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特開2023-118223タイヤ用充填材及びタイヤ用充填材の製造方法
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  • 特開-タイヤ用充填材及びタイヤ用充填材の製造方法 図1
  • 特開-タイヤ用充填材及びタイヤ用充填材の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118223
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】タイヤ用充填材及びタイヤ用充填材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20230818BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230818BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230818BHJP
   B60C 7/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C08G18/48 054
C08G18/10
B60C1/00 Z
B60C7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021058
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】594040877
【氏名又は名称】井上護謨工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧原 伸征
(72)【発明者】
【氏名】常国 冬広
【テーマコード(参考)】
3D131
4J034
【Fターム(参考)】
3D131AA27
3D131AA30
3D131BA01
3D131BA07
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB10
3D131BB16
3D131BB19
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC31
3D131BC41
3D131BC42
3D131BC43
3D131BC51
3D131CC02
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC09
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD13
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC50
4J034DG04
4J034DG06
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA42
4J034NA03
4J034NA08
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB15
4J034QC01
4J034QD03
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】プレポリマーの品質を安定化し、成形品の品質を向上する。
【解決手段】タイヤ用充填材10は、タイヤ外皮20とリム25とで構成される環状の空間に収容される。タイヤ用充填材10は、MDI系イソシアネートを含むポリイソシアネートと、ポリテトラメチレングリコールを含むポリオールと、を含む組成物から作製されたウレタンプレポリマーを用いるプレポリマー法で形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ外皮とリムとで構成される環状の空間に収容されるタイヤ用充填材であって、
MDI系イソシアネートを含むポリイソシアネートと、
ポリテトラメチレングリコールを含むポリオールと、
を含む組成物から作製されたウレタンプレポリマーを用いるプレポリマー法で形成された、タイヤ用充填材。
【請求項2】
JIS K6268(1998年版)に準拠して測定された密度が0.2g/cm以上0.5g/cm以下であるウレタンエラストマーで構成された、請求項1に記載のタイヤ用充填材。
【請求項3】
JIS K6251(2017年版)に準拠して測定された引張強度が2.5MPa以上のウレタンエラストマーで構成された、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ用充填材。
【請求項4】
前記ポリテトラメチレングリコールの重量平均分子量は、1500以上3500以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のタイヤ用充填材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のタイヤ用充填材の製造方法であって、
