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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118159
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】布帛および繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/513 20210101AFI20230818BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20230818BHJP
   A41D 31/08 20190101ALI20230818BHJP
   A41D 31/14 20190101ALI20230818BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20230818BHJP
【FI】
D03D15/513
A41D31/00 503F
A41D31/08
A41D31/14
A41D31/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020936
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 博樹
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048AA25
4L048AA53
4L048AA56
4L048AB05
4L048AB12
4L048BA01
4L048CA01
4L048CA06
4L048CA11
4L048DA02
(57)【要約】
【課題】メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛であって、優れた難燃性と通気性を有し、好ましくは低目付けであるものの引裂強力が高く、ピリング性能にも優れた布帛および繊維製品を提供する。
【解決手段】メタ型全芳香族ポリアミド繊維を30重量%以上含む布帛であって、JIS L1096:2010 A法(フラジール法)に規定される通気度が50cm/cm/s以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維を布帛重量に対して30重量%以上含む布帛であって、JIS L1096:2010 A法(フラジール法)に規定される通気度が50cm/cm/s以上であることを特徴とする布帛。
【請求項2】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量が0.1質量%以下である、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、結晶化度が15~50%の範囲内である、請求項1または請求項2に記載の布帛。
【請求項4】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維以外の難燃繊維を布帛重量に対して40重量%以上含む、請求項1~3のいずれかに記載の布帛。
【請求項5】
前記難燃繊維が、モダクリル繊維、難燃レーヨン繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズチアゾール(PBTZ)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリスルホンアミド(PSA)繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、ポリアリレート(PAr)繊維、メラミン繊維、フェノール繊維、フッ素系繊維、およびポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維からなる群から選択される1種以上である、請求項4に記載の布帛。
【請求項6】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が紡績糸の構成繊維として含まれ、該紡績糸の紡績糸番手が30/2~40/2の範囲内である、請求項1~5のいずれかに記載の布帛。
【請求項7】
前記紡績糸の下撚係数が3.4~4.0の範囲内である、請求項6に記載の布帛。
【請求項8】
前記紡績糸の上撚数が23.0~26.0の範囲内である、請求項6または請求項7に記載の布帛。
【請求項9】
前記布帛の組織が、平織または2/1綾織である、請求項1~8のいずれかに記載の布帛。
【請求項10】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が、有機染料または有機顔料または無機顔料を含む、請求項1~9のいずれかに記載の布帛。
【請求項11】
前記難燃繊維が染料で染色されている、請求項5~10のいずれかに記載の布帛。
【請求項12】
布帛の目付けが120~300g/mの範囲内である、請求項1~11のいずれかに記載の布帛。
【請求項13】
JISL0843A法で規定される方法で測定して、耐光堅牢度が3級以上である、請求項1~12のいずれかに記載の布帛。
【請求項14】
ISO15025:2000 A法で規定される方法で測定して、残炎時間が2秒以下である、請求項1~13のいずれかに記載の布帛。
【請求項15】
ISO13937-2に規定される引裂強力試験で15N以上である、請求項1~14のいずれかに記載の布帛。
【請求項16】
JIS L1076 ICI 10hrに規定されるピリング試験で2級以上である、請求項1~15のいずれかに記載の布帛。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載された布帛を用いてなり、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛であって、優れた難燃性と通気性を有し、好ましくは低目付けであるものの引裂強力が高く、ピリング性能にも優れた布帛および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、難燃ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、軍服などの用途で、難燃性を有する布帛が用いられている。
一方、近年では、難燃性だけでなく着用快適性をも兼備したものが求められており、例えば、特許文献1~3では種々の布帛が提案されている。
しかしながら、これらの布帛ではまだ満足とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010-502849号公報
【特許文献2】特開2014-210985号公報
【特許文献3】特開2021-91990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛であって、優れた難燃性と通気性を有し、好ましくは低目付けであるものの引裂強力が高く、ピリング性能にも優れた布帛および繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。かくして、本発明によれば「メタ型全芳香族ポリアミド繊維を布帛重量に対して30重量%以上含む布帛であって、JIS L1096:2010 A法(フラジール法)に規定される通気度が50cm/cm/s以上であることを特徴とする布帛。」が提供される。
