヤ61側とは反対側(背面側)に配置されている。そして、雌ねじ部71aには、バックアップ部材70をギヤケース20に固定するために固定ねじSC1が締結される。
【0057】
また、固定本体部71の長手方向一側(図7および図8の右側)には、一対のバックアップ部材側傾斜面71bが設けられている。これらのバックアップ部材側傾斜面71bは、ギヤケース20に設けられた一対のケース側傾斜面22c(図2および図9参照)に、それぞれ突き合わせられる。ここで、図9に示されるように、バックアップ部材側傾斜面71bをケース側傾斜面22cに突き合わせた状態で、バックアップ部材70の差し込み方向先端部と、バックアップ部材収容部22aの底部との間には、スペースSPが形成される。これにより、一対のバックアップ部材側傾斜面71bを一対のケース側傾斜面22cにがたつくことなく突き合わせることができ、バックアップ部材70のギヤケース20に対する位置決め精度を高めている。
【0058】
図1図4図6および図10に示されるように、バックアップ部材70をギヤケース20に組み付けた状態で、バックアップ部材70を形成する固定本体部71は、ギヤケース20におけるピニオンギヤ61のヘリカルギヤ62側とは反対側に設けられる。そして、ピニオンギヤ61と固定本体部71との間には、微小隙間(隙間)δS3が形成されている。ここで、微小隙間δS3は、第1面SF1と第1バックアップ凸部21dとの間の微小隙間δS1、および第2面SF2と一対の第2バックアップ凸部41bとの間の微小隙間δS2と略同じ隙間寸法となっている(δS1≒δS2≒δS3)。
【0059】
これにより、出力軸63に大きな外力が付加されない減速機構付モータ10の「通常動作時」には、ヘリカルギヤ62からピニオンギヤ61に対して、当該ピニオンギヤ61を湾曲させるような負荷が掛からないため、ピニオンギヤ61はバックアップ部材70に対して非接触の状態でスムーズに回転可能となっている。
【0060】
また、出力軸63を支持するボス部21aおよびバックアップ部材70を支持するバックアップ部材収容部22aは、精度良く形成されたアルミ製のギヤケース20にそれぞれ設けられているため、出力軸63およびバックアップ部材70の位置を、互いに精度良く配置することが可能となっている。したがって、これによっても、ピニオンギヤ61をバックアップ部材70に対して非接触の状態でスムーズに回転可能としつつ、ピニオンギヤ61と固定本体部71との間の微小隙間δS3を詰めることが可能となっている。
【0061】
その一方で、出力軸63に大きな外力が付加される減速機構付モータ10の「過負荷動作時」には、斜歯62cが傾斜していることに起因して、ヘリカルギヤ62は、出力軸63の軸線に対して傾斜しようとする。これにより、ピニオンギヤ61にはその径方向外側から大きな横力が付加される。すると、ピニオンギヤ61は金属製ではあるものの、特に、ピニオンギヤ61が設けられる部分は細くなっているため、横方向からの負荷に弱い。その結果、ピニオンギヤ61は、ヘリカルギヤ62により、径方向から押圧されて湾曲しようとする。
【0062】
この場合、ピニオンギヤ61の長手方向における略中央部が、ヘリカルギヤ62によって押圧される。したがって、ピニオンギヤ61の長手方向における略中央部が、固定本体部71に接触される。ピニオンギヤ61の長手方向における略中央部が固定本体部71に支持(バックアップ)されるため、ピニオンギヤ61のそれ以上の湾曲が抑えられ、ひいてはピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合い状態が保持される。ここで、バックアップ部材70は、本発明における噛合保持部材に相当する。
【0063】
なお、ピニオンギヤ61の湾曲に伴い、固定本体部71の長手方向における略中央部が押圧されるが、固定本体部71の長手方向における略中央部は、固定ねじSC1によりギヤケース20に固定された最もがたつき難い部分である。したがって、仮に、ピニオンギヤ61が繰り返し湾曲するような場合であっても、バックアップ部材70はギヤケース20に対してがたつくことなく、ピニオンギヤ61を支持することができる。よって、バックアップ部材70が早期に損傷したりすること等が効果的に抑えられる。
【0064】
