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特開2023-118144次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118144
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20230818BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20230818BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20230818BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20230818BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230818BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
A61L9/14
A61L9/01 E
C25B1/26 C
C25B9/00 C
C25B15/08 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020913
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】植田 充彦
【テーマコード(参考)】
4C180
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CB01
4C180EA58X
4C180HH02
4D061DA03
4D061DA04
4D061DB10
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB13
4D061EB16
4D061EB20
4D061EB30
4D061EB33
4D061EB37
4D061EB39
4D061GA19
4D061GB21
4D061GB22
4D061GC02
4D061GC05
4D061GC15
4K021AB07
4K021BA02
4K021BA03
4K021DB36
4K021DC07
4K021DC13
(57)【要約】
【課題】水道水に含まれる陰イオン成分を低減しつつ、陰イオン成分を低減した水道水から生成する塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を供給する技術を提供する。
【解決手段】次亜塩素酸水供給装置(1)は、第一有隔膜電解流路(15,16)に供給される水道水に通電して水道水に含まれる陰イオン成分を連続的に分離する水道水処理ユニット(2)と、水道水処理ユニット(2)から送出される水道水溶液に塩成分を加えた塩水を供給可能に構成された電解流路と、電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路(34)に供給される塩水から次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部(3a)及び電解流路の後段を構成する第二有隔膜電解流路(35,36)のそれぞれに次亜塩素酸水生成部(3a)で生成した次亜塩素酸水に通電して連続的に処理する次亜塩素酸水処理部(3b)を有する次亜塩素酸水生成ユニット(3)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行状の第一有隔膜電解流路内に供給される水道水から一対の第一陰陽電極間への通電によって前記水道水に含まれる陰イオン成分を連続的に分離する水道水処理ユニットと、
前記水道水処理ユニットの陰電極側における水道水電解流路から送出される水道水溶液に塩成分を加えて塩水を生成する塩水生成ユニットと、
前記塩水生成ユニットで生成した前記塩水を供給可能に構成された蛇行状の電解流路と、前記電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路内に供給される前記塩水から一対の第二陰陽電極間への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部と、前記電解流路の後段を構成する第二有隔膜電解流路内のそれぞれに前記次亜塩素酸水生成部から供給される前記次亜塩素酸水を前記一対の第二陰陽電極間への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理部とを有する次亜塩素酸水生成ユニットと、
を備え、
前記次亜塩素酸水処理部の陽電極側における前記電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する、次亜塩素酸水供給装置。
【請求項2】
前記第一有隔膜電解流路は、第一陰電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一陰電極側流路と、前記第一陰電極側流路と対向して並設され、第一陽電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一陽電極側流路と、前記第一陰電極側流路と前記第一陽電極側流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陰イオン成分を透過させる第一隔膜と、を有して構成され、
前記一対の第一陰陽電極は、第一陰電極側スペーサによって前記第一陰電極側流路に前記第一陰電極を露出させるとともに、第一陽電極側スペーサによって前記第一陽電極側流路に前記第一陽電極を露出させることで蛇行状に構成され、
前記第一陰電極側流路及び前記第一陽電極側流路には、前記水道水がいずれも同じ方向に流通するように構成されている、請求項1に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項3】
平面状の前記第一陰電極と、前記第一陰電極と対向する平面状の前記第一隔膜と、前記第一陰電極と前記第一隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第一陰電極側流路内に前記第一陰電極及び前記第一隔膜を露出させる前記第一陰電極側スペーサとを有し、
前記第一陰電極側流路は、流路に沿って露出する前記第一陰電極及び前記第一隔膜と、前記第一陰電極側スペーサとにより構成されており、
平面状の前記第一陽電極と、前記第一陽電極と対向する平面状の前記第一隔膜と、前記第一陽電極と前記第一隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第一陽電極側流路内に前記第一陽電極及び前記第一隔膜を露出させる前記第一陽電極側スペーサとを有し、
前記第一陽電極側流路は、流路に沿って露出する前記第一陽電極及び前記第一隔膜と、前記第一陽電極側スペーサとにより構成されている、請求項2に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項4】
前記無隔膜電解流路は、平面状の第二陽電極と、前記第二陽電極と対向する平面状の第二陰電極と、前記第二陽電極と前記第二陰電極との間に設けられた陰陽電極間スペーサとを有して構成され、
前記一対の第二陰陽電極は、前記陰陽電極間スペーサによって前記無隔膜電解流路に前記第二陽電極及び前記第二陰電極を露出させることで蛇行状に構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項5】
前記第二有隔膜電解流路は、前記第二陽電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二陽電極側流路と、
前記第二陽電極側流路と対向して並設され、前記第二陰電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二陰電極側流路と、
前記第二陽電極側流路と前記第二陰電極側流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオン成分を透過させる第二隔膜と、を有して構成され、
前記一対の第二陰陽電極は、第二陽電極側スペーサによって前記第二陽電極側流路に前記第二陽電極を露出させるとともに、第二陰電極側スペーサによって前記第二陰電極側流路に前記第二陰電極を露出させることで蛇行状に構成され、
前記第二陽電極側流路及び前記第二陰電極側流路には、前記次亜塩素酸水生成部から供給される前記次亜塩素酸水がいずれも同じ方向に流通するように構成されている、請求項4に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項6】
平面状の前記第二陽電極と、前記第二陽電極と対向する平面状の前記第二隔膜と、前記第二陽電極と前記第二隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第二陽電極側流路内に前記第二陽電極及び前記第二隔膜を露出させる前記第二陽電極側スペーサとを有し、
前記第二陽電極側流路は、流路に沿って露出する前記第二陽電極及び前記第二隔膜と、前記第二陽電極側スペーサとにより構成されており、
平面状の前記第二陰電極と、前記第二陰電極と対向する平面状の前記第二隔膜と、前記第二陰電極と前記第二隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第二陰電極側流路内に前記第二陰電極及び前記第二隔膜を露出させる前記第二陰電極側スペーサとを有し、
前記第二陰電極側流路は、流路に沿って露出する前記第二陰電極及び前記第二隔膜と、前記第二陰電極側スペーサとにより構成されている、請求項5に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項7】
前記陰陽電極間スペーサは、前記第二陽電極側スペーサと前記第二陰電極側スペーサを重ね合わせて構成されている、請求項5または6に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項8】
前記水道水処理ユニットの陽電極側及び陰電極側のそれぞれの入口に設けられ、前記第一有隔膜電解流路に前記水道水を供給する第一陰電極側供給ポンプ及び第一陽電極側供給ポンプと、
前記次亜塩素酸水生成ユニットの陽電極側及び陰電極側のそれぞれの出口に設けられ、前記無隔膜電解流路に前記塩水を供給するとともに、前記第二有隔膜電解流路に前記次亜塩素酸水生成部において電解生成した前記次亜塩素酸水を供給する第二陽電極側供給ポンプ及び第二陰電極側供給ポンプと、
を備え、
前記第一陰電極側供給ポンプ及び前記第一陽電極側供給ポンプは、前記水道水を、前記第一陰電極側流路及び前記第一陽電極側流路にそれぞれ一定流速で供給し、
前記第二陽電極側供給ポンプ及び前記第二陰電極側供給ポンプは、前記次亜塩素酸水生成部において電解生成した前記次亜塩素酸水を前記第二陽電極側流路及び前記第二陰電極側流路にそれぞれ一定流速で供給する、請求項5~7のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項9】
前記水道水処理ユニットの陽電極側における前記水道水電解流路から送出される水道水溶液を貯留する排水側タンクを備え、
前記排水側タンクは、前記次亜塩素酸水生成ユニットの陰電極側における前記電解流路から送出される次亜塩素酸水が混合されるように接続されている、請求項1~8のいずれかに一項に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水供給装置と、
前記外部として、前記次亜塩素酸水処理部の陽電極側における前記電解流路から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置と、
を備える、空間除菌システム。
【請求項11】
前記所定の空間には、前記所定の空間内で発生する水を排出する排水管が設けられており、
前記排水管は、前記水道水処理ユニットの陽電極側における前記水道水電解流路から送出される水道水溶液と、前記次亜塩素酸水処理部の陰電極側における前記電解流路から送出される次亜塩素酸水とが混合されて導入されるように構成されている、請求項10に記載の空間除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩水の電気分解によって生成した次亜塩素酸水の残留成分となるNaClO及びNaOHを抑制した次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塩水の電気分解をすることで、NaClOを主成分としHClO及びNaOHを含む次亜塩素酸水が生成される。次亜塩素酸水は弱酸性側にすることで、除菌力が向上することが知られており、イオン透過能を有する隔膜を使用して生成されるpH弱酸性側に制御する技術が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-164392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、pHが弱酸性に調整するだけでは、残留成分となるNaClO及びNaOHの抑制が十分にできているとはいえない。NaClO及びNaOHは、次亜塩素酸水が揮発後も固形分として表面に残留する成分で、この残留成分が潮解及び水に再溶解することで金属の腐食を促進する要因となる。そのため、NaClO及びNaOHなどの成分を多く含む次亜塩素酸水をミスト噴霧すると、微小な残留成分が蓄積されるため、長期間使用時の腐食が懸念される。
【0005】
また、塩水を生成する原水に水道水を使用した場合、水道水に含まれる陰イオンにより、電気分解によって生成される次亜塩素酸水の濃度ばらつき及び特性ばらつきが生じることが懸念される。さらに、水道水に含まれる陽イオンも揮発後に固形分として表面に残留する成分であり、この残留成分もまた金属の腐食を促進する要因となるため、同様に長時間使用時の腐食が懸念される。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、水道水に含まれる陰イオン成分を低減しつつ、陰イオン成分を低減した水道水から生成する塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を供給することが可能な次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、蛇行状の第一有隔膜電解流路内に供給される水道水から一対の第一陰陽電極間への通電によって水道水に含まれる陰イオン成分を連続的に分離する水道水処理ユニットと、水道水処理ユニットの陰電極側における水道水電解流路から送出される水道水溶液に塩成分を加えて塩水を生成する塩水生成ユニットと、塩水生成ユニットで生成した塩水を供給可能に構成された蛇行状の電解流路と、電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路内に供給される塩水から一対の第二陰陽電極間への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部と、電解流路の後段を構成する第二有隔膜電解流路内のそれぞれに次亜塩素酸水生成部から供給される次亜塩素酸水を一対の第二陰陽電極間への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理部と、を備え、次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する構造とする。
【0008】