前記ウレタンプレポリマーを含む組成物を型内に投入する、タイヤ用充填材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ用充填材及びタイヤ用充填材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車等のタイヤに釘類が刺さってもパンクしないノーパンクタイヤとして、空気が圧入される空気チューブに代えて、タイヤ用充填材をタイヤ外皮とリムとで構成される環状の空間に収容するものがある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、プレポリマーを用いるプレポリマー法で形成されたウレタンエラストマーからなるタイヤ用充填材が開示されている。プレポリマーとして、ポリテトラメチレングリコールと、ポリプロピレングリコールと、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)と、を用いて作製されたプレポリマーが記載されている。また、プレポリマーとして、ポリテトラメチレングリコールと、ポリプロピレングリコールと、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(TODI)と、を用いて作製されたプレポリマーも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-57241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、イソシアネートとして、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(TODI)等の常温で固体(粉体)のイソシアネートを用いてプレポリマーを作製する場合には、イソシアネートの分散性や溶解性が悪く、プレポリマーの品質が安定しない懸念がある。イソシアネートの溶け残りが発生した場合には、成形品の品質にばらつきが生じることも懸念される。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、プレポリマーの品質を安定化し、成形品の品質を向上することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
タイヤ外皮とリムとで構成される環状の空間に収容されるタイヤ用充填材であって、
MDI系イソシアネートを含むポリイソシアネートと、
ポリテトラメチレングリコールを含むポリオールと、
を含む組成物から作製されたウレタンプレポリマーを用いるプレポリマー法で形成された、タイヤ用充填材。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、プレポリマーの品質を安定化し、成形品の品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態のタイヤ用充填材の部分断面斜視図である。
図2】タイヤ外皮とリムとで構成される環状の空間及びタイヤ用充填材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・JIS K6268(1998年版)に準拠して測定された密度が0.2g/cm以上0.5g/cm以下であるウレタンエラストマーで構成された、タイヤ用充填材。
・JIS K6251(2017年版)に準拠して測定された引張強度が2.5MPa以上のウレタンエラストマーで構成された、タイヤ用充填材。
・前記ポリテトラメチレングリコールの重量平均分子量は、1500以上3500以下である、タイヤ用充填材。
・タイヤ用充填材の製造方法であって、
前記ウレタンプレポリマーを含む組成物を型内に投入する、タイヤ用充填材の製造方法。
【0010】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0011】
タイヤ用充填材10は、タイヤ外皮20とリム25とで構成される環状の空間27に収容される。タイヤ用充填材10は、MDI系イソシアネートを含むポリイソシアネートと、ポリテトラメチレングリコールを含むポリオールと、を含む組成物から作製されたウレタンプレポリマーを用いるプレポリマー法で形成されている。
【0012】
タイヤ用充填材10は、図1に示すように、略円形の断面形状をなしている。タイヤ用充填材10は、予め環状に成形されていてもよい。また、タイヤ用充填材10は、所定長の直線状あるいは円弧状に成形された複数の分割体あるいは1本の成形体を環状の空間27に収容して環状にするものでもよい。タイヤ用充填材10を複数の分割体で構成する場合、環状の空間27内で互いに隣接する分割体同士は、接着等で接合してもよく、あるいは接着させないで単に端面が隣り合う状態としてもよい。タイヤ用充填材10は、タイヤ内に直接注入されて成形されてもよい。タイヤ外皮20とリム25は、図2に示すように、空気チューブを使用する通常の自転車等に用いられるものを使用することができる。空気チューブに替えてタイヤ用充填材10を環状の空間27に収容することによって、例えばタイヤに釘類が刺さってもパンクしないノーパンクタイヤを構成できる。タイヤ用充填材10は、ノーパンクタイヤ用充填材、ソリッドタイヤ用充填材として好適である。
【0013】
ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートと、ポリオールと、を含む組成物から作製される。ウレタンプレポリマーを用いるプレポリマー法によれば、ソフトセグメントとハードセグメントの結晶の分布を調整し、規則的な結晶構造を形成しやすい。この結果、結晶性のよいウレタンエラストマーを好適に得ることができ、タイヤ用充填材の機械強度及び耐久性を向上できる。
【0014】
ポリイソシアネートは、MDI系イソシアネートが用いられる。MDI系イソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びMDIの変性体からなる群より選ばれる1種以上が用いられる。MDI系イソシアネートは、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)や、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(TODI)よりも融点が低いため、ウレタンプレポリマーを作製する際のイソシアネートの分散性や溶解性を向上でき、プレポリマーの品質を安定化できる。また、MDI系イソシアネートは、NDIやTODIに比して、コストの面でも好ましい。