【0006】
その際、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量が0.1質量%以下であることが好ましい。また、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、結晶化度が15~50%の範囲内であることが好ましい。また、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維以外の難燃繊維を布帛重量に対して40重量%以上含むことが好ましい。その際、前記難燃繊維が、モダクリル繊維、難燃レーヨン繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズチアゾール(PBTZ)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリスルホンアミド(PSA)繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、ポリアリレート(PAr)繊維、メラミン繊維、フェノール繊維、フッ素系繊維、およびポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0007】
本発明の布帛において、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が紡績糸の構成繊維として含まれ、該紡績糸の紡績糸番手が30/2~40/2の範囲内であることが好ましい。また、前記紡績糸の下撚係数が3.4~4.0の範囲内であることが好ましい。また、前記紡績糸の上撚数が23.0~26.0の範囲内であることが好ましい。また、前記布帛の組織が、平織または2/1綾織であることが好ましい。また、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が、有機染料または有機顔料または無機顔料を含むことが好ましい。また、前記難燃繊維が染料で染色されていることが好ましい。また、布帛の目付けが120~300g/mの範囲内であることが好ましい。また、JISL0843A法で規定される方法で測定して、耐光堅牢度が3級以上であることが好ましい。また、ISO15025:2000 A法で規定される方法で測定して、残炎時間が2秒以下であることが好ましい。また、ISO13937-2に規定される引裂強力試験で15N以上であることが好ましい。また、JIS L1076 ICI 10hrに規定されるピリング試験で2級以上であることが好ましい。
【0008】
また、本発明によれば、前記の布帛を用いてなり、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛であって、優れた難燃性と通気性を有し、低目付けであるものの引裂強力が高く、ピリング性能にも優れた布帛および繊維製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明で用いるメタ型全芳香族ポリアミド繊維とは、その繰返し単位の85モル%以上がm-フェニレンイソフタルアミドであるポリマーからなる繊維である。かかるメタ型全芳香族ポリアミドは、15モル%未満の範囲内で第3成分を含んだ共重合体であってもさしつかえない。
【0011】
このようなメタ型全芳香族ポリアミドは、従来から公知の界面重合法により製造することができ、そのポリマーの重合度としては、0.5g/100mlの濃度のN-メチル-2-ピロリドン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が1.3~1.9dl/gの範囲のものが好ましく用いられる。
【0012】
上記メタ型全芳香族ポリアミドにはアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩が含有されていてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルテトラデシルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩等の化合物が好ましく例示される。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、又はドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩は、入手しやすく、熱的安定性も良好なうえ、N-メチル-2-ピロリドンに対する溶解度も高いため特に好ましく例示される。
【0013】
上記アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩の含有割合は、十分な染色性の改良効果を得るために、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドに対して2.5モル%以上、好ましくは3.0~7.0モル%の範囲にあるものが好ましい。
【0014】
また、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドとアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を混合する方法としては、溶媒中にポリ-m-フェニレンイソフタルアミドを混合、溶解し、それにアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を溶媒に溶解する方法などが用いられそのいずれを用いてもよい。このようにして得られたドープは、従来から公知の方法により繊維に形成される。
【0015】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維に用いるポリマーは、染着性や耐変褪色性を向上させる等目的で、下記の式(2)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1~10mol%となるように共重合させることも可能である。
-(NH-Ar1-NH-CO-Ar1-CO)- ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【0016】
また、第3成分として共重合させることも可能であり、式(2)、(3)に示した芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、p-フェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、アセチルフェニレンジアミン、アミノアニシジン、ベンジジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノアゾベンゼン等が挙げられる。式(4)、(5)に示すような芳香族ジカルボン酸ジクロライドの具体例としては、例えば、テレフタル酸クロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’-ビフェニルジカルボン酸クロライド、5-クロルイソフタル酸クロライド、5-メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0017】
N-Ar2-NH ・・・式(2)
N-Ar2-Y-Ar2-NH ・・・式(3)
XOC-Ar3-COX ・・・式(4)
