(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118168
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】ブレークアウト検出装置、金属の連続鋳造システム、及び金属の連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/16 20060101AFI20230818BHJP
B22D 11/04 20060101ALN20230818BHJP
B22D 11/115 20060101ALN20230818BHJP
【FI】
B22D11/16 104R
B22D11/04 311J
B22D11/115 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020956
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山内 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】上瀧 晴雄
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004AA09
4E004KA20
4E004MB20
4E004MC16
4E004NA01
4E004PA06
4E004SB09
4E004SC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、ブレークアウトの発生を検出し、連続鋳造設備における鋳片のホールドを防止することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係るブレークアウト検出装置は、金属を連続的に鋳造する連続鋳造設備においてブレークアウトを検出するブレークアウト検出装置であって、鋳型出口側の領域に配された、内部に流体が封入される圧力配管と、前記圧力配管の圧力を検知する圧力測定部と、前記圧力測定部によって測定された前記圧力配管の圧力値が第1の閾値以上の値から、前記第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する判定部と、前記判定部によりブレークアウトが発生したと判定された場合、前記連続鋳造設備の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える指示を前記連続鋳造設備に送信する運転モード設定部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を連続的に鋳造する連続鋳造設備においてブレークアウトを検出するブレークアウト検出装置であって、
鋳型出口側の領域に配された、内部に流体が封入される圧力配管と、
前記圧力配管の圧力を測定する圧力測定部と、
前記圧力測定部によって測定された前記圧力配管の圧力値が第1の閾値以上の値から、前記第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する判定部と、
前記判定部によりブレークアウトが発生したと判定された場合、前記連続鋳造設備の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える指示を送信する運転モード設定部と、を備える、ブレークアウト検出装置。
【請求項2】
前記運転モード設定部は、前記圧力測定部によって測定された前記圧力配管の圧力値が、前記第1の閾値以下の閾値である第3の閾値以上となったときに、前記連続鋳造設備の運転モードを準備モードから鋳造モードに切り替える指示を前記連続鋳造設備に送信する、請求項1に記載のブレークアウト検出装置。
【請求項3】
前記ブレークアウト検出装置の各種状態に関する通知を制御する通知制御部を更に備える、請求項1又は2に記載のブレークアウト検出装置。
【請求項4】
金属を連続的に鋳造する連続鋳造設備と、ブレークアウトを検出するブレークアウト検出装置と、を備え、
前記ブレークアウト検出装置は、
鋳型出口側の領域に配された、内部に流体が封入される圧力配管と、
前記圧力配管の圧力を測定する圧力測定部と、
を有し、
前記連続鋳造設備は、
前記圧力測定部によって測定された前記圧力配管の圧力値が第1の閾値以上の値から、前記第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する判定部と、
前記判定部によりブレークアウトが発生したと判定された場合、前記連続鋳造設備の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える運転モード設定部を有する、金属の連続鋳造システム。
【請求項5】
連続鋳造設備を用いて金属を連続的に鋳造する金属の連続鋳造方法であって、
鋳型出口側の領域に配された、内部に流体が封入された圧力配管の圧力を測定する圧力測定ステップと、
前記圧力測定ステップにおいて測定された圧力値に基づいて、ブレークアウトが発生したか否かを判定する判定ステップと、
ブレークアウトが発生したと判定された場合、前記連続鋳造設備の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える運転モード切替ステップと、を含み、
