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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118225
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021061
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】517251797
【氏名又は名称】株式会社TF-METAL
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】黒田 俊介
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB03
3B087BC04
3B087BC05
(57)【要約】
【課題】ロック時におけるアッパレールの車両前後方向のガタつきを抑制する。
【解決手段】シートスライド装置101は、ロアレール103と、アッパレール105と、レバー部材131と、ロック部材117と、付勢部材132と、操作部材133とを備える。アッパレール105は、左右両側壁に跨るように配置される軸部材115を有し、レバー部材131は、左右一対の側壁147にそれぞれ設けられ、軸部材115に係合する軸受部を有する。左右一対の軸受部がそれぞれ、付勢部材132による付勢によって軸部材115に上下方向の1点で接触する面を有する。左右一対の軸受部のうち、一方の軸受部における軸部材115と接触する面は、軸部材115の外径よりも僅かに大きい半径を有する円弧面として形成され、他方の軸受部における軸部材115と接触する面は、アッパレール105の長手方向に沿って延びる平面として形成される。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に沿って延設されるロアレールと、
前記ロアレールの長手方向に沿って相対移動するアッパレールと、
前記アッパレールに対して左右方向の軸周りに回動可能に支持されるレバー部材と、
前記レバー部材の後端部に設けられ、前記ロアレールに形成された被ロック部に係合するロック位置と被ロック部から外れたロック解除位置との間で移動可能なロック部を備えたロック部材と、
前記ロック部をロック位置方向に付勢する付勢部材と、
前記レバー部材の前端部に接続される操作部材と、を備え、
前記アッパレールは、前記アッパレールの左右両側壁に跨るように配置される軸部材を有し、
前記レバー部材は、
前記アッパレールの左右両側壁の内側において、前記アッパレールの長手方向に沿って延びる左右一対の側壁と、
左右一対の前記側壁にそれぞれ設けられ、前記軸部材に係合する軸受部と、を有し、
左右一対の前記軸受部がそれぞれ、前記付勢部材による付勢によって前記軸部材に上下方向の1点で接触する面を有し、
左右一対の前記軸受部のうち、一方の前記軸受部における前記軸部材と接触する面は、前記軸部材の外径よりも僅かに大きい半径を有する円弧面として形成され、他方の前記軸受部における前記軸部材と接触する面は、前記アッパレールの長手方向に沿って延びる平面として形成される、
シートスライド装置。
【請求項2】
前記ロアレールは、車両前後方向に沿って延びるロア底壁と、前記ロア底壁の左右方向の両端縁から上方へ延在する左右一対のロア外側壁と、左右一対の前記ロア外側壁の上端縁からそれぞれ左右方向内側へ延在するロア上壁と、左右一対の前記ロア上壁からそれぞれ下方へ延在するロア内側壁と、左右一対の前記ロア内側壁にそれぞれ車両前後方向に沿って複数設けられるロック溝と、を有し、
前記アッパレールの左右両側壁は、前記ロアレールの左右一対の前記ロア内側壁の左右方向内側に配置されており、
前記ロック部材の前記ロック部には、左右の前記ロック溝にそれぞれ係合するロック歯が車両前後方向に沿って複数設けられており、
複数の前記ロック歯は、前後方向の幅が他の前記ロック歯よりも大きく形成された主ロック歯を有し、
前記主ロック歯は、前記一方の前記軸受部が形成された方の前記側壁側に位置させて前記ロック部に設けられている、
請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
左右一対の前記軸受部はそれぞれ、上方が開口した凹溝として形成されており、
前記軸部材に上下方向の1点で接触する面が、前記凹溝の底面に形成されている、
