(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118181
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】防振架台のストッパ機構
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
F16F15/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020983
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穐田 和樹
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048CB07
3J048DA01
3J048EA13
(57)【要約】
【課題】防振架台に振動発生機器を載置して輸送する場合において、ストッパ機構を構成するブラケットの破損を抑制する。
【解決手段】上側ブラケット10および下側ブラケット20のそれぞれは、該ブラケット10,20を補強する第1補強部31を有する。各第1補強部31は、基部32から鉛直方向に突出し、対応する架台2,3の延伸方向に対向する一対の突出部33,33と有する。一対の突出部33,33は、対応する架台2,3を横断するように設けられる。ストッパ部材50は、上側ブラケット10および下側ブラケット20に当接して挟まれることで固定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上架台と下架台との間に設けた防振架台のストッパ機構であって、
前記上架台および前記下架台の一方に設けられ、挿通孔が形成された第1水平板部を有する第1ブラケットと、
前記上架台および前記下架台の他方に設けられ、第2水平板部を有する第2ブラケットと、
一端側が前記挿通孔に挿通された状態で、他端側が前記第2水平板部に固定されたボルト部材と、
前記第1水平板部よりも前記ボルト部材の一端側に位置するように該ボルト部材に嵌められたナット部材と、
前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとの間に設けられるストッパ部材とを備え、
前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットの少なくとも一方は、該ブラケットを補強する第1補強部を更に有し、
前記第1補強部は、
対応する水平板部と水平方向に連続して形成され、上面視において対応する架台と重なるように配置された基部と、
前記基部から鉛直方向に突出し、対応する架台の延伸方向である第1方向に対向する一対の突出部と有し、
前記一対の突出部は、対応する架台を横断するように設けられ、
前記ストッパ部材は、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットに当接して挟まれることで固定される
防振架台のストッパ機構。
【請求項2】
前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットのぞれぞれは、前記第1補強部を有し、
各前記第1補強部の前記突出部は、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットのそれぞれに対応する前記架台に向かって突出し、
前記ストッパ部材は、
前記第1ブラケットの前記基部と前記第2ブラケットの前記基部とに当接して挟まれる第1部分と、
前記第1水平板部と前記第2水平板部とに当接して挟まれる第2部分とを有する
請求項1に記載の防振架台のストッパ機構。
【請求項3】
前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットの少なくとも一方は、該ブラケットを補強する第2補強部を更に有し、
前記第2補強部は、対応する前記ブラケットの前記水平板部において該水平板部に直交する方向に延びて設けられ、
前記第2補強部の側縁部は、対応する前記架台の側面に当接する
請求項1または2に記載の防振架台のストッパ機構。
【請求項4】
前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットのぞれぞれは、前記第1補強部を有し、
各前記第1補強部の前記突出部は、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットのそれぞれに対応する前記架台に向かって突出し、
前記ストッパ部材は、
前記第1ブラケットの前記基部と前記第2ブラケットの前記基部とに当接して挟まれる第1部分と、
前記第1水平板部と前記第2水平板部とに当接して挟まれる第2部分とを有し、
前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットの少なくとも一方は、該ブラケットを補強する第2補強部を更に有し、
前記第2補強部は、対応する前記ブラケットの前記水平板部において該水平板部に直交する方向に延びて設けられ、
前記第2補強部の側縁部は、対応する前記架台の側面に当接し、
前記第2補強部は、対応する前記水平板部における前記第1方向の一方側にのみ設けられ、
前記ストッパ部材の前記第2部分は、前記第2補強部が設けられた水平板部における前記第1方向の他方側の位置において当接する
請求項1に記載の防振架台のストッパ機構。
【請求項5】
前記ボルト部材または前記ナット部材を回転させることにより、前記ストッパ部材が前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットに挟まれて固定される固定状態と、前記ストッパ部材が前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットの間を移動可能な解除状態とに切り替わる
請求項1~4のいずれか1つに記載の防振架台のストッパ機構。
【請求項6】
前記解除状態において、前記ストッパ部材は、回転軸を中心に回転移動可能に構成される
請求項5に記載の防振架台のストッパ機構。
【請求項7】
前記回転軸は、鉛直方向に沿って延び、
前記ストッパ部材は、
前記第1ブラケットの前記基部と前記第2ブラケットの前記基部とに当接して挟まれる第1部分と、
前記第1水平板部と前記第2水平板部とに当接して挟まれる第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分とを繋ぐ第3部分とを有し、
前記第3部分の上部には、凹部が形成され、
前記解除状態において、前記ストッパ部材を回転させることで、上面視において前記第3部分の前記凹部だけが前記上架台に設けられる前記ブラケットと重なる第1位置に移動する
請求項6に記載の防振架台のストッパ機構。
【請求項8】
前記固定状態において、前記ストッパ部材を前記第1位置に付勢する弾性体を更に備える
請求項7に記載の防振架台のストッパ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防振架台のストッパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、変圧器等の振動発生機器から発生した振動を吸収して、この振動を基礎等の設置面に伝えないようにする防振架台が知られている。特許文献1には、振動発生機器が載置される上架台と、この上架台の下側に設けられた下架台と、これらの両架台の間に設けられた防振体(アイソレータ)と、両架台の間に設けられて両架台の相対変位を規制するストッパ機構とが設けられた防振架台が開示されている。
【0003】