また、ピニオンギヤ61と固定本体部71との間の微小隙間δS3は、ヘリカルギヤ62に対するピニオンギヤ61の噛み合いが外れない程度の隙間寸法に設定されている。さらに、図4および図10に示されるように、本実施の形態では、ピニオンギヤ61の長手方向における略全域に亘り固定本体部71が設けられているが、上述のように、減速機構付モータ10の「過負荷動作時」には、ピニオンギヤ61の長手方向における略中央部が湾曲されることが判っている。よって、バックアップ部材70の固定本体部71を、少なくともピニオンギヤ61の長手方向中央部に配置されるようにすれば良い。具体的には、図10の二点鎖線で囲った網掛け部分を削除することもできる。この場合、バックアップ部材70の軽量化が図れるとともに、バックアップ部材70の肉厚の部分を少なくして、当該バックアップ部材70の成形精度を向上させることが可能となる。
【0065】
また、一対の囲い壁部72は、図11に示されるように、固定本体部71からヘリカルギヤ62に向けて延びており、これらの囲い壁部72の先端側とヘリカルギヤ62との間には、微小隙間δS4が形成されている。これらの囲い壁部72は、ヘリカルギヤ62の回転方向におけるバックアップ部材70の両側に設けられ、本発明における第2グリース漏れ防止壁に相当する。そして、一対の囲い壁部72の先端側には、ヘリカルギヤ62の周方向に傾斜するように傾斜面72aがそれぞれ設けられ、これらの傾斜面72aは、ヘリカルギヤ62の外周形状に沿うようにヘリカルギヤ62の周方向に延びている。よって、一対の傾斜面72aとヘリカルギヤ62との間を詰めて、微小隙間δS4を形成可能としている。
【0066】
ここで、図11に示されるように、一対の囲い壁部72とヘリカルギヤ62との間に微小隙間δS4を形成することで、ヘリカルギヤ62の一方向回転時において、実線の×矢印のように、ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合い部分に塗布されたグリース(図示せず)が、囲い壁部72の外部に漏れ出ることを抑制する。一方、ヘリカルギヤ62の他方向回転時においても、破線の×矢印のように、ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合い部分に塗布されたグリースが、囲い壁部72の外部に漏れ出ることを抑制する。
【0067】
なお、微小隙間δS4は、第1面SF1と第1バックアップ凸部21dとの間の微小隙間δS1,第2面SF2と一対の第2バックアップ凸部41bとの間の微小隙間δS2およびピニオンギヤ61と固定本体部71との間の微小隙間δS3と略同じ隙間寸法となっている(δS1≒δS2≒δS3≒δS4)。また、一対の囲い壁部72のうちのいずれか一方を削除して、ヘリカルギヤ62の回転方向におけるバックアップ部材70の少なくともいずれか一方側に設けることもできる。この場合においても、単一の囲い壁部72により、グリースが囲い壁部72の外部に漏れ出ることが抑えられる。
【0068】
図7および図8に示されるように、環状壁部73は、ピニオンギヤ61の長手方向において、バックアップ部材70の一方側(図7および図8の右側)に設けられており、環状壁部73の略中心部分には、ピニオンギヤ挿通穴73aが設けられている。ピニオンギヤ挿通穴73aには、ピニオンギヤ61が非接触の状態で回転自在に挿通されており、ピニオンギヤ61とピニオンギヤ挿通穴73aとの間には、微小隙間δS5が形成されている(図8参照)。
【0069】
なお、微小隙間δS5は、ピニオンギヤ61と固定本体部71との間の微小隙間δS3と同じ隙間寸法となっている(δS3=δS5)。
【0070】
このように、ピニオンギヤ61とピニオンギヤ挿通穴73aとの間に微小隙間δS5を形成することで、図10に示されるように、ピニオンギヤ61の一方向回転時において、実線矢印のように移動しようとするグリース(図示せず)が、環状壁部73を越えて当該環状壁部73の外部に漏れ出ること(実線の×矢印参照)を抑制する。そして、ピニオンギヤ61の一方向回転時に環状壁部73の部分に追いやられたグリースは、ピニオンギヤ61の他方向回転時において、破線の○矢印のようにピニオンギヤ61の長手方向中央部に向けて戻される。なお、環状壁部73は、本発明における第1グリース漏れ防止壁に相当する。
【0071】
ここで、本実施の形態では、減速機構付モータ10は、ワイパ装置の駆動源に用いられるものである。したがって、ワイパ部材(図示せず)を揺動させる際に、ピニオンギヤ61およびヘリカルギヤ62は、それぞれ所定の周期で正逆方向に回転される。よって、図10に示されるように、ピニオンギヤ61およびヘリカルギヤ62の一方向回転(正回転)および他方向回転(逆回転)の繰り返しにより、グリースはバックアップ部材70の内側において、ピニオンギヤ61の軸方向に行き来する。つまり、ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合い部分に、長期に亘りグリースを保持させることが可能となっている。