請求項1又は2に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用のシートに用いられるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のシートスライド装置は、車体に固定したロアレールに対し、シートに固定したアッパレールをスライド移動自在に設け、アッパレールに取り付けたロック部材のロック歯(ロック部)を、ロアレールのロック溝(被ロック部)に係合させてロック状態となる。当該シートスライド装置は、ロック部をロック解除方向に動作させるレバー部材を備え、レバー部材は、その回動中心よりも前側の部分が付勢部材により上方に付勢される。また、レバー部材の前端部には操作部材が連結されており、操作部材を上方に持ち上げることでレバー部材が操作部材と共に回動するように構成されている。
【0003】
特許文献1では、アッパレールの左右両側壁に設けた軸取付孔に軸部材が軸支されており、レバー部材の左右両側壁に設けた軸取付孔に軸部材が挿入されて、レバー部材がアッパレールに対して回動可能に支持される。これら4つの軸取付孔はそれぞれ同心上に形成されているが、4つの軸取付孔の同心度にはばらつきがあるため、4つの軸取付孔において上下方向又は前後方向の位置ズレが生じ得る。ここで、特に車両前後方向に対して軸取付孔の位置ズレが生じた場合、レバー部材は車両前後方向に長いため、レバー部材の側壁が対向するアッパレールの側壁の内面に押し付けられて接触し、異音が発生し得る。さらに、軸取付孔の位置ズレが大きいと、レバー部材をロック解除方向に回動し、ロック部がアッパレールの側壁に設けたガイド爪(ガイド部)から外れた際に、レバー部材がより大きく左右にずれて再度ロックできない可能性がある。
【0004】
その一方、特許文献2には、アッパレールの左右両側壁に設ける軸取付孔を車両前後方向に長い長孔にすると共に、軸部材の前後方向の移動を規制する楔部を設ける構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-18400号公報
【特許文献2】特開2014-83890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の構造においても楔部が軸部材の前後方向に対する移動を規制していることに変わりないため、この特許文献2の構造を特許文献1の軸取付孔に適用しても特許文献1における上記問題は解決できない。
【0007】
そこで、本発明は、ロック時におけるアッパレールの車両前後方向のガタつきを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わるシートスライド装置は、車両前後方向に沿って延設されるロアレールと、ロアレールの長手方向に沿って相対移動するアッパレールと、アッパレールに対して左右方向の軸周りに回動可能に支持されるレバー部材と、レバー部材の後端部に設けられ、ロアレールに形成された被ロック部に係合するロック位置と被ロック部から外れたロック解除位置との間で移動可能なロック部を備えたロック部材と、ロック部をロック位置方向に付勢する付勢部材と、レバー部材の前端部に接続される操作部材と、を備える。アッパレールは、アッパレールの左右両側壁に跨るように配置される軸部材を有する。レバー部材は、アッパレールの左右両側壁の内側において、アッパレールの長手方向に沿って延びる左右一対の側壁と、左右一対の側壁にそれぞれ設けられ、軸部材に係合する軸受部と、を有する。左右一対の軸受部がそれぞれ、付勢部材による付勢によって軸部材に上下方向の1点で接触する面を有する。左右一対の軸受部のうち、一方の軸受部における軸部材と接触する面は、軸部材の外径よりも僅かに大きい半径を有する円弧面として形成され、他方の軸受部における軸部材と接触する面は、アッパレールの長手方向に沿って延びる平面として形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロック時におけるアッパレールの車両前後方向のガタつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係わるシートスライド装置の分解斜視図である。
図2】ロアレールにアッパレールを組み付けた状態をレバー部材及び付勢部材も含めて示す斜視図である。
図3】アッパレールとロアレールとの間に配置される下方ガイドボール及び上方ガイドボールを含むシートスライド装置の断面図である。
図4】ロアレールの斜視図である。
図5】アッパレールの斜視図である。
図6】ロック部材の斜視図である。
図7】レバー部材の斜視図である。
図8】付勢部材の斜視図である。
図9】レバー部材に付勢部材を組み付けた状態を示す斜視図である。
図10】レバー部材及び付勢部材を後方から見た背面図である。
図11A】操作部材の一部を下方から見た斜視図である。
図11B】操作部材の後端部を後方から見た背面図である。
図12】レバー部材及び付勢部材を上方から見た平面図である。
図13A】一方の軸受部を示すシートスライド装置の要部拡大の側断面図である。
図13B】他方の軸受部を示すシートスライド装置の要部拡大の側断面図である。
図14】シートスライド装置の要部拡大の側断面図である。