XOC-Ar3-Y-Ar3-COX ・・・式(5)
【0018】
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【0019】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の結晶化度は、染料の吸尽性がよく、より少ない染料でまたは染色条件が弱くても狙いの色に調整し易いという点で、5~50%であることが好ましい。さらには、染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点および実用上必要な寸法安定性も確保できる点で15~35%であることがより好ましい。
【0020】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の優れた難燃性能を損なわない点で、0.1質量%以下(好ましくは0.001~0.1質量%)であることが好ましい。
【0021】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は以下の方法により製造することができ、特に後述する方法により、結晶化度や残存溶媒量を上記範囲とすることができる。
メタ型全芳香族ポリアミドポリマーの重合方法としては、特に限定する必要はなく、例えば特公昭35-14399号公報、米国特許第3360595号公報、特公昭47-10863号公報などに記載された溶液重合法、界面重合法を用いてもよい。
【0022】
紡糸溶液としては、とくに限定する必要はないが、上記溶液重合や界面重合などで得られた、芳香族コポリアミドポリマーを含むアミド系溶媒溶液を用いても良いし、上記重合溶液から該ポリマーを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用いても良い。
【0023】
ここで用いられるアミド系溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを例示することができるが、とくにN,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0024】
上記の通り得られた共重合芳香族ポリアミドポリマー溶液は、さらにアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含むことにより安定化され、より高濃度、低温での使用が可能となり好ましい。好ましくはアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩がポリマー溶液の全質量に対して1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
【0025】
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1000~30000個、紡糸孔径が0.05~0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、20~90℃の範囲が適当である。
【0026】
繊維を得るために用いる凝固浴としては、実質的に無機塩を含まない、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45~60%の水溶液を、浴液の温度10~50℃の範囲で用いる。アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。一方、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が60%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このためやはり、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1~30秒の範囲が適当である。
【0027】
引続き、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45~60%の水溶液であり、浴液の温度を10~50℃の範囲とした可塑延伸浴中にて、3~4倍の延伸倍率で延伸を行う。延伸後、10~30℃のNMPの濃度が20~40%の水溶液、続いて50~70℃の温水浴を通して十分に洗浄を行う。
洗浄後の繊維は、温度270~290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ型全芳香族アラミド繊維を得ることができる。
【0028】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、繊維は、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよい。特に、他の繊維と混紡する上で繊維長25~200mmの短繊維が好ましい。また、単繊維繊度としては1~5dtexの範囲が好ましい。
また、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が、有機染料または有機顔料または無機顔料を含むことが好ましい。
【0029】
本発明の布帛において、優れた難燃性を得る上で、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が布帛重量に対して30重量%以上(より好ましくは30~60重量%)含まれることが重要である。
また、本発明の布帛において、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維以外の難燃繊維が布帛重量に対して40重量%以上含まれることが好ましい。また、前記難燃繊維が染料で染色されていることが好ましい。
【0030】
ここで、前記難燃繊維としては、モダクリル繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、難燃レーヨン繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズチアゾール(PBTZ)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリスルホンアミド(PSA)繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、ポリアリレート(PAr)繊維、メラミン繊維、フェノール繊維、フッ素系繊維、およびポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。その際、かかる難燃性繊維において限界酸素指数(LOI)が20以上であることが好ましい。
【0031】
また、布帛にさらに、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、コットン繊維、獣毛繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、ポリカーボネート繊維などが含まれていると、吸水性、染色性、着用快適性などが付加され好ましい。
また、セルロース繊維の染色は、反応染料または/およびスレン染料で連続染色されていることが好ましい。
【0032】