前記判定ステップでは、前記圧力値が、第1の閾値以上の値から、前記第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する、金属の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレークアウト検出装置、金属の連続鋳造システム、及び金属の連続鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造時において、凝固シェルが破断して溶融金属が流出するブレークアウトは、生産、設備に多大な被害を与える。そのため、ブレークアウトの発生を早期に検出することが求められ、ブレークアウトの発生を検出する様々な手法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、鋳型を通過した後の鋳片の冷却を行う二次冷却水の背圧からブレークアウトの発生の有無を判断する技術が提案されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、鋳型の出口近傍にカメラを配置し、このカメラで鋳片を撮像した画像からブレークアウトの発生の有無を判断する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-18982号公報
【特許文献2】特開2003-251443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されたように、カメラを用いてブレークアウトを検出する場合には、鋳型出口近傍において鋳片から発生する蒸気や鋳型からのパウダー等によってカメラの視界を安定して確保することができず、ブレークアウトを精度良く検出することができないおそれがあった。
【0007】
また、特許文献1、2の技術は、ブレークアウトの発生を検出した場合、タンディッシュから鋳型への溶鋼の供給を停止し、鋳造を停止する。鋳造を停止すると、連続鋳造設備において鋳片がホールドされ、その結果、鋳片の除去作業やロール等の交換作業が必要となり、生産性の低下やロール等の交換により製造コストが増加する。したがって、ブレークアウトの発生を検出した場合においても、連続鋳造設備の運転を継続することが求められる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ブレークアウトの発生を検出し、連続鋳造設備における鋳片のホールドを防止することが可能なブレークアウト検出装置、金属の連続鋳造システム、及び金属の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は以下とおりである。
[1] 本発明の一態様に係るブレークアウト検出装置は、金属を連続的に鋳造する連続鋳造設備においてブレークアウトを検出するブレークアウト検出装置であって、鋳型出口側の領域に配された、内部に流体が封入される圧力配管と、前記圧力配管の圧力を測定する圧力測定部と、前記圧力測定部によって測定された前記圧力配管の圧力値が第1の閾値以上の値から、前記第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する判定部と、前記判定部によりブレークアウトが発生したと判定された場合、前記連続鋳造設備の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える指示を送信する運転モード設定部と、を備える。
[2] 前記運転モード設定部は、前記圧力測定部によって測定された前記圧力配管の圧力値が、前記第1の閾値以下の閾値である第3の閾値以上となったときに、前記連続鋳造設備の運転モードを準備モードから鋳造モードに切り替える指示を前記連続鋳造設備に送信してもよい。
[3] 上記のブレークアウト検出装置は、前記ブレークアウト検出装置の各種状態に関する通知を制御する通知制御部を更に備えてもよい。
【0010】
[4] 本発明の別の態様に係る金属の連続鋳造システムは、金属を連続的に鋳造する連続鋳造設備と、ブレークアウトを検出するブレークアウト検出装置と、を備え、前記ブレークアウト検出装置は、鋳型出口側の領域に配された、内部に流体が封入される圧力配管と、前記圧力配管の圧力を測定する圧力測定部と、前記圧力測定部によって測定された前記圧力配管の圧力値が第1の閾値以上の値から、前記第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する判定部と、を有し、前記連続鋳造設備は、前記圧力測定部によって測定された前記圧力配管の圧力値が第1の閾値以上の値から、前記第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する判定部と、前記判定部によりブレークアウトが発生したと判定された場合、前記連続鋳造設備の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える運転モード設定部を有する。
【0011】
[5] 本発明の別の態様に係る金属の連続鋳造方法は、連続鋳造設備を用いて金属を連続的に鋳造する金属の連続鋳造方法であって、鋳型出口側の領域に配された、内部に流体が封入された圧力配管の圧力を測定する圧力測定ステップと、前記圧力測定ステップにおいて測定された圧力値に基づいて、ブレークアウトが発生したか否かを判定する判定ステップと、ブレークアウトが発生したと判定された場合、前記連続鋳造設備の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える運転モード切替ステップと、を含み、前記判定ステップでは、前記圧力値が、第1の閾値以上の値から、前記第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記各態様によれば、ブレークアウトの発生を検出し、連続鋳造設備における鋳片のホールドを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るブレークアウト検出装置が適用される連続鋳造設備の概略説明図である。