図15】操作部材をロック解除方向に操作した状態を示すシートスライド装置の要部拡大の側断面図である。
図16】操作部材に反ロック解除方向への負荷が作用した状態を示すシートスライド装置の要部拡大の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0012】
図1図3に示す本発明の一実施形態に係わるシートスライド装置101は車両用シートの前後方向への調節を手動で行う手動式である。シートスライド装置101は、車両の床面上に設置され、車両前後方向に沿って延設されるロアレール103と、シート座部(図示せず)の裏面に設置され、ロアレール103の長手方向に沿って、ロアレール103内を相対移動自在に組み付けられるアッパレール105とを備えている。ロアレール103とアッパレール105とでレール体106を構成しており、レール体106は左右一対設けられている。なお、以下の説明(他の実施形態も含む)で、「前」は図1中で左側の車両前方FR側で、「後」は図1中で右側の車両後方RR側であり、「左右」は車両後方から車両前方を見たときの左右方向である。
【0013】
ロアレール103は、図3に示すように、車両前後方向に延びる長方形の板形状を具備するロア底壁103aを備えている。ロア底壁103aの車幅方向の両端縁から、左右一対のロア外側壁103bが、ロア底壁103aから上方に向けて若干外側に傾斜するように立ち上がっている。左右一対の両ロア外側壁103bの下端とロア底壁103aとの間にはロア斜壁103cが形成されている。左右一対の両ロア外側壁103bの上端縁から、互いに近づく方向にロア底壁103aと平行に延在する左右一対のロア上壁103dが設けられている。
【0014】
左右一対のロア上壁103dの内端縁からロア底壁103aに向かって下方に垂下する、左右一対のロア内側壁103eが設けられている。なお、互いに平行な状態で対向するロア内側壁103e間の間隔は、ロアレール103内に収容されるアッパレール105が移動可能なように設定されている。
【0015】
アッパレール105は、車体前後方向に延びる長方形の板形状を具備するアッパ天壁105aを備えている。アッパ天壁105aの車幅方向の両端縁から、左右一対のアッパ側壁105bが下方に向けて垂下している。左右両アッパ側壁105bの下端縁から、アッパ下方斜壁105cがそれぞれの外側斜め上方に向けて立ち上がっている。左右一対の両アッパ下方斜壁105cの上端縁から、屈曲部105dを介してアッパ上方斜壁105eがロア上壁103dに向かって斜め上方に向けて立ち上がっている。
【0016】
ロアレール103のロア底壁103aとロア斜壁103cとの間の下方円弧部103fと、アッパレール105のアッパ下方斜壁105cとの間に、下方ガイドボール107を転動自在に配置している。ロアレール103のロア外側壁103bとロア上壁103dとの間の上方円弧部103gと、アッパレール105のアッパ上方斜壁105eとの間に上方ガイドボール109を転動自在に配置している。
【0017】
下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109は、図1に示すように、図3では省略しているボールリテーナ111に回転自在に支持されている。ボールリテーナ111は、下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109を2個ずつ、計4個を支持している。これら下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109を支持した状態のボールリテーナ111は、ロア外側壁103b、ロア斜壁103c、ロア上壁103d及びロア内側壁103eに囲まれた収容部113(図3)内に、前後2カ所配置され、左右一対のレール体106に対して計4カ所配置される。
【0018】
図14に示すように、レール体106を組み立てた状態において、アッパレール105の前方側におけるアッパ側壁105bには、軸部材115によってレバー部材131が回動可能に支持される。軸部材115は、アッパレール105の左右両アッパ側壁105bに跨るように左右両アッパ側壁105bの間にかけ渡されている。また、レバー部材131の回動中心(軸部材115)よりも後方側の端部には、ロック部材117が設けられる。その一方、レバー部材131の回動中心(軸部材115)よりも前方側の端部には、操作部材133が連結される。
【0019】
図6に示すように、ロック部材117は、凸形状の平板であり、左右両側縁部付近に前後方向に沿って二つずつの矩形の孔125aが形成されている。ところで、ロック部材117における各孔125aの前後方向に隣接する部分は、左右両側方に突出するロック部としてのロック歯125bを構成する。ロック歯125bは、左右両側にそれぞれ三箇所形成される。左右両側のそれぞれ三箇所のロック歯125bは、先端側が、前後方向に延びる接続部125cで接続された構成となる。