【0015】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)は、イソシアネート基及びベンゼン環をそれぞれ2個ずつ有するものである。MDIは、二核体、モノメリックMDIとも称される。MDIには、2,2’-MDI、2,4’-MDI、4,4’-MDIの3種類の異性体が存在する。
MDIの変性体は、特に限定されない。MDIの変性体は、例えば、ポリメリック体、ウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体等が挙げられる。
MDIのポリメリック体は、イソシアネート基及びベンゼン環をそれぞれ3個以上有するものである。MDIのポリメリック体は、多核体とも称される。MDIのポリメリック体は、MDI(二核体)と併用することが好ましい。
【0016】
ポリイソシアネートとしては、MDI系イソシアネートと、MDI系イソシアネート以外のイソシアネート(以下、その他のイソシアネートとも称する)を併用してもよい。その他のイソシアネートとしては、NDIやTODIよりも融点が低いイソシアネートが好ましく、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)が挙げられる。TDIには、2,4-TDI、2,6-TDIの2種類の異性体が存在する。TDIとしては、2,4-TDIと2,6-TDIとの混合物を用いることが好ましい。2,4-TDIと2,6-TDIの混合比(2,4-TDI/2,6-TDI、質量比)は、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは70/30~85/15である。
【0017】
MDI系イソシアネートと、その他のイソシアネートとの質量比は、ウレタンエラストマーの結晶性を向上する観点から、100:0~50:50が好ましく、100:0~70:30がより好ましく、100:0がさらに好ましい。すなわち、ポリイソシアネートとして、MDI系イソシアネートのみを用いることが特に好ましい。
【0018】
ポリオールは、ポリテトラメチレングリコールを含む。ポリテトラメチレングリコールの含有量は特に限定されない。ポリテトラメチレングリコールの含有量は、ウレタンエラストマーの結晶性を向上する観点から、ポリオール100質量部中に50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、90質量部を超えることが更に好ましい。ポリオールとしては、ウレタンエラストマーの結晶性を向上する観点から、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)のみを用いることが特に好ましい。
ポリテトラメチレングリコールを含むことにより、タイヤ用充填材10の反発弾性を高くし、乗り心地を良好にすることができ、また、物理的強度、歪特性等に優れた一般物性が期待できる。タイヤ用充填材10は、使用中にタイヤ外皮20とリム25間の隙間から環状の空間27に雨水等の水が侵入して、水と接触する懸念があるため、耐加水分解性が高いポリテトラメチレングリコールを用いることが好ましい。
ポリテトラメチレングリコールの重量平均分子量は、機械強度及び耐久性を向上する観点から、1500以上3500以下が好ましい。
ポリオールの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。ポリオールが市販品である場合には、カタログ値をポリオールの重量平均分子量として採用してもよい。
【0019】
ポリオールとして、ポリテトラメチレングリコール以外のポリオールを含んでいてもよい。ポリテトラメチレングリコール以外のポリオールとしては、反発弾性及び耐加水分解性の観点から、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、1000以上10000以下が好ましく、4000以上8000以下がより好ましく、5000以上7000以下が更に好ましい。ポリエーテルポリオールの官能基数は、2以上4以下が好ましく、2以上3以下がより好ましく、3であることが更に好ましい。
ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール100質量部中に0質量部以上50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。
【0020】
プレポリマー法によるタイヤ用充填材10の製造について説明する。
第1工程:前記ポリイソシアネートと前記ポリオールとを含む組成物からウレタンプレポリマーを作製する。
具体的には、前記ポリオールと化学量論的に過剰の前記ポリイソシアネートを反応させてイソシアネートの含有量が3質量%~10質量%のイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(B液)を作製する。その際、シリコーン系整泡剤等の界面活性剤を添加してもよい。
【0021】
第2工程:ウレタンプレポリマー(B液)を含む組成物を型に投入してタイヤ用充填材を作製する。