【
図2】従来の技術における、連続鋳造を停止した後の鋳片が完全凝固する位置を示す模式図である。
【
図3】同実施形態に係るブレークアウト検出装置の機能ブロック図である。
【
図4】同実施形態における圧力配管の配置の一例を示す説明図である。
【
図5】同実施形態に係るブレークアウト検出装置の配管図である。
【
図6】引抜きモードにおける、スプレーノズルによる鋳片の末端部の冷却を説明するための、連続鋳造装置の垂直部に配置されたサポートロール及びスプレーノズルの配置及び垂直部を通過する鋳片を示す模式図である。
【
図7】同実施形態に係るブレークアウト検出装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図8】本発明の別の実施形態に係る金属の連続鋳造システムの機能ブロック図である。
【
図9】同実施形態に係る金属の連続鋳造システムの変形例を示す機能ブロック図である。
【
図10】同実施形態に係る金属の連続鋳造システムの動作の流れを説明するための、(A)圧力配管の内部の圧力を示すグラフ及び(B)シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態であるブレークアウト検出装置、金属の連続鋳造システム、及び金属の連続鋳造方法について、添付した図面を参照して説明する。
【0015】
<連続鋳造設備1>
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る鋳造条件の設定装置が適用され得る連続鋳造装置の全体構成を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るブレークアウト検出装置が適用される連続鋳造設備の概略説明図である。なお、図中の各構成要素の寸法、比率は、実際の各構成要素の寸法、比率を表すものではない。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る連続鋳造装置1は、連続鋳造用の鋳型10を用いて溶湯2を連続鋳造し、スラブ等の鋳片3を製造するための装置である。連続鋳造装置1は、鋳型10と、取鍋4と、タンディッシュ5と、浸漬ノズル6と、二次冷却装置7と、鋳片切断機8と、電磁攪拌装置(図示せず)及び電磁ブレーキ装置(図示せず)と、を備える。
【0017】
取鍋4は、溶湯2を外部からタンディッシュ5まで搬送するための可動式の容器である。取鍋4は、タンディッシュ5の上方に配置され、取鍋4内の溶湯2がタンディッシュ5に供給される。タンディッシュ5は、鋳型10の上方に配置され、溶湯2を貯留して、当該溶湯2中の介在物を除去する。浸漬ノズル6は、タンディッシュ5の下端から鋳型10に向けて下方に延び、その先端は鋳型10内の溶湯2に浸漬されている。当該浸漬ノズル6は、タンディッシュ5にて介在物が除去された溶湯2を鋳型10内に連続供給する。
【0018】
鋳型10は、例えば、鋳片3の幅及び厚さに応じた四角筒状であり、冷却水が流動する水路が設けられた水冷銅板で構成される。鋳片3が鋳型10下方に向かって移動するにつれて、内部の未凝固部3bの凝固が進行し、外殻の凝固シェル3aの厚さが徐々に厚くなる。かかる凝固シェル3aと未凝固部3bを含む鋳片3は、鋳型10の下端から引き抜かれる。
【0019】
鋳型10の外側面には電磁攪拌装置及び電磁ブレーキ装置が設置され、これらを駆動させながら連続鋳造が行われる。電磁撹拌装置は、鋳型10内の溶湯2に対して動磁場を印加して、当該溶湯2に対して電磁力を作用させ、溶湯2を水平面内において旋回させる。また、電磁ブレーキ装置は、鋳型10内の溶湯2に対して静磁場を印加して、溶湯2の吐出流の勢いを弱めるような電磁力を溶湯2に作用させる。
【0020】
二次冷却装置7は、鋳型10の下方の二次冷却帯9に設けられ、鋳型10下端から引き抜かれた鋳片3を支持及び搬送しながら冷却する。この二次冷却装置7は、鋳片3の厚さ方向両側に配置される複数対の支持ロール(例えば、サポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13)と、鋳片3に対して冷却水を噴射する複数のスプレーノズル16(
図6参照)とを有する。
【0021】
二次冷却装置7に設けられる支持ロールは、鋳片3の厚さ方向両側に対となって配置され、鋳片3を支持しながら搬送する支持搬送手段として機能する。当該支持ロールにより鋳片3を厚さ方向両側から支持する。
【0022】
支持ロールであるサポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13は、二次冷却帯9における鋳片3の搬送経路(パスライン)を形成する。このパスラインは、
図1に示すように、鋳型10の直下では垂直であり、次いで曲線状に湾曲して、最終的には水平になる。二次冷却帯9において、当該パスラインが垂直である部分を垂直部9A、湾曲している部分を湾曲部9B、水平である部分を水平部9Cと称する。このようなパスラインを有する連続鋳造装置1は、垂直曲げ型の連続鋳造装置1と呼称される。
【0023】
サポートロール11は、鋳型10の直下の垂直部9Aに設けられる無駆動式ロールであり、鋳型10から引き抜かれた直後の鋳片3を支持する。鋳型10から引き抜かれた直後の鋳片3は、凝固シェル3aが薄い状態であるため、ブレークアウトやバルジングを防止するために比較的短い間隔(ロールピッチ)で鋳片3を支持する。