【0020】
本実施形態では、車幅方向右側の三箇所のロック歯125bのうち、最も前方側のロック歯125bは、他のロック歯125bよりも前後方向の幅が大きく形成された主ロック歯125mを構成する。主ロック歯125mは、左右の複数(6箇所)のロック歯のうちの1つのみである。
【0021】
また、ロック部材117の左右方向の中央部には、前側から順に、前側固定孔部117a、ロック部材117から上方へ突出する上方突出部117b、ロック部材117から下方へ突出する下方突出部117c、後側固定孔部117dが設けられている。上方突出部117bは、ロック部材117の一部を下方へ突出させることにより形成され、下方突出部117cは、ロック部材117から下方に向けて切起こしにより形成される。
【0022】
図5に示すように、アッパレール105の前後方向のほぼ中央付近において、左右両アッパ側壁105bから両アッパ下方斜壁105cにわたり、ロック歯受入凹部129を、前後方向に沿って左右それぞれ三箇所形成している。レール体106を組み立てた状態において、三箇所のロック歯受入凹部129にロック部材117の三つのロック歯125bが下方から入り込んでいる。このとき、ロック歯受入凹部129相互間の突起126が、ロック部材117の孔125aに挿入される。その際、ロック部材117の接続部125c付近が、アッパレール105に干渉するのを避けるために、ロック歯受入凹部129の下部に連続する開口部128、アッパ上方斜壁105eの上部に形成した切欠開口130を、アッパレール105の左右両側に設けてある。
【0023】
また、アッパレール105の左右両アッパ側壁105bには、軸部材115が挿通される軸受孔105fと、後述する付勢部材132を係止する係止部105gとが設けられている。この係止部105gは、アッパ側壁105bにおいてレバー部材131の回動中心(軸部材115)よりも後方側に設けられている。また、係止部105gは、アッパ側壁105bから内側に向けて切起こして形成されたものである。
【0024】
一方、図4に示すように、ロアレール103の左右のロア内側壁103eの前部付近及び後部付近を除く位置には、被ロック部としてのロック溝127を前後方向に沿って複数設けている。ロック溝127にロック部材117のロック歯125bが、ロック歯受入凹部129に位置している状態で下方から入り込むことで、ロック部材117がロアレール103に対してロックした状態となる。これにより、ロック部材117を取り付けてあるアッパレール105は、ロアレール103に対して前後方向の移動が規制される。
【0025】
ロック部材117は、アッパレール105に取り付けた状態で、付勢部材132が上方に弾性力を付与することで、ロック歯125bがロック溝127に入り込んだ状態が維持される。この状態から、図1に示す操作部材133をロック解除方向(上方)に向けて操作することで、レバー部材131を介してロック部材117が下方に押され、ロックが解除される。操作部材133は、アッパレール105内に前部から挿入されてレバー部材131と連動可能に配置される。
【0026】
図7に示すように、レバー部材131は、アッパレール105の長手方向に沿って延びると共に左右方向に所定の間隔を有して対向する左右の側壁147と、左右の側壁147の前方側の端部を除く領域において、左右の側壁147の下端相互をつなぐ下壁134とを備えている。
【0027】
レバー部材131の前後方向の中間位置より前方側の側壁147の上側端部には、軸受部としての凹溝147aが左右一対に形成されている。左右一対の凹溝147aのうち、右側の凹溝147aの底面は、軸部材115の外径よりも僅かに大きい半径を有する半円形状の円弧面として形成され(図13A参照)、左側の凹溝147aの底面は、車両前後方向に延びる平面として形成される(図13B参照)。凹溝147aは軸部材115に下方から係合し、凹溝147aが軸部材115に係合した状態を維持するようにレバー部材131が前端部と後端部とでそれぞれ上方に付勢されて、左右一対の凹溝147aの底面はそれぞれ、軸部材115に上下方向の1点で接触することになる。ここで、前述の円弧面の半径は、ばらつきにより、軸部材115との係合が圧入とならない程度に、軸部材115の外径よりも僅かに大きく設定する。
【0028】
図示はしないが、他の実施形態では、左右一対の軸受部のうち、一方の軸受部が丸孔として形成され、他方の軸受部が、車両前後方向に延びる長孔として形成されてもよい。
【0029】
また、レバー部材131の後端部の下壁134には、前側から順に、下壁134から下方へ突出する前側突起部134a、位置決め孔部134b、下壁134から下方へ突出する後側突起部134cが設けられている。前側突起部134a及び後側突起部134cはそれぞれ、下壁134から下方に向けて切起こしにより形成される。