具体的には、2個の好ましくは1級のヒドロキシル基および56g/mol~210g/molの数平均分子量を有する脂肪族ジオール、3官能ポリオール、水、これらの混合物、および芳香族ジアミンから選ばれる少なくとも1種の発泡液(A液)を、ウレタンプレポリマー(B液)のイソシアネート基のmol%と発泡液(A液)のヒドロキシル基のmol%の比率、すなわち[B液のイソシアネート基mol%/A液のヒドロキシル基のmol%]の値が1.0~1.3となるような量でウレタンプレポリマー(B液)と混合し、該混合物をタイヤ用充填材のキャビティを有する型に投入し、反応硬化後に成形品を脱型する。なお、発泡液(A液)には必要に応じて整泡剤あるいは界面活性剤、老化防止剤を添加してもよい。なお、[B液のイソシアネート基mol%/A液のヒドロキシル基のmol%]×100をインデックスとも称する。
型への混合物の投入量は、発泡剤として機能する水分量、水の添加量と相関のある発泡倍率によって違ってくるが、タイヤ用充填材の軽さと強度(耐久性)のバランスの点から、前記型のキャビティの容積の20vol%~60vol%の量が好適である。
【0022】
第2工程で使用する脂肪族ジオールとしては、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、エトキシル化ヒドロキノン、シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。
芳香族ジアミンとしては、メチレンビス-o-クロロアニリン、3,5-ジアミノ-p-クロロイソブチルベンゾエート、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート等を挙げることができる。
整泡剤は、ウレタンエラストマー用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤を挙げることができる。
界面活性剤及び老化防止剤は、ウレタンエラストマー用として公知のものを使用することができる。
【0023】
タイヤ用充填材10は、軽量性の観点から、密度(JIS K6268 1998年版準拠)が0.2g/cm以上0.5g/cm以下が好ましい。
タイヤ用充填材10は、耐久性の観点から、引張強度(JIS K6251 2017年版準拠)が2MPa以上であることが好ましく、2.5MPa以上であることがより好ましい。引張強度の上限は特に限定されない。引張強度の上限は、例えば、4MPa以下である。
【0024】
タイヤ用充填材10は、タイヤ用充填材10が装着された自転車等の乗り心地を良好なものとする観点から、反発弾性率(JIS K6255 2013年版に準拠)が40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましい。プレポリマー法でウレタンエラストマーを製造することによって、反発弾性率を好適に向上できる。
【0025】
タイヤ用充填材10は、走行時のタイヤの抵抗を低減しつつ、路面の凹凸による衝撃を低減する観点から、表面硬度(アスカーC硬度、JIS K6253 2012年版に準拠)が40以上70以下であることが好ましく、45以上65以下であることがより好ましく、50以上60以下であることが更に好ましい。
【実施例0026】
以下に本開示の実施例及び比較例について記載する。
<第1工程>
次のポリオールとポリイソシアネートとを、表1に示す配合で用いてウレタンプレポリマー(B液)を作製した。
[ポリオール]
・PTMG:ポリテトラメチレングリコール、重量平均分子量2000、品名;PTMG2000、三菱化学株式会社製
・ポリエーテルポリオール:重量平均分子量6000、3官能、品名:プレミノール7001K、AGC株式会社製
[ポリイソシアネート]
・MDI(MDI系ポリイソシアネート):4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、品名;ルプラネート モノメリックMDI、BASF INOAC ポリウレタン株式会社製
・MDIの変性体(MDI系ポリイソシアネート):ウレタン変性MDI、品名;MP-102、BASF INOAC ポリウレタン株式会社製
・TDI:2,4-TDI80%と2,6-TDI20%との混合物、品名;ルプラネート T-80、BASF INOAC ポリウレタン株式会社製
・NDI:1,5-ナフタレンジイソシアネート、品名:Desmodur15、住化バイエルウレタン株式会社製
【0027】
【表1】
【0028】
[ウレタンプレポリマーの作製]
容量20Lの金属製反応釜に、規定量(表1に示すポリオールとポリイソシアネートの配合量に応じた量)のポリオールを投入し、120℃に温調した。
反応釜を120℃に保持した状態で、規定量(表1に示すポリオールとポリイソシアネートの配合量に応じた量)のポリイソシアネートを投入し、20分間撹拌した。
反応釜を室温で放置し、徐冷することにより、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーを作製した。
【0029】
<第2工程>
作製したウレタンプレポリマー(B液)と発泡液(A液)を用いて、物性測定用の成形品(テストピース)を、次のようにして製造した。発泡液(A液)は、以下の原料を表1に示す配合で混合したものを使用した。
[発泡液]
・発泡剤:ひまし油と水が50:50比率、アドベードSV、ラインケミージャパン社製
・可塑剤:ジイソノニルアジペート(DINA)、大八化学製
・アミン触媒:アミン触媒、品番Addocat PP、ラインケミージャパン社製
【0030】
[成形品の製造]
80℃に温調したウレタンプレポリマー(B液)と40℃に温調した発泡液(A液)を、表1に示すウレタンプレポリマー配合量と発泡液配合量の比率で配合し、低圧注入機で撹拌・混合し、混合物の330g(目標密度0.5g/cm)を予め80℃に温調した型内(200×110×30mm)へ投入し、30分間キュア(一次キュア)を行う。
