(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118196
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】エレベーターシステムおよびロープ点検方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230818BHJP
B66B 5/12 20060101ALI20230818BHJP
B66B 7/12 20060101ALI20230818BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B5/12 A
B66B7/12 Z
B66B3/00 R
B66B5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021015
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 奏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀幸
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3F303BA01
3F303DC34
3F304BA02
3F304BA08
3F304BA24
3F304ED01
3F305BB02
3F305DA18
(57)【要約】
【課題】巻上機の設置位置によらずにロープを容易に点検し得るエレベーターシステムを提供する。
【解決手段】点検対象の階床において巻上機に巻き掛けられているロープの部分の点検が行われるエレベーターシステムであって、巻上機の位置情報と、点検対象の階床において乗りかごが停止しているときの乗りかごの位置情報とから、ロープの部分の点検が行われる際の乗りかごの停止位置である点検位置を計算する計算部と、計算部により計算された点検位置を記憶する記憶部と、記憶部により記憶された点検位置に基づいて乗りかごを移動する制御部と、を設けるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象の階床において巻上機に巻き掛けられているロープの部分の点検が行われるエレベーターシステムであって、
前記巻上機の位置情報と、前記点検対象の階床において乗りかごが停止しているときの前記乗りかごの位置情報とから、前記ロープの部分の点検が行われる際の前記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する計算部と、
前記計算部により計算された点検位置を記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶された点検位置に基づいて前記乗りかごを移動する制御部と、
を備えるエレベーターシステム。
【請求項2】
前記乗りかごと重量のバランスをとるための釣り合いおもりが設けられ、
前記乗りかご側に第1の滑車が設けられ、前記釣り合いおもり側に第2の滑車が設けられ、
前記ロープの両端は、昇降路の頂部において支持され、
前記ロープは、前記乗りかごの滑車と、前記第1の滑車と、前記巻上機の綱車と、前記第2の滑車と、前記釣り合いおもりの滑車とに架け渡され、
前記計算部は、前記ロープの部分が、前記第1の滑車と前記綱車との間にある第1のロープ区間と、前記綱車と前記第2の滑車との間にある第2のロープ区間と、前記第2の滑車と前記釣り合いおもりの滑車との間にある第3のロープ区間との何れに含まれているかを特定する、
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
保守ツールと通信可能なインターフェース部を備え、
前記保守ツールからの点検位置への移動指示に基づいて前記制御部により前記乗りかごが前記点検位置に移動した場合、前記インターフェース部は、前記計算部により特定されたロープ区間を示す情報を前記保守ツールに通知する、
請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
保守ツールと通信可能なインターフェース部を備え、
前記インターフェース部は、最下階乗場のフロアレベルから前記巻上機の下端までの高さと、前記巻上機の下端から前記綱車の綱車芯までの高さと、前記綱車芯から前記ロープが前記巻上機の外部へ出るまでの高さと、前記乗りかごの床面からかご上手摺りまでの高さと、前記乗りかごが前記点検位置にあるときの高さであって、前記かご上手摺りから前記点検対象の階床における前記綱車と前記ロープとのかかり代の中心を示す中心点までの高さと、前記綱車に掛かっている前記ロープの長さとを示す情報を前記保守ツールから受け取り、
前記計算部は、前記インターフェース部により受け取られた情報をもとに、前記ロープの部分が、前記第1のロープ区間と前記第2のロープ区間と前記第3のロープ区間との何れに含まれているかを特定する、
請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項5】
保守ツールと通信可能なインターフェース部を備え、
前記乗りかごと重量のバランスをとるための釣り合いおもりが設けられ、
前記乗りかご側に第1の滑車が設けられ、前記釣り合いおもり側に第2の滑車が設けられ、
前記ロープの両端は、昇降路の頂部において支持され、
前記ロープは、前記乗りかごの滑車と、前記第1の滑車と、前記巻上機の綱車と、前記第2の滑車と、前記釣り合いおもりの滑車とに架け渡され、
前記計算部は、前記インターフェース部により受け取られた情報をもとに、前記ロープの部分の点検が行われる際の前記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する、
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
前記インターフェース部は、前記乗りかごが前記点検対象の階床に停止したときの、最下階乗場のフロアレベルから前記乗りかごの床面までの高さと、最下階乗場のフロアレベルから前記巻上機の下端までの高さと、前記巻上機の下端から前記綱車の綱車芯までの高さと、前記乗りかごの床面からかご上手摺りまでの高さと、前記乗りかごが前記点検位置にあるときの高さであって、前記かご上手摺りから前記点検対象の階床における前記綱車と前記ロープとのかかり代の中心を示す中心点までの高さと、前記綱車に掛かっている前記ロープの長さとを示す情報を前記保守ツールから受け取り、