【0024】
ピンチロール12は、モータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであり、鋳片3を鋳型10から引き抜く機能を有する。ピンチロール12は、垂直部9A、湾曲部9B及び水平部9Cにおいて適切な位置にそれぞれ配置される。鋳片3は、ピンチロール12から伝達される力によって鋳型10から引き抜かれ、上記パスラインに沿って搬送される。
【0025】
セグメントロール13は、湾曲部9B及び水平部9Cに設けられる無駆動式ロールであり、上記パスラインに沿って鋳片3を支持及び案内する。
【0026】
鋳片切断機8は、上記パスラインの水平部9Cの終端に配置され、当該パスラインに沿って搬送された鋳片3を所定の長さに切断する。切断された厚板状の鋳片14は、テーブルロール15により次工程の設備に搬送される。
【0027】
ここまで、本実施形態に係るブレークアウト検出装置が適用される連続鋳造設備について説明した。本実施形態に係るブレークアウト検出装置が適用される連続鋳造設備は、一般的な従来の連続鋳造装置と同様であってよい。従って、連続鋳造装置1の構成は図示したものに限定されず、連続鋳造装置1としては、あらゆる構成のものが用いられてよい。
【0028】
例えば、連続鋳造設備1の各装置の動作状況や後述するブレークアウト検出装置の動作状況を通知するためのインターフェース(図示せず)を備えていてもよい。このようなインターフェースは、例えば、スピーカー、表示灯、画面又はこれらの組合せ等であってよい。
【0029】
連続鋳造設備1は、主として鋼の連続鋳造に用いられるが、アルミニウムなど他の金属の連続鋳造に用いられてもよい。なお、電磁攪拌装置及び電磁ブレーキ装置は備えられなくてもよい。
【0030】
ここで、
図2を参照して、連続鋳造設備1において鋳造を停止した場合に鋳片が連続鋳造設備内にホールドされるメカニズムを説明する。
図2は、連続鋳造を停止した後の、連続鋳造設備1における鋳片3が完全凝固する位置を示す模式図である。
【0031】
連続鋳造が行われている間は、高温の溶湯2が鋳型10へ連続的に供給されるため、未凝固部3bは長い時間維持される。そのため、
図2の(A)に示すように、鋳片3の未凝固部3bの先端は水平部9cに位置している。タンディッシュ5から鋳型10への溶湯2の注入を停止して、鋳造が停止すると、高温の溶湯2の注入が停止して熱の供給が停止するため、鋳型10内の溶湯2及び鋳型10から引き抜かれた鋳片3の各温度は、次第に低下する。これに伴い、パスラインを移動する鋳片3の未凝固部3bの先端は、水平部9Cから湾曲部9B(パスラインの上流側)に移動する。言い換えると、鋳片3の完全凝固位置が水平部9Cから湾曲部9Bに移動する。鋳片3における完全凝固した部分は、鋳片3における未凝固部3bを有する部分よりも変形抵抗が大きくなる。変形抵抗が大きい鋳片3はパスラインの形状に応じた変形ができなくなり、湾曲部9Bで鋳片3がホールドする。その結果、ホールドした鋳片3の除去作業やピンチロール12やセグメントロール13の交換作業が発生し、コスト増加に繋がる。
【0032】
従来の技術では、ブレークアウトが発生すると、鋳造を停止するため、鋳片3が湾曲部9Bでホールドされる。その結果、上述のとおり、鋳片3の除去作業やロールの交換作業が発生する。一方、本実施形態に係るブレークアウト検出装置20は、ブレークアウトの発生を検出し、検出後に連続鋳造設備1を後述する引抜きモードで運転させるため、連続鋳造設備1における鋳片3のホールドを防止することができる。以下に、本実施形態に係るブレークアウト検出装置20を詳細に説明する。
【0033】
<ブレークアウト検出装置20>
図3~5を参照して、本発明の第1の実施形態に係るブレークアウト検出装置を説明する。
図3は、本実施形態に係るブレークアウト検出装置20の機能ブロック図である。
図4は、本実施形態における圧力配管21の配置の一例を示す説明図である。
図5は、本実施形態に係るブレークアウト検出装置20の配管図である。
【0034】
ブレークアウト検出装置20は、
図3に示すように、圧力配管21と、圧力配管21の圧力を測定する圧力測定部22と、圧力配管21に流体を送入する流体供給部23と、圧力測定部22によって測定された圧力配管21内の圧力値Pに応じてブレークアウトの発生の有無を判定する判定部24と、連続鋳造設備1の運転モードを設定する信号を送信する運転モード設定部25と、を備える。
【0035】
圧力配管21は、内部に流体が充填され、内部に高い圧力が付与される配管であり、ブレークアウトが発生した場合、漏れ出た溶湯2が圧力配管21に付着して溶融し、内部の圧力が低下する。この圧力低下が検知されることで、ブレークアウトの発生が検知される。したがって、圧力配管21は、ブレークアウト以外の要因で圧力が低下しない材料で構成されることが好ましい。圧力配管21は、腐食を抑制するために、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金又は被覆銅管のいずれかで構成されることが好ましい。ステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS316等が挙げられる。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、例えば、A6061、A6063、A7075等が挙げられる。
【0036】
圧力配管21は、垂直部9Aに配される。圧力配管21は、例えば、サポートロール11の外側であって、隣り合うサポートロール11の間に配される。例えば、