キュア(一次キュア)後に型から取り出し、100℃で12時間、更にキュア(二次キュア)を行い、成形品を得た。
【0031】
<物性の測定>
成形品に対し、密度(JIS K6268準拠)、反発弾性率(JIS K6255準拠)、表面硬度(アスカーC硬度、JIS K6253準拠)、引張強度(JIS K6251準拠)をそれぞれ測定した。
反発弾性率と表面硬度については、成形品の異なる3箇所の部位について測定し、3箇所の部位の測定値の最大値と最小値の差異をばらつきとした。反発弾性率のばらつきについては3%未満を「良」、3%以上を「不良」と判定し、表面硬度のばらつきについては3未満を「良」、3以上を「不良」と判定した。
【0032】
・実施例1
実施例1は、ポリオールとして重量平均分子量2000のポリテトラメチレングリコールを用い、ポリイソシアネートとしてMDIを用いて作製したウレタンプレポリマーを使用した例である。ウレタンプレポリマーの外観を目視にて判定したところ、透明であり、外観判定は「良」であった。
実施例1の成形品の物性は、密度が0.3g/cm、反発弾性率が60%以上61%以下、反発弾性率のばらつき1%、反発弾性率のばらつき判定「良」、表面硬度(アスカーC硬度)55以上56以下、表面硬度のばらつき1、表面硬度のばらつき判定「良」、引張強度2.7MPaであった。
実施例1の成形品は、プレポリマーの品質が良好であり、引張強度が高く、タイヤ用充填材の機械強度及び耐久性に優れている。また、実施例1の成形品は、参考例と比較して、同等か、参考例に劣る場合であっても実用可能な各種物性を備えている。すなわち、実施例1の成形品は、軽量で、適度な反発性を有し、かつ反発弾性率及び表面硬度のばらつきが小さいものである。実施例1の構成で作製したタイヤ用充填材を装着した自転車等にあっては、適度な反発弾性によって乗り心地がよく、且つ、ペダルを漕ぐ力を小さくでき、快適に乗ることができる。
【0033】
・実施例2
実施例2は、ポリオールとして重量平均分子量2000のポリテトラメチレングリコールを用い、ポリイソシアネートとしてMDIとTDIを20:7の質量比で用いて作製したウレタンプレポリマーを使用した例である。ウレタンプレポリマーの外観を目視にて判定したところ、透明であり、外観判定は「良」であった。
実施例2の成形品の物性は、密度が0.3g/cm、反発弾性率が55%以上56%以下、反発弾性率のばらつき2%、反発弾性率のばらつき判定「良」、表面硬度(アスカーC硬度)45以上46以下、表面硬度のばらつき1、表面硬度のばらつき判定「良」、引張強度2.1MPaであった。
実施例2の成形品は、実施例1と同様に所望の物性を備え、適度な反発弾性によって乗り心地がよく、且つ、ペダルを漕ぐ力を小さくでき、快適に乗ることができる。
【0034】
・実施例3
実施例3は、ポリオールとして重量平均分子量2000のポリテトラメチレングリコールと重量平均分子量6000、3官能のポリエーテルポリオールを用い、ポリイソシアネートとしてMDIを用いて作製したウレタンプレポリマーを使用した例である。ウレタンプレポリマーの外観を目視にて判定したところ、透明であり、外観判定は「良」であった。
実施例3の成形品の物性は、密度が0.3g/cm、反発弾性率が62%以上63%以下、反発弾性率のばらつき1%、反発弾性率のばらつき判定「良」、表面硬度(アスカーC硬度)50以上51以下、表面硬度のばらつき1、表面硬度のばらつき判定「良」、引張強度2.3MPaであった。
実施例3の成形品は、実施例1と同様に所望の物性を備え、適度な反発弾性によって乗り心地がよく、且つ、ペダルを漕ぐ力を小さくでき、快適に乗ることができる。
【0035】
・実施例4
実施例4は、ポリオールとして重量平均分子量2000のポリテトラメチレングリコールを用い、ポリイソシアネートとしてMDIの変性体を用いて作製したウレタンプレポリマーを使用した例である。ウレタンプレポリマーの外観を目視にて判定したところ、透明であり、外観判定は「良」であった。
実施例4の成形品の物性は、密度が0.3g/cm、反発弾性率が61%以上63%以下、反発弾性率のばらつき2%、反発弾性率のばらつき判定「良」、表面硬度(アスカーC硬度)55以上56以下、表面硬度のばらつき1、表面硬度のばらつき判定「良」、引張強度3MPaであった。
実施例4の成形品は、実施例1と同様に所望の物性を備え、適度な反発弾性によって乗り心地がよく、且つ、ペダルを漕ぐ力を小さくでき、快適に乗ることができる。
【0036】
・参考例
参考例は、ポリオールとして分子量2000のポリテトラメチレングリコールを用い、ポリイソシアネートとしてNDIを用いて作製したウレタンプレポリマーを使用した例である。ウレタンプレポリマーの外観を目視にて判定したところ、NDIの溶け残りがあり、外観判定は「不良」であった。
参考例の成形品の物性は、密度が0.30g/cm、反発弾性率が78~82%、反発弾性率のばらつき4%、反発弾性率のばらつき判定「不良」、表面硬度(アスカーC硬度)52~57、表面硬度のばらつき5、表面硬度のばらつき判定「不良」、引張強度2.7MPaであった。
参考例の成形品は、反発性が高く、かつ反発弾性率及び表面硬度のばらつきが大きかった。プレポリマーにNDIの溶け残りが発生したため、反発弾性率及び表面硬度のばらつきが生じたと考えられる。
【0037】
上記のように、本実施例によれば、プレポリマーの品質を安定化し、成形品の品質を向上できる。
なお、本開示は、実施例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 タイヤ用充填材
20 タイヤ外皮
25 リム
27 環状の空間
図1
図2