このような防振架台では、防振架台に振動発生機器を載置した状態で輸送したいという要望がある。そこで、特許文献1の防振架台のストッパ機構は、隙間変更手段を備える。隙間変更手段によって上架台と下架台との間を所定間隔に保ちながら、ストッパ機構を固定している。これにより、上架台と下架台との間に枕木等の挿入材を挿入することなく、防振架台に振動発生機器を搭載して輸送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、防振架台に振動発生機器を載置して輸送する際に、輸送中の振動発生機器の揺れに伴って防振架台にモーメント力が作用する。例えば、載置する振動発生機器の重量が重い場合や、振動発生機器の重心位置が高い場合には、防振架台に作用するモーメント力がより大きくなる。そのため、特許文献1のような防振架台では、ストッパ機構を構成するブラケットがこのモーメント力を受けることにより、該ブラケットが破損することがあった。
【0006】
本開示の目的は、防振架台に振動発生機器を載置して輸送する場合において、ストッパ機構を構成するブラケットの破損を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、上架台と下架台との間に設けた防振架台のストッパ機構が対象である。防振架台のストッパ機構は、前記上架台および前記下架台の一方に設けられ、挿通孔が形成された第1水平板部を有する第1ブラケットと、前記上架台および前記下架台の他方に設けられ、第2水平板部を有する第2ブラケットと、一端側が前記挿通孔に挿通された状態で、他端側が前記第2水平板部に固定されたボルト部材と、前記第1水平板部よりも前記ボルト部材の一端側に位置するように該ボルト部材に嵌められたナット部材と、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとの間に設けられるストッパ部材とを備える。
【0008】
前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットの少なくとも一方は、該ブラケットを補強する第1補強部を更に有する。前記第1補強部は、対応する水平板部と水平方向に連続して形成され、上面視において対応する架台と重なるように配置された基部と、前記基部から鉛直方向に突出し、対応する架台の延伸方向である第1方向に対向する一対の突出部と有する。前記一対の突出部は、対応する架台を横断するように設けられ、前記ストッパ部材は、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットに当接して挟まれることで固定される。
【0009】
第1の態様では、一対の突出部が対応する架台を横断するように設けられる。そのため、防振架台に振動発生機器を載置して輸送する際に、該振動発生機器の揺れに伴って防振架台に作用するモーメント力がかかる方向にブラケットが曲がりにくくなる。これにより、ブラケットの強度を向上できる。
【0010】
加えて、第1の態様では、ストッパ部材が第1ブラケットおよび第2ブラケットに当接して挟まれることで固定されるので、第1ブラケット、ストッパ部材、および第2ブラケットを1つの剛体としてみなすことができる。そのため、防振架台に振動発生機器を載置して輸送する際に生じる振動や衝撃荷重を、第1ブラケット、ストッパ部材、および第2ブラケットの全体で受けることができる。その結果、各ブラケットにかかる負荷を低減できる。
【0011】
以上のように、第1の態様では、ブラケットの強度を向上させつつ、各ブラケットにかかる負荷を低減することにより、ストッパ機構を構成するブラケットの破損を抑制できる。
【0012】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットのぞれぞれは、前記第1補強部を有し、各前記第1補強部の前記突出部は、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットのそれぞれに対応する前記架台に向かって突出し、前記ストッパ部材は、前記第1ブラケットの前記基部と前記第2ブラケットの前記基部とに当接して挟まれる第1部分と、前記第1水平板部と前記第2水平板部とに当接して挟まれる第2部分とを有する。
【0013】
第2の態様では、防振架台に振動発生機器を載置した状態で輸送する際において、該振動発生機器の揺れに伴って、上架台が沈み込んだときにはストッパ部材の第1部分で荷重を受ける。一方で上架台が浮き上がったときにはストッパ部材の第2部分で荷重を受けることができる。これにより、防振架台の輸送時において上架台に様々な方向に荷重がかかっても、各ブラケットにかかる荷重の負荷を低減できる。
【0014】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットの少なくとも一方は、該ブラケットを補強する第2補強部を更に有し、前記第2補強部は、対応する前記ブラケットの前記水平板部において該水平板部に直交する方向に延びて設けられ、前記第2補強部の側縁部は、対応する前記架台の側面に当接する。
【0015】
第3の態様では、第2補強部の側縁部が、対応する架台の側面に当接するので、防振架台にモーメント力が作用しても、第2補強部の側縁部でモーメント力を受けることができる。これにより、ブラケットの強度をより向上できる。
【0016】
本開示の第4の態様は、第1の態様において、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットのぞれぞれは、前記第1補強部を有し、各前記第1補強部の前記突出部は、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットのそれぞれに対応する前記架台に向かって突出し、前記ストッパ部材は、前記第1ブラケットの前記基部と前記第2ブラケットの前記基部とに当接して挟まれる第1部分と、前記第1水平板部と前記第2水平板部とに当接して挟まれる第2部分とを有し、前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットの少なくとも一方は、該ブラケットを補強する第2補強部を更に有し、前記第2補強部は、対応する前記ブラケットの前記水平板部において該水平板部に直交する方向に延びて設けられ、前記第2補強部の側縁部は、対応する前記架台の側面に当接し、前記第2補強部は、対応する前記水平板部における前記第1方向の一方側にのみ設けられ、前記ストッパ部材の前記第2部分は、前記第2補強部が設けられた水平板部における前記第1方向の他方側の位置において当接する。
【0017】
第4の態様では、第2補強部が、対応する水平板部の第1方向の一方側にのみ設けられているので、第1方向の他方側からナット部材を動かすことができる。一方で、対応する水平板部の第1方向の他方側の位置では第2補強部が設けられていないので、この位置での振動発生機器の揺れに伴うモーメント力に対する強度が低下してしまうところ、この強度が低下した位置にストッパ部材の第2部分を当接させている。これにより、ブラケットの強度をより向上できる。
【0018】
本開示の第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記ボルト部材または前記ナット部材を回転させることにより、前記ストッパ部材が前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットに挟まれて固定される固定状態と、前記ストッパ部材が前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットの間を移動可能な解除状態とに切り替わる。
【0019】
第5の態様では、ボルト部材またはナット部材を回転させるだけで、ストッパ機構の状態を固定状態と解除状態とに切り替えることができる。これにより、ストッパ機構の固定状態を簡単に解除できる。
【0020】
本開示の第6の態様は、第5の態様において、前記解除状態において、前記ストッパ部材は、回転軸を中心に回転移動可能に構成される。
【0021】
第6の態様では、解除状態において、ストッパ部材が回転軸を中心に回転できる。
【0022】