また、本発明に係る空間除菌システムは、上述の次亜塩素酸水供給装置と、外部として、次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水道水に含まれる陰イオン成分を低減しつつ、陰イオン成分を低減した水道水から生成する塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を供給することが可能な次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置の断面イメージ図である。
図2図2は、水道水処理ユニットの概略図である。
図3図3は、水道水処理ユニットの分解斜視図である。
図4図4は、水道水処理ユニットの垂直方向の断面イメージ図である。
図5図5は、水道水処理ユニットの水平方向の断面イメージ図である。
図6図6は、次亜塩素酸水生成ユニットの概略図である。
図7図7は、次亜塩素酸水生成ユニットの分解斜視図である。
図8図8は、次亜塩素酸水生成ユニットの垂直方向の断面イメージ図である。
図9図9は、次亜塩素酸水生成ユニットの次亜塩素酸水生成部の水平方向の断面イメージ図である。
図10図10は、次亜塩素酸水生成ユニットの次亜塩素酸水処理部の水平方向の断面イメージ図である。
図11図11は、次亜塩素酸水供給装置を流通する次亜塩素酸水の特性評価を行う実験イメージ図である。
図12図12は、次亜塩素酸水供給装置を流通した次亜塩素酸水の特性を示す図である。
図13図13は、本発明の実施の形態2に係る、次亜塩素酸水供給装置を用いた空間除菌システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、蛇行状の第一有隔膜電解流路内に供給される水道水を一対の第一陰陽電極間への通電によって水道水に含まれる陰イオン成分を連続的に分離する水道水処理ユニットと、水道水処理ユニットの陰電極側における水道水電解流路から送出される水道水溶液に塩成分を加えて塩水を生成する塩水生成ユニットと、塩水生成ユニットで生成した塩水を供給可能に構成された蛇行状の電解流路と、電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路内に供給される塩水から一対の第二陰陽電極間への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部と、電解流路の後段を構成する第二有隔膜電解流路内のそれぞれに次亜塩素酸水生成部から供給される次亜塩素酸水を一対の第二陰陽電極間への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理部とを有する次亜塩素酸水生成ユニットと、を備え、次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する構造とする。
【0012】
こうした構成によれば、水道水に含まれる陰イオン成分を低減しつつ、陰イオン成分を低減した水道水から生成する塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を供給することが可能な次亜塩素酸水供給装置とすることができる。より詳細には、次亜塩素酸水供給装置では、水道水が水道水処理ユニットに供給され、水道水処理ユニットの陰電極側における水道水電解流路から送出される水道水溶液に塩成分を加えた塩水が次亜塩素酸水生成ユニットに供給されるので、次亜塩素酸水生成ユニットは、陰イオン成分が分離低減された塩水の電気分解によって次亜塩素酸水を生成することができる。これにより、生成される次亜塩素酸水は、水道水に含まれる陰イオン成分に起因した次亜塩素酸水の濃度ばらつき及び特性ばらつきが抑制される。一方、次亜塩素酸水生成ユニットでは、電解流路に陰イオン成分が分離低減された塩水を供給することによって、次亜塩素酸水生成部において無隔膜電解流路内で塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成し、さらに次亜塩素酸水処理部において第二有隔膜電解流路内に無隔膜電解流路で生成した次亜塩素酸水を流通させて、陽電極側から残留成分の要因となる陽イオン成分を分離低減した次亜塩素酸水として抽出することができる。これにより、陽電極側から抽出した次亜塩素軟水を外部に供給した場合には、次亜塩素軟水に含まれる残留成分に起因して生じる金属腐食の発生などを抑制することができる。
また、次亜塩素酸水生成部及び次亜塩素酸水処理部に共通の第二陰陽電極を使用し、無隔膜電解流路と第二有隔膜電解流路が第二陰陽電極間の電圧を印加された状態で直接的につながっている。これにより、無隔膜電解流路内にて、陽電極側近傍には陰イオン成分が多く存在し、陰電極近傍には陽イオン成分が多く存在するような分布を持った状態で、第二有隔膜電解流路に流入するため、陽電極側には残留成分の要因となる陽イオン成分をあらかじめ減少させた状態で、電気透析処理を開始することができる。
【0013】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、第一有隔膜電解流路は、第一陰電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一陰電極側流路と、第一陰電極側流路と対向して並設され、第一陽電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一陽電極側流路と、第一陰電極側流路と第一陽電極側流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陰イオン成分を透過させる第一隔膜と、を有して構成される。一対の第一陰陽電極は、第一陰電極側スペーサによって第一陰電極側流路に第一陰電極を露出させるとともに、第一陽電極側スペーサによって第一陽電極側流路に第一陽電極を露出させることで蛇行状に構成される。第一陰電極側流路及び第一陽電極側流路には、水道水がいずれも同じ方向に流通するように構成されている。こうした構成によれば、水道水処理ユニットは、水道水を、第一隔膜を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、水道水に含まれる陰イオン成分を連続的に分離低減することができる。このため、陰イオン成分が分離低減された水道水溶液として、水道水処理ユニットの陰電極側における水道水電解流路から送出される水道水溶液を塩水生成ユニットに安定して供給することができる。
【0014】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、平面状の第一陰電極と、第一陰電極と対向する平面状の第一隔膜と、第一陰電極と第一隔膜との間に設けられ、流路に沿って第一陰電極側流路内に第一陰電極及び第一隔膜を露出させる第一陰電極側スペーサとを有し、第一陰電極側流路は、流路に沿って露出する第一陰電極及び第一隔膜と、第一陰電極側スペーサとにより構成されている。平面状の第一陽電極と、第一陽電極と対向する平面状の第一隔膜と、第一陽電極と第一隔膜との間に設けられ、流路に沿って第一陽電極側流路内に第一陽電極及び第一隔膜を露出させる第一陽電極側スペーサと、を有し、第一陽電極側流路は、流路に沿って露出する第一陽電極及び第一隔膜と、第一陽電極側スペーサとにより構成されている。こうした構成によれば、第一陰電極側スペーサに形成される流路形状、及び第一陽電極側スペーサに形成される流路形状により、水道水に含まれる陰イオン成分を分離低減する能力を変化させることができるので、水道水から陰イオン成分を分離低減する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0015】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、無隔膜電解流路は、平面状の第二陽電極と、第二陽電極と対向する平面状の第二陰電極と、第二陽電極と第二陰電極との間に設けられた陰陽電極間スペーサとを有して構成される。一対の第二陰陽電極は、陰陽電極間スペーサによって無隔膜電解流路に第二陽電極及び第二陰電極を露出させることで蛇行状に構成されている。こうした構成によれば、陰陽電極間スペーサに形成される流路形状により、塩水を電気分解する能力を変化させることができるので、塩水を電気分解する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0016】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、第二有隔膜電解流路は、第二陽電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二陽電極側流路と、第二陽電極側流路と対向して並設され、第二陰電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二陰電極側流路と、第二陽電極側流路と第二陰電極側流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる第二隔膜と、を有して構成される。一対の第二陰陽電極は、第二陽電極側スペーサによって第二陽電極側流路に第二陽電極を露出させるとともに、第二陰電極側スペーサによって第二陰電極側流路に第二陰電極を露出させることで蛇行状に構成される。第二陽電極側流路及び第二陰電極側流路には、次亜塩素酸水生成部から供給される次亜塩素酸水がいずれも同じ方向に流通するように構成されている。こうした構成によれば、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を、第二隔膜を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオン成分を連続的に分離低減することができる。このため、残留成分が低減された次亜塩素酸水として、次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に安定して供給することができる。
【0017】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、平面状の第二陽電極と、第二陽電極と対向する平面状の第二隔膜と、第二陽電極と第二隔膜との間に設けられ、流路に沿って第二陽電極側流路内に第二陽電極及び第二隔膜を露出させる第二陽電極側スペーサとを有し、第二陽電極側流路は、流路に沿って露出する第二陽電極及び第二隔膜と、第二陽電極側スペーサとにより構成されている。平面状の第二陰電極と、第二陰電極と対向する平面状の第二隔膜と、第二陰電極と第二隔膜との間に設けられ、流路に沿って第二陰電極側流路内に第二陰電極及び第二隔膜を露出させる第二陰電極側スペーサと、を有し、第二陰電極側流路は、流路に沿って露出する第二陰電極及び第二隔膜と、第二陰電極側スペーサとにより構成されている。こうした構成によれば、第二陽電極側スペーサに形成される流路形状、及び第二陰電極側スペーサに形成される流路形状により、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオン成分を分離低減する能力を変化させることができるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオン成分を分離低減する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0018】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、陰陽電極間スペーサは、第二陽電極側スペーサと第二陰電極側スペーサを重ね合わせて構成されている。こうした構成によれば、構造を簡易化できるとともに、無隔膜電解流路と第二有隔膜電解流路との間の境界部による液漏れ及び流路内イオン分布の乱れを抑制して、流通させることができる。
【0019】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、水道水処理ユニットの陽電極側及び陰電極側のそれぞれの入口に設けられ、第一有隔膜電解流路に水道水を供給する第一陰電極側供給ポンプ及び第一陽電極側供給ポンプと、次亜塩素酸水生成ユニットの陽電極側及び陰電極側のそれぞれの出口に設けられ、無隔膜電解流路に塩水を供給するとともに、第二有隔膜電解流路に次亜塩素酸水生成部において電解生成した次亜塩素酸水を供給する第二陽電極側供給ポンプ及び第二陰電極側供給ポンプと、を備える。第一陰電極側供給ポンプ及び第一陽電極側供給ポンプは、水道水を、第一陰電極側流路及び第一陽電極側流路にそれぞれ一定流速で供給する。第二陽電極側供給ポンプ及び第二陰電極側供給ポンプは、次亜塩素酸水生成部において電解生成した次亜塩素酸水を第二陽電極側流路及び第二陰電極側流路にそれぞれ一定流速で供給することが好ましい。このようにすることで、第一有隔膜電解流路では、第一陰電極側流路内にて電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、第一陽電極側流路内にて電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、第一陰電極側流路における水道水に含まれる陰イオン成分が分離希薄化する濃度、及び第一陽電極側流路における水道水に含まれる陰イオン成分が濃縮化する濃度を安定にすることができる。一方、第二有隔膜電解流路では、第二陽電極側流路内にて電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、第二陰電極側流路内にて電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、第二陽電極側流路における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオン成分が分離希薄化する濃度、及び第二陰電極側流路における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオン成分が濃縮化する濃度を安定にすることができる。
【0020】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、水道水処理ユニットの陽電極側における水道水電解流路から送出される水道水溶液を貯留する排水側タンクを備える。排水側タンクは、次亜塩素酸水生成ユニットの陰電極側における電解流路から送出される溶液が混合されるように接続されている。こうした構成によれば、水道水処理ユニットの陽電極側における水道水電解流路から送出されるpHが酸性の水道水溶液と、次亜塩素酸水生成ユニットの陰電極側における電解流路から送出されるpHがアルカリ性の次亜塩素酸水とを混合して中和することとなり、混合した溶液はpHがアルカリ性となるが、次亜塩素酸水生成ユニットの陰電極側における電解流路から送出されるアルカリ溶液のpHより中性側に近づけた状態で排液することができる。
【0021】
本発明に係る空間除菌システムは、上述した次亜塩素酸水供給装置と、外部として、次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置と、を備える構造とする。こうした構成によれば、次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水のミストを所定の空間に放出しても、所定の空間に残る残留成分が抑制される。つまり、次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水が、塩水の電気分解によって生じる残留成分、及び水道水に含まれる陽イオン成分による残留成分が低減された次亜塩素酸水であるため、所定の空間を除菌する際に、除菌性能を保ちながら、残留成分に起因する金属腐食の発生を抑制することができる。