【0030】
レバー部材131の前側突起部134a及び後側突起部134cはそれぞれ、ロック部材117の前側固定孔部117a及び後側固定孔部117dに挿入され、ロック部材117の上方突出部117bが、レバー部材131の位置決め孔部134bに圧入により挿入される。この状態で、前側突起部134a及び後側突起部134cをそれぞれかしめることにより、ロック部材117がレバー部材131の後端部に固定される(図9及び図10参照)。
【0031】
レバー部材131の前端部の下端部は、対向する反対側の下端部に向けて左右方向に延出する前側下部支持部としての前部下壁147bにより相互につながっている。前部下壁147bの上面は、前側下部支持面147cを構成している。両側壁147の前端部の上端部には、両側壁147から互いに対向する反対側に向けて屈曲するようにして左右方向に延出する前側上部支持部としての前側上部突起157が形成されている。左右の前側上部突起157の先端相互は互いに離間していて相互間には隙間が形成されている。前側上部突起157の下面は、前側上部支持面157aを構成している。
【0032】
前側上部突起157の後方で且つ凹溝147aの前方となる両側壁147の上部には、両側壁147から互いに対向する反対側に向けて屈曲するようにして左右方向に延出する後側上部支持部としての後側上部突起158が形成されている。後側上部突起158の下面は、後側上部支持面158aを構成している。すなわち、レバー部材131の前端部には、操作部材133の後端部の上面169b1に対向する一対の上部支持面(前側上部支持面157a、後側上部支持面158a)が車両前後方向に間隔をおいて設けられている。さらに、レバー部材131の前端部には、操作部材133の後端部の下面169b3に対向する前側下部支持面147cが前側上部支持面157aの下方に位置させて設けられている。
【0033】
前側上部支持面157aと前側下部支持面147cと両側壁147とにより、レバー部材131の前端部は断面略四角形状に形成され、このレバー部材131の前端部の内側に操作部材133の後端部が挿入されている。
【0034】
また、後側上部突起158の後方で且つ凹溝147aの前方となる両側壁147には、両側壁147から互いに対向する側に向けて突出する移動規制突起147dが形成されている。移動規制突起147dは、両側壁147の一部を内側に突出させることにより形成される。
【0035】
さらに、凹溝147aの後方で且つ前側突起部134aよりも前方となる両側壁147には、左右一対の凹部147eを設けて、両側壁147相互間の間隔を前端部及び後端部よりも狭くした幅狭部147fが形成されている。
【0036】
図8に示すように、付勢部材132は、略平行に延びる左右一対の細長い棒状に形成され、アッパレール105の内側でアッパレール105のアッパ側壁105bに沿って前後方向に延在している。この付勢部材132は、レバー部材131の前端部を上方に付勢するようにレバー部材131の前端部にそれぞれ当接する前側作用部135aを備える前側付勢部材135を有する。また、付勢部材132は、レバー部材131の後端部を上方に付勢するようにレバー部材131の後端部にそれぞれ当接する後側作用部136aを備える後側付勢部材136を有する。さらに、付勢部材132は、前側作用部135aと後側作用部136aとの間に形成され、アッパレール105のアッパ側壁105bに設けられた係止部105gにそれぞれ係止される中間支持部137を有する。
【0037】
後側付勢部材136は、中間支持部137から後側作用部136aまで左右両アッパ側壁105bにそれぞれ沿って延びると共に、後端部に左右一対の後側作用部136aが連結される連結部136bを有している。後側付勢部材136の連結部136bがロック部材117の下面に下方から当接して、後側作用部136a(連結部136b)がロック部材117を上方(ロック位置方向)に付勢している。この後側付勢部材136の連結部136bが下方突出部117cと後側突起部134cとの間に位置することにより、後側付勢部材136(付勢部材132)の前後方向の移動範囲が規定される。
【0038】
後側付勢部材136は、後端部(後側作用部136a、連結部136b)がレバー部材131及びロック部材117の下方に位置し、中間部分(中間支持部137)が凹部147e(幅狭部147fとアッパ側壁105bとの間)を通ってレバー部材131の上方へ延びている。
【0039】
その一方、前側付勢部材135は、中間支持部137から前側作用部135aまで左右両アッパ側壁105bに沿って延びると共に、下方に折り返されて操作部材133の下面に設けた係止孔133aに係合する抜止部135bを前端部に有している。前側付勢部材135の前側作用部135aが操作部材133に下方から当接して、前側作用部135aが操作部材133を介してレバー部材131の前端部を上方に付勢している。