図4では、圧力配管21は、鋳片3の引き抜き方向に複数段配設されている。圧力配管21は、鋳型10の直下から2mまでの領域に配設されることが好ましい。圧力配管21が鋳型10の直下から2mまでの領域に配設されていれば、流出した溶湯2によって速やかに圧力配管21が溶融して圧力が低下することになり、ブレークアウトをより早期に検出することができる。
【0037】
圧力配管21の内部には、N2ガス等の流体が封入されている。鋳片3にブレークアウトが発生した場合には、鋳片3の表面に対向配置された圧力配管21の一部が流出した溶湯2により溶融し、内部の流体(N2ガス)が漏れ出る。これにより、圧力配管21内部の圧力が低下する。
【0038】
圧力測定部22は、例えば、圧力計であり、圧力配管21内部の圧力を測定する。
図4では、複数の圧力配管21に1つの圧力計(圧力測定部)22が設けられている。しかしながら、圧力計22は、複数の圧力配管21のそれぞれに圧力計22が設けられることが好ましい。複数の圧力配管21のそれぞれに圧力計22を設ければ、圧力配管21毎の圧力を測定することができ、後述する判定部24によって、より正確にブレークアウトの発生の有無を判定することができる。
【0039】
流体供給部23は、圧力配管21に流体を供給する。流体供給部23は、
図5に示すように、流体供給配管231と圧力配管21との間に配置されたニードル弁232と仕切弁233とを有しており、圧力配管21に対して、常時、流体を供給することができる構造とされている。また、流体供給部23は、圧力測定部22が測定した圧力値Pに応じて、流体の供給速度を制御することができる。流体の供給速度の制御は、ニードル弁232の開度を調整することで精度良く制御することが可能である。
【0040】
流体供給部23は、ブレークアウトが生じていない状態での圧力配管21における流体のリーク量を予め把握しておき、そのリーク量に応じて、ニードル弁215の開度を調整し、圧力配管21に対する流体の供給量を制御する。例えば、圧力配管21に対する流体の供給量は、5L/min以上65L/min以下の範囲内に設定することができる。これにより、ブレークアウト発生時以外の通常操業時において、圧力配管21の圧力が初期圧力の60%以下に低下することを抑制している。
圧力配管21においては、継手等からの流体のリークが発生し、ブレークアウトが生じていない状況で内部圧力が徐々に低下することがある。この場合、圧力配管21内の圧力が後述する所定値以下にまで低下し、ブレークアウトを誤検知してしまうおそれがある。さらに、圧力配管21が腐食した場合には、腐食箇所から流体のリークが発生し、やはり、ブレークアウトを誤検知してしまうおそれがある。しかしながら、流体供給部23は、上述のとおり、圧力値Pに応じて流体の供給速度を精度良く制御できるため、流体のリークによるブレークアウトの発生を誤検知することが防止される。
【0041】
流体供給部23が供給する流体は、漏洩時に燃焼などの化学反応を起こしにくいことが望ましいため、Ar等の不活性ガスであることが好ましいが、鋳造する金属の種類によっては安価化のためにN2ガスや空気で代用することも可能である。鋼を対象とする場合、N2ガスを用いることが簡便である。
【0042】
判定部24は、圧力測定部22によって測定された圧力配管21内の圧力値Pに基づいてブレークアウトの発生の有無を判定する。判定部24は、圧力値Pが第1の閾値Pth1以上である場合に、ブレークアウト発生の有無の判定を開始する。第1の閾値Pth1は、後述する第2の閾値Pth2以上であり、ブレークアウトの発生を適切に判定できる値であればよく、例えば、0.10MPaである。
【0043】
判定部24は、圧力配管21内の圧力値Pが第1の閾値Pth1以上の圧力から第2の閾値Pth2以下になった場合にブレークアウトが発生したと判定する。第2の閾値Pth2は、圧力配管21の溶融による圧力低下を検知できる圧力値であり、例えば、第2の閾値Pth2は、0.06MPaである。
判定部24は、ブレークアウト発生の判定結果を運転モード設定部25に送信する。
【0044】
運転モード設定部25は、圧力測定部22が測定した圧力配管21の内部の圧力値Pに基づいて、連続鋳造設備1の運転モードを準備モード、鋳造モード、及び引抜きモードの3つの運転モードから1つの運転モードに設定する信号を連続鋳造設備1に送信する。
【0045】
ここで、連続鋳造設備1の各運転モードを説明する。
準備モードとは、圧力配管21の内部に流体の供給を開始し、鋳造を開始するまでの運転モードである。準備モードでは、例えば
図10に示すように、流体供給部23から圧力配管21に流体が供給され、圧力測定部22は、圧力配管21の内部の圧力を測定する。
【0046】
鋳造モードとは、鋳片を製造する運転モードである。鋳造モードでは、浸漬ノズル6から鋳型10への溶湯の注入速度の制御、鋳片3の搬送速度の制御、鋳型10を流通する冷却水の温度及び速度の制御、電磁攪拌装置及び電磁ブレーキ装置による溶湯への電磁力の制御、並びにスプレーノズル16から鋳片3へ噴射する冷却水の制御等が行われる。なお、鋳片3の搬送速度は、サポートロール11、ピンチロール12、セグメントロール13、及びテーブルロール15が制御されることにより調整される。
【0047】
引抜きモードとは、鋳型10内の溶湯2及び鋳片3、及び連続鋳造設備1におけるパスライン上の鋳片3を外部へ取り出すために、鋳片3を引き抜く運転モードである。引抜きモードでは、タンディッシュ5内に溶湯2が残っている場合には、浸漬ノズル6を閉じる。また、引抜きモードでは、鋳造モードにおけるスプレーノズル16による鋳片3への冷却水の噴射とは異なる態様で、スプレーノズル16による鋳片3への冷却水の噴射を行う。