【0022】
また、本発明に係る空間除菌システムでは、所定の空間には、所定の空間内で発生する水を排出する排水管が設けられており、排水管は、水道水処理ユニットの陽電極側における水道水電解流路から送出される水道水溶液と、次亜塩素酸水処理部の陰電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水とが混合されて導入されるように構成されている。こうした構成によれば、次亜塩素酸水処理部の陰電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水が、水道水処理ユニットの陽電極側における水道水電解流路から送出されるpHが酸性の水道水溶液によってある程度中和されるものの、排水管に、残留成分の要因となる陽イオン成分が濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄性の高い次亜塩素酸水として導入することができる。このため、排出管に導入される次亜塩素酸水によって排水管内を洗浄することができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0024】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1の断面イメージ図である。
【0025】
次亜塩素酸水供給装置1は、水道水と塩成分を供給して電気分解及び電気透析を行い、生成した次亜塩素酸水に含まれる残留成分(塩成分及び水道水に含まれるNaイオン、Ca2+イオン、及びMg2+イオン等の陽イオンを有する成分(以下、陽イオン成分ともいう)、及び水道水に含まれるSO 2-イオン及びNO イオン等の陰イオンを有する成分(以下、陰イオン成分ともいう))を分離低減して供給することができる装置である。
【0026】
具体的には、図1に示すように、次亜塩素酸水供給装置1は、水道水処理ユニット2と、次亜塩素酸水生成ユニット3と、第一陰電極側供給ポンプ18と、第一陽電極側供給ポンプ19と、塩水生成ユニット20と、排水側タンク23と、第二陽電極側供給ポンプ38と、第二陰電極側供給ポンプ39と、を備える。
【0027】
<水道水処理ユニット>
図1図4を参照して、水道水処理ユニット2について説明する。図2は、水道水処理ユニット2の概略図である。図3は、水道水処理ユニット2の分解斜視図である。図4は、水道水処理ユニット2の垂直方向の断面イメージ図である。
【0028】
水道水処理ユニット2は、外部から水道水を供給して、水道水に含まれる陰イオン成分を分離低減するユニットである。
【0029】
水道水処理ユニット2は、第一陰電極4と、第一陽電極5と、第一隔膜6と、第一陰電極側スペーサ7と、第一陽電極側スペーサ8と、第一陰電極用パッキン9aと、第一陽電極用パッキン9bと、第一陰電極側槽筐体側面10aと、第一陽電極側槽筐体側面10bと、第一陰電極溶液供給口11と、第一陰電極溶液抽出口12と、第一陽電極溶液供給口13と、第一陽電極溶液抽出口14と、第一陰電極側流路15と、第一陽電極側流路16と、電気透析電源17と、を備える。
【0030】
第一陰電極4は、平面状の電極板である。第一陰電極4は、第一陰電極側スペーサ7によって第一陰電極側流路15の流路に沿って電極板の表面が露出している。第一陰電極4は、電気透析電源17によって電流が流れると陰極として機能する電極である。第一陰電極4は、第一陽電極5と対向して略平行に配置されている。第一陰電極4は、チタン基材の表面に白金を含む触媒を形成する。白金を含む触媒は、少なくとも第一陰電極側流路15の流路に沿って露出される第一陰電極4の面に形成されている。
【0031】
第一陽電極5は、平面状の電極板である。第一陽電極5は、第一陽電極側スペーサ8によって第一陽電極側流路16の流路に沿って電極板の表面が露出している。第一陽電極5は、電気透析電源17によって電流が流れると陽極として機能する電極である。第一陽電極5は、第一陰電極4と対向して略平行に配置されている。第一陽電極5は、チタン基材の表面に白金を含む触媒を形成する。白金を含む触媒は、少なくとも第一陽電極側流路16の流路に沿って露出される第一陽電極5の面に形成されている。
【0032】
また、第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16に沿って露出させて電気透析を行う領域の第一陰電極4と第一陽電極5は、同形状とし、対向距離の短い方がイオンの移動をさせやすい。対向距離が短いと流路を流れる流量が少なくなるため、必要な水道水処理量を確保した上で、対向距離を10mm以下程度に短くすることが望ましい。
【0033】
そして、第一陰電極4及び第一陽電極5は、一対の対向電極として陰陽電極(以下、第一陰陽電極ともいう)を構成する。
【0034】
第一隔膜6は、平面状の薄膜である。第一隔膜6は、第一陰電極4及び第一陽電極5と対向して略平行に配置されている。第一隔膜6は、第一陰電極側流路15と第一陽電極側流路16とを隔てるように設けている。第一隔膜6は、水道水に含まれるClイオン、SO 2-イオン、及びNO イオンのような陰イオンを移動させることが可能なイオン交換膜(陰イオン交換膜)である。第一隔膜6は、第一陰電極4及び第一陽電極5に電圧を印加することで、第一陽電極5側に陰イオンを移動させることができる。この陰イオン交換膜としては、例えば、アストム社製ネオセプタなどが挙げられる。
【0035】
第一陰電極側スペーサ7は、絶縁性の部材である。第一陰電極側スペーサ7は、第一陰電極4と第一隔膜6との間の距離を所定の間隔に制御する。第一陰電極側スペーサ7は、第一陰電極側スペーサ7の内部に、第一陰電極側流路15を形作る第一陰電極側流路孔15aを有している。第一陰電極側流路孔15aは、第一陰電極側スペーサ7に形成された第一陰電極側流路15を形成する孔のことである。第一陰電極側流路孔15aは、第一陰電極側スペーサ7の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。また、第一陰電極側スペーサ7の表面には、第一陰電極4及び第一隔膜6との密着性をあげるために、第一陰電極側スペーサ7と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。
【0036】
第一陽電極側スペーサ8は、絶縁性の部材である。第一陽電極側スペーサ8は、第一陽電極5と第一隔膜6との間の距離を所定の間隔に制御する。第一陽電極側スペーサ8は、第一陽電極側スペーサ8の内部に、第一陽電極側流路16を形作る第一陽電極側流路孔16aを有している。第一陽電極側流路孔16aは、第一陽電極側スペーサ8に形成された第一陽電極側流路16を形成する孔のことである。第一陽電極側流路孔16aは、第一陽電極側スペーサ8の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。ここで、第一陰電極側流路孔15aと第一陽電極側流路孔16aとは、互いに対向するように配置されている。また、第一陽電極側スペーサ8の表面には、第一陽電極5及び第一隔膜6との密着性をあげるために、第一陽電極側スペーサ8と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。
【0037】
第一陰電極用パッキン9aは、第一陰電極4の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、第一陰電極側スペーサ7と密着して外周方向に、第一陰電極側流路15内の溶液(後述する第一陰電極供給溶液11a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。第一陰電極用パッキン9aの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。第一陰電極用パッキン9aは、第一陰電極4より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて第一陰電極側スペーサ7と第一陰電極側槽筐体側面10aとを密着しながら、第一陰電極4の厚みで保持されることが望ましい。
【0038】
第一陽電極用パッキン9bは、第一陽電極5の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、第一陽電極側スペーサ8と密着して外周方向に、第一陽電極側流路16内の溶液(後述する第一陽電極供給溶液13a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。第一陽電極用パッキン9bの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。第一陽電極用パッキン9bは、第一陽電極5より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて第一陽電極側スペーサ8と第一陽電極側槽筐体側面10bとを密着しながら、第一陽電極5の厚みで保持されることが望ましい。
【0039】
第一陰電極側槽筐体側面10aは、第一陰電極4の外側に直接接触するように配置されている。第一陰電極側槽筐体側面10aは、第一陰電極4の外側への溶液の染み込みを抑制するために、第一陰電極側槽筐体側面10aの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。第一陰電極4の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電気透析の効率向上にもつながる。
【0040】
第一陽電極側槽筐体側面10bは、第一陽電極5の外側に直接接触するように配置されている。第一陽電極側槽筐体側面10bは、第一陽電極5の外側への溶液の染み込みを抑制するために、第一陽電極側槽筐体側面10bの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。第一陽電極5の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電極透析の効率向上にもつながる。
【0041】
第一陰電極溶液供給口11は、電気透析する第一陰電極供給溶液11aを流路内に流すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第一陰電極4の外側から第一陰電極供給溶液11aを供給するため、第一陰電極溶液供給口11は、第一陰電極4より外周の位置に加工されている。
【0042】
第一陰電極供給溶液11aは、水道水である。水道水には、Clイオン、SO 2-イオン、及びNO イオン等の陰イオン成分、さらにNaイオン、Ca2+イオン、及びMg2+イオン等の陽イオン成分が含まれており、地域によって各イオン成分の含有量が異なる。第一陰電極供給溶液11aは、第一陰電極溶液供給口11から第一陰電極側流路15に導入される。
【0043】
第一陰電極溶液抽出口12は、電気透析した第一陰電極抽出溶液12aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第一陰電極4の外側に第一陰電極抽出溶液12aを抽出するため、第一陰電極溶液抽出口12は、第一陰電極4より外周の位置に加工されている。
【0044】
第一陰電極抽出溶液12aは、水道水から水道水に含まれる陰イオン成分を分離低減した水道水溶液であり、水道水に含まれる陽イオン成分は分離低減されずに水道水溶液中に残る。第一陰電極抽出溶液12aは、第一陰電極側流路15から第一陰電極溶液抽出口12に導入される。
【0045】
より詳細には、第一陰電極抽出溶液12aは、第一陰電極供給溶液11aを第一陰電極側流路15に流通させて、第一陰電極供給溶液11aから次亜塩素酸水の濃度ばらつき及び特性ばらつきの要因となる水道水に含まれる陰イオン成分を分離希薄化した水道水溶液である。この水道水溶液のpHはアルカリ性を示す。
【0046】
第一陽電極溶液供給口13は、電気透析する第一陽電極供給溶液13aを流路内に流すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第一陽電極5の外側から第一陽電極供給溶液13aを供給するため、第一陽電極溶液供給口13は、第一陽電極5より外周の位置に加工されている。
【0047】
第一陽電極供給溶液13aは、第一陰電極供給溶液11aと同様の水道水である。第一陽電極供給溶液13aは、第一陽電極溶液供給口13から第一陽電極側流路16に導入される。
【0048】
第一陽電極溶液抽出口14は、電気透析した第一陽電極抽出溶液14aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第一陽電極5の外側に第一陽電極抽出溶液14aを抽出するため、第一陽電極溶液抽出口14は、第一陽電極5より外周の位置に加工されている。
【0049】
第一陽電極抽出溶液14aは、水道水から水道水に含まれる陰イオン成分を分離濃縮した水道水溶液である。第一陽電極抽出溶液14aは、第一陽電極側流路16から第一陽電極溶液抽出口14に導出される。
【0050】
より詳細には、第一陽電極抽出溶液14aは、第一陽電極供給溶液13aを第一陽電極側流路16に流通させて、第一陽電極供給溶液13aから次亜塩素酸水の濃度ばらつき及び特性ばらつきの要因となる水道水に含まれる陰イオン成分を分離濃縮化した水道水溶液である。なお、分離濃縮化すると同時に、水道水に含まれていた塩化物イオン(Clイオン)の電気分解により次亜塩素酸水が生成されるので、この水道水溶液のpHは酸性を示す。
【0051】
ここで、第一陰電極溶液供給口11及び第一陽電極溶液供給口13は、鉛直方向の下方側に配置されることが望ましく、第一陰電極溶液抽出口12及び第一陽電極溶液抽出口14は、鉛直方向の上方側に配置されることが望ましい。流路内の電気透析反応及び電気分解反応により、酸素ガス及び水素ガス等が発生する際に、抽出口が上方に配置されてある方がガスをより効率的に溶液とともに排出することができる。
【0052】
第一陰電極側流路15は、第一陰電極4と第一陰電極側スペーサ7と第一隔膜6とによって囲まれた領域で形成される流路である。第一陰電極側流路15は、第一陰電極側スペーサ7の第一陰電極側流路孔15aによって蛇行して構成されている。より詳細には、第一陰電極側流路15は、水平方向に往復し下から上に陽極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに第一陰電極側流路15の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。第一陰電極側流路15において液の逆流を低減するため、第一陰電極側流路15が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に向かう構造とすることが望ましい。第一陰電極側流路15は、その一方に第一陰電極溶液供給口11が設けられ、他方に第一陰電極溶液抽出口12が設けられており、内部に陰極側溶液である第一陰電極供給溶液11aが流通している。
【0053】
第一陽電極側流路16は、第一陽電極5と第一陽電極側スペーサ8と第一隔膜6によって囲まれた領域で形成される流路である。第一陽電極側流路16は、第一陽電極側スペーサ8の第一陽電極側流路孔16aによって蛇行して構成されている。より詳細には、第一陽電極側流路16は、水平方向に往復し下から上に陰極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに第一陽電極側流路16の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。第一陽電極側流路16において液の逆流を低減するため、第一陽電極側流路16が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に流れる構造とすることが望ましい。第一陽電極側流路16は、その一方に第一陽電極溶液供給口13が設けられ、他方に第一陽電極溶液抽出口14が設けられており、内部に陽極側溶液である第一陽電極供給溶液13aが流通している。