前記計算部は、前記ロープの部分が、前記第1の滑車と前記綱車との間にある第1のロープ区間、または、前記綱車と前記第2の滑車との間にある第2のロープ区間にある場合、前記インターフェース部により受け取られた情報をもとに、前記ロープの部分の点検が行われる際の前記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する、
請求項5に記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
前記インターフェース部は、前記乗りかごが前記点検対象の階床に停止したときの、最下階乗場のフロアレベルから前記乗りかごの床面までの高さと、前記第2の滑車の芯から昇降路の頂部までの高さと、前記乗りかごの床面からかご上手摺りまでの高さと、前記乗りかごが前記点検位置にあるときの高さであって、前記かご上手摺りから前記点検対象の階床における前記綱車と前記ロープとのかかり代の中心を示す中心点までの高さと、最下階乗場のフロアレベルから最上階乗場のフロアレベルのフロアレベルまでの高さと、最上階乗場のフロアレベルから昇降路の頂部までの高さと、前記綱車に掛かっている前記ロープの長さと、前記綱車から前記第2の滑車までの前記ロープの長さと、前記第2の滑車に掛かっている前記ロープの長さとを示す情報を前記保守ツールから受け取り、
前記計算部は、前記ロープの部分が、前記第2の滑車と前記釣り合いおもりの滑車との間にある第3のロープ区間にある場合、前記インターフェース部により受け取られた情報をもとに、前記ロープの部分の点検が行われる際の前記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する、
請求項5に記載のエレベーターシステム。
【請求項8】
前記乗りかごと重量のバランスをとるための釣り合いおもりが設けられ、
前記巻上機は、最上階乗場のフロアレベルより高い位置に設けられ、
前記ロープの両端は、昇降路の頂部において支持されている、
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項9】
前記計算部は、前記巻上機の位置情報と、前記巻上機の綱車の寸法情報と、前記点検対象の階床において乗りかごが停止しているときの前記乗りかごの位置情報とから、前記ロープの部分の点検が行われる際の前記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する、
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項10】
前記計算部は、前記巻上機の位置情報と、前記乗りかごの高さ情報と、前記点検対象の階床において乗りかごが停止しているときの前記乗りかごの位置情報とから、前記ロープの部分の点検が行われる際の前記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する、
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項11】
点検対象の階床において巻上機に巻き掛けられているロープの部分の点検が行われるロープ点検方法であって、
計算部が、前記巻上機の位置情報と、前記点検対象の階床において乗りかごが停止しているときの前記乗りかごの位置情報とから、前記ロープの部分の点検が行われる際の前記乗りかごの停止位置である点検位置を計算することと、
記憶部が、前記計算部により計算された点検位置を記憶することと、
制御部が、前記記憶部により記憶された点検位置に基づいて前記乗りかごを移動することと、
を含むロープ点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ロープを点検する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機械室が設けられていないエレベーターにおける主ロープの点検作業では、乗りかごが基準階(例えば、利用の多い階床)、中間階等の階床(以下、「点検対象の階床」と記す)に停止しているときに主ロープが巻上機の綱車に掛かる箇所を重要点検箇所とし、作業員は、重点的に目視点検を行う。重要点検箇所については、点検対象の階床に乗りかごが停止しているときに巻上機の綱車に掛かっている主ロープに予めマーカを設けることで、保守員は、乗りかご上から重要点検箇所を点検することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻上機が高所に設置されている場合、特許文献1に記載の技術では、巻上機には乗りかご上からアクセスする必要があり、主ロープの重要点検箇所にマーカを設けることが困難となってしまい、主ロープの点検を容易に行うことができない。
【0005】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、巻上機の設置位置によらずにロープを容易に点検し得るエレベーターシステム等を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明においては、点検対象の階床において巻上機に巻き掛けられているロープの部分の点検が行われるエレベーターシステムであって、前記巻上機の位置情報と、前記点検対象の階床において乗りかごが停止しているときの前記乗りかごの位置情報とから、前記ロープの部分の点検が行われる際の前記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する計算部と、前記計算部により計算された点検位置を記憶する記憶部と、前記記憶部により記憶された点検位置に基づいて前記乗りかごを移動する制御部と、を設けるようにした。
【0007】
上記構成では、例えば、保守員は、巻上機および乗りかごの位置情報を設定することで点検位置が計算されて乗りかごを点検位置に停止可能になるので、巻上機にアクセスして点検箇所に事前にマーカを設ける必要がなく、巻上機の設置位置にかかわらず、ロープを点検することができる。また、上記構成によれば、例えば、ロープにマーカが設けられていなくても、乗りかごが点検位置に自動で停止されるので、保守員は、ロープの点検を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、利便性の高いエレベーターシステムを実現することができる。上記以外の課題、構成、および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態によるエレベーターシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態による点検位置を算出するためのパラメータを説明するための図である。