本開示の第7の態様は、第6の態様において、前記回転軸は、鉛直方向に沿って延び、前記ストッパ部材は、前記第1ブラケットの前記基部と前記第2ブラケットの前記基部とに当接して挟まれる第1部分と、前記第1水平板部と前記第2水平板部とに当接して挟まれる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを繋ぐ第3部分とを有し、前記第3部分の上部には、凹部が形成され、前記解除状態において、前記ストッパ部材を回転させることで、上面視において前記第3部分の前記凹部だけが前記上架台に設けられる前記ブラケットと重なる第1位置に移動する。
【0023】
第7の態様では、解除状態において、ストッパ部材を回転させて第1位置に移動させることにより、上面視において第3部分の凹部だけが上架台に設けられるブラケットと重なる。そのため、ストッパ部材と該ストッパ部材の上に位置するブラケットとの間の隙間が拡大する。これにより、防振架台に大きな振動が加わったときの上架台の可動距離を大きくできる。
【0024】
本開示の第8の態様は、第7の態様において、前記固定状態において、前記ストッパ部材を前記第1位置に付勢する弾性体を更に備える。
【0025】
第8の態様では、固定状態において、弾性体によってストッパ部材が第1位置に付勢されている。そのため、ストッパ機構を固定状態から解除状態に切り替えると、弾性体の付勢力によって、自動的にストッパ部材が第1位置に移動する。これにより、作業者がストッパ部材を移動させる作業が省略され、作業者の負担が軽減される。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本開示によれば、防振架台に振動発生機器を載置して輸送する場合において、ストッパ機構を構成するブラケットの破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施形態に係る防振架台を示す平面図である。
【
図6】
図6は、ストッパ機構を示す左側面図である。
【
図7】
図7は、ストッパ機構を示す右側面図である。
【
図9】
図9は、
図4のIX-IX線矢視におけるストッパ機構のロック状態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図4のIX-IX線矢視におけるストッパ機構の解除状態を示す断面図である。
【
図11】
図11は、ストッパ機構の解除状態を示す正面図であり、ストッパ部材が第1位置に位置している状態を示す図である。
【
図12】
図12は、振動発生機器が傾いたときの様子を示す防振架台の正面図である。
【
図13】
図13は、変形例1に係るストッパ部材を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、変形例3に係るストッパ部材の移動の様子を示す説明図である。
【
図16】
図16は、変形例4に係る解除状態を示す正面図である。
【
図17】
図17は、変形例5に係る解除状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
《実施形態》
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0029】
(1)防振架台
防振架台1は、振動発生機器(例えば、変圧器やエアコンの室外機など)を載置するためのものである。
図1および
図2に示すように、防振架台1は、上架台2と、下架台3と、アイソレータ4と、耐震ストッパ機構5とを備える。
【0030】
(1-1)上架台
図1に示すように、上架台2は、矩形枠状に構成される。上架台2は、複数の角形鋼管で構成される。上架台2の上には、振動発生機器Vが載置される。本実施形態では、振動発生機器Vとして変圧器が載置される。
【0031】
(1-2)下架台
図2に示すように、下架台3は、上架台2の下側に配置される。下架台3は、上架台2と上下方向に対向するように設けられる。下架台3は、矩形枠状に構成される。下架台3は、複数の角形鋼管で構成される。下架台3は、基礎等の設置面上に設置される。本実施形態では、下架台3と上架台2とは、同じ角形鋼管で構成される。
【0032】
(1-3)アイソレータ
アイソレータ4は、振動発生機器Vで発生し上架台2に伝わった振動を吸収し、該振動を下架台3および設置面に伝えないように絶縁するためのものである。防振架台1は、複数のアイソレータ4を備える。
図1に示すように、両架台2,3の一対の長辺部の間に2つずつ設けられる。両架台2,3の一対の短辺部の間に1つずつ設けられる。
図2に示すように、アイソレータ4は、上架台2と下架台3との間に配置される。アイソレータ4の詳細な構成の説明は省略するが、アイソレータ4としては、例えば、従来から既知のものが用いられる。
【0033】
(1-4)耐震ストッパ機構
耐震ストッパ機構5は、上架台2および振動発生機器Vが地震等の大きな揺れによって転倒するのを防止するとともに、それらの過大な変位を規制するための機構である。
図1および
図2に示すように、耐震ストッパ機構5は、上架台2および下架台3の4つの隅部の間に設けられる。詳細には、耐震ストッパ機構5は、両架台2,3の一方の長辺部(
図1における下側の長辺部)の両端部に1つずつ、両架台2,3の一対の短辺部における他方の長辺部(
図1における上側の長辺部)側の端部に一つずつ、それぞれ設けられる。
【0034】
(2)耐震ストッパ機構の詳細
図3~
図7に示すように、耐震ストッパ機構5は、上側ブラケット10、下側ブラケット20、ボルト41、ゴムブッシュ42、隙間調整部材43、上側ワッシャ44、ナット45,46,47,48、ストッパ部材50、および弾性体60を備える。
【0035】
本開示の耐震ストッパ機構5は、固定状態と解除状態とに切り替え可能に構成される。固定状態では、ストッパ部材50が上側ブラケット10と下側ブラケット20に挟まれて固定される。一方、解除状態では、ストッパ部材50が上側ブラケット10と下側ブラケット20の間を移動できる。本開示では、振動発生機器Vを防振架台1に載置して輸送する際には、耐震ストッパ機構5を固定状態にする。振動発生機器Vが載置された防振架台1が設置現場に到着した後では、耐震ストッパ機構5は固定状態から解除状態に切り替えられる。
【0036】
耐震ストッパ機構5の詳細な構造について、
図3~
図7を参照しながら説明する。なお、
図3~
図7は、固定状態の耐震ストッパ機構5を示している。以下の説明の「上」「下」「左」「右」「前」「後」は、
図3に示すように、防振架台1を外側から視た場合を基準とする。
図3~
図7における左右方向は、上架台2および下架台3の延伸方向である。左右方向は、本開示の第1方向に対応する。
【0037】
(2-1)上側ブラケット
上側ブラケット10は、本開示の第1ブラケットに対応する。上側ブラケット10は、金属製の部材である。
図3に示すように、上側ブラケット10は、上架台2の直ぐ下に配置される。上側ブラケット10は、上側水平板部11と、第1補強部31と、第2補強部35とを有する。上側水平板部11、第1補強部31、および第2補強部35は、一体に形成される。
【0038】
(2-1-1)上側水平板部
上側水平板部11は、本開示の第1水平板部に対応する。上側水平板部11は、上側ブラケット10の前側に位置する部分である。上側水平板部11は、上側ブラケット10を上から視たときに、上架台2と重ならない。
図4および
図6に示すように、上側水平板部11は、上架台2の下面よりも下側に位置する。上側水平板部11は、水平方向に延びるように設けられる。上側水平板部11は、略矩形状に形成される。
【0039】
上側水平板部11の中央部には、板厚方向(上下方向)に貫通する円形状の第1挿通孔12が形成される。第1挿通孔12は、本開示の挿通孔12に対応する。
【0040】
図4及び
図6に示すように、上側水平板部11の前端における左端部には、第1突起部13が設けられる。第1突起部13は、上側水平板部11の下面から下方に突出する円柱状の部分である。第1突起部13は、固定状態においてストッパ部材50の移動を規制する。
【0041】
(2-1-2)第1補強部
第1補強部31は、上側ブラケット10の上側水平板部11を補強するための部分である。第1補強部31は、上側ブラケット10の後側に位置する部分である。第1補強部31は、上面視において上架台2と重なる。