【0054】
第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16は、第一隔膜6を挟んで対称な形状で対向している。つまり、第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16は、第一隔膜6を挟んで互いに対向する蛇行形状で構成されている。このようにして、第一陰電極側流路15と第一陽電極側流路16とは、いわゆる有隔膜電解流路(以下、第一有隔膜電解流路ともいう)を構成している。そして、第一陰電極側流路15内を流通する水道水に含まれる陰イオン成分が第一陽電極側流路16側に移動する。イオン成分の移動量は、印加される電圧電流及び流路内の流速によって制御される。流速は、第一陰電極溶液供給口11の前段に第一陰電極側供給ポンプ18を設置し、第一陽電極溶液供給口13の前段に第一陽電極側供給ポンプ19を設置して制御している。各ポンプは、それぞれ一定流量で制御可能な方式が望ましく、例えばチューブポンプを使用することができる。一定流量で溶液を流すことで、流路内で電気透析及び電気分解する時間を一定に制御できるため、第一陰電極側流路15における水道水に含まれる陰イオン成分が分離希薄化する濃度、及び第一陽電極側流路16における水道水に含まれる陰イオン成分が濃縮化する濃度を安定にすることができる。
【0055】
電気透析電源17は、一対の第一陰陽電極間に通電する直流電源である。より詳細には、電気透析電源17は、第一陰電極4及び第一陽電極5と接続され、第一陰電極4及び第一陽電極5に電流及び電圧を印加することができる直流電源である。電気透析電源17は、一定の電流となるように定電流制御の電源として使用してもよいし、一定の電圧となるように定電圧制御の電源として使用してもよい。
【0056】
第一陰電極側供給ポンプ18は、第一陰電極供給溶液11aを供給する流れを生じさせるポンプである。より詳細には、第一陰電極側供給ポンプ18は、第一陰電極溶液供給口11の前段に設置される。そして、第一陰電極側供給ポンプ18は、第一陰電極溶液供給口11、第一陰電極側流路15、第一陰電極溶液抽出口12、及び塩水生成タンク21の順に流通する各溶液(水道水、第一陰電極供給溶液11a、第一陰電極抽出溶液12a)の流れを生じさせる。この際、第一陰電極側供給ポンプ18は、水道水処理ユニット2を流れる溶液の流速を一定に制御する。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0057】
第一陽電極側供給ポンプ19は、第一陽電極供給溶液13aを供給する流れを生じさせるポンプである。より詳細には、第一陽電極側供給ポンプ19は、第一陽電極溶液供給口13の前段に設置される。そして、第一陽電極側供給ポンプ19は、第一陽電極溶液供給口13、第一陽電極側流路16、第一陽電極溶液抽出口14、及び排水側タンク23の順に流通する各溶液(水道水、第一陽電極供給溶液13a、第一陽電極抽出溶液14a)の流れを生じさせる。この際、第一陽電極側供給ポンプ19は、水道水処理ユニット2を流れる溶液の流速を一定に制御する。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0058】
塩水生成ユニット20は、水道水処理ユニット2の陰電極側における水道水電解流路(第一陰電極側流路15)から送出される水道水溶液に塩成分を加えて塩水を生成するユニットである。塩水生成ユニット20は、水道水処理ユニット2の第一陰電極側流路15から送出される溶液を貯留する塩水生成タンク21と、塩水生成タンク21に塩成分を供給する塩供給部22とを有して構成される。
【0059】
塩水生成タンク21は、水道水処理ユニット2の第一陰電極溶液抽出口12から抽出された第一陰電極抽出溶液12aを一時的に貯めておき、塩供給部22から供給された塩成分と混合して、次亜塩素酸水生成ユニット3に供給するための塩水を生成する容器である。第一陰電極側流路15から送出される水道水溶液(第一陰電極抽出溶液12a)は、水道水に含まれる陰イオン成分が分離低減されている。このため、塩水生成タンク21が貯留する水道水溶液に含まれる塩化物イオン(Clイオン)は、水道水の影響が低減され、塩供給部22で加えた塩成分に起因する塩化物イオン濃度で制御される。次亜塩素酸水生成ユニット3では、塩水生成ユニット20からの塩化物イオンを電気分解して次亜塩素酸水を生成するため、次亜塩素酸水生成ユニット3にて生成される次亜塩素酸水の濃度を塩供給部22の供給量で制御することが可能になる。
【0060】
塩供給部22は、塩水生成タンク21に、次亜塩素酸水生成ユニット3にて生成する目標の濃度に必要な塩成分(例えば、塩化ナトリウム)を供給する部材である。塩成分の供給の形態としては、塩タブレットを所定量供給してもよいし、高濃度(例えば3%)の塩水を所定量供給してもよい。
【0061】
排水側タンク23は、水道水処理ユニット2の第一陽電極溶液抽出口14から抽出された第一陽電極抽出溶液14aを一時的に貯留するとともに、次亜塩素酸水生成ユニット3の第二陰電極溶液抽出口33から抽出される第二陰電極抽出溶液33aを一時的に貯留する容器である。排水側タンク23は、第一陽電極抽出溶液14a(水道水溶液)と第二陰電極抽出溶液33a(次亜塩素酸水)とを混合するとともに、混合した溶液(混合次亜塩素酸水)を排水側タンク23の側面に設けられた排水口から外部に排出可能に構成されている。なお、混合する際には、pHが酸性の第一陽電極抽出溶液14a(水道水溶液)と、pHがアルカリ性の第二陰電極抽出溶液33a(次亜塩素酸水)とで中和されるものの、混合した溶液は、アルカリ性のpHを有する。つまり、排水側タンク23は、第二陰電極抽出溶液33a(次亜塩素酸水)のpHより中性側に近づけた状態で混合した溶液を排液することができる。
【0062】
<次亜塩素酸水生成ユニット>
図1図6図8を参照して、次亜塩素酸水生成ユニット3について説明する。図6は、次亜塩素酸水生成ユニット3の概略図である。図7は、次亜塩素酸水生成ユニット3の分解斜視図である。図8は、次亜塩素酸水生成ユニット3の垂直方向の断面イメージ図である。
【0063】
次亜塩素酸水生成ユニット3は、塩水生成ユニット20から供給される塩水の電気分解により次亜塩素酸水を生成して、さらに次亜塩素酸水に含まれる残留成分を分離低減するワンパス式のユニットである。
【0064】
次亜塩素酸水生成ユニット3は、次亜塩素酸水生成部3aと、次亜塩素酸水処理部3bと、電気分解・電気透析電源37と、第二陽電極側供給ポンプ38と、第二陰電極側供給ポンプ39と、を備える。
【0065】
次亜塩素酸水生成部3aは、塩水生成ユニット20から供給される塩水を電気分解して次亜塩素酸水をワンパス式で生成する部材である。次亜塩素酸水生成部3aは、第二陽電極24と、第二陰電極25と、第二陽電極側スペーサ27と、第二陰電極側スペーサ28と、第二陽電極用パッキン29aと、第二陰電極用パッキン29bと、第二陽電極側槽筐体側面30aと、第二陰電極側槽筐体側面30bと、第二陰陽電極溶液供給口31と、第二陽電極溶液抽出口32と、第二陰電極溶液抽出口33と、第二陰陽電極間流路34と、を備える。
【0066】
次亜塩素酸水処理部3bは、次亜塩素酸水生成部3aから供給される次亜塩素酸水に含まれる残留成分の分離低減をワンパス式で行う部材である。次亜塩素酸水処理部3bは、第二陽電極24と、第二陰電極25と、第二隔膜26と、第二陽電極側スペーサ27と、第二陰電極側スペーサ28と、第二陽電極用パッキン29aと、第二陰電極用パッキン29bと、第二陽電極側槽筐体側面30aと、第二陰電極側槽筐体側面30bと、第二陰陽電極溶液供給口31と、第二陽電極溶液抽出口32と、第二陰電極溶液抽出口33と、第二陽電極側流路35と、第二陰電極側流路36と、を備える。
【0067】
第二陽電極24は、平面状の電極板である。第二陽電極24は、第二陽電極側スペーサ27によって第二陰陽電極間流路34及び第二陽電極側流路35の流路に沿って電極板の表面が露出している。第二陽電極24は、電気分解・電気透析電源37によって電流が流れると陽極として機能する電極である。第二陽電極24は、第二陰電極25と対向して略平行に配置されている。第二陽電極24は、チタン基材の表面に白金を含む触媒が形成されており、電気分解による次亜塩素酸の発生効率が高い材料を使用する。白金を含む触媒は、少なくとも第二陰陽電極間流路34及び第二陽電極側流路35の流路に沿って露出される第二陽電極24の面に形成されている。塩水の電気分解の後に、電気透析により陽イオンを移動させて、残留成分となるNaClO及びNaOHを抑制した次亜塩素酸水を生成することが主目的であるが、NaClOから分解してできたNaCl及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClも、白金電極により次亜塩素酸へと変化させることが可能となる。
【0068】
第二陰電極25は、平面状の電極板である。第二陰電極25は、第二陰電極側スペーサ28によって第二陰陽電極間流路34及び第二陰電極側流路36の流路に沿って電極板の表面が露出している。第二陰電極25は、電気分解・電気透析電源37によって電流が流れると陰極として機能する電極である。第二陰電極25は、第二陽電極24と対向して略平行に配置されている。第二陰電極25は、第二陽電極24と同様に表面に白金を含む触媒を形成する。白金を含む触媒は、少なくとも第二陰陽電極間流路34及び第二陽電極側流路35の流路に沿って露出される第二陰電極25の面に形成されている。また、第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36に沿って露出させて電気透析を行う領域の第二陽電極24と第二陰電極25は、同形状とし、対向距離の短い方がイオン成分の移動をさせやすい。対向距離が短いと流路を流れる流量が少なくなり、生成できる次亜塩素酸水も少なくなるため、必要な次亜塩素酸水生成量を確保したうえで、対向距離を10mm以下程度に短くすることが望ましい。
【0069】
そして、第二陽電極24及び第二陰電極25は、一対の対向電極として陰陽電極(以下、第二陰陽電極ともいう)を構成する。
【0070】
第二隔膜26は、平面状の薄膜である。第二隔膜26は、第二陽電極24及び第二陰電極25と対向して略平行に配置されている。第二隔膜26は、第二陽電極側流路35と第二陰電極側流路36とを隔てるように設けている。第二隔膜26は、次亜塩素酸水の残留成分であるNaClO及びNaOHに関係するNaイオンのような陽イオンを移動させることが可能なイオン交換膜(陽イオン交換膜)である。また、Naイオン以外にも、水道水に含まれるCa2+イオン及びMg2+イオン等の陽イオンについても同様に移動させて分離低減することができる。第二隔膜26は、第二陽電極24及び第二陰電極25に電圧を印加することで、第二陰電極25に陽イオン成分を移動させることができる。この陽イオン交換膜としては、例えば、デュポン社製ナフィオンなどが挙げられる。第二隔膜26は、流路の後段(後半部分)に配置され、第二隔膜26を有する部分が次亜塩素酸水処理部3bとなる。反対に流路の前段(前半部分)の第二隔膜26を有さない部分が次亜塩素酸水生成部3aとなる。第二隔膜26のサイズにより、次亜塩素酸水生成部3aの領域と、次亜塩素酸水処理部3bの領域とが決まる。具体的には、塩水の電気分解時間の比率を多くしたい場合には、第二隔膜26のサイズを小さくし、次亜塩素酸水の電気透析時間の比率を多くしたい場合には、第二隔膜26のサイズを大きくする。なお、第二陰電極25側は、陽イオン成分を濃縮するため、長時間使用時に水道水等に含まれるスケール成分が析出する可能性がある。スケール蓄積の低減のため、例えば、次亜塩素酸水生成ユニット3への通水ごとに、第二陽電極24と第二陰電極25の電位を入れ替えて転極し、付着したスケールを溶解させる。転極して使用することを想定する際には、第二陽電極24及び第二陰電極25は、同様の白金を含む触媒処理にしておくことが望ましい。
【0071】
第二陽電極側スペーサ27は、絶縁性の部材である。第二陽電極側スペーサ27は、第二陽電極24と第二隔膜26との間の距離を所定の間隔に制御する。第二陽電極側スペーサ27は、第二陽電極側スペーサ27の内部に、後述する第二陽電極側流路35を形作る第二陽電極側流路孔35aを有している。第二陽電極側流路孔35aは、第二陽電極側スペーサ27に形成された第二陽電極側流路35を形成する孔のことである。第二陽電極側流路孔35aは、第二陽電極側スペーサ27の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。また、第二陽電極側スペーサ27の表面には、第二陽電極24及び第二隔膜26との密着性をあげるために、第二陽電極側スペーサ27と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。
【0072】
第二陰電極側スペーサ28は、絶縁性の部材である。第二陰電極側スペーサ28は、第二陰電極25と第二隔膜26との間の距離を所定の間隔に制御する。第二陰電極側スペーサ28は、第二陰電極側スペーサ28の内部に、後述する第二陰電極側流路36を形作る第二陰電極側流路孔36aを有している。第二陰電極側流路孔36aは、第二陰電極側スペーサ28に形成された第二陰電極側流路36を形成する孔のことである。第二陰電極側流路孔36aは、第二陰電極側スペーサ28の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。ここで、第二陰電極側流路孔36aと第二陽電極側流路孔35aとは、互いに対向するように配置されている。また、第二陰電極側スペーサ28の表面には、第二陰電極25及び第二隔膜26との密着性をあげるために、第二陰電極側スペーサ28と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。
【0073】
次亜塩素酸水生成部3aでは、第二陽電極側スペーサ27と第二陰電極側スペーサ28が直接接触して、第二陽電極24と第二陰電極25の間の陰陽電極間スペーサとして機能する。
【0074】
次亜塩素酸水生成部3aは、第二陽電極24と第二陰電極25の間に、第二陽電極側スペーサ27と第二陰電極側スペーサ28が介在する。次亜塩素酸水処理部3bは、第二陽電極24と第二陰電極25の間に、第二陽電極側スペーサ27と第二隔膜26と第二陰電極側スペーサ28が介在する。第二陽電極24と第二陰電極25は、略平行に配置されており、第二隔膜26の厚みを吸収するために、次亜塩素酸水処理部3bの第二陽電極側スペーサ27と第二陰電極側スペーサ28の厚みは、第二隔膜26の厚み分薄くなっている。第二隔膜26の厚み分を第二陽電極側スペーサ27及び第二陰電極側スペーサ28の厚みで吸収する手段として、第二陽電極側スペーサ27及び第二陰電極側スペーサ28の表面に配置されたパッキン部材を第二隔膜26の厚み以上にして設計し、パッキン部材をシリコン樹脂等変形して形状の吸収性のある材料にすることで、第二陽電極側スペーサ27及び第二陰電極側スペーサ28の両側から加圧して、第二隔膜26の厚みをパッキン部材で吸収しながら、パッキン部材の本来の目的である液漏れを防ぐことができる。
【0075】