【
図3】第1の実施の形態による昇降路内の構成の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態による点検位置の算出に係る処理フローの一例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態によるマーキング作業に係る処理フローの一例を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態による制御盤による処理の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施の形態によるエレベーターシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(I)第1の実施の形態
以下、本発明の一実施の形態を詳述する。ただし、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
本実施の形態のエレベーターシステムでは、点検対象の階床における乗りかごの停止位置と、主ロープの点検箇所が乗りかご上ですれ違う乗りかごの停止位置(主ロープの点検作業が行われる乗りかごの停止位置であり、以下「点検位置」と記す)との関係が数式化された式を用いて点検位置が算出される。本エレベーターシステムは、乗りかごの運転を制御する制御部が管理する乗りかごの位置情報をもとに点検位置で乗りかごを自動停止する。
【0012】
上記構成によれば、保守員は、点検対象の階床における乗りかごの停止位置に係る情報(点検位置を算出するためのパラメータ)を設定することで、乗りかご上から、乗りかごを点検位置に自動停止させることができる。点検位置において乗りかごが自動停止するので、事前に巻上機の綱車に掛かる主ロープにマーカを設ける作業(マーキング作業)をする必要がないため、巻上機の設置位置によらず、主ロープの点検を行うことができる。また、点検位置において乗りかごが自動停止することで、マーキング作業を乗りかご上から行うことができるので、マーキング作業をするか否かにかかわらず、保守員が巻上機にアクセスする必要がないことから、保守員の作業工数の低減を図ることができる。
【0013】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は、文脈毎に用いられ、1つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。
【0015】
なお、以下の説明では、図面において同一要素については、同じ番号を付し、説明を適宜省略する。また、同種の要素を区別しないで説明する場合には、枝番を含む参照符号のうちの共通部分(枝番を除く部分)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、枝番を含む参照符号を使用することがある。例えば、乗場を特に区別しないで説明する場合には、「乗場102」と記載し、個々の乗場を区別して説明する場合には、「最下階乗場102-1」、「中間階乗場102-2」のように記載することがある。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るエレベーターシステム100の概略構成を示す図である。エレベーターシステム100では、昇降路101内に乗りかご110が設けられている。
【0017】
乗りかご110は、人、物等を乗せるための箱状の構造物であり、人による呼びボタンの操作、保守員103による保守ツール104の操作等に応じて、乗場102に停車する。乗場102としては、最下階乗場102-1、中間階乗場102-2、最上階乗場102-3等、複数の乗場102が設けられている。乗りかご110の天井板111の上、いわゆるかご上112には、保守員103の昇降路101への落下を防止するためのかご上手摺り113が設けられている。また、かご上112には、保守員103が操作する保守ツール104を接続可能な器具ボックス114が設置されている。保守ツール104としては、例えば、可搬型のパーソナルコンピュータが使用できる。なお、かご上112には、保守員103に情報を知らせるためのかご上ブザー等が設置されていてもよい。
【0018】
また、エレベーターシステム100は、釣り合いおもり120を備える。昇降路101内には、乗りかご110と釣り合いおもり120とが主ロープ130によって昇降可能に配置されている。
【0019】
主ロープ130は、典型的には複数本であり、釣り合いおもりプーリー140と、頂部プーリー150と、巻上機160が有する綱車161と、かご下プーリー170とに架け渡され、昇降路101の頂部の支持構造105(主ロープ支持部)により支持されている。主ロープ130には、点検箇所を示すマーカ131が1つ以上設けられてもよい。例えば、上側のマーカ131-1と下側のマーカ131-2との間は、保守員103がかご上112において主ロープ130を点検する点検範囲(点検箇所の一例)である。本実施の形態では、主ロープ130の摩損が最も進むと考えられる部位が、マーカ131間の部位であるとして説明する。これは、点検対象の階床に乗かご110が停止している際に綱車161に掛かっている主ロープ130の部位が、乗かご110の加速減速域で最も多く綱車161に掛かっているためである。
【0020】
釣り合いおもりプーリー140は、釣り合いおもり120に設置され、釣り合いおもり120を主ロープ130で駆動させるための滑車である。頂部プーリー150は、昇降路101の頂部に設置されている。頂部プーリー150としては、かご側頂部プーリー150-1と、釣り合いおもり側頂部プーリー150-2とが設けられている。巻上機160は、昇降路101内に設置され、主ロープ130を介して乗りかご110と釣り合いおもり120とをつるべ式に昇降させる。綱車161は、巻上機160の駆動力を主ロープ130に伝達する。かご下プーリー170は、乗りかご110の下部に配置され、乗りかご110を支えるとともに、巻上機160の駆動により綱車161を介して乗りかご110を上昇させたり下降させたりする。