【0072】
なお、バックアップ部材70をバックアップ部材収容部22aに収容し、かつ一対のバックアップ部材側傾斜面71bを一対のケース側傾斜面22cにそれぞれ突き合わせた状態において、環状壁部73は、ギヤケース20に設けられた軸受部材収容部21cの開口部に入り込んでいる(図1図4および図10参照)。これにより、ギヤケース20の内部で、バックアップ部材70ががたつくことが抑制される。
【0073】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、ギヤケース20におけるピニオンギヤ61のヘリカルギヤ62側とは反対側に、ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合いを保持するバックアップ部材70を設けたので、大きな外力が出力軸63に付加された場合でも、ギヤ同士の噛み合い(ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合い)が外れることを抑制することができる。
【0074】
よって、ピニオンギヤ61およびヘリカルギヤ62(減速機構60)の損傷を、長期に亘って防止することができ、ひいては減速機構付モータ10の長寿命化を図ることが可能となる。言い換えれば、本実施の形態では、減速機構付モータ10の長寿命化が図れるため、減速機構付モータ10の製造エネルギーを省力化することができ、ひいては国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)および目標13(気候変動に具体的な対策を)を達成することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、ピニオンギヤ61とバックアップ部材70の固定本体部71との間に微小隙間δS3を設けたので、出力軸63に大きな外力が付加されない減速機構付モータ10の「通常動作時」において、ピニオンギヤ61をバックアップ部材70に対して非接触の状態でスムーズに回転させることができる。よって、減速機構付モータ10からの異音の発生等が効果的に抑えられ、電気自動車等の静粛性が求められる車両にも適用することが可能となる。
【0076】
さらに、本実施の形態によれば、ギヤケース20は、出力軸63を支持するボス部21aと、バックアップ部材70を支持するバックアップ部材収容部22aと、を備えているので、出力軸63およびバックアップ部材70の位置を、互いに精度良くする配置することができる。よって、ピニオンギヤ61をバックアップ部材70に対して非接触の状態でスムーズに回転可能としつつ、ピニオンギヤ61と固定本体部71との間の微小隙間δS3を詰めることができ、減速機構付モータ10が無用に大型化することを防止できる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、バックアップ部材70およびバックアップ部材収容部22aは、バックアップ部材70のバックアップ部材収容部22aに対する位置決めを行う一対のバックアップ部材側傾斜面71bおよび一対のケース側傾斜面22cをそれぞれ備えている。したがって、バックアップ部材70をバックアップ部材収容部22aに装着する際に、一対のバックアップ部材側傾斜面71bが、一対のケース側傾斜面22cに突き当てられて、バックアップ部材70をバックアップ部材収容部22aの規定位置に配置(センタリング)することができる。よって、減速機構付モータ10を容易に組み立てることが可能となる。
【0078】
さらに、本実施の形態によれば、回転軸53および出力軸63が互いに平行に設けられ、ピニオンギヤ61は1つの螺旋状歯61aを有し、ヘリカルギヤ62は1つの螺旋状歯61aが噛み合わされる斜歯62cを備えている。これにより、減速機構60をコンパクトにしつつ、大きな減速比を得ることが可能となる。よって、減速機構付モータ10の小型化を実現して、軽自動車等の小型車両にも容易に適用可能となる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、バックアップ部材70を、少なくともピニオンギヤ61の長手方向中央部に配置されるようにもできる。つまり、図10に示されるように、二点鎖線で囲った網掛け部分を削除することもできる。その場合、バックアップ部材70の軽量化を図ることができ、かつバックアップ部材70の肉厚の部分を少なくして、当該バックアップ部材70(射出成形品)の成形精度を向上させることができる。