第二陽電極用パッキン29aは、第二陽電極24の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、第二陽電極側スペーサ27と密着して外周方向に、第二陽電極側流路35内の溶液(後述する第二陰陽電極供給溶液31a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。第二陽電極用パッキン29aの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。第二陽電極用パッキン29aは、第二陽電極24より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて第二陽電極側スペーサ27と第二陽電極側槽筐体側面30aとを密着しながら、第二陽電極24の厚みで保持されることが望ましい。
【0076】
第二陰電極用パッキン29bは、第二陰電極25の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、第二陰電極側スペーサ28と密着して外周方向に、第二陰電極側流路36内の溶液(後述する第二陰陽電極供給溶液31a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。第二陰電極用パッキン29bの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。第二陰電極用パッキン29bは、第二陰電極25より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて第二陰電極側スペーサ28と第二陰電極側槽筐体側面30bと密着しながら、第二陰電極25の厚みで保持されることが望ましい。
【0077】
第二陽電極側槽筐体側面30aは、第二陽電極24の外側に直接接触するように配置されている。第二陽電極側槽筐体側面30aは、第二陽電極24の外側への溶液の染み込みを抑制するために、第二陽電極側槽筐体側面30aの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。第二陽電極24の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電気透析の効率向上にもつながる。
【0078】
第二陰電極側槽筐体側面30bは、第二陰電極25の外側に直接接触するように配置されている。第二陰電極側槽筐体側面30bは、第二陰電極25の外側への溶液の染み込みを抑制するために、第二陰電極側槽筐体側面30bの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。第二陰電極25の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電極透析の効率向上にもつながる。
【0079】
第二陰陽電極溶液供給口31は、電気分解する塩水を第二陰陽電極間流路34内に流すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第二陽電極24の外側から塩水を供給するため、第二陰陽電極溶液供給口31は、第二陽電極24より外周の位置に加工されている。なお、第二陰陽電極溶液供給口31は、第二陽電極24及び第二陰電極25の両方の外側の位置にそれぞれ加工されているが、第二陽電極24または第二陰電極25の外周の位置の一方のみに加工されてもよい。
【0080】
第二陰陽電極供給溶液31aは、塩水生成ユニット20から供給される塩水である。詳しくは、水道水処理ユニット2にて陰イオン成分が分離低減された水道水溶液に、塩供給部22にて塩成分を加えて混合して生成された塩水である。第二陰陽電極供給溶液31aは、第二陰陽電極溶液供給口31から第二陰陽電極間流路34に導入される。
【0081】
第二陽電極溶液抽出口32は、電気透析した第二陽電極抽出溶液32aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第二陽電極24の外側に第二陽電極抽出溶液32aを抽出するため、第二陽電極溶液抽出口32は、第二陽電極24より外周の位置に加工されている。
【0082】
第二陽電極抽出溶液32aは、HClOが主成分の次亜塩素酸水である。第二陽電極抽出溶液32aは、第二陽電極側流路35から第二陽電極溶液抽出口32に導入される。
【0083】
より詳細には、第二陽電極抽出溶液32aは、第二陰陽電極供給溶液31aを第二陰陽電極間流路34にて電気分解した後、第二陽電極側流路35に流通させて、残留成分の要因となる陽イオン成分を分離希薄化した溶液である。陰イオン成分を除去した水道水から生成する塩水を、次亜塩素酸水生成部3aにおいて電気分解して生成した次亜塩素酸水を使用しているので、第二陽電極抽出溶液32aには、主に塩成分に起因するNaイオン、並びに、水道水溶液に含まれているCa2+イオン及びMg2+イオンが分離希薄化され、HClOの成分が主成分の次亜塩素酸水となる。このため、この次亜塩素酸水のpHは酸性を示す。
【0084】
第二陰電極溶液抽出口33は、電気透析した第二陰電極抽出溶液33aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。第二陰電極25の外側に第二陰電極抽出溶液33aを抽出するため、第二陰電極溶液抽出口33は、第二陰電極25より外周の位置に加工されている。
【0085】
第二陰電極抽出溶液33aは、NaClO及びNaOH、さらに原水とする水道水の成分によってCa(OH)、Mg(OH)を含む次亜塩素酸水である。第二陰電極抽出溶液33aは、第二陰電極側流路36から第二陰電極溶液抽出口33に導出される。
【0086】
より詳細には、第二陰電極抽出溶液33aは、第二陰陽電極供給溶液31aを第二陰陽電極間流路34にて電気分解した後、第二陰電極側流路36に流通させて、残留成分の要因となる陽イオン成分が濃縮化された溶液である。次亜塩素酸水生成部3aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を使用しているので、第二陰電極抽出溶液33aには、陽イオンであるNaイオンが分離濃縮化され、NaOHとして生成されることで、NaOHとNaClOが主成分の次亜塩素酸水となる。さらに原水にCa2+イオン及びMg2+イオンを含む水道水を使用した場合には、Ca(OH)及びMg(OH)が合わせて生成される。このため、この次亜塩素酸水のpHはアルカリ性を示す。
【0087】
ここで、第二陰陽電極溶液供給口31は、鉛直方向の下方側に配置されることが望ましく、第二陽電極溶液抽出口32及び第二陰電極溶液抽出口33は、鉛直方向の上方側に配置されることが望ましい。流路内の電気透析反応及び電気分解反応により、酸素ガス及び水素ガス等が発生する際に、抽出口が上方に配置されてある方がガスをより効率的に溶液とともに排出することができる。
【0088】
第二陰陽電極間流路34は、第二陽電極24と第二陽電極側スペーサ27と第二陰電極側スペーサ28と第二陰電極25とによって囲まれた領域に形成される流路であり、いわゆる無隔膜電解流路である。第二陰陽電極間流路34は、第二陽電極側スペーサ27の第二陽電極側流路孔35aと第二陰電極側スペーサ28の第二陰電極側流路孔36aが重ね合わされた構造によって蛇行して構成されている。より詳細には、第二陰陽電極間流路34は、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気分解を行う距離を稼いでいる。さらに第二陰陽電極間流路34の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気分解時間を長くすることができる。第二陰陽電極間流路34において液の逆流を低減するため、第二陰陽電極間流路34が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に向かう構造とすることが望ましい。第二陰陽電極間流路34は、第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36に接続されており、内部に第二陰陽電極供給溶液31aが流通している。電気分解量は、印加される電圧電流及び流路内の流速によって制御される。流速は、第二陽電極溶液抽出口32の後段に第二陽電極側供給ポンプ38を設置し、第二陰電極溶液抽出口33の後段に第二陰電極側供給ポンプ39を設置して制御している。各供給ポンプは、一定流量で制御可能な方式が望ましく、例えばチューブポンプを使用することができる。それぞれ一定流量で溶液を流すことで、流路内で電気分解する時間を一定に制御できるため、抽出する次亜塩素酸水の濃度を安定的に制御することができる。
【0089】
第二陰陽電極間流路34内では、電気分解された次亜塩素酸水は流通過程で混合されるものの、第二陽電極24近傍には塩水の陰イオン成分であるClイオンが多く分布し、第二陰電極25近傍には塩水の陽イオン成分であるNaイオンが多く分布するような濃度勾配を持って流れている。そのため、一対の第二陰陽電極間で電気分解を行うと、第二陽電極24近傍には酸性に寄った溶液が流れ、第二陰電極25近傍にはアルカリ性に寄った溶液が流れることになる。そのため、酸性及びアルカリ性に寄った次亜塩素酸水が、第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36にそれぞれ流通される。具体的には、第二陽電極側流路35にはHCl及びHClOを多く含む酸性の次亜塩素酸水が流通され、第二陰電極側流路36にはNaOHを多く含むアルカリ性の次亜塩素酸水が抽出される。
【0090】
第二陽電極側流路35は、第二陽電極24と第二陽電極側スペーサ27と第二隔膜26とによって囲まれた領域で形成される流路である。第二陽電極側流路35は、第二陽電極側スペーサ27の第二陽電極側流路孔35aによって蛇行して構成されている。より詳細には、第二陽電極側流路35は、水平方向に往復し下から上に陽極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに第二陽電極側流路35の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。第二陽電極側流路35において液の逆流を低減するため、第二陽電極側流路35が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に向かう構造とすることが望ましい。第二陽電極側流路35は、その一方が第二陰陽電極間流路34に接続し、他方には第二陽電極溶液抽出口32が設けられており、内部に次亜塩素酸水生成部3aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水が流通している。
【0091】
第二陰電極側流路36は、第二陰電極25と第二陰電極側スペーサ28と第二隔膜26とによって囲まれた領域で形成される流路である。第二陰電極側流路36は、第二陰電極側スペーサ28の第二陰電極側流路孔36aによって蛇行して構成されている。より詳細には、第二陰電極側流路36は、水平方向に往復し下から上に陰極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに第二陰電極側流路36の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。第二陰電極側流路36において液の逆流を低減するため、第二陰電極側流路36が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に流れる構造とすることが望ましい。第二陰電極側流路36は、その一方が第二陰陽電極間流路34に接続し、他方には第二陰電極溶液抽出口33が設けられており、内部に次亜塩素酸水生成部3aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水が流通している。
【0092】
第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36は、第二隔膜26を挟んで対称な形状で対向している。つまり、第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36は、第二隔膜26を挟んで互いに対向する蛇行形状で構成されている。このようにして、第二陽電極側流路35と第二陰電極側流路36とは、いわゆる有隔膜電解流路(以下、第二有隔膜電解流路ともいう)を構成している。そして、第二陽電極側流路35内を流通する次亜塩素酸水に含まれるNaイオン、さらには水道水に含まれているCa2+イオン及びMg2+イオン等が第二陰電極側流路36側に移動する。イオン成分の移動量は、印加される電圧電流及び流路内の流速によって制御される。流速は、第二陽電極溶液抽出口32の後段に第二陽電極側供給ポンプ38を設置し、第二陰電極溶液抽出口33の後段に第二陰電極側供給ポンプ39を設置して制御している。各ポンプは、一定流量で制御可能な方式が望ましく、例えばチューブポンプを使用することができる。それぞれ一定流量で溶液を流すことで、流路内で電気透析及び電気分解する時間を一定に制御できるため、抽出する次亜塩素酸水の濃度を安定的に制御することができる。
【0093】
次亜塩素酸水生成ユニット3では、無隔膜電解流路を構成する第二陰陽電極間流路34と、これに続く有隔膜電解流路を構成する第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36とによって、次亜塩素酸水生成ユニット3としての蛇行状の電解流路をワンパス式に構成している。つまり、蛇行状の電解流路において、第二陰陽電極間流路34が電解流路の前段を構成し、第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36が電解流路の後段を構成している。
【0094】
電気分解・電気透析電源37は、一対の第二陰陽電極間に通電する直流電源である。より詳細には、電気分解・電気透析電源37は、第二陽電極24及び第二陰電極25と接続され、第二陽電極24及び第二陰電極25に電流及び電圧を印加することができる直流電源である。電気分解・電気透析電源37は、一定の電流となるように定電流制御の電源として使用してもよいし、一定の電圧となるように定電圧制御の電源として使用してもよい。電気分解・電気透析電源37は、次亜塩素酸水生成部3a及び次亜塩素酸水処理部3bにおける共通の第二陽電極24及び第二陰電極25に電流及び電圧を印加する。つまり、電気分解・電気透析電源37は、次亜塩素酸水生成部3aにおいて電気分解を生じされる電極の電源として機能し、次亜塩素酸水処理部3bにおいて電気透析を生じさせる電極の電源として機能する。なお、電気分解・電気透析電源37は、スケール蓄積の低減のため、例えば、次亜塩素酸水生成ユニット3への次亜塩素酸水の通水ごとに、第二陽電極24と第二陰電極25の電位を入れ替えて転極し、付着したスケールを溶解させるように制御してもよい。
【0095】
第二陽電極側供給ポンプ38は、第二陽電極抽出溶液32aを抽出する流れを生じさせるポンプである。より詳細には、第二陽電極側供給ポンプ38は、第二陽電極溶液抽出口32の後段に設置される。そして、第二陽電極側供給ポンプ38は、第二陰陽電極溶液供給口31、第二陰陽電極間流路34、第二陽電極側流路35、及び第二陽電極溶液抽出口32の順に流通する各溶液(第二陰陽電極供給溶液31a、第二陽電極抽出溶液32a)の流れを生じさせる。この際、第二陽電極側供給ポンプ38は、次亜塩素酸水生成部3aを流れる溶液の流速を一体に制御すると同時に、次亜塩素酸水処理部3bを流れる溶液の流速を一定に制御する。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0096】