図5に示すように、第1補強部31は、背面視においてU字状に形成される。第1補強部31は、基部32と、一対の突出部33,33とを有する。
【0042】
基部32は、平板状に形成される。基部32は、上架台2の下面よりも下側に位置する。基部32は、上架台2の直ぐ下に位置する。基部32は、上側水平板部11と水平方向に連続して形成される。具体的には、基部32は、上側水平板部11の後端部から後方に向かって、上側水平板部11と同一平面上に延びる。基部32は、矩形状に形成される。
【0043】
図5に示すように、一対の突出部33,33は、基部32の左右側縁にそれぞれ設けられる。各突出部33は、基部32から鉛直方向に突出する。具体的には、各突出部33は、上架台2に向かって上方に突出する。
図6および
図7に示すように、各突出部33は、前後方向を長辺とし、上下方向を短辺とする矩形状に形成される。一対の突出部33,33は、左右方向に互いに対向して設けられる。
【0044】
一対の突出部33,33は、上架台2を横断するように設けられる。各突出部33の上端面は、上架台2の下面に当接して固定されている。言い換えると、一対の突出部33,33の上には、上架台が載置される。各突出部33は、基部32を構成する平板を折り曲げて形成された曲げ部である。
【0045】
(2-1-3)第2補強部
第2補強部35は、上側ブラケット10の上側水平板部11を補強するための部分である。
図4に示すように、第2補強部35は、上側水平板部11の右側縁から鉛直方向(上側水平板部11に直交する方向)に延びる。第2補強部35は、上架台2に向かって上方に延びる。
【0046】
図7に示すように、第2補強部35は、右側面視において、前方に向かうに従って幅(上下方向の長さ)が小さくなるような略台形状に形成される。第2補強部35の上縁部は、下方に凹む曲線で構成される。第2補強部35は、右側の突出部33と連続し形成されている。第2補強部35は、上側水平板部11を構成する平板を折り曲げて形成されている。
【0047】
第2補強部35の後側縁部は、上架台2の前側面に当接して固定されている。第2補強部35の後側縁部の幅(上下方向の長さ)は、上架台2の高さと概ね同じ長さである。
【0048】
(2-2)下側ブラケット
下側ブラケット20は、本開示の第2ブラケットに対応する。下側ブラケット20は、金属製の部材である。
図3に示すように、下側ブラケット20は、下架台3の直ぐ上に配置される。下側ブラケット20は、下側水平板部21と、第1補強部31と、第2補強部35とを有する。下側水平板部21、第1補強部31、および第2補強部35は、一体に形成される。
【0049】
下側ブラケット20は、上側ブラケット10と同一形状のものを上下反転させて配置したものである。以下の説明では、下側ブラケット20において、上側ブラケット10と異なる点を中心に説明し、同じ点については説明を省略する。
【0050】
下側水平板部21は、本開示の第2水平板部に対応する。下側水平板部21の構成は、上側水平板部11の構成と同じである。下側水平板部21の中央部には、板厚方向に貫通する円形状の第2挿通孔22が形成される。
【0051】
第1補強部31は、下側ブラケット20の下側水平板部21を補強するための部分である。下側ブラケット20の第1補強部31は、上側ブラケットのものと同じ構成である。第1補強部31の基部32は、下架台3の上面よりも上側に位置する。基部32は、下架台3の直ぐ上に位置する。第1補強部31の各突出部33は、下架台3に向かって下方に突出する。一対の突出部33,33は、下架台3を横断するように設けられる。各突出部33の下端面は、下架台3の上面に当接して固定されている。言い換えると、下架台3の上に一対の突出部33,33が載置される。
【0052】
図6および
図9に示すように、下側ブラケット20における第1補強部31の基部32には、第2突起部23が設けられる。第2突起部23は、下側ブラケット20の基部32後側の左端部に設けられる。第2突起部23は、下側ブラケット20の基部32の上面から上方に突出する円柱状の部分である。第2突起部23は、解除状態においてストッパ部材50の移動を規制する。
【0053】
下側ブラケット20の基部32の左右方向中央部には、第1ピン穴が形成される。第1ピン穴は、板厚方向に貫通する円形状の孔である。第1ピン穴は、第2突起部23よりも右側かつ後側に形成される。第1ピン穴には、弾性体60の一端を固定するための第1固定ピン61が挿通されて固定される。第1固定ピン61は、第1固定ピン61の頭部61aが下側ブラケット20の基部32よりも上側に位置するような姿勢で、第1ピン穴に挿通される。
【0054】
下側ブラケット20の基部32における右寄りの前端部には、回転軸25が固定されている。回転軸25は、ストッパ部材50が回転移動する際の中心になる。回転軸25は、下側ブラケット20から上方(鉛直方向)に延びる円柱状の軸である。回転軸25は、下側ブラケット20の中央部付近に設けられている。
【0055】
第2補強部35は、下側ブラケット20の下側水平板部21を補強するための部分である。下側ブラケット20の第2補強部35は、上側ブラケット10のものと同じ構成である。下側ブラケット20の第2補強部35は、下架台3に向かって下方に延びる。第2補強部35の下縁部は、上方に凹む曲線で構成される。下側ブラケット20の第2補強部35の後側縁部は、下架台3の前側面に当接して固定されている。第2補強部35の後側縁部の幅(上下方向の長さ)は、下架台3の高さと概ね同じ長さである。
【0056】
(2-3)ボルト
ボルト41は、金属で構成される。ボルト41は、上下方向に延びる円柱状に形成される。ボルト41の上端側(一端側)は、上側水平板部11の第1挿通孔12に軸心が互いに一致するように挿通される。ボルト41の下端側(他端側)は、下側水平板部21の第2挿通孔22に軸心が互いに一致するように挿通される。
【0057】
(2-4)ゴムブッシュ
ゴムブッシュ42は、ボルト41が上側水平板部11の第1挿通孔12に当接する際の衝撃を緩衝するための部材である。ゴムブッシュ42は、円筒部と、該円筒部の軸方向両端部に径方向外側に延びるように形成された円環状の一対の鍔部とを有する。円筒部の外径は、第1挿通孔12の孔径と略同一である。ゴムブッシュ42は、両鍔部の間に第1挿通孔12の外周縁部を挟み込んだ状態で、第1挿通孔12に嵌め込まれている。
【0058】
(2-5)隙間調整部材
隙間調整部材43は、防振に必要なクリアランスを確保するための部材である。隙間調整部材43は、金属で構成される。隙間調整部材43は、円管部と、該円管部の軸方向下端部に設けられた円環状のワッシャ部とを有する。円管部は、上側ワッシャ44と後述する上側ナット45との間の隙間、および第1水平板部11と隙間調整部材43のワッシャ部との間の隙間のそれぞれを調節する。
【0059】
(2-6)上側ワッシャ
上側ワッシャ44は、上架台2や振動発生機器Vが地震等によって大きく振動したときに上架台2および下架台3の上下方向の相対変位を規制するための部材である。上側ワッシャ44は、金属製の円環状に形成される。上側ワッシャ44は、ゴムブッシュ42の上端面よりも上側に位置するように隙間調整部材43の円管部に嵌められている。上側ワッシャ44は、隙間調整部材43の円管部を軸方向に移動可能である。
【0060】
(2-7)ナット
耐震ストッパ機構5は、金属製の4つのナット45,46,47,48を有する。下から上に向かって、下側ナット46、第1中間ナット47、第2中間ナット48、および上側ナット45の順で配置される。この4つのナット45,46,47,48は、ボルト41に嵌められている。
【0061】
下側ナット46は、ボルト41の下端部に嵌められている。下側ナット46は、下側水平板部21よりも下側に位置する。第1中間ナット47は、下側水平板部21の上に位置するようにボルト41に嵌められている。下側ナット46は、第1中間ナット47とともに下側水平板部21を締め付けることで、下側水平板部21に固定される。