【0040】
前側付勢部材135は、後端部(中間支持部137)がレバー部材131の上方に位置し、前端部(前側作用部135a)が互いに近づくように内側に曲げられて両側壁147の間を前方へ延びている。
【0041】
本実施形態では、前側付勢部材135と後側付勢部材136とは、一体(1つの部材)である。
【0042】
図示はしないが、別の実施形態では、前側付勢部材135と後側付勢部材136とが、別体(別々の部材)であってもよい。
【0043】
図1に示すように、操作部材133は、左右一対のレール体106に対応して設けられる左右一対のアーム部167と、左右一対のアーム部167同士をつないで車幅方向に延在する把持部168とを備えている。左右一対のアーム部167は、前後方向に延在し、左右それぞれのアッパレール105内に前端から挿入される後端部を有する。把持部168は、操作部材133を乗員が操作するときに把持する。
【0044】
アーム部167は、図14に示すように、後端部が、レバー部材131の左右の側壁147相互間に挿入されている。アーム部167は、把持部168を含めた全体が円筒部材で構成しており、前述した後端部が、円筒部材をプレス成形により加工した形状の後方接続部としての接続端部169となっている。
【0045】
図11A及び図11Bに示すように、接続端部169は、上面169b1と、上面169b1の左右の両端部から下方に延びる側面169b2と、左右の側面169b2の下端から左右内側に向けて設けられる下面169b3とを備えている。接続端部169の上側内面及び下側内面には、車両前後方向に沿って延びる左右一対の凹所171が設けられている。また、接続端部169の下面169b3には、左右の凹所171,171を跨ぐように係止孔133aが形成されている。
【0046】
操作部材133の接続端部169は、円筒部材の左右方向中間部分をそれぞれ内方に突出させた突出部172を上下に有し、付勢部材132の左右一対の前端部がそれぞれ、接続端部169の上下方向の間隔が広い部分(凹所171)に配置されている。
【0047】
操作部材133をレバー部材131に装着する前の状態においては、付勢部材132の前端部(当接部)は、レバー部材131の前側上部支持面157aに当接するようになっている。そして、操作部材133をレバー部材131に装着した状態(図14参照)において、付勢部材132の前端部(当接部)は、操作部材133の内部に挿入されて、操作部材133の下面(上面169b1の内面)に下方から当接し、操作部材133を上方に付勢するようになっている。
【0048】
図14に示すように、アッパレール105のアッパ側壁105bには、レバー部材131が軸部材115により回動可能に支持され、付勢部材132が係止部105gにより下方への移動を規制するように係止される。また、アッパレール105の左右両アッパ側壁105bには、車両前後方向において軸受孔105fの前方の位置に、両アッパ側壁105bから互いに対向する側に向けて屈曲するようにして突出する後側下部支持部としての後側下部突起148が形成される。この後側下部突起148は、アッパ側壁105bから内側に向けて切起こして形成されたものである。
【0049】
付勢部材132は、前側上部支持面157aの下方の位置において操作部材133の後端部の下面(上面169b1の内面)に下方から係合して、操作部材133を上方に付勢している。これにより、操作部材133の上面169b1が一対の上部支持面(前側上部支持面157a、後側上部支持面158a)に接触している。このとき、レバー部材131に設けられた前側下部支持面147cと、操作部材133の後端部の下面169b3との間、及び、アッパレール105に設けられた後側下部支持面148aと、操作部材133の後端部の下面169b3との間には、それぞれ上下方向のクリアランスC1,C2が設けられている。
【0050】
次に、上記のように構成されたシートスライド装置101の動作を説明する。
【0051】
図14は、ロック部材117のロック歯125bがロアレール103のロック溝127に係合してロックされたロック位置にある待機状態(操作部材133を操作していない非操作状態)である。この状態においては、操作部材133は、付勢部材132の前端部(当接部)により、一対の上部支持面(前側上部支持面157a、後側上部支持面158a)に押し付けられている。この付勢部材132の前端部による押し付け力(付勢力)は、操作部材133が自重により下がろうとする力よりも大きい。一方で、ロック部材117をロック解除位置方向に回転付勢する回転モーメントとしては付勢部材132の後端部の押し付け力(付勢力)によるロック位置方向への回転モーメントよりも小さいため、前述の待機状態が維持される。