第二陰電極側供給ポンプ39は、第二陰電極抽出溶液33aを抽出する流れを生じさせるポンプである。より詳細には、第二陰電極側供給ポンプ39は、第二陰電極溶液抽出口33の後段に設置される。そして、第二陰電極側供給ポンプ39は、第二陰陽電極溶液供給口31、第二陰陽電極間流路34、第二陰電極側流路36、及び第二陰電極溶液抽出口33の順に流通する各溶液(第二陰陽電極供給溶液31a、第二陰電極抽出溶液33a)の流れを生じさせる。この際、第二陰電極側供給ポンプ39は、次亜塩素酸水生成部3aを流れる溶液の流速を一体に制御すると同時に、次亜塩素酸水処理部3bを流れる溶液の流速を一定に制御する。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0097】
第二陰陽電極間流路34の流速は、第二陽電極側供給ポンプ38と第二陰電極側供給ポンプ39との合計量として制御される。
【0098】
以上のように、次亜塩素酸水供給装置1は、各部材によって構成される。
【0099】
次に、図4及び図5を参照して、水道水処理ユニット2での処理動作について説明する。図5は、水道水処理ユニットの水平方向の断面イメージ図である。
【0100】
図4及び図5に示すように、水道水処理ユニット2では、第一陰電極溶液供給口11を通って水道水である第一陰電極供給溶液11aが第一陰電極側流路15に連続的に供給され、第一陽電極溶液供給口13を通って水道水である第一陽電極供給溶液13aが第一陽電極側流路16に連続的に供給される。そして、第一陰電極溶液供給口11から供給された第一陰電極供給溶液11aは、蛇行して形成された第一陰電極側流路15を流通していき、第一陽電極溶液供給口13から供給された第一陽電極供給溶液13aは、同じく蛇行して形成された第一陽電極側流路16を流通していく。この際、第一陰電極供給溶液11a及び第一陽電極供給溶液13aは、第一隔膜6を挟んで対向し、同じ方向に流通されて第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16をそれぞれ流通していくと同時に、両端の第一陰電極4及び第一陽電極5に電圧が印加される。電圧が印加されると、第一陰電極4側には陽イオン成分が引き付けられ、第一陽電極5側には陰イオン成分(水道水に含まれるClイオン、SO 2-イオン、及びNO イオン等)が引き付けられる。第一隔膜6は、陰イオン成分のみを透過可能な膜で構成されているため、第一陰電極側流路15を流通する第一陰電極供給溶液11aに含まれる陰イオン成分(Clイオン、SO 2-イオン、及びNO イオン等)は、第一隔膜6を透過して、第一陽電極側流路16の第一陽電極供給溶液13aを通って第一陽電極5側に陰イオン成分が引き付けられる。反対に、第一陽電極側流路16を流通する陽イオン成分は、第一隔膜6を透過できないため、第一陰電極側流路15に含まれる陽イオン成分のみが第一陰電極4に引き付けられる。これを繰り返すことにより、第一陰電極側流路15を流通する第一陰電極供給溶液11aに含まれる陰イオン成分が、第一陽電極側流路16を流通する第一陽電極供給溶液13aに移動して電気透析が進行し、第一陰電極側流路15を流通する第一陰電極供給溶液11aは、陰イオン成分が分離希薄化され、第一陽電極側流路16を流通する第一陽電極供給溶液13aは、陰イオン成分が濃縮化されて抽出される。その結果、第一陰電極溶液抽出口12から、第一陰電極抽出溶液12aとして、水道水に含まれる陰イオン成分(Clイオン、SO 2-イオン、及びNO イオン等)が分離希薄化された水道水溶液が抽出される。反対に、第一陽電極溶液抽出口14から、第一陽電極抽出溶液14aとして、水道水に含まれる陰イオン成分が分離濃縮化された水道水溶液が抽出される。また、水道水中に含まれるClイオンの電気分解により、次亜塩素酸水が生成し含まれる。
【0101】
水道水処理ユニット2での処理動作では、第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16にて電気透析を行う時間を長くすることで、陰イオン成分の移動量をより多くして、第一陰電極抽出溶液12aの水道水に含まれていた陰イオン成分をより低減することができる。電気透析を行う時間を長くするためには、第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16の距離を長くすることが必要であり、そのためには水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成しており、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16の断面積を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。
【0102】
第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16を通る各溶液の流速は、同じとなるように各ポンプ(第一陰電極側供給ポンプ18及び第一陽電極側供給ポンプ19)を制御しているが、互いに異なるようにしてもよい。流速が異なる場合には、抽出される各溶液の濃度に影響する。例えば、第一陰電極側流路15の流速を相対的に速くして、第一陽電極側流路16の流速を相対的に遅くした場合には、第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16の流速を同じにした場合に比べて、第一陽電極側流路16から抽出した第一陽電極抽出溶液14aは少量かつ濃度が濃い水道水溶液となる。これにより、第一陽電極抽出溶液14aを排液する場合には、第一陽電極側流路16の流速を遅くすることが望ましい。
【0103】
次に、図8及び図9を参照して、次亜塩素酸水生成ユニット3の次亜塩素酸水生成部3aでの処理動作について説明する。図9は、次亜塩素酸水生成ユニット3の次亜塩素酸水生成部3aの水平方向の断面イメージ図である。
【0104】
図8及び図9に示すように、次亜塩素酸水生成ユニット3の次亜塩素酸水生成部3aでは、第二陰陽電極溶液供給口31を通って塩水である第二陰陽電極供給溶液31aが第二陰陽電極間流路34に連続的に供給される。そして、第二陰陽電極溶液供給口31から供給された第二陰陽電極供給溶液31aは、蛇行して形成された第二陰陽電極間流路34を流通していく。この際、第二陰陽電極供給溶液31aは、第二陰陽電極間流路34を流通していくと同時に、両端の第二陽電極24及び第二陰電極25に電圧が印加される。電圧が印加されると、第二陽電極24側には陰イオン成分(Clイオン)が引き付けられ、第二陰電極25側には陽イオン成分(Naイオン、並びに、水道水に含まれるCa2+イオン及びMg2+イオン等)が引き付けられ、電気分解により第二陽電極24側にはHCl及びHClOが生成され、第二陰電極25側にはNaOHが生成される。さらにHClOとNaOHとが反応することで、NaClOが生成される。これを繰り返すことにより、NaClOが主成分となり、HClO及びNaOH及び残留したNaClが含まれる次亜塩素酸水が生成される。また、供給される水道水溶液にCa2+イオン及びMg2+イオンが含まれるので、NaOHに加えてCa(OH)及びMg(OH)も合わせて生成されることになる。
【0105】
次亜塩素酸水生成部3aでの処理動作では、第二陰陽電極間流路34にて電気分解を行う時間を長くすることで、NaClの電気分解量を多くして、生成する次亜塩素酸水の中に残留するNaCl(塩水)を低減することができる。電気分解を行う時間を長くするためには、第二陰陽電極間流路34の距離を長くすることが必要であり、そのためには水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成しており、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気分解を行う距離を稼いでいる。さらに第二陰陽電極間流路34の断面積を小さくすることでも距離が長くなり、電気分解時間を長くすることができる。
【0106】
次に、図8及び図10を参照して、次亜塩素酸水生成ユニット3の次亜塩素酸水処理部3bでの処理動作について説明する。図10は、次亜塩素酸水生成ユニット3の次亜塩素酸水処理部3bの水平方向の断面イメージ図である。
【0107】
図8及び図10に示すように、次亜塩素酸水生成ユニット3の次亜塩素酸水処理部3bでは、次亜塩素酸水生成部3aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水が第二陽電極側流路35に連続的に供給され、同様に次亜塩素酸水生成部3aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水が第二陰電極側流路36に連続的に供給される。そして、次亜塩素酸水生成部3aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水は、蛇行して形成された第二陽電極側流路35を流通していき、同じく蛇行して形成された第二陰電極側流路36を流通していく。この際、次亜塩素酸水生成部3aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水は、同じ方向に流通されて第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36をそれぞれ流通していくと同時に、両端の第二陽電極24及び第二陰電極25に電圧が印加される。電圧が印加されると、第二陽電極24側には陰イオン成分が引き付けられ、第二陰電極25側には陽イオン成分(Naイオン、並びに、水道水溶液に含まれるCa2+イオン及びMg2+イオン等)が引き付けられる。第二隔膜26は、陽イオン成分のみを透過可能な膜で構成されているため、第二陽電極側流路35を流通する次亜塩素酸水に含まれる陽イオン成分(Naイオン、並びに、水道水溶液に含まれるCa2+イオン及びMg2+イオン等)は、第二隔膜26を透過して、第二陰電極側流路36の次亜塩素酸水を通って第二陰電極25側に陽イオン成分が引き付けられる。反対に、第二陰電極側流路36を流通する陰イオン成分は、第二隔膜26を透過できないため、第二陽電極側流路35に含まれる陰イオン成分のみが第二陽電極24に引き付けられる。これを繰り返すことにより、第二陽電極側流路35を流通する次亜塩素酸水に含まれる陽イオン成分が、第二陰電極側流路36を流通する次亜塩素酸水に移動して電気透析が進行し、第二陽電極側流路35を流通する次亜塩素酸水は、陽イオン成分が分離希薄化され、第二陰電極側流路36を流通する次亜塩素酸水は、陽イオン成分が濃縮化されて抽出される。その結果、第二陽電極溶液抽出口32から、第二陽電極抽出溶液32aとして、残留成分となる陽イオンを含む成分が分離希薄化してHClO成分が主成分となった次亜塩素酸水が抽出される。反対に、第二陰電極溶液抽出口33から、第二陰電極抽出溶液33aとして、残留成分を構成する陽イオンが分離濃縮化された成分を含む溶液(次亜塩素酸水)が抽出される。
【0108】
次亜塩素酸水処理部3bでの処理動作では、第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36にて電気透析を行う時間を長くすることで、陽イオン成分の移動量をより多くして、第二陽電極抽出溶液32aのNaイオン、並びに、水道水溶液に含まれるCa2+イオン及びMg2+イオン等の陽イオンからなる残留成分をより低減することができる。電気透析を行う時間を長くするためには、第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36の距離を長くすることが必要であり、そのためには水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成しており、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36の断面積を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。
【0109】
第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36を通る各溶液の流速は、同じとなるように各ポンプを制御しているが、互いに異なるようにしてもよい。流速が異なる場合には、抽出される各溶液の濃度に影響する。例えば、第二陽電極側流路35の流速を相対的に速くして、第二陰電極側流路36の流速を相対的に遅くした場合には、第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36の流速を同じにした場合に比べて、第二陰電極側流路36から抽出した第二陰電極抽出溶液33aは少量かつ濃度が濃い溶液となる。これにより、第二陰電極抽出溶液33aを排液する場合には、第二陰電極側流路36の流速を遅くすることが望ましい。
【0110】
次に、図11を参照して、実際に次亜塩素酸水供給装置1(水道水処理ユニット2及び次亜塩素酸水生成ユニット3)を流通する各溶液(水道水、塩水、及び各次亜塩素酸水)の特性(導電率、pH、及び有効塩素濃度)について説明する。図11は、次亜塩素酸水供給装置1を流通する次亜塩素酸水の特性評価を行う実験イメージ図である。なお、特性評価は、図11に示す各段階(水道水タンク40、塩水生成タンク21、次亜塩素酸水タンク41、及び排水側タンク23)における溶液(水道水、塩水、及び各次亜塩素酸水)について行った。
【0111】
実験評価では、水道水タンク40に貯留された水道水を、水道水処理ユニット2に供給して流通させ、第一陰電極抽出溶液12aを塩水生成タンク21に回収するとともに、第一陽電極抽出溶液14aを排水側タンク23に回収した。続いて、塩水生成タンク21に回収した第一陰電極抽出溶液12aに塩成分を添加した塩水を、次亜塩素酸水生成ユニット3に供給して流通させ、第二陽電極抽出溶液32aを次亜塩素酸水タンク41に回収するとともに、第二陰電極抽出溶液33aを排水側タンク23に回収した。この際、第二陰電極抽出溶液33aは、排水側タンク23に回収されていた第一陽電極抽出溶液14aと混合されるが、特性評価では、混合される前の第一陽電極抽出溶液14a及び第二陰電極抽出溶液33aについてもサンプリングしている。
【0112】
また、水道水処理ユニット2には、流路断面積8mm及び流路長675mmの第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16を形成したものを用いた。また、次亜塩素酸水生成ユニット3の次亜塩素酸水生成部3aには、流路断面積24mm及び流路長360mmの第二陰陽電極間流路34を形成したものを用い、次亜塩素酸水処理部3bには、流路断面積24mm及び流路長320mmの第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36を形成したものを用いた。また、第一陰電極側供給ポンプ18、第一陽電極側供給ポンプ19、第二陽電極側供給ポンプ38、及び第二陰電極側供給ポンプ39の流量条件としては、それぞれ11mL/min、0.9mL/min、4.4mL/min、及び0.9mL/minの流速で流通させた。そして、水道水タンク40、塩水生成タンク21、排水側タンク23、及び次亜塩素酸水タンク41に回収された各溶液(水道水、塩水、及び次亜塩素酸水)について、導電率、pH、及び有効塩素濃度の測定を行った。電気透析電源17及び電気分解・電気透析電源37には、ともにDC24Vを印加した。また、水道水処理ユニット2に供給した水道水(第一陰電極供給溶液11a及び第一陽電極供給溶液13a)は、実験評価で供給した水量「1.1L」、導電率「103μS/cm」、pH「7.0」、及び有効塩素濃度「検出限界以下」のものを使用した。塩水生成タンク21では、塩供給部22から濃い塩水(濃度0.5%の塩水)を5mL供給して、塩水生成タンク21に回収された第一陰電極抽出溶液12aと混合して次亜塩素酸水生成ユニット3に供給する塩水を生成した。