【0062】
第2中間ナット48は、第1中間ナット47と隙間調整部材43との間に配置される。第2中間ナット48は、隙間調整部材43のワッシャ部の下面よりも下側に位置するようにボルト41に嵌められている。上側ナット45は、ボルト41の上端部に嵌められている。上側ナット45は、上側水平板部11よりも上側に位置する。
【0063】
上側ナット45は、本開示のナット部材45に対応する。ボルト41および下側ナット46は、本開示のボルト部材Bに対応する。なお、本実施形態では、ボルト部材Bは、ボルト41と下側ナット46とが別体に形成されたが、ボルトとナットとが一体に形成されたボルト部材であってもよい。また、ボルト部材Bとしてのボルト41は下側水平板部21に溶接等により直接固定されてもよい。
【0064】
(2-8)ストッパ部材
ストッパ部材50は、防振架台1に振動発生機器Vを載置して輸送する際に耐震ストッパ機構5を固定するための部材である。ストッパ部材50は、上側ブラケット10と下側ブラケット20との間に配置される。
図3に示すように、ストッパ部材50は、耐震ストッパ機構5が固定状態であるときには、上側ブラケット10および下側ブラケット20に当接して挟まれている。以下の説明では、耐震ストッパ機構5が固定状態のときを基準にストッパ部材50の構成を説明する。
【0065】
ストッパ部材50は、金属製の板状部材である。ストッパ部材50は、本体部50aおよびフランジ部50bを有する。本体部50aは、上側水平板部11および下側水平板部21に対して垂直に設けられた板状の部分である。フランジ部50bは、本体部50a下端から下側ブラケット20の基部32に沿って延びる板状の部分である。
【0066】
図9に示すように、本体部50aは、上面視において略Z字状に形成されている。
図8に示すように、本体部50aは、第1~第3平板部51,52,53と、第1~第2湾曲板部54,55とによって構成される。第1平板部51と、第1湾曲板部54と、第3平板部53と、第2湾曲板部55と、第2平板部52とは、後ろから前に向かって順に連続して形成される。
【0067】
第1平板部51は、下側ブラケット20の後端部の上に位置する。第1平板部51は、下側ブラケット20の基部32の左右方向一端部(左端部)から他端部(右端部)に亘って延びる平板状の部分である。
図5に示すように、第1平板部51は、上側ブラケット10における第1補強部31の基部32と、下側ブラケット20における第1補強部31の基部32とに当接して挟まれて、両基部32,32に固定されている。第1平板部51は、本開示の第1部分P1に対応する。
【0068】
第1湾曲板部54は、第1平板部51と第3平板部53とを繋ぐ湾曲した部分である。第1湾曲板部54の幅(上下方向の長さ)は、第1平板部51の幅よりも小さい。
図7に示すように、第1湾曲板部54は、上側ブラケット10および下側ブラケット20のいずれにも当接していない。
【0069】
第3平板部53は、下側ブラケット20の中央部の上に位置する。第3平板部53は、第1湾曲板部54及び第2湾曲板部55を介して、第1平板部51と第2平板部52とを繋ぐ平板状の部分である。第3平板部53は、下側ブラケット20における後側の右側縁から前側の左側縁に向かって斜めに延びる。第3平板部53は、下側ブラケット20および上側ブラケット10を左右方向に横断するように延びている。
【0070】
第3平板部53の上端部における第2湾曲板部55寄りの部分は、第1湾曲板部54寄りの部分に比べて一段下がっている。第3平板部53の下面は、下側ブラケット20に当接している。
【0071】
第2湾曲板部55は、第3平板部53と第2平板部52とを繋ぐ湾曲した部分である。第2湾曲板部55の幅(上下方向の長さ)は、第1平板部51の幅よりも小さい。
図6に示すように、第2湾曲板部55は、上側ブラケット10および下側ブラケット20のいずれにも当接していない。
【0072】
第2湾曲板部55の上下方向中央部には、第2ピン穴56が形成される。第2ピン穴56は、板厚方向に貫通する円形状の孔である。
図9に示すように、第2ピン穴56には、弾性体60の他端を固定するための第2固定ピン62が挿通されて固定される。第2固定ピン62は、第2固定ピン62の頭部62aがストッパ部材50を挟んでボルト41側とは反対側に位置するような姿勢で、第2ピン穴56に挿通される。
【0073】
第1湾曲板部54、第3平板部53、および第2湾曲板部55は、本開示の第3部分P3に対応する。第3部分P3の上部には、下方に凹む凹部Dが形成されている。凹部Dは、第3平板部53の一部と第2湾曲板部55とに亘って形成されている。
【0074】
第2平板部52は、下側ブラケット20の下側水平板部21の上に位置する。第2平板部52は、下側水平板部21の後側左端部から前側中央部に向かって斜めに延びる平板状の部分である。第2平板部52は、ボルト41の左側に位置する。言い換えると、第3平板部53、第2湾曲板部55、および第2平板部52は、ボルト41を囲むように配置されている。
【0075】
第2平板部52の幅(上下方向の長さ)は、第1平板部51の幅と概ね同じである。
図6に示すように、第2平板部52は、上側水平板部11と下側水平板部21とに当接して挟まれて、両水平板部11,21に固定されている。第2平板部52は、本開示の第2部分P2に対応する。
【0076】
ここで、上側水平板部11における左右方向一方側(左側)の上面には、第2補強部35が設けられていない。一方で、上側水平板部11における左右方向一方側(左側)の下面は、第2平板部52の上端部に当接している。これにより、上側水平板部11において、左右方向における第2補強部35が設けられていない側を第2平板部52によって補強できるので、上側ブラケット10の強度を向上できる。
【0077】
下側ブラケット20においても上側ブラケット10と同様に、下側水平板部21における左側の下面には、第2補強部35が設けられていない一方で、下側水平板部21における左側の上面は、第2平板部52の下端部に当接している。これにより、下側水平板部21において、左右方向における第2補強部35が設けられていない側を第2平板部52によって補強できるので、下側ブラケット20の強度を向上できる。
【0078】
フランジ部50bは、第3平板部53の下端部からボルト41側に延びる。フランジ部50bは、第3平板部53に沿う方向を長辺とし、第3平板部に沿う方向と垂直な方向を短辺とする矩形状に形成される。フランジ部50bの中央には、板厚方向に貫通する円形状の軸穴57が形成される。軸穴57には、下側ブラケット20に取り付けられた回転軸25が挿通する。これにより、耐震ストッパ機構5が解除状態であるときに、ストッパ部材50は、回転軸25を中心に回転可能に構成される。
【0079】
(2-9)弾性体
弾性体60は、ストッパ部材50の左側に配置される。本実施形態の弾性体60は、コイルばねである。弾性体60の一端は、第1固定ピン61に取り付けられる。弾性体60の他端は、第2固定ピン62に取り付けられる。弾性体60は、耐震ストッパ機構5が固定状態であるときに、ストッパ部材50を第1固定ピン61側に押し付けている。
【0080】
本実施形態のストッパ部材50は、第1位置と第2位置とを移動可能に構成されている。第1位置では、
図10および
図11に示すように、上面視において、ストッパ部材50の凹部Dだけが上側ブラケット10および下側ブラケット20と重なる。第1位置では、ストッパ部材50は上側ブラケット10に当接していない。第2位置では、
図9に示すように、上面視において、ストッパ部材50の全体が上側ブラケット10および下側ブラケット20と重なっている。弾性体60は、耐震ストッパ機構5が固定状態にあるときに、ストッパ部材50を第1位置に付勢している。
【0081】
(3)ストッパ部材の移動動作
ストッパ部材の移動動作について、
図3および
図9~
図11を参照しながら説明する。なお、
図11は、図を分かりやすくするため、ボルト41、ナット45,46,47,48、隙間調整部材43、ゴムブッシュ42、および上側ワッシャ44の図示を省略している。