【0021】
なお、
図1では、巻上機160および綱車161については、最下階乗場102-1のフロアレベルよりも高い位置に設置される例を示しているが、より下方に設置されてもよいし、より上方に設置されていてもよく、昇降路101内に設置される高さについては制限しない。
【0022】
また、昇降路101内には、乗りかご110の運転を制御する制御装置としての制御盤180が配置され、最下階乗場102-1には、INDボックス190が設置されている。制御盤180からINDボックス190内には第1の通信ケーブル181が配線されている。保守ツール104は、第2の通信ケーブル182を介して第1の通信ケーブル181に接続され、制御盤180との通信を行うことができる。これにより、保守員103は、保守ツール104を介して、点検位置を算出するためのパラメータを制御盤180に設定する作業を乗場102から行うことができる。
【0023】
また、第1の通信ケーブル181は、第3の通信ケーブル183を介してかご上112の器具ボックス114に接続されている。保守ツール104は、第2の通信ケーブル182を介して器具ボックス114に接続された場合、制御盤180と通信を行うことができる。これにより、保守員103は、かご上112から、保守ツール104を介して制御盤180に指示を出すことで、点検位置に乗りかご110を停止させ、点検箇所にマーカ131を付するマーキング作業、点検箇所の点検作業等を行うことができる。
【0024】
なお、制御盤180のハードウェアリソースについては、図示を省略するが、制御盤180は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置とを備える。制御盤180の機能(計算部180-1、記憶部180-2、制御部180-3、インターフェース部180-4等)は、例えば、プロセッサがROM、HDD等に格納されたプログラムをRAMに読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。なお、制御盤180の1つの機能は、複数の機能に分けられていてもよいし、複数の機能は、1つの機能にまとめられていてもよい。また、制御盤180の機能の一部は、別の機能として設けられてもよいし、他の機能に含められていてもよい。また、制御盤180の機能の一部は、制御盤180と通信可能な他のコンピュータにより実現されてもよい。
【0025】
計算部180-1は、主ロープ130の点検が行われる際の乗りかご110の停止位置である点検位置を計算する。記憶部180-2は、計算部180-1により計算された点検位置を記憶する。制御部180-3は、記憶部180-2により記憶された点検位置に基づいて乗りかご110を移動する。インターフェース部180-4は、第1の通信ケーブル181を介してまたは第1の通信ケーブル181を介することなく、保守ツール104と通信可能である。
【0026】
図2は、点検位置を算出するためのパラメータを説明するための図である。
【0027】
ここで、エレベーターシステム100では、第1の主ロープ区間201と、第2の主ロープ区間202と、第3の主ロープ区間203と、が設定されている。第1の主ロープ区間201としては、綱車161からかご側頂部プーリー150-1までが設定されている。第2の主ロープ区間202としては、綱車161から釣り合いおもり側頂部プーリー150-2までが設定されている。第3の主ロープ区間203としては、釣り合いおもりプーリー140から釣り合いおもり側頂部プーリー150-2までが設定されている。また、主ロープ130には、かかり代204と中心点205とが設定されている。かかり代204は、点検対象の階床における乗りかご110の停止位置での綱車161と主ロープ130とのかかり代である。中心点205は、かかり代204の中心を示す点である。なお、本実施の形態では、主ロープ130のかかり代204の中心点205が視認しやすい位置(例えば、中心点205と保守員103の胸の高さ付近とが合致する位置)を、点検作業が容易な位置として説明する。
【0028】
乗りかご110が最下階乗場102-1から最上階乗場102-3まで移動すると、かかり代204の中心点205は、第1の主ロープ区間201、第2の主ロープ区間202、および第3の主ロープ区間203上を移動する。そのため、かご上112に保守員103が乗って乗かご110を運転させながら、主ロープ130の状態を点検することができる。
【0029】
次に、点検位置を算出するための式について説明する。下記の(式1)~(式4)は、点検箇所(例えば、中心点205)が第1の主ロープ区間201と第2の主ロープ区間202と第3の主ロープ区間203との何れの主ロープ区間にあるかを特定するための式である。パラメータXが(式1)を満たす場合は、第1の主ロープ区間201に点検箇所があると特定される。パラメータXが(式2)および(式3)を満たす場合は、第2の主ロープ区間202に点検箇所があると特定される。パラメータXが(式4)を満たす場合は、第3の主ロープ区間203に点検箇所があると特定される。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
このように、乗りかご110の昇降に係る機器(乗りかご110、頂部プーリー150、綱車161等、エレベーターに係る機器)の位置関係から点検箇所が何れの主ロープ区間にあるかが特定される。
【0035】
下記の(式5)~(式7)は、点検位置を算出するための式である。第1の主ロープ区間201に点検箇所があると特定された場合は、(式5)が用いられて点検位置(パラメータY)が算出される。第2の主ロープ区間202に点検箇所があると特定された場合は、(式6)が用いられて点検位置(パラメータY)が算出される。第3の主ロープ区間203に点検箇所があると特定された場合は、(式7)が用いられて点検位置(パラメータY)が算出される。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
ここで、(式1)~(式7)に係るパラメータを下記に示す。
H1:最下階乗場102-1のフロアレベルから巻上機160の下端までの高さ
H2:巻上機160の下端から綱車161の綱車芯までの高さ
H3:綱車芯から主ロープ130が巻上機160の外部へ出るまでの高さ