【0113】
図12に各溶液の特性評価の結果をまとめる。図12は、次亜塩素酸水供給装置1を流通した次亜塩素酸水の特性を示す図である。
【0114】
図12に示すように、塩水生成タンク21に回収された第一陰電極抽出溶液12aに塩成分を加えた塩水は、水量「1.02L」、導電率「137μS/cm」、pH「10.2」、及び有効塩素濃度「検出限界以下」の溶液であり、溶液のpHはアルカリ性を示す。また、塩成分を供給しているため、導電率は水道水タンク40から供給した水道水よりも高くなっている。
【0115】
反対に、排水側タンク23に回収された第一陽電極抽出溶液14a(混合前)は、水量「0.08L」、導電率「1041μS/cm」、pH「2.5」、及び有効塩素濃度「137ppm」であり、溶液のpHは酸性を示す。pHが酸性を示すのは、第一陽電極抽出溶液14aに次亜塩素酸水が生成され、水道水中に含まれるClイオンが電気分解されて次亜塩素酸となっているためである。
【0116】
次に、次亜塩素酸水タンク41に回収された第二陽電極抽出溶液32aは、水量「0.85L」、導電率「13μS/cm」、pH「4.5」、及び有効塩素濃度「29ppm」であり、導電率の低い、すなわち残留イオンが少ないHClO主体の次亜塩素酸水となっている。つまり、次亜塩素酸水生成ユニット3において、第二陽電極抽出溶液32aとして、酸性の次亜塩素酸水が生成されている。
【0117】
反対に、排水側タンク23に回収された第二陰電極抽出溶液33a(混合前)は、水量「0.17L」、導電率「1507μS/cm」、pH「11.6」、及び有効塩素濃度「8ppm」である。つまり、次亜塩素酸水生成ユニット3において、第二陰電極抽出溶液33aとして、アルカリ性の次亜塩素酸水が生成されている。
【0118】
一方、排水側タンク23に回収され、第一陽電極抽出溶液14aと第二陰電極抽出溶液33aとを混合した抽出溶液(混合後)は、水量「0.25L(=0.08L+0.17L)」、導電率「538μS/cm」、pH「10.4」、及び有効塩素濃度「53ppm」であり、導電率の高い、すなわち残留成分を含む次亜塩素酸水となっている。このとき、第一陽電極抽出溶液14aは酸性で、第二陰電極抽出溶液33aはアルカリ性であることから、中和反応が起こり、中性側に近づいた状態となっている。つまり、排水側タンク23からはこうした状態の抽出溶液(アルカリ性の次亜塩素酸水)が排出される。
【0119】
また、排水側タンク23に接続される供給ポンプ(第一陽電極側供給ポンプ19及び第二陰電極側供給ポンプ39)を低流速にすることで、排出する溶液量を少なくすることができている。
【0120】
以上、本実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0121】
(1)次亜塩素酸水供給装置1は、蛇行状の第一有隔膜電解流路(第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16)内に供給される水道水を一対の第一陰陽電極間(第一陰電極4と第一陽電極5との間)への通電によって水道水に含まれる陰イオン成分を連続的に分離低減する水道水処理ユニット2と、水道水処理ユニット2の陰電極側における水道水電解流路(第一陰電極側流路15)から送出される水道水溶液(第一陰電極抽出溶液12a)に塩成分を加えて塩水を生成する塩水生成ユニット20と、塩水生成ユニット20で生成した塩水(第二陰陽電極供給溶液31a)を供給可能に構成された蛇行状の電解流路と、電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路(第二陰陽電極間流路34)内に供給される塩水から一対の第二陰陽電極間(第二陽電極24と第二陰電極25との間)への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部3aと、電解流路の後段を構成する第二有隔膜電解流路(第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36)内のそれぞれに次亜塩素酸水生成部3aから供給される次亜塩素酸水を一対の第二陰陽電極間(第二陽電極24と第二陰電極25との間)への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理部3bと、を有する次亜塩素酸水生成ユニット3と、を備え、次亜塩素酸水処理部3bの陽電極側における電解流路(第二陽電極側流路35)から送出される次亜塩素酸水(第二陽電極抽出溶液32a)を外部に供給する構造とした。
【0122】
こうした構成によれば、水道水に含まれる陰イオン成分を低減しつつ、陰イオン成分を低減した水道水溶液(第一陰電極抽出溶液12a)から生成する塩水(第二陰陽電極供給溶液31a)の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水(第二陽電極抽出溶液32a)を供給することが可能な次亜塩素酸水供給装置1とすることができる。より詳細には、次亜塩素酸水供給装置1では、水道水が水道水処理ユニット2に供給され、水道水処理ユニット2の陰電極側における水道水電解流路(第一陰電極側流路15)から送出された水道水溶液(第一陰電極抽出溶液12a)に塩成分を加えた塩水(第二陰陽電極供給溶液31a)が次亜塩素酸水生成ユニット3に供給されるので、次亜塩素酸水生成ユニット3は、陰イオン成分が分離低減された塩水の電気分解によって次亜塩素酸水を生成することができる。これにより、生成される次亜塩素酸水は、水道水に含まれる陰イオン成分に起因した次亜塩素酸水の濃度ばらつき及び特性ばらつきが抑制される。一方、次亜塩素酸水生成ユニット3では、電解流路に陰イオン成分が分離低減された塩水を供給することによって、次亜塩素酸水生成部3aにおいて無隔膜電解流路(第二陰陽電極間流路34)内で塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成し、さらに次亜塩素酸水処理部3bにおいて第二有隔膜電解流路(第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36)内のそれぞれに無隔膜電解流路で生成した次亜塩素酸水を流通させて、陽電極側から残留成分の要因となる陽イオン成分を分離低減した次亜塩素酸水(第二陽電極抽出溶液32a)として抽出することができる。これにより、陽電極側から抽出した次亜塩素軟水を外部に供給した場合には、次亜塩素軟水に含まれる残留成分に起因して生じる金属腐食の発生などを抑制することができる。
【0123】
これに対して、水道水の陰イオン成分を分離低減せずに塩成分を加えて塩水を生成し、次亜塩素酸水生成ユニット3に流通させると、水道水の陰イオン成分が次亜塩素酸水処理部3bの陽電極側における電解流路(第二陽電極側流路35)から次亜塩素酸水に混じって抽出される。特に水道水の塩化物イオン(Clイオン)は電気分解によって次亜塩素酸水が生成されるため、最終的に抽出される次亜塩素酸水の濃度ばらつきに大きく影響を与え、安定した濃度の次亜塩素酸水が生成されない。このため、事前に水道水処理ユニット2で低減しておく必要がある。水道水の塩化物イオン(Clイオン)以外の他の陰イオンとして、SO 2-及びNO などのイオンがあるが、これらも次亜塩素酸水生成ユニット3に流通させると、HSOあるいはHNOなどの酸を生成し、導電率の増加及びpH減少などの特性ばらつきを生させる。このため、同様に事前に水道水処理ユニット2で低減しておくことが望ましい。
【0124】
また、次亜塩素酸水生成部3aと次亜塩素酸水処理部3bに共通の第二陰陽電極(第二陽電極24及び第二陰電極25)を使用し、無隔膜電解流路と第二有隔膜電解流路が第二陰陽電極間の電圧を印加された状態で直接的につながっている。これにより、無隔膜電解流路内にて、第二陽電極24近傍には陰イオンが多く存在し、第二陰電極25近傍には陽イオンが多く存在するような分布を持った状態で、第二有隔膜電解流路に流入するため、第二陽電極24側には残留成分の要因となる陽イオンをあらかじめ減少させた状態で、電気透析処理を開始することができる。
【0125】
さらに、次亜塩素酸水供給装置1では、次亜塩素酸水生成ユニット3に、水道水に塩成分を加えた塩水を供給することによって、次亜塩素酸水生成部3aにおいて無隔膜電解流路内で塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成し、さらに次亜塩素酸水処理部3bにおいて第二有隔膜電解流路内に無隔膜電解流路で生成した次亜塩素酸水を流通させて、残留成分の要因となる陽イオンを分離低減した次亜塩素酸水として抽出することができる。この時、塩成分に含まれるNaイオンだけでなく、水道水に含まれる陽イオン成分であるNaイオン、Ca2+イオン、及びMg2+イオン等の陽イオンも同時に分離低減することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を分離した次亜塩素酸水を外部に供給することが可能な次亜塩素酸水供給装置1とすることができる。
【0126】
(2)次亜塩素酸水供給装置1では、第一有隔膜電解流路(第一陰電極側流路15及び第二陽電極側流路16)は、第一陰電極4が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一陰電極側流路15と、第一陰電極側流路15と対向して並設され、第一陽電極5が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一陽電極側流路16と、第一陰電極側流路15と第一陽電極側流路16とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陰イオンを透過させる第一隔膜6と、を有して構成される。一対の第一陰陽電極(第一陰電極4及び第一陽電極5)は、第一陰電極側スペーサ7によって第一陰電極側流路15に第一陰電極4を露出させるとともに、第一陽電極側スペーサ8によって第一陽電極側流路16に第一陽電極5を露出させることで蛇行状に構成される。第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16には、水道水がいずれも同じ方向に流通するように構成されている。こうした構成によれば、水道水処理ユニット2は、水道水を、第一隔膜6を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、水道水に含まれる陰イオン成分を連続的に分離低減することができる。このため、陰イオン成分が分離低減された水道水溶液として、水道水処理ユニット2の陰電極側における水道水電解流路(第一陰電極側流路15)から送出される水道水溶液(第一陰電極抽出溶液12a)を塩水生成ユニット20に安定して供給することができる。
【0127】
(3)次亜塩素酸水供給装置1では、平面状の第一陰電極4と、第一陰電極4と対向する平面状の第一隔膜6と、第一陰電極4と第一隔膜6との間に設けられ、流路に沿って第一陰電極側流路15内に第一陰電極4及び第一隔膜6を露出させる第一陰電極側スペーサ7とを有し、第一陰電極側流路15は、流路に沿って露出する第一陰電極4及び第一隔膜6と、第一陰電極側スペーサ7とにより構成されている。平面状の第一陽電極5と、第一陽電極5と対向する平面状の第一隔膜6と、第一陽電極5と第一隔膜6との間に設けられ、流路に沿って第一陽電極側流路16内に第一陽電極5及び第一隔膜6を露出させる第一陽電極側スペーサ8と、を有し、第一陽電極側流路16は、流路に沿って露出する第一陽電極5及び第一隔膜6と、第一陽電極側スペーサ8とにより構成されている。こうした構成によれば、第一陰電極側スペーサ7に形成される流路形状、及び第一陽電極側スペーサ8に形成される流路形状により、水道水に含まれる陰イオン成分を分離低減する能力を変化させることができるので、水道水から陰イオン成分を分離低減する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0128】
(4)次亜塩素酸水供給装置1では、無隔膜電解流路(第二陰陽電極間流路34)は、平面状の第二陽電極24と、第二陽電極24と対向する平面状の第二陰電極25と、第二陽電極24と第二陰電極25との間に設けられた陰陽電極間スペーサとを有して構成される。一対の第二陰陽電極(第二陽電極24及び第二陰電極25)は、陰陽電極間スペーサによって無隔膜電解流路に第二陽電極24及び第二陰電極25を露出させることで蛇行状に構成されている。こうした構成によれば、陰陽電極間スペーサに形成される流路形状により、塩水を電気分解する能力を変化させることができるので、塩水を電気分解する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0129】
(5)次亜塩素酸水供給装置1では、第二有隔膜電解流路(第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36)は、第二陽電極24が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二陽電極側流路35と、第二陽電極側流路35と対向して並設され、第二陰電極25が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二陰電極側流路36と、第二陽電極側流路35と第二陰電極側流路36とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる第二隔膜26と、を有して構成される。一対の第二陰陽電極(第二陽電極24及び第二陰電極25)は、第二陽電極側スペーサ27によって第二陽電極側流路35に第二陽電極24を露出させるとともに、第二陰電極側スペーサ28によって第二陰電極側流路36に第二陰電極25を露出させることで蛇行状に構成され、第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36には、次亜塩素酸水生成部3aから供給される次亜塩素酸水がいずれも同じ方向に流通するように構成されている。こうした構成によれば、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を、第二隔膜26を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオン成分を連続的に分離低減することができる。このため、残留成分が低減された次亜塩素酸水として、次亜塩素酸水処理部3bの陽電極側における電解流路(第二陽電極側流路35)から送出される次亜塩素酸水(第二陽電極抽出溶液32a)を外部に安定して供給することができる。
【0130】
(6)次亜塩素酸水供給装置1では、平面状の第二陽電極24と、第二陽電極24と対向する平面状の第二隔膜26と、第二陽電極24と第二隔膜26との間に設けられ、流路に沿って第二陽電極側流路35内に第二陽電極24及び第二隔膜26を露出させる第二陽電極側スペーサ27とを有し、第二陽電極側流路35は、流路に沿って露出する第二陽電極24及び第二隔膜26と、第二陽電極側スペーサ27とにより構成されている。平面状の第二陰電極25と、第二陰電極25と対向する平面状の第二隔膜26と、第二陰電極25と第二隔膜26との間に設けられ、流路に沿って第二陰電極側流路36内に第二陰電極25及び第二隔膜26を露出させる第二陰電極側スペーサ28と、を有し、第二陰電極側流路36は、流路に沿って露出する第二陰電極25及び第二隔膜26と、第二陰電極側スペーサ28とにより構成されている。こうした構成によれば、第二陽電極側スペーサ27に形成される流路形状、及び第二陰電極側スペーサ28に形成される流路形状により、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離する能力を変化させることができるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオン成分を分離低減する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0131】