【0082】
図3および
図9に示すように、防振架台1に振動発生機器Vを載置して輸送する場合には、耐震ストッパ機構5を固定状態にする。具体的には、ストッパ部材50が第2位置にある状態で、上側ナット45を締めることで、ストッパ部材50が上側ブラケット10と下側ブラケット20とに挟まれて、上下の両側から押さえつけられることで固定される。
このとき、弾性体60は、伸長している。一方で、ストッパ部材50は上側ブラケット10の第1突起部13に当接している。そのため、ストッパ部材50は、移動が規制された状態である。
【0083】
この固定状態では、ストッパ部材50の第1部分P1は、上側ブラケット10および下側ブラケット20における第1補強部31の基部32のそれぞれに当接して挟まれて固定される。同時に、ストッパ部材50の第2部分P2は、上側ブラケット10の上側水平板部11および下側ブラケット20の下側水平板部21に当接して挟まれて固定される。
【0084】
このように、固定状態では、上側ブラケット10、ストッパ部材50、および下側ブラケット20が互いに当接して面接触しているので、これらの部材を1つの剛体としてみなすことができる。そのため、輸送時において、防振架台1に上下方向、左右方向、前後方向のあらゆる方向から作用する外力に対して、耐震ストッパ機構5では、この外力に起因する荷重を、1つの剛体としてみなされたこれらの部材の全体で受けることができる。これにより、上側ブラケット10および下側ブラケット20にかかる負荷を低減できる。これにより、輸送時の両ブラケット10,20の破損を抑制できる。
【0085】
防振架台1が設置現場に到着した後、耐震ストッパ機構5を固定状態から解除状態に切り替える。具体的には、作業者は、上側ナット45を緩める。上側ナット45が緩むと、上側ブラケット10が上昇するのに伴って第1突起部13が上昇する。これにより、第1突起部13によるストッパ部材50の移動規制が解除される。この際、耐震ストッパ機構5の固定状態が解除され、上架台2と下架台3との間隔が拡大する。これに伴い、上側ブラケット10とストッパ部材50との間に隙間が形成される。これにより、耐震ストッパ機構5は解除状態に切り替わり、ストッパ部材50は上側ブラケット10および下側ブラケット20の間を移動可能になる。
【0086】
このように、上側ナット45を回転させて緩めるだけで、耐震ストッパ機構5を固定状態と解除状態とに切り替えることができる。これにより、簡単に固定状態を解除することができる。
【0087】
ストッパ部材50の移動規制が解除されると、ストッパ部材50は、弾性体60の付勢力により第1固定ピン61側に引き寄せられて、回転軸25を中心に自動で回転移動する。そして、
図10に示すように、ストッパ部材50は、第2突起部23に当接して第1位置で止まる。
【0088】
このように、第1突起部13による移動規制が解除されると、弾性体60の作用によってストッパ部材50が自動的に第1位置に移動する。これにより、作業者がストッパ部材50を手動で回転させる必要がないので、作業者の負担が軽減される。
【0089】
加えて、本実施形態では、ストッパ部材50に形成された軸穴57は、ストッパ部材50の中央部に設けられている。そのため、ストッパ部材50が回転移動する際の軌道は、軸穴57がストッパ部材50の端部寄りに設けられている場合に比べて、小さくなる。これにより、ストッパ部材50が移動する際に周辺部材と干渉することを抑制できる。
【0090】
ここで、ストッパ部材50が第1位置にあるとき、上面視において、ストッパ部材50のうち第3部分P3の凹部Dだけが上側ブラケット10と重なっている。このとき、
図11に示すように、上側ブラケット10の下面とストッパ部材50における凹部Dの底部との距離L1は、上側ブラケット10の下面とストッパ部材50の第1平板部51の上端部との距離L2よりも大きい(L1>L2)。
【0091】
このように、解除状態においてストッパ部材50が第1位置に位置することによって、ストッパ部材50が第2位置に位置するときと比べて、上側ブラケット10とストッパ部材50との間の隙間を大きくできる。これにより、設置現場において上架台2や振動発生機器Vが地震等によって大きく振動したときの上側ブラケット10の可動距離を大きくできる。
【0092】
また、防振架台1に振動が加わっていない静止状態においても、例えば、振動発生機器Vが水平に載置されていない場合には、防振架台1が傾いてしまう。このとき、ストッパ機構5が設けられる場所によっては、上側ブラケット10とストッパ部材50と間に僅かな隙間しか形成されない場合がある。このような場合にも、ストッパ部材50が第1位置に位置することにより、上側ブラケット10とストッパ部材50と間に形成される隙間を十分に確保できるので、上側ブラケット10とストッパ部材50との干渉を回避することができる。
【0093】
ところで、ストッパ機構5を固定状態にするために上側ナット45を締め込むと、アイソレータ4が圧縮される。一方で、ストッパ機構5を固定状態から解除状態に切り替えると、アイソレータ4はその反力により浮き上がる。この際、ストッパ機構5を解除状態に切り替えたときのアイソレータ4の浮き上がり量は、ストッパ機構を固定状態にするために締め込んだ上側ナット45の締め込み量と同じである。
【0094】
本実施形態のストッパ部材50には凹部Dが形成されているので、ストッパ機構5を解除状態にしたときにアイソレータ4の浮き上がり量が少なくても、解除状態においてストッパ部材50を第1位置に位置させることで、上側ブラケット10とストッパ部材50と間の隙間を十分に確保できる。
【0095】
したがって、防振架台1に振動発生機器Vを載置して輸送する際にストッパ機構5を固定状態にする場合、ストッパ部材50を固定するのに必要な最低限の締め込み量だけ上側ナット45を締め込めばよい。更に、上側ナット45を最低限の締め込み量だけ締め込んだ場合、設置現場においてもストッパ機構5を解除状態にするために上側ナット45を緩める量も少なくて済む。
【0096】
これにより、防振架台1の輸送準備においてストッパ機構5を固定状態にするための作業時間および手間を低減することができるとともに、防振架台1の設置現場においてもストッパ機構5を解除状態にするための作業時間および手間を低減することができる。その結果、防振架台1の輸送準備から設置まで間において作業性を向上できる。
【0097】
本実施形態の第1位置では、弾性体60は僅かに伸長した状態である。これにより、設置現場において防振架台1を使用する場合に、ストッパ部材50が振動してストッパ部材50の周辺部材に接触して異音が発生するのを抑制できる。
【0098】
ところで、従来のストッパ部材を備えない防振架台において、振動発生機器Vを防振架台に載置して輸送する場合には、輸送時の振動等によるアイソレータの破損を抑制するために、上架台と下架台との間に枕木やスペーサ等の挿入材を挿入することで、耐震ストッパ機構を固定していた。この場合、防振架台が設置現場に到着した後に挿入材を取り外すため、挿入材を廃棄しなければならなかった。
【0099】
これに対し、本開示では、耐震ストッパ機構5が解除状態のときに、ストッパ部材50が弾性体60の作用によって第2位置から第1位置に回転移動し、ストッパ部材50が第1位置にある状態で、防振架台1を使用することができる。これにより、挿入材を用いることなく、振動発生機器Vを載置した状態で防振架台1を輸送することができる。
【0100】
(4)輸送時における上側および下側ブラケットの補強
防振架台1に振動発生機器Vを載置して輸送する際に、輸送中の振動発生機器Vの揺れに伴って、防振架台1にモーメント力が作用する。例えば、本実施形態の振動発生機器Vである変圧器のように、重量が重い場合や重心位置が高い場合には、防振架台1に作用するモーメント力がより大きくなる。このモーメント力は、上下の両架台2,3の延伸方向を中心に回転する方向に作用する。そのため、
図7および