H4:釣り合いおもり側頂部プーリー150-2のプーリー芯から昇降路101の頂部までの高さ
H5:乗りかご110の床面からかご上手摺り113までの高さ+α
α :主ロープ130にマーカ131を設けるときの、かご上手摺り113から中心点205までの高さ
D1:綱車161の直径
D2:釣り合いおもり側頂部プーリー150-2の直径
ST:行程(最下階乗場102-1のフロアレベルから最上階乗場102-3のフロアレベルのフロアレベルまでの高さ)
OH:オーバーヘッド(最上階乗場102-3のフロアレベルから昇降路101の頂部までの高さ)
X :乗りかご110が点検対象の階床に停止したときの、最下階乗場102-1のフロアレベルから乗りかご110の床面までの高さ
Y :中心点205が、乗りかご110の床面からかご上手摺り113までの高さ+αと同じ高さとなるときの、最下階乗場102-1のフロアレベルから乗りかご110の床面までの高さ
L1:綱車161からかご側頂部プーリー150-1までの主ロープ130の長さ
L2:綱車161に掛かっている主ロープ130の長さ
L3:綱車161から釣り合いおもり側頂部プーリー150-2までの主ロープ130の長さ
L4:釣り合いおもり側頂部プーリー150-2に掛かっている主ロープ130の長さ
L5:釣り合いおもり側頂部プーリー150-2から釣り合いおもりプーリー140までの主ロープ130の長さ
【0040】
このように、乗りかご110の昇降に係る機器の位置関係から、点検対象の階床における主ロープ130のかかり代の中心点205が、かご上112の手すり113+αの位置とすれ違う際の乗りかご110の位置(点検位置)が算出される。
【0041】
図3は、昇降路101を上から見たときの昇降路101内の構成の一例を示す図である。
【0042】
図3に示すように、主ロープ130は、乗りかご110を囲むように配置されている。主ロープ130-1は、第1の主ロープ区間201の主ロープ130を示し、主ロープ130-2は、第2の主ロープ区間202の主ロープ130を示し、主ロープ130-3は、第3の主ロープ区間203の主ロープ130を示す。かかる配置によれば、作業員は、何れの主ロープ区間の主ロープ130に対してもマーキング作業をかご上112から行うことができる。
【0043】
図4は、点検位置の算出に係る処理フローの一例を示す図である。
【0044】
S401では、保守員103は、点検位置に係るパラメータを設定する。例えば、保守員103は、保守ツール104を第2の通信ケーブル182を介してINDボックス190に接続し、保守ツール104を操作して制御盤180の制御部180-3に点検位置の算出に用いられるパラメータを設定する。なお、点検対象の階床が複数ある場合、保守員103は、点検対象の階床ごとにパラメータXを設定することができる。
【0045】
S402では、制御盤180は、点検箇所がある主ロープ区間を特定する。例えば、制御盤180は、S401において設定されたパラメータを用いて、(式1)~(式4)の何れを満たすかを判定し、各点検対象の階床の点検箇所が第1の主ロープ区間201と第2の主ロープ区間202と第3の主ロープ区間203との何れの主ロープ区間にあるかを点検対象の階床ごとに特定する。
【0046】
S403では、制御盤180は、点検位置を算出する。例えば、制御盤180は、未処理の点検対象の階床について、(式5)~(式7)の中から、S402において特定した主ロープ区間に対応する式を選択し、選択した式に、S401において設定されたパラメータを入力し、パラメータYを算出する。
【0047】
S404では、制御盤180は、主ロープ区間と点検位置とを記憶する。例えば、制御盤180は、第1の主ロープ区間201、第2の主ロープ区間202、または第3の主ロープ区間203を示す情報と、当該主ロープ区間に対応する点検位置を示す情報とを紐付けて記憶する。
【0048】
S405では、制御盤180は、点検対象の階床全てについて点検位置を算出したか否かを判定する。制御盤180は、点検対象の階床全てについて点検位置を算出したと判定した場合、処理を終了し、点検対象の階床何れかについて点検位置を算出していないと判定した場合、S403に処理を移す。
【0049】
図5は、マーキング作業に係る処理フローの一例を示す図である。
【0050】
S501では、保守員103は、昇降路101の頂部に移動する。例えば、保守員103は、乗場102からかご上112に乗り、保守ツール104を第2の通信ケーブル182を介して器具ボックス114に接続し、保守ツール104を操作して昇降路101の頂部に低速運転で移動する。
【0051】
S502では、保守員103は、保守ツール104を操作して制御盤180の制御部180-3に点検モードを設定する。点検モードは、乗りかご110を点検位置に停止させるように乗りかご110の走行パターンを制御するモードである。点検動作モードが設定された場合、例えば、制御盤180は、低速運転でかつ下方へ運転するときは、制御盤180に記憶されている点検位置に乗りかご110を停止させる制御を行う。
【0052】
S503では、保守員103は、点検位置に乗りかご110を移動させる。例えば、保守員103は、保守ツール104を操作(次の点検位置まで移動するためのボタン、アイコン等を押下)して、制御盤180に記憶されている点検位置で自動停止するまで低速運転で下方に乗りかご110を移動させる。
【0053】
S504では、保守員103は、点検箇所が含まれる主ロープ区間を保守ツール104から読み取る。例えば、乗りかご110が点検位置に停止した場合、保守ツール104に、点検位置に対応する主ロープ区間(マーキング対象の主ロープ130)を示す情報が表示される。例えば、
図3のような、昇降路101を上から見たときの構成を示す画面が保守ツール104に表示され、当該画面において、マーキング対象の主ロープ130(第1の主ロープ区間201の主ロープ130-1、第2の主ロープ区間202主ロープ130-2、または第3の主ロープ区間203の主ロープ130-3)を示す画像が強調されて表示される。
【0054】
なお、マーキング対象の主ロープ130を示す情報の出力方法は、上述の内容に限らない。例えば、乗りかご110が点検位置に停止したときに、かご上ブザーが、所定の鳴動パターンでどの主ロープ区間に点検箇所が現れるかを保守員103に報知してもよい。
【0055】
上記構成によれば、保守員103は、第1の主ロープ区間201、第2の主ロープ区間202、または第3の主ロープ区間203のうちの何れで点検可能であるということを知ることができる。