【0048】
ここで、引抜きモードにおけるスプレーノズル16による鋳片3への冷却水の噴射態様を説明する。引抜きモードでは、鋳型10への溶湯2の供給がないため、鋳型10から引き抜かれる鋳片3は最上部が二次冷却帯に露出する。そのため、引抜きモードでは鋳造モードとは異なる冷却パターンを用いる。
【0049】
また、鋳型10から引き抜かれる鋳片3の末端部3cでは、鋳片3の上方が開放されるため、鋳片3の未凝固部3bの溶鋼が漏れ出すことがある。そのため、引抜きモードでは、末端部3cの冷却を鋳造モードにおける鋳片3の冷却とは異ならせる必要がある。
【0050】
ここで、
図6を参照して、引抜きモードでのスプレーノズル16の動作を説明する。
図6は、引抜きモードにおける、スプレーノズル16による鋳片3の末端部3cの冷却を説明するための、連続鋳造装置1の垂直部9Aに配置されたサポートロール11及びスプレーノズル16の配置及び垂直部9Aを通過する鋳片3を示す模式図である。上述したとおり、引抜きモードでの運転中は鋳型10への溶湯2の注入がないため、鋳片3の末端部3cの温度は、鋳造モードでの運転における鋳片3の温度よりも低い。そのため、垂直部9Aのうちの上部側に鋳片3の末端部3cが位置する場合は、スプレーノズル16は、
図6の(A)に示すように、鋳片3の末端部3cには冷却水wを噴射しない。これにより、鋳片3の末端部3cは緩冷却となる。鋳片3の末端部3cが垂直部9Aのうちの下部側に搬送されたときには、鋳片3の末端部3cの表面は温度が低くなっている。鋳片3のホールドを防止するために、垂直部9Aの下部側に配されたスプレーノズル16は鋳片3の末端部3cの表面に対しては冷却水wを噴射しない。しかしながら、鋳片3の末端部3cの中心部においては、未凝固部3bが存在する。鋳片3の末端部3cの端面から未凝固部3bの溶湯2が漏れ出すのを防止するため、垂直部9Aの上部側に配されたスプレーノズル16から冷却水wを噴射し、鋳片3の端面を冷却する。これにより、鋳片3の端面からの溶湯2の漏れ出しを防止することができる。
ここまで連続鋳造設備1の各運転モードを説明した。
【0051】
引き続き、運転モード設定部25について説明する。運転モード設定部25は、圧力値Pが第3の閾値Pth3以上となったとき、運転モードを準備モードから鋳造モードに切り替える信号を連続鋳造設備1に送信してもよい。連続鋳造設備1は、鋳造モードに応じた条件で連続鋳造を実施することになる。なお、第3の閾値Pth3は、装置規模に応じて定められてよく、例えば、圧力配管21の内部の圧力の上昇に長時間要する場合には、生産性を考慮して、比較的小さな値を第3の閾値Pth3としてもよい。一方で、鋳造初期からブレークアウトの発生の有無を検出するためには、第3の閾値Pth3は、第1の閾値Pth1に近い値が好ましく、第1の閾値Pth1と等しい値であることがより好ましい。したがって、第3の閾値Pth3は、好ましくは、第1の閾値Pth1以下である。
【0052】
また、運転モード設定部25は、タンディッシュ5から鋳型10への溶湯2の注入終了後、又は、判定部24によりブレークアウトが発生したと判定されたとき、運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える信号を連続鋳造設備1に送信する。連続鋳造設備1は、引抜きモードに応じた条件で運転されることになる。
【0053】
本実施形態に係るブレークアウト検出装置20は、当該ブレークアウト検出装置20の各種状態に関する通知を制御する通知制御部26を更に備えていてもよい。通知制御部26は、例えば、圧力測定部22により測定された圧力値P、判定部24による判定結果、又は運転モードの設定や切換が行われた旨の通知等に関する信号を外部のインターフェースに送信する制御を行う。
【0054】
上記の判定部24、運転モード設定部25、及び通知制御部26の機能は、プロセスコンピュータによって実現される。プロセスコンピュータは、電気PLC(Programmable Logic Controller、プログラマブルロジックコントローラ)や計装DCS(Distributed Control System、分散制御システム)への設定制御、ライン自動運転制御、実績データ収集、操業管理、及びオペレータガイダンスを可能にするものである。
【0055】
以上のような構成とされた本実施形態であるブレークアウト検出装置20によれば、ブレークアウト発生時以外の通常操業時における圧力配管21からの流体のリーク量に対応して、圧力配管21に対して流体を供給する流体供給部23を有しているので、継手等から圧力配管21の内部の流体が漏れ出しても圧力の低下を抑制でき、ブレークアウトの誤検出を抑制することができる。なお、ブレークアウトが発生した場合には、内部の流体が急激に放出されて圧力が大きく低下することから、流体供給部23から流体を圧力配管21に供給していても、ブレークアウトの発生を検出することが可能である。
【0056】
また、本実施形態であるブレークアウト検出装置20において、圧力配管21を、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金のいずれかで構成した場合には、圧力配管21が腐食等によって劣化することを抑制することができ、ブレークアウトの誤検出を抑制することができる。また、ブレークアウト発生時には圧力配管21に確実に孔が開いて流体を放出することができ、ブレークアウトの発生を確実に検出することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態に係る金属の連続鋳造システム及び金属の連続鋳造方法によれば、圧力配管21が鋳型10の直下から2mまでの領域に配設されているので、流出した溶湯2によって速やかに圧力配管21が溶融して圧力が低下することになり、ブレークアウトを早期に検出することができる。