(7)次亜塩素酸水供給装置1では、陰陽電極間スペーサは、第二陽電極側スペーサ27と第二陰電極側スペーサ28を重ね合わせて構成されている。こうした構成によれば、構造を簡易化できるとともに、無隔膜電解流路(第二陰陽電極間流路34)と第二有隔膜電解流路(第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36)との間の境界部による液漏れ及び流路内イオン分布の乱れを抑制して、流通させることができる。
【0132】
(8)次亜塩素酸水供給装置1では、水道水処理ユニット2の陽電極側及び陰電極側のそれぞれの入口に設けられ、第一有隔膜電解流路(第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16)に水道水を供給する第一陰電極側供給ポンプ18及び第一陽電極側供給ポンプ19と、次亜塩素酸水生成ユニット3の陽電極側及び陰電極側のそれぞれの出口に設けられ、無隔膜電解流路(第二陰陽電極間流路34)に塩水を供給するとともに、第二有隔膜電解流路(第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36)において電解生成した次亜塩素酸水を供給する第二陽電極側供給ポンプ38及び第二陰電極側供給ポンプ39と、を備える。第一陰電極側供給ポンプ18及び第一陽電極側供給ポンプ19は、水道水を、第一陰電極側流路15及び第一陽電極側流路16にそれぞれ一定流速で供給する。第二陽電極側供給ポンプ38及び第二陰電極側供給ポンプ39は、次亜塩素酸水生成部3aにおいて電解生成した次亜塩素酸水を第二陽電極側流路35及び第二陰電極側流路36にそれぞれ一定流速で供給するようにした。これにより、第一有隔膜電解流路では、第一陰電極側流路15内にて電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、第一陽電極側流路16内にて電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、第一陰電極側流路15における水道水に含まれる陰イオン成分が分離希薄化する濃度、及び第一陽電極側流路16における水道水に含まれる陰イオン成分が濃縮化する濃度を安定にすることができる。一方、第二有隔膜電解流路では、第二陽電極側流路35内にて電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、第二陰電極側流路36内にて電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、第二陽電極側流路35における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオン成分が分離希薄化する濃度、及び第二陰電極側流路36における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオン成分が濃縮化する濃度を安定にすることができる。
【0133】
(9)次亜塩素酸水供給装置1では、水道水処理ユニット2の陽電極側における水道水電解流路(第一陽電極側流路16)から送出される水道水溶液(第一陽電極抽出溶液14a)を貯留する排水側タンク23を備える。排水側タンク23は、次亜塩素酸水生成ユニット3の陰電極側における電解流路(第二陰電極側流路36)から送出される溶液(第二陰電極抽出溶液33a)が混合されるように接続されている。こうした構成によれば、水道水処理ユニット2の陽電極側における水道水電解流路から送出されるpHが酸性の水道水溶液(第一陽電極抽出溶液14a)と、次亜塩素酸水生成ユニット3の陰電極側における電解流路(第二陰電極側流路36)から送出されるpHがアルカリ性の次亜塩素酸水(第二陰電極抽出溶液33a)とを混合して中和することとなり、混合した溶液はpHがアルカリ性となるが、次亜塩素酸水生成ユニット3の陰電極側における電解流路(第二陰電極側流路36)から送出されるアルカリ溶液のpHより中性側に近づけた状態で排液することができる。
【0134】
(実施の形態2)
図1及び図13を参照して、本発明の実施の形態2に係る、次亜塩素酸水供給装置1を用いた空間除菌システム50について説明する。図13は、本発明の実施の形態2に係る、次亜塩素酸水供給装置1を用いた空間除菌システム50の概略図である。なお、以下で説明する実施の形態2に係る空間除菌システム50は、実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1を組み込んだシステムである。実施の形態2の説明においては、実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1と実質的に同様の構成については、同様の符号を付し、説明を一部簡略化または省略する場合がある。
【0135】
本実施の形態2に係る空間除菌システム50は、浴室空間において、次亜塩素酸水供給装置1から生成された次亜塩素酸水をミスト噴霧装置54から噴霧するとともに排水口56に流すことで、浴室空間に対する除菌と洗浄とを行うシステムである。なお、浴室空間は、請求項の「所定の空間」に相当する。
【0136】
具体的には、図13に示すように、空間除菌システム50は、次亜塩素酸水供給装置1(水道水処理ユニット2、次亜塩素酸水生成ユニット3、第一陰電極側供給ポンプ18、第一陽電極側供給ポンプ19、塩水生成タンク21、塩供給部22、排水側タンク23、第二陽電極側供給ポンプ38、第二陰電極側供給ポンプ39)と、陽電極側抽出溶液タンク51と、陰電極側抽出溶液タンク52と、陽電極側抽出溶液浴室配管53と、ミスト噴霧装置54と、陰電極側抽出溶液浴室配管55と、排水口56と、を備える。
【0137】
次亜塩素酸水供給装置1を構成する水道水処理ユニット2は、水道水を供給して、電気透析により水道水に含まれる陰イオン成分(Clイオン、SO 2-イオン、及びNO イオン)を分離希薄化して、塩水生成タンク21に抽出する。塩水生成タンク21では、塩供給部22から塩成分を追加して混合し、塩水として次亜塩素酸水生成ユニット3に供給する。水道水処理ユニット2への水道水供給は、第一陰電極側供給ポンプ18及び第一陽電極側供給ポンプ19によって行われる。また、電気透析により水道水に含まれる陰イオン成分を分離濃縮化した溶液(第一陽電極抽出溶液14a)は、排水側タンク23に抽出される。
【0138】
次亜塩素酸水生成ユニット3は、塩水生成タンク21で生成された塩水を供給し、前段で電気分解を行って次亜塩素酸水を生成し、さらに後段で電気透析を行うことで、残留成分となる陽イオン成分を分離希薄化した次亜塩素酸水を第二陽電極溶液抽出口32から抽出する。抽出した第二陽電極抽出溶液32aは、除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水であり、陽電極側抽出溶液タンク51に送液される。さらに、陽電極側抽出溶液浴室配管53にてミスト噴霧装置54に送液され、浴室空間に噴霧される。
【0139】
また、残留成分となる陽イオン成分を分離濃縮化した次亜塩素酸水を第二陰電極溶液抽出口33ら抽出し、排水側タンク23に供給して、水道水処理ユニット2で抽出された第一陽電極抽出溶液14aと混合して排出される。この排出液は洗浄力の高いNaClO及びアルカリ成分主体の次亜塩素酸水であり、排水側タンク23を介して陰電極側抽出溶液タンク52に送液される。さらに陰電極側抽出溶液浴室配管55にて排水口56に送液され、排水口56を経由して排水管に流れる。
【0140】
陽電極側抽出溶液タンク51は、第二陽電極側流路35から抽出した除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水である第二陽電極抽出溶液32aを、ミスト噴霧装置54に送液されるまで、一時的に貯めておくタンクである。陽電極側抽出溶液タンク51は、陽電極側抽出溶液浴室配管53を介してミスト噴霧装置54と接続される。
【0141】
陰電極側抽出溶液タンク52は、第一陽電極側流路16及び第二陰電極側流路36を混合した排水側タンク23から抽出した洗浄力の高いNaClO及びアルカリ成分主体の次亜塩素酸水を、排水口56に送液されるまで、一時的に貯めておくタンクである。陰電極側抽出溶液タンク52は、陰電極側抽出溶液浴室配管55を介して排水口56と接続される。
【0142】
陽電極側抽出溶液浴室配管53は、陽電極側抽出溶液タンク51から、ミスト噴霧装置54まで送液するための配管である。浴室の壁裏及び天井に施工されてあり、天井に設置されたミスト噴霧装置54と接続されている。
【0143】
陰電極側抽出溶液浴室配管55は、陰電極側抽出溶液タンク52から、排水口56まで送液するための配管である。浴室の壁裏及び床面に施工されてあり、排水口56に接続されている。
【0144】
ミスト噴霧装置54は、次亜塩素酸水を浴室空間にミスト状にして噴霧する装置である。より詳細には、ミスト噴霧装置54は、陽電極側抽出溶液タンク51から陽電極側抽出溶液浴室配管53を通って搬送されてくる次亜塩素酸水である第二陽電極抽出溶液32aを微細なミストにして放出する装置である。ミスト噴霧装置54は、浴室空間の天井から浴室空間全体にミストが噴霧できるように噴霧部が天井から浴室側に突出して設置されている。ミストの噴霧方式としては、圧縮空気を使用して微細化する二流体噴霧方式、超音波素子を使用して10μm以下の微細ミストを噴霧する超音波方式、又は回転体から溶液を放出して破砕し1μm以下の微細ミストを噴霧する破砕噴霧方式などが挙げられる。なお、ミスト噴霧装置54は、請求項の「除菌装置」に相当する。
【0145】
排水口56は、浴室空間内で発生した水あるいは汚れを浴室空間外に排出するための排水管と接続するための接続口である。排水口56には、陰電極側抽出溶液タンク52から陰電極側抽出溶液浴室配管55を通って第一陽電極抽出溶液14a及び第二陰電極抽出溶液33aの混合液を搬送し、洗浄力の高いNaClO及びアルカリ成分主体の次亜塩素酸水により、排水口56及び排水口56に接続される排水管の汚れを洗浄することができる。なお、排水口56は、請求項の「排水管」と読み替えることができる。
【0146】
以上、本実施の形態2に係る、次亜塩素酸水供給装置1を用いた空間除菌システム50によれば、以下の効果を享受することができる。
【0147】
(10)空間除菌システム50は、上述した次亜塩素酸水供給装置1と、外部として、次亜塩素酸水処理部3bの陽電極側における電解流路(第二陽電極側流路35)から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出するミスト噴霧装置54と、を備える構造とした。こうした構成によれば、次亜塩素酸水処理部3bの陽電極側における電解流路(第二陽電極側流路35)から送出される次亜塩素酸水のミストを所定の空間(浴室空間)に放出しても、所定の空間に残る残留成分が抑制される。つまり、次亜塩素酸水処理部3bの陽電極側における電解流路(第二陽電極側流路35)から送出される次亜塩素酸水が、塩水の電気分解によって生じる残留成分、及び水道水に含まれる陽イオン成分による残留成分が低減された次亜塩素酸水であるため、所定の空間を除菌する際に、除菌性能を保ちながら、残留成分に起因する金属腐食の発生を抑制することができる。
【0148】
(11)空間除菌システム50は、所定の空間には、所定の空間内で発生する水を排出する排水口56が設けられており、排水口56は、水道水処理ユニット2の陽電極側における水道水電解流路から送出される水道水溶液と、次亜塩素酸水処理部3bの陰電極側における電解流路(第二陰電極側流路36)から送出される次亜塩素酸水(第二陰電極抽出溶液33a)とが混合されて導入されるように構成されている。こうした構成によれば、次亜塩素酸水処理部3bの陰電極側における電解流路(第二陰電極側流路36)から送出される次亜塩素酸水(第二陰電極抽出溶液33a)が、水道水処理ユニット2の陽電極側における水道水電解流路(第一陽電極側流路16)から送出されるpHが酸性の水道水溶液(第一陽電極抽出溶液14a)によってある程度中和されるものの、排水口56に、残留成分の要因となる陽イオン成分が濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄性の高い次亜塩素酸水として導入することができる。このため、排水口56に導入される次亜塩素酸水によって排水管内を洗浄することができる。
【0149】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、水道水に含まれる陰イオン成分を低減しつつ、陰イオン成分が低減された塩水の電気分解によって生成したHClO主体の次亜塩素酸水に含まれる残留成分を低減した次亜塩素酸水を連続的に供給することが可能な装置であり、こうした次亜塩素酸水を用いてミスト噴霧することで浴室空間のカビ及び菌に対して除菌を行いながら、浴室内で使用される金属等への腐食を抑制することを可能とする有用な手段である。
【符号の説明】
【0151】
1 次亜塩素酸水供給装置
2 水道水処理ユニット
3 次亜塩素酸水生成ユニット
3a 次亜塩素酸水生成部
3b 次亜塩素酸水処理部
4 第一陰電極
5 第一陽電極
6 第一隔膜
7 第一陰電極側スペーサ
8 第一陽電極側スペーサ
9a 第一陰電極用パッキン
9b 第一陽電極用パッキン
10a 第一陰電極側槽筐体側面
10b 第一陽電極側槽筐体側面
11 第一陰電極溶液供給口
11a 第一陰電極供給溶液
12 第一陰電極溶液抽出口
12a 第一陰電極抽出溶液
13 第一陽電極溶液供給口
13a 第一陽電極供給溶液
14 第一陽電極溶液抽出口
14a 第一陽電極抽出溶液
15 第一陰電極側流路
15a 第一陰電極側流路孔
16 第一陽電極側流路
16a 第一陽電極側流路孔
17 電気透析電源
18 第一陰電極側供給ポンプ
19 第一陽電極側供給ポンプ
20 塩水生成ユニット
21 塩水生成タンク
22 塩供給部
23 排水側タンク
24 第二陽電極
25 第二陰電極
26 第二隔膜
27 第二陽電極側スペーサ
28 第二陰電極側スペーサ
29a 第二陽電極用パッキン
29b 第二陰電極用パッキン
30a 第二陽電極側槽筐体側面
30b 第二陰電極側槽筐体側面
31 第二陰陽電極溶液供給口
31a 第二陰陽電極供給溶液
32 第二陽電極溶液抽出口
32a 第二陽電極抽出溶液
33 第二陰電極溶液抽出口
33a 第二陰電極抽出溶液
34 第二陰陽電極間流路
35 第二陽電極側流路
35a 第二陽電極側流路孔
36 第二陰電極側流路
36a 第二陰電極側流路孔
37 電気分解・電気透析電源
38 第二陽電極側供給ポンプ
39 第二陰電極側供給ポンプ
40 水道水タンク
41 次亜塩素酸水タンク
50 空間除菌システム
51 陽電極側抽出溶液タンク
52 陰電極側抽出溶液タンク
53 陽電極側抽出溶液浴室配管
54 ミスト噴霧装置
55 陰電極側抽出溶液浴室配管
56 排水口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13