難燃レーヨン繊維に使用される難燃剤は、強酸または弱塩基の塩、とくにアンモニウム塩、アミン塩、珪素とナトリウムを含む珪酸化合物、燐系化合物、ブロム系、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモンおよびホウ酸塩などの無機塩等の難燃剤など公知のものを任意に採用可能である。
また、導電糸は、規格ISO11612にて必須である事が記載されており、難燃素材として、生地での静電気を防ぐ上で重要であり、導電糸が布帛に含まれていることが好ましい。
【0033】
かかる導電糸(以下、導電繊維、導電性繊維と称することがある)としては、導電性カーボン微粒子を含むナイロン導電性繊維またはアクリル系導電性繊維が好ましい。布帛にメタ型全芳香族ポリアミド繊維とアクリル系導電性繊維が含まれていると、カチオン染料で染色することにより、メタ型全芳香族ポリアミド繊維およびアクリル系導電性繊維がいずれも濃色に、かつ布帛全体として均一に染色される。その際、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維および導電性繊維が同一の色に着色してなることが好ましい。ここで、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維および導電糸の色相差としては、ΔEが3以下であることが好ましい。
【0034】
前記アクリル系導電性繊維としては、アクリル系繊維に導電性カーボンを練り込んだ繊維、導電性微粒子を含有する芯部と、導電性微粒子を含有しない鞘部より構成される芯鞘型複合繊維などが好ましい。特に、鞘部が導電性微粒子を含有しないアクリルからなり、かつ芯部が導電性カーボン含有ポリマーからなる芯鞘型複合繊維(または偏心芯鞘型複合繊維)などが好ましい。かかるアクリル系導電性繊維を布帛に含有させることで、布帛の摩擦により発生する静電気を低減することができ、その結果、塵埃の付着、放電による弊害、防爆環境での着火などの問題を低減することができる。
【0035】
前記アクリル系導電性繊維として、例えば、特開2009-221632号公報に記載のものが好ましい。すなわち、導電性微粒子を含有する芯部と、導電性微粒子を含有しない鞘部より構成され、芯鞘比率が15/85~50/50であり、芯部の導電性微粒子含有率が20~60質量%であり、単繊維比抵抗値が10~10Ω・cmの芯鞘型導電性アクリル繊維である。
【0036】
前記導電糸において、繊維の形態は、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよい。特に、他の繊維と混紡する上で繊維長25~200mm(より好ましくは30~150mm)の短繊維が好ましい。また、単繊維繊度としては1~5dtexの範囲が好ましい。
【0037】
ここで、これらの繊維は混紡されていることが好ましい。その際、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の優れた耐熱性と難燃性を発揮させるために、より具体的な紡績糸の例としては、メタ型全芳香族ポリアミド繊維が30~98重量%、モダクリル繊維および/またはセルロース系繊維が35~65重量%の混率として洗濯収縮性を向上させるとともに染色性と快適性を併せ持つようにすることもできる。また、布帛を構成する繊維に、難燃剤、紫外線吸収剤、反射剤、顔料などを含ませてもよい。
【0038】
前記紡績糸において、紡績糸番手としては30/2~40/2の範囲内であることが好ましい。また、優れたピリング性能を得る上で、紡績糸の下撚係数が3.4~4.0の範囲内であることが好ましい。また、前記紡績糸の上撚数が23.0~26.0の範囲内であることが好ましい。
【0039】
本発明において、布帛の製造方法は特に限定するものではなく、公知のいかなる方法でも用いる可能である。例えば、上記繊維の紡績糸を混綿して紡績糸を得た後、単糸または双糸にてレピア織機などを用いて、綾織(好ましくは2/1綾織)、平織などの組織に製織することが好ましい。
【0040】
次いで、布帛に染色加工を施す。特に、毛焼、精練、連続染色、ファイナルセットを施すことが好ましい。
かくして得られた布帛は、優れた難燃性と通気性を有し、低目付けであるが引裂強力が高く、ピリング性能にも優れる。
【0041】
ここで、JIS L1096:2010 A法(フラジール法)に規定される通気度が50cm/cm/s以上(より好ましくは75~500cm/cm/s、さらに好ましくは80~300cm/cm/s、特に好ましくは100~250cm/cm/s)であることが重要である。また、布帛の目付けが120~300g/m(より好ましくは130~250g/m)の範囲内であることが好ましい。また、JISL0843A法で規定される方法で測定して、耐光堅牢度が3級以上(より好ましくは3~5級)であることが好ましい。また、ISO15025:2000 A法で規定される方法で測定して、残炎時間が2秒以下(より好ましくは0秒)であることが好ましい。また、ISO13937-2に規定される引裂強力試験で15N以上(より好ましくは15~50N)であることが好ましい。ただし、引裂強力は経方向と緯方向の平均をとるものとする。また、JIS L1076 ICI 10hrに規定されるピリング試験で2級以上(より好ましくは3~5級)であることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の繊維製品は前記の布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。かかる繊維製品は前記の布帛を用いているので、優れた難燃性と通気性を有し、低目付けであるが引裂強力が高く、ピリング性能にも優れる。
【実施例0043】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
【0044】
(1)目付け
JIS L1096 A法で規定される方法で測定した。
【0045】
(2)燃焼性
ISO15025:2000 A法、JISL1091A-1法で規定される方法で測定した。
【0046】
(3)引裂強力
ISO13937-2で規定される方法で経方向と緯方向について測定し、両者の平均をとった。
【0047】
(4)ピリング性能
JIS L1076 ICI 10hrで規定される方法で測定した。
【0048】
(5)通気度
JIS L1096:2010 A法(フラジール法)により通気性を測定した。
【0049】
(6)耐光堅牢度
JIS L0843A法により耐光堅牢度を測定した。
【0050】
(7)残存溶媒量
原繊維を約8.0g採取し、105℃で120分間乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M1)を秤量した。続いて、この繊維について、メタノール中で1.5時間、ソックスレー抽出器を用いて還流抽出を行い、繊維中に含まれるアミド系溶媒の抽出を行った。抽出を終えた繊維を取り出して、150℃で60分間真空乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M2)を秤量した。繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)は、得られるM1およびM2を用いて、下記式により算出した。
残存溶媒量(%)=[(M1-M2)/M1]×100
【0051】
(8)結晶化度