【0056】
S505では、保守員103は、S504において保守ツール104から読み取った主ロープ130の点検箇所にマーカ131を設ける。この際、保守員103は、点検範囲を示すようにマーカ131を設けてもよい。点検範囲は、例えば、中心点205の上下500mm程度、すなわち、中心点205を中心として1m程度の範囲に設定される。
【0057】
S506では、保守員103は、点検対象の階床全てについてマーキング作業を実施したか否かを確認する。保守員103は、点検対象の階床全てについてマーキング作業を実施した場合、マーキングを終了し、保守員103は、点検対象の階床全てについてマーキング作業を実施していない場合、S503に処理が移され、次の点検対象の階床のマーキング作業を実施する。
【0058】
図6は、マーキング作業に係る制御盤180による処理の一例を示す図である。当該処理は、例えば、S503において保守員103による保守ツール104の操作が行われた場合に開始される。
【0059】
S601では、制御盤180は、点検モードであるか否かを判定する。制御盤180は、点検モードであると判定した場合、S602に処理を移し、点検モードでないと判定した場合、処理を終了する。
【0060】
S602では、制御盤180は、点検位置まで乗りかご110を移動させる。例えば、制御盤180は、制御部180-3が管理する乗りかご110の位置を示す位置情報を用いて、当該位置に最も近い下方の点検位置に乗りかご110を移動させる制御を行う。
【0061】
S603では、制御盤180は、乗りかご110が自動停止したか否かを判定する。制御盤180は、乗りかご110が自動停止したと判定した場合、S604に処理を移し、乗りかご110が自動停止していないと判定した場合、S603に処理を戻す。
【0062】
S604では、制御盤180は、自動停止が行われた点検位置に対応する主ロープ区間を示す情報を保守ツール104に通知し、処理を終了する。
【0063】
ここで、本実施の形態に係る機器の構成は、
図1に示す構成に限るものではない。例えば、
図7に示す構成であってもよいし、その他の構成であってもよい。
【0064】
図7に示す構成である場合、制御盤180は、綱車161等の位置情報と、かご上112において主ロープ130の点検が可能な高さ情報とから、乗りかご110が停車している際に綱車161等にかかっていた部分(点検箇所)が、乗りかご110が移動することで、かご上112で主ロープ130の点検可能な高さと同じ高さになるまでの、乗りかご110の移動量を算出する。
【0065】
この際、綱車161等の寸法(直径等)が設定された場合、制御盤180は、より正確に移動量を算出できる。また、制御盤180は、乗りかご110が停車している際の乗りかご110の高さが設定された場合、点検箇所が、主ロープ130の点検可能な高さと同じになるときの乗りかご110の高さをより正確に算出できる。また、主ロープ130、乗りかご110の移動可能範囲等に制約を与えることで、制御盤180は、どの主ロープ区間において、前述したすれ違いが生じるかの条件式を計算することができる。
【0066】
例えば、ローピング方式が2:1ローピングである場合、乗りかご110の移動量をZとすると、主ロープ130の移動量は、2×Zとなる。従って、乗りかご110が最下階乗場102-1から上方+Xの位置に停止している状態における主ロープ130のかかり代204の中心点205が、かご上112の手すり113から上方+αの位置とすれ違うときにおける乗りかご110の位置Yは、主ロープ130がかかる綱車161およびプーリー(本例では、釣り合いおもりプーリー140)の直径および位置関係が明らかである場合、XからYを計算することができる。すなわち、綱車161およびプーリーの直径と位置関係並びにXを与えることで、乗りかご110が自動停止する位置Y(点検位置)が算出される。また、主ロープ130および乗りかご110の移動可能範囲等に制約を与えることで、どの主ロープ区間において、前述したすれ違いが生じるかの条件式を計算することができる。
【0067】
乗りかご110の昇降に係る機器が
図7に示すように配置されている場合、綱車161の直径と綱車161の最下階乗場102-1からの高さとが明らかであるときは、乗りかご110がZ移動したとき、主ロープ130の移動量が2×Zであることから、主ロープ130のかかり代204の中心点205が移動した後の位置(最下階乗場102-1からの位置)がわかる。
【0068】
例えば、綱車161の位置が最下階乗場102-1から10000mmであり、綱車161径が400mmであり、乗りかご110が最下階乗場102-1の位置(X=0)から移動量Z=+1000mmであるとする。このとき、主ロープ130のかかり代204の中心点205は、釣り合いおもり120側に移動し、移動量は、2×1000=2000mmである。従って、移動後の綱車161におけるかかり代204の中心点205の位置は、最下階乗場102-1の高さ+10000-(2×1000-400×π/4)と求めることができる。同様に、乗りかご110の位置は、最下階乗場102-1から1000mm移動した位置である。
【0069】
このように、主ロープ130の位置と乗りかご110の位置とを算出できるため、すれ違うときに両者の位置が等しいという条件から、XとYとの関係式を求めることができる。
【0070】
また、仮に乗りかご110の移動可能範囲が最下階乗場102-1から最上階乗場102-3までの間であるとすると、求めたYに対して0≦Y≦STといった条件式が得られるため、条件式からどこの主ロープ区間ですれ違うことが可能であるかを判断できる。
【0071】
本実施の形態によれば、巻上機の設置位置にかかわらず、主ロープを容易に点検することができる。
【0072】
(II)付記
上述の実施の形態には、例えば、以下のような内容が含まれる。
【0073】
上述の実施の形態においては、本発明をエレベーターシステムに適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々のシステム、装置、方法、プログラムに広く適用することができる。
【0074】
また、上述の実施の形態においては、S401において、点検位置に係るパラメータを保守員が設定する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、S401より前の時点で、点検位置に係るパラメータの一部または全部が保守員または保守員以外の者により設定されてもよい。