【0080】
さらに、本実施の形態によれば、ピニオンギヤ61の長手方向におけるバックアップ部材70の中央部に、バックアップ部材70をギヤケース20に固定するための雌ねじ部71aが設けられている。したがって、ピニオンギヤ61が湾曲した場合において、固定本体部71の最もがたつき難い部分が押圧され、ひいてはピニオンギヤ61が繰り返し湾曲するような場合であっても、バックアップ部材70はギヤケース20に対してがたつくことなく、ピニオンギヤ61を支持することができる。よって、バックアップ部材70が早期に損傷したりすること等を防止できる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、ピニオンギヤ61の長手方向におけるバックアップ部材70の一方側(図7および図8の右側)に、ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との間に塗布されたグリースの漏れを防止する環状壁部73が設けられている。したがって、図10に示されるように、ピニオンギヤ61の一方向回転時において、実線矢印のように移動しようとするグリースが、環状壁部73を越えて当該環状壁部73の外部に漏れ出ることを抑制できる。よって、ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合い部分に、長期に亘りグリースを保持させることが可能となり、ひいては減速機構付モータ10を長期に亘りスムーズに動作させることができる。
【0082】
さらに、本実施の形態によれば、ヘリカルギヤ62の回転方向におけるバックアップ部材70の両側に、ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との間に塗布されたグリースの漏れを防止する一対の囲い壁部72が設けられている。したがって、図11に示されるように、ヘリカルギヤ62の一方向回転時および他方向回転時において、ピニオンギヤ61とヘリカルギヤ62との噛み合い部分に塗布されたグリースが、囲い壁部72の外部に漏れ出ることを抑制できる。これによっても、減速機構付モータ10を長期に亘りスムーズに動作させることが可能となる。
【0083】
また、本実施の形態によれば、ギヤケース20は、当該ギヤケース20に対してヘリカルギヤ62が傾斜することを抑制する第1バックアップ凸部21dおよび第2バックアップ凸部41bを備えている。したがって、出力軸63に大きな外力が付加されたときに、ヘリカルギヤ62が傾斜することを抑制することができ、ひいてはプラスチック製のヘリカルギヤ62が早期に損傷すること等を防止して、減速機構付モータ10の長寿命化を図ることができる。
【0084】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0085】
図12は、実施の形態2(軸受ホルダ)を説明する斜視図を示している。
【0086】
図12に示されるように、実施の形態2の軸受ホルダ80は、実施の形態1の軸受ホルダ40(図3参照)に比して、ホルダ本体41の挿通孔41dの周囲で、かつ位置決め凸部41a側に、環状台部81を設けた点が異なっている。また、一対の第2バックアップ凸部(傾斜抑制部)82を、環状台部81に接続するように延在させた点も異なっている。
【0087】
環状台部81は、減速機構付モータ10を組み立てた状態(図1参照)で、バックアップ部材70(囲い壁部72)の長手方向他側(図1の下側)と対向する部分となっている。これにより、環状台部81においても、バックアップ部材70の環状壁部73(図7および図8参照)と同様に、グリースが、環状台部81を越えて当該環状台部81の外部に漏れ出ることを抑制する。
【0088】
以上のように形成された実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態2では、軸受ホルダ80に環状台部81を設けたので、グリースがブラシレスモータ50に到達することが抑えられる。よって、漏れ出たグリースがブラシレスモータ50の動作に悪影響を与えることを抑制できる。さらには、一対の第2バックアップ凸部82を、環状台部81に接続するように延在させているので、ヘリカルギヤ62が傾斜されることを、より抑制することが可能となる。