X線回折測定装置(リガク社製 RINT TTRIII)を用い、原繊維を約1mm径の繊維束に引きそろえて繊維試料台に装着して回折プロファイルを測定した。測定条件は、Cu-Kα線源(50kV、300mA)、走査角度範囲10~35°、連続測定0.1°幅計測、1°/分走査でおこなった。実測した回折プロファイルから空気散乱、非干渉性散乱を直線近似で補正して全散乱プロファイルを得た。次に、全散乱プロファイルから非晶質散乱プロファイルを差し引いて結晶散乱プロファイルを得た。結晶化度は、結晶散乱プロファイルの面積強度(結晶散乱強度)と全散乱プロファイルの面積強度(全散乱強度)から、次式により求めた。
結晶化度(%)=[結晶散乱強度/全散乱強度]×100
【0052】
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、次の方法で作製した。
特公昭47-10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した、固有粘度(I.V.)が1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末20.0質量部を、-10℃に冷却したN-メチル-2-ピロリドン(NMP)80.0質量部中に懸濁させ、スラリー状にした。引き続き、懸濁液を60℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。該ポリマー溶液に、ポリマー対比3.0質量%の2-[2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール粉末(水への溶解度:0.01mg/L)およびリン系難燃剤を混合溶解させ、減圧脱法して紡糸液(紡糸ドープ)とした。
【0053】
[紡糸・凝固工程]
上記紡糸ドープを、孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/NMP=45/55(質量部)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して紡糸した。
【0054】
[可塑延伸浴延伸工程]
引き続き、温度40℃の水/NMP=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
【0055】
[洗浄工程]
延伸後、20℃の水/NMP=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
【0056】
[乾熱処理工程]
洗浄後の繊維について、表面温度280℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
【0057】
[原繊維の物性]
得られたメタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性は、繊度1.7dtex、残存溶媒量0.08質量%、結晶化度は19%であった。得られた原繊維を用いて、捲縮加工、カットを行い、長さ51mmのステープルファイバー(原綿)を得た。
【0058】
[後加工]
毛焼、精練、連続染色、ファイナルセットにて後加工を行った。
【0059】
[実施例1]
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(MA)(長さ51mm)、モダクリル繊維(MD、カネカ社製:「ProtexM(登録商標)」)(長さ51mm)、導電糸(AS、導電性カーボン微粒子を芯部に練りこんだ芯鞘型アクリル系導電性繊維)(長さ51mm)の各ステープルファイバーを、MA/MD/AS=30/68/2の比率で混紡した紡績糸36番手/双糸とし、経58本/25.4mm、緯53本/25.4mmの織密度で製織し、目付160g/mの平織物を得た。これを用いて、上記の方法で加工した。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例2]
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(MA)(長さ51mm)、難燃レーヨン繊維(FR)(長さ51mm)、導電糸(AS)(長さ51mm)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(PA)(長さ51mm)の各ステープルファイバーを、MA/FR/AS/PA=35/58/2/5の比率で混紡した紡績糸36番手/双糸とし、経59本/25.4mm、緯54本/25.4mmの織密度で製織し、目付165g/mの平織物を得た。これを用いて、上記の方法で加工した。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例3]
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(MA)(長さ51mm)、モダクリル繊維(MD)(長さ51mm)、導電糸(AS)(長さ51mm)の各ステープルファイバーを、MA/MD/AS=30/68/2の比率で混紡した紡績糸36番手/双糸とし、経88本/25.4mm、緯56本/25.4mmの織密度で製織し、目付200g/mの綾織物を得た。これを用いて、上記の方法で加工した。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例4]
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(MA)(長さ51mm)、難燃レーヨン繊維(FR)(長さ51mm)、導電糸(AS)(長さ51mm)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(PA)(長さ51mm)の各ステープルファイバーを、MA/FR/AS/PA=35/58/2/5の比率で混紡した紡績糸36番手/双糸とし、経88本/25.4mm、緯55本/25.4mmの織密度で製織し、目付200g/mの綾織物を得た。これを用いて、上記の方法で加工した。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例5]
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(MA)、難燃レーヨン繊維(FR)、コットン(CO)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(PA)からなるMA/FR/CO/PA=35/35/25/5の比率で混紡した紡績糸36番手/双糸とし、経88本/25.4mm、緯54本/25.4mmの織密度で製織し、目付200g/mの綾織物を得た。これを用いて、上記の方法で加工した。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(MA)(長さ51mm)、モダクリル繊維(MD)(長さ51mm)、導電糸(AS)(長さ51mm)の各ステープルファイバーを、MA/MD/AS=30/68/2の比率で混紡した紡績糸40番手/双糸とし、経100本/25.4mm、緯56本/25.4mmの織密度で製織し、目付200g/mの綾織物を得た。これを用いて、上記の方法で加工した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛であって、優れた難燃性と通気性を有し、低目付けであるものの引裂強力が高く、ピリング性能にも優れた布帛および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。