【0075】
また、上述の実施の形態においては、S402において、制御盤180がパラメータに基づいて主ロープ区間を特定する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、人(例えば、保守員)が主ロープ区間を特定して設定してもよい。
【0076】
また、上述の実施の形態において、情報の出力は、ディスプレイへの表示に限るものではない。情報の出力は、スピーカによる音声出力であってもよいし、ファイルへの出力であってもよいし、印刷装置による紙媒体等への印刷であってもよいし、プロジェクタによるスクリーン等への投影であってもよいし、その他の態様であってもよい。
【0077】
また、上記の説明において、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0078】
上述した実施の形態は、例えば、以下の特徴的な構成を有する。
【0079】
(1)
点検対象の階床において巻上機(例えば、巻上機160)に巻き掛けられているロープ(例えば、主ロープ130)の部分の点検が行われるエレベーターシステム(例えば、エレベーターシステム100)であって、上記巻上機の位置情報と、上記点検対象の階床において乗りかご(例えば、乗りかご110)が停止しているときの上記乗りかごの位置情報とから、上記ロープの部分の点検が行われる際の上記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する計算部(例えば、計算部180-1、制御盤180、回路)と、上記計算部により計算された点検位置を記憶する記憶部(例えば、記憶部180-2、制御盤180、回路)と、上記記憶部により記憶された点検位置に基づいて上記乗りかごを移動する制御部(例えば、制御部180-3、制御盤180、回路)と、を備える。
【0080】
上記構成では、例えば、保守員は、巻上機および乗りかごの位置情報を設定することで点検位置が計算されて乗りかごが点検位置に停止可能になるので、巻上機にアクセスして点検箇所に事前にマーカを設ける必要がなく、巻上機の設置位置にかかわらず、ロープを点検することができる。また、上記構成によれば、例えば、ロープにマーカが設けられていなくても、乗りかごが点検位置に自動で停止されるので、保守員は、ロープの点検を行うことができる。
【0081】
(2)
上記乗りかごと重量のバランスをとるための釣り合いおもり(例えば、釣り合いおもり120)が設けられ、上記乗りかご側に第1の滑車(例えば、かご側頂部プーリー150-1)が設けられ、上記釣り合いおもり側に第2の滑車(例えば、釣り合いおもり側頂部プーリー150-2)が設けられ、上記ロープの両端は、昇降路(例えば、昇降路101)の頂部において支持され、上記ロープは、上記乗りかごの滑車(例えば、かご下プーリー170)と、上記第1の滑車と、上記巻上機の綱車(例えば、綱車161)と、上記第2の滑車と、上記釣り合いおもりの滑車(例えば、釣り合いおもりプーリー140)とに架け渡され、上記計算部は、上記ロープの部分が、上記第1の滑車と上記綱車との間にある第1のロープ区間(例えば、第1の主ロープ区間201)と、上記綱車と上記第2の滑車との間にある第2のロープ区間(例えば、第2の主ロープ区間202)と、上記第2の滑車と上記釣り合いおもりの滑車との間にある第3のロープ区間(例えば、第3の主ロープ区間203)との何れに含まれているかを特定する。
【0082】
上記構成では、複数の滑車に掛け渡されて配置されたロープのうち、点検が行われるロープの部分がどこのロープ区間に配置されているロープであるかが特定される。上記構成によれば、例えば、第1のロープ区間、第2のロープ区間、または第3のロープ区間を示す情報が出力された場合、保守員は、どこに配置されているロープを点検すべきかを容易に把握することができる。
【0083】
(3)
上記エレベーターシステムは、保守ツール(例えば、保守ツール104)と通信可能なインターフェース部(例えば、インターフェース部180-4、制御盤180、回路)を備え、上記保守ツールからの点検位置への移動指示に基づいて上記制御部により上記乗りかごが上記点検位置に移動した場合、上記インターフェース部は、上記計算部により特定されたロープ区間を示す情報を上記保守ツールに通知する(例えば、
図1、
図6参照)。
【0084】
上記構成によれば、例えば、保守員は、乗りかごの上に乗って点検位置に移動したときに、点検対象のロープ区間を示す情報が保守ツールに表示されるので、点検対象のロープ区間のロープにマーカを設けることができ、以降のロープの点検を容易に行うことができる。
【0085】
(4)
上記エレベーターシステムは、保守ツール(例えば、保守ツール104)と通信可能なインターフェース部(例えば、インターフェース部180-4、制御盤180、回路)を備え、上記インターフェース部は、最下階乗場のフロアレベルから上記巻上機の下端までの高さ(例えば、パラメータH1)と、上記巻上機の下端から上記綱車の綱車芯までの高さ(例えば、パラメータH2)と、上記綱車芯から上記ロープが上記巻上機の外部へ出るまでの高さ(例えば、パラメータH3)と、上記乗りかごの床面からかご上手摺りまでの高さ(例えば、パラメータH5-パラメータα)と、上記乗りかごが上記点検位置にあるときの高さであって、上記かご上手摺りから上記点検対象の階床における上記綱車と上記ロープとのかかり代の中心を示す中心点までの高さ(例えば、パラメータα)と、上記綱車に掛かっている上記ロープの長さ(例えば、パラメータL2)とを示す情報を上記保守ツールから受け取り、上記計算部は、上記インターフェース部により受け取られた情報をもとに、上記ロープの部分が、上記第1のロープ区間と上記第2のロープ区間と上記第3のロープ区間との何れに含まれているかを特定する。
【0086】
(5)