【0052】
図14に示す状態から、乗員が操作部材133の把持部168を持ち上げる操作をすると、前側上部支持面157aと操作部材133の上面169b1との接点を支点として操作部材133が回動し、操作部材133の後端が付勢部材132の前端部(当接部)を押し下げて下方に移動する。その状態から、操作部材133の把持部168をさらに持ち上げると、操作部材133の後端部の下面169b3がアッパレール105に設けられた後側下部支持面148aに当接して、後側下部支持面148aと操作部材133の後端部の下面169b3との接点を支点として操作部材133が回動することになる。これにより、操作部材133の上面169b1が、レバー部材131の前側上部支持面157aを上方に持ち上げるように回動し、レバー部材131がロック部材117のロック部をロック解除位置方向に回動させる(図15参照)。
【0053】
これにより、レバー部材131は、軸部材115を回動中心として図14中で時計回り方向に揺動回転する。このとき、レバー部材131は、揺動回転によってロック部材117を下方に押し下げ、付勢部材132(後側付勢部材136)が下方に向けて弾性変形する。その結果、ロック歯125bがロアレール103のロック溝127から外れてロックが解除されたロック解除状態となる。ロックが解除されることで、図示しないシートをアッパレール105と共に、ロアレール103側の車両の床面に対して前後に移動させることができ、乗員の希望とするシート位置を確保できる。
【0054】
シート位置を決定した状態で、乗員が操作部材133から手を離すと、付勢部材132(後側付勢部材136)がロック部材117を上方に押し付け、レバー部材131を揺動回転させて図14の待機状態に戻る。このとき、レバー部材131は、軸部材115を回動中心として図14中で反時計回り方向に揺動回転する。
【0055】
図14の状態で、操作部材133に反ロック解除方向(下方)への負荷が作用した場合には、後側上部支持面158aと操作部材133の上面169b1との接点を支点として操作部材133が回動し、操作部材133の下面169b3と前側下部支持面147cとの間のクリアランスC1の分だけ、操作部材133が下方に移動することができる(図16参照)。なお、このとき、レバー部材131は、主ロック歯125mの噛み合い位置を中心に下方へ回動し、両側壁147の前端側の下面が後側下部支持面148aに当接することでレバー部材131の下方への移動を規制し、凹溝147aが軸部材115から外れるのを防止している。
【0056】
以下、本実施形態に係わるシートスライド装置101の作用効果を説明する。
【0057】
(1)シートスライド装置101は、車両前後方向に沿って延設されるロアレール103と、ロアレール103の長手方向に沿って相対移動するアッパレール105と、アッパレール105に対して左右方向の軸周りに回動可能に支持されるレバー部材131と、レバー部材131の後端部に設けられ、ロアレール103に形成された被ロック部(ロック溝127)に係合するロック位置と被ロック部から外れたロック解除位置との間で移動可能なロック部(ロック歯125b)を備えたロック部材117と、ロック部をロック位置方向に付勢する付勢部材132と、レバー部材131の前端部に接続される操作部材133と、を備える。アッパレール105は、アッパレール105の左右両側壁(左右両アッパ側壁105b)に跨るように配置される軸部材115を有する。レバー部材131は、アッパレール105の左右両側壁の内側において、アッパレール105の長手方向に沿って延びる左右一対の側壁147と、左右一対の側壁147にそれぞれ設けられ、軸部材115に係合する軸受部(凹溝147a)と、を有する。左右一対の軸受部がそれぞれ、付勢部材132による付勢によって軸部材115に上下方向の1点で接触する面を有する。左右一対の軸受部のうち、一方の軸受部における軸部材115と接触する面は、軸部材115の外径よりも僅かに大きい半径を有する円弧面として形成され、他方の軸受部における軸部材115と接触する面は、アッパレール105の長手方向に沿って延びる平面として形成される。
【0058】
軸受部の円弧面と軸部材115とは、車両前後方向に僅かなクリアランスを有している。しかし、軸部材115は軸受部の円弧面の底面に押し付けられるように付勢されているため、軸部材115が車両前後方向に移動しようとすると、この接点が軸受部の円弧面に沿って変位する。このため、上記のクリアランスが、アッパレール105の車両前後方向のガタつきとして感じられることがない。
【0059】