ここまで、本実施形態に係るブレークアウト検出装置20を説明した。
【0058】
続いて、
図7を参照して、ブレークアウト検出装置20の動作について説明する。まず、運転モード設定部25が、連続鋳造設備1の運転モードを準備モードに設定する(ステップS101)。準備モードでは、流体供給部23が圧力配管21に流体を供給して圧力配管21内部の圧力を上昇させる。圧力測定部22は、圧力配管21の圧力を測定する。
【0059】
判定部24は、圧力測定部22による圧力配管21の内部の圧力値Pを随時受信し、当該圧力値Pが第3の閾値Pth3以上であるか否かを判定する(ステップS103)。圧力値Pが第3の閾値Pth3未満である場合(ステップS103/NO)、判定部24は、随時受信する圧力値Pと第3の閾値Pth3との比較を継続する。一方、圧力値Pが第3の閾値Pth3以上である場合(ステップS103/YES)、運転モード設定部25は、連続鋳造設備1に対し、運転モードを準備モードから鋳造モードに切り替える指示を送信する(ステップS105)。鋳造モードに切り替える指示を受信した連続鋳造設備1は、鋳造モードで運転される。すなわち、連続鋳造設備1が備える各種装置が、所定の条件に設定され、鋳片3の製造が行われる。
【0060】
また、連続鋳造設備1が鋳造モードで運転している間、ブレークアウト検出装置20における流体供給部23は、圧力配管21に流体を供給する。具体的には、流体供給配管231と圧力配管21との間に配置されたニードル弁232の開度が調整されて流体が圧力配管21に供給されている。圧力測定部22は、連続鋳造設備1が鋳造モードで運転している間も圧力配管21の圧力を測定する。
【0061】
次いで、判定部24は、圧力測定部22による圧力配管21の内部の圧力の圧力値Pを随時受信し、当該圧力値Pが第1の閾値Pth1以上であるか否かを判定する(ステップS107)。圧力値Pが第1の閾値Pth1未満である場合(ステップS107/NO)、判定部24は、随時受信する圧力値Pと第1の閾値Pth1との比較を継続する。また、圧力値Pが第1の閾値Pth1未満である間、連続鋳造設備1に設けられたインターフェースは、圧力値Pが第1の閾値Pth1未満である旨を通知する。圧力値Pが第1の閾値Pth1未満である旨を通知は、特段制限されず、例えば、音声による通知(ボイスメッセージ)、警告灯の点灯もしくは点滅、又は画面への表示等により行われる。
【0062】
圧力値Pが第1の閾値Pth1以上である場合(ステップS107/YES)、判定部24は、ブレークアウトの発生の有無の判定を開始する(ステップS109)。判定部24は、圧力値Pと第2の閾値Pth2とを比較して圧力値Pが第2の閾値Pth2以下であるか否かを判定し、圧力値Pが第2の閾値Pth2以下である場合(ステップS111/YES)、運転モード設定部25はブレークアウトが発生したと判定し、運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える指示を連続鋳造設備1に対して送信する(ステップS113)。連続鋳造設備1の各種装置は、引抜きモードに応じた条件で運転され、引抜きモードでの運転により、鋳片3が連続鋳造設備1から排出され、連続鋳造が終了する。
【0063】
一方、圧力値Pが第2の閾値Pth2超である場合であって(ステップS111/NO)、タンディッシュから鋳型10への溶湯2の注入が継続している場合(ステップS112/NO)、判定部24は、随時受信する圧力値Pと第2の閾値Pth2との比較を継続する。言い換えると、ステップS111、S112を繰り返す。
圧力値Pが第2の閾値Pth2超である場合であって(ステップS111/NO)、タンディッシュから鋳型10への溶湯2の注入が終了した場合(ステップS112/YES)、運転モード設定部25は、運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える指示を連続鋳造設備1に対して送信する(ステップS113)。連続鋳造設備1の各種装置は、引抜きモードに応じた条件で運転され、引抜きモードでの運転により、鋳片3が連続鋳造設備1から排出され、連続鋳造が終了する。
ここまで、連続鋳造設備1及びブレークアウト検出装置20の動作について説明した。
【0064】
また、ブレークアウト検出装置20によれば、ブレークアウトの発生が検出された場合であっても、上述の引抜きモードで連続鋳造設備1が運転される。そのため、鋳片のホールドが防止され、ホールドした鋳片の除去作業やロール等の交換作業を実施する必要がなくなり、製造コストの増加を抑制することができる。
【0065】
ここまで、本発明の一実施形態に係るブレークアウト検出装置及びその動作を説明した。ただし、本発明の技術的範囲は上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0066】
例えば、本実施形態では、垂直曲げ型連続鋳造設備に適用したものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の連続鋳造設備に適用してもよい。
また、本実施形態においては、断面矩形状をなす鋳片を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、断面円形の鋳片等を対象としてもよい