上記エレベーターシステムは、保守ツール(例えば、保守ツール104)と通信可能なインターフェース部(例えば、インターフェース部180-4、制御盤180、回路)を備え、上記乗りかごと重量のバランスをとるための釣り合いおもり(例えば、釣り合いおもり120)が設けられ、上記乗りかご側に第1の滑車(例えば、かご側頂部プーリー150-1)が設けられ、上記釣り合いおもり側に第2の滑車(例えば、釣り合いおもり側頂部プーリー150-2)が設けられ、上記ロープの両端は、昇降路(例えば、昇降路101)の頂部において支持され、上記ロープは、上記乗りかごの滑車(例えば、かご下プーリー170)と、上記第1の滑車と、上記巻上機の綱車(例えば、綱車161)と、上記第2の滑車と、上記釣り合いおもりの滑車(例えば、釣り合いおもりプーリー140)とに架け渡され、上記計算部は、上記インターフェース部により受け取られた情報をもとに、上記ロープの部分の点検が行われる際の上記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する。
【0087】
上記構成によれば、例えば、保守員は、点検の現場において保守ツールを介して巻上機および乗りかごの位置情報を設定することができる。
【0088】
(6)
上記インターフェース部は、上記乗りかごが上記点検対象の階床に停止したときの、最下階乗場のフロアレベルから上記乗りかごの床面までの高さ(例えば、パラメータX)と、最下階乗場のフロアレベルから上記巻上機の下端までの高さ(例えば、パラメータH1)と、上記巻上機の下端から上記綱車の綱車芯までの高さ(例えば、パラメータH2)と、上記乗りかごの床面からかご上手摺りまでの高さ(例えば、パラメータH5-パラメータα)と、上記乗りかごが上記点検位置にあるときの高さであって、上記かご上手摺りから上記点検対象の階床における上記綱車と上記ロープとのかかり代の中心を示す中心点までの高さ(例えば、パラメータα)と、上記綱車に掛かっている上記ロープの長さ(例えば、パラメータL2)とを示す情報を上記保守ツールから受け取り、上記計算部は、上記ロープの部分が、上記第1の滑車と上記綱車との間にある第1のロープ区間、または、上記綱車と上記第2の滑車との間にある第2のロープ区間にある場合、上記インターフェース部により受け取られた情報をもとに、上記ロープの部分の点検が行われる際の上記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する。
【0089】
上記構成によれば、例えば、複数の滑車に掛け渡されて配置されたロープのうち、点検が行われるロープの部分が第1のロープ区間または第2のロープ区間である場合、点検位置を算出することができる。
【0090】
(7)
上記インターフェース部は、上記乗りかごが上記点検対象の階床に停止したときの、最下階乗場のフロアレベルから上記乗りかごの床面までの高さ(例えば、パラメータX)と、上記第2の滑車の芯から昇降路の頂部までの高さ(例えば、パラメータH4)と、上記乗りかごの床面からかご上手摺りまでの高さ(例えば、パラメータH5-パラメータα)と、上記乗りかごが上記点検位置にあるときの高さであって、上記かご上手摺りから上記点検対象の階床における上記綱車と上記ロープとのかかり代の中心を示す中心点までの高さ(例えば、パラメータα)と、最下階乗場のフロアレベルから最上階乗場のフロアレベルのフロアレベルまでの高さ(例えば、パラメータST)と、最上階乗場のフロアレベルから昇降路の頂部までの高さ(例えば、パラメータOH)と、上記綱車に掛かっている上記ロープの長さ(例えば、パラメータL2)と、上記綱車から上記第2の滑車までの上記ロープの長さ(例えば、パラメータL3)と、上記第2の滑車に掛かっている上記ロープの長さ(例えば、パラメータL4)とを示す情報を上記保守ツールから受け取り、上記計算部は、上記ロープの部分が、上記第2の滑車と上記釣り合いおもりの滑車との間にある第3のロープ区間にある場合、上記インターフェース部により受け取られた情報をもとに、上記ロープの部分の点検が行われる際の上記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する。
【0091】
上記構成によれば、例えば、複数の滑車に掛け渡されて配置されたロープのうち、点検が行われるロープの部分が第3のロープ区間である場合、点検位置を算出することができる。
【0092】
(8)
上記乗りかごと重量のバランスをとるための釣り合いおもり(例えば、釣り合いおもり120)が設けられ、上記巻上機は、最上階乗場のフロアレベルより高い位置に設けられ、上記ロープの両端は、昇降路(例えば、昇降路101)の頂部において支持されている。
【0093】
上記構成によれば、例えば、保守員は、巻上機が最下階に設けられていなくても、ロープを容易に点検することができる。
【0094】
(9)
上記計算部は、上記巻上機の位置情報と、上記巻上機の綱車の寸法情報(例えば、パラメータD1)と、上記点検対象の階床において乗りかごが停止しているときの上記乗りかごの位置情報とから、上記ロープの部分の点検が行われる際の上記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する(例えば、
図7参照)。
【0095】
上記構成によれば、例えば、計算部は、綱車の寸法情報を用いることで点検箇所の移動量をより正確に算出することができる。
【0096】
(10)
上記計算部は、上記巻上機の位置情報と、上記乗りかごの高さ情報(例えば、パラメータH5)と、上記点検対象の階床において乗りかごが停止しているときの上記乗りかごの位置情報とから、上記ロープの部分の点検が行われる際の上記乗りかごの停止位置である点検位置を計算する(例えば、
図7参照)。
【0097】
上記構成によれば、例えば、保守員は、所望の高さを設定することで、点検がし易い高さの点検位置を設定できるようになる。
【0098】
また上述した構成については、本発明の要旨を超えない範囲において、適宜に、変更したり、組み替えたり、組み合わせたり、省略したりしてもよい。
【0099】
「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という形式におけるリストに含まれる項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができると理解されたい。同様に、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」の形式においてリストされた項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができる。
【符号の説明】
【0100】
100……エレベーターシステム、110……乗りかご、130……主ロープ、160……巻上機、180……制御盤。