また、他方の軸受部の軸部材115と接触する面が車両前後方向に延びる平面であるため、軸部材115の車両前後方向にクリアランスを有している。このため、この他方の軸受部を有する側壁147が車両前後方向に相対的に移動できるため、レバー部材131は、アッパレール105の左右一対の側壁147の間で、自由な姿勢をとることができる。なお、円弧面を有する一方の軸受部は、軸部材115と車両前後方向に僅かなクリアランスを有しているため、上記の移動を妨げることがない。
【0060】
これにより、ロック時におけるアッパレール105のガタつきを抑制することができる。また、軸取付孔(軸受孔105f、凹溝147a)の同心度のばらつきによる軸部材115の軸方向の軸ズレを吸収して、レバー部材131の側壁147がアッパレール105のアッパ側壁105bの内面に押し付けられるのを抑制できる。
【0061】
(2)ロアレール103は、車両前後方向に沿って延びるロア底壁103aと、ロア底壁103aの左右方向の両端縁から上方へ延在する左右一対のロア外側壁103bと、左右一対のロア外側壁103bの上端縁からそれぞれ左右方向内側へ延在するロア上壁103dと、左右一対のロア上壁103dからそれぞれ下方へ延在するロア内側壁103eと、左右一対のロア内側壁103eにそれぞれ車両前後方向に沿って複数設けられるロック溝127と、を有する。アッパレール105の左右両側壁は、ロアレール103の左右一対のロア内側壁103eの左右方向内側に配置されており、ロック部材117のロック部には、左右のロック溝127にそれぞれ係合するロック歯125bが車両前後方向に沿って複数設けられている。複数のロック歯125bは、前後方向の幅が他のロック歯125bよりも大きく形成された主ロック歯125mを有し、主ロック歯125mは、一方の軸受部が形成された方の側壁147側に位置させてロック部に設けられている。
【0062】
主ロック歯125mが、ロック溝127と車両前後方向で接触するように係合し、他のロック歯125bはロック溝127と車両前後方向で隙間を有するように係合している。この主ロック歯125mを、円弧面として形成された一方の軸受部を有する側壁147側に設けることで、ロック状態でアッパレール105に車両前後方向の負荷をかけた際に、レバー部材131の同じ側壁147側で負荷を受けることになり、レバー部材131を左右方向に曲げる方向の負荷の発生を軽減できる。これにより、レバー部材131が左右方向に回転するような負荷の発生を防止でき、レバー部材131の側壁147がアッパレール105のアッパ側壁105bの内面に押し付けられるのを抑制できる。
【0063】
(3)左右一対の軸受部はそれぞれ、上方が開口した凹溝147aとして形成されており、軸部材115に上下方向の1点で接触する面が、凹溝147aの底面に形成されている。
【0064】
軸部材115を軸受部(凹溝147a)の底面に押し付けるように付勢しているため、軸受部を上方が開口した凹溝147aとして形成することができる。これにより、軸部材115の上方にレバー部材131の部位が存在ないため、アッパレール105の内側の上下方向の空間活用の自由度が向上する。
【0065】
また、アッパレール105に軸部材115を取り付けた状態で、レバー部材131の凹溝147aを下方から軸部材115に係合させることができるため、レバー部材131の組付性がよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含む。
【0067】
例えば、付勢部材132の一対の前端部は、同じ長さを有するが、長手方向に異なる長さ(一方が長く、他方が短い。)であってもよい。また、抜止部135bを付勢部材132の一対の前端部それぞれに設けているが、一方の前端部のみに設けるようにしてもよい。
【0068】
また、付勢部材132の前側作用部135aを操作部材133の内部に挿入しているが、外側下面(下面169b3)を下側から上方に付勢するようにしてもよい。
【0069】
さらにまた、上部突起157,158は、両側壁147の上端部にそれぞれ設けられているが、一方の側壁147の上端部にのみ設けるようにしてもよい。
【0070】
また、レバー部材131の前端部の下端部は、前部下壁147bにより相互につながっているが、前側上部突起157を相互につながる形状としてもよい。この場合、レバー部材131は、左右の側壁147の下端相互をつなぐ下壁134が上端相互をつなぐ上壁となった、下方が開放した逆向きU字形状となる。
【符号の説明】
【0071】
101 シートスライド装置
103 ロアレール
103a ロア底壁
103b ロア外側壁
103d ロア上壁
103e ロア内側壁
105 アッパレール
105b アッパ側壁
115 軸部材
117 ロック部材
125b ロック歯
125m 主ロック歯
127 ロック溝
131 レバー部材
132 付勢部材
133 操作部材
147 側壁
147a 凹溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16