【0089】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0090】
図13は、実施の形態3(バックアップ部材)を説明する斜視図を示している。
【0091】
図13に示されるように、実施の形態3のバックアップ部材90は、実施の形態1のバックアップ部材70(図7および図8参照)に比して、ピニオンギヤ61の長手方向において、バックアップ部材90の他方側(図7および図8の右側に相当)にも、他の環状壁部(第1グリース漏れ防止壁)91を設けた点が異なっている。なお、他の環状壁部91にも、環状壁部73と同様のピニオンギヤ挿通穴73aが設けられている。そして、他の環状壁部91は、一対の囲い壁部72の長手方向において、環状壁部73と対向している。
【0092】
以上のように形成された実施の形態3においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態3では、バックアップ部材70の他方側(ブラシレスモータ50側)にも、他の環状壁部91が設けられているので、上述した実施の形態2と同様に、グリースがブラシレスモータ50に到達することが抑えられる。よって、漏れ出たグリースがブラシレスモータ50の動作に悪影響を与えることを抑制できる。
【0093】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態では、減速機構付モータ10を、車両に搭載されるワイパ装置の駆動源に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、パワーウィンドウ装置やサンルーフ装置等の他の駆動源にも適用することができる。
【0094】
また、上記各実施の形態では、ブラシレスモータ50を備えた減速機構付モータ10を示したが、本発明はこれに限らず、ブラシ付きモータをモータ部として採用しても良い。
【0095】
その他、上記各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記各実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0096】
10:減速機構付モータ,11:ハウジング,12:第1センサ基板,12a:ホールセンサ,13:第2センサ基板,13a:MRセンサ,14:軸受部材,15:Oリング,16:止め輪,20:ギヤケース,21:底壁部,21a:ボス部(出力軸支持部),21b:補強リブ,21c:軸受部材収容部,21d:第1バックアップ凸部(傾斜抑制部),22:側壁部,22a:バックアップ部材収容部(噛合保持部材支持部),22b:ねじ穴,22c:ケース側傾斜面(テーパ面),23:軸受ホルダ装着部,23a:軸受ホルダ位置決め凹部,30:カバー部材,31:基板保持部,31a:挿通穴,32:モータ収容部,32a:軸孔,40:軸受ホルダ,41:ホルダ本体,41a:位置決め凸部,41b:第2バックアップ凸部(傾斜抑制部),41c:ねじ穴,41d:挿通孔,42:サブホルダ,50:ブラシレスモータ(モータ部),51:ステータコア,51a:コイル,52:ロータ,53:回転軸,54:ロータ本体,60:減速機構(減速機構部),61:ピニオンギヤ(第1ギヤ),61a:螺旋状歯(歯),62:ヘリカルギヤ(第2ギヤ),62a:ギヤ本体,62b:ギヤ形成部,62c:斜歯,62d:噛合凹部,63:出力軸,70:バックアップ部材(噛合保持部材),71:固定本体部,71a:雌ねじ部(固定部),71b:バックアップ部材側傾斜面(テーパ面),72:囲い壁部(第2グリース漏れ防止壁),72a:傾斜面,73:環状壁部(第1グリース漏れ防止壁),73a:ピニオンギヤ挿通穴,80:軸受ホルダ,81:環状台部,82:第2バックアップ凸部(傾斜抑制部),90:バックアップ部材,91:他の環状壁部(第1グリース漏れ防止壁),BR:軸受部材,BR1:第1ボールベアリング,BR2:第2ボールベアリング,BS:ベース部材,CC:コネクタ接続部,CN:外部コネクタ,MG:永久磁石,SF1:第1面,SF2:第2面,SM:センサマグネット,SP:スペース,δS1:微小隙間,δS2:微小隙間,δS3:微小隙間(隙間),δS4:微小隙間,δS5:微小隙間
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