図9に二点鎖線Aで示すように、耐震ストッパ機構5における上下の両架台2,3の前端部付近と接触する部分に一番大きく作用する。
【0101】
これに対し、本実施形態の上側ブラケット10および下側ブラケット20のそれぞれは、第1補強部31および第2補強部35を有する。第1補強部31の一対の突出部33,33は、上下の両架台2,3を横断するように設けられる。これにより、モーメント力が作用する方向に両ブラケット10,20が曲がりにくくなる。
【0102】
加えて、各第2補強部35の後側縁部は、上架台2および下架台3のそれぞれの前側面に当接している。そのため、上下の両架台2,3にモーメント力が作用しても、第2補強部35の後側縁部でモーメント力を受けることができる。これにより、上側ブラケット10および下側ブラケット20の強度を向上できる。
【0103】
更に、耐震ストッパ機構5では、ストッパ部材50が上側ブラケット10および下側ブラケット20に当接して挟まれることで固定されているので、上側ブラケット10、ストッパ部材50、および下側ブラケット20を1つの剛体としてみなすことができる。これにより、振動発生機器Vの荷重に加えて、振動発生機器Vの揺れに伴うモーメント力も、これらの部材の全体で受けることができる。その結果、各ブラケット10,20にかかる負荷を低減できる。
【0104】
ところで、
図12の二点鎖線で示すように、防振架台1の輸送中の揺れに伴って、例えば振動発生機器Vが反時計回り方向に傾いた場合、
図12における左側の上架台2は沈み込む一方、右側の上架台2は浮き上がる。これに伴い、
図12において左側に配置された耐震ストッパ機構5は上架台2によって下方に押され付けられる一方、右側に配置された耐震ストッパ機構5は上架台2によって上方に引っ張り上げられる。
【0105】
左側に配置された耐震ストッパ機構5では、ストッパ部材50の第1平板部51が上側ブラケット10の基部32と下側ブラケットの基部32との間に挟まって固定されているので、これらの部分が一体となって、下方に押さえつけられる方向の荷重を受けることができる。これにより、各ブラケット10,20にかかる負荷を低減できる。
【0106】
次に、右側に配置された耐震ストッパ機構5の上側ブラケット10に注目すると、第1補強部31の周辺は上架台2につられて上方に引っ張り上げられる。一方で、上側水平板部11の周辺は、ボルト41およびナット45,46,47,48によって締め付けられているので、上方に引っ張り上げられることなく、上側水平板部11の前端部分は、第1補強部31周辺とは逆に下方に傾く。この場合には、防振架台1の輸送中の揺れに伴う衝撃荷重を上側水平板部11および下側水平板部21で受けなければならない。これに対し、本実施形態では、ストッパ部材50の第2平板部52が上側水平板部11と下側水平板部21との間に挟まって固定されているので、これらの部分が一体となって荷重を受けることができる。これにより、各ブラケット10,20にかかる負荷を低減できる。
【0107】
(5)特徴
(5-1)上側ブラケット10および下側ブラケット20のそれぞれは、該ブラケット10,20を補強する第1補強部31を有する。各第1補強部31は、対応する水平板部11,21と水平方向に連続して形成され、上面視において対応する架台2,3と重なるように配置された基部32と、基部32から鉛直方向に突出し、対応する架台2,3の延伸方向である第1方向に対向する一対の突出部33,33と有する。一対の突出部33,33は、対応する架台2,3を横断するように設けられる。ストッパ部材50は、上側ブラケット10および下側ブラケット20に当接して挟まれることで固定される。
【0108】
本実施形態では、一対の突出部33,33が対応する架台2,3を横断するように設けられる。そのため、防振架台1に振動発生機器Vを載置して輸送する際に、該振動発生機器Vの揺れに伴って防振架台1に作用するモーメント力がかかる方向にブラケットが曲がりにくくなる。これにより、ブラケットの強度を向上できる。
【0109】
加えて、本実施形態では、ストッパ部材50が上側ブラケット10および下側ブラケット20に当接して挟まれることで固定されるので、上側ブラケット10、ストッパ部材50、および第2ブラケット20を1つの剛体としてみなすことができる。そのため、防振架台1に振動発生機器Vを載置して輸送する際に生じる振動や衝撃荷重を、上側ブラケット10、ストッパ部材50、および第2ブラケット20の全体で受けることができる。その結果、両ブラケット10,20にかかる負荷を低減できる。
【0110】
以上のように、本実施形態では、各ブラケット10,20の強度を向上させつつ、各ブラケット10,20にかかる負荷を低減することにより、耐震ストッパ機構5を構成する上側ブラケット10および下側ブラケット20の破損を抑制できる。
【0111】
(5-2)ストッパ部材50は、上側ブラケット10の基部32と下側ブラケット20の基部32とに当接して挟まれる第1部分P1と、第1水平板部11と第2水平板部21とに当接して挟まれる第2部分P2とを有する。
【0112】
本実施形態では、防振架台1に振動発生機器Vを載置した状態で輸送する際において、該振動発生機器Vの揺れに伴って、上架台2が沈み込んだときにはストッパ部材50の第1部分P1で荷重を受ける。一方で上架台2が浮き上がったときにはストッパ部材50の第2部分P2で荷重を受けることができる。これにより、防振架台1の輸送時において上架台2に様々な方向の荷重がかかっても、各ブラケット10,20にかかる荷重の負荷を低減できる。
【0113】
(5-3)第2補強部35の後側縁部は、対応する架台2,3の前側面に当接する。本実施形態では、防振架台1にモーメント力が作用しても、第2補強部35の後側縁部でモーメント力を受けることができる。これにより、上側ブラケット10および下側ブラケット20の強度をより向上できる。
【0114】
(5-4)第2補強部35は、対応する水平板部11,21における第1方向の一方側にのみ設けられる。ストッパ部材50の第2部分P2は、第2補強部35が設けられた水平板部11,21における第1方向の他方側の位置において当接する。
【0115】
本実施形態では、第2補強部35が、対応する水平板部11,21の第1方向の一方側にのみ設けられているので、第1方向の他方側から上側ナット45または下側ナット46を動かすことができる。一方で、対応する水平板部11,21の第1方向の他方側の位置では第2補強部35が設けられていないので、この位置での振動発生機器Vの揺れに伴うモーメント力に対する強度が低下してしまう。これに対し、本実施形態では、この強度が低下した位置にストッパ部材50の第2部分P2を当接させている。これにより、上側ブラケット10および下側ブラケット20の強度をより向上できる。
【0116】
(5-5)耐震ストッパ機構5は、上側ナット45を回転させることにより、ストッパ部材50が上側ブラケット10および下側ブラケット20に挟まれて固定される固定状態と、ストッパ部材50が上側ブラケット10および下側ブラケット20の間を移動可能な解除状態とに切り替わる。
【0117】
本実施形態では、上側ナット45を回転させるだけで、耐震ストッパ機構5の状態を固定状態と解除状態とに切り替えることができる。これにより、耐震ストッパ機構5の固定状態を簡単に解除できる。
【0118】
(5-6)解除状態において、ストッパ部材50は、回転軸25を中心に回転移動可能に構成される。本実施形態では、解除状態において、ストッパ部材50が回転軸25を中心に回転できる。
【0119】
(5-7)解除状態において、ストッパ部材50が回転することで、上面視において第3部分P3の凹部Dだけが上側ブラケット10と重なる第1位置に移動する。
【0120】
本実施形態では、解除状態において、ストッパ部材50が回転して第1位置に移動することにより、上面視において第3部分P3の凹部Dだけが上側ブラケット10と重なる。そのため、ストッパ部材50と上側ブラケット10との間の隙間が拡大する。これにより、防振架台1に大きな振動が加わったときの上架台2の可動距離を大きくできる。
【0121】