【0067】
<金属の連続鋳造システム>
続いて、本発明の第2の実施形態に係る金属の連続鋳造システムを説明する。本実施形態に係る金属の連続鋳造システムは、金属を連続的に鋳造する連続鋳造設備1と、ブレークアウト検出装置20と、を備える。連続鋳造設備は、公知の連続鋳造設備であってよく、例えば、上述した連続鋳造設備1であってよい。ただし、
図8に示すように、連続鋳造設備1に判定部24及び運転モード設定部25の機能を持たせてもよい。
したがって、本実施形態に係る金属の連続鋳造システムは、金属を連続的に鋳造する連続鋳造設備1と、ブレークアウトを検出するブレークアウト検出装置20Aと、を備え、ブレークアウト検出装置20Aは、鋳型出口側の領域に配された、内部に流体が封入される圧力配管21と、圧力配管21の圧力を測定する圧力測定部22と、圧力測定部22によって測定された圧力配管21の圧力値が第1の閾値以上の値から、第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する判定部24と、を有し、連続鋳造設備1は、圧力測定部22によって測定された圧力配管21の圧力値が第1の閾値P
th1以上の値から、第1の閾値P
th1未満の値である第2の閾値P
th2以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定する判定部24と、判定部24によりブレークアウトが発生したと判定された場合、連続鋳造設備1の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える運転モード設定部25を有する。
【0068】
また、判定部24及び運転モード設定部25は、
図9に示すように、ブレークアウト検出装置20及び連続鋳造設備1から独立して設けられた制御装置30が備えてもよい。制御装置30は、プロセスコンピュータによって実現される。
【0069】
<金属の連続鋳造方法>
続いて、
図10を参照して、本発明の第3の実施形態に係る金属の連続鋳造方法の流れを説明する。
まず、運転モード設定部25により、連続鋳造設備1の運転モードが準備モードに設定される。これにより、連続鋳造設備1は、準備モードに応じた条件で運転が開始される(時刻t1)。流体供給部23は圧力配管21へ流体の供給を開始し、圧力測定部22は、圧力配管21の内部の圧力の測定を開始し、判定部24は、圧力測定部22により測定された圧力値Pと第3の閾値P
th3との比較を開始する。
【0070】
判定部24により圧力値Pが第3の閾値以上になったと判定されたとき(時刻t2)、運転モード設定部25は、連続鋳造設備1の運転モードを準備モードから鋳造モードに切り替える。連続鋳造設備1は、鋳造モードに応じた条件で連続鋳造を開始する。インターフェースは、圧力値Pが第1の閾値Pth1以上になるまで、ブレークアウト判定が行われない旨の通知を行う。
【0071】
判定部24により圧力値Pが第1の閾値以上になったと判定されたとき(時刻t3)、判定部24は、ブレークアウトの発生の有無の判定を開始する。インターフェースは、ブレークアウト判定が行われない旨の通知を解除する。
【0072】
判定部24により圧力値Pが第2の閾値以下になったと判定されたとき(時刻t4)、運転モード設定部25は、連続鋳造設備1の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える。連続鋳造設備1は、引抜きモードに応じた条件で鋳片の引抜を行う。時刻t4において、流体供給部23は流体の供給を停止し、判定部24は、ブレークアウトの発生の有無の判定を停止する。インターフェースは、ブレークアウトが発生した旨の通知を行う。
鋳片3が引き抜かれた後、連続鋳造設備1は運転を停止する(時刻t5)。
【0073】
上記のとおり、本実施形態に係る金属の連続鋳造方法は、連続鋳造設備を用いて金属を連続的に鋳造する金属の連続鋳造方法であって、鋳型出口側の領域に配された、内部に流体が封入された圧力配管の圧力を測定する圧力測定ステップと、圧力測定ステップにおいて測定された圧力値に基づいて、ブレークアウトが発生したか否かを判定する判定ステップと、ブレークアウトが発生したと判定された場合、連続鋳造設備の運転モードを鋳造モードから引抜きモードに切り替える運転モード切替ステップと、を含み、判定ステップでは、上記圧力値が、第1の閾値以上の値から、第1の閾値未満の値である第2の閾値以下の値になった場合にブレークアウトが発生したと判定するものである。これにより、ブレークアウトの発生を検出し、連続鋳造設備における鋳片のホールドを防止することが可能となる。
【0074】
ここまで、本発明の実施形態に係る金属の連続鋳造システム及び金属の連続鋳造方法を説明した。ただし、本発明の技術的範囲は上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 連続鋳造装置
2 溶湯
3、14 鋳片
3a 凝固シェル
3b 未凝固部
3c 末端部
4 取鍋
5 タンディッシュ
6 浸漬ノズル
7 二次冷却装置
8 鋳片切断機
9 二次冷却帯
9A 垂直部
9B 湾曲部
9C 水平部
10 鋳型
11 サポートロール
12 ピンチロール
13 セグメントロール
15 テーブルロール
16 スプレーノズル
20、20A ブレークアウト検出装置
21 圧力配管
22 圧力測定部
23 流体供給部
24 判定部
25 運転モード設定部
26 通知制御部
30 制御装置
231 流体供給配管
232 ニードル弁
233 仕切弁