加えて、防振架台1に振動が加わっていない静止状態においても、例えば、振動発生機器Vが水平に載置されていない場合には、防振架台1が傾いてしまう。このような場合にも、ストッパ部材50が第1位置に位置することにより、上側ブラケット10とストッパ部材50と間に形成される隙間を十分に確保できるので、上側ブラケット10とストッパ部材50との干渉を回避することができる。
【0122】
更に、ストッパ機構5を解除状態にしたときにアイソレータ4の浮き上がり量が少なくても、解除状態においてストッパ部材50を第1位置に位置させることで、上側ブラケット10とストッパ部材50と間の隙間を十分に確保できる。したがって、ストッパ機構5を固定状態にする場合、ストッパ部材50を固定するのに必要な最低限の締め込み量だけ上側ナット45を締め込めばよい。これにより、ストッパ機構5を固定状態にするための作業時間および手間を低減でき、作業性を向上できる。
【0123】
加えて、上記のように上側ナット45を必要最低限の締め込み量だけ締め込んだ場合、防振架台1の設置現場において固定状態から解除状態に切り替える際に上側ナット45を緩める量も少なくて済む。これにより、設置現場におけるストッパ機構5を解除状態にするための作業時間および手間も低減でき、作業性を向上できる。
【0124】
(5-8)耐震ストッパ機構5は、固定状態において、ストッパ部材50を第1位置に付勢する弾性体60を備える。
【0125】
本実施形態では、固定状態において、弾性体60によってストッパ部材50が第1位置に付勢されている。そのため、耐震ストッパ機構5を固定状態から解除状態に切り替えると、弾性体60の付勢力によって、自動的にストッパ部材50が第1位置に移動する。これにより、作業者がストッパ部材50を移動させる作業が省略され、作業者の負担が軽減される。
【0126】
(6)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0127】
(6-1)変形例1
弾性体60の一端は、ストッパ部材50に直接取り付けられてもよい。この場合、
図13に示すように、ストッパ部材50には、弾性体60の端部を取り付けるための引っ掛け部58が設けられる。引っ掛け部58は、第3平板部53の下端から下方に延びる突出部である。引っ掛け部58には、くびれ部58aが形成されている。このくびれ部58aに弾性体60であるコイルばねのフックを引っ掛けることで、ストッパ部材50に弾性体60を取り付けることができる。
【0128】
(6-2)変形例2
図14に示すように、弾性体60は、トーションばねであってもよい。この場合、弾性体60は、ストッパ部材50の第3平板部53のボルト41側に配置される。弾性体60の一端は、第1固定ピン61に当接するように配置される。第1固定ピン61は、下側水平板部21におけるボルト41と回転軸25との間に固定される。第1固定ピン61は、鉛直方向に延びる。弾性体60の他端は、第3平板部53のボルト41側の面に形成された長円形状の係合穴59に嵌められる。この係合穴59は、第3平板部53を板厚方向に貫通していない。
【0129】
耐震ストッパ機構5が固定状態であるときには、弾性体60の他端は、係合穴59の前端部に当接する。耐震ストッパ機構5が固定状態から解除状態に切り替わると、弾性体60の付勢力により、ストッパ部材50が第2突起部23側に押されて回転軸25を中心に回転する。この回転移動に伴って、弾性体60の他端は、係合穴59内を後端部側に移動する。そして、ストッパ部材50が第2突起部23に当接すると、ストッパ部材50の回転が停止する。
【0130】
(6-3)変形例3
図15に示すように、ストッパ部材50の回転中心は、下側ブラケット20の前後方向の端に設けられてもよい。言い換えると、ストッパ部材50の軸穴57は、ストッパ部材50の端に設けられてもよい。
【0131】
ここで、
図15において、実線で示したストッパ部材50は第2位置を示し、一点鎖線で示したストッパ部材50は、解除状態においてストッパ部材50の移動が完了した第3位置を示し、二点鎖線で示したストッパ部材50は、第2位置から第3位置に移動する途中の様子を示す。本変形例では、第3位置において、上面視でストッパ部材50と上側ブラケット10が重なる部分が、上記実施形態の耐震ストッパ機構5よりも少ない。そのため、本変形例では、ストッパ部材50が第2位置に位置するときに、上側ブラケット10と下側ブラケット20との接触面積を、上記実施形態の耐震ストッパ機構5に比べて増やすことができる。これにより、固定状態における両ブラケット10,20の破損をより抑制できる。
【0132】
(6-4)変形例4
図16に示すように、回転軸25は、水平方向に延びて設けられてもよい。この場合には、例えば、ストッパ部材50は、正面視において、第1辺71と、該第1辺に対して垂直な方向に延びる第2辺72とを有するとともに、第1辺71と第2辺72との交点に回転軸25が配置される。このとき、第1辺71の長さh1は、第2辺72の長さh2よりも長い(h1>h2)。
【0133】
耐震ストッパ機構5が固定状態であるときには、第1辺71が鉛直方向に延びるような姿勢で配置される。耐震ストッパ機構5が解除状態に切り替わったときには、ストッパ部材50を回転させて第1辺71を倒すことで、第2辺72が鉛直方向に延びるような姿勢になる。これにより、防振架台1の輸送時には、ストッパ部材50が上側ブラケット10および下側ブラケット20に当接して固定される一方、防振架台1が設置されて使用される際には、ストッパ部材50と上側ブラケット10との間に十分な隙間が形成される。
【0134】
(6-5)変形例5
図17に示すように、ストッパ部材50は、水平方向に移動可能に構成されてもよい。この場合、例えばストッパ部材50は、上面視においてV字状に形成される。耐震ストッパ機構5が固定状態であるとき、ストッパ部材50は、上架台2および下架台3の前端部同士の間に配置される。そのため、ストッパ部材50は、上架台2および下架台3の前端部にかかる荷重を受けることができる。これにより、上側ブラケット10および下側ブラケット20の破損を抑制できる。
【0135】
(6-6)その他の変形例
第1補強部31の突出部33は、対応する架台2,3と反対側に向かって突出してもよい。
【0136】
第1補強部31の突出部33は、基部32とは別部材を溶接等により接合することで形成されてもよい。
【0137】
耐震ストッパ機構5が解除状態であるときに、作業者がストッパ部材50を手動で回転させてもよい。この場合、耐震ストッパ機構5は、弾性体60を備えない。
【0138】
耐震ストッパ機構5が解除状態にあるときに、作業者がストッパ部材50を手動で取り外してもよい。この場合には、耐震ストッパ機構5は、弾性体60および回転軸25を備えない。
【0139】
上記実施形態では、上側ブラケット10が本開示の第1ブラケットに対応したが、下側ブラケット20が本開示の第1ブラケットに対応してもよい。
【0140】
耐震ストッパ機構5を固定状態と解除状態とに切り替える場合に、ボルト41または下側ナット46を回転させてもよい。
【0141】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、及びその他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0142】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0143】
以上説明したように、本開示は、防振架台のストッパ機構について有用である。
【符号の説明】
【0144】
2 上架台
3 下架台
10 上側ブラケット(第1ブラケット)
11 上側水平板部(第1水平板部)
12 第1挿通孔(挿通孔)
20 下側ブラケット(第2ブラケット)
21 下側水平板部(第2水平板部)
25 回転軸
31 第1補強部
32 基部
33 突出部
35 第2補強部
45 上側ナット(ナット部材)
50 ストッパ部材
60 弾性体
B ボルト部材
D 凹部
P1 第1部分
P2 第2部分
P3 第3部分